説明

果菜の検出方法及び検出装置

【課題】 本願発明の課題は従来技術の問題を解決するものであって、多数の果菜の検査が可能であって、虫害を受けた果菜を不良品として確実に検出することができる果菜の検出方法及びその検出装置を提供することにある。
【解決手段】 本願発明の果菜の検出方法は、果菜のうち蔓付近の部分、又は蔓のうち果菜付近の部分、を切断し、果菜の切断面画像、又は蔓の切断面画像、を画像取得手段によって取得し、画像判別手段に切断面画像を入力し、且つこの画像判別手段に切断面画像を画像処理させることで、切断面における虫害痕の有無を判別し、切断面に虫害痕を有する果菜を、不良品として検出する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、果菜の不良品を検出する方法と装置に関するものであり、より具体的には、虫害を受けた果菜を検出する方法とその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
果菜を出荷する際、その栽培中に病害を受け、あるいは虫害を受けることで商品とならないものは不良品として取り除かれている。病害や虫害を受けた果菜を見分けるには種々の方法が試みられているが、現状では人の目視による判別が一般的である。
【0003】
サツマイモをはじめ、ナス、トマト、スイカ、ジャガイモなどの蔓付き果菜は、その蔓部分から果菜内に害虫が進入して果菜部分に害を与えることが知られている。例えば、高系14号、ベニコマチ(農林33号)、ベニアズマ(農林36号)、紅赤、パープルスイートロードといったいわゆるムラサキイモ、といった多くのサツマイモは、ゾウムシによる虫害に悩まされている。
【0004】
このゾウムシにも、日本固有種といわれるアリモドキゾウムシや、外来種といわれるイモゾウムシの幼虫Z(図5)などいくつかの種類があり、これらゾウムシによる虫害を受けたサツマイモは悪臭を放つ。ゾウムシによる虫害を受けたサツマイモが紛れて出荷されると、正常なサツマイモまで悪臭の影響を受け、一緒に蒸した場合には全てのサツマイモが強烈な悪臭を放つため食し難いものとなる。
【0005】
蔓部分から害虫が進入した果菜を目視で検査しても、外観からでは正しい判断を下すことは極めて難しい。正しい判断を行うためには、実際に果菜を切断して詳しく検査する必要があるが、全ての果菜に対して検査することはその労力やコストの面から現実的ではない。また、大きく切断した果菜は体裁が悪く、商品としての価値が劣る。よって、出荷する果菜からサンプルを抽出し、そのサンプルの果菜に対して詳しく検査することとなる。
【0006】
しかしながら、このようなサンプル抽出検査では、統計学上の確からしさは得られるものの、全ての果菜について虫害を確認することはできず、1個でも検査漏れがあると前記悪臭問題は解消されない。確認の完全性を期する上でも、食品衛生上の観点からも、全数の果菜を確認したうえで出荷することが望ましい。
【0007】
そこで特許文献1では、果菜の検査空間に静磁場と勾配磁場を発せさせるとともにラジオ波を遮蔽したうえで、小型永久磁石を利用した超小型MRI装置によって果実を検査する方法(装置)を提案している。これによれば、全数果菜の検査も現実的であり、食品衛生上の観点からも安心して出荷することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−249762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
果菜を目視によって検査する場合には、次のような問題がある。まずサンプル抽出による検査では、前記したように全数検査が難しいことから、食品衛生上の点で万全の安心が得られないという問題がある。また、全数の果菜を目視検査する場合では、検査のために膨大な時間と労力、つまり膨大な経費を要し、採算性の点から大きな問題がある。そして、目視検査の共通の問題として、たとえ熟練者であっても複数の検査者の間で、あるいは同一の検査者であっても検査時間によって、均一な検査結果を得られることは難しく、検査による不良品の見逃しや正常品の排除などが考えられる。
【0010】
一方、特許文献1では、全数果菜の検査を行うことも可能(現実的)であるが、静磁場発生手段、勾配磁場発生手段、遮蔽手段、磁気共鳴画像生成手段、超小型MRI装置など、多くのしかも高価な装置を必要とするため、導入費用を要するという問題がある。そのうえ、複数の断層の磁気共鳴画像を入手するものであるが、その画像に基づいて被検査物である果実の虫害痕をどのように検出するかは不明であり、いずれにしろ不鮮明な磁気共鳴画像から虫害痕を判別することは難しいという問題も抱えている。
【0011】
本願発明の課題は前記問題を解決するものであって、多数の果菜の検査が可能であって、虫害を受けた果菜を不良品として確実に検出することができる果菜の検出方法及びその検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、蔓付きの果菜が虫害を受ける場合には蔓から害虫が進入するという点に着目してなされたものであり、蔓付近の果実(果実付近の蔓)の切断面画像に基づいて虫害を受けた果菜を不良品として検出する、果菜の検出方法及びその検出装置をについて開発したものである。
【0013】
本願発明の果菜の検出方法は、果菜のうち蔓付近の部分、又は蔓のうち果菜付近の部分、を切断し、果菜の切断面画像、又は蔓の切断面画像、を画像取得手段によって取得し、画像判別手段に前記切断面画像を入力し、且つこの画像判別手段に切断面画像を画像処理させることで、前記切断面における虫害痕の有無を判別し、前記切断面に虫害痕を有する果菜を、不良品として検出する方法である。
【0014】
本願発明の果菜の検出方法は、多数の果菜を搬送可能な果菜搬送体で、果菜を搬送し、前記果菜の搬送途中に設けられた画像取得手段によって、果菜又は蔓の切断面画像を取得するとともに、前記果菜の搬送途中に設けられた画像判別手段によって、虫害痕の有無を判別する方法とすることもできる。
【0015】
本願発明の果菜の検出方法は、無端走行体に多数の果菜キャリアを備えた果菜搬送体を走行させて、この果菜キャリアに載置した果菜を搬送し、前記果菜の搬送途中に設けられた画像取得手段によって、果菜又は蔓の切断面画像を取得するとともに、前記果菜の搬送途中に設けられた画像判別手段によって、虫害痕の有無を判別する方法とすることもできる。
【0016】
本願発明の果菜の検出方法は、果菜の搬送途中に設けられた果菜切断手段によって、果菜のうち蔓付近部分、又は蔓のうち果菜付近部分を、切断する方法とすることもできる。
【0017】
本願発明の果菜の検出装置は、果菜のうち蔓付近の部分、又は蔓のうち果菜付近の部分、を切断可能な果菜切断手段と、前記果菜の切断面画像、又は前記蔓の切断面画像、を取得する画像取得手段と、前記画像取得手段で取得した切断面画像を画像処理することで、虫害痕の有無を判別する画像判別手段と、を備え、前記画像判別手段によって前記切断面に虫害痕有りと判別された果菜を、不良品として検出可能なものである。
【0018】
本願発明の果菜の検出装置は、無端走行体に多数の果菜キャリアを備えた果菜搬送体と、前記果菜搬送体の途中に設けられた画像取得手段と、を備え、果菜切断手段によって切断された果菜を前記果菜キャリアに載せて、前記果菜搬送体を走行させることで、果菜を搬送可能であり、前記画像取得手段は、前記果菜キャリアに載置した果菜の切断面画像を取得可能であり、画像判別手段は、前記画像取得手段で取得した切断面画像に基づいて、虫害痕の有無を判別するものとすることもできる。
【0019】
本願発明の果菜の検出装置は、無端走行体に多数の果菜キャリアを備えた果菜搬送体と、前記果菜搬送体の途中に設けられた果菜切断手段と、前記果菜搬送体の途中に設けられた画像取得手段と、を備え、果菜を前記果菜キャリアに載せて、前記果菜搬送体を走行させることで、果菜を搬送可能であり、前記果菜切断手段は、前記果菜キャリアに載置した果菜を切断可能であり、前記画像取得手段は、前記果菜キャリアに載置した果菜の切断面画像を取得可能であり、画像判別手段は、前記画像取得手段で取得した切断面画像に基づいて、虫害痕の有無を判別するものとすることもできる。
【0020】
本願発明の果菜の検出装置は、果菜搬送体の側方に不良品受体が配置されるとともに、それぞれの果菜キャリアは載置した果菜を不良品受体に移動させる移動機構を有し、画像判別手段の判別結果に基づいて不良品として検出された果菜を、前記移動機構によって前記果菜キャリアから前記不良品受体へ移動可能なものとすることもできる。
【0021】
本願発明の果菜の検出装置は、果菜搬送体の途中に設けられ、果菜の等階級を計測する等階級計測手段と、果菜搬送体の側方に配置される2以上の果菜受体と、を備え、それぞれの果菜キャリアは載置した果菜を前記果菜受体に移動させる移動機構を有し、前記等階級計測手段による計測結果に基づいて、移動機構によって、果菜を果菜キャリアから前記果菜受体へ、果菜の等階級別に移動可能なものとすることもできる。
【発明の効果】
【0022】
本願発明の果菜の検出方法には次のような効果がある。
(1)実際に果菜又は蔓を切断するので、虫害痕が明確になり、すなわち確実に不良品である果菜を検出することができる。
(2)果菜又は蔓の切断面を画像として取得し、その画像に基づいて虫害痕を抽出するものであり、画像上で見るとこの虫害痕は正常な部分に対して鮮明に描画されるので、極めて容易に不良品を判断できる。
(3)画像判別手段の画像処理によって虫害痕を抽出させると、人による目視を要しないので、客観的であり常に均一な結果を得ることができる。
(4)果菜搬送体に備えられた多数の果菜キャリアに果菜を載置して、この果菜を搬送しながら画像判別手段で虫害痕の有無を判別させると、効率的に大量の果菜を判断することができる。
(5)果菜搬送体の途中に設けられた果菜切断手段で果菜又は蔓を切断すると、さらに効率的に大量の果菜を判断することができる。
【0023】
本願発明の果菜の検出装置には次のような効果がある。
(1)本願発明の果菜の検出装置を使用すれば、上記した「果菜の検出方法」の効果がある。
(2)特殊な装置や高価な装置を必要としないので、比較的廉価で導入することができる。
(3)不良品受体や果菜受体を設け、果菜キャリアが移動機構(果菜を移動させる機構)を備えると、効率的かつ確実に不良品を仕分けると同時に、等階級別に果菜を仕分けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本願発明の果菜の検出装置の一例を示す全体平面図。
【図2】(a)は収穫前のサツマイモ1の状態を示す説明図、b)は収穫後のサツマイモ1を示す説明図。
【図3】(a)は、果菜部1aの先端部を切断した状態の側面図、(b)は、(a)に示す切断面の切断面画像を示す説明図。
【図4】(a)は果菜キャリアの移動機構の詳細を示す断面図、(b)は果菜キャリアの移動機構の詳細を示す平面図。
【図5】イモゾウムシの幼虫を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(全体概要)
本願発明の「果菜の検出方法及び検出装置」を、サツマイモについて実施する場合の一例を図に基づいて説明する。図1は、本願発明の果菜の検出装置の一例を示す全体平面図である。図に示すように、多くのサツマイモ1が果菜搬送体100によって搬送されている。この図ではサツマイモ1が図面左側から右側へ搬送されており、紙面の都合上2段に分けて描いているが実際には一連で搬送されている。
【0026】
果菜搬送体100は、駆動スプロケット101と従動スプロケット102に架設された無端状のチェーンである無端走行体103に、果菜キャリア104が搬送方向(矢印a方向)に多数取り付けられたものである。駆動スプロケット101はモータPの動力により回転し、この回転に伴い無端走行体103が矢印a方向に走行して、果菜キャリア104が搬送される。図1では、果菜搬送体100が直線区間を循環走行(上下で循環)させているが、これに限らず平面的に周回するような循環走行とすることもできる。
【0027】
果菜搬送体100の上流側(図1では上段左側)には供給区間Aが、果菜搬送体100の途中には切断区間B、画像判別区間C、等階級計測区間Dが、果菜搬送体100の下流側(図1では下段)には不良品排出区間E、果菜仕分け区間F1〜F2が、それぞれ設置されている。なお、切断区間Bは、サツマイモ1の果菜部1a(図2(b)のX−X付近)又は蔓部1b(図2(b)のY−Y付近)を切断するものであるが、必ずしも果菜搬送体100の途中に設ける必要はなく、予め前記箇所を切断した状態のサツマイモ1を搬送することもできる。また、等階級計測区間Dや果菜仕分け区間F1〜F2も必ずしも設ける必要がなく、さらに不良品排出区間Eを設けずに不良とされたサツマイモ1を手作業によって直接抜き取ることもできる。
【0028】
供給区間Aでは、載置作業者M1によってサツマイモ1が果菜キャリア104に載置される。切断区間Bではここに配置された果菜切断手段2によってサツマイモ1の果菜部1a(図2(b)のX−X付近)又は蔓部1b(図2(b)のY−Y付近)が切断され、画像判別区間Cではここに配置された画像取得手段3によって果菜部1a(又は蔓部1b)の切断面画像が取得(撮像)されるとともに、取得した切断面画像を画像判別手段(図示しない)によって画像処理することで虫害痕の有無が判別されて、さらにこれにより不良品のサツモイモ1が検出され、等階級計測区間Dではここに配置された等階級計測手段4によってサツマイモ1のサイズ、形状、色、糖度といった各種規格(等階級)が判別される。
【0029】
不良品排出区間Eでは、不良品として検出されたサツマイモ1のみが排出レーン(不良品受体5)に排出される。図1では不良品受体5の設置数を4レーンとしているが、これに限らず、予想されるサツマイモ1の排出量に応じて1又は2以上のレーン数で任意に設計することができる。1レーンの場合、不良品受体5の幅を、複数の果菜キャリア104からサツマイモ1を受け取ることのできる幅とすることができる。
【0030】
果菜仕分け区間F1〜F2では、不良品として検出されなかった(正常な)サツマイモ1が、等階級計測手段4による判別結果に基づいて等階級別に仕分けされて果菜受体6に送られる。図1では、F1ゾーンで4レーン、F2ゾーンで4レーン、計8レーンの果菜受体6を設置しているが、これに限らず、予想されるサツマイモ1の排出量に応じて、2以上のレーン数(1又は2以上のゾーン数)で任意に設計することができる。
【0031】
以上のような構成によって、供給区間Aで果菜キャリア104に載置されたサツマイモ1は果菜搬送体100によって搬送され、搬送中に一時停止させて又は連続搬送させながら、順に、切断区間Bで果菜部1a(又は蔓部1b)が切断され、画像判別区間Cで切断面画像が取得されるとともに不良品となるサツマイモ1が検出され、さらに等階級計測区間Dでサツマイモ1の等階級が判別され、不良品とされたサツマイモ1は不良品受体5に排出されて、正常なサツマイモ1は等階級別に仕分けられて果菜受体6に送られる。不良品受体5に排出されたサツマイモ1は、不良品作業者M2によって運び出され、果菜受体6に送り出せたサツマイモ1は、箱詰め作業者M3によって等階級別に箱詰めされる。
【0032】
以下、構成要素ごとに詳細に説明する。
【0033】
(サツマイモ)
図2(a)は収穫前(栽培中)のサツマイモ1の状態を示す説明図であり、図2(b)は収穫後のサツマイモ1を示す説明図である。図2(a)に示すように、サツマイモ1は土中で根が成長したものであり、図2(b)で示すように果菜部1aと蔓部1bとからなる。なお、前記のとおり本来はサツマイモ1全体が根であるが、ここでは、食用となる主な部分を果菜部1a、茎本体1c(図1(a))と接続する部分を蔓部1bとした。このように果菜部1aと蔓1bとからなる果菜は、サツマイモ1に限らず数多くあり、これら果菜をここでは「蔓付き果菜」という。
【0034】
イモゾウムシをはじめとする害虫は、おもに蔓付き果菜の蔓部1bから進入して果菜部1aを食い荒らすという習性がある。そのため、例えば図1(b)に示すサツマイモ1のように、その外観からだけでは虫害痕の有無を検知することはできない。
以下、構成要素ごとに詳細に説明する。
【0035】
(果菜切断手段)
果菜切断手段2は、サツマイモ1の果菜部1aを切断するものである。このとき、サツマイモ1の商品価値を考えると、切断する量はできるだけ少ない方がよく、害虫が蔓部1bから進入するという習性を考慮して、果菜部1aのうち蔓部1bに近い部分(以下、「先端部」という。)を切断するのが望ましい。あるいは、蔓部1bが比較的太い場合は、蔓部1bを切断することもできる。この場合、できるだけ果菜部1aに近い部分を切断するのが望ましい。
【0036】
果菜搬送体100で搬送されるサツマイモ1を切断するため、図1に示すように、果菜切断手段2はカッター2aと押え具2bを備えている。この押え具2bは無端走行体103の上方に配置され、無端走行体103と同期して回転するベルトであり、カッター2aによって切断される間、サツマイモ1は押え具2bと無端走行体103によって上下から挟まれるように固定される。なお、果菜キャリア104がサツマイモ1を固定する機能を備えていれば、押え具2bは省略することもできる。また、後に説明するように果菜キャリア104が、サツマイモ1を搬送方向(図1の矢印a)に対して直角方向(あるいは斜め後方)に移動させる移動機構を備えていれば、カッター2aの直前でサツマイモ1を少しカッター2a側に(図1では下側)移動させ、切断後に元の位置に復帰させることもできる。これにより、果菜部1aの先端部を円滑に切断することができる。
【0037】
図3(a)は、果菜部1aの先端部を切断した状態の側面図である。この図に示す切断面13には、害虫が進入した痕跡あるいは食い荒らした痕跡である「虫害痕14」が示されている。この図では明らかではないが、実際は果菜部1aの切断面13のうち正常な部分は淡い黄色を呈し、虫害痕14の部分は濃い黒色を呈している。
【0038】
なお前記したように、果菜切断手段2は必ずしも果菜搬送体100の途中に設ける必要はなく、果菜切断手段2を別途設けて、ここで切断したサツマイモ1を供給区間Aで果菜キャリア104に載置し、果菜搬送体100で搬送することもできる。
【0039】
(画像取得手段)
画像取得手段3は、果菜切断手段2で切断された果菜部1a先端部の切断面(又は蔓部1bの切断面)の画像を、例えばデジタルカメラで取得するものである。図3(b)は、図3(a)に示す切断面13の切断面画像15(切断面13の画像)を示す説明図である。画像取得手段3で切断面画像15を取得する際には、画像取得対象となったサツマイモ1が特定できるような識別子(ID)も取得する。この識別子は、サツマイモ1に直接付すこともできるし、サツマイモ1を載置した果菜キャリア104に付すこともできる。
【0040】
画像取得手段3で取得した切断面画像15(データ)は、サツマイモ1の識別子とともに、画像データ記憶手段に記憶される。これによって、その切断面画像15がどのサツマイモ1の切断面を取得したものかを認識することができる。
【0041】
(画像判別手段)
画像判別手段(図示しない)は、画像取得手段3で取得した切断面画像15に基づいて虫害痕14の有無を判別し、不良品のサツマイモ1を検出するものである。具体的には、画像判別手段はコンピュータ(電子計算機)を用いるものであり、前記した画像データ記憶手段から切断面画像15(データ)とこれに紐づく識別子を読み込んで(入力して)、画像処理を行うことで虫害痕14の有無を判別する。
【0042】
画像判別手段で行う画像処理は、色に基づく処理、反射光の輝度分布、痕跡形状等に基づく処理などが例示できる。色に基づく処理とは、取得した切断面画像15の色をモデル化して虫害痕14の有無を判断する手法であり、例えば、全体的に同一色であれば「虫害痕無し」と、一部に異なる色があれば「虫害痕有り」と判断することができる。前記したように、果菜部1aの切断面13のうち正常な部分は淡い黄色を示し、虫害痕14の部分は濃い黒色を呈しているので、切断面画像15の色をモデル化すると正常部と虫害痕14部分との相違は極めて顕著に判別できる。
【0043】
なお、切断面画像15の色をモデル化する手法としては、例えば、RGBによる手法が挙げられる。本来、色は人の視覚で認識するものであり、個人差を伴うものであるが、近年、この色をコンピュータで扱うべくモデル化させるようになった。そのひとつの手法がRGBであり、赤(Red)・緑(Green)・青(Brue)の3色を基本色とするものである。他には、シアン(Cyan)・マゼンタ(Magenta)・イエロー(Yellow)・ブラック(Keycolor)の4色を基本色とするCMYK、黄・赤・青・緑・黒・白の6色を基本色とするNCSやオストワルト表色系などが知られている。
【0044】
さらに色についても、色相、彩度、明度からなる3つの属性すべてに基づいて画像処理を行ってもよいし、明度(輝度)のみを用いて正常部と虫害痕14部分との相違を見極めることもできる。
【0045】
形状に基づく処理とは、いわゆるパターンマッチングによるものであり、虫害痕14部分の様々な形状を記憶しておき、これをテンプレートとして切断面画像15の形状に照らし合わせるものである。このテンプレートに合致した(所定の閾値を超えた)と判断される形状が、切断面画像15の中に認められれば、「虫害痕有り」と判断することができる。
【0046】
画像判別手段によって、切断面画像15内に「虫害痕有り」と判断されたサツマイモ1は不良品として判別される。なお、ここで行う画像処理については、ここで例示した手法に限らず、従来から用いられている種々の画像解析技術を利用することができる。
【0047】
(不良品受体)
不良品受体5は、画像判別手段で不良品として判別されたサツマイモ1を果菜搬送体100から排除すべく引き受けるものであり、例えばベルトコンベアやローラーコンベアで形成される。具体的には、図1に示すように、不良品排出区間Eまで搬送された不良品のサツマイモ1は、果菜キャリア104が有する移動機構によって果菜搬送体100の側方へと移動される。移動機構は、移動機構制御装置(図示しない)によって制御されるものであり、この移動機構制御装置は画像判別手段の判別結果に基づいて移動機構を制御する。不良品受体5を設けず、不良品として判別されたサツマイモ1を段ボール箱等に直接排出することもできる。
【0048】
図4(a)は果菜キャリア104の移動機構の詳細を示す断面図であり、図4(b)は果菜キャリア104の移動機構の詳細を示す平面図である。果菜キャリア104は、フレームと、同フレームの長手方向両端に回転自在に取り付けられた回転ローラ104a、104bと、これらローラ間に掛け渡された搬送ベルト104cとを備えたベルトコンベア式である。このフレームには、底面中央にフレーム長手方向に沿って長穴が開口されており、この長穴に沿って移動可能なスライドピン104dが取り付けられている。このスライドピン104dの上端は、搬送ベルト104cに固定された金具と連結されており、またスライドピン104dの下端はフレームの下側から20mmほど突き出されている。スライドピン104dの下部にはベアリング104eが取り付けられており、これを回転ローラ104aと回転ローラ104bを結ぶ方向(以下、「スライド方向」という。)にスライドさせると、上部に連結された搬送ベルト104cを往復回動することができる。なお、この果菜キャリア104には、サツマイモ1を載せ置く目印となる載置部を設けることも、載置したサツマイモ1を安定させるための背もたれを設けることもできるし、搬送ベルト104cは往復回動に限らず一周回転させることもできる。
【0049】
果菜キャリア104の移動機構は、不良品排出区間E(等階級計測区間D)に設けられたスライド手段によって動作する。具体的には、果菜キャリア104の底のスライドピン104d(ベアリング104e)を操作して、搬送ベルト104cをスライド方向に往復回動させる。スライド手段は、図4(a)(b)に示すような、スライドピン104d(ベアリング104e)が差し込まれて走行可能な直進及び斜めのガイド溝7(7a、7b)が形成されたプレート8と、分岐部9に設けられた切替えバー10と、切替えバー10の下側に設けられたロータリーソレノイド11とからなる。ロータリーソレノイド11は、画像判別手段の判別結果に基づく移動機構制御装置の制御によって動作するようになっている。例えば、排出すべきサツマイモ1を載せた果菜キャリア104が分岐部9を通過しようとすると、平常時直進状態にある切替えバー10を斜め進行状態に切り替え、直進ガイド溝7aを進行する果菜キャリア104のスライドピン104dを斜めガイド溝7bに案内する。これによりスライドピン104dを矢印Lの方向に移動させて、搬送ベルト104cは矢印Rの方向に移動し、その上に載置されたサツマイモ1を不良品受体5(果菜受体6)に移動させる。なお、斜めガイド溝7bにより移動されたスライドピン104dを元の位置に復帰させ、つまり搬送ベルト104cを戻すためのガイドを設けることもできる。
【0050】
果菜キャリア104の移動機構によってサツマイモ1を不良品受体5(果菜受体6)に移動させる方向は、図4(a)(b)に示すような搬送方向に対して略直角方向に限らず、果菜キャリア104を搬送方向に対して斜方向に配置し、サツマイモ1を搬送方向に対して斜め後方へ移動させることとしてもよい。また、果菜キャリア104の移動機構は、前記した手法に限らず、押し具(プッシャ)によってサツマイモ1を押し出す手法や、果菜キャリア104を傾斜させる手法など、従来から用いられている種々の手法を採用することができる。
【0051】
前記したように、果菜キャリア104の移動機構は、画像判別手段の判別結果に基づく移動機構制御装置の制御によって動作する。つまり画像取得手段3で取得した切断面画像15に基づいて不良品の判断を行うわけであるが、これに加えて、供給区間Aの載置作業者M1によって不良品の判断を行うこともできる。載置作業者M1は、供給区間Aでサツマイモ1を果菜キャリア104に載置するため、サツマイモ1の外観を観察する。その際、外観上不良品と判断される場合は、その旨を入力し、不良品受体5へ排出させる。
【0052】
具体的には、図1に示すように、果菜キャリア104に設けられた判別ボタン12を載置作業者M1が押すことで、外観観察結果を入力することができる。図1では1つの果菜キャリア104につき判別ボタン12を二つ(12R、12L)備えているので、どちらか一方の判別ボタン12(12R、12L)を押すと不良品である旨が入力されて、判別ボタン12を押さない場合は正常品として扱われる、とすることができる。ここで入力された情報は移動機構制御装置に伝達されて、前記したように果菜キャリア104の移動機構を制御して、外観不良のサツマイモ1は不良品受体5に排出される。
【0053】
不良品受体5は、常時運転させてもよいし、サツマイモ1が排出されたタイミングで次のサツマイモ1を受け入れるスペース分だけ移動させる、いわゆる間欠運転とすることもできる。
【0054】
(等階級計測手段と果菜受体)
等階級計測手段4は、画像や赤外線などのセンサを用いてサツマイモ1のサイズ、形状、色、糖度といった等級や階級を判別するものであり、従来から用いられている汎用装置を利用することができる。
【0055】
果菜受体6は、画像判別手段で正常品と判断された(不良品と判断されなかった)サツマイモ1を、等階級計測手段4で判別された等階級別に受け入れるものであり、例えばベルトコンベアやローラーコンベアで形成される。具体的には、図1に示すように、果菜仕分け区間F1〜F2まで搬送された正常品のサツマイモ1は、果菜キャリア104の移動機構によって果菜搬送体100の側方へと送りだされる。前記したとおり移動機構は、移動機構制御装置によって制御されるものであり、ここでは移動機構制御装置が等階級計測手段4の判別結果に基づいて移動機構を制御する。果菜キャリア104の移動機構については、「不良品受体」で説明した内容と同様である。
【0056】
果菜キャリア104の移動機構は、等階級計測手段4の判別結果に基づく移動機構制御装置の制御によって動作する。つまり等階級計測手段4で判別した結果に基づいて、その等階級に応じた果菜受体6へサツマイモ1は送りだされるわけであるが、これに加えて、供給区間Aの載置作業者M1によって等階級の判断を行うこともできる。載置作業者M1は、供給区間Aでサツマイモ1を果菜キャリア104に載置するため、サツマイモ1の外観を観察する。その際、外観観察による等階級を入力し、その等階級に応じた果菜受体6へサツマイモ1を送り出す。
【0057】
具体的には、図1に示すように、果菜キャリア104に設けられた判別ボタン12を載置作業者M1が押すことで、外観観察結果を入力することができる。図1では1つの果菜キャリア104につき判別ボタン12を二つ(12R、12L)備えているので、計4種類(押す/押さないの組み合わせ)の判別結果を入力することができる。
【0058】
例えば、左側のみの判別ボタン12Lを押すとA等級、右側のみの判別ボタン12Rを押すとB等級、両側の判別ボタン12R、12Lを押すとC等級、両方押さない場合は等階級計測手段4の判別に委ねる、といった判別方法を採ることができる。
【0059】
この一つの果菜キャリア104に幾つの判別ボタン12を組み合わせるか(以下、「ボタンセット」という)については、適宜設計できる。一組のボタンセットの判別ボタン12の個数を多くするほど、多種類の判別結果を入力することができるが入力時に混乱しやすく、1組のボタンセットの判別ボタン12の個数を少なくするほど、入力作業が容易になるが判別結果を入力種類は制限されることとなる。
【0060】
果菜受体6は、不良品受体5と同様、常時運転させてもよいし、サツマイモ1が排出されたタイミングで次のサツマイモ1を受け入れるスペース分だけ移動させる、いわゆる間欠運転とすることもできる。
【0061】
(その他の実施形態)
本願発明の「果菜の検出方法及び検出装置」では、果菜搬送体100を用いることなく、画像取得手段3、果菜切断手段2、画像判別手段を、それぞれ独立して配置した状態で実施することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本願発明の果菜の検出方法及び検出装置は、サツマイモの不良品検出に限られず、ナス、トマト、スイカ、ジャガイモのような蔓付きの果菜の検出に応用することもできる。
【符号の説明】
【0063】
1 サツマイモ
1a (サツマイモの)果菜部
1b (サツマイモの)蔓部
1c (サツマイモの)茎本体
2 果菜切断手段
2a (果菜切断手段の)カッター
2b (果菜切断手段の)押え具
3 画像取得手段
4 等階級計測手段
5 不良品受体
6 果菜受体
7 ガイド溝
7a 直進ガイド溝
7b 斜めガイド溝
8 プレート
9 分岐部
10 切替えバー
11 ロータリーソレノイド
12 判別ボタン
12R 右側の判別ボタン
12L 左側の判別ボタン
13 切断面
14 虫害痕
15 切断面画像
100 果菜搬送体
101 (果菜搬送体の)駆動スプロケット
102 (果菜搬送体の)従動スプロケット
103 (果菜搬送体の)無端走行体
104 (果菜搬送体の)果菜キャリア
104a (果菜キャリアの)回転ローラ
104b (果菜キャリアの)回転ローラ
104c (果菜キャリアの)搬送ベルト
104d (果菜キャリアの)スライドピン
104e (果菜キャリアの)ベアリング
104a (果菜キャリアの)回転ローラ
A 供給区間
B 切断区間
C 画像判別区間
D 等階級計測区間
E 不良品排出区間
F1 (第1の)果菜仕分け区間
F2 (第2の)果菜仕分け区間
M1 載置作業者
M2 不良品作業者
M3 箱詰め作業者
P モータ
Z イモゾウムシの幼虫

【特許請求の範囲】
【請求項1】
果菜の不良品を検出する方法において、
果菜のうち蔓付近の部分、又は蔓のうち果菜付近の部分、を切断し、
果菜の切断面画像、又は蔓の切断面画像、を画像取得手段によって取得し、
画像判別手段に前記切断面画像を入力し、且つこの画像判別手段に切断面画像を画像処理させることで、前記切断面における虫害痕の有無を判別し、
前記切断面に虫害痕を有する果菜を、不良品として検出することを特徴とする果菜の検出方法。
【請求項2】
請求項1記載の果菜の検出方法において、
多数の果菜を搬送可能な果菜搬送体で、果菜を搬送し、
前記果菜の搬送途中に設けられた画像取得手段によって、果菜又は蔓の切断面画像を取得するとともに、前記果菜の搬送途中に設けられた画像判別手段によって、虫害痕の有無を判別することを特徴とする果菜の検出方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の果菜の検出方法において、
無端走行体に多数の果菜キャリアを備えた果菜搬送体を走行させて、この果菜キャリアに載置した果菜を搬送し、
前記果菜の搬送途中に設けられた画像取得手段によって、果菜又は蔓の切断面画像を取得するとともに、前記果菜の搬送途中に設けられた画像判別手段によって、虫害痕の有無を判別することを特徴とする果菜の検出方法。
【請求項4】
請求項2又は請求項3記載の果菜の検出方法において、
果菜の搬送途中に設けられた果菜切断手段によって、果菜のうち蔓付近部分、又は蔓のうち果菜付近部分を、切断することを特徴とする果菜の検出方法。
【請求項5】
果菜の不良品を検出する装置において、
果菜のうち蔓付近の部分、又は蔓のうち果菜付近の部分、を切断可能な果菜切断手段と、
前記果菜の切断面画像、又は前記蔓の切断面画像、を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段で取得した切断面画像を画像処理することで、虫害痕の有無を判別する画像判別手段と、を備え、
前記画像判別手段によって前記切断面に虫害痕有りと判別された果菜を、不良品として検出可能であることを特徴とする果菜の検出装置。
【請求項6】
請求項5記載の果菜の検出装置において、
無端走行体に多数の果菜キャリアを備えた果菜搬送体と、
前記果菜搬送体の途中に設けられた画像取得手段と、を備え、
果菜切断手段によって切断された果菜を前記果菜キャリアに載せて、前記果菜搬送体を走行させることで、果菜を搬送可能であり、
前記画像取得手段は、前記果菜キャリアに載置した果菜の切断面画像を取得可能であり、
画像判別手段は、前記画像取得手段で取得した切断面画像に基づいて、虫害痕の有無を判別することを特徴とする果菜の検出装置。
【請求項7】
請求項5記載の果菜の検出装置において、
無端走行体に多数の果菜キャリアを備えた果菜搬送体と、
前記果菜搬送体の途中に設けられた果菜切断手段と、
前記果菜搬送体の途中に設けられた画像取得手段と、を備え、
果菜を前記果菜キャリアに載せて、前記果菜搬送体を走行させることで、果菜を搬送可能であり、
前記果菜切断手段は、前記果菜キャリアに載置した果菜を切断可能であり、
前記画像取得手段は、前記果菜キャリアに載置した果菜の切断面画像を取得可能であり、
画像判別手段は、前記画像取得手段で取得した切断面画像に基づいて、虫害痕の有無を判別することを特徴とする果菜の検出装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7記載の果菜の検出装置において、
果菜搬送体の側方に不良品受体が配置されるとともに、それぞれの果菜キャリアは載置した果菜を不良品受体に移動させる移動機構を有し、
画像判別手段の判別結果に基づいて不良品として検出された果菜を、前記移動機構によって前記果菜キャリアから前記不良品受体へ移動可能であることを特徴とする果菜の検出装置。
【請求項9】
請求項6乃至請求項8のいずれかに記載の果菜の検出装置において、
果菜搬送体の途中に設けられ、果菜の等階級を計測する等階級計測手段と、
果菜搬送体の側方に配置される2以上の果菜受体と、を備え、
それぞれの果菜キャリアは載置した果菜を前記果菜受体に移動させる移動機構を有し、
前記等階級計測手段による計測結果に基づいて、移動機構によって、果菜を果菜キャリアから前記果菜受体へ、果菜の等階級別に移動可能であることを特徴とする果菜の検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−149966(P2012−149966A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8187(P2011−8187)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(391017702)日本協同企画株式会社 (19)
【Fターム(参考)】