説明

有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法

【課題】全反射ロスを低減し、光取出し量を増加させる有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【解決手段】有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板1と、光透過性を有する第1電極2と、少なくとも1つの発光層5を含む有機層6と、第2電極7とを備えている。発光層5の界面及び内部の少なくとも一方に空隙8が設けられている。発光層4の界面又は内部において隣接する二つの層を、空隙8を挟み込んで重ね合わせることにより、有機エレクトロルミネッセンス素子を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光素子として有機エレクトロルミネッセンス素子が知られている。図5により、有機エレクトロルミネッセンス素子の光の伝搬を説明する。この有機エレクトロルミネッセンス素子では、基板1上に、光透過性のある第1電極2、ホール注入層3とホール輸送層4と発光層5とを含む有機層6、及び、反射性のある第2電極7が、順次形成されている。なお、有機層6は、他の層、例えば、電子注入層や電子輸送層などを含んでもよいが、図5では省略している。このような有機エレクトロルミネッセンス素子では、発光層5内の発光源10で発生した光が基板に向かう方向に伝搬し、大気9に出射する。なお、第2電極7に向う光も存在するが、ここでは説明を省略する。
【0003】
有機エレクトロルミネッセンス素子に使用される基板1の材料としては、優れた透明性、強度、低コスト、ガスバリア層、耐薬品性、耐熱性等の観点から、ガラスが多く用いられている。一般的なガラス基板材料であるソーダライムガラス等の屈折率は1.52程度である。また、第1電極2が陽極であり、光透過性を示す場合、第1電極2には酸化インジウムに酸化錫をドープした酸化インジウム錫(ITO)や酸化インジウム亜鉛(IZO)がその優れた透明性と電気伝導性から広く用いられている。ここで、ITOやIZOの屈折率は、その組成、成膜方法、結晶構造等により変化するが、ITOはおよそ1.7〜2.3であり、IZOはおよそ1.9〜2.4であり、いずれにしても非常に高い屈折率を持つ材料である。なお、大気9の屈折率は1.0である。
【0004】
また、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層5などの有機層6に用いられる発光材料、電子輸送性材料、ホール輸送性材料等の屈折率は、一般的にベンゼン環をその分子構造内に多く含んだπ共役結合系の材料であることが多い。そのため、有機層6の屈折率はおよそ1.6〜2.0程度のものが多く、一般的な有機材料に比べて屈折率が高い。
【0005】
従って、一般的な有機エレクトロルミネッセンス素子においては、各層の屈折率の大小関係は、大気<基板<有機層<第1電極(陽極)となっている。
【0006】
ところで、ある媒質から屈折率の異なる媒質へと光が伝搬する場合、特に屈折率の高い媒質から屈折率の低い媒質に伝搬するときには、その界面では媒質間の屈折率により、スネルの法則から臨界角が決定される。そして、その臨界角以上の光は界面で全反射し、屈折率の高い媒質に閉じ込められ、導波光として失われる。
【0007】
図5の形態においては、大気9、基板1、第1電極2、ホール輸送層4、発光層5の屈折率をそれぞれ、n、n、n、n、n、とする。このとき、基板1、第1電極2、ホール輸送層4、及び、発光層5が上記に示すような材料で形成されている場合、例えば、n=1.0、n=1.52、n=1.9、n=1.6、n=1.8、とすることができる。なお、ホール注入層3は、ホール輸送層4との屈折率差が小さいことが多いので、ホール注入層3とホール輸送層4との境界面での光の屈折は無視するとともにホール注入層3とホール輸送層4を一体の層のように考えてもよい。
【0008】
発光層5の発光源10から大気9及び基板1への光の伝搬はスネルの法則を用いて算出することができる。発光層5からホール輸送層4、ホール輸送層4から第1電極2、第1電極2から基板1、基板1から大気9への入射角をそれぞれ、θ5−4、θ4−2、θ2−1、θ1−9とし、大気9への出射角をθとすると、スネルの法則より次式(1)の関係が成り立つ。
【0009】
【数1】

【0010】
この式(1)より発光層5よりも低い屈折率を有するホール輸送層4、基板1、大気9に着目すると、
【0011】
【数2】

【0012】
【数3】

【0013】
【数4】

【0014】
となる。そして、上記の屈折率の値から、発光層5から見たときのホール輸送層4、基板1、大気9との臨界角はそれぞれ、63°、58°、34°となり、発光層5の発光源10から出射された光が、これらの角度以上で入射した場合、発光層5、第1電極2、基板1に閉じ込められて導波光として失われる。
【0015】
よって、有機エレクトロルミネッセンス素子においては、発光層5の発光源10から斜めに高角度に出射した光は、基板1と大気9の界面及び第1電極2と基板1の界面で全反射する現象が発生する(図5の矢印参照)。そして、光の全反射が発生すると、光取り出し効率が低下するといった問題が生じる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Applied PhysicsLetters, 71(9), p.1145, 1997
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
全反射ロスを低減し光取り出し効率を高めるために、非特許文献1の方法が開示されている。この文献に開示された素子は、ガラス(基板1)上に、ITO(第1電極2)、ポリアニリン(ホール輸送層4)とポリ(2−メトキシ5−(2’−エチル)ヘキソキシ−フェニレンビニレン)(以下MEH−PPV、発光層5)、及び、Ca(陰極7)が形成された構造となっている。なお、図5におけるホール注入層3は有していない構造となっている。ところで、この文献においては、ポリアニリン層の役割は特に指定されていないが、ポリアニリンは一般にホール輸送性材料として知られているので、ポリアニリンをホール輸送層4として考えてもよい。
【0018】
そして、非特許文献1では、全反射のロスを少なくするため、MEH−PPV(発光層5)に発光材料であるMEH−PPVよりも低い屈折率を持つ粒径30〜80nmのSiOを混合している。そして、屈折率の比較的低いSiO粒子を混合することにより、発光層5の屈折率が低くなって量子効率が改善されている。しかしながら、屈折率1.6のSiO粒子では、発光層5の屈折率を1.6よりも低くすることはできず、発光層5の屈折率は、基板1の屈折率1.52や、大気9の屈折率1.0よりも高い。そのため、第1電極2や基板1においてロスする光が、依然として多いという問題がある。
【0019】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、全反射ロスを低減し、光取出し量を増加させる有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板と、光透過性を有する第1電極と、少なくとも1つの発光層を含む有機層と、第2電極とを備え、前記発光層の界面及び内部の少なくとも一方に空隙が設けられていることを特徴とするものである。
【0021】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、基板と、光透過性を有する第1電極と、少なくとも1つの発光層を含む有機層と、第2電極とを備えた有機エレクトロルミネッセンス素子を製造するにあたり、前記発光層の界面又は内部において隣接する二つの層を、空隙を挟み込んで重ね合わせることを特徴とするものである。
【0022】
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法においては、前記隣接する二つの層の少なくとも一方は、重ね合わせ面に凹凸が設けられていることが好ましい。
【0023】
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法においては、前記隣接する二つの層の少なくとも一方の重ね合わせ面に凹凸を形成した後、前記隣接する二つの層を重ね合わせることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、発光層の界面又は内部に空隙を含むことで、発光層近傍又は発光層において屈折率が低下し、全反射ロスを低減させて、光取り出し量を増加させることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】有機エレクトロルミネッセンス素子の実施形態の一例を示す概略断面図である。
【図2】(a)及び(b)は、有機エレクトロルミネッセンス素子の実施形態の他の一例を示す概略断面図である。
【図3】有機エレクトロルミネッセンス素子の製造の一例を示す概略断面図である。
【図4】有機エレクトロルミネッセンス素子の製造の他の一例を示す概略断面図である。
【図5】有機エレクトロルミネッセンス素子における光の伝搬を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に、有機エレクトロルミネッセンス素子の層構成の一例を示す。この有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板1と、光透過性を有する第1電極2と、発光層5を含む有機層6と、第2電極7とをこの順で備えている。本形態では、有機層6は、第1電極2と発光層5との間に、ホール注入層3及びホール輸送層4をこの順で備えている。有機層6には、発光層5以外に、他の層、例えば、電子輸送層、電子注入層などを適宜、設けてもよい。また、発光層5は有機層6内に少なくとも1つ存在すればよく、2つ又は3つ、あるいはそれ以上の複数であってもよい。その場合、発光層5間には中間層が存在してもよい。
【0027】
基板1としては、特に制限されることなく適宜の基板材料を使用することができるものである。光を透過させる基板1であれば、例えばソーダガラスや無アルカリガラス等のリジッドな透明ガラス板、ポリカーボネートやポリエチレンテレフタレート等のフレキシブルな透明プラスチック板など、任意のものを用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、ロール製造が可能な可撓性のある基材によって基板1を構成してもよい。それにより、後述のようにロール製法による製造が可能となる。
【0028】
基板1においては、屈折率を、例えば、1.5〜1.7程度に設定することができる。また、基板1の厚みを、例えば、10〜1000μm程度に設定することができる。なお、ロール製法で製造する場合、基板1の厚みは、10〜100μm程度であることが好ましい。
【0029】
第1電極2を構成する導電性物質としては、光透過性を有するものであればよく、銀、インジウム−錫酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)、錫酸化物、Au等の金属の微粒子、導電性高分子、導電性の有機材料、ドーパント(ドナーまたはアクセプタ)含有有機層、導電体と導電性有機材料(高分子含む)の混合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
第1電極2の厚みとしては、特に限定されるものではないが、例えば、50〜200nm程度に設定することができる。また、第1電極2においては、屈折率を、例えば、1.5〜2.4程度に設定することができる。なお、ITOやIZOの屈折率は、その組成、成膜方法、結晶構造等により変化するが、ITOはおよそ1.7〜2.3であり、IZOはおよそ1.9〜2.4である。
【0031】
ホール注入層3を構成する材料としては、チオフェン、トリフェニルメタン、ヒドラゾリン、アリールアミン、ヒドラゾン、スチルベン、トリフェニルアミンなどを含む有機材料が挙げられる。具体的には、ポリビニルカルバゾール(PVCz)、ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)、TPDなどの芳香族アミン誘導体などが挙げられ、上記材料を単独で用いてもよく、また二種類以上の材料を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
ホール輸送層4を構成する材料としては、LUMOが小さい低分子〜高分子材料を用いることができ、例えば、ポリビニルカルバゾール(PVCz)や、ポリピリジン、ポリアニリンなどの側鎖や主鎖に芳香族アミンを有するポリアリーレン誘導体などの芳香族アミンを含むポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
発光層5を構成する有機エレクトロルミネッセンス材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体等、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素体、金属錯体系発光材料を高分子化したもの等や、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、ピラン、キナクリドン、ルブレン、及びこれらの誘導体、あるいは、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、スチリルアミン誘導体、及びこれらの発光性化合物からなる基を分子の一部分に有する化合物等が挙げられる。また上記化合物に代表される蛍光色素由来の化合物のみならず、いわゆる燐光発光材料、例えばIr錯体、Os錯体、Pt錯体、ユーロピウム錯体等々の発光材料、又はそれらを分子内に有する化合物若しくは高分子も好適に用いることができる。これらの材料は、必要に応じて、適宜選択して用いることができる。
【0034】
発光層5は、エレクトロルミネッセンス材料のみから構成されるものであってもよく、あるいは、エレクトロルミネッセンス材料及び電気的に寄与する材料から構成されるものであってもよい。電気的に寄与する材料としては、上記したような材料や、π共役系の有機材料などが挙げられる。
【0035】
有機層6における上記以外の層、具体的には、電子輸送層及び電子注入層は、電子を注入又は輸送する機能を有する適宜の材料で形成することができる。
【0036】
有機層6を構成する各層の厚みとしては、特に限定されるものではないが、例えば、発光層5を10〜100nm程度に、ホール注入層3を10〜100nm程度に、ホール輸送層4を10〜100nm程度に、電子注入層を1〜50nm程度に、電子輸送層を10〜100nm程度に、それぞれ設定することができる。また、有機層6を構成する各層の屈折率としては、特に限定されるものではないが、発光層5を1.5〜1.8程度に、ホール注入層3を1.5〜1.8程度に、ホール輸送層4を1.5〜1.8程度に、それぞれ設定することができる。
【0037】
第2電極7の材料としては、Alなどを用いることができるが、Alと他の電極材料を組み合わせて積層構造などとして構成するものであっても良い。このような電極材料の組み合わせとしては、アルカリ金属とAlとの積層体、アルカリ金属と銀との積層体、アルカリ金属のハロゲン化物とAlとの積層体、アルカリ金属の酸化物とAlとの積層体、アルカリ土類金属や希土類金属とAlとの積層体、これらの金属種と他の金属との合金などが挙げられ、具体的には、例えばナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム、マグネシウムなどとAlとの積層体、マグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金、LiF/Al混合物/積層体、Al/Al混合物などを例として挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
第2電極7の厚みとしては、特に限定されるものではないが、例えば、50〜200nm程度に設定することができる。なお、第2電極7を光反射性の電極として形成した場合、本実施形態では、この反射性電極で反射した光の全反射ロスも低減することが可能である。
【0039】
有機エレクトロルミネッセンス素子では、図1に示すように、発光層5の界面及び内部の少なくとも一方には、空隙8が設けられている。本形態では、発光層5の一方の界面であるホール輸送層4との界面に、発光層5の内部に埋め込まれるように、複数の微細な空隙8が設けられている。空隙8を設ける構造は、これに限定されるものではない。例えば、図2(a)の形態のように、発光層5に隣接する層(図示ではホール輸送層4)の内部に埋め込まれて空隙8が発光層5の界面に設けられたり、図2(b)の形態のように、発光層5の界面に接触せずに発光層5の内部に空隙8が設けられたりしてもよい。また、発光層5の界面と内部の両方に空隙8が設けられていてもよい。また、空隙8が隣接する二つの層の界面を跨って両方の層に埋め込まれていてもよい。
【0040】
微細な空隙8においては、形状は特に限定されるものではない。微細な空隙8の寸法としては、素子の各層の表面と垂直な方向(厚み方向)のサイズがnmオーダーのもの(例えば1〜1000nm)が好ましい。また、空隙8における各層の表面と平行な方向のサイズは、特に限定されるものではないが、有機エレクトロルミネッセンス素子の電気的な特性を大きく損なわない範囲で考えると、nmオーダーのもの(例えば1〜1000nm)が好ましい。各層の表面と垂直な方向のサイズについて、好ましくは1nm〜100nm程度、さらには5nm〜30nmがより好ましいがこれに限られるものではない。なお、各層の厚み方向のサイズよりも各層の表面と平行な方向のサイズが大きくなることによって、空隙8が各層の表面と略平行な扁平状のものとなっていてもよい。
【0041】
空隙8の量は、光取り出し性と素子安定性の観点から設定することができる。図1又は図2(b)のように、発光層5内に埋め込まれて空隙8が形成される場合には、発光層5の空隙率(体積%)として表すことができる。この場合、空隙率は、5vol%以上が好ましく、15vol%以上であることがより好ましいが、これに限られるものではない。また、この空隙率は30vol%以下であることが好ましい。また、図2(a)のように、発光層5に隣接する層に埋め込まれて空隙8が形成される場合には、発光層5に対する空隙率(体積%)として表すことができる。この場合、空隙率(%)は、5vol%以上が好ましく、15vol%以上であることがより好ましいが、これに限られるものではない。また、この空隙率は30vol%以下であることが好ましい。また、図1又は図2(a)のように、空隙8が発光層5の界面に形成される場合、空隙8が形成された界面においては、発光層5と隣接する層との界面全体の面積に対する空隙8の占める面積の割合(面積率)は、特に限定されるものではないが、面積率5%以上30%以下であることが好ましい。なお、上記の空隙率及び面積率においては、空隙8は合計量として計算される。ここで、空隙8がない場合の発光層5の屈折率を1.7、空隙8内の屈折率を1とした場合、図1、図2(a)及び図2(b)のいずれの場合でも、発光層5の屈折率を、空隙率5vol%では1.65程度、空隙率15vol%では1.5程度にすることができる。発光層5の屈折率が1.5に近づくと、光取り出し側に配置される基板1にガラス(屈折率は約1.5)を用いた場合において、光取り出し性の向上により大きく寄与することが可能になる。
【0042】
空隙8には、気体が封入されていてもよいし、あるいは、空隙8は真空であってもよい。空隙8は材料が充填されていないので、屈折率は大気と同じ1.0であり、屈折率を低下させることが可能となる。そして、発光層5の界面又は内部に空隙8を含むことで、発光層5近傍又は発光層5において屈折率が低下し、全反射ロスを低減させて、光取り出し量を増加させることができるものである。
【0043】
すなわち、上記の有機エレクトロルミネッセンス素子では、発光層5の近傍又は内部に空隙8を含むことで、発光層5の近傍又は内部の屈折率が低減される。そして、屈折率の低減により、発光源10から斜めに高角度に出射した光など、発光源10からの光を全反射しにくいものとすることができる(図5参照)。これは、第1電極2と基板1の界面、及び、基板1と大気9の界面での臨界角を大きくすることができるためであると推測される。また、光の角度を発光層5の近傍又は内部で変化させて全反射しにくい角度で基板1に向かって光を出射するためであると推測される。このように、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光層5の界面又は内部に空隙8が含まれていることにより、第1電極2から基板1への光取出し量、及び、基板1から大気9への光取出し量を増加させることができるので、光取り出し効率を向上することができるものである。
【0044】
そして、上記の有機エレクトロルミネッセンス素子は、照明器具、液晶バックライト、各種ディスプレイ、表示装置などに適用することが可能である。
【0045】
次に、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法について説明する。
【0046】
図3は、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を示す一例である。この製造方法に用いる有機エレクトロルミネッセンス素子製造装置20は、第1ローラ21及び第2ローラ22により構成される一対の対向するローラを備えている。そして、この二つのローラで基材を挟みこんでドナー側(第1基材11側)の転写層をアクセプタ側(第2基材12側)に転写する。
【0047】
ドナー基材となる第1基材11は長尺に形成され、第1基材11の表面には転写層となる第1層13が設けられている。また、アクセプタ基材となる第2基材12は長尺に形成され、第2基材12の表面には第1層13と重ねられる第2層14が設けられている。第1層13及び第2層14は、コーターなどによって各基材の上に形成されるものであり、有機エレクトロルミネッセンス素子の一部を構成する層である。そして、第2基材12が下流側に送り出され、この第2基材12の送り出しと同期して下流側(図3の白抜き矢印)に送り出される第1基材11に形成された第1層13(転写層)と重ね合わせられ、この重ね合わされた二つの基材が外側からローラで押圧され挟みこまれることによって、第1層13が第2基材12側に転写される。転写後は、第1層13と第2層14との接着力が、第1基材11が第1層13に対して付着する力よりも強いために、第1基材11は第1層13から剥離される。また、図示の形態のように、第1基材11から第1層13が転写及び剥離しやすいよう、第2ローラ22より前の第2基材12の送出方向を下方にし、第2ローラ22より後の第2基材12の送出方向を上方にして、第2基材12の送出方向を第2ローラ22で反転させてもよい。このとき、第1基材11については、第1ローラ21より前の第1基材11の送出方向を略水平な方向にしてもよい。
【0048】
図3の装置により得られた有機エレクトロルミネッセンス素子では、アクセプタ基材である第2基材12を基板1にすることができる。そして、第1層13と第2層14の積層体の一部が、有機層6又は有機層6の一部となる。
【0049】
図4は、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を示す他の一例である。この製造方法に用いる有機エレクトロルミネッセンス素子製造装置20は、第1ローラ21及び第2ローラ22により構成される一対の対向するローラを備えている。そして、この二つのローラで基材を挟みこんで第1基材11の第1層13と第2基材12の第2層14とを貼り合わせるものである。これによれば、両面基材付きの有機エレクトロルミネッセンス素子が得られる。
【0050】
第1基材11は長尺に形成され、第1基材11の表面には第1層13が設けられている。また、第2基材12は長尺に形成され、第2基材12の表面には第1層13と重ねられる第2層14が設けられている。第1層13及び第2層14は、コーターなどによって各基材の上に形成されるものであり、有機エレクトロルミネッセンス素子の一部を構成する層である。そして、第2基材12が下流側に送り出され、この第2基材12の送り出しと同期して下流側(図3の白抜き矢印)に送り出される第1基材11に形成された第1層13と重ね合わせられ、この重ね合わされた二つの基材が外側からローラで押圧され挟みこまれることによって、第1層13と第2層14とが貼り合わされる。貼り合わせ後は、各基材は一体化されて下流側にさらに送出される。その際、図示の形態のように、第2ローラ22より前の第2基材12の送出方向を下方にし、第1ローラ21より前の第1基材11の送出方向を略水平な方向にし、貼り合わせ後の基材11、12の送出方向を略水平な方向にしてもよい。
【0051】
図4の装置により得られた有機エレクトロルミネッセンス素子では、第1基材11及び第2基材12のいずれか一方又は両方を基板1にすることができる。そして、第1層13と第2層14の積層体の一部が、有機層6又は有機層6の一部となる。
【0052】
図3及び図4のような有機エレクトロルミネッセンス素子の製造装置20では、ロール・トゥー・ロールでの有機エレクトロルミネッセンス素子の連続的な製造に対応することが可能になる。その場合、有機エレクトロルミネッセンス素子を効率よく大量に生産することができる。
【0053】
図3及び図4の装置においては、ヒーターなどの加熱機構が設けられることが好ましい。それにより、第1層13と第2層14との接着性が向上する。加熱機構は、各ローラ21、22の各上流側に設けられることが好ましい。その場合、加熱された第1層13と第2層14とが重ねられて接着性が高まる。図示の形態においては、第1基材11に沿って配設され、第1層13の反対側の面から第1基材11を加熱する第1ヒーター23と、第2基材12に沿って配設され、第2層14の反対側の面から第2基材12を加熱する第2ヒーター24とを備えている。なお、加熱機構は、これに限られるものではなく、例えば、一方の基材のみを加熱するものであってもよい。また、第1ローラ21及び第2ローラ22の一方又は両方が加熱されて温度が高くなるように構成され、第1ローラ21及び第2ローラ22の一方又は両方により基材を加熱するものであってもよい。
【0054】
そして、図3及び図4のような製造方法においては、第1層13と第2層14とを重ね合わせる際に、空隙8を挟みこんでこれらを重ね合わせることによって、隣接する二つの層(第1層13及び第2層14の各表面層)の間に空隙8を設けることができる。すなわち、上記で説明した有機エレクトロルミネッセンス素子は、図3及び図4の製造方法によって容易に製造することができるものである。
【0055】
隣接する二つの層の間に空隙8を設けるためには、隣接する二つの層の少なくとも一方、すなわち、第1層13及び第2層14の少なくとも一方は、重ね合わせ面に凹凸が設けられたものであることが好ましい。それにより、積極的に空隙8を挟み込むことができる。また、隣接する二つの層の少なくとも一方の重ね合わせ面に、すなわち、第1層13及び第2層14の少なくとも一方の重ね合わせ面に、凹凸を形成することも好ましい。その場合も、積極的に空隙8を挟み込むことができる。このように、凹凸が設けられた面が重ね合わせられることにより、隣接する層の境界面に隙間ができて、この隙間により空隙8が形成される。隣接する二つの層は、一方が平坦面で他方が凹凸面であってもよく、両方が凹凸面であってもよい。
【0056】
第1層13及び第2層14において、表面凹凸の形成は、基板表面に微細な凹凸が形成されたスタンパを押し当てて形成することができる。スタンパとしては、例えば、シリコン基板に平面視で中心間ピッチ100〜500nmで配列したストライプ状で、断面形状が高さ10〜200nmの三角形又は矩形である構造を電子ビーム露光やドライエッチングにより形成し、凹凸面が形成されたものを用いることができる。ただし、スタンパは、これに限定されるものではなく、例えば、複数の円錐や円柱などが設けられたヒダ状のスタンパであってもよい。凹凸形成の際には、凹凸を形成する層を加熱してもよい。また、表面凹凸は、スタンパ以外の方法、例えば、電子ビーム露光やドライエッチングなどで形成されてもよい。
【0057】
第1層13及び第2層14のいずれか一方の表面層が発光層5である場合、発光層5の界面に空隙8を形成することができる。例えば、表面層が発光層5である第1層13(又は第2層14)の表面に凹凸を形成し、これを、表面層が平坦なホール輸送層4である第2層14(又は第1層13)に重ねることにより、図1のような形態の有機エレクトロルミネッセンス素子を製造することができる。また、表面層がホール輸送層4である第1層13(又は第2層14)の表面に凹凸を形成し、これを、表面層が平坦な発光層5である第2層14(又は第1層13)に重ねることにより、図2(a)のような形態の有機エレクトロルミネッセンス素子を製造することができる。
【0058】
また、第1層13の表面層、及び、第2層14の表面層が、それぞれ発光層5の一部の層である場合、発光層5の内部に空隙8を形成することができる。例えば、発光層5の一部が表面層である第1層13(又は第2層14)の表面に凹凸を形成し、これを、発光層5の他の一部が表面層である第2層14(又は第1層13)に重ねることにより、図2(b)のような形態の有機エレクトロルミネッセンス素子を製造することができる。
【0059】
要するに、発光層5の界面に空隙8が設けられるためには、発光層5が第1層13又は第2層14の表面層として形成されていればよく、発光層5の内部に空隙8が設けられるためには、第1層13及び第2層14の各表面層に発光層5の各一部が含まれていればよい。これにより、上記で説明した、発光層5の界面又は内部に空隙8を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を得ることができる。そして、このようにして形成された有機エレクトロルミネッセンス素子においては、複数の微細な空隙8は、各層の表面と略平行な平面上に配置されたものにすることができる。
【0060】
第1基材11及び第2基材12としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、エポキシ等の樹脂、フッ素系樹脂等から任意の方法によって作製されたプラスチックフィルムやプラスチックシートなどや、導電性を持つ金属板、金属箔、金属フィルムなどを用いることができる。ロール製法により製造するためには、ロール状に巻くことが可能な可撓性のある基材を用いることが好ましい。基材として樹脂基材を用いた場合は、この樹脂基材を基板1として用いることができる。また、基材として導電性基材を用いた場合は、この導電性基材を電極(第1電極2又は第2電極7)として用いることができる。
【0061】
そして、塗布や蒸着など、適宜の方法を用いて、第1基材11の表面に、単層又は複層の第1層13を形成し、第2基材12の表面に、単層又は複層の第2層14を形成することができる。第1層13及び第2層14には、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する層が含まれている。例えば、第1電極2、ホール注入層3、ホール輸送層4、発光層5、電子輸送層、電子注入層、第2電極7といった層が挙げられる。
【0062】
有機エレクトロルミネッセンス素子を製造する際には、製造雰囲気中の水分や酸素が有機エレクトロルミネッセンス素子の特性に悪影響を及ぼすことから、グローブボックスなどを用い水分や酸素の量を極力低減した不活性な雰囲気で行うことが好ましい。特に、第1層13と第2層14とを重ね合わせるときは、このような条件で行うことが好ましい。空隙8に酸素や水分が含まれると、素子の特性を悪化させるおそれがある。例えば、ドライ窒素など、乾燥した不活性ガス条件下で重ね合わせを行うと、空隙8には不活性ガスが封入されることになるので、素子の悪化を抑制することができる。
【0063】
ここで、図3の形態のような転写法の場合には、ドナー基材である第1基材11は、アクセプタ基材である第2基材12に比べて熱伝導の高い材料を用いた方が好ましい。また、使用するドナー基材とアクセプタ基材の熱伝導率がほぼ同等の場合においては、アクセプタ基材である第2基材12は、ドナー基材である第1基材11に比べて厚みが厚いものを用いることが好ましい。また、ドナー基材上の転写層が良好にアクセプタ基材側に転写されるように、第1基材11の第1層13と接する表面には、表面エネルギーを制御するための処理が施されていても構わない。表面エネルギーを制御する処理が施されることにより、剥離性を高めることができる。表面エネルギーを制御するための処理としては、例えば、長鎖のアルキル基を有した有機分子からなる自己組織化単分子膜やゾルゲル法などで形成された有機シリケートから形成される有機無機ハイブリッド膜等を剥離剤として用いる処理が挙げられる。この場合、剥離剤は塗布などによって積層され、剥離層が形成されていてもよい。また、その他、プラズマ処理やUVオゾン処理などの気相処理といったものが挙げられる。ただし、表面エネルギーが制御できる処理、あるいは処理された膜が存在すれば、これに限られない。
【0064】
また、第1層13と第2層14とを重ね合わせる温度に関しては、特に限定されるものではないが、図3の形態の場合、第1基材11の加熱温度が第2基材12の加熱温度よりも高いことが好ましい。特に、転写層である第1層13を構成する材料をあらかじめ転写可能温度以上に第1ヒーター23で第1基材11を介して加熱し、第2基材12を、第1層13を構成する材料の転写可能温度よりも低い温度に第2ヒーター24で加熱し保持することが好ましい。それにより、転写をスムーズに行うことができる。また、ローラで加熱する場合は、第1ローラ21の温度を第2ローラ22の温度よりも高くするようにしてもよい。
【0065】
なお、図1に示す有機エレクトロルミネッセンス素子を製造する方法としては、図3及び図4の製造方法に限定されるものではなく、ロール製法以外の方法で製造してもよい。例えば、第1層13が形成された第1基材11と、第2層14が形成された第2基材12とを、送出することなく、載置した状態で重ね合わせるようにしてもよい。
【実施例】
【0066】
(実施例1)
(ドナー基材)
露点−76℃以下、酸素1ppm以下のドライ窒素雰囲気中のグローブボックス内において、基材(第1基材11)として厚み200μmのポリエチレンナフタレートフィルムの上に、剥離剤として膜厚2μmのシリコーンコーティング材の被膜を形成した。さらにその上に、赤色発光分子(アメリカンダイソース社製「Light Emitting Polymer ADS111RE」)をテトラヒドロフラン(THF)溶媒に溶解した溶液を、膜厚が70nmになるようにバーコーターで塗布し、100℃で10分間乾燥することによって赤色発光層(発光層5)を得た。赤色発光層の波長650nmにおける屈折率は、1.7であった。
【0067】
また、シリコン基板に平面視で中心間ピッチ約300nmで配列したストライプ状で、断面形状が高さ約50nmの三角形である構造を電子ビーム露光により形成し、凹凸面が形成されたスタンパを作製した。
【0068】
そして、赤色発光層が形成された基材を赤色発光分子の転写可能温度以上に加熱し、前記スタンパの凹凸面で赤色発光層の表面を10MPa以上で押し付け、1分間保持した後、スタンパを取り除いた。これにより、赤色発光層の表面にはストライプ状の微細な凹凸構造が形成された。以上により、発光層5が表面層となった第1層13が表面に形成された第1基材11をドナー基材として得た。
【0069】
(アクセプタ基材)
基材(第2基材12)である厚み200μmのポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム製「テオネックスQ65FA」)の上に、ITOターゲット(東ソー製)を用いてスパッタし、厚み300nmのITO膜(スズドープ酸化インジウム)を形成した。その後、アルゴン雰囲気下150℃で2時間アニール処理を行うことにより、シート抵抗18Ω/□の第1電極2を形成した。第1電極2の波長650nmにおける屈折率は、2.1であった。
【0070】
次に、第1電極2の上に、ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)(スタルクヴィテック社製「Baytron P AI4083」、PEDOT:PSS=1:6)を膜厚30nmになるようにスピンコーターで塗布し、100℃で20分間加熱することにより、ホール注入層3を形成した。ホール注入層3の波長650nmにおける屈折率は、1.55であった。
【0071】
次に、露点−76℃以下、酸素1ppm以下のドライ窒素雰囲気のグローブボックスに基材を移送し、ホール注入層3の上に、TFB(Poly[(9,9−dioctylfluorenyl−2,7−diyl)−co−(4,4’−(N−(4−sec−butylphenyl))diphenylamine)])(アメリカンダイソース社製「Hole Transport Polymer ADS259BE」)をTHF溶媒に溶解した溶液を膜厚12nmになるようにスピンコーターで塗布してTFB被膜を作製し、これを200℃で10分間加熱することにより、ホール輸送層4を形成した。ホール輸送層4の波長650nmにおける屈折率は、1.7であった。
【0072】
以上により、第1電極2、ホール注入層3、ホール輸送層4を含む第2層14が表面に形成された第2基材12をアクセプタ基材として得た。なお、第2基材12は、有機エレクトロルミネッセンス素子の基板1となる。
【0073】
(転写)
アクセプタ基材の積層面に、ドナー基材の積層面を重ね、アクセプタ基材とドナー基材とが重なったものを、露点−76℃以下、酸素1ppm以下のドライ窒素雰囲気のグローブボックス内で貼り合わせ用のローラに通した。その際、ドナー基材を赤色発光層が転写可能な温度(130℃)以上の温度150℃に加熱し、アクセプタ基材をその温度よりも低い温度100℃で加熱した。これにより、ドナー基材の赤色発光層がアクセプタ基材に転写された。なお、赤色発光層の転写後、ドナー基材を構成する第1基材11は剥離された。
【0074】
そして、真空蒸着法により、赤色発光層の表面にアルミニウムを80nmの厚みで成膜して、第2電極7を作製した。
【0075】
以上により、有機エレクトロルミネッセンス素子が得られた。
【0076】
(実施例2)
実施例1と同様の方法で、ポリエチレンナフタレートフィルムの基材の上に、シリコーンコーティング材の被膜を形成し、さらにその上に赤色発光層(発光層5)を形成することにより、凹凸が設けられていない発光層5が表面層となったドナー基材を得た。
【0077】
また、実施例1と同様の方法で、第1電極2、ホール注入層3、ホール輸送層4を含む第2層14が表面に形成された第2基材12を得た。この第2基材12のホール輸送層4の表面に、実施例1で作製したスタンパを10MPa以上で押し付け、1分間保持した後、スタンパを取り除いた。これにより、ホール輸送層4の表面にストライプ状の微細な凹凸構造が形成されたアクセプタ基材を得た。
【0078】
上記のドナー基材の積層面と、上記のアクセプタ基材の積層面とを重ね、アクセプタ基材とドナー基材とが重なったものを、露点−76℃以下、酸素1ppm以下のドライ窒素雰囲気のグローブボックス内で貼り合わせ用のローラに通した。加熱条件は、実施例1と同様の条件とした。これにより、ドナー基材の赤色発光層がアクセプタ基材に転写された。なお、赤色発光層の転写後、ドナー基材は剥離された。
【0079】
そして、真空蒸着法により、赤色発光層の表面にアルミニウムを80nmの厚みで成膜して、第2電極7を作製した。
【0080】
以上により、有機エレクトロルミネッセンス素子が得られた。
【0081】
(比較例1)
スタンパにより赤色発光層に凹凸形成を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
【0082】
(評価)
実施例及び比較例で得られた有機エレクトロルミネッセンス素子において、電極間に電流密度が10mA/cmとなるように電流を流し、正面輝度を輝度計(トプコンテクノハウス社製BM−7A)により計測した。
【0083】
表1に結果を示す。なお、輝度は、正面輝度(cd/m)であり、比較例1の正面輝度を1.00としたときの相対値で表している。
【0084】
表1に示すように、空隙を形成することにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光特性が優れたものとなり、高効率化が図られていることが確認された。
【0085】
【表1】

【符号の説明】
【0086】
1 基板
2 第1電極
3 ホール注入層
4 ホール輸送層
5 発光層
6 有機層
7 第2電極
8 空隙
11 第1基材
12 第2基材
13 第1層
14 第2層
20 有機エレクトロルミネッセンス素子製造装置
21 第1ローラ
22 第2ローラ
23 第1ヒーター
24 第2ヒーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、光透過性を有する第1電極と、少なくとも1つの発光層を含む有機層と、第2電極とを備え、前記発光層の界面及び内部の少なくとも一方に空隙が設けられていることを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
基板と、光透過性を有する第1電極と、少なくとも1つの発光層を含む有機層と、第2電極とを備えた有機エレクトロルミネッセンス素子を製造するにあたり、前記発光層の界面又は内部において隣接する二つの層を、空隙を挟み込んで重ね合わせることを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項3】
前記隣接する二つの層の少なくとも一方は、重ね合わせ面に凹凸が設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項4】
前記隣接する二つの層の少なくとも一方の重ね合わせ面に凹凸を形成した後、前記隣接する二つの層を重ね合わせることを特徴とする、請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−248450(P2012−248450A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120088(P2011−120088)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】