説明

有機ハロゲン化合物等の有害物質を含有する固体の処理装置

【課題】筐体内に滞留し内壁等で凝縮する水蒸気を排除することにより、残留する水分の蒸発に費やしていた多くのエネルギを節減し、熱効率を大幅に向上させることができるマイクロ波処理装置を提供すること。
【解決手段】マイクロ波照射により固体から発生する水蒸気を強制排気する吸引装置4を備えた排気管5を設けるとともに、排気中に含まれる水蒸気を濾過し、有害物質を吸着するフィルタ6、11を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ハロゲン化合物等の有害物質を含有する固体の処理装置(以下、本明細書において、「マイクロ波処理装置」という。)に関し、特に、有機ハロゲン化合物等の有害物質を含有する固体にマイクロ波を照射することによって有機ハロゲン化合物等の有害物質を分解するようにしたマイクロ波処理装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市ごみ焼却炉や電気炉から排出される集塵灰を、酸素欠乏状態で350℃以上、好ましくは、400℃以上で30分以上加熱し、更に再合成を防ぐために加熱後急速に200℃以下に冷却する方法や、集塵灰にマイクロ波を照射することによってダイオキシン類を分解することが提案され、実用化されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
ところで、近年では、このようなマイクロ波処理装置によって、土壌や底質の無害化処理が行われるようになっている。
しかし、土壌や底質は含有水分が多く、従来のマイクロ波処理装置では、この含有水分の蒸発に多くのエネルギが消費されており、不経済となっている。
【0004】
具体的には、従来のマイクロ波処理装置では、発生する排ガスに関して特に吸引することなく、自然排気のみで処理を実施してきている。
このため、蒸発した水分も一部が排出されるだけで、多くがマイクロ波処理装置の筐体内に滞留することになり、運転停止後には内壁等で凝縮して再び水分となる。
含水率の高い土壌、河川や海底などの底質は、含水率が数十%の値となっており、マイクロ波による加熱処理を実施する場合、水分によるマイクロ波の吸収性が非常に高いことから、多くのエネルギが上記のように残留する水分の蒸発に費やされているのが現状である。
【特許文献1】特開2000−334062号公報
【特許文献2】特開2001−19646号公報
【特許文献3】特開2005−169291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来のマイクロ波処理装置が有する問題点に鑑み、筐体内に滞留し内壁等で凝縮する水蒸気を排除することにより、残留する水分の蒸発に費やしていた多くのエネルギを節減し、熱効率を大幅に向上させることができるマイクロ波処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のマイクロ波処理装置は、有機ハロゲン化合物等の有害物質を含有する固体を導入する筐体と、該筐体内に導入した有害物質を含有する固体にマイクロ波を照射するマイクロ波照射機構とを備えた有機ハロゲン化合物等の有害物質を含有する固体の処理装置において、マイクロ波照射により固体から発生する水蒸気を強制排気する吸引装置を備えた排気管を設けるとともに、排気中に含まれる水蒸気を濾過し、有害物質を吸着するフィルタを設けたことを特徴とする。
【0007】
この場合において、吸引装置の上流側に、水蒸気から水を分離する凝縮装置を設けることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のマイクロ波処理装置は、有機ハロゲン化合物等の有害物質を含有する固体を導入する筐体と、該筐体内に導入した有害物質を含有する固体にマイクロ波を照射するマイクロ波照射機構とを備えたマイクロ波処理装置において、マイクロ波照射により固体から発生する水蒸気を強制排気する吸引装置を備えた排気管を設けるとともに、排気中に含まれる水蒸気を濾過し、有害物質を吸着するフィルタを設けることから、マイクロ波照射にて気化した水蒸気を排気管で強制排気することにより、筐体内に滞留し内壁等で凝縮する水蒸気を排除することができ、これにより、残留する水分の蒸発に費やしていた多くのエネルギを節減し、処理装置の熱効率を大幅に向上させることができる。
また、排気する水蒸気は、気体の状態でフィルタを通過させることができるため、排ガス中の有機物質や有害物質などの効率的な吸着処理を行うことが可能となる。
【0009】
また、一般的な吸引装置の場合には、吸引装置の上流側に、水蒸気から水を分離する凝縮装置を設けることにより、水蒸気から水分を回収して処理するとともに、吸引装置の水分による影響を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明のマイクロ波処理装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
図1〜図2に、本発明のマイクロ波処理装置の一実施例を示す。
【0012】
このマイクロ波処理装置1は、有機ハロゲン化合物等の有害物質を含有する固体を導入する筐体2と、該筐体2内に導入した有害物質を含有する固体にマイクロ波を照射するマイクロ波照射機構3とを備えている。
そして、このマイクロ波処理装置1は、マイクロ波照射により固体から発生する水蒸気を強制排気する吸引装置4を備えた排気管5を設けるとともに、該排気管5に、排気中に含まれる水蒸気を濾過し、有機ハロゲン化合物等の有害物質を吸着するフィルタ6を設けている。
【0013】
筐体2は、筐体2内に導入した土壌A(本実施例において底質を含む)の上方においてマイクロ波の照射空間を構成する筐体2の上半部の周壁の形状を、5角形以上の多角形あるいは円筒形に形成するようにしている。
【0014】
また、筐体2には、土壌Aを筐体2内に搬入する搬入装置7と、処理された土壌Aを排出する搬出装置8とが配設されている。
この場合、重機で浚渫された土壌の水分を調整して土壌Aとする。この土壌Aは、薬剤サイロ9に貯蔵された消石灰や重曹等のアルカリ物質と活性炭とからなる混合物を添加した状態(この混合物は、処理対象の土壌Aの性状等により、必要量を添加するもので、添加しない場合もある。)で筐体2に搬入される。
一方、マイクロ波照射により処理された土壌Aは、搬出装置8により排出され、冷却処理を施した後、処理済土壌サイロ10に貯蔵される。
【0015】
マイクロ波照射機構3は、筐体2の上部に設置されたマイクロ波発振機31と、このマイクロ波発振機31を冷却する冷却装置32と、筐体2の底部に配設され、搬入した土壌を攪拌する攪拌羽根を有する攪拌装置33とを備えている。
【0016】
排気管5は、筐体2の上部に設置したセラミックフィルタ11から筐体2の外部に延設され、終端付近に、筐体2内の水蒸気を吸引して強制排気する吸引装置4、具体的には、例えば、吸引ブロアを配設している。
また、排気管5の筐体2付近には、排ガス中の有機物質や有害物質などを吸着する活性炭素繊維を用いたフィルタ6が設置されており、排気管5の筐体2からこのフィルタ6を越えるまでの区間には、排気管5を保温することにより水蒸気を気体の状態で保持する保温機構51が設けられている。
保温機構51は、保温ジャケットなどからなり、必要により加熱装置を設けて、排気管5を100℃以上に保温する。
【0017】
また、吸引装置4の上流側には、水蒸気を冷却することにより、水蒸気から水を分離する凝縮装置12が設けられている。
この凝縮装置12により分離された水は、別途、水処理装置13で浄化され放水される。
【0018】
かくして、本実施例のマイクロ波処理装置1は、有機ハロゲン化合物等の有害物質を含有する固体を導入する筐体2と、該筐体2内に導入した有害物質を含有する固体にマイクロ波を照射するマイクロ波照射機構3とを備えたマイクロ波処理装置において、マイクロ波照射により固体から発生する水蒸気を強制排気する吸引装置4を備えた排気管5を設けるとともに、排気中に含まれる水蒸気を濾過し、有害物質を吸着するフィルタ6及びセラミックフィルタ11を設けることから、マイクロ波照射にて気化した水蒸気を排気管5で強制排気することにより、筐体2内に滞留し内壁等で凝縮する水蒸気を排除することができ、これにより、残留する水分の蒸発に費やしていた多くのエネルギを節減し、処理装置の熱効率を大幅に向上させることができる。
また、排気する水蒸気は、気体の状態でセラミックフィルタ11及びフィルタ6を順に通過させることができるため、排ガス中の有機物質や有害物質などの効率的な吸着処理を行うことが可能となる。
【0019】
この場合、排気管5の少なくとも筐体2からフィルタ6までの区間に、排気管5を保温し水蒸気を気体の状態で保持する保温機構51を設けることにより、水蒸気をすべて気体の状態でフィルタ6を通過させることができるため、フィルタ6への水分の付着を防止でき、より効率的な吸着処理を行うことが可能となる。
また、一般的な吸引装置4の場合には、吸引装置4の上流側に、水蒸気から水を分離する凝縮装置12を設けることにより、水蒸気から水分を回収して処理するとともに、吸引装置4の水分による影響を防止することができる。
【0020】
ところで、上記実施例においては、フィルタ6及びセラミックフィルタ11の2種類のフィルタを使用し、セラミックフィルタ11によって、まず排気中に含まれる粉塵を除去し、その後、フィルタ6によって、有機ハロゲン化合物等の有害物質を吸着するようにしたが、フィルタの構成はこれに限定されず、例えば、図3(a)に示す本発明のマイクロ波処理装置の第1変形実施例のように、筐体2の上部に設置したセラミックフィルタ11に、マイクロ波によって活性化されて有機ハロゲン化合物等の有害物質を分解する触媒を配することにより、粉塵の除去と、有機ハロゲン化合物等の有害物質の吸着、分解とを、1つのセラミックフィルタ11によって行うようにすることもできる。この場合、フィルタ6及び保温機構51は不要となる。
【0021】
また、上記実施例及び第1変形実施例においては、吸引装置4の上流側に、水蒸気から水を分離する凝縮装置12を設けることにより、耐水機能を有しない一般的な吸引装置4を使用できるようにしたが、例えば、上記実施例と同様、フィルタ6及びセラミックフィルタ11の2種類のフィルタを使用するが、凝縮装置12を設けない場合には、図3(b)に示す本発明のマイクロ波処理装置の第2変形実施例のように、吸引装置として、排気管5の管路出口側にノズル口を向けたジェットノズル式吸引装置4A(耐水機能を有する吸引装置の一例)を使用するようにする。
【0022】
以上、本発明のマイクロ波処理装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
また、本発明のマイクロ波処理装置は、コンパクトな構造のため、オンサイト処理が可能な可搬式設備として構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明のマイクロ波処理装置は、筐体内に滞留し内壁等で凝縮する水蒸気を排除することにより、残留する水分の蒸発に費やしていた多くのエネルギを節減し、熱効率を大幅に向上させることから、今後拡大することが見込まれる土壌や底質中のダイオキシン類をはじめとする無害化処理需要において、広く好適に使用することができる。
また、これら土壌や底質に限ることなく、含水率の高いその他の処理対象物に対しても、同様に広く好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のマイクロ波処理装置の一実施例を示す概要図である。
【図2】同処理装置による土壌処理を示すフロー図である。
【図3】本発明のマイクロ波処理装置の変形実施例を示す概要図である。
【符号の説明】
【0025】
1 マイクロ波処理装置
2 筐体
3 マイクロ波照射機構
31 マイクロ波発振機
32 冷却装置
33 攪拌装置
4 吸引装置
4A 吸引装置(ジェットノズル式吸引装置)
5 排気管
51 保温機構
6 フィルタ
7 搬入装置
8 搬出装置
9 薬剤サイロ
10 処理済土壌サイロ
11 セラミックフィルタ
12 凝縮装置
13 水処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ハロゲン化合物等の有害物質を含有する固体を導入する筐体と、該筐体内に導入した有害物質を含有する固体にマイクロ波を照射するマイクロ波照射機構とを備えた有機ハロゲン化合物等の有害物質を含有する固体の処理装置において、マイクロ波照射により固体から発生する水蒸気を強制排気する吸引装置を備えた排気管を設けるとともに、排気中に含まれる水蒸気を濾過し、有害物質を吸着するフィルタを設けたことを特徴とする有機ハロゲン化合物等の有害物質を含有する固体の処理装置。
【請求項2】
吸引装置の上流側に、水蒸気から水を分離する凝縮装置を設けたことを特徴とする請求項1記載の有機ハロゲン化合物等の有害物質を含有する固体の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−272536(P2008−272536A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196791(P2006−196791)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000229047)日本スピンドル製造株式会社 (328)
【Fターム(参考)】