説明

木質系部材

【課題】 耐候性にすぐれた木質系部材を提供すること。
【解決手段】 木質系基材の表面層に、光安定剤とを含んでなる耐候性改質組成物による処理層が形成され、さらに当該処理層上に接着剤層を介してフィルム層が形成されてなることを特徴とする、耐候性にすぐれた木質系部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅用建材等に用いられる木質系部材に関し、特に窓枠用部材等の高耐候性が要求される木質系部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木材の集成材を基材とし、この基材の表面に耐候性向上のためのフィルムを積層したいわゆる化粧部材(ラッピング部材)は、床材、壁材あるいは窓枠用部材として広く用いられている。
【0003】
これらの建築用部材のなかでも、直接外光に晒される部分は、劣化や変色が進行しやすい。このような太陽光による木材の劣化や変色は、木材の構成成分であるリグニン成分が太陽光(特に紫外線)によって光分解することによって生じることが知られている。
【0004】
上記のような木材の劣化を防止して耐候性を向上させる技術としては従来から様々な方法が提案されている。
たとえば、特開平9−157626号公報には、特定のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を分散させたポリウレタン系接着剤をラッピング用接着剤とし、この接着剤を介して化粧シートを木質基材の表面にラッピング加工する技術が開示されている。
【0005】
さらに、特表2003−508503号公報には、立体障害アミンN−オキシルまたはN−ヒドロキシルの水溶液またはエマルションによって木材を安定化する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平9−157626号公報
【特許文献2】特表2003−508503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来提案されている木質系部材の耐光性を向上させる技術はいずれも有効なものである。しかしながら、住宅用建材のうちでも内装用部材のような比較的高級な外観ならびに品質が要請される高グレード部材においては、太陽光による品質劣化を極力生じさせないことが肝要であり、特に太陽光に直接晒される窓枠材等の部材にあっては、従来一般的に必要とされる耐候性よりもはるかに高い耐候性が要求される。本発明者の知見によれば、従来知られている耐光性の改良技術は、いずれもこのような特定の高耐光性が要請される木質系部材に対しては必ずしも充分満足のいくものではない。
【0007】
したがって、本発明は、比較的高いグレードの木質系部材であって、太陽光に直接晒される部位に使用される木質系部材の耐光性を飛躍的に向上させるために有効な技術を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係る木質系部材は、木質系基材の表面層に、光安定剤を含んでなる耐候性改質組成物による処理層が形成され、さらに当該処理層上に接着剤層を介してフィルム層が形成されてなることを特徴としている。
【0009】
本発明の好ましい態様においては、上記の耐候性改質組成物による処理層の形成と前記接着剤層の形成は別個の工程で行われる。
【0010】
また、上記耐候性改質組成物は、溶媒として、アルコール0〜100%と水0〜100%を含有することが好ましい。
【0011】
さらに、本発明においては、所望により、上記耐候性改質組成物が、さらに酸化防止剤を含有するものであることができる。
【0012】
本発明は、上記木質系部材であって、サンシャインウエザーメーター(ブラックパネル温度63℃±3℃、水噴射12分/60分)による耐候性試験において、照射時間2000時間後における接着強度が3kgf/inch以上であり、耐熱クリープ20mmkgf/inch以下であり、かつ色差変化がΔE10以下であることを特徴とする耐候性にすぐれた木質系部材を包含する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、木質系基材の表面層に、光安定剤を含んでなる耐候性改質組成物による処理層が形成され、さらに当該処理層上に接着剤層を介してフィルム層が形成されてなることによって、耐候性にすぐれた木質系部材を得ることができる。
【0014】
このような本発明によれば、後記実施例に記載されるとおり、木質系基材の表面層に所定の処理層を形成することによって木質系部材表面のフィルム層の付着強度が顕著に向上する。木質系基材とフィルム層との間には接着剤層が介在していることから、接着剤層自体ではなく、その下層となる木質系基材について検討し、その基材の表面および内部部分に所定の処理層を形成することによって、耐候性、特にフィルム層の付着強度、が顕著に向上したことは思いがけないことである。
【0015】
このような本発明による木質系部材は、優れた耐候性を備えたものであることから、直射日光や水分や乾燥に繰り返し曝される木質系部材、例えば住宅用外装材や、建具部材、例えば窓枠部材、として特に適したものである。単に、木質系部材の表面に不透明の耐候性着色塗料を塗布した木質系部材と異なり、木質系材料としての意匠性、風合い、素材感を実質的に損なうことなく、実用上十分な耐候性が得られている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明による木質系部材は、木質系基材の表面層に、光安定剤とを含んでなる耐候性改質組成物による処理層が形成され、さらに当該処理層上に接着剤層を介してフィルム層が形成されてなることを特徴としている。
【0017】
<木質系材料>
本発明において基材となる木質系材料は、特に限定されるものではなく、従来公知の全ての木質系材料が使用できる。天然無垢木材の他に、集成材などの木質系材料に広く適用可能である。
【0018】
針葉樹、広葉樹の違いや樹種等は選ばないが、一般に、本発明の耐候性改質組成物の内部への浸透性が良好な木質系材料の方が、この耐候性改質組成物による処理効果が顕著に見られる。
【0019】
<耐候性改質組成物>
成 分
本発明による耐候性改質組成物は、本質的に、光安定剤を含んでなる。
【0020】
なお、本発明において、「耐候性改質組成物」とは、基材である木材ならびに木質系料の劣化を防止して耐候性を向上させる作用を有する組成物、および光安定剤、紫外線吸収剤もしくは酸化防止剤等が配合されたフィルム、紙等の構成部材の劣化を防止し耐候性を向上させる作用を有する組成物をすべて包含する意味である。そして、本発明において処理に使用する耐候性改質組成物は、上記の光安定剤成分と、溶媒としての水、アルコール等の溶媒成分とを含むものである。本明細書では、例えば水、アルコール等の実質的に改質作用が期待できない液体成分を「溶媒成分」といい、上記の光安定剤等の前記「溶媒成分」以外の成分を「改質薬剤成分」ということがある。
【0021】
本発明における光安定剤としては、好ましくはヒンダートアミン系光安定剤(HALS)を用いることができる。ヒンダートアミン系光安定剤は、リグニンの劣化プロセスの過程で生じるラジカルを捕捉する作用を有し、このラジカル捕捉作用によってリグニンの分解を抑制するものと考えられる。このようなヒンダートアミン系光安定剤(HALS)としては、ポリ[(6‐モルフォリノ‐S‐トリアジン‐2,4‐ジイル)〔2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジル〕イミノ]‐ヘキサメチレン[(2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジル)イミノ]、1,6‐ヘキサンジアミン,N,N’‐ビス(1,2,2,6,6‐ペンタメチル‐4‐ピペリジル),ポリマーズモルホリン‐2,4,6‐トリクロロ‐1,3,5‐トリアジン、3,5‐ジ‐4‐ヒドロキシベンゾイックアシド,n‐ヘキサデシルエステル、ビス(1,2,2,6,6‐ペンタメチル‐4‐ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6‐ペンタメチル‐4‐ピペリジニル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6‐ペンタメチル‐4‐ピペリジニル)‐[[3,5‐ビス(1,1‐ジメチルエチル)‐4‐ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネートなどが好ましく用いられ得る。
【0022】
本発明による耐候性改質組成物は、所望により、更に紫外線吸収剤、HALS以外のラジカル捕捉剤、微生物抑制剤、その他の成分を含むことができきる。
【0023】
そのような所望により配合される紫外線吸収剤としては、例えば(イ)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、(ロ)トリアジン系紫外線吸収剤、(ハ)ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、あるいは(ニ)これらの混合物が好ましく用いられ得る。(イ)のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2(2’‐ヒドロキシ‐5’‐メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’‐ヒドロキシ‐3’‐t‐ブチル‐5’‐メチルフェニル)5クロロベンゾトリアゾール、2(2’‐ヒドロキシ‐3’5‐ジ‐t‐ブチルフェニル)5クロロベンゾトリアゾール、2‐(5‐メチル‐2‐ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2‐[2‐ヒドロキシ‐3’5‐ビス(α,α‐ジメチルベンジル)フェニル]‐2H‐ベンゾトリアゾール、2‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐2‐ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、メチル‐2‐ヒドロキシフェニル)‐5‐クロロベンゾトリアゾール、2‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐2‐ヒドロキシフェニル)‐5‐クロロベンゾトリアゾール、2‐(3,5‐ジ‐t‐アミル‐2‐ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2‐(2’‐ヒドロキシ‐5’‐t‐オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどが好ましく用いられ得る。(ロ)のトリアジン系紫外線吸収剤としては、2‐(4,6‐ジフェニル‐1,3,5‐トリアジン‐2‐イル)‐5[(ヘキシル)オキシ]‐フェノールなどが好ましく用いられ得る。(ハ)のベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4‐ジヒドロキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐メトキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐オクチルオキシベンゾフェノン、4‐ドデシルオキシ‐2‐ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ベンジルオキシ‐2‐ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’‐テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’‐ジヒドロキシ‐4,4’‐ジメチトキシルベンゾフェノンなどが好ましく用いられ得る。
【0024】
配合量
本発明における耐候性改質組成物は、必須成分として光安定剤を含有する。光安定剤の配合量は、本発明の効果が認められる範囲内で任意であり、具体的な光安定剤の種類によって異なるが、0.1〜4.0重量%(改質薬剤成分と溶媒成分との合計を100重量%とする)が好ましい。紫外線吸収剤の配合量が4.0重量%を超える場合には、薬剤自体が劣化することがあり、一方、0.1重量%未満の場合には、劣化抑制効果が見られないことから好ましくない。
【0025】
上記の本発明での耐候性改質組成物は、溶剤として、水、有機溶媒およびこれらの混合溶媒を含有することが好ましい。有機溶媒としては、アルコール、中でもエタノール、および塩化メチレンが好ましい。本発明において特に好ましい溶媒としては、水45〜55重量%およびエチルアルコール45〜55重量%(水とエチルアルコールの合計量を100%とする)を含有するものを例示することができる。
【0026】
上記の各成分は、改質薬剤成分のいずれかの成分に配合することも、溶媒成分中に配合しておくことができ、また耐候性改質組成物による処理の直前に耐候性改質組成物に配合することもできる。場合により、予め木質系基材に表面に塗布あるいは木質系基材の内部に含浸させておき、その後に耐候性改質組成物による処理を行って木質系基材の表面あるいは内部で各成分の配合を行うことも可能である。
【0027】
<耐候性改質組成物による処理>
本発明においては、フィルム層の形成に先だって耐候性改質組成物による処理層を形成する。本発明において、この処理層の技術的意味については後述する。 したがって、本発明の好ましい態様においては、上記の耐候性改質組成物による処理層の形成と前記接着剤層の形成は別個の工程で行われる。
【0028】
本発明による耐候性改質組成物を木質系基材表面へ塗布する際には、耐候性改質組成物を液状で使用することが好ましい。例えば、水、有機溶媒およびこれらの混合溶媒中に、耐候性改質組成物を溶解あるいは懸濁させて木質系基材表面へ塗布することができる。
【0029】
耐候性改質組成物の木質系基材表面へ塗布量は、本発明の効果が認められる範囲内で任意であり、具体的な光安定剤および木質系基材表面の種類によって異なるが、一般に20〜50g/mが好ましい。
【0030】
耐候性改質組成物の木質系基材表面へ塗布は、通常、常温常圧下で実施されるが、高温高圧下で実施することができ、また場合により低温減圧下で実施することもできる。また、温度および/または圧力条件を途中で変化させることもできる。
【0031】
耐候性改質組成物を構成する各改質薬剤成分は、木質系基材を処理する際に、前記溶媒中において良好な溶解状態または分散状態が得られるものであるならばどのような形態であってもよい。すなわち、改質薬剤成分は、それぞれ、溶媒および/または他の各改質薬剤成分と混合する以前の段階では、常温で固体状のものでも液体状のものでもよく、溶媒および/または他の各改質薬剤成分との配合によって木質系基材表面への塗布および木質系基材内部へ浸透可能な状態のものであれば本発明では使用することができる。また、木質系基材への塗布、浸透の後の溶媒の気化あるいは温度等の変化によっていずれかの成分の析出が認められるものであってもよい。また、耐候性改質組成物を構成するいずれかの成分の化学的変化や木質系基材中の物質との相互的作用、あるいは紫外線等の作用によって、その化学的あるいは物理的性状が変化するものであってもよい。
【0032】
<フィルム層および接着剤層>
本発明による木質系部材のフィルム層としては、従来のこの種の木質系部材において用いられたいたもの、好ましくは、例えばオレフィンフィルムを用いることができる。
【0033】
本発明による木質系部材の接着剤層も、従来のこの種の木質系部材において用いられていたもの、好ましくは、例えばウレタン系接着剤を用いることができる。接着剤の木質系基材表面へ塗布厚は、5μm〜200μm、特に20μm〜50μm、になる範囲が好ましい。上記塗布量が5μm未満の場合には接着効果が得られなくなり、一方、50μmを超えると、表面に所謂ダクが出て外観上好ましくない。
【0034】
<木質系部材>
本発明による耐候性に優れた木質系部材は、前記の通りに、木質系基材の表面層に、ヒンダートアミン系光安定剤とを含んでなる耐候性改質組成物による処理層が形成され、さらに当該処理層上に接着剤層を介してフィルム層が形成されてなること、を特徴とするものである。
【0035】
ここで、「耐候性改質組成物による処理層」とは、本発明の耐候性改質組成物による処理によって木質系部材の生得的な基本特性に変化が生じる領域および変化を生じさせる領域の両者をいうものである。従って、本発明での「耐候性改質組成物による処理層」には、例えば木質系部材中の耐候性改質組成物が浸透した領域(すなわち、含浸領域)、この浸透した耐候性改質組成物の作用ないしその影響によって木質系部材の特性に変化が生じた領域、および木質系基材に浸透していない木質系基材表面上の耐候性改質組成物からなる領域が、包含される。
【0036】
耐候性改質組成物の処理層の厚さや大きさ等は、木質系部材の材質、部材表面の細胞組織や構造、部材表面の凹凸粗さ、および改質薬剤成分や溶媒成分の種類、これらの組み合わせによって異なる場合がある。処理層の厚さを正確に測定することは困難であるが、木質系基材の表面層に特定の耐候性改質組成物による処理層が形成された本発明による木質系部材によれば、この処理層が形成されていない木質系部材に対し耐候性の顕著な向上が認められる。
【0037】
このような本発明は、上記木質系部材であって、サンシャインウエザーメーター(ブラックパネル温度63℃±3℃、水噴射12分/60分)による耐候性試験において、照射時間2000時間後における接着強度が3kgf/inch以上であり、耐熱クリープ20mmkgf/inch以下であり、かつ色差変化がΔE10以下であることを特徴とする耐候性にすぐれた木質系部材を包含する。
【実施例】
【0038】
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明は、下記の実施例の態様に限定されるものではない。
【0039】
<実施例1>
下記組成からなる耐候性改質組成物を用意した。
【0040】
耐候性改質組成物
HALSとして、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、品番:CGL1198を用い、これを溶媒(水/エタノール=1:1)に溶解させて、濃度2%の塗布液を調製した。
【0041】
この塗布液を、木質系部材(グメリナ集成材)の表面に、塗布厚40〜50μmで塗布した。
【0042】
常温で1時間乾燥したのち、その表面に湿気硬化型ウレタン系接着剤を40μmの厚さで塗布し、更にその上に厚さ160μmのオレフィンフィルムを設けて、本発明による木質系部材を製造した。
【0043】
この木質系部材から、縦150mm×幅60mm×厚さ24mmの大きさの試料片を切り出し、この試料片について下記の耐候性試験を行った時のオレフィンフィルムの剥離強度、耐熱クリープおよび色差変化を評価した。
【0044】
結果は、表1および図1〜3に示される通りである。尚、表1および図1〜3には、試料の初期特性をブランクとして表示した。
【0045】
耐候性試験および評価方法
耐候性試験、オレフィンフィルムの剥離強度、耐熱クリープおよび色差変化の評価方法を下記に示す。
【0046】
(1)耐候性試験
スガ試験機「BP6313」サンシャインウエザーメーター(形式:S80D)を用い、ブラックパネル温度63℃±3℃、水噴射12分/60分の条件に従い、上記の各試料を、400時間、1000時間、1500時間、2000時間設置することによって行った。
【0047】
(2)オレフィンフィルムの剥離強度
上記耐候性試験に付された各試料のオレフィンフィルムの表面にカッター等で1inch巾に切り込みを入れて、180度方向に剥離し、速度200m/minで強度を測定した。
【0048】
(3)耐熱クリープ
上記耐候性試験に付された各試料のオレフィンフィルムの表面にカッター等でinch巾に切り込みを入れて、90度方向に500gの重りクリップでつける。60℃の温度下に1時間つるした後、剥離長さを測定した。
【0049】
(4)色差変化
耐候性試験に付される前の試料(ブランク)の表面の色と、上記の耐候性試験に付された後の試料の表面の色とを、それぞれLの表色系で測定し、両者の色差(ΔE)を求めた。
【0050】
<比較例1〜4>
耐候性改質組成物の塗布を行なわない以外は実施例1と同様にして、木質系部材(グメリナ集成材)の表面にウレタン系接着剤を塗布し、更にその上に厚さ160μmのオレフィンフィルムが設けられた試料(比較例1)を得た。
【0051】
ウレタン系接着剤中に、表1に記載されように紫外線安定剤、HALSおよび酸化防止剤配合した試料(比較例2〜4)を得た。
【0052】
上記の比較例1〜4の試料片について、実施例1と同様の耐候性試験を行い、同様にオレフィンフィルムの剥離強度、耐熱クリープおよび色差変化を評価した。
結果は、表1および図1〜3に示される通りである。
【表1】

【0053】
<実施例2〜14および参考例1〜7>
実施例1の耐候性改質組成物を使用して、表2に記載される条件に従って、各試料片(実施例2〜14および参考例1〜7)を得た。各試料について、実施例1と同様の耐候性試験を行って、色差の変化を評価した。
結果は、表2に示される通りである。
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施例1、比較例1〜4の各試料の接着強度の変化を示す図
【図2】実施例1、比較例1〜4の各試料の耐熱クリープの変化を示す図
【図3】実施例1、比較例1〜4の各試料の色差の変化を示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質系基材の表面層に、光安定剤を含んでなる耐候性改質組成物による処理層が形成され、さらに当該処理層上に接着剤層を介してフィルム層が形成されてなることを特徴とする、耐候性にすぐれた木質系部材。
【請求項2】
光安定剤がヒンダードアミン系のものである、請求項1に記載の耐候性にすぐれた木質系部材。
【請求項3】
前記耐候性改質組成物による処理層の形成と前記接着剤層の形成が別個の工程で行われる、請求項1に記載の木質系部材。
【請求項4】
前記耐候性改質組成物が、アルコール0〜100%と水0〜100%を含有する溶剤を含む、請求項1に記載の木質系部材。
【請求項5】
前記耐候性改質組成物が、さらに酸化防止剤を含有する、請求項1に記載の木質系部材。
【請求項6】
請求項1に記載の木質系部材であって、サンシャインウエザーメーター(ブラックパネル温度63℃±3℃、水噴射12分/60分)による耐候性試験において、照射時間2000時間後における接着強度が3kgf/inch以上であり、耐熱クリープ20mmkgf/inch以下であり、かつ色差変化がΔE10以下であることを特徴とする、耐候性にすぐれた木質系部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−7515(P2006−7515A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186176(P2004−186176)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(302045705)トステム株式会社 (949)
【Fターム(参考)】