説明

果実収穫補助具

【課題】果実の収穫作業において、切り取った果実は肩掛け袋や籠などに貯め、満杯になったら運搬用籠に移す従来の作業を改善し、作業者の肉体的負担軽減と作業効率の向上のため肩掛け袋や籠に代わる果実収穫補助具を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の果実収穫補助具は収穫する果実の近くの枝と、地面に置いた運搬用籠aの間に、搬入口Aと搬出口Cを備えた搬送チューブBを配置し、切り取った果実を搬入口Aに入れると果実は搬送チューブB内を転がり運搬用籠aに収まる。すなわち、切り取った果実は肩掛け袋や籠などに入れて携える必要がなく直接、運搬用籠aに収まるようにする。尚、搬送チューブBの形状は、一定間隔の螺旋で構成し、搬送チューブBの終端には果実を緩やかに運搬用籠に納める構造の搬出口Cを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業者が籠を携えて収穫した果実を運搬用籠に移し替える従来の収穫作業に変わる、収穫果実を直接運搬用籠へ納めるための果実搬送に関するものである
【背景技術】
【0002】
従来の柑橘類の収穫作業は、果樹の枝から鋏みを使って果実を切り取り、肩掛け袋や籠などに貯め、満杯になると地面に置いてある運搬用籠に移し替える作業が一般的な収穫作業として受け継がれてきた。この収穫作業は柑橘類の種類にもよるが肩掛け袋や籠などに満杯に収穫した重さは約10キログラム程になり、女性や高齢者にとっては身体への負担が大きい。
【0003】
また、高木の果樹畑の場合、梯子や脚立に乗っての収穫作業になり、高所で重い籠を携えての作業は不安定さを増すだけでなく、体を動かす自由度も悪くなり、収穫作業の効率はその重さに比例して悪くなる。
【0004】
また、傾斜地の果樹畑で梯子や脚立を使う場合、安定に注意が必要で、収穫果実で重くなった袋や籠を携えての高所作業は落下事故の危険性を増す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−253444号公報
【特許文献2】特開2007−68421号公報
【特許文献3】特開2008−11843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の肩掛け袋や籠などによる柑橘類の収穫作業に伴うから、身体への負担軽減と梯子や脚立を使って行う作業の安全性向上を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は収穫場所と運搬用籠(a)の間に、投入口(A)と搬出口(C)を備えた、螺旋状または、リングを一定間隔に配置した形状の搬送チューブ(B)により、切り取った果実を直接、運搬用籠(a)に収めことを特徴とする請求項1の果実収穫補助具とした。
【0008】
請求項2の発明は、搬送チューブ(B)の中を果実が滞留せず、スムーズに通過させるための、張り具合を調節するガイド紐(7)と、調節したガイド紐(7)の張り状態の維持と開放を容易に行えるガイド紐ストッパー(3)を設けた。
【0009】
また、搬送チューブ(B)を形成している螺旋またはリング状のチューブ用コード(8)を一定間隔に配置した間隔が開き過ぎによる果実の落下を防ぐため、その間隔が一定以上に開かないようにするキープコード(9)を有することを特徴とする請求項1記載の果実収穫補助具とした。
【0010】
請求項3の発明は、搬送チューブ(B)を形成している螺旋状に巻かれたチューブ用コード(8)である硬質樹脂線は、その材質の持つ反発力により、製造された状態である図3Aは拘束された状態から開放されると図3Bのように巻き径はキープコードの長さLが円周方向に曳かれ、その分、円周長さがプラスされるために螺旋径が大きくなり、螺旋間隔も図3のBのように縮まる。このとき搬送チューブ(B)は螺旋の線方向に回転運動を生ずる。この回転運動を規制して伸縮させると搬送チューブ(B)は、ねじれが発生し果実が通過できなくなる。このため、投入口(A)であるホッパー(4)と、グリップハンドル(1)の接続を中空軸(5)を中心にローター(6)が回転できる構造とすることにより、グリップハンドル(1)を持って搬送チューブ(B)を伸縮させたとき、ホッパー(4)以下の搬送チューブ(B)は自由に回転できるために、撚れを生じないようにしたことを特徴とする請求項1記載の果実収穫補助具とした。
【0011】
請求項4の発明は、搬送チューブ(B)の構造材質を硬質樹脂線など、張りのある材質を一定間隔で螺旋状に巻いたことにより、引き伸ばす長さに比例して螺旋間隔が広がる。その螺旋間隔を果実が乗り移りながら通過するため螺旋間隔が広くなるに従い果実の通過速度も減速効果が強くなる。
【0012】
従って、運搬用籠(a)から収穫場所までの距離が長くなる、脚立など高所での収穫作業のとき特にこの減速効果が、果実の傷みを生じさせない良い効果をもたらす搬送チューブ(B)を特徴とする請求項1記載の果実収穫補助具
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、従来のように切り取った果実を肩掛け袋や籠を携える必要が無く、切り取った果実は直接、搬送チューブ(B)を経て運搬用籠(a)に納まることにより、収穫作業による果実の累積荷重を身体で受けないため作業者への肉体的負担を少なくすることができる。
【0014】
また、梯子や脚立による高所での収穫作業においても、果実の累積荷重を身体で受けないためを身体のバランスを崩すことも少なくなり安全性も向上する。
【0015】
請求項2の発明によれば、搬送チューブ(B)の中を果実が滞留せず、スムーズに通過させるための、張り具合を調節するガイド紐(7)と、調節したガイド紐(7)の張り状態の維持と開放を容易に行えるガイド紐ストッパー(3)を備えたため、片手で素早く果実収穫補助具の操作を可能とした。
【0016】
また、搬送チューブ(B)を構成しているナイロン製直径3.5ミリのチューブ用コード(8)を螺旋状に一定間隔に配置し、ポリエステルの細いコードによるキープコード(9)で螺旋を一定間隔に固定したシンプルな構成にしたことで、軽量で持ち運びを容易にした。
また、本果実収穫補助具は、収納の縮めた状態から最長に伸ばした使用状態の伸縮差が約80倍あり、運搬用籠(a)からの広い範囲の収穫作業域をカバーでき、作業能率を向上が期待できる。
【0017】
請求項3の発明によれば、搬送チューブ(B)の投入口(A)であるホッパー(4)と、グリップハンドル(1)の接続を中空軸(5)を中心にローター(6)が回転できる構造で搬送チューブ(B)に連結しているため、作業者がグリップハンドル(1)を持って、伸縮操作をしたとき搬送チューブ(B)をスムーズに動かせるようにした。
【0018】
請求項4の発明によれば、搬送チューブ(B)の構造材質を硬質樹脂線など、張りのある材質を一定間隔で螺旋状に巻くことにより、使用時に引き伸ばすと螺旋間隔巾は広がり、果実は、その螺旋を乗り越えながら通過するため転がり抵抗を受け、減速効果が強くなる。また、螺旋間隔巾はキープコード(9)により規制され、必要以上の減速効果の上限もキープコード(9)により決定されており、収穫果実に優しい機能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】果実収穫補助具の部分拡大図を含む側面図
【図2】果実の落下速度を吸収する様子を表す搬出口の側面図
【図3】搬送チューブの伸縮状態の側面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について、一実施例として柑橘類のたんかんを収穫対象として、果実収穫補助具を説明する。図1は本発明の果実収穫補助具であり、図1のAは果実を入れる投入口を示し、図1のBは果実収穫補助具の中間部を示し、図1のCは搬出口示している。図2は果実収穫補助具の搬出口Cであり、果実に対する落下衝撃軽減機能を表している。図3は搬送チューブの伸縮時の形状変化を表した図である。
【0021】
図1に示すように、本発明に係わる果実収穫補助具は先端に搬送チューブBを伸縮操作するためのグリップハンドル1を有し、そのグリップハンドル1には果樹の枝や作業者の胸ポケット(図示せず)などに引っ掛けるためのハンガー2と搬送チューブBの長さを任意の位置で固定するためのコードストッパー3と収穫果実の投入口Aであるホッパー4を有しており、そのホッパー4と、グリップハンドル1の接続は中空軸5を中心にローター6が回転できるように構成されているため、ホッパー4を含む搬送チューブBが撚りを生じない構造とした。また、搬送チューブBは搬送チューブBの張り加減を調節するためのガイド紐7および、搬送チューブの間隔が一定以上に開かないなめのキープコード9で構成されている。搬送チューブBの終端には果実を緩やかに運搬用籠に納めるための搬出口Cと搬送チューブBの終端部を運搬用籠aに固定するためのスタンドbから構成されている。
【0022】
まず、投入口Aの構成について説明する。
グリップハンドル1には果樹の枝や作業者の胸ポケットなどに引っ掛けるためのハンガー2と搬送チューブBの長さを任意の位置で固定するためのコードストッパー3を取り付け、
グリップハンドル1の下にローター6がセットされた中空軸5を取り付ける。ローター6とホッパー4を連結紐10で接続し、投入口Aを構成している。
【0023】
上記構成によれば、グリップハンドル1を片手で目的の枝に引っ掛けられ、コードストッパー3を押し、ロックを解除しながらグリップハンドル1の中を通して上部に出ているガイド紐7を調節して素早く収穫作業に取り掛かるれる。
【0024】
また、中空軸5にセットされたローター6により、ホッパー4以下の搬送チューブBは自由に回転できるため、伸縮操作に対しても、撚れを生じない構造となっている。
【0025】
次に、搬送チューブBについて説明する。
図1に示す果実収穫補助具を構成する各部位の中で、もっとも主となる部分で、この搬送チューブBは螺旋状であり、その螺旋を形成している構造材は、硬質樹脂線など張りのある材質で直径3.5ミリを一定間隔で螺旋状に巻き、その巻いた間隔を一定以上に開かないように保つキープコード9を螺旋の円周方向に4等分した間隔で4列に配置する。その状態は図1のBに示す。また、螺旋に巻いた内径と螺旋間隔は、収穫対象果実である柑橘類のポンカン、タンカンがスムーズに通過するのに十分な内径110ミリと螺旋間隔40ミリとした。また、内径と螺旋間隔は収穫対象の果実の大きさにより適応したサイズが望ましい。尚、チューブの構成は螺旋状の他にリング状を一定間隔に連続した構成でもよい。
【0026】
本発明で示した実施例の硬質樹脂線など、張りのある材質で直径3.5ミリを一定間隔で螺旋状に巻いた構造は次のような変化をする。螺旋状に巻かれた硬質樹脂棒は、その材質の持つ反発力により、図3のAのように一定間隔に配して製造された搬送チューブの状態は、その製造のため固定された螺旋構造材の硬質樹脂線は、その拘束から開放されると、巻き径は反発力により、キープコード9の長さLが円周方向に曳かれ、その分プラスされた螺旋径に変わり、螺旋間隔も図3のBのように縮まる。この状態が本発明の果実収穫補助具を収納した縮めた状態で、もっとも引き延ばした場合は図3のAの状態になる。
【0027】
したがって、螺旋による一定間隔に連続した構成はキープコードの長さLがプラスされた径に大きくなり、チューブを形成している総巻き数は径が大きくなった分減り、収納のコンパクト化に役立っている。
【0028】
次に、搬出口Cについて説明する。
図1の搬出口Cは搬送チューブBの中を通過してきた果実をU字形にたわむようにした衝撃吸収構造により受け止め、重力により下方へ誘導され、速度を失った果実は搬出口より搬送用籠(a)へ落下する。その状態を図2に示す。
【0029】
衝撃吸収構造は搬送チューブBの螺旋状終端部の10層ほどを下側の水平方向の伸びを規制することにより、搬出口Cへ到達した果実は、螺旋状終端部を押すため、螺旋間隔がU字形に広がりながら下へ落下する。その様子を図2に(A)(B)(C)の時系列で表しているように、搬送チューブBを通過してきた果実は速度を失い、緩やかに落下させる機能を果たす。
【産業上の利用可能性】
【0030】
搬送チューブ(B)の径とキープコード(9)のピッチを、その対象果実の大きさに最適にすることで、柑橘類の場合、小さい金柑から広範囲の柑橘類に適用できる。
【符号の説明】
【0031】
1 グリップ
2 ハンガー
3 ガイド紐ストッパー
4 ホッパー
5 中空軸
6 ローター
7 ガイド紐
8 チューブ用コード
9 キープコード
10 連結紐
A 投入部
B 搬送チューブ
C 搬出口
a 運搬用籠
b スタンド
s 果実

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収穫場所と運搬用籠(a)の間に、投入口(A)と搬出口(C)を備えた、螺旋またはリングを一定間隔に配置した形状の搬送チューブ(B)により、切り取った果実を直接、運搬用籠(a)に納めることを特徴とする果実収穫補助具
【請求項2】
請求項1で記載の搬送チューブ(B)の中を果実が滞留せず、スムーズに通過させるための、張り具合を調節するガイド紐(7)と、調節したガイド紐(7)の張り状態の維持と開放を容易に行えるガイド紐ストッパー(3)を備え、搬送チューブ(B)を形成している螺旋状または、一定間隔に配置したリング(8)の間隔を一定以上に開かないようにするキープコード(9)を有することを特徴とする請求項1記載の果実収穫補助具
【請求項3】
請求項1で記載の搬送チューブ(B)の投入口(A)であるホッパー(4)と、グリップハンドル(1)の接続は中空軸(5)とローター(6)の構成により、搬送チューブ(B)に接続されているため、搬送チューブに撚れを生じないようにしたことを特徴とする請求項1記載の果実収穫補助具
【請求項4】
請求項1で記載の搬送チューブ(B)の構造材質を硬質樹脂線など、張りのある材質を一定間隔で螺旋状に巻くことにより、引き伸ばす長さに比例して螺旋間隔は広がり、キープコード(9)で規制されるまで広がるため、果実が通過するときの減速効果は搬送チューブ(B)を引き伸ばす長さに比例して強くなる効果を特徴とする請求項1記載の果実収穫補助具

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−182686(P2011−182686A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50146(P2010−50146)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【特許番号】特許第4705186号(P4705186)
【特許公報発行日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(597095843)
【Fターム(参考)】