説明

材料試験機

【課題】 試験片の中心軸を負荷軸にあわせることを容易に行えるようにする。
【解決手段】 試験機本体のテーブル1に固定された投光器7は上掴み具5と下掴み具6に間で挟持される試験片Sの表面に負荷軸を示す直線状の輝線を投光する。投光器7が投影する輝線は負荷軸と一致するようにあらかじめ調整されているので、この輝線が試験片の中心に来るように目視によって確認しながら試験片の位置調整を行うだけで試験片の中心軸を負荷軸と一致させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験片に引張や圧縮などの負荷を与えて試験片の歪量などを測定し、その結果得られるデータから材料の特性を計測する試験を行う材料試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
材料試験機は板状や棒状に形成された試験片の両端を掴み具によってつかみ、その掴み具をアクチュエータによって一つの方向に駆動することにより試験片に引張や圧縮などの負荷を与え、負荷が加えられたときの試験片の歪量(変形量)などを計測することによって材料の特性を計測する試験を行う。試験片に負荷を与えるアクチュエータとしては、油圧ユニットを駆動源とする電気油圧制御システムや、ネジ竿の回転によりそのネジ竿に螺合されたクロスヘッドを駆動する機械式駆動システムなどが利用されている。
【0003】
試験片に負荷を加えるに際して、試験片を掴む掴み具の片方の中心軸と他方の中心軸が互いに一致するとともに、アクチュエータによる駆動の方向も掴み具を結んだ直線の方向と一致することが要求される。これらは試験機の設計および組み立て調整の段階で慎重に実現される。理想的に位置調整された両掴み具の中心を結んだ直線は負荷軸と呼ばれる。
【0004】
1つの試験片を実際に試験する際には、特殊な用途を除けば、試験片の中心軸(すなわち形状的に試験片の中心である軸であって負荷を与えるべき方向と一致する直線)が上記した負荷軸に一致するように2つの掴み具にて把持する必要がある。仮に試験片の中心軸が負荷軸からずれていたり傾斜したりすると、得られた荷重と歪量との計測結果がその材料の正しい性質を表す値とはならない恐れがある。したがって従来から試験片の中心軸と負荷軸を簡単に合わせるための工夫がいろいろとなされており、図4にその例を示す。図4の下段の図が掴み具の正面図であり上段がその上面図である。たとえば図4(a)の例では、掴み具のつかみ歯21に目盛22を刻んでおき、つかみ歯の中央に試験片20を位置させやすくしている。また図4(b)の例では、つかみ歯23に当り板24を設けておき、決まった幅の試験片ではその当り板に押し当てるだけで試験片20の位置合わせができるようにしている。
【0005】
従来技術の一例として、特許文献1にはつかみ歯に位置を可変できる当り板を設けたことが記載されている。
【特許文献1】特開2005−156227
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
試験片の中心軸を負荷軸に一致させるために、掴み具のつかみ歯に目盛を設けた場合には、上側の掴み具の目盛を確認するには下から覗き込む必要があり、小さい試験片の場合には作業が困難であった。また、つかみ歯に当り板を設ける場合には、試験片の幅が変わるたびに当り位置を調節する必要があり、数種類の幅の試験片を試験する場合、調整に手間がかかり、間違いの原因ともなっていた。
【0007】
さらに、掴み具は試験片の形状や大きさに応じてさまざまなものを交換しながら使用されるが、そのすべてに目盛や当り板を用意することは大変であった。また、掴み具を交換した場合には負荷軸と掴み具中心が一致しているとは限らないので試験片の中心を掴み具の中心とあわせたとしても、それが負荷軸と一致しているとは限らないという問題もあった。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、試験片の中心軸を簡単に負荷軸に合わせることができる材料試験機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するために、試験片に一軸方向の負荷をかけてそのときの負荷力と試験片の歪量を計測する材料試験機において、前記試験片の装着位置に前記負荷力の負荷軸を指し示す形状を投影する投光器を備えたことを特徴とする(請求項1)。
【0010】
このようにすると投光器が光の映像を試験片の表面に映し出し、その映像の形状が負荷軸の位置を示すので、操作者は指し示された負荷軸の位置に試験片の中心を合わせればよいだけなので容易に軸合わせを行うことができる。
【0011】
この投光器が投光する形状は線状の輝線とすることができる(請求項2)。明るい線が映像として試験片の表面に現れていれば、それを中心にして試験片の幅方向を均等に振り分ければよいので、試験片の中心軸を負荷軸に合わせることが容易である。
【0012】
投光器が投影する形状は線状の輝線と限らずさまざまな形状とすることができる。たとえば、負荷軸を表す線は輝線ではなく線状の影でもよい。また、線状の形状ではなく、三角形や四角形の頂点で負荷軸の位置を示すようにして、その形状を試験片の一端と他端に2つ投影するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、掴み具とは無関係に、投光器によって常に負荷軸の位置が試験片上で示されているので、試験片の中心軸を負荷軸と一致させることが容易である。従来のように試験片の中心軸を掴み具の中心に単に目視で合わせる場合にはミリメートルオーダーの誤差が生じていたと考えられるが、本発明によれば作業者に負担をかけることなくサブミリメートル程度には誤差を少なくすることができる。このような試験片のセッティングを正しく行うことによって測定される材料の特性も正しいものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の材料試験機の構成を示す図である。
【0015】
テーブル1とその脇に立設されたフレーム2および最上端のクロスヨークなどによって試験空間が形成されている。フレーム2には上下動可能なクロスヘッド3が取付けてあり、このクロスヘッド3にはロードセル4を介して上掴み具5が取り付けられている。テーブル1には下掴み具6が取り付けられ、それらの上下掴み具の間に試験されるべき試験片Sが取り付けられる。クロスヘッド3はフレーム2に内蔵されたネジ竿をモータにより回転することで上下に動かすことができ、上下の掴み具によって把持された試験片Sに引張りなどの負荷を与えることができる。そのときの力はロードセル4によって計測され、試験片Sの歪量は試験片に取付けられた伸び計(図示していない)によって計測される。それらのデータは制御装置(図示していない)に取り込まれ、試験片Sの材料としての特性が測定および演算される。
【0016】
試験片Sが装着される上下の掴み具の近傍には投光器7がテーブル1から立ち上がった支持具8の上に設置されている。この投光器は試験片Sの表面に負荷軸の位置を示す光の像を投影するものであり、その投光する形状が指し示す位置が負荷軸と一致するように事前に調整されている。
【0017】
図2は掴み具付近を側面(図1の右であって投光器7の方向)から見た図である。投光器7からは試験片の長さ方向に伸びる線状の輝線が試験片に投光されており、その光の線9が試験片上に現れている。この輝線が試験機の負荷軸を表している。なお、図2における左右方向が試験片Sの幅方向であり、試験片の幅方向の中心軸を負荷軸と一致させることがここでの課題である。投光器7は試験片の表面(幅方向の面)とほぼ垂直な方向から光を投光できるように配置されている。
【0018】
ダンベル形に形成された板状の試験片Sを上下の掴み具によって挟持する場合の手順を説明する。掴み具のつかみ歯の間隔はハンドル操作によって手動で開閉できるとする。まず上下の掴み具におけるつかみ歯の間隔を試験片が自由に差し込める程度に開いておく。次に試験片を掴み具の位置にもって行き、投光器からの輝線9が試験片の中心に来るように試験片の位置を調節しながら掴み具を軽く閉める。目視によって輝線9を中心として試験片の幅方向が同じ量だけ振り分けられれば試験片の中心軸が負荷軸と一致していると判断して掴み具を最終的な力で閉める。もし試験片の中心軸と輝線9が一致していないと感じたら掴み具をわずかに緩めて試験片の位置を再調整する。
【0019】
上記の手順で、試験片の中心軸が負荷軸と一致しているかどうかの判断は輝線9との比較だけで済むので非常に分かりやすく簡単である。より確実に行う場合には、あらかじめ試験片の中心を示す線を鉛筆やスタンプなどで試験片自身に描いておけば、より正確で迅速に試験片の位置合わせを行うことができる。
【0020】
投光器7が投光する輝線は電球やレーザあるいはLEDなどからなる光源とスリットで作ることができる。このときレンズを用いてスリットの像を試験片の位置で結像させるようにしてもよい。さらにはミラーやシリンドリカルレンズを用いて線状の輝線を作り出してもよい。また試験片に投影する映像は輝線ではなく線の部分が暗くて周囲が明るい線状の影でもよい。また上述の輝線は1点に集光するスポット光などを光学的に高速に走査して試験片上で線状に見えるようにしてもよい。
【0021】
投光器が投影する映像の例を図3に示す。図3(a)は上述で説明した輝線の例であって、Bの部分が明るい線状の像である。図3(b)は線状の影の例であって、周囲(Bの部分)が明るく線の部分が暗い(Dの部分)形状である。図3(c)は三角形を2つ並べたものであって、明るい(Bの部分)三角形の角Cが互いに対抗するように配置してある。この角CとCを結んだ仮想的な線が負荷軸を表している。この三角形の代わりに四角形や他の多角形の角を用いることもできる。この多角形は負荷軸を中心として線対称な形状であることが望ましい。
【0022】
上述の例では投光器7はテーブル1から立ち上がっている支持具8に固定するようにしているが、これは他の位置に取付けても同様な作用効果を奏することができる。例えば投光器7は試験機本体の左右に立設されているフレーム2に取付けてもよい。またクロスヘッド3に取付けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の材料試験機の概略構成図である。
【図2】負荷軸を示す映像が試験片上に投光された状態を示す図である。
【図3】投光される映像の例である。
【図4】従来の試験片の位置合わせの例である。
【符号の説明】
【0024】
1…テーブル、2…フレーム、3…クロスヘッド、4…ロードセル、5…上掴み具、6…下掴み具、7…投光器、8…支持具、9…輝線、S…試験片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験片に一軸方向の負荷をかけてそのときの負荷力と試験片の歪量を計測する材料試験機において、前記試験片の装着位置に前記負荷力の負荷軸を指し示す形状を投影する投光器を備えたことを特徴とする材料試験機。
【請求項2】
前記投光器が投光する形状は線状の輝線であることを特徴とする請求項1に記載の材料試験機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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