説明

有機金属錯体、発光素子、発光装置、電子機器、および照明装置

【課題】青色の波長領域において燐光を発光することができ、かつ電流効率の向上が可能である新たな有機金属錯体であり、発光効率の高い発光素子、発光装置、電子機器、または照明装置の提供。
【解決手段】メタ−ビフェニルトリアゾール化合物を配位子とする有機金属錯体であり、下式(G1)で表される構造を含む有機金属錯体。


(但し、式中、R、Rは、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、Mは第9族元素を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、有機金属錯体に関する。特に、三重項励起状態を発光に変換できる有機金属錯体に関する。また、有機金属錯体を用いた発光素子、発光装置、電子機器、及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機化合物は、光を吸収することで励起状態となる。そして、この励起状態を経由することにより、種々の反応(光化学反応)を起こす場合や発光(ルミネッセンス)を生じる場合があり、様々な応用がなされている。
【0003】
光化学反応の一例として、一重項酸素の不飽和有機分子との反応(酸素付加)がある(例えば、非特許文献1参照)。酸素分子は基底状態が三重項状態であるため、一重項状態の酸素(一重項酸素)は直接の光励起では生成しない。しかしながら、他の三重項励起分子の存在下においては一重項酸素が生成し、酸素付加反応に至ることができる。この時、三重項励起分子を形成できる化合物は、光増感剤と呼ばれる。
【0004】
このように、一重項酸素を生成するためには、三重項励起分子を光励起により形成できる光増感剤が必要である。しかしながら、通常の有機化合物は基底状態が一重項状態であるため、三重項励起状態への光励起は禁制遷移となり、三重項励起分子は生じにくい。したがって、このような光増感剤としては、一重項励起状態から三重項励起状態への項間交差を起こしやすい化合物(あるいは、直接三重項励起状態へ光励起されるという禁制遷移を許容する化合物)が求められている。言い換えれば、そのような化合物は光増感剤としての利用が可能であり、有益と言える。
【0005】
また、そのような化合物は、しばしば燐光を放出することがある。燐光とは多重度の異なるエネルギー間の遷移によって生じる発光のことであり、通常の有機化合物では三重項励起状態から一重項基底状態へ戻る際に生じる発光のことをさす(これに対し、一重項励起状態から一重項基底状態へ戻る際の発光は、蛍光と呼ばれる)。燐光を放出できる化合物、すなわち三重項励起状態を発光に変換できる化合物(以下、燐光性化合物と称す)の応用分野としては、有機化合物を発光物質とする発光素子が挙げられる。
【0006】
この発光素子の構成は、電極間に発光物質である有機化合物を含む発光層を設けただけの単純な構造であり、薄型軽量・高速応答性・直流低電圧駆動などの特性から、次世代のフラットパネルディスプレイ素子として注目されている。また、この発光素子を用いたディスプレイは、コントラストや画質に優れ、視野角が広いという特徴も有している。
【0007】
有機化合物を発光物質とする発光素子の発光機構は、キャリア注入型である。すなわち、電極間に発光層を挟んで電圧を印加することにより、電極から注入された電子およびホールが再結合して発光物質が励起状態となり、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。そして、励起状態の種類としては、先に述べた光励起の場合と同様、一重項励起状態(S)と三重項励起状態(T)が可能である。また、発光素子におけるその統計的な生成比率は、S:T=1:3であると考えられている。
【0008】
一重項励起状態を発光に変換する化合物(以下、蛍光性化合物と称す)は室温において、三重項励起状態からの発光(燐光)は観測されず、一重項励起状態からの発光(蛍光)のみが観測される。したがって、蛍光性化合物を用いた発光素子における内部量子効率(注入したキャリアに対して発生するフォトンの割合)の理論的限界は、S:T=1:3であることを根拠に25%とされている。
【0009】
一方、上述した燐光性化合物を用いれば、内部量子効率は75〜100%にまで理論上は可能となる。つまり、蛍光性化合物に比べて3〜4倍の発光効率が可能となる。このような理由から、高効率な発光素子を実現するために、燐光性化合物を用いた発光素子の開発が近年盛んに行われている。特に、燐光性化合物としては、その燐光量子収率の高さゆえに、イリジウム等を中心金属とする有機金属錯体が注目されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−137872号公報
【特許文献2】特開2008−069221号公報
【特許文献3】国際公開第2008−035664号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した特許文献1乃至特許文献3において報告されているように、緑色や青色を示す燐光材料の開発が進んでいるが、発光材料としての観点から所望の視感度が得られる材料の開発も重要である。しかしながら、視感度を向上させようとする場合に発光材料としての他の特性を維持することは容易ではない。
【0012】
そこで、本発明の一態様では、視感度の向上が可能であり、かつ高い量子効率を保つことができる新規物質として、青色の波長領域において燐光発光を示すことができ、かつ電流効率の向上が可能である新たな有機金属錯体を提供する。また、本発明の一態様は、発光効率の高い発光素子、発光装置、電子機器、または照明装置を提供することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、メタ−ビフェニルトリアゾール化合物を配位子とする有機金属錯体である。従って、本発明の構成は、下記一般式(G1)で表される構造を含む有機金属錯体である。
【0014】
【化1】

【0015】
但し、式中、R、Rは、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、Mは第9族元素を表す。
【0016】
また、本発明の別の一態様は、下記一般式(G2)で表される有機金属錯体である。
【0017】
【化2】

【0018】
但し、式中、Lは、モノアニオン性の配位子を表す。また、R、Rは、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素を表す。
【0019】
また、一般式(G2)に示す有機金属錯体において、モノアニオン性の配位子は、ベータジケトン構造を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、カルボキシル基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、フェノール性水酸基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、又は2つの配位元素がいずれも窒素であるモノアニオン性の二座キレート配位子であることが好ましい。特に、ベータジケトン構造を有するモノアニオン性の二座キレート配位子が好ましい。
【0020】
なお、モノアニオン性の配位子としては、下記一般式(L1)乃至(L6)のいずれか一であることが好ましい。
【0021】
【化3】

【0022】
一般式(L1)〜(L6)において、R11〜R42は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン基、ビニル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のハロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルコキシ基、又は置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキルチオ基を表す。また、A〜Aは、それぞれ独立に、窒素、水素と結合するsp混成炭素、または炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン基、炭素数1〜4のハロアルキル基、もしくはフェニル基のいずれかと結合するsp混成炭素を表す。
【0023】
また、本発明の別の一態様は、下記一般式(G3)で表される有機金属錯体である。
【0024】
【化4】

【0025】
但し、式中、R、Rは、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素を表す。
【0026】
また、本発明の別の一態様は、下記構造式(100)で表される有機金属錯体である。
【0027】
【化5】

【0028】
また、本発明の別の一態様は、下記構造式(102)で表される有機金属錯体である。
【0029】
【化6】

【0030】
また、本発明の有機金属錯体は燐光を発光することができる、すなわち三重項励起エネルギーを発光に変換し、かつ発光を呈することが可能であるため、発光素子に適用することにより高効率化が可能となり、非常に有効である。したがって本発明は、本発明の有機金属錯体を用いた発光素子も含むものとする。
【0031】
また、本発明の一態様は、発光素子を有する発光装置だけでなく、発光装置を有する電子機器および照明装置も範疇に含めるものである。従って、本明細書中における発光装置とは、画像表示デバイス、発光デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、発光装置にコネクター、例えばFPC(Flexible printed circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または発光素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【発明の効果】
【0032】
本発明の一態様は、視感度の向上が可能であり、かつ高い量子効率を保つことができる新規物質として、青色の波長領域において燐光発光を示すことができ、かつ電流効率の向上が可能である新たな有機金属錯体を提供することができる。なお、新たな有機金属錯体を用いることにより、発光効率の高い発光素子、発光装置、電子機器、または照明装置を提供することができる。また、信頼性の高い発光素子、発光装置、電子機器、または照明装置を提供することができる。さらに、消費電力が低い発光素子、発光装置、電子機器、または照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】発光素子の構造について説明する図。
【図2】発光素子の構造について説明する図。
【図3】発光素子の構造について説明する図。
【図4】発光装置について説明する図。
【図5】発光装置について説明する図。
【図6】電子機器について説明する図。
【図7】電子機器について説明する図。
【図8】照明器具について説明する図。
【図9】構造式(100)に示す有機金属錯体の1H−NMRチャート。
【図10】構造式(100)に示す有機金属錯体の紫外・可視吸収スペクトル及び発光スペクトル。
【図11】構造式(102)に示す有機金属錯体の1H−NMRチャート。
【図12】構造式(102)に示す有機金属錯体の紫外・可視吸収スペクトル及び発光スペクトル。
【図13】発光素子について説明する図。
【図14】発光素子1の輝度−電流効率特性を示す図。
【図15】発光素子1の発光スペクトルを示す図。
【図16】発光素子2の輝度−電流効率特性を示す図。
【図17】発光素子2の発光スペクトルを示す図。
【図18】発光素子3の輝度−電流効率特性を示す図。
【図19】発光素子3の発光スペクトルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることが可能である。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0035】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である有機金属錯体について説明する。
【0036】
本発明の一態様である有機金属錯体は、メタ−ビフェニルトリアゾール化合物を配位子とする有機金属錯体である。なお、本実施の形態で説明するメタ−ビフェニルトリアゾール化合物を配位子とする有機金属錯体の一態様は、下記一般式(G1)で表される構造を含む有機金属錯体である。
【0037】
【化7】

【0038】
一般式(G1)において、R、Rは、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素を表す。
【0039】
ここで、R、Rにおける炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等があげられる。さらに、Mの具体例として、重原子効果の観点より、Ir(イリジウム)が好ましい。
【0040】
また、本発明の一態様は、下記一般式(G2)で表される有機金属錯体である。
【0041】
【化8】

【0042】
一般式(G2)において、Lは、モノアニオン性の配位子を表す。また、R、Rは、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素を表す。なお、R、R、およびMの具体例は、一般式(G1)と同様である。
【0043】
ここで、モノアニオン性の配位子であるLの具体例としては、ベータジケトン構造を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、カルボキシル基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、フェノール性水酸基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、又は2つの配位元素がいずれも窒素であるモノアニオン性の二座キレート配位子であることが好ましい。特に、ベータジケトン構造を有するモノアニオン性の二座キレート配位子が好ましい。ベータジケトン構造を有することで、有機金属錯体の有機溶媒への溶解性が高まり、精製が容易となり好ましい。また、ベータジケトン構造を有することで、発光効率の高い有機金属錯体を得ることができるため好ましい。また、ベータジケトン構造を有することで昇華性が高まり、蒸着性能に優れるという利点がある。
【0044】
また、モノアニオン性の配位子であるLの具体例としては、下記一般式(L1)乃至(L6)のいずれか一であることが好ましい。
【0045】
【化9】

【0046】
一般式(L1)〜(L6)において、R11〜R42は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン基、ビニル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のハロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルコキシ基、又は置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキルチオ基を表す。また、A〜Aは、それぞれ独立に、窒素、水素と結合するsp混成炭素、または炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン基、炭素数1〜4のハロアルキル基、もしくはフェニル基のいずれかと結合するsp混成炭素を表す。
【0047】
また、本発明の一態様は、下記一般式(G3)で表される有機金属錯体である。
【0048】
【化10】

【0049】
一般式(G3)において、R、Rは、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素を表す。なお、R、R、およびMの具体例は、一般式(G1)と同様である。
【0050】
次に、上述した本発明の一態様である有機金属錯体の具体的な構造式を示す。(下記構造式(100)〜(119)。)ただし、本発明はこれらに限定されることはない。
【0051】
【化11】

【0052】
【化12】

【0053】
【化13】

【0054】
【化14】

【0055】
なお、上記構造式(100)〜(119)で表される有機金属錯体は、燐光を発光することが可能な新規物質である。なお、これらの物質は、配位子の種類によっては幾何異性体と立体異性体が存在しうるが、本発明の有機金属錯体にはこれらの異性体も全て含まれる。
【0056】
次に、上記一般式(G3)表される有機金属錯体の合成方法の一例について説明する。
【0057】
≪一般式(G3)で表される構造を含む有機金属錯体の合成方法≫
<ステップ1;メタ−ビフェニルトリアゾール化合物の合成法>
まず、下記一般式(G0)で表されるメタ−ビフェニルトリアゾール化合物の合成法の一例について説明する。
【0058】
【化15】

【0059】
一般式(G0)中、R、Rは、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【0060】
下記スキーム(A−1)に示すように、N−アルキリデンアシルアミド化合物(A1)と、ヒドラジン化合物(A2)とを反応させることにより、メタ−ビフェニルトリアゾール化合物を得ることができる。なお、式中Zは閉環反応によって脱離する基(脱離基)を表し、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、シアノ基などが挙げられる。
【0061】
【化16】

【0062】
スキーム(A−1)において、R、Rは、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【0063】
ただし、メタ−ビフェニルトリアゾール化合物の合成法は、スキーム(A−1)のみに限定されるものではないたとえば、ハロゲン化ベンズアミドの反応により1H−1,2,4−トリアゾール環を形成した後、得られたハロゲン化物とフェニルボロン酸のカップリング反応を行う方法もある。
【0064】
以上のように、一般式(G0)で表されるメタ−ビフェニルトリアゾール化合物は、ごく簡便な合成スキームにより合成することができる。
【0065】
なお、上述の化合物(A1)、(A2)は、様々な種類が市販されているか、または合成可能である。たとえばN−アルキリデンアシルアミド化合物(A1)は、塩化アロイルとアルキルイミノエーテルを反応させることにより合成することができ、このときの脱離基Zはアルコキシル基である。このように、一般式(G0)で表されるメタ−ビフェニルトリアゾール化合物は数多くの種類を合成することができる。したがって、一般式(G3)で表される本発明の一態様の有機金属錯体は、その配位子のバリエーションが豊富であるという特徴を有する。そして、このように配位子のバリエーションが豊富な有機金属錯体を発光素子の作製の際に用いることにより、発光素子に求められる素子特性の微調整を容易に行うことができる。
【0066】
<ステップ2;メタ−ビフェニルトリアゾール化合物を配位子とするオルトメタル錯体の合成法>
下記合成スキーム(A−2)に示すように、ステップ1において上述の合成スキーム(A−1)で得られるメタ−ビフェニルトリアゾール化合物(G0)と、ハロゲンを含む第9族の金属化合物(塩化ロジウム水和物、塩化イリジウム水和物、ヘキサクロロイリジウム酸アンモニウム、または第9族の有機金属錯体化合物(アセチルアセトナト錯体、ジエチルスルフィド錯体等)とを混合した後、加熱することにより、一般式(G3)で表される構造を有する有機金属錯体を得ることができる。
【0067】
加熱手段としては特に限定はないが、オイルバス、サンドバス、又はアルミブロックを加熱手段として用いてもよい。また、マイクロ波を加熱手段として用いることも可能である。また、この加熱プロセスは、ステップ1で得られるメタ−ビフェニルトリアゾール化合物(G0)と、ハロゲンを含む第9族の金属化合物、または第9族の有機金属錯体化合物とをアルコール系溶媒(グリセロール、エチレングリコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等)に溶解した後に行ってもよい。
【0068】
【化17】

【0069】
スキーム(A−2)において、R、Rは、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素を表す。
【0070】
ただし、一般式(G3)で表される本発明の一態様の有機金属錯体の合成法は、スキーム(A−2)のみに限定されるものではない。たとえば、次のスキーム(B−1)に示すハロゲンで架橋した複核錯体(B)と一般式(G0)で表されるメタ−ビフェニルトリアゾール化合物を加熱する方法もある。このとき、反応を促進させるために、トリフルオロ酢酸銀やトリフルオロメチルスルホン酸銀などの銀塩を添加しても良い。
【0071】
次に、上記一般式(G2)表される構造を含む有機金属錯体の合成方法の一例について説明する。
【0072】
≪一般式(G2)で表される本発明の一態様の有機金属錯体の合成方法≫
<ステップ1;ハロゲンで架橋されたメタ−ビフェニルトリアゾール化合物を含む複核錯体の合成法>
まず、下記一般式(G2’)で表される複核錯体の合成法の一例について説明する。
【0073】
【化18】

【0074】
一般式(G2’)中、Xはハロゲンを表し、R、Rは、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素を表す。
【0075】
一般式(G2’)で表される複核錯体は、下記合成スキーム(B−1)により合成することができる。すなわち、一般式(G0)で表されるメタ−ビフェニルトリアゾール化合物と、ハロゲンを含む第9族の金属化合物(塩化ロジウム水和物、塩化イリジウム、臭化イリジウム、ヨウ化イリジウムなど)とを無溶媒、またはアルコール系溶媒(グリセロール、エチレングリコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノールなど)単独、あるいはアルコール系溶媒1種類以上と水との混合溶媒を用いて、不活性ガス雰囲気にて加熱することにより、ハロゲンで架橋された構造を有する有機金属錯体の一種であり、新規物質である複核錯体(G2’)を得ることができる。加熱手段として特に限定はなく、オイルバス、サンドバス、又はアルミブロックを用いてもよい。また、マイクロ波を加熱手段として用いることも可能である。
【0076】
【化19】

【0077】
合成スキーム(B−1)において、R、Rは、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、Xはハロゲンを表し、Mは中心金属であり、第9族元素を表す。
【0078】
<ステップ2;メタ−ビフェニルトリアゾール化合物を配位子とするオルトメタル錯体の合成法>
【0079】
下記合成スキーム(B−2)に示すように、ステップ1において上述の合成スキーム(B−1)で得られる複核錯体(G2’)と、モノアニオン性の配位子の原料HLとを、不活性ガス雰囲気にて反応させることにより、HLのプロトンが脱離してLが中心金属Mに配位し、一般式(G2)で表される本発明の一態様である有機金属錯体が得られる。加熱手段として特に限定はなく、オイルバス、サンドバス、又はアルミブロックを用いてもよい。また、マイクロ波を加熱手段として用いることも可能である。
【0080】
【化20】

【0081】
合成スキーム(B−2)において、Lはモノアニオン性の二座配位子を表し、R、Rは、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、Xはハロゲンを表し、Mは中心金属であり、第9族元素を表す。
【0082】
なお、モノアニオン性の二座配位子としては、ベータジケトン構造を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、カルボキシル基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、フェノール性水酸基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、2つの配位元素がいずれも窒素であるモノアニオン性の二座キレート配位子などがあるが、具体例としては、下記構造式(L1)乃至(L6)で表される配位子が挙げられる。
【0083】
【化21】

【0084】
構造式(L1)乃至(L6)において、R11〜R42は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン基、ビニル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のハロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルコキシ基、又は置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキルチオ基を表す。また、A〜Aは、それぞれ独立に、窒素、水素と結合するsp混成炭素、または炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン基、炭素数1〜4のハロアルキル基、もしくはフェニル基のいずれかと結合するsp混成炭素を表す。
【0085】
以上、本発明の一態様である有機金属錯体の合成方法の一例について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、他のどのような合成方法によって合成されても良い。
【0086】
なお、上述した本発明の一態様である有機金属錯体は、燐光を発光することが可能であるため、発光材料や発光素子の発光物質として利用できる。
【0087】
また、本発明の一態様である有機金属錯体を用いることで、発光効率の高い発光素子、発光装置、電子機器、または照明装置を実現することができる。また、消費電力が低い発光素子、発光装置、電子機器、または照明装置を実現することができる。
【0088】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0089】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様として実施の形態1で示した有機金属錯体を発光層に用いた発光素子について図1を用いて説明する。
【0090】
本実施の形態に示す発光素子は、図1に示すように一対の電極(第1の電極(陽極)101と第2の電極(陰極)103)間に発光層113を含むEL層102が挟まれており、EL層102は、発光層113の他に、正孔(または、ホール)注入層111、正孔(または、ホール)輸送層112、電子輸送層114、電子注入層115、電荷発生層(E)116などを含んで形成される。
【0091】
このような発光素子に対して電圧を印加することにより、第1の電極101側から注入された正孔と第2の電極103側から注入された電子とが、発光層113において再結合し、有機金属錯体を励起状態にする。そして、励起状態の有機金属錯体が基底状態に戻る際に発光する。このように、本発明の一態様において有機金属錯体は、発光素子における発光物質として機能する。
【0092】
なお、EL層102における正孔注入層111は、正孔輸送性の高い物質とアクセプター性物質を含む層であり、アクセプター性物質によって正孔輸送性の高い物質から電子が引き抜かれることにより正孔(ホール)が発生する。従って、正孔注入層111から正孔輸送層112を介して発光層113に正孔が注入される。
【0093】
また、電荷発生層(E)116は、正孔輸送性の高い物質とアクセプター性物質を含む層である。アクセプター性物質によって正孔輸送性の高い物質から電子が引き抜かれるため、引き抜かれた電子が、電子注入性を有する電子注入層115から電子輸送層114を介して発光層113に注入される。
【0094】
以下に本実施の形態に示す発光素子を作製する上での具体例について説明する。
【0095】
第1の電極(陽極)101および第2の電極(陰極)103には、金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。具体的には、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO:Indium Zinc Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)の他、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLi)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金、その他グラフェン等を用いることができる。なお、第1の電極(陽極)101および第2の電極(陰極)103は、例えばスパッタリング法や蒸着法(真空蒸着法を含む)等により形成することができる。
【0096】
正孔注入層111、正孔輸送層112、および電荷発生層(E)116に用いる正孔輸送性の高い物質としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα−NPD)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等が挙げられる。その他、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル−9−アントラセニル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)等のカルバゾール誘導体、等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。
【0097】
さらに、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)などの高分子化合物を用いることもできる。
【0098】
また、正孔注入層111および電荷発生層(E)116に用いるアクセプター性物質としては、遷移金属酸化物や元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化モリブデンが特に好ましい。
【0099】
発光層113は、実施の形態1で示した有機金属錯体を発光物質となるゲスト材料として含み、この有機金属錯体よりも三重項励起エネルギーの大きい物質をホスト材料として用いて形成される層である。
【0100】
また、上記有機金属錯体を分散状態にするために用いる物質(すなわちホスト材料)としては、例えば、2,3−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)キノキサリン(略称:TPAQn)、NPBのようなアリールアミン骨格を有する化合物の他、CBP、4,4’,4’’−トリ(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)等のカルバゾール誘導体や、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ピリジナト]亜鉛(略称:Znpp)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)等の金属錯体が好ましい。また、PVKのような高分子化合物を用いることもできる。
【0101】
なお、発光層113において、上述した有機金属錯体(ゲスト材料)とホスト材料とを含んで形成することにより、発光層113からは、発光効率の高い燐光発光を得ることができる。
【0102】
電子輸送層114は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送層114には、Alq、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、BAlq、Zn(BOX)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などの金属錯体を用いることができる。また、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、4,4’−ビス(5−メチルベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベン(略称:BzOs)などの複素芳香族化合物も用いることができる。また、ポリ(2,5−ピリジン−ジイル)(略称:PPy)、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(ピリジン−3,5−ジイル)](略称:PF−Py)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,2’−ビピリジン−6,6’−ジイル)](略称:PF−BPy)のような高分子化合物を用いることもできる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層として用いてもよい。
【0103】
また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0104】
電子注入層115は、電子注入性の高い物質を含む層である。第5の層115には、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)、リチウム酸化物(LiOx)等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウム(ErF)のような希土類金属化合物を用いることができる。また、上述した電子輸送層114を構成する物質を用いることもできる。
【0105】
あるいは、電子注入層115に、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発生するため、電子注入性および電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電子輸送層114を構成する物質(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができる。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的には、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物)、カルシウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることもできる。
【0106】
なお、上述した正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115、電荷発生層(E)116は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法等の方法で形成することができる。
【0107】
上述した発光素子は、第1の電極101および第2の電極103との間に生じた電位差により電流が流れ、EL層102において正孔と電子とが再結合することにより発光する。そして、この発光は、第1の電極101および第2の電極103のいずれか一方または両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極101および第2の電極103のいずれか一方、または両方が透光性を有する電極となる。
【0108】
以上により説明した発光素子は、有機金属錯体に基づく燐光発光が得られることから、蛍光性化合物を用いた発光素子に比べて、高効率な発光素子を実現することができる。
【0109】
なお、本実施の形態で示した発光素子は、本発明の一態様である有機金属錯体を適用して作製される発光素子の一例である。また、上記発光素子を備えた発光装置の構成としては、パッシブマトリクス型の発光装置やアクティブマトリクス型の発光装置の他、別の実施の形態で説明する上記とは別の構造を有する発光素子を備えたマイクロキャビティー構造の発光装置などを作製することができ、これらは、いずれも本発明に含まれるものとする。
【0110】
なお、アクティブマトリクス型の発光装置の場合において、TFTの構造は、特に限定されない。例えば、スタガ型や逆スタガ型のTFTを適宜用いることができる。また、TFT基板に形成される駆動用回路についても、N型およびP型のTFTからなるものでもよいし、N型のTFTまたはP型のTFTのいずれか一方のみからなるものであってもよい。さらに、TFTに用いられる半導体膜の結晶性についても特に限定されない。例えば、非晶質半導体膜、結晶性半導体膜、その他、酸化物半導体膜等を用いることができる。
【0111】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができるものとする。
【0112】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様として、燐光性有機金属イリジウム錯体に加え、他の2種類以上の有機化合物を発光層に用いた発光素子について説明する。
【0113】
本実施の形態に示す発光素子は、図2に示すように一対の電極(陽極201及び陰極202)間にEL層203を有する構造である。なお、EL層203には、少なくとも発光層204を有し、その他、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層(E)などが含まれていても良い。なお、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層(E)には、実施の形態1に示した物質を用いることができる。
【0114】
本実施の形態に示す発光層204には、実施の形態1に示した燐光性有機金属イリジウム錯体を用いた燐光性化合物205、第1の有機化合物206、および第2の有機化合物207が含まれている。なお、燐光性化合物205は、発光層204におけるゲスト材料である。また、第1の有機化合物206、および第2の有機化合物207のうち発光層204に含まれる割合の多い方を発光層204におけるホスト材料とする。
【0115】
発光層204において、上記ゲスト材料をホスト材料に分散させた構成とすることにより、発光層の結晶化を抑制することができる。また、ゲスト材料の濃度が高いことによる濃度消光を抑制し、発光素子の発光効率を高くすることができる。
【0116】
なお、第1の有機化合物206及び第2の有機化合物207のそれぞれの三重項励起エネルギーの準位(T1準位)は、燐光性化合物205のT1準位よりも高いことが好ましい。第1の有機化合物206(又は第2の有機化合物207)のT1準位が燐光性化合物205のT1準位よりも低いと、発光に寄与する燐光性化合物205の三重項励起エネルギーを第1の有機化合物206(又は第2の有機化合物207)が消光(クエンチ)してしまい、発光効率の低下を招くためである。
【0117】
ここで、ホスト材料からゲスト材料へのエネルギー移動効率を高めるため、分子間の移動機構として知られているフェルスター機構(双極子−双極子相互作用)およびデクスター機構(電子交換相互作用)を考慮した上で、ホスト材料の発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光スペクトル)とゲスト材料の吸収スペクトル(より詳細には、最も長波長(低エネルギー)側の吸収帯におけるスペクトル)との重なりが大きくなることが好ましい。しかしながら通常、ホスト材料の蛍光スペクトルを、ゲスト材料の最も長波長(低エネルギー)側の吸収帯における吸収スペクトルと重ねることは困難である。なぜならば、そのようにしてしまうと、ホスト材料の燐光スペクトルは蛍光スペクトルよりも長波長(低エネルギー)側に位置するため、ホスト材料のT1準位が燐光性化合物のT1準位を下回ってしまい、上述したクエンチの問題が生じてしまうからである。一方、クエンチの問題を回避するため、ホスト材料のT1準位が燐光性化合物のT1準位を上回るように設計すると、今度はホスト材料の蛍光スペクトルが短波長(高エネルギー)側にシフトするため、その蛍光スペクトルはゲスト材料の最も長波長(低エネルギー)側の吸収帯における吸収スペクトルと重ならなくなる。したがって、ホスト材料の蛍光スペクトルをゲスト材料の最も長波長(低エネルギー)側の吸収帯における吸収スペクトルと重ね、ホスト材料の一重項励起状態からのエネルギー移動を最大限に高めることは、通常困難である。
【0118】
そこで本実施形態においては、第1の有機化合物および第2の有機化合物は、励起錯体を形成する組み合わせであることが好ましい。この場合、発光層204におけるキャリア(電子及びホール)の再結合の際に第1の有機化合物206と第2の有機化合物207は、励起錯体(エキサイプレックスとも言う)を形成する。これにより、発光層204において、第1の有機化合物206の蛍光スペクトルおよび第2の有機化合物207の蛍光スペクトルは、より長波長側に位置する励起錯体の発光スペクトルに変換される。そして、励起錯体の発光スペクトルとゲスト材料の吸収スペクトルとの重なりが大きくなるように、第1の有機化合物と第2の有機化合物を選択すれば、一重項励起状態からのエネルギー移動を最大限に高めることができる。なお、三重項励起状態に関しても、ホスト材料ではなく励起錯体からのエネルギー移動が生じると考えられる。
【0119】
燐光性化合物205としては、実施の形態1で示した燐光性有機金属イリジウム錯体を用いる。また、第1の有機化合物206及び第2の有機化合物207としては、励起錯体を生じる組み合わせであればよいが、電子を受け取りやすい化合物(電子トラップ性化合物)と、ホールを受け取りやすい化合物(正孔トラップ性化合物)とを組み合わせることが好ましい。
【0120】
電子を受け取りやすい化合物としては、例えば、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq−II)、2−[4−(3,6−ジフェニル−9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2CzPDBq−III)、7−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:7mDBTPDBq−II)、及び、6−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:6mDBTPDBq−II)が挙げられる。
【0121】
ホールを受け取りやすい化合物としては、例えば、4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)、4,4’,4’’−トリス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:1’−TNATA)、2,7−ビス[N−(ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]−スピロ−9,9’−ビフルオレン(略称:DPA2SF)、N,N’−ビス(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンゼン−1,3−ジアミン(略称:PCA2B)、(9,9−ジメチル−2−ジフェニルアミノ−9H−フルオレン−7−イル)−ジフェニルアミン(略称:DPNF)、N,N’,N’’−トリフェニル−N,N’,N’’−トリス(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−ベンゼン−1,3,5−トリアミン(略称:PCA3B)、2−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−スピロ−9,9’−ビフルオレン(略称:PCASF)、2−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]−スピロ−9,9’−ビフルオレン(略称:DPASF)、N,N’−ビス[4−(カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニル−9,9−ジメチルフルオレン−2,7−ジアミン(略称:YGA2F)、4,4−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(TPD)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−[9,9−ジメチル−2−{フェニル−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)}−アミノ−9H−フルオレン−7−イル]−フェニルアミン(略称:DFLADFL)、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA1)、3,6−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA2)、4,4’−ビス(N−{4−[N’−(3−メチルフェニル)−N’−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、3,6−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−(1−ナフチル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzTPN2)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)が挙げられる。
【0122】
上述した第1の有機化合物206及び第2の有機化合物207は、これらに限定されることなく、励起錯体を形成できる組み合わせであり、励起錯体の発光スペクトルが、燐光性化合物205の吸収スペクトルと重なり、励起錯体の発光スペクトルのピークが、燐光性化合物205の吸収スペクトルのピークよりも長波長であればよい。
【0123】
なお、電子を受け取りやすい化合物とホールを受け取りやすい化合物で第1の有機化合物206と第2の有機化合物207を構成する場合、その混合比によってキャリアバランスを制御することができる。具体的には、第1の有機化合物:第2の有機化合物=1:9〜9:1の範囲が好ましい。
【0124】
本実施の形態で示した発光素子は、励起錯体の発光スペクトルと燐光性化合物の吸収スペクトルとの重なりを利用したエネルギー移動により、エネルギー移動効率を高めることができるため、外部量子効率の高い発光素子を実現することができる。
【0125】
なお、本発明に含まれる別の構成として、燐光性化合物205(ゲスト材料)の他の2種類の有機化合物として、正孔トラップ性のホスト分子、および電子トラップ性のホスト分子を用いて発光層204を形成し、2種類のホスト分子中に存在するゲスト分子に正孔と電子を導いて、ゲスト分子を励起状態とする現象(すなわち、Guest Coupled with Comprimentary Hosts:GCCH)が得られるように発光層204を形成する構成も可能である。
【0126】
この時、正孔トラップ性のホスト分子、および電子トラップ性のホスト分子としては、それぞれ、上述した正孔を受け取りやすい化合物、および電子を受け取りやすい化合物を用いることができる。
【0127】
なお、本実施の形態で示した発光素子は、発光素子の構造の一例であるが、本発明の一態様である発光装置には、他の実施の形態で示す別の構造の発光素子を適用することもできる。また、上記発光素子を備えた発光装置の構成としては、パッシブマトリクス型の発光装置やアクティブマトリクス型の発光装置の他、別の実施の形態で説明する上記とは別の構造を有する発光素子を備えたマイクロキャビティー構造の発光装置などを作製することができ、これらは、いずれも本発明に含まれるものとする。
【0128】
なお、アクティブマトリクス型の発光装置の場合において、TFTの構造は、特に限定されない。例えば、スタガ型や逆スタガ型のTFTを適宜用いることができる。また、TFT基板に形成される駆動用回路についても、N型およびP型のTFTからなるものでもよいし、N型のTFTまたはP型のTFTのいずれか一方のみからなるものであってもよい。さらに、TFTに用いられる半導体膜の結晶性についても特に限定されない。例えば、非晶質半導体膜、結晶性半導体膜、その他、酸化物半導体膜等を用いることができる。
【0129】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができるものとする。
【0130】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様として、電荷発生層を挟んでEL層を複数有する構造の発光素子(以下、タンデム型発光素子という)について説明する。
【0131】
本実施の形態に示す発光素子は、図3(A)に示すように一対の電極(第1の電極301および第2の電極304)間に、複数のEL層(第1のEL層302(1)、第2のEL層302(2))を有するタンデム型発光素子である。
【0132】
本実施の形態において、第1の電極301は、陽極として機能する電極であり、第2の電極304は陰極として機能する電極である。なお、第1の電極301および第2の電極304は、実施の形態1と同様な構成を用いることができる。また、複数のEL層(第1のEL層302(1)、第2のEL層302(2))は、実施の形態1または実施の形態2で示したEL層と同様な構成であっても良いが、いずれかが同様の構成であっても良い。すなわち、第1のEL層302(1)と第2のEL層302(2)は、同じ構成であっても異なる構成であってもよく、その構成は実施の形態1または実施の形態2と同様なものを適用することができる。
【0133】
また、複数のEL層(第1のEL層302(1)、第2のEL層302(2))の間には、電荷発生層(I)305が設けられている。電荷発生層(I)305は、第1の電極301と第2の電極304に電圧を印加したときに、一方のEL層に電子を注入し、他方のEL層に正孔を注入する機能を有する。本実施の形態の場合には、第1の電極301に第2の電極304よりも電位が高くなるように電圧を印加すると、電荷発生層(I)305から第1のEL層302(1)に電子が注入され、第2のEL層302(2)に正孔が注入される。
【0134】
なお、電荷発生層(I)305は、光の取り出し効率の点から、可視光に対して透光性を有する(具体的には、電荷発生層(I)305に対する可視光の透過率が、40%以上)ことが好ましい。また、電荷発生層(I)305は、第1の電極301や第2の電極304よりも低い導電率であっても機能する。
【0135】
電荷発生層(I)305は、正孔輸送性の高い有機化合物に電子受容体(アクセプター)が添加された構成であっても、電子輸送性の高い有機化合物に電子供与体(ドナー)が添加された構成であってもよい。また、これらの両方の構成が積層されていても良い。
【0136】
正孔輸送性の高い有機化合物に電子受容体が添加された構成とする場合において、正孔輸送性の高い有機化合物としては、例えば、NPBやTPD、TDATA、MTDATA、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い有機化合物であれば、上記以外の物質を用いても構わない。
【0137】
また、電子受容体としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F4−TCNQ)、クロラニル等を挙げることができる。また、遷移金属酸化物を挙げることができる。また元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0138】
一方、電子輸送性の高い有機化合物に電子供与体が添加された構成とする場合において、電子輸送性の高い有機化合物としては、例えば、Alq、Almq、BeBq、BAlqなど、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等を用いることができる。また、この他、Zn(BOX)、Zn(BTZ)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、PBDやOXD−7、TAZ、BPhen、BCPなども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い有機化合物であれば、上記以外の物質を用いても構わない。
【0139】
また、電子供与体としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属または希土類金属または元素周期表における第13族に属する金属およびその酸化物、炭酸塩を用いることができる。具体的には、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、イッテルビウム(Yb)、インジウム(In)、酸化リチウム、炭酸セシウムなどを用いることが好ましい。また、テトラチアナフタセンのような有機化合物を電子供与体として用いてもよい。
【0140】
なお、上述した材料を用いて電荷発生層(I)305を形成することにより、EL層が積層された場合における駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0141】
本実施の形態では、EL層を2層有する発光素子について説明したが、図3(B)に示すように、n層(ただし、nは、3以上)のEL層を積層した発光素子についても、同様に適用することが可能である。本実施の形態に係る発光素子のように、一対の電極間に複数のEL層を有する場合、EL層とEL層との間に電荷発生層(I)を配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度領域での長寿命素子を実現できる。また、照明を応用例とした場合は、電極材料の抵抗による電圧降下を小さくできるので、大面積での均一発光が可能となる。また、低電圧駆動が可能で消費電力が低い発光装置を実現することができる。
【0142】
また、それぞれのEL層の発光色を異なるものにすることで、発光素子全体として、所望の色の発光を得ることができる。例えば、2つのEL層を有する発光素子において、第1のEL層の発光色と第2のEL層の発光色を補色の関係になるようにすることで、発光素子全体として白色発光する発光素子を得ることも可能である。なお、補色とは、混合すると無彩色になる色同士の関係をいう。つまり、補色の関係にある色を発光する物質から得られた光と混合すると、白色発光を得ることができる。
【0143】
また、3つのEL層を有する発光素子の場合でも同様であり、例えば、第1のEL層の発光色が赤色であり、第2のEL層の発光色が緑色であり、第3のEL層の発光色が青色である場合、発光素子全体としては、白色発光を得ることができる。
【0144】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0145】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様である燐光発光に基づく発光装置として、燐光性有機金属イリジウム錯体を用いた発光装置について説明する。
【0146】
本実施の形態に示す発光装置は、一対の電極間での光の共振効果を利用した微小光共振器(マイクロキャビティー)構造を有しており、図4に示す様に一対の電極(反射電極401及び半透過・半反射電極402)間に少なくともEL層405を有する構造である発光素子を複数、有している。また、EL層405は、少なくとも発光領域となる発光層404を有し、その他、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層(E)などが含まれていても良い。なお、発光層404には、本発明の一態様である燐光性有機金属イリジウム錯体が含まれている。
【0147】
本実施の形態では、図4に示すように構造の異なる発光素子(第1の発光素子(R)410R、第2の発光素子(G)410G、第3の発光素子(B)410B)を有して構成される発光装置について説明する。
【0148】
第1の発光素子(R)410Rは、反射電極401上に第1の透明導電層403aと、第1の発光層(B)404B、第2の発光層(G)404G、第3の発光層(R)404Rを一部に含むEL層405と、半透過・半反射電極402とが順次積層された構造を有する。また、第2の発光素子(G)410Gは、反射電極401上に第2の透明導電層403bと、EL層405と、半透過・半反射電極402とが順次積層された構造を有する。また、第3の発光素子(B)410Bは、反射電極401上にEL層405と、半透過・半反射電極402とが順次積層された構造を有する。
【0149】
なお、上記発光素子(第1の発光素子(R)410R、第2の発光素子(G)410G、第3の発光素子(B)410B)において、反射電極401、EL層405、半透過・半反射電極402は共通である。また、第1の発光層(B)404Bでは、420nm以上480nm以下の波長領域にピークをもつ光(λ)を発光させ、第2の発光層(G)404Gでは、500nm以上550nm以下の波長領域にピークを持つ光(λ)を発光させ、第3の発光層(R)404Rでは、600nm以上760nm以下の波長領域にピークを持つ光(λ)を発光させる。これにより、いずれの発光素子(第1の発光素子(R)410R、第2の発光素子(G)410G、第3の発光素子(B)410B)でも、第1の発光層(B)404B、第2の発光層(G)404G、および第3の発光層(R)404Rからの発光が重ね合わされた、すなわち可視光領域に渡るブロードな光を発光させることができる。なお、上記より、波長の長さは、λ<λ<λなる関係であるとする。
【0150】
本実施の形態に示す各発光素子は、それぞれ反射電極401と半透過・半反射電極402との間にEL層405を挟んでなる構造を有しており、EL層405に含まれる各発光層から全方向に射出される発光は、微小光共振器(マイクロキャビティー)としての機能を有する反射電極401と半透過・半反射電極402とによって共振される。なお、反射電極401は、反射性を有する導電性材料により形成され、その膜に対する可視光の反射率が40%〜100%、好ましくは70%〜100%であり、かつその抵抗率が1×10−2Ωcm以下の膜であるとする。また、半透過・半反射電極402は、反射性を有する導電性材料と光透過性を有する導電性材料とにより形成され、その膜に対する可視光の反射率が20%〜80%、好ましくは40%〜70%であり、かつその抵抗率が1×10−2Ωcm以下の膜であるとする。
【0151】
また、本実施の形態では、各発光素子で、第1の発光素子(R)410Rと第2の発光素子(G)410Gにそれぞれ設けられた透明導電層(第1の透明導電層403a、第2の透明導電層403b)の厚みを変えることにより、発光素子毎に反射電極401と半透過・半反射電極402の間の光学距離を変えている。つまり、各発光素子の各発光層から発光するブロードな光は、反射電極401と半透過・半反射電極402との間において、共振する波長の光を強め、共振しない波長の光を減衰させることができるため、素子毎に反射電極401と半透過・半反射電極402の間の光学距離を変えることにより、異なる波長の光を取り出すことができる。
【0152】
なお、第1の発光素子(R)410Rでは、反射電極401から半透過・半反射電極402までの総厚をmλ/2(ただし、mは自然数)、第2の発光素子(G)410Gでは、反射電極401から半透過・半反射電極402までの総厚をmλ/2(ただし、mは自然数)、第3の発光素子(B)410Bでは、反射電極401から半透過・半反射電極402までの総厚をmλ/2(ただし、mは自然数)としている。
【0153】
以上より、第1の発光素子(R)410Rからは、主としてEL層405に含まれる第3の発光層(R)404Rで発光した光(λ)が取り出され、第2の発光素子(G)410Gからは、主としてEL層405に含まれる第2の発光層(G)404Gで発光した光(λ)が取り出され、第3の発光素子(B)410Bからは、主としてEL層405に含まれる第1の発光層(B)404Bで発光した光(λ)が取り出される。なお、各発光素子から取り出される光は、半透過・半反射電極402側からそれぞれ射出される。
【0154】
また、上記構成において、反射電極401から半透過・半反射電極402までの総厚は、厳密には反射電極401における反射領域から半透過・半反射電極402における反射領域までの総厚ということができる。しかし、反射電極401や半透過・半反射電極402における反射領域の位置を厳密に決定することは困難であるため、反射電極401と半透過・半反射電極402の任意の位置を反射領域と仮定することで充分に上述の効果を得ることができるものとする。
【0155】
次に、第1の発光素子(R)410Rにおいて、反射電極401から第3の発光層(R)404Rへの光学距離を所望の膜厚((2m’+1)λ/4(ただし、m’は自然数))に調節することにより、第3の発光層(R)404Rからの発光を増幅させることができる。第3の発光層(R)404Rからの発光のうち、反射電極401によって反射されて戻ってきた光(第1の反射光)は、第3の発光層(R)404Rから半透過・半反射電極402に直接入射する光(第1の入射光)と干渉を起こすため、反射電極401から第3の発光層(R)404Rへの光学距離を所望の値((2m’+1)λ/4(ただし、m’は自然数))に調節して設けることにより、第1の反射光と第1の入射光との位相を合わせ、第3の発光層(R)404Rからの発光を増幅させることができる。
【0156】
なお、反射電極401と第3の発光層(R)404Rとの光学距離とは、厳密には反射電極401における反射領域と第3の発光層(R)404Rにおける発光領域との光学距離ということができる。しかし、反射電極401における反射領域や第3の発光層(R)404Rにおける発光領域の位置を厳密に決定することは困難であるため、第3の発光層(R)404Rの任意の位置を発光領域と仮定することで充分に上述の効果を得ることができるものとする。
【0157】
次に、第2の発光素子(G)410Gにおいて、反射電極401から第2の発光層(2)404Gへの光学距離を所望の膜厚((2m’’+1)λ/4(ただし、m’’は自然数))に調節することにより、第2の発光層(G)404Gからの発光を増幅させることができる。第2の発光層(G)404Gからの発光のうち、反射電極401によって反射されて戻ってきた光(第2の反射光)は、第2の発光層(G)404Gから半透過・半反射電極402に直接入射する光(第2の入射光)と干渉を起こすため、反射電極401から第2の発光層(G)404Gへの光学距離を所望の値((2m’’+1)λ/4(ただし、m’’は自然数))に調節して設けることにより、第2の反射光と第2の入射光との位相を合わせ、第2の発光層(G)404Gからの発光を増幅させることができる。
【0158】
なお、反射電極401と第2の発光層(G)404Gとの光学距離とは、厳密には反射電極401における反射領域と第2の発光層(G)404Gにおける発光領域との光学距離ということができる。しかし、反射電極401における反射領域や第2の発光層(G)404Gにおける発光領域の位置を厳密に決定することは困難であるため、反射電極401の任意の位置を反射領域、第2の発光層(G)404Gの任意の位置を発光領域と仮定することで充分に上述の効果を得ることができるものとする。
【0159】
次に、第3の発光素子(B)410Bにおいて、反射電極401から第1の発光層(B)404Bへの光学距離を所望の膜厚((2m’’’+1)λ/4(ただし、m’’’は自然数))に調節することにより、第1の発光層(B)404Bからの発光を増幅させることができる。第1の発光層(B)404Bからの発光のうち、反射電極401によって反射されて戻ってきた光(第3の反射光)は、第1の発光層(B)404Bから半透過・半反射電極402に直接入射する光(第3の入射光)と干渉を起こすため、反射電極401から第1の発光層(B)404Bへの光学距離を所望の値((2m’’’+1)λ/4(ただし、m’’’は自然数))に調節して設けることにより、第3の反射光と第3の入射光との位相を合わせ、第1の発光層(B)404Bからの発光を増幅させることができる。
【0160】
なお、第3の発光素子において、反射電極401と第1の発光層(B)404Bとの光学距離とは、厳密には反射電極401における反射領域と第1の発光層(B)404Bにおける発光領域との光学距離ということができる。しかし、反射電極401における反射領域や第1の発光層(B)404Bにおける発光領域の位置を厳密に決定することは困難であるため、反射電極401の任意の位置を反射領域、第1の発光層(B)404Bの任意の位置を発光領域と仮定することで充分に上述の効果を得ることができるものとする。
【0161】
なお、上記構成において、いずれの発光素子もEL層に複数の発光層を有する構造を有しているが、本発明はこれに限られることはなく、例えば、実施の形態4で説明したタンデム型発光素子の構成と組み合わせて、一つの発光素子に電荷発生層を挟んで複数のEL層を設け、それぞれのEL層に単数もしくは複数の発光層を形成する構成としてもよい。
【0162】
本実施の形態で示した発光装置は、マイクロキャビティー構造を有しており、同じEL層を有していても発光素子ごとに異なる波長の光を取り出すことができるためRGBの塗り分けが不要となる。従って、高精細化を実現することが容易であるなどの理由からフルカラー化を実現する上で有利である。また、特定波長の正面方向の発光強度を強めることが可能となるため、低消費電力化を図ることができる。この構成は、3色以上の画素を用いたカラーディスプレイ(画像表示装置)に適用する場合に、特に有用であるが、照明などの用途に用いても良い。
【0163】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様である有機金属錯体を発光層に用いた発光素子を有する発光装置について説明する。
【0164】
また、上記発光装置は、パッシブマトリクス型の発光装置でもアクティブマトリクス型の発光装置でもよい。なお、本実施の形態に示す発光装置には、他の実施形態で説明した発光素子を適用することが可能である。
【0165】
本実施の形態では、アクティブマトリクス型の発光装置について図5を用いて説明する。
【0166】
なお、図5(A)は発光装置を示す上面図であり、図5(B)は図5(A)を鎖線A−A’で切断した断面図である。本実施の形態に係るアクティブマトリクス型の発光装置は、素子基板501上に設けられた画素部502と、駆動回路部(ソース線駆動回路)503と、駆動回路部(ゲート線駆動回路)504と、を有する。画素部502、駆動回路部503、及び駆動回路部504は、シール材505によって、素子基板501と封止基板506との間に封止されている。
【0167】
また、素子基板501上には、駆動回路部503、及び駆動回路部504に外部からの信号(例えば、ビデオ信号、クロック信号、スタート信号、又はリセット信号等)や電位を伝達する外部入力端子を接続するための引き回し配線507が設けられる。ここでは、外部入力端子としてFPC(フレキシブルプリントサーキット)508を設ける例を示している。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0168】
次に、断面構造について図5(B)を用いて説明する。素子基板501上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、ソース線駆動回路である駆動回路部503と、画素部502が示されている。
【0169】
駆動回路部503はnチャネル型TFT509とpチャネル型TFT510とを組み合わせたCMOS回路が形成される例を示している。なお、駆動回路部を形成する回路は、種々のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバー一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、基板上ではなく外部に駆動回路を形成することもできる。
【0170】
また、画素部502はスイッチング用TFT511と、電流制御用TFT512と電流制御用TFT512の配線(ソース電極又はドレイン電極)に電気的に接続された第1の電極(陽極)513とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極(陽極)513の端部を覆って絶縁物514が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂を用いることにより形成する。
【0171】
また、上層に積層形成される膜の被覆性を良好なものとするため、絶縁物514の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにするのが好ましい。例えば、絶縁物514の材料としてポジ型の感光性アクリル樹脂を用いた場合、絶縁物514の上端部に曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物514として、感光性の光によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができ、有機化合物に限らず無機化合物、例えば、酸化シリコン、酸窒化シリコン等、の両者を使用することができる。
【0172】
第1の電極(陽極)513上には、EL層515及び第2の電極(陰極)516が積層形成されている。EL層515は、少なくとも発光層が設けられており、発光層には、本発明の一態様である有機金属錯体が含まれている。また、EL層515には、発光層の他に正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層等を適宜設けることができる。
【0173】
なお、第1の電極(陽極)513、EL層515及び第2の電極(陰極)516との積層構造で、発光素子517が形成されている。第1の電極(陽極)513、EL層515及び第2の電極(陰極)516の用いる材料としては、実施の形態1に示す材料を用いることができる。また、ここでは図示しないが、第2の電極(陰極)516は外部入力端子であるFPC508に電気的に接続されている。
【0174】
また、図5(B)に示す断面図では発光素子517を1つのみ図示しているが、画素部502において、複数の発光素子がマトリクス状に配置されているものとする。画素部502には、3種類(R、G、B)の発光が得られる発光素子をそれぞれ選択的に形成し、フルカラー表示可能な発光装置を形成することができる。また、カラーフィルタと組み合わせることによってフルカラー表示可能な発光装置としてもよい。
【0175】
さらに、シール材505で封止基板506を素子基板501と貼り合わせることにより、素子基板501、封止基板506、およびシール材505で囲まれた空間518に発光素子517が備えられた構造になっている。なお、空間518には、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材505で充填される構成も含むものとする。
【0176】
なお、シール材505にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板506に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0177】
以上のようにして、アクティブマトリクス型の発光装置を得ることができる。
【0178】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成を適宜組み合わせて用いることができる。
【0179】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様である有機金属錯体を適用して作製された発光装置を用いて完成させた様々な電子機器の一例について、図6、図7を用いて説明する。
【0180】
発光装置を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を図6に示す。
【0181】
図6(A)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置7100は、筐体7101に表示部7103が組み込まれている。表示部7103により、映像を表示することが可能であり、発光装置を表示部7103に用いることができる。また、ここでは、スタンド7105により筐体7101を支持した構成を示している。
【0182】
テレビジョン装置7100の操作は、筐体7101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機7110により行うことができる。リモコン操作機7110が備える操作キー7109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部7103に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機7110に、当該リモコン操作機7110から出力する情報を表示する表示部7107を設ける構成としてもよい。
【0183】
なお、テレビジョン装置7100は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線又は無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)又は双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0184】
図6(B)はコンピュータであり、本体7201、筐体7202、表示部7203、キーボード7204、外部接続ポート7205、ポインティングデバイス7206等を含む。なお、コンピュータは、発光装置をその表示部7203に用いることにより作製される。
【0185】
図6(C)は携帯型遊技機であり、筐体7301と筐体7302の2つの筐体で構成されており、連結部7303により、開閉可能に連結されている。筐体7301には表示部7304が組み込まれ、筐体7302には表示部7305が組み込まれている。また、図6(C)に示す携帯型遊技機は、その他、スピーカ部7306、記録媒体挿入部7307、LEDランプ7308、入力手段(操作キー7309、接続端子7310、センサ7311(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン7312)等を備えている。もちろん、携帯型遊技機の構成は上述のものに限定されず、少なくとも表示部7304および表示部7305の両方、又は一方に発光装置を用いていればよく、その他付属設備が適宜設けられた構成とすることができる。図6(C)に示す携帯型遊技機は、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して表示部に表示する機能や、他の携帯型遊技機と無線通信を行って情報を共有する機能を有する。なお、図6(C)に示す携帯型遊技機が有する機能はこれに限定されず、様々な機能を有することができる。
【0186】
図6(D)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、発光装置を表示部7402に用いることにより作製される。
【0187】
図6(D)に示す携帯電話機7400は、表示部7402を指などで触れることで、情報を入力することができる。また、電話を掛ける、或いはメールを作成するなどの操作は、表示部7402を指などで触れることにより行うことができる。
【0188】
表示部7402の画面は主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
【0189】
例えば、電話を掛ける、或いはメールを作成する場合は、表示部7402を文字の入力を主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合、表示部7402の画面のほとんどにキーボード又は番号ボタンを表示させることが好ましい。
【0190】
また、携帯電話機7400内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、携帯電話機7400の向き(縦か横か)を判断して、表示部7402の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0191】
また、画面モードの切り替えは、表示部7402を触れること、又は筐体7401の操作ボタン7403の操作により行われる。また、表示部7402に表示される画像の種類によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
【0192】
また、入力モードにおいて、表示部7402の光センサで検出される信号を検知し、表示部7402のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モードから表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0193】
表示部7402は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部7402に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部に近赤外光を発光するバックライト又は近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0194】
図7(A)及び図7(B)は2つ折り可能なタブレット型端末である。図7(A)は、開いた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、表示部9631a、表示部9631b、表示モード切り替えスイッチ9034、電源スイッチ9035、省電力モード切り替えスイッチ9036、留め具9033、操作スイッチ9038、を有する。なお、当該タブレット端末は、発光装置を表示部9631a、表示部9631bの一方又は両方に用いることにより作製される。
【0195】
表示部9631aは、一部をタッチパネルの領域9632aとすることができ、表示された操作キー9637にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部9631aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領域がタッチパネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部9631aの全ての領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部9631aの全面をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部9631bを表示画面として用いることができる。
【0196】
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一部をタッチパネルの領域9632bとすることができる。また、タッチパネルのキーボード表示切り替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれることで表示部9631bにキーボードボタン表示することができる。
【0197】
また、タッチパネルの領域9632aとタッチパネルの領域9632bに対して同時にタッチ入力することもできる。
【0198】
また、表示モード切り替えスイッチ9034は、縦表示または横表示などの表示の向きを切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替えスイッチ9036は、タブレット型端末に内蔵している光センサで検出される使用時の外光の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光センサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置を内蔵させてもよい。
【0199】
また、図7(A)では表示部9631bと表示部9631aの表示面積が同じ例を示しているが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表示の品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネルとしてもよい。
【0200】
図7(B)は、閉じた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、太陽電池9633、充放電制御回路9634、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636を有する。なお、図7(B)では充放電制御回路9634の一例としてバッテリー9635、DCDCコンバータ9636を有する構成について示している。
【0201】
なお、タブレット型端末は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630を閉じた状態にすることができる。従って、表示部9631a、表示部9631bを保護できるため、耐久性に優れ、長期使用の観点からも信頼性の優れたタブレット型端末を提供できる。
【0202】
また、この他にも図7(A)及び図7(B)に示したタブレット型端末は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作又は編集するタッチ入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。
【0203】
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル、表示部、または映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は、筐体9630の一面または二面に効率的なバッテリー9635の充電を行う構成とすることができるため好適である。なおバッテリー9635としては、リチウムイオン電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
【0204】
また、図7(B)に示す充放電制御回路9634の構成、及び動作について図7(C)にブロック図を示し説明する。図7(C)には、太陽電池9633、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9638、スイッチSW1乃至SW3、表示部9631について示しており、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9638、スイッチSW1乃至SW3が、図7(B)に示す充放電制御回路9634に対応する箇所となる。
【0205】
まず外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。太陽電池で発電した電力は、バッテリー9635を充電するための電圧となるようDCDCコンバータ9636で昇圧または降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ9638で表示部9631に必要な電圧に昇圧または降圧をすることとなる。また、表示部9631での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにしてバッテリー9635の充電を行う構成とすればよい。
【0206】
なお太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段によるバッテリー9635の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を送受信して充電する無接点電力電送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う構成としてもよい。
【0207】
また、上記実施の形態で説明した表示部を具備していれば、図7に示した電子機器に特に限定されないことは言うまでもない。
【0208】
以上のようにして、本発明の一態様である発光装置を適用して電子機器を得ることができる。発光装置の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。
【0209】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0210】
(実施の形態8)
本実施の形態では、本発明の一態様である有機金属錯体を含む発光装置を適用した照明装置の一例について、図8を用いて説明する。
【0211】
図8は、発光装置を室内の照明装置8001として用いた例である。なお、発光装置は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置を形成することもできる。その他、曲面を有する筐体を用いることで、発光領域が曲面を有する照明装置8002を形成することもできる。本実施の形態で示す発光装置に含まれる発光素子は薄膜状であり、筐体のデザインの自由度が高い。したがって、様々な意匠を凝らした照明装置を形成することができる。さらに、室内の壁面に大型の照明装置8003を備えても良い。
【0212】
また、発光装置をテーブルの表面に用いることによりテーブルとしての機能を備えた照明装置8004とすることができる。なお、その他の家具の一部に発光装置を用いることにより、家具としての機能を備えた照明装置とすることができる。
【0213】
以上のように、発光装置を適用した様々な照明装置が得られる。なお、これらの照明装置は本発明の一態様に含まれるものとする。
【0214】
また、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例1】
【0215】
≪合成例1≫
本実施例では、実施の形態1の構造式(100)で表される本発明の一態様である有機金属錯体、トリス[5−(5−ビフェニル)−1,3−ジメチル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(M5btz1−Me)])の合成方法について説明する。なお、[Ir(M5btz1−Me)](略称)の構造を以下に示す。
【0216】
【化22】

【0217】
<ステップ1;N−(1−エトキシエチリデン)−3−ブロモベンズアミドの合成>
まず、アセトイミド酸エチル塩酸塩10g、トルエン150mL、トリエチルアミン(EtN)18gを500mL三ツ口フラスコに入れ、室温で10分間撹拌した。所定時間経過後、この混合物に3−ブロモベンゾイルクロリド18gとトルエン30mLの混合溶液を50mL滴下ロートより滴下し、室温で48時間撹拌した。この反応混合物を吸引ろ過し、ろ液を濃縮してN−(1−エトキシエチリデン)−3−ブロモベンズアミドを得た(黄色油状物、収率88%)。ステップ1の合成スキームを下記(a−1)に示す。
【0218】
【化23】

【0219】
<ステップ2;5−(3−ブロモフェニル)−1,3−ジメチル−1H−1,2,4−トリアゾールの合成>
次に、メチルヒドラジン硫酸塩11g、四塩化炭素100mLを300mLの三ツ口フラスコに入れ、この混合物にトリエチルアミン(EtN)16mLを少量ずつ滴下し、室温で1時間撹拌した。所定時間経過後、上記ステップ1で得たN−(1−エトキシエチリデン)−3−ブロモベンズアミド19gを加え、60℃で8時間加熱撹拌した。反応終了後、得られた反応溶液に水を加え、水層をクロロホルムで抽出した。得られた抽出溶液と有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄し、有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。得られた混合物を自然濾過し、ろ液を濃縮して油状物を得た。この油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒には、まずジクロロメタン:酢酸エチル=99:1(v/v)の混合溶媒を用い、次いでジクロロメタン:酢酸エチル=1:1(v/v)の混合溶媒を用いた。得られたフラクションを濃縮して油状物を得た。この油状物にジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒を加えたところ、固体が析出した。この固体を吸引ろ過し、ろ液を濃縮して5−(3−ブロモフェニル)−1,3−ジメチル−1H−1,2,4−トリアゾールを得た。ステップ2の合成スキームを下記(a−2)に示す。
【0220】
【化24】

【0221】
<ステップ3;5−(3−ビフェニル)−1,3−ジメチル−1H−1,2,4−トリアゾールの合成(略称:HM3btz1−Me)の合成>
次に、上記ステップ3で得られた5−(3−ブロモフェニル)−1,3−ジメチル−1H−1,2,4−トリアゾール6.7g、フェニルボロン酸3.3g、トリ(オルト−トリル)ホスフィン0.24g、トルエン80mL、エタノール15mL、2M炭酸カリウム水溶液27mLを200mLの三ツ口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に酢酸パラジウム(II)0.058gを加え、80℃で10時間加熱撹拌した。得られた反応混合物の水層をトルエンで抽出し、得られた抽出溶液と有機層を合わせて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した。有機層に無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、得られた混合物をろ過し、ろ液を濃縮して油状物を得た。得られた油状物の核磁気共鳴分光法(H−NMR)による構造分析を行ったところ、未反応のブロモ体が含まれていることがわかった。
【0222】
そこで、さらにフェニルボロン酸0.28g、トリ(オルト−トリル)ホスフィン21mg、トルエン50mL、エタノール7mL、2M炭酸カリウム水溶液2.3mLを加え、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に酢酸パラジウム(II)5mgを加え、80℃で10時間加熱撹拌した。得られた反応混合物の水層をトルエンで抽出し、得られた抽出溶液と有機層を合わせて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した。有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、得られた混合物をろ過し、ろ液を濃縮して油状物を得た。この油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒にはトルエン:酢酸エチル1:1(v/v)の混合溶媒を用いた。得られたフラクションを濃縮して5−(3−ビフェニル)−1,3−ジメチル−1H−1,2,4−トリアゾールの合成(略称:HM3btz1−Me)を得た(淡黄色油状物、収率76%)。ステップ3の合成スキームを下記(a−3)に示す。
【0223】
【化25】

【0224】
<ステップ4;ジ−μ−クロロ−ビス{ビス[5−(5−ビフェニル)−1,3−ジメチル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)}(略称:[Ir(M5btz1−Me)Cl])の合成>
次に、上記ステップ3で得た配位子HM3btz1−Me1.5g、塩化イリジウム水和物0.86g、2−エトキシエタノール15mL、水5mLを50mLナスフラスコに入れ、フラスコ内をアルゴン置換した。この反応容器に、100℃、100Wの条件でマイクロ波を1時間照射し、反応させた。所定時間経過後、反応混合物を減圧下にて濃縮し、残渣をエタノールで洗浄して、複核錯体[Ir(M5btz1−Me)Cl]を得た(黄色粉末、収率77%)。ステップ4の合成スキームを下記(a−4)に示す。
【0225】
【化26】

【0226】
<ステップ5;トリス[5−(5−ビフェニル)−1,3−ジメチル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(M5btz1−Me)])の合成>
次に、上記ステップ4で得た複核錯体[Ir(M5btz1−Me)Cl]1.5g、上記ステップ3で得た配位子HM3btz1−Me3.5g、トリフルオロメタンスルホン酸銀(TfOAg)1.1gを三方コックと冷却管をつけた反応容器に入れ、窒素雰囲気下、165℃で42時間加熱撹拌した。得られた反応混合物をジクロロメタンで洗浄し、吸引ろ過して不溶固体を除去した。得られたろ液を濃縮し、残渣をエタノールで洗浄して本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(M5btz1−Me)]を得た(黄色粉末、収率61%)。ステップ5の合成スキームを下記(a−5)に示す。
【0227】
【化27】

【0228】
なお、上記ステップ5で得られた黄色粉末の核磁気共鳴分光法(H−NMR)による分析結果を下記に示す。また、H−NMRチャートを図9に示す。この結果から、本合成例1において、上述の構造式(100)で表される本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(M5btz1−Me)](略称)が得られたことがわかった。
【0229】
H−NMR.δ(CDCl):1.81(s,9H),4.25(s,9H),6.83(d,3H),7.11(dd,3H),7.25−7.30(m,3H),7.40(t,6H)7.58(d,6H),7.75(d,3H).
【0230】
次に、[Ir(M5btz1−Me)]のジクロロメタン溶液の紫外可視吸収スペクトル(以下、単に「吸収スペクトル」という)及び発光スペクトルを測定した。吸収スペクトルの測定には、紫外可視分光光度計((株)日本分光製 V550型)を用い、ジクロロメタン溶液(0.080mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。また、発光スペクトルの測定には、蛍光光度計((株)浜松ホトニクス製 FS920)を用い、脱気したジクロロメタン溶液(0.080mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。得られた吸収スペクトル及び発光スペクトルの測定結果を図10に示す。横軸は波長、縦軸は吸収強度および発光強度を表す。また、図10において2本の実線が示されているが、細い実線は吸収スペクトルを示し、太い実線は発光スペクトルを示している。なお、図10に示す吸収スペクトルは、ジクロロメタン溶液(0.080mmol/L)を石英セルに入れて測定した吸収スペクトルから、ジクロロメタンのみを石英セルに入れて測定した吸収スペクトルを差し引いた結果を示している。
【0231】
図10に示すとおり、本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(M5btz1−Me)]は、470nmに発光ピークを有しており、ジクロロメタン溶液からは青色の発光が観測された。
【実施例2】
【0232】
≪合成例2≫
本実施例では、実施の形態1の構造式(102)で表される本発明の一態様である有機金属錯体、トリス[5−(5−ビフェニル)−1−メチル−3−プロピル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Pr5btz1−Me)])の合成方法について説明する。なお、[Ir(Pr5btz1−Me)](略称)の構造を以下に示す。
【0233】
【化28】

【0234】
<ステップ1;N−(1−エトキシブチリデン)−3−ブロモベンズアミドの合成>
まず、ブタンイミド酸エチル塩酸塩15g、トルエン200mL、トリエチルアミン(EtN)25gを500mL三ツ口フラスコに入れ、10分間撹拌した。この混合物に3−ブロモベンゾイルクロリド22gとトルエン30mLの混合溶液を滴下し、室温で24時間撹拌した。所定時間経過後、得られた反応混合物を吸引濾過し、ろ液を得た。得られたろ液を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。得られた混合物を自然濾過し、ろ液を濃縮してN−(1−エトキシブチリデン)−3−ブロモベンズアミドを得た(淡黄色油状物、収率88%)。ステップ1の合成スキームを下記(b−1)に示す。
【0235】
【化29】

【0236】
<ステップ2;5−(3−ブロモフェニル)−1−メチル−3−プロピル−1H−1,2,4−トリアゾールの合成>
次に、メチルヒドラジン硫酸塩7.2g、四塩化炭素150mL、トリエチルアミン(EtN)35mLを500mL三ツ口フラスコに入れ、室温で1時間撹拌した。所定時間経過後、この混合物に上記ステップ1で得たN−(1−エトキシブチリデン)−3−ブロモベンズアミド10gを加えて60℃で11.5時間加熱撹拌した。撹拌後、反応溶液に水を加え、水層をクロロホルムで抽出した。得られた抽出溶液と有機層とを合わせて飽和食塩水で洗浄した。この有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、得られた混合物を自然濾過し、ろ液を濃縮して油状物を得た。得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒には、ジクロロメタンを用いた。得られたフラクションを濃縮して5−(3−ブロモフェニル)−1−メチル−3−プロピル−1H−1,2,4−トリアゾールを得た(黄色油状物、収率50%)。ステップ2の合成スキームを下記(b−2)に示す。
【0237】
【化30】

【0238】
<ステップ3;5−(3−ビフェニル)−1−メチル−3−プロピル−1H−1,2,4−トリアゾール(略称:HPr3btz1−mp)の合成>
次に、上記ステップ2で得た5−(3−ブロモフェニル)−1−メチル−3−プロピル−1H−1,2,4−トリアゾール4.6g、フェニルボロン酸2.0g、トリ(オルト−トリル)ホスフィン150mg、トルエン45mL、エタノール7mL、2M炭酸カリウム水溶液17mLを200mLの三ツ口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に酢酸パラジウム(II)38mgを加え、80℃で10時間加熱撹拌した。得られた反応溶液の水層と有機層を分液し、水層をトルエンで抽出した。得られた抽出溶液と有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、次いで飽和食塩水で洗浄した。洗浄後、有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。得られた混合物を自然ろ過し、ろ液を濃縮して油状物を得た。得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒には、酢酸エチル:ヘキサン=1:2(v/v)の混合溶媒を用いた。得られたフラクションを濃縮して5−(3−ビフェニル)−1−メチル−3−プロピル−1H−1,2,4−トリアゾール(略称:HPr3btz1−mp)を得た(黄色油状物、収率95%)。ステップ3の合成スキームを下記(b−3)に示す。
【0239】
【化31】

【0240】
<ステップ4;ジ−μ−クロロ−ビス{ビス[5−(5−ビフェニル)−1−メチル−3−プロピル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)}(略称:[Ir(Pr5btz1−Me)Cl])の合成>
次に、50mLナスフラスコに上記ステップ3で得た配位子HPr3btz1−mp0.40g、塩化イリジウム水和物0.21g(0.69mmol)、2−エトキシエタノール12mL、水4mLを入れ、フラスコ内をアルゴン置換した。この反応容器にマイクロ波を30分間照射することで加熱し反応させた。反応後、反応溶液に水を加え、この混合物をジクロロメタンで抽出した。得られた抽出溶液を水で洗浄し、有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。この混合物を自然ろ過し、ろ液を濃縮して複核錯体[Ir(Pr5btz1−Me)Cl]を得た(黄色油状物、収率100%)。ステップ4の合成スキームを下記(b−4)に示す。
【0241】
【化32】

【0242】
<ステップ5;トリス[5−(5−ビフェニル)−1−メチル−3−プロピル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Pr5btz1−Me)])の合成>
次に、上記ステップ4で得た複核錯体[Ir(Pr5btz1−Me)Cl]0.610g、上記ステップ3で得た配位子HPr3btz1−mp1.6g、トリフルオロメタンスルホン酸銀(TfOAg)0.40gを三方コックと冷却管をつけた反応容器に入れ、窒素雰囲気下、165℃で52時間加熱撹拌した。得られた反応混合物を、ジクロロメタンに溶解し不溶固体を除去した。得られたろ液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒には、ジクロロメタン:酢酸エチル=10:1の混合溶媒を用いた。
得られたフラクションを濃縮して固体を得た。この固体をジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒にて再結晶して本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(M5btz1−Me)]を得た(黄色粉末、収率12%)。ステップ5の合成スキームを下記(b−5)に示す。
【0243】
【化33】

【0244】
なお、上記ステップ5で得られた黄色粉末の核磁気共鳴分光法(H−NMR)による分析結果を下記に示す。また、H−NMRチャートを図11に示す。この結果から、本合成例1において、上述の構造式(103)で表される本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(Pr5btz1−Me)](略称)が得られたことがわかった。
【0245】
H−NMR.δ(CDCl):0.71(t,9H),1.13−1.26(m,3H),1.33−1.45(m,3H),1.88−1.98(m,3H),2.19−2.29(m,3H),4.26(s,9H),6.79(d,3H),7.08(dd,3H),7.24−7.30(m,3H),7.40(t,6H)7.59(d,6H),7.74(d,3H).
【0246】
次に、[Ir(Pr5btz1−Me)]のジクロロメタン溶液の紫外可視吸収スペクトル(以下、単に「吸収スペクトル」という)及び発光スペクトルを測定した。吸収スペクトルの測定には、紫外可視分光光度計((株)日本分光製 V550型)を用い、ジクロロメタン溶液(0.097mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。また、発光スペクトルの測定には、蛍光光度計((株)浜松ホトニクス製 FS920)を用い、脱気したジクロロメタン溶液(0.097mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。得られた吸収スペクトル及び発光スペクトルの測定結果を図12に示す。横軸は波長、縦軸は吸収強度および発光強度を表す。また、図12において2本の実線が示されているが、細い実線は吸収スペクトルを示し、太い実線は発光スペクトルを示している。なお、図12に示す吸収スペクトルは、ジクロロメタン溶液(0.097mmol/L)を石英セルに入れて測定した吸収スペクトルから、ジクロロメタンのみを石英セルに入れて測定した吸収スペクトルを差し引いた結果を示している。
【0247】
図12に示すとおり、本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(Pr5btz1−Me)]は、471nmに発光ピークを有しており、ジクロロメタン溶液からは青色の発光が観測された。
【実施例3】
【0248】
本実施例では、燐光性有機金属イリジウム錯体[Ir(M5btz1−Me)](略称)(構造式(100))を発光層に用いた発光素子について図13を用いて説明する。なお、本実施例で用いる材料の化学式を以下に示す。
【0249】
【化34】

【0250】
≪発光素子1および比較発光素子の作製≫
まず、ガラス製の基板1100上に酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法により成膜し、陽極として機能する第1の電極1101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0251】
次に、基板1100上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0252】
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板1100を30分程度放冷した。
【0253】
次に、第1の電極1101が形成された面が下方となるように、基板1100を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定した。本実施例では、真空蒸着法により、EL層1102を構成する正孔注入層1111、正孔輸送層1112、発光層1113、電子輸送層1114、電子注入層1115が順次形成される場合について説明する。
【0254】
真空装置内を10−4Paに減圧した後、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)と酸化モリブデン(VI)とを、CBP(略称):酸化モリブデン(VI)=4:2(質量比)となるように共蒸着することにより、第1の電極1101上に正孔注入層1111を形成した。膜厚は60nmとした。なお、共蒸着とは、異なる複数の物質をそれぞれ異なる蒸発源から同時に蒸発させる蒸着法である。
【0255】
次に、1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)を20nm蒸着することにより、正孔輸送層1112を形成した。なお、ここまでの作製は、発光素子1、および比較発光素子のいずれも共通である。
【0256】
次に、正孔輸送層1112上に発光層1113を形成した。まず、発光素子1は、1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、トリス[5−(5−ビフェニル)−1,3−ジメチル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(M5btz1−Me)])を、mCP(略称):[Ir(M5btz1−Me)](略称)=1:0.08(質量比)となるように共蒸着した。なお、膜厚は、30nmとした。次に、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm−II)、[Ir(M5btz1−Me)](略称)を、mDBTBIm−II(略称):[Ir(M5btz1−Me)](略称)=1:0.08(質量比)となるように共蒸着し、膜厚を10nmとした。以上により、積層構造を有する発光層1113を形成した。また、比較発光素子は、1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、トリス(1,3−ジメチル−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz1−Me)])を、mCP(略称):[Ir(Mptz1−Me)](略称)=1:0.08(質量比)となるように共蒸着した。なお、膜厚は、30nmとした。次に、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm−II)、[Ir(Mptz1−Me)](略称)を、mDBTBIm−II(略称):[Ir(Mptz1−Me)](略称)=1:0.08(質量比)となるように共蒸着し、膜厚を10nmとした。以上により、積層構造を有する発光層1113を形成した。
【0257】
次に、発光層1113上にバソフェナントロリン(略称:Bphen)を15nm蒸着することにより、電子輸送層1114を形成した。さらに電子輸送層1114上にフッ化リチウムを1nm蒸着することにより、電子注入層1115を形成した。
【0258】
最後に、電子注入層1115上にアルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着し、陰極となる第2の電極1103形成し、発光素子を得た。なお、上述した蒸着過程において、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。
【0259】
以上により得られた発光素子1および比較発光素子の素子構造を表1に示す。
【0260】
【表1】

【0261】
また、作製した発光素子1および比較発光素子は、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子1および比較発光素子が大気に曝されないように封止した。
【0262】
≪発光素子1および比較発光素子の動作特性≫
作製した発光素子1および比較発光素子の動作特性について測定した。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0263】
まず、発光素子の輝度−電流効率特性を図14に示す。なお、図14において、縦軸は電流効率(cd/A)、横軸は輝度(cd/m)を表す。
【0264】
図14より、本発明の一態様である燐光性有機金属イリジウム錯体[Ir(M5btz1−Me)](略称)を発光層の一部に用いた発光素子1は、高効率な素子であることがわかった。また、1000cd/m付近における発光素子の主な初期特性値を以下の表2に示す。
【0265】
【表2】

【0266】
上記結果から、本実施例で作製した発光素子1は、高輝度であり、高い電流効率を示していることが分かる。さらに、色純度に関しては、純度の良い青色発光を示すことが分かる。
【0267】
また、発光素子1に2.5mA/cmの電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを、図15に示す。図15に示す通り、発光素子1の発光スペクトルは468nmにピークを有しており、燐光性有機金属イリジウム錯体[Ir(M5btz1−Me)](略称)の発光に由来していることが示唆される。
【実施例4】
【0268】
本実施例では、燐光性有機金属イリジウム錯体[Ir(Pr5btz1−Me)](略称)(構造式(103))を発光層に用いた発光素子2について説明する。なお、本実施例における発光素子2の説明には、実施例1で発光素子1及び比較発光素子の説明に用いた図13を用いることとする。なお、本実施例で用いる材料の化学式を以下に示す。
【0269】
【化35】

【0270】
≪発光素子2の作製≫
まず、ガラス製の基板1100上に酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法により成膜し、陽極として機能する第1の電極1101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0271】
次に、基板1100上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0272】
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板1100を30分程度放冷した。
【0273】
次に、第1の電極1101が形成された面が下方となるように、基板1100を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定した。本実施例では、真空蒸着法により、EL層1102を構成する正孔注入層1111、正孔輸送層1112、発光層1113、電子輸送層1114、電子注入層1115が順次形成される場合について説明する。
【0274】
真空装置内を10−4Paに減圧した後、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)と酸化モリブデン(VI)とを、CBP(略称):酸化モリブデン(VI)=4:2(質量比)となるように共蒸着することにより、第1の電極1101上に正孔注入層1111を形成した。膜厚は60nmとした。なお、共蒸着とは、異なる複数の物質をそれぞれ異なる蒸発源から同時に蒸発させる蒸着法である。
【0275】
次に、4,4’−ビス(9−カルバゾール)−2,2’−ジメチル−ビフェニル(略称:dmCBP)を20nm蒸着することにより、正孔輸送層1112を形成した。
【0276】
次に、正孔輸送層1112上に発光層1113を形成した。まず、4,4’−ビス(9−カルバゾール)−2,2’−ジメチル−ビフェニル(略称:dmCBP)、トリス[5−(5−ビフェニル)−1−メチル−3−プロピル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Pr5btz1−Me)])を、dmCBP(略称):[Ir(Pr5btz1−Me)](略称)=1:0.08(質量比)となるように共蒸着した。なお、膜厚は、30nmとした。次に、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm−II)、[Ir(Pr5btz1−Me)](略称)を、mDBTBIm−II(略称):[Ir(Pr5btz1−Me)](略称)=1:0.08(質量比)となるように共蒸着し、膜厚を10nmとした。以上により、積層構造を有する発光層1113を形成した。
【0277】
次に、発光層1113上にバソフェナントロリン(略称:Bphen)を15nm蒸着することにより、電子輸送層1114を形成した。さらに電子輸送層1114上に、フッ化リチウムを1nm蒸着することにより、電子注入層1115を形成した。
【0278】
最後に、電子注入層1115上にアルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着し、陰極となる第2の電極1103形成し、発光素子2を得た。なお、上述した蒸着過程において、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。
【0279】
以上により得られた発光素子2の素子構造を表3に示す。
【0280】
【表3】

【0281】
また、作製した発光素子2は、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子2が大気に曝されないように封止した。
【0282】
≪発光素子2の動作特性≫
作製した発光素子2の動作特性について測定した。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0283】
まず、発光素子2の輝度−電流効率特性を図16に示す。なお、図16において、縦軸は電流効率(cd/A)、横軸は輝度(cd/m)を表す。
【0284】
図16より、本発明の一態様である燐光性有機金属イリジウム錯体[Ir(Pr5btz1−Me)](略称)を発光層の一部に用いた発光素子2は、高効率な素子であることがわかった。また、1000cd/m付近における発光素子の主な初期特性値を以下の表4に示す。
【0285】
【表4】

【0286】
上記結果から、本実施例で作製した発光素子2は、高輝度であり、高い電流効率を示していることが分かる。さらに、色純度に関しては、純度の良い青色発光を示すことが分かる。
【0287】
また、発光素子2に2.5mA/cmの電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを、図17に示す。図17に示す通り、発光素子2の発光スペクトルは465nmにピークを有しており、燐光性有機金属イリジウム錯体[Ir(Pr5btz1−Me)](略称)の発光に由来していることが示唆される。
【実施例5】
【0288】
本実施例では、燐光性有機金属イリジウム錯体[Ir(Pr5btz1−Me)](略称)(構造式(103))を発光層に用いた発光素子3について説明する。なお、本実施例における発光素子3の説明には、実施例1で発光素子1および比較発光素子の説明に用いた図13を用いることとする。なお、本実施例で用いる材料の化学式を以下に示す。
【0289】
【化36】

【0290】
≪発光素子3の作製≫
まず、ガラス製の基板1100上に酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法により成膜し、陽極として機能する第1の電極1101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0291】
次に、基板1100上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0292】
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板1100を30分程度放冷した。
【0293】
次に、第1の電極1101が形成された面が下方となるように、基板1100を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定した。本実施例では、真空蒸着法により、EL層1102を構成する正孔注入層1111、正孔輸送層1112、発光層1113、電子輸送層1114、電子注入層1115が順次形成される場合について説明する。
【0294】
真空装置内を10−4Paに減圧した後、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)と酸化モリブデン(VI)とを、CBP(略称):酸化モリブデン(VI)=4:2(質量比)となるように共蒸着することにより、第1の電極1101上に正孔注入層1111を形成した。膜厚は60nmとした。なお、共蒸着とは、異なる複数の物質をそれぞれ異なる蒸発源から同時に蒸発させる蒸着法である。
【0295】
次に、1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)を20nm蒸着することにより、正孔輸送層1112を形成した。
【0296】
次に、正孔輸送層1112上に発光層1113を形成した。まず、1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、トリス[5−(5−ビフェニル)−1−メチル−3−プロピル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Pr5btz1−Me)])を、mCP(略称):[Ir(Pr5btz1−Me)](略称)=1:0.08(質量比)となるように共蒸着した。なお、膜厚は、30nmとした。次に、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm−II)、[Ir(Pr5btz1−Me)](略称)を、mDBTBIm−II(略称):[Ir(Pr5btz1−Me)](略称)=1:0.08(質量比)となるように共蒸着し、膜厚を10nmとした。以上により、積層構造を有する発光層1113を形成した。
【0297】
次に、発光層1113上にバソフェナントロリン(略称:Bphen)を15nm蒸着することにより、電子輸送層1114を形成した。さらに電子輸送層1114上にフッ化リチウムを1nm蒸着することにより、電子注入層1115を形成した。
【0298】
最後に、電子注入層1115上にアルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着し、陰極となる第2の電極1103形成し、発光素子3を得た。なお、上述した蒸着過程において、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。
【0299】
以上により得られた発光素子3の素子構造を表5に示す。
【0300】
【表5】

【0301】
また、作製した発光素子3は、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子3が大気に曝されないように封止した。
【0302】
≪発光素子3の動作特性≫
作製した発光素子3の動作特性について測定した。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0303】
まず、発光素子3の輝度−電流効率特性を図18に示す。なお、図18において、縦軸は電流効率(cd/A)、横軸は輝度(cd/m)を表す。
【0304】
図18より、本発明の一態様である燐光性有機金属イリジウム錯体[Ir(Pr5btz1−Me)](略称)を発光層の一部に用いた発光素子3は、高効率な素子であることがわかった。
また、1000cd/m付近における発光素子3の主な初期特性値を以下の表6に示す。
【0305】
【表6】

【0306】
上記結果から、本実施例で作製した発光素子3は、高い外部量子効率を示しているので、高い発光効率を示すことが分かる。さらに、色純度に関しては、純度の良い青色発光を示すことが分かる。
【0307】
また、発光素子3に2.5mA/cmの電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを、図19に示す。図19に示す通り、発光素子3の発光スペクトルは468nmにピークを有しており、燐光性有機金属イリジウム錯体[Ir(Pr5btz1−Me)](略称)の発光に由来していることが示唆される。
【0308】
(参考例1)
上記実施例3で用いた下記構造式(200)に示されるトリス(1,3−ジメチル−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz1−Me)])の合成方法の一例について説明する。なお、[Ir(Mptz1−Me)]の構造を以下に示す。
【0309】
【化37】

【0310】
<ステップ1;N−(1−エトキシエチリデン)ベンズアミドの合成>
まず、アセトイミド酸エチル塩酸塩7.0g、トルエン100mL、トリエチルアミン(EtN)14gを300mL三ツ口フラスコに入れ、室温で10分間撹拌した。所定時間経過後、この混合物にベンゾイルクロリド7.9gとトルエン30mLの混合溶液を50mL滴下ロートより滴下し、室温で20時間撹拌した。所定時間経過後、反応混合物を吸引ろ過し、ろ液を濃縮してN−(1−エトキシエチリデン)ベンズアミドを得た(黄色油状物、収率90%)。ステップ1の合成スキームを下記(c−1)に示す。
【0311】
【化38】

【0312】
<ステップ2;1,3−ジメチル−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール(略称:HMptz1−Me)の合成>
次に、メチルヒドラジン硫酸塩8.8g、四塩化炭素100mLを300mLの三ツ口フラスコに入れ、この混合物にトリエチルアミン(EtN)40mLを滴下した後、室温で1時間撹拌した。所定時間経過後、この混合物に上記ステップ1で得たN−(1−エトキシエチリデン)ベンズアミド9.7gを加え、室温で4時間撹拌した。次いで、60℃に昇温して11時間加熱撹拌した。反応終了後、この反応溶液に水を加え、水層をクロロホルムで抽出した。得られた抽出溶液と有機層を合わせて、水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。得られた混合物を自然ろ過し、ろ液を濃縮して油状物を得た。この油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーより精製した。展開溶媒には、ジクロロメタン:酢酸エチル=25:2(v/v)の混合溶媒を用いた。得られたフラクションを濃縮して固体を得た。この固体をヘキサンとジクロロメタンの混合溶媒にて洗浄して、1,3−ジメチル−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール(略称:HMptz1−Me)を得た(淡黄色固体、収率31%)。ステップ2の合成スキームを下記(c−2)に示す。
【0313】
【化39】

【0314】
<ステップ3;ジ−μ−クロロ−ビス[ビス(1,3−ジメチル−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾラト)イリジウム(III)](略称:[Ir(Mptz1−Me)Cl])の合成>
次に、50mLナスフラスコに上記ステップ2で得た配位子HMptz1−Me0.70g、塩化イリジウム水和物0.55g、2−エトキシエタノール15mL、水5mLを入れ、フラスコ内をアルゴン置換した。この反応容器にマイクロ波を30分間照射することで加熱し反応させた。反応後、反応溶液に水を加え、この混合物をジクロロメタンで抽出した。得られた抽出溶液を水で洗浄し、有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。この混合物を自然ろ過し、ろ液を濃縮して油状物を得た。この油状物に、さらに塩化イリジウム水和物0.28g、2−エトキシエタノール12mL、水4mLを加えて、30分マイクロ波を照射し反応させた。反応後、反応溶液に水を加え、この混合物をジクロロメタンで抽出した。得られた抽出溶液を飽和食塩水で洗浄し、有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。この混合物を自然濾過し、ろ液を濃縮して固体を得た。この固体をエタノールで洗浄し、複核錯体[Ir(Mptz1−Me)Cl]を得た(黄褐色粉末、収率46%)。ステップ3の合成スキームを下記(c−3)に示す。
【0315】
【化40】

【0316】
<ステップ4;トリス(1,3−ジメチル−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz1−Me)])の合成>
次に、上記ステップ3で得た複核錯体[Ir(Mptz1−Me)Cl]0.46g、上記ステップ2で得た配位子HMptz1−Me1.0g、トリフルオロメタンスルホン酸銀(TfOAg)0.41gを三方コックと冷却管をつけた反応容器に入れ、窒素雰囲気下、165℃で45時間加熱撹拌した。得られた反応混合物をジクロロメタンに溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒にはジクロロメタン:酢酸エチル=1:1(v/v)の混合溶媒を用いた。得られたフラクションを濃縮して固体を得た。この固体をエタノールで洗浄して本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(Mptz1−Me)]を得た(黄色粉末、収率81%)。ステップ4の合成スキームを下記(c−4)に示す。
【0317】
【化41】

【0318】
上記ステップ4で得られた黄色粉末の核磁気共鳴分光法(H−NMR)による分析結果を下記に示す。この結果から、本参考例において、上述の構造式(200)で表される有機金属錯体[Ir(Mptz1−Me)]が得られたことがわかった。
【0319】
H−NMR.δ(CDCl):1.75(s,9H),4.16(s,9H),6.68(d,3H),6.82(t,3H),6.93(t,3H),7.52(d,3H).
【符号の説明】
【0320】
101 第1の電極
102 EL層
103 第2の電極
111 正孔注入層
112 正孔輸送層
113 発光層
114 電子輸送層
115 電子注入層
116 電荷発生層
201 陽極
202 陰極
203 EL層
204 発光層
205 燐光性化合物
206 第1の有機化合物
207 第2の有機化合物
301 第1の電極
302(1) 第1のEL層
302(2) 第2のEL層
302(n−1) 第(n−1)のEL層
302(n) 第(n)のEL層
304 第2の電極
305 電荷発生層(I)
305(1) 第1の電荷発生層(I)
305(2) 第2の電荷発生層(I)
305(n−2) 第(n−2)の電荷発生層(I)
305(n−1) 第(n−1)の電荷発生層(I)
401 反射電極
402 半透過・半反射電極
403a 第1の透明導電層
403b 第2の透明導電層
404B 第1の発光層(B)
404G 第2の発光層(G)
404R 第3の発光層(R)
405 EL層
410R 第1の発光素子(R)
410G 第2の発光素子(G)
410B 第3の発光素子(B)
501 素子基板
502 画素部
503 駆動回路部(ソース線駆動回路)
504a、504b 駆動回路部(ゲート線駆動回路)
505 シール材
506 封止基板
507 配線
508 FPC(フレキシブルプリントサーキット)
509 nチャネル型TFT
510 pチャネル型TFT
511 スイッチング用TFT
512 電流制御用TFT
513 第1の電極(陽極)
514 絶縁物
515 EL層
516 第2の電極(陰極)
517 発光素子
518 空間
1100 基板
1101 第1の電極
1102 EL層
1103 第2の電極
1111 正孔注入層
1112 正孔輸送層
1113 発光層
1114 電子輸送層
1115 電子注入層
7100 テレビジョン装置
7101 筐体
7103 表示部
7105 スタンド
7107 表示部
7109 操作キー
7110 リモコン操作機
7201 本体
7202 筐体
7203 表示部
7204 キーボード
7205 外部接続ポート
7206 ポインティングデバイス
7301 筐体
7302 筐体
7303 連結部
7304 表示部
7305 表示部
7306 スピーカ部
7307 記録媒体挿入部
7308 LEDランプ
7309 操作キー
7310 接続端子
7311 センサ
7312 マイクロフォン
7400 携帯電話機
7401 筐体
7402 表示部
7403 操作ボタン
7404 外部接続ポート
7405 スピーカ
7406 マイク
8001 照明装置
8002 照明装置
8003 照明装置
8004 照明装置
9033 留め具
9034 表示モード切り替えスイッチ
9035 電源スイッチ
9036 省電力モード切り替えスイッチ
9038 操作スイッチ
9630 筐体
9631 表示部
9631a 表示部
9631b 表示部
9632a タッチパネルの領域
9632b タッチパネルの領域
9633 太陽電池
9634 充放電制御回路
9635 バッテリー
9636 DCDCコンバータ
9637 操作キー
9638 コンバータ
9639 ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(G1)で表される構造を含む有機金属錯体。
【化1】

(式中、R、Rは、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、Mは第9族元素を表す。)
【請求項2】
一般式(G2)で表される有機金属錯体。
【化2】

(式中、Lは、モノアニオン性の配位子を表す。また、R、Rは、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素を表す。)
【請求項3】
請求項2において、
前記モノアニオン性の配位子は、ベータジケトン構造を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、カルボキシル基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、フェノール性水酸基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、又は2つの配位元素がいずれも窒素であるモノアニオン性の二座キレート配位子である有機金属錯体。
【請求項4】
請求項2または請求項3において、
前記モノアニオン性の配位子は、一般式(L1)乃至(L6)のいずれか一である有機金属錯体。
【化3】

(式中、R11〜R42は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン基、ビニル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のハロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルコキシ基、又は置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキルチオ基を表す。また、A〜Aは、それぞれ独立に、窒素、水素と結合するsp混成炭素、または炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン基、炭素数1〜4のハロアルキル基、もしくはフェニル基のいずれかと結合するsp混成炭素を表す。)
【請求項5】
一般式(G3)で表される有機金属錯体。
【化4】

(式中、R、Rは、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、Mは第9族元素を表す。)
【請求項6】
構造式(100)で表される有機金属錯体。
【化5】

【請求項7】
一般式(102)で表される有機金属錯体。
【化6】

【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一に記載の有機金属錯体を用いた発光素子。
【請求項9】
請求項8に記載の発光素子を用いた発光装置。
【請求項10】
請求項9に記載の発光装置を用いた電子機器。
【請求項11】
請求項9に記載の発光装置を用いた照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−63920(P2013−63920A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202689(P2011−202689)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】