説明

杭位置測定用治具

【課題】杭頭部の位置を直接的に測定し、杭位置を簡便且つ正確に測定することができる杭位置測定治具を提供する。
【解決手段】掘削孔52に挿入した杭51の上部開口57に係合し該杭51の位置を測定するための杭位置測定用治具1である。本体2の中央に設けた水平器8と、本体2を上部開口57の中央に位置決めする拡大部6とを備えるから、拡大部6を上部開口57に係入すると共に、水平器8により本体2の中央を垂直に位置合わせすることにより、本体2の中央が上部開口57の中央に位置決めされ、治具1の基準位置である縦杆3を測定することにより、上部開口57の中央位置を正確に測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削孔に挿入した杭の位置を測定するために用いる杭位置測定用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の杭の施工方法として、プレボーリング工法が知られている。この工法は、地盤を予め掘削して掘削孔を設け、この掘削孔に根固め液や杭周固定液を充填し、或いは掘削土と攪拌混合してソイルセメント状とし、これら流動状硬化材料で満たされた掘削孔に、二次製品の杭を挿入する工法であり、前記杭の掘削孔への埋設は、杭頭部と杭施工機械の駆動ロッドとを回転キャップを介して連結し、この回転キャップを介して杭を回転させながら掘削孔に押し込むようにして実施される(例えば特許文献1及び特許文献2)。
【0003】
上記のプレボーリング工法では、掘削孔と杭との直径差などにより、杭の位置ズレが生じ易く、また、杭施工時には地盤より杭頭部が下がり、目視できない状況で施工が終了するため、杭の位置ズレ確認が難しいという問題がある。
【0004】
そして、前記杭の上部にはコンクリート基礎などが設けられ、該杭によりコンクリート基礎を支持するが、杭の位置がずれると、設計基準から外れ、流動状硬化材料が硬化する前であれば、杭を引き抜いて再挿入するなどして位置を直すことができるが、流動状硬化材料が硬化した後は、杭の位置を直すことができず、結果として、設計基準から外れた杭が発生してします。
【0005】
このような問題に対して、前記駆動ロッドの位置により杭の位置ズレを確認する工法が提案されているが、杭と駆動ロッドとは一体化されておらず、誤差が発生し易い。
【特許文献1】特開2001−336147号公報
【特許文献2】特開2007−297791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、杭頭部の位置を直接的に測定し、掘削孔内の杭位置を簡便且つ正確に測定することができる杭位置測定治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、掘削孔に挿入した杭の上部開口に係合し該杭の位置を測定するための杭位置測定用治具であって、本体の中央に設けた水平器と、前記本体を前記上部開口の中央に位置決めする位置決め部とを備えるものである。
【0008】
また、請求項2の発明は、前記位置決め部は、前記上部開口に係入し上方に向って拡大する拡大部を備えるものである。
【0009】
また、請求項3の発明は、前記拡大部は、周囲に設けられた複数の杆からなるものである。
【0010】
また、請求項4の発明は、前記本体の中央に縦杆を設け、この縦杆の上部に前記水平器を設けたものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の構成によれば、位置決め部を上部開口に係合すると共に、水平器により本体の中央を垂直に位置合わせすることにより、本体の中央と上部開口の中央とが位置決めされ、その治具の基準位置を測定することにより、上部開口の中央位置を正確に測定できる。
【0012】
また、請求項2の構成によれば、上部開口に上方から拡大部を挿入することにより、拡大部の中央が上部開口の中央に案内される。
【0013】
また、請求項3の構成によれば、複数の杆が上部開口に接することにより、上部開口の中央に治具の中央が位置決めされる。
【0014】
また、請求項4の構成によれば、地盤より下方の上部開口に位置決め部を係入し、この状態で、地上の水平器を視認して中央を垂直に位置合わせを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。各実施例では、従来とは異なる新規な杭位置測定用治具を採用することにより、従来にない杭位置測定用治具が得られ、この杭位置測定用治具について記述する。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の実施例1について、図1〜図5を参照して説明する。図1に示すように、杭51はコンクリートパイルなどからなり、上記背景技術で説明したように、プレボーリング工法により地盤に掘削孔52を掘削し、この掘削孔52に流動性硬化材料を入れた状態で、杭51を挿入する。この場合、図5に示すように、杭51の杭頭部53に回転キャップ54を連結し、杭施工機械55の駆動ロッド56により前記回転キャップ54と共に杭51を回転しながら、掘削孔52内に押し込み、前記杭頭部53は地盤より下方となり、その杭頭部53より前記回転キャップ53を取り外す。
【0017】
前記杭51は中空であり、その上部中央に、円形の上部開口57を有し、この上部開口57の中心が杭51の中心である。尚、杭頭部53は鋼製からなり、上部開口57は真円度が高い。
【0018】
杭位置測定用治具(以下、治具という)1は、本体2の中央に中央部たる縦杆3を有し、この縦杆3の下部に裁頭円錐型に形成した一対の枠体4,4を設け、これら枠体4,4は縦杆3を中心に略90度に位置にあり、前記枠体4,4の外側に位置する斜めの杆5,5,5,5により、位置決め部たる拡大部6を構成し、それら斜めの杆5,5,5,5は縦杆3に対して同一角度をなす。また、前記枠体4は、外側の前記杆5の上下を前記縦杆3に連結する上下連結杆7U,7Sを有する。尚、前記枠体4は鋼棒などを屈曲形成してなる。
【0019】
前記縦杆4の上部には、水平器8が設けられ、この水平器8は目視により水平を確認できるものであって、内部に液体を充填すると共に、気泡10を入れ、上部の視認窓9の中央に前記気泡を合わせることにより、水平器8が水平となり、この水平器8を設けた縦杆3を垂直に位置合わせすることができる。
【0020】
11は一端を前記縦杆3に当接して使用する検尺棒であり、他端には鉄筋からなる逃げ棒12が設けられている。それら一対の検尺棒11,11を用い、杭51を沈設する前に、予め杭51の中心に対して、検尺棒11,11の一端を合わせると共に、相互に直交する位置に配置し、他端の逃げ棒12は基準位置に配置してある。そして、掘削及び沈設作業時には、検尺棒11を取り外して作業を行い、測定時には、基準位置に配置してある逃げ棒12に、検尺棒11の先端を前記縦杆3に合わせて杭51の位置ずれを測定する。
【0021】
次に、前記治具1を用いた杭51の位置測定方法について説明する。上述したように杭51を掘削孔52に沈設し、杭頭部53が地盤より下方となった状態では、掘削孔52は流動性硬化材料や該掘削孔52の土砂などの混濁液(図示せず)で満たされ、地上からは杭頭部53を直接視認することはできない。尚、この例では、図5に示すように、掘削孔52の下部には、流動性硬化材料たる根固め液58が充填され、その上部には流動性硬化材料であって杭周固定液たるソイルセメント59で満たされ、掘削孔53の地上側は水と土砂の混合液(混濁液)60が入っている。そこで、掘削孔52の中心に縦杆4を合わせるようにして、操作部である縦杆4を持って、治具1の下部を、掘削孔52内の前記混濁液に挿入する。この場合、治具1の下部は枠体4と縦杆3からなるから、抵抗無く挿入することができる。更に治具1を挿入していくと、下部が上部開口57より小さい枠体4が、該上部開口57に挿入され、複数の斜めの杆5,5,5,5により案内され、全ての杆5,5,5,5が上部開口57に当接し、治具1が上部開口57の略中央に位置決めされる。この状態で、縦杆3の上部は地上にあり、水平器8を用いて、縦杆3を垂直に位置決めすることにより、縦杆3が杭51の中央に位置決めされる。
【0022】
このようにして杭51の中央に位置決めした縦杆3により、杭51の中心位置を確認する。この場合、上述したように、基準位置に配置した逃げ棒12に、検尺棒11の先端を前記縦杆3に合わせて杭51の位置ずれを測定する。
【0023】
このように本実施例では、掘削孔52に挿入した杭51の上部開口57に係合し該杭51の位置を測定するための杭位置測定用治具1において、本体2の中央に設けた水平器8と、本体2を上部開口57の中央に位置決めする位置決め部たる拡大部6とを備えるから、拡大部6を上部開口57に係入すると共に、水平器8により本体2の中央を垂直に位置合わせすることにより、本体2の中央が上部開口57の中央に位置決めされ、治具1の基準位置である縦杆3を測定することにより、上部開口57の中央位置を正確に測定することができる。
【0024】
また、このように本実施例では、前記位置決め部は、上部開口57に係入し上方に向って拡大する拡大部6を備えるから、上部開口57に上方から拡大部6を挿入することにより、拡大部6の中央が上部開口57の中央に案内される。
【0025】
また、このように本実施例では、拡大部6は、周囲に設けられた複数の杆5,5,5,5からなるから、複数の杆5,5,5,5が上部開口57に接することにより、上部開口57の中央に治具1の本体2の中央が位置決めされる。
【0026】
また、このように本実施例では、本体2の中央に縦杆3を設け、この縦杆3の上部に水平器8を設けたから、地盤より下方の上部開口57に位置決め部たる拡大部6を係入し、この状態で、地上の水平器8を視認して中央部たる縦杆3を垂直に位置合わせを行うことができる。
【0027】
また、本実施例上の効果として、拡大部6は、斜めの杆5,5,5,5の間が開口しているから、混濁液で満たされた掘削孔52にスムーズに治具1の下部を挿入することができる。
【0028】
なお、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。例えば、実施例では、4本の杆を備えた拡大部を例示したが、縦杆を杭の中央に位置決め可能な杆は、3本でもよい。また、水平器は気泡により水平を確認するものを示したが、各種タイプのものを用いることができる。また、実施例では、コンクリート製の杭を用いて説明したが、上部開口を有するものであれば、鋼管杭などでもよい。さらに、実施例では、杭の位置ずれを、縦杆と検尺棒を用いて測定したが、縦杆の位置を光学式の測定器を用いて測定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例1を示す使用状態の断面図である。
【図2】同上、使用状態の平面図である。
【図3】同上、治具の正面図である。
【図4】同上、治具の平面図である。
【図5】同上、杭の沈設工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 杭位置測定用治具
2 本体
3 縦杆
5 杆(斜めの杆)
6 拡大部(位置決め部)
8 水平器
51 杭
52 掘削孔
53 杭頭部
57 上部開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削孔に挿入した杭の上部開口に係合し該杭の位置を測定するための杭位置測定用治具であって、本体の中央に設けた水平器と、前記本体を前記上部開口の中央に位置決めする位置決め部とを備えることを特徴とする杭位置測定用治具。
【請求項2】
前記位置決め部は、前記上部開口に係入し上方に向って拡大する拡大部を備えることを特徴とする請求項1記載の杭位置測定用治具。
【請求項3】
前記拡大部は、周囲に設けられた複数の杆からなることを特徴とする請求項2記載の杭位置測定用治具。
【請求項4】
前記本体の中央に縦杆を設け、この縦杆の上部に前記水平器を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の杭位置測定用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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