説明

木目板の製造方法

【課題】木目板の平面のみでなく、木口面にも天然板の木目模様を印刷する。平面模様と木口模様との境界を綺麗に仕上げる。
【解決手段】木目板の製造方法は、MDF1を所定の外形に切断し、平面1Aと木口との境界を所定の曲率半径で面取りする裁断工程と、加工されたMDF1の平面1Aと木口面1Bに下地塗料を塗布する下塗工程と、下地塗料の表面に木目模様を印刷するプリント工程と、木目模様が印刷されたMDF1の表面に透明ないし半透明の仕上げ塗料を塗布する上塗工程とからなる。プリント工程は、MDF1の平面1Aに天然木の平面模様を印刷する平面プリント工程と、MDF1の木口面1Bに天然木の木口模様を印刷する木口プリント工程とからなる。木口プリント工程においては、表面弾性の転写ローラ4の表面にMDF1の木口を押圧して、転写ローラ4を木口に沿って回転させて、MDF1の木口に天然木の木口模様を転写する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば机の天板、机の上に固定される本棚の側板、ベッドの装飾板等、表面に天然板の木目模様を印刷している木目板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合板の表面に木目模様を転写して木目板を製造する方法は開発されている。(特許文献1参照)また、合板の表面に木目模様を印刷している表面シートを接着して表面装飾している木目板も開発されている。
【特許文献1】特開平6−312407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
合板の表面に木目模様を転写している木目板は、合板の平面に木目模様を転写する。この木目板は、平面に天然板の木目模様を転写できるが、木口には天然板の木口模様を印刷できない。このため、木口には天然板に近似する色の塗料を塗布している。この木目板は、天然板と同じように平面と木口面とに木目模様が印刷されず、自然の天然板でない木目模様を印刷した板であることが明らかになる。
【0004】
本発明は、このような欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、木目板の平面のみでなく、木口面にも天然板の木目模様を印刷でき、さらに、平面模様と木口模様との境界を綺麗に仕上げることができる木目板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の木目板の製造方法は、前述の目的を達成するために以下の構成を備える。木目板の製造方法は、所定の厚さのMDF1を所定の外形に切断すると共に、平面1Aと木口との境界を所定の曲率半径で湾曲するように面取りする裁断工程と、裁断工程で加工されたMDF1の平面1Aと木口面1Bに下地塗料を塗布する下塗工程と、下地塗料の表面に木目模様を印刷するプリント工程と、プリント工程で木目模様が印刷されたMDF1の表面に透明ないし半透明の仕上げ塗料を塗布する上塗工程とからなる。プリント工程は、MDF1の平面1Aに天然木の平面模様を印刷する平面プリント工程と、MDF1の木口面1Bに天然木の木口模様を印刷する木口プリント工程とからなる。木口プリント工程においては、表面弾性の転写ローラ4の表面にMDF1の木口を押し付け、転写ローラ4をMDF1の木口に押圧する状態で、転写ローラ4を木口に沿って回転させて、MDF1の木口に天然木の木口模様を転写する。
【0006】
本発明の木目板の製造方法は、裁断工程において、MDF1の木口面1Bを、中央凸の湾曲面に加工することができる。
【0007】
本発明の木目板の製造方法は、木口プリント工程において、MDF1と同じ外形の天然板を製作し、この天然板の平面模様と木口模様をMDF1の表面に印刷することができる。
【0008】
本発明の木目板の製造方法は、木口プリント工程において、MDF1の表面の一部にマスキングテープを付着して、木口模様を印刷することができる。
【0009】
本発明の木目板の製造方法は、下地塗料を塗布しているMDF1の平面1Aを局部的に押圧して、下地塗料とMDF1に木目の凹凸模様を設けるエンボス工程を設け、エンボス工程で凹凸模様を設けた表面に平面模様と木口模様を印刷することができる。
【0010】
本発明の木目板の製造方法は、平面模様の印刷されたMDF1の平面を局部的に押圧して凹凸模様を設けるエンボス工程を設け、エンボス工程で凹凸模様を設けたMDF1を上塗工程で仕上げ塗料を塗布することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の木目板の製造方法は、木目板の平面のみでなく、木口面にも天然板の木目模様を印刷でき、さらに、平面模様と木口模様との境界を綺麗に仕上げることができる。それは、本発明の木目板の製造方法が、裁断工程において、MDFの平面と木口との境界を所定の曲率半径で面取りすると共に、下塗工程で下地塗料が塗布された平面と木口面の表面にプリント工程で木目模様を印刷しており、このプリント工程は、MDFの平面に天然木の平面模様を印刷する平面プリント工程と、MDFの木口面に天然木の木口模様を印刷する木口プリント工程とからなり、さらに、木口プリント工程においては、表面弾性の転写ローラの表面にMDFの木口を押し付けて押圧する状態で、転写ローラを木口に沿って回転させて、MDFの木口に天然木の木口模様を転写しているからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための木目板の製造方法を例示するものであって、本発明は木目板の製造方法を以下のものに特定しない。
【0013】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0014】
本発明の木目板の製造方法は、MDFの平面のみに木目模様を印刷して木目模様を設けるのではない。MDFの平面のみでなく、その木口面にも木目模様を印刷する。さらに、MDFの木口面には、天然板の板目や正目等の平面状の木目模様を設けるのではなく、天然板の木口面と同じ木口模様を印刷する。MDFは、平面に平面模様を、木口面には木口模様を綺麗に印刷するために、下塗工程において、MDFの表面に下地塗料を塗布する。下地塗料はMDFの平面と木口面の表面を平滑にする。さらに、MDFの平面と木口面の表面を、木目模様の印刷に最適なベースカラーに着色する。下塗工程は、MDFの表面にシーラーを塗布し、このシーラーをMDFの表面に含浸させる第1下塗工程と、シーラーの表面に紫外線硬化塗料を塗布する第2下塗工程と、さらに紫外線硬化塗料の表面にベースカラー塗料を塗布してMDFをベースカラーに着色する第3下塗工程とからなる。
【0015】
第1下塗工程は、下地塗料をMDFに剥離しないように付着させる。この工程に使用されるシーラーは、MDFの平面と木口面の表面に含浸されて、下地塗料をしっかりとMDFに付着する。シーラーは、粘度が低いポリエステル系、あるいはウレタン系等の液体塗料で、MDFの微細な空隙に浸透してMDFにしっかりと付着される。
【0016】
第2下塗工程の紫外線硬化塗料は、ウレタン系の塗料で紫外線を照射して速やかに硬化される。この紫外線硬化塗料は下地塗料を強靭な層にする。この紫外線硬化塗料は着色されず、次の第3下塗工程で塗布されるベースカラー塗料をシーラー層にしっかりと接合する。第2下塗工程で塗布された紫外線硬化塗料は、照射される紫外線で硬化された後、表面をブラシサンダーで研磨する。
【0017】
第3下塗工程のベースカラー塗料は、木目模様のベースカラーに着色するもので、MDFの表面を、プリント工程で印刷される木目の夏目色よりも白色に近い色に着色する。ベースカラー塗料は、下地をほぼ完全に隠蔽して、MDFの表面全面を均一でむらのない色に着色する。さらに、下塗工程は、第3下塗工程でベースカラー塗料を塗布し、ベースカラー塗料を硬化させた後、さらにその表面に紫外線硬化塗料を塗布する。紫外線硬化塗料を紫外線で硬化させた後、サンダーで全面を均一に研磨する。
【0018】
下地塗料が塗布されたMDFは、次のプリント工程において、平面と木口面の表面に木目模様を印刷する。このプリント工程において、MDFは下地塗料の上に木目模様を印刷する。プリント工程は、MDFの平面に天然木の平面模様を印刷する平面プリント工程と、MDF外周の木口面に天然木の木口模様を印刷する木口プリント工程とからなる。
【0019】
プリント工程において、MDFは、図1ないし図3に示す転写装置で平面印刷される。図1は平面プリント工程に使用される転写装置、図2と図3は木口プリント工程に使用される転写装置である。
【0020】
これ等の図に示す転写装置は、表面に木目模様を構成する凹部を設けており、かつベアリングを介して回転できるように配設されてなる刻版ローラ3と、この刻版ローラ3の凹部にインクを供給するインク供給部2と、刻版ローラ3の凹部に供給されたインクが転写される表面を弾性変形できる表面弾性部9としている転写ローラ4とを備える。さらに、図1の転写装置は、MDF1を移送するコンベア5を備える。
【0021】
転写ローラ4の表面弾性部9に、下地処理されたMDF1の平面1A又は木口面1Bが押圧され、この状態で転写ローラ4とMDF1をスリップさせないで、転写ローラ4を回転させて、平面模様や木口模様が印刷される。平面プリント工程においては、コンベア5の移送速度と転写ローラ4の周速を等しくして、MDF1をコンベア5で移送しながら、転写ローラ4で平面模様を転写する。平面プリント工程において、MDF1は、平面1Aと面取り部1Cの一部に平面模様が印刷される。MDF1は、平面1Aと木口面1Bとの境界に所定の曲率半径の面取り部1Cを設けている。面取り部1Cは、平面1Aとの境界に接近するほど、平面1Aと平行となるので、面取り部1Cの平面1Aとの境界部分には、転写ローラ4の表面弾性部9で平面模様が印刷される。転写ローラ4が平面模様を印刷する領域は、図4の破線で示している。面取り部1Cに平面模様が印刷される幅は、MDF1が転写ローラ4に押圧される圧力で変化する。MDFを強く転写ローラに押圧すると、面取り部に平面模様が印刷される幅は広くなる。反対にMDFを転写ローラに押圧する圧力を弱くすると、面取り部に平面模様が印刷される幅は狭くなる。平面プリント工程において、好ましくは、面取り部1Cは、全幅の20%〜80%、好ましくは30%〜70%に平面模様を印刷するように、MDFの転写ローラに対する押圧力が調整される。
【0022】
木口プリント工程においては、MDF1を作業者が手で持って、あるいはロボットアームでつかんで、MDF1の木口面1Bを転写ローラ4の表面弾性部9に押圧し、木口面1Bが転写ローラ4に対してスリップしないように、木口面1Bを転写ローラ4の表面に沿って移動させて、木口面1Bに木口模様を印刷する。このとき、転写ローラ4は、MDF1に押圧されて弾性変形し、木口面1Bとその両側の面取り部1Cとを転写ローラ4の表面弾性部9に密着させて、転写ローラ4の表面に付着しているインクを木口面1Bと面取り部1Cとに転写する。
【0023】
MDF1を転写ローラ4に押圧する圧力は、転写ローラ4の表面弾性部9の弾性変形量を変化させる。MDF1の押圧力が強くなると、表面弾性部9の弾性変形は大きく、押圧力を弱くすると弾性変形は小さくなる。表面弾性部9の弾性変形量は、面取り部1Cに印刷される木目模様の幅を特定する。MDF1が強く転写ローラ4に押圧されて、表面弾性部9が大きく変形する、いいかえるとMDF1が表面弾性部9に深く押し込まれると、面取り部1Cには幅広く木目模様が印刷される。面取り部1Cが表面弾性部9に接触する幅が広くなるからである。転写ローラ4が木口模様を印刷する領域は、図4の一点鎖線で示している。木口プリント工程においては、面取り部1Cに木口模様を印刷する幅は、図4に示すように、木口模様と平面模様の一部がラップされてラップ部12となる幅に調整される。すなわち、面取り部1Cにおいては、平面模様と木口模様とが一部ラップする状態で印刷される。
【0024】
以上の方法は、平面プリント工程の後、木口プリント工程でMDFに木目模様を印刷するが、木口プリント工程の後、平面プリント工程でMDFに木目模様を設けることもできる。ただ、平面プリント工程と木口プリント工程の前後にかかわらず、平面プリント工程の平面模様と、木口プリント工程の木口模様とは、面取り部において、互いに所定の幅でラップするように印刷される。
【0025】
転写ローラ4には刻版ローラ3が接触して回転される。この刻版ローラ3は、表面に設けている凹部の形状で、MDF1の表面に転写する木目模様を特定する。凹部に充填されるインクをMDF1の表面に転写して模様をつけるからである。したがって、刻版ローラ3の表面には、天然板の木目模様と同じ形状に凹部を設けている。平面プリント工程に使用される刻版ローラ3は、天然板の平面に現れる板目や正目の平面模様を設けている。また、木口プリント工程に使用される刻版ローラ3は、天然板の木口面の模様である木口模様を設けている。
【0026】
刻版ローラ3の凹部は、インクを濃く転写する部分を深く、インクを薄く転写する部分を浅くして、濃淡のある木目模様を転写する。刻版ローラ3は、天然木の木目模様を表示する形状の凹部を表面に設けているが、刻版ローラの木目模様は、天然板をMDFと同じ形状に加工し、この天然板と同じ平面模様と木口模様とする。
【0027】
刻版ローラ3は、平面模様や木口模様の木目模様を実現する凹部を表面に設けている。この刻版ローラ3は金属ローラで、平滑に仕上げられた表面を腐食させて凹部を木目模様と同じように設け、あるいは表面を刃物で切削して凹部で木目模様を設けることができる。
【0028】
インク供給部2は、刻版ローラ3の凹部にインクを供給する。図1の装置のインク供給部2は、刻版ローラ3の表面に接触して回転される供給ローラ6と、この供給ローラ6の一部に接触させるインクを蓄えるインクタンク7とを備える。このインク供給部2は、供給ローラ6を回転させてインクタンク7のインクを刻版ローラ3の凹部に供給する。図1に示すように、供給ローラ6が回転すると、インクが供給ローラ6の表面に付着する。刻版ローラ3と供給ローラ6は表面を接触させて互いに逆方向に回転している。供給ローラ6の表面に付着したインクは、刻版ローラ3に転写される。刻版ローラ3と供給ローラ6は互いに接触して回転しているので、余分なインク、いいかえると凹部以外の部分に付着するインクは、供給ローラ6を通過するときに除去される。したがって、供給ローラ6を通過した刻版ローラ3の表面には凹部にのみインクが供給される。
【0029】
刻版ローラの凹部にインクを供給するインク供給部の構造は、図1に示すものに特定しない。インク供給部は、刻版ローラの凹部にインクを供給できる全ての機構とすることができる。図2のインク供給部2は、刻版ローラ3の表面に接触して表面に付着するインクを掻き落とす掻取ブレード8と、刻版ローラ3の一部に接触させるインクを蓄えるインクタンク7とを備える。このインク供給部2は、刻版ローラ3をインクに接触する位置で回転させて、インクタンク7のインクを刻版ローラ3の表面に付着させる。刻版ローラ3の表面に付着するインクは、掻取ブレード8で掻き取られる。刻版ローラ3の凹部に供給されるインクは、掻取ブレード8で掻き取られないので、凹部にのみインクが供給される。
【0030】
転写ローラ4は、回転軸10の表面にゴム状弾性体11を固定して、表面弾性部9を設けている。ゴム状弾性体11の表面弾性部9は、MDF1を表面に押し付けて弾性変形する可撓性を有する。表面弾性部9を柔軟にして、面取り部1Cに幅広く木目模様を転写できる。ただ、表面弾性部9が柔らか過ぎると、綺麗に安定して模様を転写するのが難しくなるので、表面弾性部9のゴム状弾性体11は、MDFの押圧力と、転写する面積と、安定して綺麗に模様を転写できることを考慮して最適な硬度のものが選択される。
【0031】
転写ローラ4は、回転機構(図示せず)で回転されて、MDF1の表面に沿って移動する。回転機構は、転写ローラ4の回転軸10に連結しているモーターである。ただし、回転機構は、転写ローラを直接に回転させることなく、刻版ローラを介して転写ローラを回転することもできる。この装置は、モーターで刻版ローラを回転させて、刻版ローラに接触させた転写ローラを回転させる。ただし、転写装置は、好ましくは、供給ローラと刻版ローラと転写ローラとを、互いに接触する部分がスリップしない速度で回転させる。
【0032】
以上の転写装置は、以下の工程で、MDFの表面に木目模様を転写する。MDFは、以下の工程で表面にインクが付着されて模様が転写される。ただ、(1)と(2)の工程は同時に連続して行われてMDFの表面に模様が付着される。
【0033】
(1) 転写装置は、供給ローラ6と刻版ローラ3と転写ローラ4をスリップしないように同期して回転させる。供給ローラ6は、インクタンク7のインクを表面に付着して、これを刻版ローラ3の凹部に供給する。刻版ローラ3の凹部に供給されたインクは、刻版ローラ3の凹部から転写ローラ4の表面に転写される。
(2) 転写ローラ4の表面にMDF1を押し付けて、あるいは、MDF1の表面で転写ローラ4を回転させて、転写ローラ4の表面を弾性変形させる状態で、転写ローラ4をMDF1に押し付けて回転させる。この状態で、転写ローラ4の表面に付着しているインクはMDF1の表面に転写される。
【0034】
以上の転写装置と方法は、刻版ローラ3と転写ローラ4の表面を接触させる状態で回転させて、刻版ローラ3から転写ローラ4に直接にインクを転写しているが、刻版ローラと転写ローラとの間に、1本または複数本の中間ローラを設け、中間ローラと刻版ローラと転写ローラを接触させる状態で回転し、中間ローラを介して刻版ローラのインクを転写ローラに転写することもできる。
【0035】
その後、エンボス工程において、木目模様を印刷しているMDF1の表面を局部的に押圧して、木目模様を印刷している下地塗料とMDF1に木目の凹凸模様を設ける。ただし、エンボス工程は、木目模様を印刷するプリント工程の前工程とすることもできる。この方法は、木目模様を印刷していない下地塗料とMDF1にエンボス工程で木目の凹凸模様を設け、木目の凹凸を設けた下地塗料の表面に、次ぎのプリント工程で木目模様を印刷する。
【0036】
最後の上塗工程は、プリント工程で木目模様が印刷され、エンボス工程で木目の凹凸模様が設けられたMDF1の表面に、透明ないし半透明の仕上げ塗料を塗布する。上塗工程は、ロールコーターで第1仕上げ塗料を塗布する第1上塗工程と、第1上塗工程で塗布された第1仕上げ塗料の表面に、紫外線硬化塗料を塗布する第2上塗工程とで、仕上げ塗料を塗布する。
【実施例1】
【0037】
以下の工程で、机の上に載せる本棚の側板を製造する。
[裁断工程]
所定の厚さのMDF1を所定の外形に切断する。MDF1は、平面1Aと木口面1Bとの境界を所定の曲率半径で湾曲するように面取りして面取り部1Cとする。MDF1の木口面1Bは、図4に示すように、中央凸の湾曲面に加工することができる。ただ、木口面は平面とすることもできる。
【0038】
[下塗工程]
(1) 第1下塗工程
最初に、第1下塗工程として、ロールコーター機でもって、サンディングシーラーを塗布する。
(2) 第2下塗工程
サンディングシーラーを硬化させた後、第2下塗工程として、紫外線硬化塗料を塗布する。この紫外線硬化塗料は、紫外線を照射して硬化させる。紫外線硬化塗料を硬化させた後、ブラシサンダー機で表面を研磨する。
(3) 第3下塗工程
その後、最後に第3下塗工程として、フローローター機でもってベースカラー塗料を厚く塗布して、下地をほぼ完全に隠蔽して、MDFの表面を淡い茶色に着色する。
(4) ベースカラー塗料を硬化させた後、さらにその表面に紫外線硬化塗料を塗布し、これに紫外線を照射して硬化させる。紫外線硬化塗料が硬化した後、ワイドサンダーで表面を研磨する。
【0039】
[プリント工程]
(1) 平面プリント工程
図1に示すように、コンベア5でMDF1を移送し、その上面に転写ローラ4を押圧して、MDF1の平面1Aに平面模様を印刷する。印刷された平面模様を乾燥させた後、MDF1を上下反転してコンベア5で移送して、他の平面1Aに平面模様を印刷する。この平面プリント工程で、図4に示すように、平面1Aに隣接する面取り部1Cの片側部にも平面模様を印刷する。
【0040】
(2) 木口プリント工程
木口面1Bに模様が異なる2種の木目模様、すなわち第1と第2の木口模様を印刷する。天然板外周の木口面1Bにできる木目模様は、木目に交差する木口面1Bの木目模様と、木目に平行な木口面1Bにできる木目模様とが異なる。木目に交差する木口面1Bの木目模様は木目を切断する模様となり、木口に平行な木口面1Bの模様は木目が表面に沿って伸びる形状となる。第1の木目模様を木目に交差する模様とし、第2の木目模様は木目に平行な模様として、より天然板に近い木目模様にできる。第1と第2の木口模様は、平面模様に一致して木口面1Bに設けられる。
【0041】
木口模様の印刷に先だって、第2の木口模様を印刷する領域の全体、あるいは第2の木口模様を印刷する領域であって、第1の木口模様を第1する領域との境界部分にマスキングテープを付着する。
【0042】
平面1Aに平面模様を印刷したMDF1を手で持ち、第1の木口模様を印刷する木口面1Bを回転している転写ローラ4に押し付け、転写ローラ4に沿って木口面1Bを移動させてMDF1の木口面1Bに第1の木口模様を印刷する。その後、マスキングテープを剥離して、第1の木口模様を乾燥させる。その後、第2の木口模様を印刷する木口面1Bを、回転している転写ローラ4に押し付けて、転写ローラ4に沿って木口面1Bを移動させてMDF1の残りの木口面1Bに第2の木口模様を印刷する。第2の木口模様は、その境界で第1の木口模様にラップさせて、隙間ができないように、第1と第2の木目模様を連続させる。
【0043】
この木口プリント工程においては、木口面1Bに隣接する面取り部1Cにも木口模様を印刷する。面取り部1Cに印刷される木口模様は、図4に示すように、先に平面プリント工程で平面1Aに印刷された平面模様に一部ラップされてラップ部12となる。すなわち、平面模様と木口模様とが面取り部1Cでラップされ、平面模様と木口模様との間に印刷されない領域を設けることなく、平面模様と木口模様とが印刷される。所定の曲率半径で湾曲する面取り部1Cの中間に沿って、平面模様と木口模様をラップして印刷することにより、平面模様と木口模様の境界を、自然木の木目模様と区別できない美しい模様として、天然板に独得の高品質な木目模様にできる。このラップ部12は、幅を狭くして、平面模様と木口模様との境界部分を美しい外観に仕上げることができる。
【0044】
[エンボス工程]
木目模様を印刷する塗料を乾燥させた後、下地塗料とMDFに木目の凹凸模様を設ける。この工程は、木目模様を形成する無数の凸部を表面に設けているエンボスローラーを、MDFの表面に押し付けて、木目模様の凹凸、正確には木目模様の凹部を設ける。エンボスローラーは、MDFの表面を押圧する状態で転動して、MDFの表面に木目模様の凹部を設ける。
【0045】
[上塗工程]
木目模様が印刷され、さらに木目模様の凹凸が設けせれたMDFの表面に、仕上げ塗料を塗布する。仕上げ塗料は、ロールコーター機で透明の塗料が塗布される第1上塗工程と、この上に紫外線硬化塗料を塗布する第2上塗工程とで下地塗料の表面に塗布される。第1上塗工程においては、ウレタン系あるいはポリエステル系、あるいはアクリル系の塗料が塗布される。この塗料を硬化させた後、ウレタン系の紫外線硬化塗料が塗布される。
【0046】
以上の工程で、立体的な凹凸と木目柄からなる綺麗な木目模様を平面と木口面に設けている、本棚の側板に使用する木目板が製造される。
【実施例2】
【0047】
MDFの片面に平面模様を印刷すると共に、エンボス工程を省略する以外、実施例1と同様にして、机の天板を製造すると、天然板と見分けができない高品質な木目模様の木目板を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施例にかかる木目板の製造方法に使用する転写装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の一実施例にかかる木目板の製造方法に使用する転写装置の他の一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明の一実施例にかかる木目板の製造方法に使用する転写装置の他の一例を示す概略構成図である。
【図4】MDFの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1…MDF 1A…平面
1B…木口面
1C…面取り部
2…インク供給部
3…刻版ローラ
4…転写ローラ
5…コンベア
6…供給ローラ
7…インクタンク
8…掻取ブレード
9…表面弾性部
10…回転軸
11…ゴム状弾性体
12…ラップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の厚さのMDF(1)を所定の外形に切断すると共に、平面(1A)と木口との境界を所定の曲率半径で湾曲するように面取りする裁断工程と、
裁断工程で加工されたMDF(1)の平面(1A)と木口面(1B)に下地塗料を塗布する下塗工程と、
下地塗料の表面に木目模様を印刷するプリント工程と、
プリント工程で木目模様が印刷されたMDF(1)の表面に透明ないし半透明の仕上げ塗料を塗布する上塗工程とからなる木目板の製造方法であって、
プリント工程が、MDF(1)の平面(1A)に天然木の平面模様を印刷する平面プリント工程と、MDF(1)の木口面(1B)に天然木の木口模様を印刷する木口プリント工程とからなり、
木口プリント工程においては、表面弾性の転写ローラ(4)の表面にMDF(1)の木口を押し付け、転写ローラをMDF(1)の木口に押圧する状態で、転写ローラ(4)を木口に沿って回転させて、MDF(1)の木口に天然木の木口模様を転写する木目板の製造方法。
【請求項2】
裁断工程において、MDF(1)の木口面(1B)を、中央凸の湾曲面に加工する請求項1に記載される木目板の製造方法。
【請求項3】
木口プリント工程において、MDF(1)と同じ外形の天然板を製作し、この天然板の平面模様と木口模様をMDF(1)の表面に印刷する請求項1に記載される木目板の製造方法。
【請求項4】
木口プリント工程において、MDF(1)の表面の一部にマスキングテープを付着して、木口模様を印刷する請求項1に記載される木目板の製造方法。
【請求項5】
下地塗料を塗布しているMDF(1)の平面(1A)を局部的に押圧して、下地塗料とMDF(1)に木目の凹凸模様を設けるエンボス工程を設け、エンボス工程で凹凸模様を設けた表面に平面模様と木口模様を印刷する請求項1に記載される木目板の製造方法。
【請求項6】
平面模様の印刷されたMDF(1)の平面(1A)を局部的に押圧して凹凸模様を設けるエンボス工程を設け、エンボス工程で凹凸模様を設けたMDF(1)を上塗工程で仕上げ塗料を塗布する請求項1に記載される木目板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−111859(P2007−111859A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302352(P2005−302352)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【出願人】(304020317)株式会社ジャパンニューファニチァ (7)
【Fターム(参考)】