木製スダレの製法
【課題】くず材を用いることができる木製スダレの製法を提供する。
【解決手段】天然木材の矩形状の端尺板片の平行な二辺を、傾斜角度をもって削って片刃型勾配面を二辺の各々に形成して、単位板片材を作製する。次に、色の相違する単位板片材を上記勾配面の接着によって順次連続させて定尺帯板状中間材を作製する。その後、帯板状中間材を長手方向に沿って小幅寸法wに切断分割して、小帯状ひご8を作製する。小帯状ひご8を織ってスダレとするための織り糸12を、ひご8に於て勾配面相互の接着による色の変化境界部に、対応して配置する。
【解決手段】天然木材の矩形状の端尺板片の平行な二辺を、傾斜角度をもって削って片刃型勾配面を二辺の各々に形成して、単位板片材を作製する。次に、色の相違する単位板片材を上記勾配面の接着によって順次連続させて定尺帯板状中間材を作製する。その後、帯板状中間材を長手方向に沿って小幅寸法wに切断分割して、小帯状ひご8を作製する。小帯状ひご8を織ってスダレとするための織り糸12を、ひご8に於て勾配面相互の接着による色の変化境界部に、対応して配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木製スダレの製法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木製ブラインドのスラットの製法として、天然の木材を用いて表帯板部と裏帯板部を形成し、それらの間に形状保持用芯材をサンドイッチ状として接着したものがあった(例えば、特許文献1参照)。このスラットは、長手方向の全長にわたって、同一の板材が用いられていた。これと同様に、木製スダレの製法においても、織り糸にて編まれる各板材の長手方向の全長にわたって、同一の板材が用いられていた。
【0003】
しかし、所定の大きさ以上の大きな板材を用いる必要があった。また、天然の木目を生かして模様を形成することは難しいという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−242556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、所定の大きさ以上の大きな板材を用いる必要があり、いわゆるくず材を用いることができない点である。また、天然の木目を生かして模様を形成することが難しい点である。さらに、市松模様等を美しく、かつ、能率よく製造することが難しい点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明に係る木製スダレの製法は、天然木材の矩形状の端尺板片の平行な二辺を、鋭角の傾斜角度をもって削って片刃型勾配面を上記二辺の各々に形成して、単位板片材を作製し、次に、色の相違する単位板片材を上記勾配面の接着によって順次連続させて定尺帯板状中間材を作製し、その後、該帯板状中間材を長手方向に沿って小幅寸法に切断分割して、小帯状ひごを作製し、該小帯状ひごを織ってスダレとするための織り糸を、上記ひごに於て上記勾配面相互の接着による色の変化境界部に、対応して配置する方法である。
また、複数枚の上記端尺板片は、予め、減圧加圧含浸法によって、塗料を内部まで含浸させて、色の相違する2種類以上のものを作製する方法である。
また、上記傾斜角度を5°以上12°以下に形成した方法である。
【0007】
また、天然木材の矩形状の端尺板片の平行な二辺に凹凸状くし歯辺部を形成し、単位板片材を作製し、次に、色の相違する単位板片材を、上記くし歯辺部の相互噛合及び接着によって順次連続させて定尺帯板状中間材を作製し、その後、該帯板状中間材を長手方向に沿って小幅寸法に切断分割して、小帯状ひごを作製し、該小帯状ひごを織ってスダレとするための織り糸を、上記ひごに於て上記くし歯辺部相互の接着による色の変化境界部に、対応して配置する方法である。
また、複数枚の上記端尺板片は、予め、減圧加圧含浸法によって、塗料を内部まで含浸させて、色の相違する2種類以上のものを作製する方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の木製スダレの製法によれば、交互に色の相違する市松模様等をスダレに容易に、かつ、美しく描くことができる。また、(従来は利用用途がなかった)くず材を用いることができる。また、天然の木目を生かして模様を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施の形態を用いて作製された木製スダレを示す正面図である。
【図2】端尺板片を示す斜視図である。
【図3】減圧加圧含浸法を示す説明図である。
【図4】単位板片材を示す斜視図である。
【図5】説明図である。
【図6】帯板状中間材を示す平面図である。
【図7】帯板状中間材から小帯状ひごを作製する状態を示す説明図である。
【図8】回転軸に平行に固着された複数の回転刃を示す斜視図である。
【図9】テープにて接着した小帯状ひごを示す平面図である。
【図10】木製スダレの要部拡大側面図である。
【図11】木製スダレの要部拡大底面図である。
【図12】第2の実施の形態を用いて作成された木製スダレを示す正面図である。
【図13】説明図である。
【図14】帯板状中間材を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の第1の実施の形態を用いて作製された木製スダレを示す。この木製スダレは、2種類の色の市松模様が形成されている。そして、2種類の色は、例えば、茶色とベージュ色とする。本発明の図面に於て、塗料Xを点々の網掛けにて示し(図3)、及び、塗料Xによって着色された部位を点々の網掛けにて示す。また、相違する2色に着色されている場合には、濃い方を点々の網掛けにて示す。
【0011】
次に、この木製スダレの製法を説明する。複数枚の図2に示すような天然木材の矩形状の端尺板片1を、予め、減圧加圧含浸法によって、塗料X(図3参照)を内部まで含浸させて、色の相違する2種類以上のものを作製する。端尺板片1は、例えば、科材から成る。「矩形状の端尺板片」とは、横辺L1及び縦辺L2の長さ寸法がともに1m以下の矩形状の板片をいうと定義する。減圧加圧含浸法は、塗料X及び/又は防災剤Bを真空含浸させ、その後、加圧させて、被含浸材(端尺板片1)の内部に十分含浸させる方法である。例えば、図3に示すように、ケーシング14内に塗料X及び/又は防災剤Bを入れた容器3を設置し、容器3に複数枚の端尺板片1を真空含浸させ、その後、加圧する。減圧加圧含浸法によって、端尺板片1の表面4をサンダー等で仕上げたとしても、部分的に色が変化せず、表面4の木目が美しく出る。減圧加圧含浸法ののち、端尺板片1を乾燥させる。乾燥後の端尺板片1の厚さ寸法(図示省略)がひご8(図1、図9〜図11参照。後述。)の厚さ寸法Tと等しい。
【0012】
図4に示すように、天然木材の矩形状の端尺板片1(図2参照)の平行な二辺を、鋭角の傾斜角度θをもって削って片刃型勾配面(傾斜面)5を二辺の各々に形成して、単位板片材6を作製する。鋭角の傾斜角度θを5°以上12°以下に形成する。傾斜角度θが5°未満の場合、形成するのが困難であるとともに、近接する一対の織り糸12の間隔が広くなり、外観が悪くなる。傾斜角度θが12°を超える場合、(次工程での単位板片材6と単位板片材6の)接着面積が小さくなり、接着強度が小さくなる。望ましくは、傾斜角度θを6°以上10°以下に形成する。例えば、傾斜角度θを 8.8°に形成する。ひご8(図1、図9〜図11参照)の厚さ寸法Tが小さい場合、傾斜角度θを小さく設定するのが好ましい。十分な接着面積を得ることができる。ひご8の厚さ寸法Tが大きい場合、傾斜角度θを大きく設定するのが好ましい。余分な接着剤を用いなくてすむ。
【0013】
次に、図5、図6に示すように、色の相違する単位板片材6を勾配面5,5の接着によって順次連続させて(接着剤を用いてスカーフジョイントにより継いで)定尺帯板状中間材7を作製する。その後、図7に示すように、帯板状中間材7を長手方向に沿って小幅寸法wに切断分割して(カットして)、小帯状ひご8(図9参照)を作製する。具体的には、図7・図8に示すような回転軸9に平行に固着された複数の回転刃(カッター)10をもって、同時に、中間材7を長手方向に沿って切断分割する。図7の矢印Yは中間材7の送り方向を示す。図9に示すように、中間材7を分割した後、小帯状ひご8が並ぶ順番を保持するために(すなわち木目を切断前のまま維持するように)、例えば、テープ11にて接着(粘着)して固定しておく。
【0014】
小帯状ひご8を図10及び図11に示すように織り糸12にて織る。このとき、小帯状ひご8を織ってスダレとするための織り糸12を、ひご8に於て勾配面5相互の接着による色の変化境界部13に、対応して配置する。つまり、スダレ表て面15側及びスダレ裏面16側に於て、小さな幅寸法W分だけ左右に位置がずれることとなる。故に、織り糸12は2本となる。
【0015】
色の変化境界部13のスダレ表て面15側及びスダレ裏面16側の正面視(図1の紙面直交方向から見た方向)に於ける幅寸法Wを6mm以上17mm以下に設定する。望ましくは、幅寸法Wを8mm以上12mm以下に設定する。
【0016】
次に、第2の実施の形態について説明する。図12は第2の実施の形態を用いて作製された木製スダレを示す。この木製スダレの製法は、まず、図13に示すように、天然木材の矩形状の端尺板片1(図2参照)の平行な二辺2,2(図2参照)に凹凸状くし歯辺部17を形成し、単位板片材6を作製する。次に、図14に示すように、色の相違する単位板片材6を、くし歯辺部17の相互噛合及び接着によって順次連続させて(接着剤を用いてフィンガージョイントにより継いで)定尺帯板状中間材7を作製する。その後、帯板状中間材7を長手方向に沿って小幅寸法w(図12参照)に切断分割して、小帯状ひご8を作製する。
【0017】
小帯状ひご8を織ってスダレとするための織り糸12を、ひご8に於てくし歯辺部17相互の接着による色の変化境界部13に、対応して配置する。例えば、図12に示すように、くし歯辺部17の山部及び谷部の各々に接するように織り糸12を配置する。
その他の構成(複数枚の端尺板片1は、予め、減圧加圧含浸法によって、塗料Xを内部まで含浸させて、色の相違する2種類以上のものを作製する点等)は、第1の実施の形態と同様である。
【0018】
なお、本発明は、設計変更可能であって、例えば、市松模様の2種類の色は、茶色とベージュ以外の組み合わせであっても良く、例えば、藍色とナチュラルな木の色とするも良い。すなわち、「色の相違する2種類以上」の端尺板片1のうち何種類かをナチュラルな木の色(無着色)とするも良い。また、デザインは、市松模様以外の模様でも良く、例えば、3種類の色の単位板片材6を不規則に配列したものとするも良い。また、織り糸12を色の変化境界部13に対応して配置するのみならず、他の位置にも配設しても良い。また、第2の実施の形態では、図12の状態と比較して、左右両端縁が直線となるように切断し、その近傍の織り糸12を少し左右方向内側へ配設するのが好ましい。また、第2の実施の形態で織り糸12を配設する位置を、くし歯辺部17の山部及び谷部に接する各直線の中間のゾーンに配設するも良い。
【0019】
以上のように、本発明は、天然木材の矩形状の端尺板片1の平行な二辺2,2を、鋭角の傾斜角度θをもって削って片刃型勾配面5を二辺2,2の各々に形成して、単位板片材6を作製し、次に、色の相違する単位板片材6を上記勾配面5の接着によって順次連続させて定尺帯板状中間材7を作製し、その後、帯板状中間材7を長手方向に沿って小幅寸法wに切断分割して、小帯状ひご8を作製し、小帯状ひご8を織ってスダレとするための織り糸12を、ひご8に於て勾配面5相互の接着による色の変化境界部13に、対応して配置するので、(従来は利用用途がなかった)くず材を用いることができる。例えば、大きな板からフシのあるところを除くと小さな面積S(図2参照)の端尺板片1となることが多く、(フシがない)大きい板材は入手困難だが、小さな面積Sの端尺板片1は容易に入手することができるので、このような端尺板片1を巧妙につないで利用することができる。
【0020】
また、天然の木目を生かして模様を形成することができる。例えば市松模様のスダレを製作することができる。このとき、木目が美しく出る。また、一枚状の板材に模様部分を全面的に貼付する場合と比較して、接着剤の量を少なくすることができる。また、織り糸12にて色の変化境界部13を隠すことができて美感上好ましい。
【0021】
また、複数枚の端尺板片1は、予め、減圧加圧含浸法によって、塗料Xを内部まで含浸させて、色の相違する2種類以上のものを作製するので、市松模様などの模様を美しく見せることができる。しかも、研磨等にて表面を仕上げ加工しても、内部も同一の色なので、色ムラを発生しない。
また、傾斜角度θを5°以上12°以下に形成したので、適切に単位板片材6どうしを接着することができるとともに、接着剤の無駄をなくすことができる。
【0022】
また、天然木材の矩形状の端尺板片1の平行な二辺2,2に凹凸状くし歯辺部17を形成し、単位板片材6を作製し、次に、色の相違する単位板片材6を、くし歯辺部17の相互噛合及び接着によって順次連続させて定尺帯板状中間材7を作製し、その後、帯板状中間材7を長手方向に沿って小幅寸法wに切断分割して、小帯状ひご8を作製し、小帯状ひご8を織ってスダレとするための織り糸12を、ひご8に於てくし歯辺部17相互の接着による色の変化境界部13に、対応して配置するので、(従来は利用用途がなかった)くず材を用いることができる。例えば、大きな板からフシのあるところを除くと小さな面積S(図2参照)の端尺板片1となることが多く、(フシがない)大きい板材は入手困難だが、小さな面積Sの端尺板片1は容易に入手することができるので、このような端尺板片1を巧妙につないで利用することができる。
【0023】
また、天然の木目を生かして模様を形成することができる。例えば市松模様のスダレを製作することができる。また、木目が美しく出る。また、模様を美しく表現できる。また、一枚状の板材に模様部分を全面的に貼付する場合と比較して、接着剤の量を少なくすることができる。また、織り糸12にて接着部を強化することができる。
【0024】
また、複数枚の端尺板片1は、予め、減圧加圧含浸法によって、塗料Xを内部まで含浸させて、色の相違する2種類以上のものを作製するので、市松模様などの模様を美しく見せることができる。しかも、研磨等にて表面を仕上げ加工しても、内部も同一の色なので、色ムラを発生しない。
【符号の説明】
【0025】
1 端尺板片
2 二辺
5 (片刃型)勾配面(傾斜面)
6 単位板片材
7 (定尺)(帯板状)中間材
8 (小帯状)ひご
12 織り糸
13 色の変化境界部
17 (凹凸状)くし歯辺部
w 小幅寸法
X 塗料
θ 傾斜角度
【技術分野】
【0001】
本発明は、木製スダレの製法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木製ブラインドのスラットの製法として、天然の木材を用いて表帯板部と裏帯板部を形成し、それらの間に形状保持用芯材をサンドイッチ状として接着したものがあった(例えば、特許文献1参照)。このスラットは、長手方向の全長にわたって、同一の板材が用いられていた。これと同様に、木製スダレの製法においても、織り糸にて編まれる各板材の長手方向の全長にわたって、同一の板材が用いられていた。
【0003】
しかし、所定の大きさ以上の大きな板材を用いる必要があった。また、天然の木目を生かして模様を形成することは難しいという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−242556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、所定の大きさ以上の大きな板材を用いる必要があり、いわゆるくず材を用いることができない点である。また、天然の木目を生かして模様を形成することが難しい点である。さらに、市松模様等を美しく、かつ、能率よく製造することが難しい点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明に係る木製スダレの製法は、天然木材の矩形状の端尺板片の平行な二辺を、鋭角の傾斜角度をもって削って片刃型勾配面を上記二辺の各々に形成して、単位板片材を作製し、次に、色の相違する単位板片材を上記勾配面の接着によって順次連続させて定尺帯板状中間材を作製し、その後、該帯板状中間材を長手方向に沿って小幅寸法に切断分割して、小帯状ひごを作製し、該小帯状ひごを織ってスダレとするための織り糸を、上記ひごに於て上記勾配面相互の接着による色の変化境界部に、対応して配置する方法である。
また、複数枚の上記端尺板片は、予め、減圧加圧含浸法によって、塗料を内部まで含浸させて、色の相違する2種類以上のものを作製する方法である。
また、上記傾斜角度を5°以上12°以下に形成した方法である。
【0007】
また、天然木材の矩形状の端尺板片の平行な二辺に凹凸状くし歯辺部を形成し、単位板片材を作製し、次に、色の相違する単位板片材を、上記くし歯辺部の相互噛合及び接着によって順次連続させて定尺帯板状中間材を作製し、その後、該帯板状中間材を長手方向に沿って小幅寸法に切断分割して、小帯状ひごを作製し、該小帯状ひごを織ってスダレとするための織り糸を、上記ひごに於て上記くし歯辺部相互の接着による色の変化境界部に、対応して配置する方法である。
また、複数枚の上記端尺板片は、予め、減圧加圧含浸法によって、塗料を内部まで含浸させて、色の相違する2種類以上のものを作製する方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の木製スダレの製法によれば、交互に色の相違する市松模様等をスダレに容易に、かつ、美しく描くことができる。また、(従来は利用用途がなかった)くず材を用いることができる。また、天然の木目を生かして模様を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施の形態を用いて作製された木製スダレを示す正面図である。
【図2】端尺板片を示す斜視図である。
【図3】減圧加圧含浸法を示す説明図である。
【図4】単位板片材を示す斜視図である。
【図5】説明図である。
【図6】帯板状中間材を示す平面図である。
【図7】帯板状中間材から小帯状ひごを作製する状態を示す説明図である。
【図8】回転軸に平行に固着された複数の回転刃を示す斜視図である。
【図9】テープにて接着した小帯状ひごを示す平面図である。
【図10】木製スダレの要部拡大側面図である。
【図11】木製スダレの要部拡大底面図である。
【図12】第2の実施の形態を用いて作成された木製スダレを示す正面図である。
【図13】説明図である。
【図14】帯板状中間材を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の第1の実施の形態を用いて作製された木製スダレを示す。この木製スダレは、2種類の色の市松模様が形成されている。そして、2種類の色は、例えば、茶色とベージュ色とする。本発明の図面に於て、塗料Xを点々の網掛けにて示し(図3)、及び、塗料Xによって着色された部位を点々の網掛けにて示す。また、相違する2色に着色されている場合には、濃い方を点々の網掛けにて示す。
【0011】
次に、この木製スダレの製法を説明する。複数枚の図2に示すような天然木材の矩形状の端尺板片1を、予め、減圧加圧含浸法によって、塗料X(図3参照)を内部まで含浸させて、色の相違する2種類以上のものを作製する。端尺板片1は、例えば、科材から成る。「矩形状の端尺板片」とは、横辺L1及び縦辺L2の長さ寸法がともに1m以下の矩形状の板片をいうと定義する。減圧加圧含浸法は、塗料X及び/又は防災剤Bを真空含浸させ、その後、加圧させて、被含浸材(端尺板片1)の内部に十分含浸させる方法である。例えば、図3に示すように、ケーシング14内に塗料X及び/又は防災剤Bを入れた容器3を設置し、容器3に複数枚の端尺板片1を真空含浸させ、その後、加圧する。減圧加圧含浸法によって、端尺板片1の表面4をサンダー等で仕上げたとしても、部分的に色が変化せず、表面4の木目が美しく出る。減圧加圧含浸法ののち、端尺板片1を乾燥させる。乾燥後の端尺板片1の厚さ寸法(図示省略)がひご8(図1、図9〜図11参照。後述。)の厚さ寸法Tと等しい。
【0012】
図4に示すように、天然木材の矩形状の端尺板片1(図2参照)の平行な二辺を、鋭角の傾斜角度θをもって削って片刃型勾配面(傾斜面)5を二辺の各々に形成して、単位板片材6を作製する。鋭角の傾斜角度θを5°以上12°以下に形成する。傾斜角度θが5°未満の場合、形成するのが困難であるとともに、近接する一対の織り糸12の間隔が広くなり、外観が悪くなる。傾斜角度θが12°を超える場合、(次工程での単位板片材6と単位板片材6の)接着面積が小さくなり、接着強度が小さくなる。望ましくは、傾斜角度θを6°以上10°以下に形成する。例えば、傾斜角度θを 8.8°に形成する。ひご8(図1、図9〜図11参照)の厚さ寸法Tが小さい場合、傾斜角度θを小さく設定するのが好ましい。十分な接着面積を得ることができる。ひご8の厚さ寸法Tが大きい場合、傾斜角度θを大きく設定するのが好ましい。余分な接着剤を用いなくてすむ。
【0013】
次に、図5、図6に示すように、色の相違する単位板片材6を勾配面5,5の接着によって順次連続させて(接着剤を用いてスカーフジョイントにより継いで)定尺帯板状中間材7を作製する。その後、図7に示すように、帯板状中間材7を長手方向に沿って小幅寸法wに切断分割して(カットして)、小帯状ひご8(図9参照)を作製する。具体的には、図7・図8に示すような回転軸9に平行に固着された複数の回転刃(カッター)10をもって、同時に、中間材7を長手方向に沿って切断分割する。図7の矢印Yは中間材7の送り方向を示す。図9に示すように、中間材7を分割した後、小帯状ひご8が並ぶ順番を保持するために(すなわち木目を切断前のまま維持するように)、例えば、テープ11にて接着(粘着)して固定しておく。
【0014】
小帯状ひご8を図10及び図11に示すように織り糸12にて織る。このとき、小帯状ひご8を織ってスダレとするための織り糸12を、ひご8に於て勾配面5相互の接着による色の変化境界部13に、対応して配置する。つまり、スダレ表て面15側及びスダレ裏面16側に於て、小さな幅寸法W分だけ左右に位置がずれることとなる。故に、織り糸12は2本となる。
【0015】
色の変化境界部13のスダレ表て面15側及びスダレ裏面16側の正面視(図1の紙面直交方向から見た方向)に於ける幅寸法Wを6mm以上17mm以下に設定する。望ましくは、幅寸法Wを8mm以上12mm以下に設定する。
【0016】
次に、第2の実施の形態について説明する。図12は第2の実施の形態を用いて作製された木製スダレを示す。この木製スダレの製法は、まず、図13に示すように、天然木材の矩形状の端尺板片1(図2参照)の平行な二辺2,2(図2参照)に凹凸状くし歯辺部17を形成し、単位板片材6を作製する。次に、図14に示すように、色の相違する単位板片材6を、くし歯辺部17の相互噛合及び接着によって順次連続させて(接着剤を用いてフィンガージョイントにより継いで)定尺帯板状中間材7を作製する。その後、帯板状中間材7を長手方向に沿って小幅寸法w(図12参照)に切断分割して、小帯状ひご8を作製する。
【0017】
小帯状ひご8を織ってスダレとするための織り糸12を、ひご8に於てくし歯辺部17相互の接着による色の変化境界部13に、対応して配置する。例えば、図12に示すように、くし歯辺部17の山部及び谷部の各々に接するように織り糸12を配置する。
その他の構成(複数枚の端尺板片1は、予め、減圧加圧含浸法によって、塗料Xを内部まで含浸させて、色の相違する2種類以上のものを作製する点等)は、第1の実施の形態と同様である。
【0018】
なお、本発明は、設計変更可能であって、例えば、市松模様の2種類の色は、茶色とベージュ以外の組み合わせであっても良く、例えば、藍色とナチュラルな木の色とするも良い。すなわち、「色の相違する2種類以上」の端尺板片1のうち何種類かをナチュラルな木の色(無着色)とするも良い。また、デザインは、市松模様以外の模様でも良く、例えば、3種類の色の単位板片材6を不規則に配列したものとするも良い。また、織り糸12を色の変化境界部13に対応して配置するのみならず、他の位置にも配設しても良い。また、第2の実施の形態では、図12の状態と比較して、左右両端縁が直線となるように切断し、その近傍の織り糸12を少し左右方向内側へ配設するのが好ましい。また、第2の実施の形態で織り糸12を配設する位置を、くし歯辺部17の山部及び谷部に接する各直線の中間のゾーンに配設するも良い。
【0019】
以上のように、本発明は、天然木材の矩形状の端尺板片1の平行な二辺2,2を、鋭角の傾斜角度θをもって削って片刃型勾配面5を二辺2,2の各々に形成して、単位板片材6を作製し、次に、色の相違する単位板片材6を上記勾配面5の接着によって順次連続させて定尺帯板状中間材7を作製し、その後、帯板状中間材7を長手方向に沿って小幅寸法wに切断分割して、小帯状ひご8を作製し、小帯状ひご8を織ってスダレとするための織り糸12を、ひご8に於て勾配面5相互の接着による色の変化境界部13に、対応して配置するので、(従来は利用用途がなかった)くず材を用いることができる。例えば、大きな板からフシのあるところを除くと小さな面積S(図2参照)の端尺板片1となることが多く、(フシがない)大きい板材は入手困難だが、小さな面積Sの端尺板片1は容易に入手することができるので、このような端尺板片1を巧妙につないで利用することができる。
【0020】
また、天然の木目を生かして模様を形成することができる。例えば市松模様のスダレを製作することができる。このとき、木目が美しく出る。また、一枚状の板材に模様部分を全面的に貼付する場合と比較して、接着剤の量を少なくすることができる。また、織り糸12にて色の変化境界部13を隠すことができて美感上好ましい。
【0021】
また、複数枚の端尺板片1は、予め、減圧加圧含浸法によって、塗料Xを内部まで含浸させて、色の相違する2種類以上のものを作製するので、市松模様などの模様を美しく見せることができる。しかも、研磨等にて表面を仕上げ加工しても、内部も同一の色なので、色ムラを発生しない。
また、傾斜角度θを5°以上12°以下に形成したので、適切に単位板片材6どうしを接着することができるとともに、接着剤の無駄をなくすことができる。
【0022】
また、天然木材の矩形状の端尺板片1の平行な二辺2,2に凹凸状くし歯辺部17を形成し、単位板片材6を作製し、次に、色の相違する単位板片材6を、くし歯辺部17の相互噛合及び接着によって順次連続させて定尺帯板状中間材7を作製し、その後、帯板状中間材7を長手方向に沿って小幅寸法wに切断分割して、小帯状ひご8を作製し、小帯状ひご8を織ってスダレとするための織り糸12を、ひご8に於てくし歯辺部17相互の接着による色の変化境界部13に、対応して配置するので、(従来は利用用途がなかった)くず材を用いることができる。例えば、大きな板からフシのあるところを除くと小さな面積S(図2参照)の端尺板片1となることが多く、(フシがない)大きい板材は入手困難だが、小さな面積Sの端尺板片1は容易に入手することができるので、このような端尺板片1を巧妙につないで利用することができる。
【0023】
また、天然の木目を生かして模様を形成することができる。例えば市松模様のスダレを製作することができる。また、木目が美しく出る。また、模様を美しく表現できる。また、一枚状の板材に模様部分を全面的に貼付する場合と比較して、接着剤の量を少なくすることができる。また、織り糸12にて接着部を強化することができる。
【0024】
また、複数枚の端尺板片1は、予め、減圧加圧含浸法によって、塗料Xを内部まで含浸させて、色の相違する2種類以上のものを作製するので、市松模様などの模様を美しく見せることができる。しかも、研磨等にて表面を仕上げ加工しても、内部も同一の色なので、色ムラを発生しない。
【符号の説明】
【0025】
1 端尺板片
2 二辺
5 (片刃型)勾配面(傾斜面)
6 単位板片材
7 (定尺)(帯板状)中間材
8 (小帯状)ひご
12 織り糸
13 色の変化境界部
17 (凹凸状)くし歯辺部
w 小幅寸法
X 塗料
θ 傾斜角度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然木材の矩形状の端尺板片(1)の平行な二辺(2)(2)を、鋭角の傾斜角度(θ)をもって削って片刃型勾配面(5)を上記二辺(2)(2)の各々に形成して、単位板片材(6)を作製し、次に、色の相違する単位板片材(6)を上記勾配面(5)の接着によって順次連続させて定尺帯板状中間材(7)を作製し、その後、該帯板状中間材(7)を長手方向に沿って小幅寸法(w)に切断分割して、小帯状ひご(8)を作製し、該小帯状ひご(8)を織ってスダレとするための織り糸(12)を、上記ひご(8)に於て上記勾配面(5)相互の接着による色の変化境界部(13)に、対応して配置することを特徴とする木製スダレの製法。
【請求項2】
複数枚の上記端尺板片(1)は、予め、減圧加圧含浸法によって、塗料(X)を内部まで含浸させて、色の相違する2種類以上のものを作製する請求項1記載の木製スダレの製法。
【請求項3】
上記傾斜角度(θ)を5°以上12°以下に形成した請求項1又は2記載の木製スダレの製法。
【請求項4】
天然木材の矩形状の端尺板片(1)の平行な二辺(2)(2)に凹凸状くし歯辺部(17)を形成し、単位板片材(6)を作製し、次に、色の相違する単位板片材(6)を、上記くし歯辺部(17)の相互噛合及び接着によって順次連続させて定尺帯板状中間材(7)を作製し、その後、該帯板状中間材(7)を長手方向に沿って小幅寸法(w)に切断分割して、小帯状ひご(8)を作製し、該小帯状ひご(8)を織ってスダレとするための織り糸(12)を、上記ひご(8)に於て上記くし歯辺部(17)相互の接着による色の変化境界部(13)に、対応して配置することを特徴とする木製スダレの製法。
【請求項5】
複数枚の上記端尺板片(1)は、予め、減圧加圧含浸法によって、塗料(X)を内部まで含浸させて、色の相違する2種類以上のものを作製する請求項4記載の木製スダレの製法。
【請求項1】
天然木材の矩形状の端尺板片(1)の平行な二辺(2)(2)を、鋭角の傾斜角度(θ)をもって削って片刃型勾配面(5)を上記二辺(2)(2)の各々に形成して、単位板片材(6)を作製し、次に、色の相違する単位板片材(6)を上記勾配面(5)の接着によって順次連続させて定尺帯板状中間材(7)を作製し、その後、該帯板状中間材(7)を長手方向に沿って小幅寸法(w)に切断分割して、小帯状ひご(8)を作製し、該小帯状ひご(8)を織ってスダレとするための織り糸(12)を、上記ひご(8)に於て上記勾配面(5)相互の接着による色の変化境界部(13)に、対応して配置することを特徴とする木製スダレの製法。
【請求項2】
複数枚の上記端尺板片(1)は、予め、減圧加圧含浸法によって、塗料(X)を内部まで含浸させて、色の相違する2種類以上のものを作製する請求項1記載の木製スダレの製法。
【請求項3】
上記傾斜角度(θ)を5°以上12°以下に形成した請求項1又は2記載の木製スダレの製法。
【請求項4】
天然木材の矩形状の端尺板片(1)の平行な二辺(2)(2)に凹凸状くし歯辺部(17)を形成し、単位板片材(6)を作製し、次に、色の相違する単位板片材(6)を、上記くし歯辺部(17)の相互噛合及び接着によって順次連続させて定尺帯板状中間材(7)を作製し、その後、該帯板状中間材(7)を長手方向に沿って小幅寸法(w)に切断分割して、小帯状ひご(8)を作製し、該小帯状ひご(8)を織ってスダレとするための織り糸(12)を、上記ひご(8)に於て上記くし歯辺部(17)相互の接着による色の変化境界部(13)に、対応して配置することを特徴とする木製スダレの製法。
【請求項5】
複数枚の上記端尺板片(1)は、予め、減圧加圧含浸法によって、塗料(X)を内部まで含浸させて、色の相違する2種類以上のものを作製する請求項4記載の木製スダレの製法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−254848(P2011−254848A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129067(P2010−129067)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【特許番号】特許第4780426号(P4780426)
【特許公報発行日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(390037774)井上スダレ株式会社 (34)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【特許番号】特許第4780426号(P4780426)
【特許公報発行日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(390037774)井上スダレ株式会社 (34)
【Fターム(参考)】
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