説明

木調外観を付加した樹脂成形品

【課題】本発明の課題は、使用する樹脂の種類を問わず、木調外観に優れた成形品を提供することにある。
【解決手段】着色材と熱可塑性樹脂とからなる着色マスターバッチを塊状にして基材熱可塑性樹脂に混合した樹脂原料を押出成形した樹脂成形品であって、該マスターバッチは1個あたりの質量が平均0.1g以上10g以下の塊状にされており、該マスターバッチの塊は、上記樹脂原料1kgあたり0.3〜100個の範囲の個数でかつ上記樹脂原料に対して0.03〜10質量%の範囲の量で添加混合した樹脂原料を押出成形すると、上記塊状マスターバッチは基材樹脂中に筋状に押出され、木調外観となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然木様の外観を有する樹脂成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の樹脂成形品を製造する手段としては、基材樹脂に着色材と熱可塑性樹脂とからなるペレット状の着色マスターバッチを混合して押出成形を行なっているが、この際基材樹脂の溶融粘度よりも着色マスターバッチ樹脂の溶融粘度を高く設定したり、基材樹脂の溶融温度を着色マスターバッチ樹脂の溶融温度よりも高く設定する方法が採られていた(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−217325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来方法にあっては、基材の樹脂とマスターバッチの樹脂との種類の選択自由度が小さいこと、溶融粘度や溶融温度の差が小さいこと、基材樹脂にマスターバッチが均一に混合してしまい、明確な天然木様模様が得られにくいこと、等の問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するための手段として、着色材と熱可塑性樹脂とからなる着色マスターバッチを塊状にして基材熱可塑性樹脂に混合した樹脂原料を押出成形した樹脂成形品であって、該マスターバッチは1個あたりの質量が平均0.1g以上10g以下の塊状にされており、該マスターバッチの塊は、上記樹脂原料1kgあたり0.3〜100個の範囲の個数でかつ上記樹脂原料に対して0.03〜10質量%の範囲の量で添加されているを提供するものである。
該マスターバッチの着色材含有量は15〜60質量%に設定されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
〔作用〕
本発明では、着色マスターバッチを従来のペレット状よりも大きなサイズ、例えば1個あたりの質量が0.1g以上10g以下の塊状にし、従来のペレット状マスターバッチの添加個数よりも少ない個数、例えば樹脂原料1kgあたり100個以下の個数でかつ上記樹脂原料に対して10質量%以下の量で添加するので、基材樹脂の溶融粘度や溶融温度がマスターバッチの溶融粘度や溶融温度が同一か、あるいはそれよりもある程度高くなっても、上記塊状のマスターバッチは基材樹脂に均一に混合しにくい。したがってこの場合でも明確な天然木様模様が付された成形品を得ることが出来、基材樹脂やマスターバッチ樹脂の種類の選択の自由度が拡がる。
【0007】
〔効果〕
本発明は着色材と熱可塑性樹脂とからなる着色マスターバッチを塊状にして基材熱可塑性樹脂に混合した樹脂原料を押出成形するので、使用樹脂の種類に制限されずに優れた木調外観を有する成形品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、基材樹脂とマスターバッチ樹脂とに使用される熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレンターポリマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、フッ素樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリエステル、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性ウレタン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等が例示される。本発明にあっては、上記したように基材樹脂の溶融温度とマスターバッチ樹脂の溶融温度とはどちらが高くてもよいが、基材樹脂の溶融温度の方がマスターバッチ樹脂の溶融温度よりも高いものを選択することが望ましい。
【0009】
基材樹脂やマスターバッチ樹脂として使用される熱可塑性樹脂は、樹脂製品の廃品から回収された再生樹脂であってもよい。例えばポリエステル樹脂の再生品は、ペットボトルの廃品から大量に回収されている。
再生樹脂の場合には、再生過程で樹脂が劣化して得られる成形品の耐衝撃性等の物性が低下するので、例えばゴムやエラストマー等の耐衝撃性改良材、あるいは溶融粘度を高くする増粘剤や高分子化剤等を添加することが望ましい。例えば再生ポリエステル樹脂の場合には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)等のポリオレフィン系樹脂またはエラストマー、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEBS)等のスチレン系エラストマー等の高い溶融粘度を有する樹脂またはエラストマーが増粘剤とし使用され、例えばエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−ビニルイソシアネート共重合体等のエチレン系共重合体、上記エチレン系共重合体にスチレンをグラフト共重合せしめたポリスチレングラフトエチレン系共重合体、エポキシ基含有SBS、エポキシ基含有SEBS、エポキシ基含有EEA、カルボキシル基含有SBS、カルボキシル基含有SEBS、カルボキシル基含有EEA等のポリエステル樹脂と反応可能な官能基を有する樹脂またはエラストマーが高分子化剤として使用される。
【0010】
上記着色マスターバッチに使用される着色材としては、例えばクロム黄、亜鉛黄、カドミウムエロー、黄色酸化鉄、黄土、雄黄、アゾ系黄、ナフトールエローS、ハンザエロー類、ピグメントエローL、ベンジジンエロー類、パーマネントエローNCG、バルカンファストエロー類、タートラジンレーキ、キノリンエローレーキ、アンスラゲンエロー6GH等の黄色顔料、酸化鉄、アンバー等の褐色顔料、その他所望により橙色顔料、赤色顔料等の一種または二種以上を配合した天然木の木目色彩を与える顔料が使用されるが、基材樹脂にもチタン白や上記顔料が基材着色用として使用されてもよい。
【0011】
本発明の着色マスターバッチを調製するには、上記したマスターバッチ樹脂に上記顔料を添加して溶融混練し、押出成形によってペレット状に成形する。上記マスターバッチ中に上記顔料は通常15〜60質量%程度になるように添加される。
【0012】
本発明において、上記マスターバッチのペレットの大きさは、1個あたりの質量が平均0.1g以上10g以下に設定されることが望ましい。上記マスターバッチのペレットの大きさが0.1gに満たない場合には、マスターバッチ溶融物が基材樹脂溶融物に混ざってしまい、成形品の木調模様が明確にならず、また10gを越えると年輪様の筋が太くなりすぎ、木調模様とは異なった印象の模様となる。
【0013】
本発明の樹脂成形品を製造するには、基材樹脂中に上記塊状マスターバッチを添加混合した樹脂原料を、所定の形状のダイ、例えばTダイ、異形ダイを取付けた押出機によって押出成形する。この場合、上記樹脂原料1kg中に上記塊状マスターバッチは0.3〜100個の範囲の個数で添加される。上記塊状マスターバッチの添加個数が100個を越えると、あるいは0.3個に満たないと成形品の木調模様が認識出来ない状態になる。また該樹脂原料に対して上記マスターバッチは10質量%以下、0.03質量%以上の添加量に設定される。
【0014】
上記押出成形は使用する樹脂の種類によっても異なるが、通常200〜280℃の温度で行なわれる。
【0015】
上記押出成形によって塊状マスターバッチ溶融物は、基材樹脂溶融押出物中に年輪様の筋状に混合して天然木調外観を有する。
【0016】
以下に本発明の実施例を説明する。
〔基材樹脂の配合〕
ペットボトル廃品粉砕物(融点254℃) 100質量部
高分子化剤*1 2 〃
増粘剤*2 7 〃
顔料*3 2 〃
*1:スチレングラフトエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(EGMA−g −PS)
*2:エチレンエチルアクリレート共重合体
*3:チタン白
〔着色マスターバッチの配合〕
高密度ポリエチレン(融点135℃) 80質量部
顔料*4 20 〃
*4:アゾ系黄:酸化鉄=1:1質量比混合物
【0017】
上記マスターバッチは塊状(ペレット状)に成形され、その大きさは1個あたり表1に示す質量に設定された。
上記マスターバッチ塊を上記基材樹脂に種々の量で混合し、単軸押出機を使用し、該押出機にTダイまたは異形ダイを取付け、温度条件C1〜D=200〜280℃で押出成形し、巾300mm、厚さ3mmの板状成形体(300×3板)、巾300mm、厚さ10mmの板状成形体(300×10板)、巾60mm、厚さ30mmの異形成形体を作成し、外観を目視で観察した。結果を表1に示す。
【0018】
【表1】

【0019】
表1を参照すると、本発明の実施例1〜8の試料はいずれも木目がはっきり看取されるか、あるいは木目が容易に看取出来る。しかしマスターバッチ1個あたりの質量が0.1g以下(0.05g)の比較例1、マスターバッチの添加個数が0.3個以下(0.2個)の比較例2、100個以上(120個)の比較例3、マスターバッチの添加量が0.03質量%以下(0.02質量%)の比較例4、10質量%以上(13質量%)の比較例5は、いずれも木目がみえにくゝなり、良好な木調外観が得られない。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の樹脂成形品は木調外観を有するので、人工木として椅子、手すり、家具等の材料に有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色材と熱可塑性樹脂とからなる着色マスターバッチを塊状にして基材熱可塑性樹脂に混合した樹脂原料を押出成形した樹脂成形品であって、該マスターバッチは1個あたりの質量が平均0.1g以上10g以下の塊状にされており、該マスターバッチの塊は、上記樹脂原料1kgあたり0.3〜100個の範囲の個数でかつ上記樹脂原料に対して0.03〜10質量%の範囲の量で添加されていることを特徴とする木調外観を付加した樹脂成形品。
【請求項2】
該マスターバッチの着色材含有量は15〜60質量%に設定されている請求項1に記載の木調外観を付加した樹脂成形品。

【公開番号】特開2006−326842(P2006−326842A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−148998(P2005−148998)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】