架橋ポリマーマトリックス、ならびにその作製方法および使用方法
【課題】官能化コンドロイチン硫酸、官能化コンドロイチン硫酸を含んで成る架橋ポリマーマトリックス、ならびにその生成方法および使用方法が提供される。このようなポリマーマトリックスは、組織工学、軟骨再建などに使用され得る。キットもまた、軟骨分解酵素の検出のために提供される。
【解決手段】官能化コンドロイチン硫酸は、架橋ポリマーマトリックスから生成し得、それは、例えば骨格関節における、軟骨再建、および創傷の封鎖または充填などに有用である。官能化多糖を含有する架橋ポリマーマトリックスは、軟骨分解活性の存在の検出に使用するのにも有用である。
【解決手段】官能化コンドロイチン硫酸は、架橋ポリマーマトリックスから生成し得、それは、例えば骨格関節における、軟骨再建、および創傷の封鎖または充填などに有用である。官能化多糖を含有する架橋ポリマーマトリックスは、軟骨分解活性の存在の検出に使用するのにも有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(緒言)
プロテオグリカンは、多くの生物学的過程において重要な役割を担っていると考えられる細胞外マトリックス(ECM)の構成成分である。これらの生体高分子は、細胞外網状構造の機能性に寄与していると考えられる。例えば、プロテオグリカンは、結合組織マトリックスの集合の調節、この活性を強化するかまたは阻害する成長因子の結合、およびチロシンキナーゼ受容体との直接的または間接的相互作用による細胞増殖の調節において、役割を担っていると考えられる。これらの生物学的機能は、生体材料骨格を形成するのに有用であると考えられる。例えば、生物活性および/または生物反応性の合成ECMは、薬物送達および組織工学における用途を有し得る。
【背景技術】
【0002】
天然由来の生体高分子は、有用な生物学的特性を有するが生物医学的用途に必要とされる構造的または機能的特性に欠ける場合が多い。例えば、軟骨組織は、関節において骨の表面を覆い、耳および鼻のような組織に構造的完全性を与える。II型コラーゲン、およびアグレカンを包含するプロテオグリカンは、軟骨ECMの主要成分であり、組織の印象的(impressive)圧縮強度および抗張力に関与している。
【0003】
コンドロイチン硫酸(CS)は、アグレカン分子の「アーム」を形成し得る生体高分子であり、軟骨ECMの主要成分を形成する。コンドロイチン硫酸は、関節疾患において、痛みを減少させ、関節機能を向上させる能力も有する。
【0004】
架橋高分子生体材料は、医療装置のコーティング物、構造的人工インプラント、および薬物送達賦形剤を包含する多くの生物医学的用途に広く使用されている。ポリマー網状構造は、例えば、水溶性ポリマー溶液を架橋して水不溶性ポリマー網状構造を形成することによって形成し得る。機械的および構造的特性は、網状構造孔サイズ、含水量および機械的特性を調節する架橋密度の変化によって操作し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
架橋ポリマー、マトリックスまたはゲルは、部分的に、細胞を効果的に封入するそれらの能力により、組織工学に使用し得る。架橋ポリマーまたはゲルは、栄養素および老廃物の輸送を可能にし得る高い組織様含水量を有する場合がある。生体適合性であるか、または任意に生分解性の架橋ポリマーマトリックスは、例えば、関節における軟骨の変性を検出するのにも有用である。以前の研究は、アグレカンにおいて短くなったG3ドメインを生じる遺伝子変異およびその後の関連コンドロイチン硫酸の減少と、椎間円板(IVD)変性の素因との間に相関関係があることを示している。IVDの変性は、下背部痛(low back pain)および腰椎円板脱出の発生に関連した重大な臨床的問題である。生物学的修復および再生を促進しながら、IVDの機械的および構造的機能を元に戻す有効な治療法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
部分的には、本発明は、少なくとも1個の重合可能な部分によって官能化されたコンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成る組成物を提供する。いくつかの実施形態において、組成物は、官能化コンドロイチン硫酸の少なくとも10個、または少なくとも100個、または少なくとも1000個またはそれ以上のモノマー単位を含んで成る。
【0007】
別の実施形態において、コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を、少なくとも1個の重合可能な部分に結合させる。重合可能な部分は、例えば、メタクリレート、エタクリレート、イタコネート、アクリルアミドおよびアルデヒドから選択し得る。コンドロイチン硫酸のモノマー単位は、このモノマー単位上の1個またはそれ以上のチオ、アルデヒドまたはカルボン酸成分によって官能化し得る。
【0008】
いくつかの実施形態において、式I、IIまたはIIIで示される本発明の組成物を提供する:
【0009】
【化3】
【0010】
ここで、Rは、アルケニルであり;R1は、アルデヒドまたはアルコールから独立して選択され、少なくとも1個のR1はアルデヒドである。いくつかの実施形態において、Rは、
【0011】
【化4】
【0012】
である。
【0013】
さらに、官能化コンドロイチン硫酸組成物は、生体適合性ポリマーの少なくとも1個のモノマー単位も含んで成ってよい。いくつかの実施形態において、生体適合性ポリマーは、ポリエチレングリコールポリマー、例えばアクリレート−ポリエチレン−アクリレートである。
【0014】
本開示はまた、架橋ポリマーマトリックスを含んで成る組成物を提供し、この架橋ポリマーマトリックスは、官能化コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成る。いくつかの実施形態において、コンドロイチン硫酸の1個またはそれ以上のモノマー単位が、アルケニル成分、例えばメタクリレートによって官能化されている。他の実施形態において、コンドロイチン硫酸の1個またはそれ以上のモノマー単位が、アルデヒド成分によって官能化されている。本発明の架橋ポリマーマトリックスは、ヒドロゲルであってもよい。
【0015】
本開示の組成物は、検出可能剤、例えば色素または蛍光剤、または生物学的に活性な物質、例えば軟骨細胞または間葉幹細胞をさらに含んで成ってよい。
【0016】
いくつかの実施形態において、本発明の架橋ポリマーマトリックスは、アミン成分を含んで成る生体適合性ポリマーまたは化合物、例えばアルブミンのようなタンパク質の、少なくとも1個のモノマー単位をさらに含んで成る。
【0017】
いくつかの実施形態において、架橋ポリマーマトリックスは、少なくとも約75wt%、少なくとも約50wt%、少なくとも約25wt%、または約25wt%未満の生体適合性ポリマーを含んで成る。
【0018】
官能化糖部分(例えば、コンドロイチン硫酸のモノマー単位)の生成方法がさらに提供され、この方法は以下の工程を包含する:少なくとも1個の糖単位を有する化合物、およびアルキレン部分、例えば、無水メタクリル酸、塩化アクリロイルまたはメタクリル酸グリシジルを有する化合物を含んで成る溶液を提供する工程;およびその溶液を少なくとも10日間攪拌する工程。いくつかの実施形態においては、溶液を少なくとも15日間攪拌することができる。溶液は、極性溶媒、例えば親水性溶媒を含み得る。
【0019】
架橋ポリマーマトリックスを含んで成る組成物の生成方法もまた提供され、この方法は以下の工程を包含する:官能化コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を有するポリマーを提供する工程:およびこのポリマーを少なくとも1つの重合開始剤に曝露し、それによって架橋マトリックスを生成する工程。重合開始剤は、電磁放射線、染色剤、熱開始剤、酸化還元開始剤および化学開始剤を包含する。
【0020】
架橋ポリマーマトリックスを含んで成る組成物のさらなる生成方法もまた提供され、この方法は以下の工程を包含する:少なくとも1個のアルデヒドで官能化したコンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成るポリマーを提供する工程;およびアミン部分を含んで成る化合物を提供する工程;それによって架橋マトリックスを生成する工程。
【0021】
修復を必要とする骨格関節(skeletal joint)において、平滑関節面を修復するさらなる方法もまた提供され、この方法は、官能化コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成る組成物を、関節における骨の関節面に投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、この方法は、関節面においてインサイチュで組成物を重合開始剤に曝露し、それによって架橋ポリマーを形成し、関節面を滑らかにコーティングすることをさらに包含し得る。
【0022】
組織サンプルにおける軟骨分解活性の存在を評価する方法もまた提供され、この方法は以下の工程を包含する:架橋ポリマーマトリックスおよび検出可能剤を含んで成る組成物を提供する工程;組織サンプルを提供する工程;組成物を組織サンプルに接触させる工程;および組成物からの検出可能剤の遊離を評価する工程。いくつかの実施形態において、組織サンプルは、骨格関節の1つまたはそれ以上の生検に由来し得る。他の実施形態において、生検は、関節軟骨または骨液を含む。
【0023】
別の実施形態において、患者の関節炎を診断する方法が提供され、この方法は以下の工程を包含する:コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成り、検出可能剤をその中に捕捉している、架橋ポリマーマトリックスを提供する工程;患者の骨格関節生検に由来する組織サンプルを提供する工程;ポリマーマトリックスを組織サンプルに接触させる工程;ポリマーマトリックスからの検出可能剤の遊離を評価する工程。そのような遊離は、患者における関節炎に関連した軟骨分解活性の存在を示し得る。
【0024】
なお別の実施形態において、フィルムで十分にコーティングした表面を有する固体支持体が提供され、このフィルムは、コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含有する架橋ポリマーマトリックスを含んで成る。いくつかの実施形態において、検出可能剤がフィルム内に捕捉される。
【0025】
本開示においてキットが提供され、このキットは、組織サンプルにおける軟骨分解活性の存在を評価するのに使用でき、このキットは、本発明の固体支持体、コンドロイチナーゼ活性に充分な溶液を生成する手段、および使用のための指示書を備える。いくつかの実施形態において、コンドロイチナーゼ活性に充分な溶液を生成する手段は、pH8.0に緩衝したTris−HCl溶液をその中に含有する容器を含む。
【0026】
別の実施形態において、必要とする患者において軟骨を再建する方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:官能化コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成る組成物を、患者の所望の軟骨形成部位に投与する工程。いくつかの実施形態において、組成物は、それに懸濁された生存可能な軟骨形成細胞をさらに含んで成る。この方法は、組成物をインサイチュで光照射し、それによって、その細胞をその中に捕捉しているコンドロイチン硫酸架橋マトリックスを形成することをさらに含んで成ってもよい。
【0027】
さらに、必要とする患者において軟骨を再建する第二の方法が提供され、この方法は、以下の工程を包含する:官能化コンドロイチン硫酸の少なくとも1個の単位を含んで成る架橋ポリマーマトリックスを提供する工程;およびポリマーマトリックスを、患者の再建必要部位に移植する工程。架橋ポリマーマトリックスは、その中に捕捉された軟骨細胞または間葉幹細胞のような細胞をさらに含んで成ってもよい。所望の軟骨形成部位は、骨格関節、または椎間円板、鼻または耳であってよい。
【0028】
なお別の実施形態において、必要とする患者において創傷を封鎖するかまたは充填する方法が提供され、この方法は、以下の工程を包含する:官能化コンドロイチン硫酸を含んで成る組成物を投与する工程。この方法は、アミン部分を含有する生体適合性ポリマーまたは化合物をさらに含んで成る組成物を使用し、それによって創傷を充填または封鎖する架橋マトリックスを形成することをさらに含んで成ってもよい。また、本発明は以下を提供する:
(項目1)
少なくとも1個の重合可能な部分によって官能化された、コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成る、組成物。
(項目2)
前記組成物が、コンドロイチン硫酸の少なくとも10個のモノマー単位を含んで成る、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記モノマー単位の少なくとも1個が、少なくとも1個の重合可能な部分に結合している、項目2に記載の組成物。
(項目4)
前記重合可能な部分が、メタクリレート、エタクリレート、イタコネート、アクリルアミドおよびアルデヒドから成る群から選択される、項目2に記載の組成物。
(項目5)
前記重合可能な部分がメタクリレートである、項目4に記載の組成物。
(項目6)
コンドロイチン硫酸の前記モノマー単位が、1個またはそれ以上のチオ、カルボン酸またはアルコール部分によって官能化されている、項目1に記載の組成物。
(項目7)
コンドロイチン硫酸の前記モノマー単位が、以下の式I、IIまたはIIIから選択される項目1に記載の組成物であって:
【化1】
ここで、Rはアルケニルであり、そしてR1はアルデヒドまたはアルコールから独立して選択され、少なくとも1個のR1はアルデヒドである、組成物。
(項目8)
Rが、以下:
【化2】
である、項目7に記載の組成物。
(項目9)
生体適合性ポリマーの少なくとも1個のモノマー単位をさらに含んで成る、項目1に記載の組成物。
(項目10)
前記生体適合性ポリマーがポリエチレングリコールである、項目9に記載の組成物。
(項目11)
前記生体適合性ポリマーがアクリレート−ポリエチレン−アクリレートである、項目9に記載の組成物。
(項目12)
架橋ポリマーマトリックスを含んで成る組成物であって、ここで、該架橋ポリマーマトリックスが、官能化コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成る、組成物。
(項目13)
コンドロイチン硫酸の前記モノマー単位が、アルケニル部分によって官能化されている、項目12に記載の組成物。
(項目14)
コンドロイチン硫酸の前記モノマー単位が、アルデヒド部分によって官能化されている、項目12に記載の組成物。
(項目15)
前記アルケニル部分がメタクリレートである、項目13に記載の組成物。
(項目16)
前記架橋ポリマーマトリックスがヒドロゲルである、項目12に記載の組成物。
(項目17)
検出可能剤をさらに含んで成る、項目12に記載の組成物。
(項目18)
生物学的に活性な物質をさらに含んで成る、項目12に記載の組成物。
(項目19)
前記検出可能剤が色素である、項目17に記載の組成物。
(項目20)
前記色素が蛍光物質である、項目19に記載の組成物。
(項目21)
前記生物学的に活性な物質が軟骨細胞である、項目18に記載の組成物。
(項目22)
前記生物学的に活性な物質が間葉幹細胞である、項目18に記載の組成物。
(項目23)
前記架橋ポリマーマトリックスが、生体適合性ポリマーの少なくとも1個のモノマー単位をさらに含んで成る、項目12に記載の組成物。
(項目24)
前記架橋ポリマーマトリックスが、アミン部分を含む化合物をさらに含んで成る、項目12に記載の組成物。
(項目25)
前記化合物がタンパク質である、項目24に記載の組成物。
(項目26)
前記化合物がアルブミンである、項目24に記載の組成物。
(項目27)
前記生体適合性ポリマーがポリ(エチレングリコール)である、項目23に記載の組成物。
(項目28)
前記架橋ポリマーマトリックスが、少なくとも約75重量%の前記生体適合性ポリマーを含んで成る、項目23に記載の組成物。
(項目29)
前記架橋ポリマーマトリックスが、少なくとも約50重量%の前記生体適合性ポリマーを含んで成る、項目23に記載の組成物。
(項目30)
前記架橋ポリマーマトリックスが、少なくとも約25重量%の前記生体適合性ポリマーを含んで成る、項目23に記載の組成物。
(項目31)
前記架橋ポリマーマトリックスが、25重量%未満の前記生体適合性ポリマーを含んで成る、項目23に記載の組成物。
(項目32)
官能化糖部分の生成方法であって、該方法は、以下:
a)少なくとも1個の糖単位を含む化合物、およびアルキレン部分を含む化合物を含んで成る溶液を提供する工程;および
b)該溶液を少なくとも10日間攪拌する工程、
を包含する、方法。
(項目33)
前記溶液を攪拌する工程が、少なくとも15日間を含む、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記溶液が極性溶媒を含んで成る、項目32に記載の方法。
(項目35)
前記極性溶媒が親水性である、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記少なくとも1個の糖単位が、コンドロイチン硫酸のモノマー単位である、項目32に記載の方法。
(項目37)
前記アルキレン部分が、無水メタクリル酸、塩化アクリロイルまたはメタクリル酸グリシジルから成る群から選択される、項目32に記載の方法。
(項目38)
架橋ポリマーマトリックスを含んで成る組成物の生成方法であって、該方法は、以下:
a)官能化コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成るポリマーを提供する工程;および
b)該ポリマーを少なくとも1つの重合開始剤に曝露し、それによって該架橋マトリックスを生成する工程、
を包含する、方法。
(項目39)
前記重合開始剤が、電磁放射線、染色剤、熱開始剤、酸化還元開始剤および化学開始剤から成る群から選択される、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記重合開始剤が電磁放射線である、項目38に記載の方法。
(項目41)
前記電磁放射線が約200〜約700nmである、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記ポリマーを第二の重合開始剤に曝露する工程をさらに包含する、項目40に記載の方法。
(項目43)
前記曝露する工程がインビボで行なわれる、項目38に記載の方法。
(項目44)
架橋ポリマーマトリックスを含んで成る組成物の作製方法であって、該方法は、以下:
a)少なくとも1個のアルデヒドで官能化された、コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成るポリマーを提供する工程;および
b)アミン部分を含有する化合物を提供し、それによって該架橋マトリックスを生成する工程、
を包含する、方法。
(項目45)
必要とする骨格関節に対して滑らかな関節面を回復する方法であって、官能化コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成る組成物を、該関節における骨の関節面に投与する工程を包含する、方法。
(項目46)
前記関節面において、前記組成物をインサイチュで重合開始剤に曝露し、それによって該関節面をコーティングする架橋ポリマーが形成される、工程をさらに包含する、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記重合開始剤が電磁放射線である、項目46に記載の方法。
(項目48)
組織サンプル中の、軟骨分解活性の存在を評価する方法であって、該方法は、以下:
a)架橋ポリマーマトリックスおよび検出可能剤を含んで成る組成物を提供する工程;
b)組織サンプルを提供する工程;
c)該組成物を該組織サンプルに接触させる工程;および
d)該組成物からの該検出可能剤の放出を評価する工程、
を包含する、方法。
(項目49)
前記組織サンプルが、骨格関節の生検に由来する、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記生検が関節軟骨を含む、項目49に記載の方法。
(項目51)
前記生検が滑液を含む、項目49に記載の方法。
(項目52)
患者において関節炎を診断する方法であって、該方法は、以下:
a)コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成り、捕捉された検出可能剤を有する架橋ポリマーマトリックスを提供する工程;
b)該患者の骨格関節生検に由来する組織サンプルを提供する工程;
c)該ポリマーマトリックスを該組織サンプルに接触させる工程;および
d)該ポリマーマトリックスからの該検出可能剤の放出を評価する工程、
を包含し、そのような放出が、該患者における関節炎に関連する軟骨分解活性の存在を示す、方法。
(項目53)
患者における関節炎の治療の有効性をモニタリングする方法であって、該方法は、以下:
a)関節炎について該患者を処置する前に、該患者から骨格関節組織の生検を得る工程;
b)工程(a)の生検に由来する組織サンプルを、項目48に記載の方法に従って軟骨分解活性の存在について評価する工程;
c)該患者に関節炎についての処置を行う工程;
d)関節炎についての該患者の処置後に、該患者から骨格関節組織の生検を得る工程;
e)工程(d)の生検に由来する組織サンプルを、項目48に記載の方法に従って軟骨分解活性の存在について評価する工程、
を包含し、ここで、工程(b)で得られた軟骨分解活性に対する軟骨分解活性における変化が、該処置の有効性と相関する、方法。
(項目54)
フィルムで十分にコーティングされた表面を備える固体支持体であって、該フィルムが、コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成る架橋ポリマーマトリックスを含む、固体支持体。
(項目55)
検出可能剤が前記フィルム内に捕捉されている、項目54に記載の固体支持体。
(項目56)
前記検出可能剤が色素である、項目54に記載の固体支持体。
(項目57)
前記色素が蛍光剤である、項目56に記載の固体支持体。
(項目58)
組織サンプルにおける軟骨分解活性の存在を評価するためのキットであって、項目54に記載の固体支持体、コンドロイチナーゼ活性に十分な溶液を生成する手段、および使用のための指示書を備える、キット。
(項目59)
コンドロイチナーゼ活性に十分な溶液を生成する前記手段が、pH8.0に緩衝化されたTris−HClの溶液を含有する容器を含む、項目58に記載のキット。
(項目60)
必要とする患者において、軟骨を再建するための方法であって、官能化コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成る組成物を、該患者における所望の軟骨形成部位に投与する工程を包含する、方法。
(項目61)
アミン部分を含む化合物を提供し、それによって、コンドロイチン硫酸架橋ポリマーマトリックスを形成する工程をさらに包含する、項目60に記載の方法。
(項目62)
前記組成物が、その中に懸濁した生存可能な軟骨形成細胞をさらに含んで成る、項目60に記載の方法。
(項目63)
前記組成物をインサイチュで光照射し、それによって、その中に捕捉された前記細胞を有するコンドロイチン硫酸架橋マトリックスを形成する工程をさらに包含する、項目60に記載の方法。
(項目64)
必要とする患者において、軟骨を再建する方法であって、該方法は、以下:
(a)光透過性容器を提供する工程であって、その内面が所望の軟骨部分の外形を規定する、工程;
(b)該容器に、懸濁された生存可能な軟骨形成細胞を有する官能化コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成る組成物を充填する工程;
(c)該充填した容器を光照射するか、またはアミン基を含む化合物を該容器にさらに添加し、それによって、捕捉された細胞を有するコンドロイチン硫酸架橋ポリマーマトリックスを形成する工程;
(d)該容器から該ポリマーマトリックスを取り出す工程;および
(e)該軟骨部分を必要とする部位において、該患者に該ポリマーマトリックスを移植し、その後、該細胞がインビボで軟骨性細胞外マトリックスを形成し、それによって該軟骨部分を形成する、工程、
を包含する、方法。
(項目65)
前記架橋ポリマーマトリックスが、その中に捕捉された細胞を含んで成る、項目64に記載の方法。
(項目66)
前記所望の軟骨形成部位が骨格関節である、項目60または64に記載の方法。
(項目67)
前記所望の軟骨形成部位が椎間円板である、項目60または64に記載の方法。
(項目68)
前記所望の軟骨形成部位が鼻である、項目60または64に記載の方法。
(項目69)
前記所望の軟骨形成部位が耳である、項目60または64に記載の方法。
(項目70)
前記細胞が軟骨細胞または間葉幹細胞である、項目62または64に記載の方法。
(項目71)
必要とする患者において、創傷を封鎖または充填する方法であって、官能化コンドロイチン硫酸を含んで成る組成物を投与する工程を包含する、方法。
(項目72)
前記組成物が、アミン部分を含む化合物をさらに含んで成り、それによって、前記創傷を充填または封鎖する架橋マトリックスを形成する、項目71に記載の方法。
(項目73)
該組成物が、アルブミンをさらに含んで成る、項目71に記載の方法。
(項目74)
創傷を封鎖するデバイスの非存在下で、前記組成物が、前記創傷部位を規定する組織面への付着を維持するのに十分な機械的強度を有する架橋ポリマーマトリックスを生成する、項目72に記載の方法。
(項目75)
前記組成物が、生体適合性ポリマーをさらに含んで成る、項目71に記載の方法。
(項目76)
前記創傷において、該組成物をインサイチュで光照射し、それによって、該創傷を架橋マトリックスで充填するかまたは封鎖する工程をさらに包含する、項目75に記載の方法。
(項目77)
創傷を充填する工程が、部分的にまたは完全に剥離した組織を再付着させる工程を包含する、項目71に記載の方法。
(項目78)
前記組成物が、生物学的に活性な物質をさらに含んで成る、項目71に記載の方法。
(項目79)
前記生物学的に活性な物質が、創傷治癒を促進する物質である、項目78に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、メタクリル化コンドロイチン硫酸(CS−MA)の合成経路を示す概略図である(陽子/炭素標識h*およびc*を含む)。
【図2】図2は、コンドロイチン硫酸の遊離メタクリレート結合を示す1H NMRスペクトルを示す線グラフである。上から下までの曲線は、それぞれ第1日、第3日、第5日、第7日、第10日および第15日を示す。
【図3】図3は、コンドロイチン硫酸の遊離メタクリレート結合を示す13C NMRスペクトルを示す線グラフである。第1日を上の表に示し、第15日を下の表に示す。
【図4】図4は、PEODMのパーセントの関数として変化するCS−MAの混合ゲル(cogels)の膨潤率を示す線グラフである。
【図5A】図5Aは、動的剪断弾性率|G*|の関数としてCS−MAおよびPEODAの混合ゲルの度数(frequency)を示す線グラフである。
【図5B】図5Bは、位相角δの関数としてCS−MAおよびPEODAの混合ゲルの度数を示す線グラフである。
【図6】図6は、CS−MAブロックの表面の走査電子顕微鏡写真画像(1200倍)を示す図である(バー=2μm)。
【図7】図7は、CS−MAおよびPEODAブロックの表面の走査電子顕微鏡写真画像(2400倍)を示す図である(バー=1μm)。
【図8】図8は、CS−MAの表面の走査電子顕微鏡写真画像を示す図であり、(A)は、CS−MAブロックの切り口(640倍)であり(バー=10μm);(B)は、PEODAブロックの切り口(6400倍)である(バー=1μm)。
【図9】図9は、A:コンドロイチナーゼ消化緩衝剤、およびB:コンドロイチナーゼ無添加における分解時間に伴う重量変化を示す、20%(w/v)CS−MAゲルの分解プロフィールを示す線グラフである。
【図10】図10は、種々の酵素濃度の消化緩衝溶液の光吸収における、分解時間に伴う変化を示す線グラフである(A:2.5g/mL、B:0.25g/mL、C:0.025g/mL、D:0.0025g/mLおよびE:コンドロイチナーゼ無添加)。
【図11】図11は、軟骨細胞の光捕捉から1日後の捕捉を示す画像である:(A)は、生存細胞および死亡細胞を視覚化する生存/死亡アッセイであり(原画倍率10x);(B)ミトコンドリア代謝活性を有する細胞のMTT染色(黒色)である(原画倍率10x)。
【図12】図12は、遊離のメタクリレート結合体の置換効率についての反応速度曲線を示す線グラフである:(A)は、総置換効率および開環およびエステル交換による寄与を示し;(B)は、2つの開環生成物(2および3)によるそれぞれの寄与を示す。
【図13】図13は、アルデヒドで官能化したコンドロイチン硫酸の1つの合成経路、およびアルブミンを使用した架橋ポリマーマトリックスの形成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(発明の詳細な説明)
(1.概要)
本発明は、少なくとも部分的に、架橋ポリマー、マトリックスおよびゲル、ならびに架橋マトリックス、ポリマーおよびゲルの生成方法および使用方法に関する。そのような架橋ポリマーは、官能化した糖を含んで成る。
【0031】
例えば、本発明は、官能化コンドロイチン硫酸を提供する。官能化コンドロイチン硫酸は、架橋ポリマーマトリックスから生成でき、それは、例えば骨格関節における、軟骨再建、および創傷の封鎖または充填などに有用である。官能化多糖を含有する架橋ポリマーマトリックスは、軟骨分解活性の存在の検出に使用するのにも有用である。
【0032】
(2.定義)
便宜上、本発明をさらに説明する前に、明細書、実施例および請求の範囲に使用されるいくつかの用語をここに集めた。これらの定義は、開示の他の部分に照らして理解され、当業者に理解されるものである。他に定義されなければ、本明細書に使用される全ての専門用語および科学用語は、当業者に一般に理解されているのと同じ意味を有するものとする。
【0033】
冠詞「a」および「an」は、1つまたは1つより多くの(即ち、少なくとも1つ)の冠詞の文法的対象物を意味する。例えば「an element」は、1つの要素または1つより多くの要素を意味する。
【0034】
「含んで成る」および「含んで成っている」という語句は、包括的な広い意味で使用され、付加的要素も含有し得ることを意味する。
【0035】
「包含する」という語句は、「包含するが、それらに限定されない」ことを意味する「包含する」および「包含するが、それらに限定されない」は、互換的に使用される。
【0036】
「関節面」という用語は、関節における2つの骨の間の軟骨の、表面および円板を意味する。本明細書において「関節面」と言う場合、健康な関節において、2つの骨の上の2つの軟骨コーティング面が、関節を曲げたり伸ばしたりする際に、互いに接触しながら、擦れ合い、滑動し、回転し、またはそれ以外の動きをすることを意味する。そのような2つの面の、この種の可動性相互作用は関節と称され、そのような動きの際に互いに接触し押し合う2つの軟骨コーティング面は「関節をなしている」と言われる。2つの骨の間の軟骨の円板は、「関節軟骨」と呼ばれる。
【0037】
「活性物質」および「生物学的に活性な物質」は、本明細書において互換的に使用され、所望の薬理学的、生理学的作用を有する化学的または生物学的化合物を意味し、その作用は予防的または治療的であってよい。この用語は、本明細書に特に記載されている活性物質の、薬学的に受容可能であり薬理学的に活性な誘導体も包含し、この誘導体は、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝産物、類似体等を包含するがそれらに限定されない。「活性物質」、「薬理学的活性物質」および「薬剤」という用語が使用されている場合、出願人は、活性剤そのもの、ならびに薬学的に受容可能であり薬理学的に活性な塩、エステル、アミド、プロドラッグ、代謝産物、類似体等を包含することを意図するものと理解される。
【0038】
ポリマーに関して使用される「生体適合性ポリマー」、「生体適合性架橋ポリマーマトリックス」および「生体適合性」という用語は、当分野において認識されている。例えば、生体適合性ポリマーは、宿主(例えば、動物またはヒト)にそれ自体で毒性でなく、宿主においてモノマーまたはオリゴマーサブユニットまたは他の副生物を毒性濃度で生じる速度で分解しない(ポリマーが分解する場合)ポリマーを包含する。本発明の特定の実施形態において、生分解は、生体における、例えば事実上非毒性であることが公知のモノマーサブユニットへの、ポリマーの分解を一般に含む。しかし、そのような分解から生じた中間体オリゴマー生成物は、種々の毒物学的特性を有し得るか、または生分解は、ポリマーのモノマーサブユニット以外の分子を生じる酸化または他の生化学的反応を含み得る。従って、特定の実施形態において、患者への移植または注入のような生体内使用を目的とした生分解性ポリマーの毒性を、1つまたはそれ以上の毒性分析後に決定し得る。いずれの本発明の組成物も、生体適合性とみなされるために100%の純度を有する必要はなく、実際には、本発明の組成物が上記のような生体適合性であるだけでよい。従って、本発明の組成物は、99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、80%、75%またはそれ以下の生体適合性ポリマーを含有するポリマー(例えば、本明細書に記載されているポリマーおよび他の物質および賦形剤を包含する)を含んで成ってよく、それでもなお生体適合性である。
【0039】
ポリマーまたは他の物質が生体適合性であるかどうかを決定するために、毒性分析を行なうことが必要な場合がある。そのような分析は当分野でよく知られている。そのような分析の1つの例は、GT3TKB腫瘍細胞のような生きた癌細胞を使用して以下のように行なえる:サンプルを、37℃にて1M NaOH中で、完全な分解が観察されるまで分解させる。次に、溶液を1M HClで中和する。種々の濃度の分解サンプル生成物約200μLを、96穴組織培養皿に入れ、ヒト癌細胞(GT3TKB)を104/穴の密度で接種する。分解サンプル生成物をGT3TKB細胞と共に48時間培養する。分析の結果を、組織培養穴中の分解サンプルの濃度に対する相対増殖%としてプロットし得る。さらに、本発明のポリマー、ポリマーマトリックスおよび配合物を、よく知られている生体内試験、例えば、皮下移植部位において有意なレベルの刺激または炎症が生じないことを確認するラットにおける皮下移植によっても評価し得る。
【0040】
「生分解性」という用語は、当分野で認識されており、使用中に分解することを意図した、本明細書に記載のようなポリマー、ポリマーマトリックス、ゲル、組成物および配合物を包含する。生分解性ポリマーおよびマリックスは、一般に、それらが使用中に分解し得るという点で非生分解性ポリマーと異なる。特定の実施形態において、そのような使用は、生体内治療のような生体内使用を含み、他の特定の実施形態において、そのような使用は生体外使用を含む。一般に、生分解性に起因する分解は、生分解性ポリマーのその部分サブユニットへの分解、または、例えば生化学過程による、ポリマーのより小さい非高分子サブユニットへの消化を含む。特定の実施形態において、2つの異なるタイプの生分解を一般に同定し得る。例えば、1つのタイプの生分解は、ポリマー主鎖における結合(共有結合またはその他の結合)の開裂を含む。そのような生分解において、モノマーおよびオリゴマーが一般に生成され、より一般的には、そのような生分解が、ポリマーの1つまたはそれ以上のサブユニットを連結する結合の開裂によって起こる。これに対して、もう1つのタイプの生分解は、側鎖の内部の結合または側鎖をポリマー主鎖につなぐ結合(共有結合またはその他の結合)の開裂を含む。例えば、ポリマー主鎖に側鎖として結合している治療薬、生物学的に活性な物質または他の化学成分を、生分解によって遊離し得る。特定の実施形態において、1つのまたは他方のまたは両方の一般的なタイプの生分解が、ポリマーの使用中に起こり得る。本明細書において使用される「生分解」という用語は、両方の一般的なタイプの生分解を包含する。
【0041】
生分解性ポリマーの分解速度は、いずれかの分解に関与する結合の化学特性、そのようなポリマーの分子量、結晶度、生物安定性および架橋度、インプラントの物理的特性、形および大きさ、ならびに投与の方法および部位を包含する種々の要因に部分的に依存する場合が多い。例えば、分子量が大きく、結晶度が高く、そして/または生物安定性が高いほど、どのような生分解性ポリマーの生分解も一般により遅くなる。「生分解性」という用語は、「生物侵食性」とも称される物質および方法を包含するものとする。
【0042】
特定の実施形態において、そのようなポリマーの生分解速度は、酵素、例えばコンドロイチナーゼの存在によって特徴付けられる。そのような場合、生分解速度は、ポリマーマトリックスの化学特性および物理的性質だけでなく、そのような酵素の特性にも依存し得る。
【0043】
特定の実施形態において、本発明のポリマー配合物は、所望の適用に許容される期間内に生分解する。生体内治療のような特定の実施形態において、そのような分解は、pH6〜8、温度約25〜37℃の生理溶液への曝露において、一般に、約5年、1年、6ヶ月、3ヶ月、1ヶ月、15日、5日、3日、または1日以内に起こる。他の実施形態において、所望の適用に依存して、ポリマーは約1時間〜数週間で分解する。いくつかの実施形態において、ポリマーまたはポリマーマトリックスは、分解時に遊離される検出可能剤を含有し得る。
【0044】
「軟骨分解活性」という用語は、軟骨の分解を生じ得る物質の活性または存在、例えば分解酵素の活性または存在、または軟骨における小線維化、侵食またはひび割れの存在を意味する。
【0045】
「軟骨形成細胞」という用語は、軟骨を形成するか、または軟骨の形成を促進する細胞を包含する。そのような細胞は、軟骨細胞および間葉幹細胞を包含する。
【0046】
本明細書における「架橋」という用語は、分子間架橋および任意に分子内架橋を有し、共有結合の形成によって生じる組成物を意味する。2つの架橋性成分間の共有結合は、直接的である場合もあり(その場合、1つの成分中の原子が、他の成分中の原子に直接的に結合している)、または結合基を介して間接的である場合もある。架橋ゲルまたはポリマーマトリックスは、共有結合に加えて、水素結合および静電(イオン)結合のような分子間および/または分子内非共有結合も含有し得る。「架橋性」という用語は、架橋結合組成物を形成する反応を受けることができる成分または化合物を意味する。
【0047】
本明細書において使用される「電磁放射線」は、波長10−20〜10mを有する放射線を包含するがそれに限定されない。本発明の電磁放射線の特定の実施形態は、以下の電磁放射線を使用する:γ線(10−20〜10−13m)、X線(10−11〜10−9m)、紫外線(10nm〜400nm)、可視光線(400nm〜700nm)、赤外線(700nm〜1.0mm)、およびマイクロ波(1mm〜30cm)。
【0048】
「官能化」という用語は、他の官能基(例えば、スルフヒドリル基)との反応を受けて共有結合を形成することができる新たな反応性官能基(例えば、アクリレート基)を生成するかまたは導入するために、存在する分子セグメントを修飾することを意味する。例えば、ここでも公知の方法を使用して、カルボン酸基を、ハロゲン化アシル、例えば塩化アシルとの反応によって官能化して、無水物の形態の新たな反応性官能基を得ることができる。
【0049】
「ゲル」という用語は、液体と固体の中間の物質状態を意味し、液体媒質中で膨潤した架橋ポリマー網状構造であると一般に定義される。一般に、ゲルは、液体および固体の両方を含有する2相コロイド分散系であり、固体の量は、「ゾル」と称される2相コロイド分散系におけるより多い。従って、「ゲル」は、いくらかの液体特性(即ち、形が弾性かつ変形性である)、およびいくらかの固体特性(即ち、形が、二次元面において3つの寸法を維持するのに充分な分離性である)を有する。「ゲル時間」とも称される「ゲル化時間」は、組成物が、適度の応力下に非流動性になるのに要する時間を意味する。これは、弾性率G’が粘弾性率G’’に等しいかまたはそれを越える物理的状態に達した際、即ち、tan(δ)が1になる際(一般的な流動学的方法を使用して測定し得る)に一般に示される。
【0050】
「ヒドロゲル」という用語は、実質量の水を吸収して弾性ゲルを形成することができる水膨潤性ポリマーマトリックスを意味し、「マトリックス」は、共有または非共有架橋によって保持された高分子の三次元網状構造である。水性環境に置いた際に、乾燥ヒドロゲルは、架橋度によって許される程度に膨潤する。
【0051】
「指示資料」または「指示書」は、治療法における本明細書に開示した組成物の有用性、または本発明の組成物の生成方法または使用方法を伝えるために使用し得る、発行物、記録物、図表または他のあらゆる表現媒体を包含する。指示資料は、例えば、組成物を含有する容器に貼るか、または組成物を含有する容器と一緒に輸送するか、または組成物と共にキットに含有させる。または、受取人によって指示資料および組成物が共に使用されることを意図して、指示資料を容器と別に輸送してもよい。
【0052】
「ポリマー」という用語は、反復モノマー単位から構成される分子を意味し、ホモポリマー、ブロックコポリマー、ランダムコポリマーおよびグラフトコポリマーを包含する。「ポリマー」は、線状ポリマーならびに枝分れポリマーも包含し、枝分れポリマーは、高枝分れ、樹枝状および星状ポリマーを包含する。
【0053】
「重合開始剤」は、遊離基生成によってモノマーまたはマクロマー(macromers)の重合を開始させることができるあらゆる物質または刺激を意味する。例示的重合開始剤は、電磁放射線、熱および化学化合物を包含する。
【0054】
本明細書において使用される「糖類」という用語は、単糖類、ニ糖類、三糖類、またはより高いオーダーの糖類または寡糖類を意味する。代表的な単糖類は、グルコース、マンノース、ガラクトース、グルコサミン、マンノサミン、ガラクトサミン、フルクトース、グリセルアルデヒド、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルオース、イドース、タロース、プシコース、ソルボースおよびタガトースを包含する。例示的ニ糖類は、マルトース、ラクトース、スクロース、セロビオース、トレハロース、イソマルトース、ゲンチオビオース、メリビオース、ラミナリビオース、キトビオース、キシロビオース、マンノビオース、ソフォロース等を包含する。特定の三糖類およびそれ以上の寡糖類は、ラフィノース、マルトトリオース、イソマルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マンノトリオース、マンニノトリオース等を包含する。例示的多糖類は、デンプン、ナトリウムデンプングリコレート、アルギン酸、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、カラゲナン、キトサン、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ヒアルロン酸およびペクチン酸を包含する。
【0055】
本明細書に使用される「糖単位」は、少なくとも1個のピラノースまたはフラノース環を有する糖分子を意味する。いくつかの実施形態において、ヒドロキシル基をエステル化する際に、糖単位のヒドロキシル基から少なくとも1個の水素原子を除去し得る。
【0056】
「検出可能剤」という用語は、診断目的で使用し得る薬剤を包含する。そのような診断薬の例は、検出可能な画像を生じることができる画像化剤を包含する。そのような画像化剤は、色素、放射性核種およびそれらを含有する化合物(例えば、トリチウム、ヨウ素125、ヨウ素131、ヨウ素123、ヨウ素124、アスタチン210、炭素11、炭素14、窒素13、フッ素18、Tc−99m、Re−186、Ga−68、Re−188、Y−90、Sm−153、Bi−212、Cu−67、Cu−64およびCu−62)、不対スピン原子および遊離基(例えば、Fe、ランタニドおよびGd)、造影剤(例えば、キレート化(DTPA)マンガン)、および蛍光または化学発光剤を包含する。
【0057】
「処置する」または「処置」という用語は、当分野で認識されており、何らかの状態または疾患の少なくとも1つの状態の治療ならびに改善を包含する。処置とは、疾患、障害または状態が、動物(その疾患、障害および/または状態になりやすいが、まだそれを有すると診断されていない動物)において生じることを予防し;疾患、障害または状態を抑制し、例えばその進行を遅らせ;そして、疾患、障害または状態を軽減し、例えば、疾患、障害および/または状態の後退を生じさせることを包含する。さらに、疾患または状態の処置は、たとえ根元的な病態生理が影響を受けなくても、特定の疾患または状態の少なくとも1つの症状を改善することを包含する。
【0058】
本明細書において、粘性は、当分野において認識されているように、変形を受けた際の、流体の内部摩擦または流体物質によって示される流れに対する抵抗であるものと理解される。ポリマーの粘度は、ポリマーの分子量によって、ならびにポリマー主鎖の種々の異性体を混合することによって、調節することができ;特定ポリマーの物理的性質を変化させる他の方法は、日常試験を行なうだけで当業者に明らかである。本発明の組成物に使用されるポリマーの分子量は、硬質固体状態(一般に、より高い分子量)が所望されるか、または流体状態(一般に、より低い分子量)が所望されるかに依存して、広い範囲で変化することができる。
【0059】
「薬学的に受容可能な塩」という用語は、当分野で認識されており、限定されないが治療薬、賦形剤、他の物質等を含有する本発明の組成物の、相対的に非毒性の無機および有機酸付加塩を包含する。薬学的に受容可能な塩の例は、塩酸および硫酸のような無機酸から誘導される塩、およびエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のような有機酸から誘導される塩を包含する。塩の生成に好適な無機塩基の例は、アンモニア、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛等の水酸化物、炭酸塩および重炭酸塩を包含する。塩は、非毒性かつそのような塩の生成に充分に強い有機塩基を包含する好適な有機塩基を使用して、生成することもできる。例えば、そのような有機塩基の種類は以下のものを包含する:モノ−、ジ−およびトリアルキルアミン、例えば、メチルアミン、ジメチルアミンおよびトリエチルアミン;モノ−、ジ−またはトリヒドロキシアルキルアミン、例えば、モノ−、ジ−およびトリエタノールアミン;アミノ酸、例えば、アルギニンおよびリシン;グアニジン;N−メチルグルコサミン;N−メチルグルカミン;L−グルタミン;N−メチルピペラジン;モルホリン;エチレンジアミン;N−ベンジルフェネチルアミン;(トリヒドロキシメチル)アミノエタン等(例えば、J.Pharm.Sci.,66:1−19(1977)参照)。
【0060】
本発明の方法によって処置される「患者」、「対象」または「宿主」という用語は、ヒトまたは非ヒト、例えば、霊長類、哺乳類および脊椎動物を意味し得る。
【0061】
「予防的」または「治療的」処置は、当分野で認識されており、1つまたはそれ以上の本発明の組成物を宿主に投与することを包含する。好ましくない状態(宿主動物の疾患または他の好ましくない状態)の臨床的出現の前に投与する場合、その処置は予防的であり、即ち、好ましくない状態の発生から宿主を保護するものであり、好ましくない状態の出現後に投与する場合、その処置は治療的である(即ち、存在する好ましくない状態またはその副作用を減少させるか、改善するか、または安定化することを意図している)。
【0062】
「滑液」という用語は、関節の骨膜によって生産される液体を意味する。滑液は潤滑油として機能する。
【0063】
治療薬、色素、または他の物質および高分子組成物、例えば本発明の組成物に関して使用される「組み込まれた」、「封入された」および「捕捉された」という用語は、当分野で認識されている。特定の実施形態において、これらの用語は、所望の適用においてそのような物質の持続的放出を可能にする組成物への、そのような物質の組み込み、配合またはその他の含有を包含する。これらの用語は、治療薬または他の物質をポリマーマトリックスに組み込むあらゆる方法を包含し、そのような方法は、例えば以下の方法を包含する:そのようなポリマーのモノマーに結合させ(共有結合または他の結合相互作用による)、そのようなモノマーを重合の一部にして高分子配合物を得る;ポリマーマトリックスに分散させる;ポリマーマトリックスの表面に付加する(共有結合または他の結合相互作用による);ポリマーマトリックスに封入する等。「共組み込み」または「共封入」という用語は、治療薬または他の物質および少なくとも1つの他の治療薬または他の物質を、本発明の組成物に組み込むことを意味する。
【0064】
より具体的に言えば、いずれかの治療薬または他の物質をポリマーに封入した物理的形態は、特定の実施形態と共に変化し得る。例えば、治療薬または他の物質を微小球に先ず封入し、次に、微小球構造の少なくとも一部が維持されるようにポリマーと合わし得る。または、治療薬または他の物質が本発明のポリマー中で充分に不混和性であり、それによって、ポリマー中に、溶解せずに小滴として分散し得る。ある封入された治療薬または他の物質の持続放出が、その封入形態がある特定使用に充分に許容されるかどうかを決める限りにおいて、あらゆる形態の封入または組み込みが本発明によって考えられる。
【0065】
「創傷封鎖デバイス」は、創傷の封鎖または充填を補助するデバイスおよび物質、例えば、縫合糸、ステープル、シーラント、およびグルーまたは接着剤を包含する。
【0066】
「脂肪族」という用語は、当分野で認識されており、直鎖、分岐鎖および環状アルカン、アルケンまたはアルキンを包含する。特定の実施形態において、本発明の脂肪族基は、直鎖または分岐鎖であり、1〜約20個の炭素原子を有する。
【0067】
「アルキル」という用語は、当分野で認識されており、飽和脂肪族基を意味し、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキル(非環式)基、アルキル置換シクロルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基を包含する。特定の実施形態において、直鎖または分岐鎖アルキルは、その主鎖に約30個またはそれ以下の炭素原子を有する(例えば、直鎖についてはC1〜C30、分岐鎖についてはC3〜C30)か、または約20個またはそれ以下の炭素原子を有する。同様に、シクロアルキルは、その環構造に、約3〜約10個の炭素原子、または約5、6または7個の炭素原子を有する。
【0068】
さらに、「アルキル」(または「低級アルキル」)という用語は、「非置換アルキル」および「置換アルキル」の両方を包含し、後者は、炭化水素主鎖の1個またはそれ以上の炭素上の水素と置き換わった置換基を有するアルキル成分を意味する。そのような置換基は、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(例えば、カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミルまたはアシル)、チオカルボニル(例えば、チオエステル、チオアセテートまたはチオホフメート)、アルコキシル、ホスホリル、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、芳香族または複素芳香族成分を包含し得る。炭化水素鎖上で置換された成分は、適切であれば、それ自体置換されていてよいことは当業者に理解される。例えば、置換アルキルの置換基は、置換または非置換形態の、アミノ、アジド、イミノ、アミド、ホスホリル(ホスホネートおよびホスフィネートを包含する)、スルホニル(スルフェート、スルホンアミド、スルファモイルおよびスルホネートを包含する)およびシリル基、ならびにエーテル、アルキルチオ、カルボニル(ケトン、アルデヒド、カルボキシレートおよびエステルを包含する)、−CF3、−CN等を包含し得る。例示的置換アルキルを以下に記載する。シクロアルキルは、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキルチオ、アミノアルキル、カルボニル置換アルキル、−CF3、−CN等によってさらに置換されていてよい。
【0069】
「アラルキル」という用語は、当分野で認識されており、アリール基(例えば、芳香族基または複素芳香族基)で置換されたアルキル基を包含する。
【0070】
「アルケニル」および「アルキニル」という用語は、当分野で認識されており、長さおよび可能な置換において上記のアルキルと類似しているが、少なくとも1個の二重結合または三重結合をそれぞれ含有する不飽和脂肪族基を包含する。
【0071】
炭素の数が特に指定されていなければ、「低級アルキル」は、1〜10個の炭素原子、または1個〜約6個の炭素原子をその主鎖構造に有する上記のように定義されるアルキルを意味する。同様に、「低級アルケニル」および「低級アルキニル」も、同様の鎖長を有する。
【0072】
「メタクリレート」は、ビニルカルボキシレート、例えば、酸水素が置換されているメタクリル酸を意味する。代表的なメタクリル酸は、アクリル酸、メタクリル酸、α−クロロアクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−エチルアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、および上記ジカルボン酸の半エステルを包含する。
【0073】
「ヘテロ原子」という用語は、当分野で認識されており、炭素または水素以外のあらゆる元素の原子を包含する。例示的へテロ原子は、硼素、窒素、酸素、燐、硫黄およびセレンを包含するか、または酸素、窒素または硫黄を包含する。
【0074】
「アリール」という用語は、当分野で認識されており、0〜4個のヘテロ原子を含有し得る5、6および7員の単環式芳香族基、例えば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジン等を包含する。環構造にヘテロ原子を有するアリール基は、「アリール複素環」または「複素芳香族炭化水素」とも称し得る。芳香環は、1つまたはそれ以上の環位置において、上記のような置換基、例えば、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族または複素芳香族成分、−CF3、−CN等によって、置換されていてよい。「アリール」という用語は、2個またはそれ以上の環を有する多環系も包含し、2個またはそれ以上の炭素が2個の隣接する環に共有されており(その環は「縮合環」である)、この多環系において、少なくとも1個の環が芳香族であり、例えば、他の環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/またはヘテロシクリルであってよい。
【0075】
オルト、メタおよびパラという用語は、当分野で認識されており、1,2−、1,3−および1,4−二置換ベンゼンにそれぞれ適用される。例えば、1,2−ジメチルベンゼンおよびオルト−ジメチルベンゼンの名称は同義である。
【0076】
「ヘテロシクリル」および「複素環式基」という用語は、当分野で認識されており、1〜4個のヘテロ原子を含有する3〜約10員の環構造、例えば3〜約7員の環を包含する。複素環は、多環であってもよい。ヘテロシクリル基は、例えば、チオフェン、チアントレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサチイン(phenoxathiin)、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ピリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナルサジン、フェノチアジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、オキソラン、チオラン、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ラクトン、ラクタム、例えばアゼチジノンおよびピロリジノン、スルタム、スルトン等を包含する。複素環は、1つまたはそれ以上の位置において、上記のような置換基、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族または複素芳香族成分、−CF3、−CN等によって置換されていてよい。
【0077】
「ポリシクリル」および「多環式基」という用語は、当分野で認識されており、2個またはそれ以上の環(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/またはヘテロシクリル)を有する構造を意味し、例えば、2個またはそれ以上の炭素が2個の隣接する環に共有されている場合、その環は「縮合環」である。非隣接原子を介して結合し、例えば、3個またはそれ以上の原子が両方の環に共有されている環は、「架橋」環と称される。多環の各環は、上記のような置換基、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族または複素芳香族成分、−CF3、−CN等によって置換されていてよい。
【0078】
「炭素環」という用語は、当分野で認識されており、環の各原子が炭素である芳香環または非芳香環を包含する。当分野で認識されている以下の用語は、以下の意味を有する:「ニトロ」は−NO2を意味し;「ハロゲン」は−F、−Cl、−Brまたは−Iを意味し;「スルフヒドリル」は−SHを意味し;「ヒドロキシル」は−OHを意味し;「スルホニル」は−SO2−を意味する。
【0079】
「アミン」および「アミノ」という用語は、当分野で認識されており、非置換および置換アミンの両方、例えば、以下の一般式で示し得る成分を包含する:
【0080】
【化5】
【0081】
ここで、R50、R51およびR52は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、−(CH2)m−R61を表し、またはR50およびR51は、それらが結合しているN原子と一緒になって、環構造中に4〜8個の原子を有する複素環を形成し;R61は、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環または多環を表し;mは、0、または1〜8の整数である。
特定の実施形態において、R50またはR51の1つだけがカルボニルであってよく、例えば、R50、R51および窒素が一緒になってイミドを形成しない。他の実施形態において、R50およびR51(および任意にR52)は、それぞれ独立に、水素、アルキル、アルケニル、または−(CH2)m−R61を表す。従って、「アルキルアミン」という用語は、置換または非置換アルキルが結合した上記に定義したアミン基を意味し、即ち、R50およびR51の少なくとも1つがアルキル基である。
【0082】
「アシルアミノ」という用語は、当分野で認識されており、以下の一般式で示し得る成分を包含する:
【0083】
【化6】
【0084】
ここで、R50は上記のように定義され;R54は、水素、アルキル、アルケニルまたは−(CH2)m−R61を表し;mおよびR61は上記のように定義される。
【0085】
「アミド」という用語は、アミノ置換カルボニルとして当分野で認識されており、以下の式で示し得る成分を包含する:
【0086】
【化7】
【0087】
ここで、R50およびR51は上記のように定義される。
本発明におけるアミドの特定の実施形態は、不安定と考えられるイミドを包含しない。
【0088】
「アルキルチオ」という用語は、当分野で認識されており、硫黄基が結合した上記のように定義されるアルキル基を包含する。特定の実施形態において、「アルキルチオ」成分は、−S−アルキル、−S−アルケニル、−S−アルキニルおよび−S−(CH2)m−R61の1つによって示され、mおよびR61は上記のように定義される。代表的なアルキルチオ基は、メチルチオ、エチルチオ等を包含する。
【0089】
「カルボニル」という用語は、当分野で認識されており、以下の一般式で示し得る成分を包含する:
【0090】
【化8】
【0091】
ここで、X50は、結合であるか、または酸素または硫黄を表し;R55は、水素、アルキル、アルケニル、−(CH2)m−R61または薬学的に受容可能な塩を表し;R56は、水素、アルキル、アルケニルまたは−(CH2)m−R61を表し;mおよびR61は上記のように定義される。X50が酸素であり、R55またはR56が水素でないとき、その式は「エステル」を表す。X50が酸素であり、R55が上記のように定義されるとき、その成分は本明細書においてカルボキシル基と称され、特に、R55が水素であるとき、その式は「カルボン酸」を表す。X50が酸素であり、R56が水素であるとき、その式は「ホルメート」を表す。一般に、上記の式の酸素原子が硫黄で置き換えられているとき、その式は「チオカルボニル」基を表す。X50が硫黄であり、R55またはR56が水素でないとき、その式は「チオエステル」を表す。X50が硫黄であり、R55が水素であるとき、その式は「チオカルボン酸」を表す。X50が硫黄であり、R56が水素であるとき、その式は「チオホルメート」を表す。一方、X50が結合であり、R55が水素でないとき、上記の式は「ケトン」基を表す。Xが結合であり、R55が水素であるとき、上記の式は「アルデヒド」基を表す。
【0092】
「アルコキシル」または「アルコキシ」という用語は、当分野で認識されており、酸素基が結合している上記のように定義されるアルキル基を包含する。代表的なアルコキシル基は、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、tert−ブトキシ等を包含する。「エーテル」は、酸素によって共有結合している2個の炭化水素である。従って、そのアルキルをエーテルにするアルキルの置換基は、アルコキシルであるかまたはそれに類似し、例えば、−O−アルキル、−O−アルケニル、−O−アルキニル、−O−(CH2)m−R61(mおよびR61は上記のように定義される)の1つによって示し得る。
【0093】
「スルホネート」という用語は、当分野で認識されており、以下の一般式によって示し得る成分を包含する:
【0094】
【化9】
【0095】
ここで、R57は、電子対、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールである。
【0096】
「スルフェート」という用語は、当分野で認識されており、以下の一般式で示し得る成分を包含する:
【0097】
【化10】
【0098】
ここで、R57は上記のように定義される。
【0099】
「スルホンアミド」という用語は、当分野で認識されており、以下の一般式で示し得る成分を包含する:
【0100】
【化11】
【0101】
ここで、R50およびR56は上記のように定義される。
【0102】
「スルファモイル」という用語は、当分野で認識されており、以下の一般式で示し得る成分を包含する:
【0103】
【化12】
【0104】
ここで、R50およびR51は上記のように定義される。
【0105】
「スルホニル」という用語は、当分野で認識されており、以下の一般式で示し得る成分を包含する:
【0106】
【化13】
【0107】
ここで、R58は以下のうちの1つである:水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリール。
【0108】
「スルホキシド」という用語は、当分野で認識されており、以下の一般式で示し得る成分を包含する:
【0109】
【化14】
【0110】
ここで、R58は上記のように定義される。
【0111】
「ホスホロアミダイト」という用語は、当該分野で認識されており、以下の一般式で示される成分を包含する:
【0112】
【化15】
【0113】
ここで、Q51、R50、R51およびR59は上記のように定義される。
【0114】
「ホスホンアミダイト」という用語は、当分野で認識されており、以下の一般式で示される成分を包含する:
【0115】
【化16】
【0116】
ここで、Q51、R50、R51およびR59は上記のように定義され、R60は低級アルキルまたはアリールを表す。
【0117】
類似の置換を、アルケニル基およびアルキニル基に行なって、例えば、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アミドアルケニル、アミドアルキニル、イミノアルケニル、イミノアルキニル、チオアルケニル、チオアルキニル、カルボニル置換アルケニルまたはアルキニルを生成し得る。
【0118】
各語句の定義、例えば、アルキル、m、nなどが、ある構造中に2度以上存在する場合、明確にまたは文脈によって特に指定されなければ、同じ構造中の他の位置におけるその定義から独立しているものとする。
【0119】
「セレノアルキル」という用語は、当分野で認識されており、置換セレノ基が結合しているアルキル基を包含する。アルキル上で置換されていてよい例示的「セレノエーテル」は、−Se−アルキル−、−Se−アルケニル、−Se−アルキニル、および−Se−(CH2)m−R61から選択され、mおよびR61は上記のように定義される。
【0120】
トリフリル、トシル、メシルおよびノナフリルという用語は、当分野で認識されており、トリフルオロメタンスルホニル、p−トルエンスルホニル、メタンスルホニル、およびノナフルオロブタンスルホニルをそれぞれ意味する。トリフレート、トシレート、メシレートおよびノナフレートという用語は、当分野で認識されており、トリフルオロメタンスルホン酸エステル、p−トルエンスルホン酸エステル、メタンスルホン酸エステル、およびノナフルオロブタンスルホン酸エステル官能基、およびこの基を含有する分子をそれぞれ意味する。
【0121】
略語Me、Et、Ph、Tf、Nf、TsおよびMsは、当分野で認識されており、メチル、エチル、フェニル、トリフルオロメタンスルホニル、ノナフルオロブタンスルホニル、p−トルエンスルホニルおよびメタンスルホニルをそれぞれ表す。一般的な有機化学者によって使用されるより包括的な略語リストが、Journal of Organic Chemistryの各巻の第1版に見られる;このリストは、Standard List of Abbreviationsと題する表に一般に示されている。
【0122】
本発明の特定のモノマーサブユニットは、特定の幾何学的形態または立体異性体形態で存在し得る。さらに、本発明のポリマーおよび他の組成物は、光学的に活性であってもよい。本発明は、シス−およびトランス−異性体、R−およびS−エナンチオマー、ジアステレオマー、(d)−異性体、(l)−異性体、それらのラセミ混合物、およびそれらの他の混合物を包含する全てのそのような化合物を、本発明の範囲に含まれるものとして包含する。付加的不斉炭素原子が、アルキル基のような置換基に存在し得る。全てのそのような異性体ならびにそれらの混合物は、本発明に含まれるものとする。
【0123】
例えば、本発明化合物の特定エナンチオマーが所望される場合、それは、不斉合成によるかまたはキラル助剤を使用する誘導によって生成でき、得られたジアステレオマー混合物を分離し、補助基を開裂して、純粋な所望エナンチオマーを得る。または、分子が、アミノのような塩基性官能基、またはカルボキシルのような酸性官能基を含有する場合、適切な光学活性酸または塩基を使用してジアステレオマー塩を生成し、次に、そのようにして生成されたジアステレオマーを、分別結晶または当分野でよく知られているクロマトグラフィー手段によって分解し、次に、純粋エナンチオマーを回収する。
【0124】
「置換」または「〜で置換されている」という語句は、そのような置換が、置換される原子と置換基との許容原子価によって行なわれ、置換が安定な化合物を生じ、例えば、再配列、結晶化、除去または他の反応によるような変換を自発的に受けないという暗黙の条件を含むものと理解される。
【0125】
「置換されている」という語句は、全ての許容される置換基または有機化合物を包含するものとも理解される。広い解釈において、許容される置換基は、有機化合物の、非環式および環式、分岐または非分岐、炭素環および複素環、芳香族および非芳香族置換基を包含する。例示的置換基は、例えば、上記の置換基を包含する。許容される置換基は、適切な有機化合物に関して、1個またはそれ以上であってよく、同じかまたは異なっていてよい。本発明の目的のために、窒素のようなヘテロ原子は、水素置換基、および/またはヘテロ原子の原子価を満足させる本明細書に記載した有機化合物のあらゆる許容される置換基を有し得る。本発明は、有機化合物の許容される置換基によって決して限定されるものではない。
【0126】
本発明の目的のために、化学元素は、Periodic Table of the Elements,CAS version,Handbook of Chemistry and Physics、第67版、1986−87、インサイドカバー(inside cover)によって同定される。「炭化水素」という用語は、当分野で認識されており、少なくとも1個の水素および炭素原子を有するあらゆる許容される化合物を包含する。例えば、許容される炭化水素は、置換または非置換、非環式および環式、分岐および非分岐、炭素環および複素環、芳香族および非芳香族有機化合物を包含する。
【0127】
「保護基」という語句は、当分野で認識されており、潜在的に反応性の官能基を、望まない化学変換から保護する一時的置換基を意味する。そのような保護基の例は、カルボン酸のエステル、アルコールのシリルエーテル、アルデヒドのアセタール、およびケトンのケタールを包含する。保護基化学分野が概説されている(Greenら、Protective Groups in Organic Synthesis,第2版,Wiley,New York,(1991))。
【0128】
「ヒドロキシル保護基」という語句は、当分野で認識されており、合成手順の間に、望ましくない反応からヒドロキシル基を保護することを目的とした基を意味し、例えば、ベンジルまたは当分野で公知の他の好適なエステルまたはエーテル基を包含する。
【0129】
「電子吸引基」という用語は、当分野で認識されており、隣接原子から原子価電子を引きつける置換基の傾向、即ち、置換基が隣接原子に対して電気陰性であることを意味する。電気吸引能力レベルの定量化は、ハメットシグマ(σ)定数によって得られる。この周知の定数は、多くの文献、例えば、March,Advanced Organic Chemistry 251−59,McGraw Hill Book Company,New York,(1977)に記載されている。ハメット定数値は、一般に、電子供与基についてはマイナスであり(NH2について、σ(P)=−0.66)、電子吸引基についてはプラスである(窒素基について、σ(P)=0.78)(σ(P)はパラ置換を示す)。例示的電子吸引基は、ニトロ、アシル、ホルミル、スルホニル、トリフルオロメチル、シアノ、クロリド等を包含する。例示的電子供与基は、アミノ、メトキシ等を包含する。
【0130】
いくつかの実施形態において、本発明は、少なくとも1つの重合可能な部分によって官能化されたコンドロイチン硫酸のような糖の、少なくとも1つのモノマー単位を含んで成る組成物に関する。コンドロイチン硫酸は、軟骨の天然成分であり、その再生に有用な骨格材料である。コンドロイチン硫酸は、10〜60kDaグリコサミノグリカンの種類に含まれる。コンドロイチン硫酸の反復単位またはモノマー単位は、二糖、β(1−4)架橋D−グルクロニルβ(1−3)N−アセチル−D−ガラクトサミン硫酸から成る。
【0131】
重合可能な部分は、重合開始剤に曝露された際に重合し得るあらゆる成分を包含する。重合可能な部分は、アルケニル成分、例えば、アクリレート、メタクリレート、ジメタクリレート、オリゴアクリレート、オリゴメトアクリレート、エタクリレート、イタコネート、アクリルアミドを包含し得る。他の重合可能な部分はアルデヒドを包含する。他の重合可能な部分は、エチレン的不飽和モノマーを包含し、その例は以下のものである:アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、ラウリルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルアクリレート、ベンジルメタクリレート;この酸のヒドロキシアルキルエステル、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、および2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、この酸のニトリルおよびアミド、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびメタクリルアミド、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニリデンクロリド、ビニルクロリド、およびビニル芳香族化合物、例えば、スチレン、t−ブチルスチレンおよびビニルトルエン、ジアルキルマレエート、ジアルキルイタコネート、ジアルキルメチレン−マロネート、イソプレンおよびブタジエン。カルボン酸基を含有する好適なエチレン的不飽和モノマーは、アクリル酸モノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、モノアルキルイタコネート(モノメチルイタコネート、モノエチルイタコネートおよびモノブチルイタコネートを包含する)、モノアルキルマレエート(モノメチルマレエート、モノエチルマレエートおよびモノブチルマレエートを包含する)、シトラコン酸およびスチレンカルボン酸を包含する。好適なポリエチレン的不飽和モノマーは、ブタジエン、イソプレン、アリルメタクリレート、アルキルジオールのジアクリレート、例えば、ブタンジオールジアクリレートおよびヘキサンジオールジアクリレート、ジビニルベンゼン等を包含する。
【0132】
いくつかの実施形態において、コンドロイチン硫酸のモノマー単位は、コンドロイチン硫酸のモノマー上に位置する1個またはそれ以上のチオ、カルボン酸またはアルコール成分によって官能化し得る。
【0133】
官能化モノマーコンドロイチン硫酸は、式I、IIまたはIIIによって示し得る:
【0134】
【化17】
【0135】
ここで、Rはアルケニルであり、R1はアルデヒドまたはアルコールから独立に選択され、少なくとも1個のR1はアルデヒドである。
【0136】
いくつかの実施形態において、Rは、
【0137】
【化18】
【0138】
である。
【0139】
例えば、コンドロイチン硫酸の官能化モノマーは、以下の式によって示し得る:
【0140】
【化19】
【0141】
コンドロイチン硫酸(CS)は、軟骨の天然成分であり、従って、軟骨再生の有用な骨格材料になり得る。CSのモノマー単位は、以下の式で示し得る:
【0142】
【化20】
【0143】
本発明の代表的な実施形態において、官能化糖成分の生成方法を提供し、この方法は、少なくとも1つの糖成分およびアルキレン成分を含んで成る溶液を準備し、この溶液を、例えば、少なくとも10日間、少なくとも11日間、または少なくとも15日間攪拌することを含んで成る。または、溶液を、約10〜約15日間、または約14〜約15日間攪拌するかまたは維持してもよい。溶液は、極性溶媒、例えば水性溶媒を含有してもよい。
【0144】
例示的反応式を図1に示す。GMA−CSのNMRスペクトルを、図2および3に示す。関連NMRピークの割当てを、図1において、対応する水素/炭素−標識によって示す。2つの1H−NMRピーク(「h1」および「h2」を付す)は、δビニル−H6.03ppmおよび5.61ppmのそれぞれにおける2つのビニル陽子を示す。これらのピークを使用して、コンドロイチン硫酸(CS)上のメタクリレートの存在を確定する。メタクリル化から1日後に、H−NMRにおける「h1」および「h2」の導入は、CSの初期メタクリル化を示した。メタクリル化は、δc=136ppmおよび128ppmに存在するビニル−炭素ピーク(「C=」で標識)を使用する13C−NMR(図3)によっても確認される。
【0145】
グリセリルスペーサーについての分光測定証拠の欠如、およびグリシドール脱離基のかなりの安定性は、エステル交換反応が反応の第一日において電気陰性グリシドールの可逆開裂によって支配したことを確認するものと言える。第3日〜第15日において、5.51ppm(標識「h3」)および5.20ppm(「h4」)におけるグリセリルメチン陽子が、時間と共に増加する強度でH−NMRにおいて現れはじめる。第15日におけるC−NMRスペクトルにおいて、ビニル−炭素ピークが4つに分れ;元の2つのピーク(ピーク「C=」)が強化され、新しく生じた2つのピーク(「C」を付す)はそれぞれ121ppmおよび143ppmに存在する。これらの付加的ピークは、グリセリルスペーサーの存在も示す。さらに、13C−NMRによる開環の付加的証拠は、グリセリルスペーサー上の骨格炭素を示す63ppmにおけるピーク(「C#」を付す)の出現である。グリセリル成分は、GMAのグリシジル残基上の開環反応から生じる。2つの開環生成物は、反応式1において化合物(2)および(3)として示されている。
【0146】
定量分析は、1H−NMRデータに基づき得る。ビニル陽子ピーク「h1」および「h2」の積分(integral)、[h1]+[h2]は、エステル交換生成物(1)および開環生成物(2)、(3)の両方によって与えられる。開環生成物(2)および(3)は、それらの特徴的グリセリルメチンピークを、それぞれ「h3」および「h4」に有する。「h1〜4」は全て単結合を表すので、総置換効率は、([h1]+[h2])/2として算出でき、開環の寄与は、図12に示すように([h3]+[h4])である。エステル交換は、反応速度的に迅速、かつ熱力学的に可逆性の処置である。1日程度で反応平衡に達し、約50%総置換効率のエステル交換生成物の収率である。開環処置は反応速度的に遅く、従って、たった1日後では十分に検出できない。しかし、開環処置は、熱力学的に不可逆性のメカニズムに基づく。反応は実質的に直線的に進み、他の処置から独立している。第5日に、2つの反応メカニズムによる総メタクリル化への寄与は、ほぼ等しくなる。第15日までに、開環メカニズムは80%より高い置換効率に寄与し、エステル交換生成物は約20未満に減少し得る。
【0147】
官能化コンドロイチン硫酸を生成する別の反応式が、図13に示されている。例示的な、コンドロイチン硫酸の官能化モノマー単位は、以下の式によって示し得る:
【0148】
【化21】
【0149】
次にラジカル重合を受けられるようにポリマーを改質するために、多くの化学選択肢を使用できる。例えば、メタクリル酸無水物、塩化メタクリロイルおよびメタクリル酸グリシジルを使用して、メタクリレート基を、ポリマー鎖の1つまたはそれ以上のモノマーに付加し得る。メタクリル酸グリシジルは、例えば、反応の効率のために使用し得る。さらに、細胞毒性副生物の欠乏(lack)を最適化するように改質剤を選択し得る。
【0150】
いくつかの実施形態において、ポリマー単位当たりの重合成分の数は、少なくとも1成分/約10モノマー単位、少なくとも約2成分/約10モノマー単位であってよい。または、ポリマー単位当たりの重合成分の数は、少なくとも1成分/約12モノマー単位または約14モノマー単位であってよい。例えば、少なくとも約1個のメタクリレート基/10個のコンドロイチン硫酸二糖単位であってよい。実施形態において、コンドロイチン硫酸を、約12%のメタクリレート基で官能化してもよい。
【0151】
本開示は、架橋ポリマーマトリックスを含んで成る組成物も提供し、この組成物において、この架橋ポリマーマトリックスは、官能化コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成る。いくつかの実施形態において、この架橋ポリマーマトリックスは、生体適合性ポリマーの少なくとも1個のモノマー単位をさらに含んで成る。他の実施形態において、架橋ポリマーマトリックスは、1個またはそれ以上のアミン基を含有する化合物、例えばタンパク質をさらに含んで成る。
【0152】
好適なポリマーは、以下の反復単位を有する生体適合性モノマーを包含する:ポリ(ホスホエステル)、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(酸無水物)、ポリ(アミド)、ポリ(ウレタン)、ポリ(エステルアミド)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ジオキサン)、ポリ(アセタール)、ポリ(ケタール)、ポリ(カーボネート)、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(アルキレンオキサレート)、ポリ(アルキレンスクシネート)、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ヒドロキシセルロース)、キチン、キトサン、ならびに上記物質のコポリマー、ターポリマーまたは組合せまたは混合物。
【0153】
他の好適な合成ポリマーは、アミン基を含有するポリマー、例えば化学合成ポリペプチドを包含する。そのようなポリペプチドは、第一級アミノ基を含有するアミノ酸(例えばリシン)、および/またはチオール基を含有するアミノ酸(例えばシステイン)を組み込むように合成された多求核性ポリペプチドを包含し得る。他の好適な合成ポリマーはポリ(アミノ)酸を包含する。
【0154】
アミン基を含有する他の好適な化合物は、アルブミンのようなタンパク質を包含する。アルブミンは哺乳動物由来であってよいが、他のアルブミン源も使用し得る。大部分のアルブミンは、本発明の方法によって用意に架橋されると考えられる。ウシ血清アルブミン(BSA)も使用し得る。または、アルブミンは、当分野で公知の方法を使用して組換えアルブミン遺伝子を発現する細胞から単離した組換えアルブミンであってもよい。部分タンパク質分解または組換え手段によって生成される、アルブミン配列の少なくとも100残基を含んで成るアルブミンの主フラグメントも、天然アルブミンの代わりに使用し得る。または、有用なフラグメントは、アルブミン配列の少なくとも50残基、より好ましくは少なくとも75残基を含有し得る。最後に、種々の形態のアルブミンの混合物(例えば、ヒト、ウシ、組換え、または断片化)、およびアルブミンに富む血漿分画も使用し得る。アルブミンは、当分野でよく知られている方法を使用して、組織または細胞から直接的に精製し得る。
本発明のポリマーマトリックスは、本発明の所望の特性を阻害しない限り、付加的生体適合性モノマー単位も含んで成ることができる。そのような付加的モノマー単位は、標的薬剤送達または組織工学に所望される正確なプロフィールの設計におけるより高い柔軟性、または他の適用に所望される正確な速度(precise rate)の生分解性または生体適合性を与え得る。
【0155】
いくつかの実施形態において、架橋ポリマーマトリックスは、少なくとも約75wt%、少なくとも約50wt%、少なくとも約25wt%、または少なくとも約10wt%のこの生体適合性ポリマーまたはアミン基含有化合物と共に、官能化コンドロイチン硫酸を含んで成ってよい。または、架橋ポリマーマトリックスは、25wt%未満のこの生体適合性ポリマーまたはアミン基含有化合物を含んで成ってよい。
【0156】
別の実施形態において、架橋ポリマーマトリックスを含んで成る組成物の生成方法を提供する。架橋ポリマーマトリックスを含んで成る組成物の生成方法は、官能化コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成るポリマーを提供する工程、このポリマーを少なくとも1つの重合開始剤に曝露し、それによってこの架橋マトリックスを生成する工程を包含する。
【0157】
あるいは、架橋ポリマーは、アルデヒド官能化コンドロイチンの少なくとも1個のモノマー単位を含んで成るポリマーを準備し、そして、タンパク質、例えばポリ(アミノ)酸またはアルブミンを準備し、それによってアルデヒド官能化コンドロイチンを、例えばアルブミンと架橋させることによって、生成し得る。そのような架橋の反応メカニズムは、当分野で公知のシッフ塩基反応であり得る。
【0158】
本発明の重合反応は、従来法、例えば、塊状重合、溶液(または均質)重合、懸濁重合、乳化重合、放射線重合(γ線、電子ビーム等を使用)等によって行なうことができる。
【0159】
重合開始剤は、電気機械放射線を包含する。重合の開始は、約200〜約700nm、または約320nmまたはそれより大、または約514nm〜約365nmの波長を有する光の照射によって行なってよい。いくつかの実施形態において、光度は約10m W/cm3である。
【0160】
他の開始剤の例は、有機溶媒溶解性開始剤、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ジ−tertブチルペルオキシド等、水溶性開始剤、例えば、過硫酸アンモニウム(APS)、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等、そのような開始剤とテトラメチルエチレン、Fe2+塩、亜硫酸水素ナトリウム等の還元剤との組合せである酸化還元型開始剤等である。
【0161】
有用な光開始剤は、遊離基生成によって、最小限の細胞毒性を有するモノマーのラジカル重合を開始させるのに使用できる光開始剤である。いくつかの実施形態において、開始剤は、短時間、例えば数分または数秒で作用し得る。紫外線または可視光線開始用の例示的色素は、エチレンエオシン2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−メトキシ−2−フェニルアセトフェノン、他のアセトフェノン誘導体、およびカンファーキノンを包含する。全ての場合に、架橋および重合は、光活性化ラジカル重合開始剤、例えば、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、またはエチルエオシン(10−4〜10−2M)とトリエタノールアミン(0.001〜0.1M)の組合せによって、マクロマー間で開始される。
【0162】
重合を開始させるために使用し得る他の光酸化性および光還元性色素は、アクリジン色素、例えば、アクリブラリン;チアジン色素、例えばチオニン;キサンチン色素、例えばローズベンガル;およびフェナジン色素、例えばメチレンブルーを包含する。これらは、以下のような助触媒と共に使用し得る:アミン、例えばトリエタノールアミン;硫黄化合物、例えばRSO2R1;複素環式化合物、例えばイミダゾール;エノレート;有機金属化合物;および他の化合物、例えばN−フェニルグリシン。他の開始剤は、カンファーキノンおよびアセトフェノン誘導体を包含する。
【0163】
熱重合開始剤系も使用し得る。37℃で不安定であり、生理温度でラジカル重合を開始し得るそのような系は、例えば、過硫酸カリウム(テトラメチルエチレンジアミンを共に使用または不使用);過酸化ベンゾイル(トリエタノールアミンを共に使用または不使用);および過硫酸アンモニウム(亜硫酸水素ナトリウムを共に使用)である。
【0164】
本発明の架橋ポリマーマトリックスは、ヒドロゲルを包含し得る。ヒドロゲルの含水量は、孔構造に関する情報を与え得る。さらに、含水量は、例えば、ヒドロゲルに封入された細胞の生存に影響を与える要因になり得る。ヒドロゲルが吸収し得る水の量は、架橋密度および/または孔サイズに関係し得る。例えば、官能化コンドロイチン硫酸マクロマー上のメタクリレート基のパーセントは、吸収可能な水の量を規定し得る。
【0165】
例えば、ポリ(エチレンオキシド)−ジアクリレート(PEODA)を、軟骨組織工学用のポリマー系に使用でき、架橋ポリマーマトリックスは、CS−MA(コンドロイチン硫酸−メタクリレート)およびPEODAの混合ゲルを包含し得る。CS−MAヒドロゲルは、PEODAヒドロゲルより多くの水を吸収し、従って、図4に示すように、混合ゲルにおけるCS−MAのパーセントの増加は、含水量を増加させる。
【0166】
ヒドロゲル骨格のような架橋ポリマーマトリックスの機械的特性も、ヒドロゲル孔構造に関係し得る。組織工学における用途について、所望の臨床適用に依存して、種々の機械的特性を有する骨格が望ましい。例えば、関節における軟骨組織工学用の骨格は、形成外科用途のために皮下に埋め込まれる軟骨組織工学系より高い機械的応力に耐えなければならない。従って、容易に操作される機械的応力を有するヒドロゲルが要求される。
【0167】
本明細書に開示する動的度数−掃引試験(dynamic frequency−sweep experiments)は、種々のPEODA/CS−MA比率を有するヒドロゲルが弾性優位であり、剪断度数(shear frequency)に非感受性であることを示した(図5a)。動的剪断弾性率|G*|の標準値(norm)は剪断度数と共に増加するが、そのような増加は|G*|の平均値と比較して優位でない。位相角δは、全ての度数および全ての重量比について、約1°〜約6°の狭い範囲で変化する。これは、PEODAおよびCS−MAの流動学的特性が類似しており、共重合はこれらの特性を優位に変化させないことを示す。PEODAのより高い比率(100%および75%)を有する混合ゲルは、より高い機械的強度(|G*|によって示される)を有し、50%、25%および0%PEODAを有する混合ゲルは、PEODA濃度に伴う|G*|の減少を示した(図5b)。100%および75%サンプルは、CS−MAゲルの3〜4倍の|G*|値を有していた。これは、PEODAゲルがCS−MAゲルより高度に架橋していることを示した膨潤試験と一致している。
【0168】
ゲルの形態学的分析は、膨潤および機械的分析によって示されたCS−MAおよびPEODAヒドロゲルの孔構造を確認した。膨潤および機械的データによって示されるように、CS−MAゲルは、表面および内部の両方において、PEODAゲルより大きい孔構造を示した(図6)。図6、7および8に示されているSEM形態学的調査は、ゲルの表面および内部の両方において、均質な孔構造を示している。膨潤および機械的データの再現性(低い標準偏差)も、コンドロイチン硫酸が、均質かつ一貫性をもって、置換されヒドロゲルを形成することを示している。
【0169】
損傷した軟骨組織のコンドロイチナーゼABC処置は、修復細胞による欠損のコーティング、および欠損縁における機能統合を促進し得る。例えば、コンドロイチナーゼABCを添加していない緩衝剤中で培養されたCS−MAゲルは、1日以内で完全に分解した酵素を使用して培養したCS−MAゲルと比較して分解する(図9a)。分解と酵素濃度との間に用量反応関係も存在する。図9bは、酵素を使用しない最少分解での、コンドロイチナーゼの増加濃度に伴う、吸収によって測定した分解二糖の増加を示す。
【0170】
生体高分子骨格系の細胞毒性は、軟骨細胞(軟骨を構成する細胞)を使用して、例えば生存−死亡蛍光細胞アッセイおよびMTT、活性代謝細胞を黄色から紫色に変える化合物を使用することによって評価し得る。図11aは、活性代謝MTT(図11b)でもある大多数の生存細胞の写真を示す図である。
【0171】
(生物学的に活性な物質および主題の組成物)
本発明の1つの局面において、架橋ポリマーマトリックスまたはゲル、および1つまたはそれ以上の生物学的に活性な物質を含んで成る組成物を生成し得る。生物学的に活性な物質は、組成物の意図する目的によって広範囲に変化し得る。「生物学的に活性な物質」という用語は、当分野で認識されており、生物学的、生理学的または薬理学的に活性な物質であり、患者において局所的または全身的に作用するあらゆる化学成分を意味する。「薬剤」とも呼び得る生物学的に活性な物質の例は、周知の文献、例えば、Merck Index、Physicians Desk Reference、およびThe Pharmacological Basis of Therapeuticsに記載されており、それらは以下の物質を包含するがそれらに限定されない:薬剤;ビタミン;ミネラルサプリメント;疾患または病気の治療、予防、診断、治癒または緩和に使用される物質;身体の構造または機能に作用する物質;または、生理的環境に置かれた後に生物学的に活性なるかまたはより活性になるプロドラッグ。患者に投与した際に、本発明の組成物から、例えば隣接組織または流体に、放出させることができる種々の形態の生物学的に活性な物質を使用し得る。いくつかの実施形態において、生物学的に活性な物質を本発明の架橋ポリマーマトリックスにおいて使用して、例えば、創傷治癒または軟骨形成を促進し得る。他の実施形態において、生物学的に活性な物質を本発明の架橋ポリマーマトリックスに使用して、例えば創傷治癒または軟骨形成を促進すると共に、疾患または症状を治療、改善、抑制または予防し得る。
【0172】
生物学的に活性な物質のさらなる例は、酵素、受容体拮抗薬または作用薬、ホルモン、成長因子、自己骨髄、抗生物質、抗微生物剤または抗体を包含するがそれらに限定されない。「生物学的に活性な物質」という用語は、本発明の組成物に組み込むことができる種々の細胞型および遺伝子も包含するものとする。
【0173】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、全組成物の重量に基づいて約1%〜約75%の生物学的に活性な物質、または約2.5%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%または70%の生物学的に活性な物質を含んで成る。
【0174】
生物学的に活性な物質の非制限的な例は、以下の物質を包含する:アドレナリン遮断薬、アナボリック薬、男性ホルモンステロイド、制酸薬、喘息治療薬、抗アレルギー物質、抗コレステロール血症および抗脂質薬、抗コリン作用薬および交換神経作用薬、抗血液凝固薬、抗痙攣薬、下痢止め薬、抗嘔吐薬、抗高血圧薬、抗感染薬、抗炎症薬、例えば、ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、抗マラリア薬、抗躁病薬、制吐薬、抗腫瘍薬、抗肥満薬、抗パーキンソン症候群薬、解熱および鎮痛薬、鎮痙薬、抗血栓薬、抗尿酸血症薬、抗狭心症薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、食欲抑制薬、ベンゾフェナントリジンアルカロイド、生物製剤、心臓作用薬、脳拡張薬、冠状動脈拡張剤、鬱血除去薬、利尿薬、診断薬、赤血球生成薬、エストロゲン、去痰薬、胃腸鎮静薬、体液薬、高血糖症薬、催眠薬、低血糖症薬、イオン交換樹脂、緩下薬、ミネラルサプリメント、縮瞳薬、粘液溶解薬、神経筋薬、栄養物質、抹消血管拡張薬、プロゲステロン薬、プロスタグランジン、抗うつ薬、向精神薬、鎮静薬、興奮薬、甲状腺および抗甲状腺薬、精神安定薬、子宮弛緩薬、ビタミン、抗原性物質、およびプロドラッグ。
【0175】
上記分類の有用な生物学的に活性な物質の特定の例は、以下の物質を包含する:(a)抗腫瘍薬、例えば、アンドロゲン阻害薬、代謝拮抗薬、細胞毒性薬および免疫調節薬;(b)鎮咳薬、例えば、デキストロメトルファン、臭化水素酸デキストロメトルファン、ノスカピン、クエン酸カルベタペンタン、および塩酸クロフェジアノール;(c)抗ヒスタミン薬、例えば、マレイン酸クロルフェニラミン、酒石酸フェニンダミン、マレイン酸ピリラミン、琥珀酸ドキシラミン、およびクエン酸フェニルトロキサミン;(d)鬱血除去剤、例えば、塩酸フェニレフリン、塩酸フェニルプロパノールアミン、塩酸プソイドエフェドリン、およびエフェドリン;(e)種々のアルカロイド、例えば、燐酸コデイン、硫酸コデイン、およびモルフィン;(f)ミネラルサプリメント、例えば、塩化カリウム、塩化亜鉛、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、および他のアルカリ金属およびアルカリ土類金属塩;(g)イオン交換樹脂、例えば、コレスチラミン;(h)抗不整脈薬、例えば、N−アセチルプロカインアミド;(i)解熱および鎮痛薬、例えば、アセトアミノフェン、アスピリンおよびイブプロフェン;(j)食欲抑制薬、例えば、塩酸フェニルプロパノールアミンまたはカフェイン;(k)去痰薬、例えばグアイフェネシン;(l)制酸薬、例えば、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウム;(m)生物製剤、例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質およびアミノ酸、ホルモン、インターフェロンまたはサイトカインおよび他の生物活性ペプチド化合物、例えば、hGH、tPA、カルシトニン、ANF、EPOおよびインスリン;(n)抗感染薬、例えば、抗真菌薬、抗ウイルス薬、防腐薬および抗生物質;および(m)脱感作薬および抗原性物質、例えばワクチン適用に有用な物質。
【0176】
より具体的には、有用な生物学的に活性な物質の非制限的な例は、以下の治療薬分類を包含する:鎮痛薬、例えば、非ステロイド性抗炎症薬、アヘン作用薬およびサリチレート;抗ヒスタミン薬、例えば、H1遮断薬およびH2遮断薬;抗感染薬、例えば、駆虫薬、抗嫌気性生物薬、抗生物質、アミノグリコシド抗生物質、抗真菌性抗生物質、セファロスポリン抗生物質、マクロライド系抗生物質、雑(miscellaneous)βラクタム抗生物質、ペニシリン抗生物質、キノロン抗生物質、スルホンアミド抗生物質、テトラサイクリン抗生物質、抗マイコバクテリア薬、抗結核性抗マイコバクテリア薬、抗原生動物薬、抗マラリア性抗原生動物薬、抗ウイルス薬、抗レトロウイルス薬、殺疥癬虫薬、および抗泌尿器感染薬;抗腫瘍薬、例えば、アルキル化剤、ナイトロジェンマスタードアルキル化剤、ニトロソ尿素アルキル化剤、代謝拮抗薬、プリン類似体代謝拮抗薬、ピリミジン類似体代謝拮抗薬、ホルモン性抗腫瘍薬、自然抗腫瘍薬、抗生物質性自然抗腫瘍薬、およびビンカアルカロイド自然抗腫瘍薬;自律神経薬、例えば、抗コリン作用薬、抗ムスカリン性抗コリン作用薬、麦角アルカロイド類、副交感神経作用薬、コリン作用薬性副交感神経作用薬、コリンエステラーゼ阻害薬性副交感神経作用薬、交感神経遮断薬、α遮断薬性交感神経遮断薬、β遮断薬性交感神経遮断薬、交感神経作用薬、およびアドレナリン作用薬性交感神経作用薬;心臓血管薬、例えば、抗狭心症薬、β遮断薬性抗狭心症薬、カルシウムチャンネル遮断薬性抗狭心症薬、ニトレート(nitrate)抗狭心症薬、抗不整脈薬、強心配糖体抗不整脈薬、クラスI抗不整脈薬、クラスII抗不整脈薬、クラスIII抗不整脈薬、クラスIV抗不整脈薬、抗高血圧薬、α遮断薬性抗高血圧薬、アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)性抗高血圧薬、β遮断薬性抗高血圧薬、カルシウムチャンネル遮断薬性抗高血圧薬、中枢作用性アドレナリン作用性抗高血圧薬、利尿性抗高血圧薬、抹消血管拡張薬性抗高血圧薬、抗脂肪血症薬、胆汁酸金属イオン封鎖剤性抗脂肪血症薬、HMG−CoA還元酵素阻害薬性抗脂肪血症薬、強心薬、強心配糖体性強心薬、および血栓崩壊薬;皮膚科薬、例えば、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、コルチコステロイド性抗炎症薬、かゆみ止め薬/局所麻酔薬、局所抗感染薬、抗真菌性局所抗感染薬、抗ウイルス性局所抗感染薬、および局所抗腫瘍薬;電解および腎臓薬、例えば、酸性化剤、アルカリ化剤、利尿薬、カルボニックアンヒドラーゼ阻害薬性利尿薬、ループ利尿薬、浸透圧性利尿薬、カリウム保持性利尿薬、サイアザイド利尿薬、電解質置換薬、および尿酸排泄薬;酵素、例えば、膵臓酵素および血栓崩壊酵素;胃腸薬、例えば、下痢止め薬、抗嘔吐薬、胃腸抗炎症薬、サリチレート胃腸抗炎症薬、制酸性抗潰瘍薬、胃酸ポンプ阻害薬性抗潰瘍薬、胃粘膜抗潰瘍薬、H2遮断薬性抗潰瘍薬、胆石分解薬、消化薬、催吐薬、緩下薬および便軟化薬、およびプロキネティック(prokintic)薬;全身麻酔薬、例えば、吸入麻酔薬、ハロゲン化吸入麻酔薬、静脈内麻酔薬、バルビツレート静脈内麻酔薬、ベンゾジアゼピン静脈内麻酔薬、およびアヘン作用薬性静脈内麻酔薬;血液剤、例えば、抗貧血薬、造血性抗貧血薬、凝固薬、抗凝固薬、止血性凝固薬、血小板阻害薬性凝固薬、血栓溶解酵素凝固薬、および血漿増量剤;ホルモンおよびホルモン修飾物質、例えば、人口妊娠中絶薬、副腎薬、コルチコステロイド副腎薬、男性ホルモン、抗男性ホルモン、抗糖尿病薬、スルホニル尿素抗糖尿病薬、抗低血糖症薬、経口避妊薬、プロゲスチン避妊薬、エストロゲン、排卵誘発剤、分娩促進薬、副甲状腺薬、下垂体ホルモン、プロゲスチン、抗甲状腺薬、甲状腺ホルモン、および早産防止薬;免疫生物学的物質、例えば、免疫グロブリン、免疫抑制剤、トキソイド、およびワクチン;局所麻酔薬、例えば、アミド局所麻酔薬、およびエステル局所麻酔薬;筋骨格薬、例えば、抗通風性抗炎症薬、コルチコステロイド性抗炎症薬、金化合物抗炎症薬、免疫抑制性抗炎症薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、サリチレート抗炎症薬、骨格筋弛緩薬、神経筋遮断薬性骨格筋弛緩薬、および逆神経筋遮断薬性骨格筋弛緩薬;神経学的物質、例えば、抗痙攣薬、バルビツレート抗痙攣薬、ベンゾジアゼピン抗痙攣薬、抗偏頭痛薬、抗パーキンソン症候群薬、抗眩暈薬、アヘン作用薬、およびアヘン拮抗薬;眼科用薬剤、例えば、抗緑内障薬、β遮断薬性抗緑内障薬、縮瞳性抗緑内障薬、散瞳薬、アドレナリン作用薬性散瞳薬、抗ムスカリン性散瞳薬、眼科用麻酔薬、眼科用抗感染薬、眼科用アミノ配糖体抗感染薬、眼科用マクロライド系抗感染薬、眼科用キノロン抗感染薬、眼科用スルホンアミド抗感染薬、眼科用テトラサイクリン抗感染薬、眼科用抗炎症薬、眼科用コルチコステロイド性抗炎症薬、眼科用非ステロイド性抗炎症薬(NSAID);向精神薬、例えば、抗鬱薬、複素環系抗鬱薬、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(MAOI)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、三環系抗鬱薬、躁病薬、抗精神病薬、フェノチアジン抗精神病薬、抗不安薬、鎮静薬および催眠薬、バルビツレート鎮静薬および催眠薬、ベンゾジアゼピン抗不安薬、鎮静薬および催眠薬、および精神刺激薬;呼吸薬、例えば、鎮咳剤、気管支拡張薬、アドレナリン作用薬性気管支拡張薬、抗ムスカリン気管支拡張薬、去痰薬、粘液溶解薬、呼吸性抗炎症薬、および呼吸性コルチコステロイド性抗炎症薬;毒物学物質、例えば、解毒薬、重金属拮抗薬/キレート剤、物質乱用薬、デテレント(deterrent)物質乱用薬、および離脱物質乱用薬(withdrawal substance abuse
agents);ミネラル;およびビタミン、例えば、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンEおよびビタミンK。
【0177】
上記分類の生物学的に活性な物質の他の種類は、以下の物質を包含する:(1)一般に鎮痛薬、例えば、リドカイン、他のカイン鎮痛薬またはその誘導体、および非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)性鎮痛薬(ジクロフェナク、イブプロフェン、ケトプロフェンおよびナプロキセンを包含する);(2)アヘン作用薬性鎮痛薬、例えば、コデイン、フェンタニル、ヒドロモルホンおよびモルヒネ;(3)サリチレート鎮痛薬、例えばアスピリン(ASA)(腸溶性ASA);(4)H1遮断薬性抗ヒスタミン薬、例えば、クレマスチンおよびテルフェナジン;(5)H2遮断薬性抗ヒスタミン薬、例えば、シメチジン、ファモチジン、ニザジン(nizadine)およびラニチジン;(6)抗感染薬、例えばムピロシン;(7)嫌気性生物抗感染薬、例えば、クロラムフェニコールおよびクリンダマイシン;(8)抗真菌性抗生物質性抗感染薬、例えば、アンホテリシンb、クロトリマゾール、フルコナゾールおよびケトコナゾール;(9)マクロライド系抗生物質性抗感染薬、例えば、アジスロマイシンおよびエリスロマイシン;(10)雑(miscellaneous)βラクタム抗生物質性抗感染薬、例えば、アズトレオナムおよびイミペネム;(11)ペニシリン抗生物質性抗感染薬、例えば、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリンGおよびペニシリンV;(12)キノロン抗生物質性抗感染薬、例えば、シプロフロキサシンおよびノルフロキサシン;(13)テトラサイクリン抗生物質性抗感染薬、例えば、ドキソサイクリン、ミノサイクリンおよびテトラサイクリン;(14)抗結核性抗マイコバクテリア抗感染薬、例えば、イソニアジド(INH)およびリファンピン;(15)抗原生動物性抗感染薬、例えば、アトバクオンおよびダプソン;(16)抗マラリア性抗原生動物性抗感染薬、例えば、クロロキンおよびピリメタミン;(17)抗レトロウイルス性抗感染薬、例えば、リトナビルおよびジドブジン;(18)抗ウイルス性抗感染薬、例えば、アシクロビル、ガンシクロビル、インターフェロンα、およびリマンタジン;(19)アルキル化抗腫瘍薬、例えば、カルボプラチンおよびシスプラチン;(20)ニトロソ尿素アルキル化抗腫瘍薬、例えばカルムスチン(BCNU);(21)代謝拮抗物質性抗腫瘍薬、例えばメトトレキサート;(22)ピリミジン類似体代謝拮抗物質性抗腫瘍薬、例えば、フルオロウラシル(5−FU)およびゲムシタビン;(23)ホルモン抗腫瘍薬、例えば、ゴセレリン、ロイプロリドおよびタモキシフェン;(24)自然抗腫瘍薬、例えば、アルデスロイキン、インターロイキン−2、ドセタキセル、エトポシド(VP−16)、インターフェロンα、パクリタキセル、他のタキサン誘導体、トレチノイン(ATRA);(25)抗生物質性自然抗腫瘍薬、例えば、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシンおよびマイトマイシン;(26)ビンカアルカロイド自然抗腫瘍薬、例えば、ビンブラスチンおよびビンクリスチン;(27)自律神経薬、例えばニコチン;(28)抗コリン作用性自律神経薬、例えば、ベンゾトロピンおよびトリヘキシフェニジル;(29)抗ムスカリン性抗コリン作用性自律神経薬、例えば、アストロピンおよびオキシブチニン;(30)麦角アルカロイド自律神経薬、例えばブロモクリプチン;(31)コリン作用薬性副交感神経作用薬、例えばピロカルピン;(32)コリンエステラーゼ阻害薬性副交感神経作用薬、例えばピリドスチグミン;(33)α遮断薬性交感神経遮断薬、例えばプラゾシン;(34)β遮断薬性交換神経遮断薬、例えばアテノロール;(35)アドレナリン作用薬性交感神作用薬、例えば、アルブテロールおよびドブタミン;(36)心臓血管薬、例えば、アスピリン(ASA)(腸溶性ASA);(37)β遮断薬性抗狭心症薬、例えば、アテノロールおよびプロパノロール;(38)カルシウムチャンネル遮断薬性抗狭心症薬、例えば、ニフェジピンおよびベラパミル;(39)ニトレート抗狭心症薬、例えば、イソソルビドジニトレート(ISDN);(40)強心配糖体抗不整脈薬、例えばジゴキシン;(41)クラスI抗不整脈薬、例えば、リドカイン、メキシレチン、フェニトイン、プロカインアミドおよびキニジン;(42)クラスII抗不整脈薬、例えば、アテノロール、メトプロロール、プロプラノロールおよびチモロール;(43)クラスIII抗不整脈薬、例えばアミオダロン;(44)クラスIV抗不整脈薬、例えば、ジルチアゼムおよびベラパミル;(45)α遮断薬性抗高血圧薬、例えばプラゾシン;(46)アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)性抗高血圧薬、例えば、カプトプリルおよびエナラプリル;(47)β遮断薬性抗高血圧薬、例えば、アテノロール、メトプロロール、ナドロールおよびプロパノロール;(48)カルシウムチャンネル遮断薬性抗高血圧薬、例えば、ジルチアゼムおよびニフェジピン;(49)中枢作用性アドレナリン作用性抗高血圧薬、例えば、クロニジンおよびメチルドパ;(50)利尿性抗高血圧薬、例えば、アミロライド、フロセミド、ヒドロクロロチアジド(HCTZ)およびスピロノラクトン;(51)抹消血管拡張薬性抗高血圧薬、例えば、ヒドララジンおよびミノキシジル;(52)抗脂肪血症薬、例えば、ゲムフィブロジルおよびプロブコール;(53)胆汁酸金属イオン封鎖剤性抗脂肪血症薬、例えばコレスチラミン;(54)HMG−CoA還元酵素阻害薬性抗脂肪血症薬、例えば、ロバスタチンおよびプラバスタチン;(55)強心薬、例えば、アムリノン、ドブタミンおよびドーパミン;(56)強心配糖体性強心薬、例えばジゴキシン;(57)血栓崩壊薬、例えば、アルテプラーゼ(TPA)、アニストレプラーゼ、ストレプトキナーゼおよびウロキナーゼ;(58)皮膚科薬、例えば、コルヒチン、イソトレチノイン、メトトレキサート、ミノキシジル、トレチノイン(ATRA);(59)皮膚科用コルチコステロイド性抗炎症薬、例えば、ベタメタゾンおよびデキサメタゾン;(60)抗真菌性局所抗感染薬、例えば、アンホテリシンB、クロトリマゾール、ミコナゾールおよびニスタチン;(61)抗ウイルス性局所抗感染薬、例えばアシクロビル;(62)局所抗腫瘍薬、例えばフルオロウラシル(5−FU);(63)電解および腎臓薬、例えばラクツロース;(64)ループ利尿薬、例えばフロセミド;(65)カリウム保持性利尿薬、例えばトリアムテレン;(66)サイアザイド利尿薬、例えばヒドロクロロチアジド(HCTZ);(67)尿酸排泄薬、例えばプロベネシド;(68)酵素、例えば、RNアーゼおよびDNアーゼ;(69)血栓崩壊酵素、例えば、アルテプラーゼ、アニストレプラーゼ、ストレプトキナーゼおよびウロキナーゼ;(70)抗嘔吐薬、例えばプロクロルペラジン;(71)サリチレート胃腸抗炎症薬、例えばスルファサラジン;(72)胃酸ポンプ阻害薬性抗潰瘍薬、例えばオメプラゾール;(73)H2遮断薬性抗潰瘍薬、例えば、シメチジン、ファモチジン、ニザチジンおよびラニチジン;(74)消化薬、例えばパンクレリパーゼ;(75)プロキネティック(prokintic)薬、例えばエリスロマイシン;(76)アヘン作用薬性静脈内麻酔薬、例えばフェンタニル;(77)造血性抗貧血薬、例えば、エリスロポイエチン、フィルグラスチム(G−CSF)およびサルグラモスチン(GM−CSF);(78)凝固薬、例えば抗血友病因子1−10(AHF1−10);(79)抗凝固薬、例えばワルファリン;(80)血栓溶解酵素凝固薬、例えば、アルテプラーゼ、アニストレプラーゼ、ストレプトキナーゼおよびウロキナーゼ;(81)ホルモンおよびホルモン修飾物質、例えばブロモクリプチン;(82)人口妊娠中絶薬、例えばメトトレキサート;(83)抗糖尿病薬、例えばインスリン;(84)経口避妊薬、例えば、エストロゲンおよびプロゲスチン;(85)プロゲスチン避妊薬、例えば、レボノルゲストレルおよびノルゲストレル;(86)エストロゲン、例えば、抱合卵胞ホルモン、ジエチルスチルベストロール(DES)、エストロゲン(エストラジオール、エストロンおよびエストロピペート);(87)排卵誘発剤、例えば、クロミフェン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)およびメノトロピン;(88)副甲状腺薬、例えばカルシトニン;(89)下垂体ホルモン、例えば、デスモプレシン、ゴセレリン、オキシトシンおよびバソプレシン(ADH);(90)プロゲスチン、例えば、メドロキシプロゲステロン、ノルエチンドロンおよびプロゲステロン;(91)甲状腺ホルモン、例えばレボチロキシン;(92)免疫生物学的物質、例えば、インターフェロンβ−1bおよびインターフェロンγ−1b;(93)免疫グロブリン、例えば、免疫グロブリンIM、IMIG、IGIMおよび免疫グロブリンIV、IVIG、IGIV;(94)アミド局所麻酔薬、例えばリドカイン;(95)エステル局所麻酔薬、例えば、ベンゾカインおよびプロカイン;(96)筋骨格コルチコステロイド性抗炎症薬、例えば、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾンおよびプレドニソン;(97)筋骨格抗炎症性免疫抑制薬、例えば、アザチオプリン、シクロホスファミドおよびメトトレキサート;(98)筋骨格非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えば、ジクロフェナク、イブプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラクおよびナプロキセン;(99)骨格筋弛緩薬、例えば、バクロフェン、シクロベンザプリンおよびジアゼパム;(100)逆神経筋遮断薬性骨格筋弛緩薬、例えばピリドスチグミン;(101)神経学的物質、例えば、ニモジピン、リルゾール、タクリンおよびチクロピジン;(102)抗痙攣薬、例えば、カルバマゼピン、ガバペンチン、ラモトリジン、フェニトインおよびバルプロ酸;(103)バルビツレート抗痙攣薬、例えば、フェノバルビタールおよびプリミドン;(104)ベンゾジアゼピン抗痙攣薬、例えば、クロナゼパム、ジアゼパムおよびロラゼパム;(105)抗パーキンソン症候群薬、例えば、プロモクリプチン、レボドパ、カルビドパおよびペルゴリド;(106)抗眩暈薬、例えばメクリジン;(107)アヘン作用薬、例えば、コデイン、フェンタニル、ヒドロモルホン、メタドンおよびモルヒネ;(108)アヘン拮抗薬、例えばナロキソン;(109)β遮断薬性抗緑内障薬、例えばチモロール;(110)縮瞳性抗緑内障薬、例えばピロカルピン;(111)眼科用アミノ配糖体抗感染薬、例えば、ゲンタマイシン、ネオマイシンおよびトブラマイシン;(112)眼科用キノロン抗感染薬、例えば、シプロフロキサシン、ノルフロキサシンおよびオフロキサシン;(113)眼科用コルチコステロイド性抗炎症薬、例えば、デキサメタゾンおよびプレドニゾロン;(114)眼科用非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えばジクロフェナク;(115)抗精神病薬、例えば、クロザピン、ハロペリドールおよびリスペリドン;(116)ベンゾジアゼピン抗不安薬、鎮静薬および催眠薬、例えば、クロナゼパム、ジアゼパム、ロラゼパム、オキサゼパムおよびプラゼパム;(117)精神刺激薬、例えば、メチルフェニデートおよびペモリン;(118)鎮咳剤、例えばコデイン;(119)気管支拡張薬、例えばテオフィリン;(120)アドレナリン作用薬性気管支拡張薬、例えばアルブテロール;(121)呼吸性コルチコステロイド性抗炎症薬、例えばデキサメタゾン;(122)解毒薬、例えば、フルマゼニルおよびナロキソン;(123)重金属拮抗薬/キレート剤、例えばペニシラミン;(124)デテレント(deterrent)物質乱用薬、例えば、ジスルフィラム、ナルトレキソンおよびニコチン;(125)離脱物質乱用薬、例えば、ブロモクリプチン;(126)ミネラル、例えば、鉄、カルシウムおよびマグネシウム;(127)ビタミンB化合物、例えばシアノコバラミン(ビタミンB12)およびナイアシン(ビタミンB3);(128)ビタミンC化合物、例えばアスコルビン酸;および(129)ビタミンD化合物、例えばカルシトリオール。
【0178】
さらに、以下のような組換えまたは細胞由来タンパク質も使用し得る:組換えβ−グルカン;ウシ免疫グロブリン濃縮物;ウシスーパーオキシドジスムターゼ;フルオロウラシル、エピネフリンおよびウシコラーゲンを含んで成る配合物;組換えヒルジン(r−Hir)、HIV−1イムノゲン;組換えヒト成長ホルモン(r−hGH);組換えEPO(r−EPO);遺伝子活性化EPO(GA−EPO);組換えヒトヘモグロビン(r−Hb);組換えヒトメカセルミン(r−IGF−1);組換えインターフェロンβ−1a;レノグラスチム(G−CSF);オランザピン;組換え甲状腺刺激ホルモン(r−TSH);およびトポテカン。
【0179】
なおさらに、以下のようなペプチド、タンパク質および他の大分子も使用し得る:インターロイキン1〜18(変異体および類似体を包含する);インターフェロンα、γおよびβ;軟骨再生に有用と考えられる軟骨細胞;黄体化ホルモン放出ホルモン(LHRH)および類似体;性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH);トランスホーミング増殖因子(TGF);線維芽細胞増殖因子(FGF);腫瘍壊死因子−αおよびγ(TNF−αおよびγ);神経発育因子(NFG);成長ホルモン放出因子(GHRF);上皮増殖因子(EGF);結合組織活性化ペプチド(CTAP);骨形成因子;線維芽細胞増殖因子同族体因子(FGFHF);肝細胞増殖因子(HGF);インスリン成長因子(IGF);浸潤阻害因子−2(IIF−2);骨形態形成タンパク質1〜7(BMP1〜7);ソマトスタチン;サイモシン−α−1−;γ−グロブリン;スーパーオキシドジスムターゼ(SOD);および補体因子、およびそのような因子、例えば増殖因子の生物学的に活性な類似体、フラグメントおよび誘導体。
【0180】
多機能性調節タンパク質であるトランスホーミング増殖因子(TGF)超遺伝子ファミリーのメンバーを、本発明のポリマーマトリックスに組み込み得る。TGF超遺伝子ファミリーのメンバーは、以下のものを包含する:TGF−β、βトランスホーミング増殖因子(例えば、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3);骨形態形成タンパク質(例えば、BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9);ヘパリン結合増殖因子(例えば、線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インスリン様成長因子(IGF));インヒビン(例えば、インヒビンA、インヒビンB);成長分化因子(例えばGDF−1);およびアクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB)。増殖因子は、哺乳動物細胞のような天然または自然源から分離するか、または組換えDNA法または種々の化学的方法によって合成的に生成することができる。さらに、天然分子の生物学的活性の少なくともいくらかを示すことを条件として、これらの因子の類似体、フラグメントまたは誘導体を使用することができる。例えば、類似体は、部位特異性変異誘発または他の遺伝工学法によって変化させた遺伝子の発現によって生成することができる。
【0181】
種々の形態の生物学的に活性な物質を使用し得る。これらは、移植、注射またはそれ以外の方法で患者に与えた際に生物学的に活性化される非荷電分子、分子複合体、塩、エーテル、エステル、アミド等のような形態を包含するがそれらに限定されない。
【0182】
特定の実施形態において、1つまたはそれ以上の生物学的に活性な物質に加えて、他の物質を本発明の組成物に組み込み得る。例えば、当分野で公知の可塑剤および安定剤を本発明の組成物に組み込み得る。特定の実施形態において、可塑剤および安定剤のような添加剤を、それらの生物学的適合性のために選択する。
【0183】
本発明の組成物は、1つまたはそれ以上の補助物質、例えば、充填剤、増粘剤等をさらに含有してよい。他の実施形態において、補助剤として作用する物質を、組成物と合わしてよい。そのような付加的物質は、得られる組成物の特性に作用し得る。例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)またはマウス血清アルブミン(MSA)のような充填剤を、ポリマー組成物と合わしてよい。特定の実施形態において、充填剤の量は、組成物の重量の約0.1〜約50%またはそれ以上、または約2.5%、5%、10%、25%、40%で変化し得る。そのような充填剤の組み込みは、あらゆる封入物質の持続放出速度に作用し得る。当業者に公知の他の充填剤、例えば、炭水化物、砂糖、デンプン、糖類、セルロースおよび多糖類(マンニトース(mannitose)およびスクロースを包含する)を、本発明の特定の実施形態に使用し得る。
【0184】
緩衝剤、酸および塩基を組成物に組み込んでpHを調節し得る。組成物から放出される物質の拡散距離を増加させる物質も含有させてよい。
【0185】
添加剤を使用することによって、あらゆる本発明の組成物の電荷、脂肪親和性または親水性を、変更し得る。例えば、界面活性剤を使用して、低混和性液体の混和性を増加し得る。好適な界面活性剤の例は、デキストラン、ポリソルベートおよびラウリル硫酸ナトリウムを包含する。一般に、界面活性剤は、約5%未満の低濃度で使用される。
【0186】
生物学的に活性な物質は、混合によって、架橋合成ポリマー組成物に組み込み得る。または、これらの物質を合成ポリマー上の官能基に結合させることによって、この物質を架橋ポリマーマトリックスに組み込み得る。そのような組成物は、例えば酵素的分解によって、容易に生分解することができる結合を含有してよく、その結果として標的組織に活性物質を放出し、そこで所望の治療作用を示し得る。
【0187】
求核基を含有する生物学的に活性な物質を架橋ポリマー組成物に組み込む簡単な方法は、多求核性成分の添加前に、活性物質を多求電子性成分と混合することを含む。反応性組成物の種々の成分の相対モル量を変化させることによって、得られる架橋ポリマー組成物の正味電荷を変化させて、タンパク質またはイオン化可能薬剤のような荷電化合物送達用のマトリックスを生成することができる。そのようにして、中性担体マトリックスから一般に急速に拡散する荷電タンパク質または薬剤の送達を調節することができる。
【0188】
例えば、モル過剰の多求核性の成分を使用する場合、得られるマトリックスは正味陽電荷を有し、陰荷電化合物にイオン的に結合し、送達するのに使用し得る。これらのマトリックスから送達することができる陰荷電化合物の例は、種々の薬剤、細胞、タンパク質および多糖類を包含する。
【0189】
モル過剰の多求電子性の成分を使用する場合、得られるマトリックスは正味陰電荷を有し、陽荷電化合物にイオン的に結合し、送達するのに使用することができる。これらのマトリックスから送達することができる陽荷電化合物の例は、種々の薬剤、細胞、タンパク質および多糖を包含する。
【0190】
本発明の架橋ポリマーマトリックス組成物は、新しい組織を形成するために、所望の投与部位に種々のタイプの生きた細胞または遺伝子を送達するのにも使用できる。ここで使用される「遺伝子」という用語は、自然源からの遺伝物質、合成核酸、DNA、アンチセンス−DNAおよびRNAを包含するものとする。
【0191】
例えば、ポリマーマトリックスを使用して間葉幹細胞を送達して、それらが送達される組織と同じタイプの細胞を形成することができる。間葉幹細胞は分化しないことがあり、従って、活性物質の存在または局所組織環境の作用(化学的作用、物理的作用等)によって分化して、種々のタイプの新しい細胞を形成し得る。間葉幹細胞の例は、骨芽細胞、軟骨細胞および線維芽細胞を包含する。例えば、骨芽細胞を骨の欠損部位に送達して、新しい骨を形成することができ;軟骨細胞を軟骨の欠損部位に送達して、新しい軟骨を形成することができ;線維芽細胞を送達して、新しい結合組織を必要とするどのような部位でもコラーゲンを生成することができ;ニューレクトダーマル(neurectodermal)細胞を送達して、新しい神経組織を形成することができ;上皮細胞を送達して、新しい上皮組織、例えば肝臓を形成することができる。
【0192】
細胞または遺伝子は、由来において、同種異系または異種であってよい。例えば、組成物を使用して、遺伝的に修飾した他の種からの細胞または遺伝子を送達することができる。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は生体内で容易に分解されなくてもよい、架橋ポリマーマトリックス組成物中に捕捉される細胞および遺伝子を患者自身の細胞から分離し、それによって、患者において免疫反応を生じさせない。
【0193】
架橋ポリマーマトリックス中に細胞または遺伝子を捕捉するために、細胞または遺伝子を、例えば、官能化コンドロイチン硫酸および任意に他の生体適合性ポリマーを含んで成る組成物と予備混合し、次に、重合剤を混合物に適用して架橋ポリマーマトリックスを形成し、それによって細胞または遺伝子をマトリックス中に捕捉する。
【0194】
(損傷組織の修復または置換)
本発明の組成物は、以下のような(それらに限定されない)多くの組織修復用途に使用し得る:漿液腫および血腫の予防、皮膚および筋肉弁の付着、エンドリーク(endoleaks)の修復および予防、動脈解離の修復、気腫肺減量、神経管修復、および微小血管吻合および神経吻合の形成。さらに本発明の組成物は、損傷組織の修復における接着組成物としても使用し得る。
【0195】
1つの実施形態において、損傷組織の修復は、切開術および腹腔鏡術を包含する、組織への接近および修復を可能にするあらゆる標準的外科的方法によって行える。損傷組織へ一旦接近したら、必要であれば何らかの外科的に許容されるパッチまたはインプラントと共に、本発明の組成物を損傷組織に接触して配置する。例えば2つまたはそれ以上の組織面を結合することによって、裂けたまたは分離した組織の修復に適用する場合、組成物を組織面の1つまたはそれ以上に適用し、次に、それらの面を互いに接触して配置させ、それらの間に接着を生じさせる。
【0196】
脱出組織の修復に使用する場合、外科的に許容されるパッチを脱出組織の周囲組織領域に付着させて、脱出領域をコーティングし、それによって、損傷組織を強化し、欠損を修復することができる。周囲組織にパッチを付着させる場合、本発明の組成物を、パッチ、周囲組織、またはパッチを脱出組織に配置した後のパッチに適用し得る。一旦パッチおよび組織を互いに接触させると、それらの間に付着が生じ得る。
【0197】
1つの実施形態において、本発明の組成物の実質的に全ての反応性成分を先ず混合し、次に、例えば電磁放射線によって、実施的な架橋が生じる前に、所望の組織または表面に送達する。次に、組成物を適用した面または組織を、残りの面、即ち他の組織面またはインプラント面に、好ましくは直ぐに、接触させて、接着し得る。
【0198】
付着させる面を手または他の適切な手段を使用して合わし、その間に架橋反応を終了するまで進ませる。架橋は、接着組成物の成分を混合してから約5〜60秒以内で接着が生じるのに一般に充分に終了し得る。しかし、架橋が終了するのに必要とされる時間は、各反応性成分のタイプおよび分子量、官能化の程度、および架橋性組成物における成分の濃度(成分濃度が高いほど、より速い架橋時間である)を包含する多くの要因に依存する。
【0199】
従って、1つの実施形態において、成分を別々に送達することを可能にする装置を使用して、本発明の組成物を投与部位に送達する。そのような送達システムは、多成分スプレーデバイスを包含し得る。または、特定の調節可能押出システムを使用して成分を送達することができ、または分離したペースト、液体または乾燥粉末の形態において手で送達することもでき、そして投与部位において手で混合することもできる。多成分組織封鎖剤/止血剤の送達に適合させた多くのデバイスが、当分野で公知であり、本発明の実施にも使用することができる。
【0200】
本発明の組成物のさらに別の送達法は、不活性形態の反応性成分を液体または粉末として生成する。次に、そのような組成物を、組織部位への適用の後またはすぐ前に、活性化剤を適用することによって活性化することができる。1つの実施形態において、活性化剤は、それと混合した際に組成物を活性化するpHを有する緩衝液である。さらに他の組成物送達法は、予備形成シートを生成し、そのシートを投与部位に適用する方法である。当業者は、公知のゲル強度およびゲル化時間を有するある特定組成物と共に使用すべき適切な投与プロトコルを容易に決めることができる。
【0201】
本発明の組成物は、気体、液体または固体の漏出を防止するコーティングまたは封鎖層を必要とする医学的状態に使用することができる。その方法は、以下の封鎖を行なうために、損傷した組織または器官に両成分を適用することを含む:1)血流を止めるかまたは最小限にするための、血管および/または他の組織または器官の封鎖;2)空気の漏出を止めるかまたは最小限にするための、胸組織の封鎖;3)便または組織含有物の漏出を止めるかまたは最小限にするための、胃腸管または膵臓組織の封鎖;4)尿の漏出を止めるかまたは最小限にするための、膀胱または尿管の封鎖;5)CSFの漏出を止めるかまたは最小限にするための硬膜の封鎖;6)漿膜流体の漏出を止めるための、皮膚または漿膜組織の封鎖。これらの組成物を使用して、小管、神経または皮膚組織のような組織を接着し得る。この物質は、1)1つの組織の表面にこの物質を適用し、次に、第二組織を第一組織に素早く押し付けることによるか、または2)組織を近接併置し、次に、この物質を適用することによって、使用することができる。さらに、この組成物を使用して、疾患または手術によって形成される軟組織および硬組織における腔を充填することもできる。
【0202】
例えば、本発明のポリマーマトリックスを使用して哺乳類患者の体内の種々の管腔および空隙を封鎖するかまたは充填することができる。組成物をバイオシーラントとして使用して、組織または構造物(例えば血管)内の裂溝または間隙、または隣接する組織または構造物間の結合部を封鎖し、血液または他の生物学的流体の漏出を防止することもできる。
【0203】
組成物を、手術または照射処置の間に、体腔における器官置換用の大空間充填デバイスとして使用して、例えば、骨盤への計画照射過程の間に腸を保護することもできる。
【0204】
血管または卵管のような生理学的管腔の内面を本発明の組成物でコーティングし、それによって封鎖剤として作用して、例えば、血管の内面から動脈斑沈着物を除去するバルーンカテーテル法または卵管の内部からの瘢痕組織または子宮内膜組織の除去のような医学的処置後の管腔の再狭窄を防止することができる。第一および第二合成ポリマーの混合後すぐに、反応混合物の薄い層を血管の内面に適用する(例えば、カテーテルによる)のが好ましい。本発明の組成物は生体内で容易分解性でないので、コーティング物の分解による再狭窄の可能性が最小限にされる。
【0205】
本発明の組成物は、哺乳類患者の体内の軟組織または硬組織の増大にも使用することができる。軟組織増大の適用の例は、括約筋(例えば、尿道、肛門、食道括約筋)増大、およびシワおよび瘢痕の治療を包含する。硬組織増大の適用の例は、骨および/または軟骨組織の修復および/または置換を包含する。
【0206】
本発明の組成物は、変形性関節症の関節における骨液の置換物質として使用し得る。本発明の組成物は、関節における軟質ゲル網状構造を回復させることによって、関節痛を減少させ、関節機能を向上させ得る。架橋ポリマー組成物は、損傷した椎間円板の髄核の置換物質として使用することもできる。損傷した椎間円板の髄核を先ず除去し、次に、反応性組成物を、円板の中央に注射するかまたはそれ以外の方法で導入する。本発明の組成物は、円板への導入前に架橋していてもよく、またはインサイチュで架橋させてもよい。
【0207】
いくつかの実施形態において、1つまたは2つまたはそれ以上の重合剤を使用し得る。例えば、電磁放射線を、単独で、または光開始剤と共に、使用してよい。光開始剤だけを使用してもよい。付加的にまたは独立に、酸化還元重合剤を使用し得る。電磁放射線または光開始剤は、急速重合を誘発する。そのような急速重合は、組成物が所望の位置に留まることを確実にし得る。酸化還元重合剤は、電磁放射線と同時に、前に、または後に使用し得る。酸化還元重合剤は、例えば約2時間の、遅い重合を誘発し得る。
【0208】
哺乳類患者の体内において組織または円板の増大を生じさせる一般的方法において、増大を必要とする組織または円板部位に、反応性組成物の成分を同時に注射するか、植え込むか、または注入する。本発明の組成物は、この注射、植え込み、注入または方向付けのために適切な賦形剤を含有して生成し得る。一旦、患者の体内に入れば、官能化コンドロイチン硫酸、および例えばアミン基含有化合物を、互いに反応させて、架橋ポリマー網状構造をインサイチュで形成し得る。官能化コンドロイチン硫酸を、例えば患者自身の組織内のコラーゲン分子のリシン残基上の、第一級アミノ基と反応させて、宿主組織による組成物の「生物学的固定」を与えてもよい。
【0209】
または、ポリマーマトリックスを、解剖学的領域に植え込み可能な固体物質として、またはその領域の部分をコーティングするのに使用し得るフィルムまたは網として、形成してもよい。関連する解剖学的領域に固体物質を植え込む種々の方法も、当業者に公知である。
【0210】
いくつかの実施形態において、再建すべき外科的に形成した欠損に、本発明の組成物を配置し、再建が実施された後もこの位置に残しておく。本発明は、局所組織再建、有茎皮弁再建または遊離皮弁再建に使用するのに好適である。
【0211】
(アッセイおよびキット)
いくつかの実施形態において、本発明は、関節炎のような軟骨分解疾患についての有効度評価および診断用のアッセイおよびキットに関する。いくつかの実施形態において、アッセイまたはキットは、本発明の架橋ポリマーマトリックスを分解し得る酵素の存在を検出する。
【0212】
例えば変形性関節症は、関節の関節軟骨の変形性疾患である。その初期の段階において、それは主に非炎症性であり、慢性関節リウマチと異なる。変形性関節症は、単独の疾患ではなく、種々の要因(例えば、遺伝的素因、機械的酷使、関節奇形または以前の損傷等)によって生じ得る関節不全を示すものと考えられる。関節軟骨の破壊は、変形性関節症の主要な進行性の特徴である。関節軟骨を破壊し得る他の疾患は以下の疾患を包含する:慢性関節リウマチ、若年性関節リウマチ、硬直性脊椎炎、乾癬性関節炎、ライター症候群、再発性多発性軟骨炎、下背部痛症候群(low back pain syndrome)、および関節炎の他の感染性形態。一般に、関節炎は、軟骨分解活性に関係している。
【0213】
本明細書に開示するアッセイ、方法およびキットは、中等度症状患者における加速性軟骨分解の早期徴候を検出し、より進行した患者における疾患進行をモニタリングことに使用でき、薬剤または他の療法の効果をモニタリング手段として使用できる。他の実施形態において、本発明は、本発明の組成物および架橋ポリマーマトリックスおよび任意に使用のための指示書を含有するキットを含む。そのようなキットの使用は、例えば治療への応用を含む。本発明は、疾患または状態の治療に使用されるキットも提供する。例えば、キットは、既に混合されているかまたは別々に供給される、本発明の官能化コンドロイチン硫酸化合物、および生体適合性ポリマーまたはアミン成分含有化合物を含んで成る。
【0214】
使用される試験キットは、コンドロイチナーゼおよびコラーゲナーゼのような軟骨分解酵素の存在下に分解する、官能化二糖を含んで成る架橋マトリックスポリマーを含有し得る。そのようなキットを使用して、他のプロテアーゼおよび酵素も検出し得る。
【実施例】
【0215】
(実施例)
ここで、本発明が一般的に記載されることで、以下の実施例を参照することによって本発明がより容易に理解される。実施例は、本発明の特定の局面および実施形態の例示目的のためのみに含まれ、本発明を限定することを意図されない。
【0216】
(実施例1:物質)
コンドロイチン硫酸Aナトリウム塩(CS、タイプA70%、ウシ気管からのタイプCで平衡)およびアセトン(<0.5%水)を、SIGMA,MOから入手する。メタクリル酸グリシジル(GMA、純度98%)を、Polysciences,PAから入手する。アクリレート−PEG−アクリレート(PEODA、100%M3127、多分散度=1.03(GPC分析によって測定))を、Shearwater,ALから入手する。燐酸塩緩衝液(PBS、pH7.4)はGIBCOから入手し得る。
【0217】
(実施例2:GMA−CSの合成)
室温で勢いよく攪拌しながら、CS10gをPBS100mLに溶解し、次に、GMA10mLを添加する。アセトン析出によってサンプルを第1、3、5、7、10および15日に採集し、アセトン抽出によって2回精製する。GMA−CS生成物(第1、3、5、7、10および15日)を24時間凍結乾燥し、4℃で保存する。
【0218】
(実施例3:アルデヒド官能化CSおよび架橋マトリックスの合成)
コンドロイチン硫酸タイプA(隣接ジオール0.8〜1.2mmol、70%CS−A、Sigma)600mg、および過沃素酸ナトリウム(約2.88mmol、NaIO4、Sigma)616mgを一緒に脱イオン水10mLに溶解し、光から保護する。暗所で勢いよく攪拌しながら、反応を約14時間継続させる。不溶性副生物を0.22μmフィルターで除去し、生成物をSephedex G−25(Sigma)サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)カラムに装填し、それによって生成物を水溶性副生物および未反応小分子から精製する。生成物コンドロイチン硫酸−アルデヒド(CS−ald)を、凍結乾燥によって約90%の収率で得る。アルデヒド置換度の測定を、塩酸ヒドロキシルアミン滴定によって行なう。結果は60〜70%の置換である。
【0219】
等容量(20μL)の25%CS−aldおよび40%ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma)を混合することによって、組織粘着物(tissue adhesive)を配合する。その粘着物を配合後すぐに使用し、反応をシッフ塩基メカニズムによって2〜5分間で終了させる。
【0220】
(実施例4:NMR法)
NMRスペクトルを、Unity Plus 500 MHz分光計(Varian Associates)で記録する。ジュウテリウム−d2(D20、99.9% h、SIGMA)におけるH−NMRについては、約50mgの物質をD2O1.0mLに溶解し、4.8ppmにおける2HOHを基準ピークとして使用した。ジュウテリウム−d2(D20、99.9% 2H、SIGMA)における13C−NMRについては、パルスは51.9度であり、パルス長さ7μs、取得時間1.300秒、および50℃における80000反復を使用する。
【0221】
(実施例5:光架橋およびヒドロゲル膨潤率)
GMA−CSおよびPEODAを1:1(w/w)で混合し、水に溶解して、GMA−CS濃度10%(w/w)とする。マクロマー溶液(10%w/v)150Lを、ティシューインサート(tissue insert)(直径8mm)に入れ、重合させる。細胞適合性紫外線開始剤Ingracure 2959(0.05% w/w、Ciba Geigy)および365nm光を使用して、ラジオメータで測定して約10mW/cm2において、光架橋を開始する。マクロマーを30分間光重合させる。
【0222】
光架橋ヒドロゲルを、PBSにおいて37℃で18時間にわたって平衡させる。ヒドロゲルの含水量を、構造物の湿重量(Ww)を測定することによって求める。ヒドロゲルの乾燥重量(Wd)を24時間凍結乾燥した後に測定した。ヒドロゲル平衡膨潤率qは、q≒Ww/Wdによって算出される。
【0223】
(実施例6:流体力学的特徴付け)
PBS平衡共重合CS−MAおよびポリ(エチレンオキシド)−ジアクリレート(PEODA)(3,400;Shearwater Polymers,Knoxville,TN)マクロマー(20% w/v)ヒドロゲル構造物を、上記のティシューカルチャーインサートにおいて調製する。構造物は、カレントセンシング(current sensing)マイクロメータで測定したところ、平均して、直径13.21±0.86mmおよび厚さ4.67±0.16mmである。構造物におけるPEODAおよびCS−MAの重量パーセントは、0%(即ち、純粋PEODA)、25%、50%、75%および100%(即ち、純粋CS−MA)である。RFS−3流動計(Rheometric Scientific Inc.)において平衡板配置を使用して、流動学的試験を行なう。度数(frequency)6.28rad/秒における予備的動的剪断歪−掃引試験は、種々の濃度比率を有するサンプルについて、直線的応力−歪範囲にある0.1%剪断歪を示し、そのような直線性は、動的剪断度数−掃引試験の前に各被験サンプルについて動的剪断歪−掃引試験を使用して確認される。動的剪断度数−掃引を、0.1〜100rad/秒の度数で、0.1%の剪断振幅(amplitude)で試験する。
【0224】
(実施例7:形態学的分析)
CS−MAおよびPEODAの20%(w/v)マクロマー溶液から合成したヒドロゲルブロックをカットし、凍結し、凍結乾燥した。ヒドロゲルの表面および切り口を、LEO 1530 Field Emission走査電子顕微鏡(LEO Electron Microscopy Inc.)で分析する。
【0225】
(実施例8:分解実験)
重合ヒドロゲルの分解を、pH8.0Tris−HCl緩衝消化溶液(Tris−HCl60mM/L、酢酸ナトリウム40mM/L、およびウシ血清アルブミン1.5x10−4mg/L)において、37℃、5%CO2で行なう。光重合CS−MAヒドロゲル(20%w/v)を計量し、コンドロイチナーゼABC(0.8mg/mL)を添加するかまたは添加せずに、2.5mL消化緩衝液と共に24穴細胞培養皿に入れる。所定の時点で、構造物の重さを計る。コンドロイチナーゼABC濃度も変化させ(0.0025g/mL、0.025g/mL、0.25g/mLおよび2.5g/mL)、所定の時点で、消化溶液の吸収を、600nmにおけるバックッグラウンド減算で232nmにおいて測定して、分解の進行に伴う二糖の発生をモニタリング(n=3)。数値をヒドロゲル構造物の原重量に標準化する。図9は、コンドロイチンABCの存在下の、33時間にわたるCS−MAゲル重量の減少を示す。実験を通して定重量を維持する酵素を添加せずに培養した対照ゲルと比較して、酵素の存在下に、33時間までにゲルが完全に分解される。ゲルからの分解コンドロイチン硫酸の遊離を、種々の濃度のコンドロイチナーゼ酵素を含有する緩衝液において測定した。酵素濃度の増加は、周囲緩衝液において観測される分解副生物の濃度を増加させる。
【0226】
(実施例9:細胞封入および生存度)
CS−MAおよびPEODAを1:1の比率で混合し、100U/mLペニシリンGおよび100μg/mLストレプトマイシンを含有するPBSに溶解して、20%(w/v)溶液を調製する。0.05%Irgacure D−2959(w/v)を添加した後、マクロマー溶液を添加して、細胞ペレットを再懸濁し、最終濃度20x106細胞/mLにし、次に、10mW/cm2紫外線で8分間光重合させる。次に、構造物を、軟骨細胞培地高グルコースダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM)(10%ウシ胎児血清(FBS)、10μg/mLビタミンC、12.5mM HEPES、0.1mM非必須アミノ酸、および0.4mMプロリン)に移し、37℃、5%CO2で培養する。
【0227】
MTTアッセイおよび生存/死亡染色アッセイをそれぞれ行なって、培養の1日後に細胞生存力を測定する。MTTアッセイについては、構造物をPBSで2回洗浄し、2mLのMTT溶液(2%FBSを含有するDMEM中0.5mg/mL)を各穴に2〜4時間添加する。活発に代謝している細胞を、光学顕微鏡で観察する。封入された細胞の細胞生存力を、生存/死亡 生存力/細胞毒性キット(Molecular Probes,Eugene,OR,U.S.A.)によっても評価する。外科用ナイフを使用して、構成物から3層の薄片(100〜200μm)を調製する。薄片を、生存/死亡アッセイ試薬(2μMカルセインAMおよび4μM)中で30分間培養する。カルセインAMに蛍光光学フィルター(485±10nm)、およびエチジウムホモダイマー−1にローダミン光学フィルター(530±12.5nm)を使用して、蛍光顕微鏡検査を行なう。
【0228】
(実施例10:IVD適用)
0.1%(w/v)Irgacure D2959光開始剤を添加した80%CSMAを含有するポリマー組成物、または0.1%(w/v)Irgacure D2959を添加した50%CSMA/10%PEODAを含有するポリマー組成物を使用する。パートAにおけるIVDスペースにおいて光重合したゲルを除去し、膨潤率を測定する。0.1%D2959および0.15M過硫酸ナトリウム−0.12Mチオ硫酸ナトリウムを含有するCSMAと共に、水溶性酸化還元開始系を使用する。その系を、死体IVDスペースに埋め込む。光重合の後に、死体脊柱(spine)を37℃のインキュベータに入れて酸化還元重合させる。ゲル化の後、ゲルのサイズおよび含水量を測定する。このモデルにおいて得られる結果は、生体内結果に対応すると予想される。
【0229】
(実施例11:ウサギ試験)
IVDウサギ穿刺モデルを使用して、正常円板変性過程を模倣する。50mg/kgケタミンIMおよび10mg/kgキシラジンIMで動物に麻酔をかけ、18ゲージ針を使用してIVD円板スペースに刺創を形成する。ポリマー注入の前に、円板を4週間変性させる。ポリマー配合物を、崩壊した円板スペースに注入し、重合させる。対照IVD円板スペースには、ポリマーの変わりに食塩水を注入する。動物を1週間に1回、X線撮影によって監視して、インプラント配置、円板高さ、および組織分解または炎症をモニタリング。4、8および12週間後に動物を犠牲にし、組織学的分析を行なって、ポリマーサイズおよび形、炎症、および周囲組織統合および修復を観測する。
【0230】
(等価物)
本明細書に開示されているポリマー、ポリマーマトリックス、サブユニットまたは他の組成物の予想される等価物は、その意図する目的を達成するそのような分子または組成物の有効性に不利な影響を与えない1つまたはそれ以上の簡単な置換基の変更がなされている以外はそれらに対応し、それと同じ一般的特性(例えば、生体適合性)を有する物質を包含する。一般に、本発明化合物は、容易に入手可能な出発物質、試薬および一般的合成手順を使用して、以下のような一般反応式に例示されている方法によるか、またはその変法によって生成し得る。これらの反応において、それ自体公知であるがここでは記載しない別形を使用することもできる。
【0231】
本明細書に記載されている全ての刊行物および特許(以下のものを含む)は、個々の刊行物または特許が参照として本明細書に組み入れられることが特にかつ個々に示されているかのように、その全体が参照として本明細書に援用される。係争の際には、本明細書に記載したあらゆる定義を含む本出願が支配する。
【0232】
The Institute for Genomic Research(TIGR)(www.tigr.org)および/またはNational Center for Biotechnology Information(NCBI)(www.ncbi.nlm.nih.gov)によって管理されているような公共データベースへの登録に対応するアクセッション番号の付いたあらゆるポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列も、全体として参照として組み入れられる。
【0233】
また、以下のものが参考として本明細書中に援用される。
【0234】
(特許および特許出願)
U.S.2002/0022588、U.S.6605294、U.S.6602975、U.S.2003/0119985、U.S.2003/0031697。
【技術分野】
【0001】
(緒言)
プロテオグリカンは、多くの生物学的過程において重要な役割を担っていると考えられる細胞外マトリックス(ECM)の構成成分である。これらの生体高分子は、細胞外網状構造の機能性に寄与していると考えられる。例えば、プロテオグリカンは、結合組織マトリックスの集合の調節、この活性を強化するかまたは阻害する成長因子の結合、およびチロシンキナーゼ受容体との直接的または間接的相互作用による細胞増殖の調節において、役割を担っていると考えられる。これらの生物学的機能は、生体材料骨格を形成するのに有用であると考えられる。例えば、生物活性および/または生物反応性の合成ECMは、薬物送達および組織工学における用途を有し得る。
【背景技術】
【0002】
天然由来の生体高分子は、有用な生物学的特性を有するが生物医学的用途に必要とされる構造的または機能的特性に欠ける場合が多い。例えば、軟骨組織は、関節において骨の表面を覆い、耳および鼻のような組織に構造的完全性を与える。II型コラーゲン、およびアグレカンを包含するプロテオグリカンは、軟骨ECMの主要成分であり、組織の印象的(impressive)圧縮強度および抗張力に関与している。
【0003】
コンドロイチン硫酸(CS)は、アグレカン分子の「アーム」を形成し得る生体高分子であり、軟骨ECMの主要成分を形成する。コンドロイチン硫酸は、関節疾患において、痛みを減少させ、関節機能を向上させる能力も有する。
【0004】
架橋高分子生体材料は、医療装置のコーティング物、構造的人工インプラント、および薬物送達賦形剤を包含する多くの生物医学的用途に広く使用されている。ポリマー網状構造は、例えば、水溶性ポリマー溶液を架橋して水不溶性ポリマー網状構造を形成することによって形成し得る。機械的および構造的特性は、網状構造孔サイズ、含水量および機械的特性を調節する架橋密度の変化によって操作し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
架橋ポリマー、マトリックスまたはゲルは、部分的に、細胞を効果的に封入するそれらの能力により、組織工学に使用し得る。架橋ポリマーまたはゲルは、栄養素および老廃物の輸送を可能にし得る高い組織様含水量を有する場合がある。生体適合性であるか、または任意に生分解性の架橋ポリマーマトリックスは、例えば、関節における軟骨の変性を検出するのにも有用である。以前の研究は、アグレカンにおいて短くなったG3ドメインを生じる遺伝子変異およびその後の関連コンドロイチン硫酸の減少と、椎間円板(IVD)変性の素因との間に相関関係があることを示している。IVDの変性は、下背部痛(low back pain)および腰椎円板脱出の発生に関連した重大な臨床的問題である。生物学的修復および再生を促進しながら、IVDの機械的および構造的機能を元に戻す有効な治療法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
部分的には、本発明は、少なくとも1個の重合可能な部分によって官能化されたコンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成る組成物を提供する。いくつかの実施形態において、組成物は、官能化コンドロイチン硫酸の少なくとも10個、または少なくとも100個、または少なくとも1000個またはそれ以上のモノマー単位を含んで成る。
【0007】
別の実施形態において、コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を、少なくとも1個の重合可能な部分に結合させる。重合可能な部分は、例えば、メタクリレート、エタクリレート、イタコネート、アクリルアミドおよびアルデヒドから選択し得る。コンドロイチン硫酸のモノマー単位は、このモノマー単位上の1個またはそれ以上のチオ、アルデヒドまたはカルボン酸成分によって官能化し得る。
【0008】
いくつかの実施形態において、式I、IIまたはIIIで示される本発明の組成物を提供する:
【0009】
【化3】
【0010】
ここで、Rは、アルケニルであり;R1は、アルデヒドまたはアルコールから独立して選択され、少なくとも1個のR1はアルデヒドである。いくつかの実施形態において、Rは、
【0011】
【化4】
【0012】
である。
【0013】
さらに、官能化コンドロイチン硫酸組成物は、生体適合性ポリマーの少なくとも1個のモノマー単位も含んで成ってよい。いくつかの実施形態において、生体適合性ポリマーは、ポリエチレングリコールポリマー、例えばアクリレート−ポリエチレン−アクリレートである。
【0014】
本開示はまた、架橋ポリマーマトリックスを含んで成る組成物を提供し、この架橋ポリマーマトリックスは、官能化コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成る。いくつかの実施形態において、コンドロイチン硫酸の1個またはそれ以上のモノマー単位が、アルケニル成分、例えばメタクリレートによって官能化されている。他の実施形態において、コンドロイチン硫酸の1個またはそれ以上のモノマー単位が、アルデヒド成分によって官能化されている。本発明の架橋ポリマーマトリックスは、ヒドロゲルであってもよい。
【0015】
本開示の組成物は、検出可能剤、例えば色素または蛍光剤、または生物学的に活性な物質、例えば軟骨細胞または間葉幹細胞をさらに含んで成ってよい。
【0016】
いくつかの実施形態において、本発明の架橋ポリマーマトリックスは、アミン成分を含んで成る生体適合性ポリマーまたは化合物、例えばアルブミンのようなタンパク質の、少なくとも1個のモノマー単位をさらに含んで成る。
【0017】
いくつかの実施形態において、架橋ポリマーマトリックスは、少なくとも約75wt%、少なくとも約50wt%、少なくとも約25wt%、または約25wt%未満の生体適合性ポリマーを含んで成る。
【0018】
官能化糖部分(例えば、コンドロイチン硫酸のモノマー単位)の生成方法がさらに提供され、この方法は以下の工程を包含する:少なくとも1個の糖単位を有する化合物、およびアルキレン部分、例えば、無水メタクリル酸、塩化アクリロイルまたはメタクリル酸グリシジルを有する化合物を含んで成る溶液を提供する工程;およびその溶液を少なくとも10日間攪拌する工程。いくつかの実施形態においては、溶液を少なくとも15日間攪拌することができる。溶液は、極性溶媒、例えば親水性溶媒を含み得る。
【0019】
架橋ポリマーマトリックスを含んで成る組成物の生成方法もまた提供され、この方法は以下の工程を包含する:官能化コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を有するポリマーを提供する工程:およびこのポリマーを少なくとも1つの重合開始剤に曝露し、それによって架橋マトリックスを生成する工程。重合開始剤は、電磁放射線、染色剤、熱開始剤、酸化還元開始剤および化学開始剤を包含する。
【0020】
架橋ポリマーマトリックスを含んで成る組成物のさらなる生成方法もまた提供され、この方法は以下の工程を包含する:少なくとも1個のアルデヒドで官能化したコンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成るポリマーを提供する工程;およびアミン部分を含んで成る化合物を提供する工程;それによって架橋マトリックスを生成する工程。
【0021】
修復を必要とする骨格関節(skeletal joint)において、平滑関節面を修復するさらなる方法もまた提供され、この方法は、官能化コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成る組成物を、関節における骨の関節面に投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、この方法は、関節面においてインサイチュで組成物を重合開始剤に曝露し、それによって架橋ポリマーを形成し、関節面を滑らかにコーティングすることをさらに包含し得る。
【0022】
組織サンプルにおける軟骨分解活性の存在を評価する方法もまた提供され、この方法は以下の工程を包含する:架橋ポリマーマトリックスおよび検出可能剤を含んで成る組成物を提供する工程;組織サンプルを提供する工程;組成物を組織サンプルに接触させる工程;および組成物からの検出可能剤の遊離を評価する工程。いくつかの実施形態において、組織サンプルは、骨格関節の1つまたはそれ以上の生検に由来し得る。他の実施形態において、生検は、関節軟骨または骨液を含む。
【0023】
別の実施形態において、患者の関節炎を診断する方法が提供され、この方法は以下の工程を包含する:コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成り、検出可能剤をその中に捕捉している、架橋ポリマーマトリックスを提供する工程;患者の骨格関節生検に由来する組織サンプルを提供する工程;ポリマーマトリックスを組織サンプルに接触させる工程;ポリマーマトリックスからの検出可能剤の遊離を評価する工程。そのような遊離は、患者における関節炎に関連した軟骨分解活性の存在を示し得る。
【0024】
なお別の実施形態において、フィルムで十分にコーティングした表面を有する固体支持体が提供され、このフィルムは、コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含有する架橋ポリマーマトリックスを含んで成る。いくつかの実施形態において、検出可能剤がフィルム内に捕捉される。
【0025】
本開示においてキットが提供され、このキットは、組織サンプルにおける軟骨分解活性の存在を評価するのに使用でき、このキットは、本発明の固体支持体、コンドロイチナーゼ活性に充分な溶液を生成する手段、および使用のための指示書を備える。いくつかの実施形態において、コンドロイチナーゼ活性に充分な溶液を生成する手段は、pH8.0に緩衝したTris−HCl溶液をその中に含有する容器を含む。
【0026】
別の実施形態において、必要とする患者において軟骨を再建する方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:官能化コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成る組成物を、患者の所望の軟骨形成部位に投与する工程。いくつかの実施形態において、組成物は、それに懸濁された生存可能な軟骨形成細胞をさらに含んで成る。この方法は、組成物をインサイチュで光照射し、それによって、その細胞をその中に捕捉しているコンドロイチン硫酸架橋マトリックスを形成することをさらに含んで成ってもよい。
【0027】
さらに、必要とする患者において軟骨を再建する第二の方法が提供され、この方法は、以下の工程を包含する:官能化コンドロイチン硫酸の少なくとも1個の単位を含んで成る架橋ポリマーマトリックスを提供する工程;およびポリマーマトリックスを、患者の再建必要部位に移植する工程。架橋ポリマーマトリックスは、その中に捕捉された軟骨細胞または間葉幹細胞のような細胞をさらに含んで成ってもよい。所望の軟骨形成部位は、骨格関節、または椎間円板、鼻または耳であってよい。
【0028】
なお別の実施形態において、必要とする患者において創傷を封鎖するかまたは充填する方法が提供され、この方法は、以下の工程を包含する:官能化コンドロイチン硫酸を含んで成る組成物を投与する工程。この方法は、アミン部分を含有する生体適合性ポリマーまたは化合物をさらに含んで成る組成物を使用し、それによって創傷を充填または封鎖する架橋マトリックスを形成することをさらに含んで成ってもよい。また、本発明は以下を提供する:
(項目1)
少なくとも1個の重合可能な部分によって官能化された、コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成る、組成物。
(項目2)
前記組成物が、コンドロイチン硫酸の少なくとも10個のモノマー単位を含んで成る、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記モノマー単位の少なくとも1個が、少なくとも1個の重合可能な部分に結合している、項目2に記載の組成物。
(項目4)
前記重合可能な部分が、メタクリレート、エタクリレート、イタコネート、アクリルアミドおよびアルデヒドから成る群から選択される、項目2に記載の組成物。
(項目5)
前記重合可能な部分がメタクリレートである、項目4に記載の組成物。
(項目6)
コンドロイチン硫酸の前記モノマー単位が、1個またはそれ以上のチオ、カルボン酸またはアルコール部分によって官能化されている、項目1に記載の組成物。
(項目7)
コンドロイチン硫酸の前記モノマー単位が、以下の式I、IIまたはIIIから選択される項目1に記載の組成物であって:
【化1】
ここで、Rはアルケニルであり、そしてR1はアルデヒドまたはアルコールから独立して選択され、少なくとも1個のR1はアルデヒドである、組成物。
(項目8)
Rが、以下:
【化2】
である、項目7に記載の組成物。
(項目9)
生体適合性ポリマーの少なくとも1個のモノマー単位をさらに含んで成る、項目1に記載の組成物。
(項目10)
前記生体適合性ポリマーがポリエチレングリコールである、項目9に記載の組成物。
(項目11)
前記生体適合性ポリマーがアクリレート−ポリエチレン−アクリレートである、項目9に記載の組成物。
(項目12)
架橋ポリマーマトリックスを含んで成る組成物であって、ここで、該架橋ポリマーマトリックスが、官能化コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成る、組成物。
(項目13)
コンドロイチン硫酸の前記モノマー単位が、アルケニル部分によって官能化されている、項目12に記載の組成物。
(項目14)
コンドロイチン硫酸の前記モノマー単位が、アルデヒド部分によって官能化されている、項目12に記載の組成物。
(項目15)
前記アルケニル部分がメタクリレートである、項目13に記載の組成物。
(項目16)
前記架橋ポリマーマトリックスがヒドロゲルである、項目12に記載の組成物。
(項目17)
検出可能剤をさらに含んで成る、項目12に記載の組成物。
(項目18)
生物学的に活性な物質をさらに含んで成る、項目12に記載の組成物。
(項目19)
前記検出可能剤が色素である、項目17に記載の組成物。
(項目20)
前記色素が蛍光物質である、項目19に記載の組成物。
(項目21)
前記生物学的に活性な物質が軟骨細胞である、項目18に記載の組成物。
(項目22)
前記生物学的に活性な物質が間葉幹細胞である、項目18に記載の組成物。
(項目23)
前記架橋ポリマーマトリックスが、生体適合性ポリマーの少なくとも1個のモノマー単位をさらに含んで成る、項目12に記載の組成物。
(項目24)
前記架橋ポリマーマトリックスが、アミン部分を含む化合物をさらに含んで成る、項目12に記載の組成物。
(項目25)
前記化合物がタンパク質である、項目24に記載の組成物。
(項目26)
前記化合物がアルブミンである、項目24に記載の組成物。
(項目27)
前記生体適合性ポリマーがポリ(エチレングリコール)である、項目23に記載の組成物。
(項目28)
前記架橋ポリマーマトリックスが、少なくとも約75重量%の前記生体適合性ポリマーを含んで成る、項目23に記載の組成物。
(項目29)
前記架橋ポリマーマトリックスが、少なくとも約50重量%の前記生体適合性ポリマーを含んで成る、項目23に記載の組成物。
(項目30)
前記架橋ポリマーマトリックスが、少なくとも約25重量%の前記生体適合性ポリマーを含んで成る、項目23に記載の組成物。
(項目31)
前記架橋ポリマーマトリックスが、25重量%未満の前記生体適合性ポリマーを含んで成る、項目23に記載の組成物。
(項目32)
官能化糖部分の生成方法であって、該方法は、以下:
a)少なくとも1個の糖単位を含む化合物、およびアルキレン部分を含む化合物を含んで成る溶液を提供する工程;および
b)該溶液を少なくとも10日間攪拌する工程、
を包含する、方法。
(項目33)
前記溶液を攪拌する工程が、少なくとも15日間を含む、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記溶液が極性溶媒を含んで成る、項目32に記載の方法。
(項目35)
前記極性溶媒が親水性である、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記少なくとも1個の糖単位が、コンドロイチン硫酸のモノマー単位である、項目32に記載の方法。
(項目37)
前記アルキレン部分が、無水メタクリル酸、塩化アクリロイルまたはメタクリル酸グリシジルから成る群から選択される、項目32に記載の方法。
(項目38)
架橋ポリマーマトリックスを含んで成る組成物の生成方法であって、該方法は、以下:
a)官能化コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成るポリマーを提供する工程;および
b)該ポリマーを少なくとも1つの重合開始剤に曝露し、それによって該架橋マトリックスを生成する工程、
を包含する、方法。
(項目39)
前記重合開始剤が、電磁放射線、染色剤、熱開始剤、酸化還元開始剤および化学開始剤から成る群から選択される、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記重合開始剤が電磁放射線である、項目38に記載の方法。
(項目41)
前記電磁放射線が約200〜約700nmである、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記ポリマーを第二の重合開始剤に曝露する工程をさらに包含する、項目40に記載の方法。
(項目43)
前記曝露する工程がインビボで行なわれる、項目38に記載の方法。
(項目44)
架橋ポリマーマトリックスを含んで成る組成物の作製方法であって、該方法は、以下:
a)少なくとも1個のアルデヒドで官能化された、コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成るポリマーを提供する工程;および
b)アミン部分を含有する化合物を提供し、それによって該架橋マトリックスを生成する工程、
を包含する、方法。
(項目45)
必要とする骨格関節に対して滑らかな関節面を回復する方法であって、官能化コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成る組成物を、該関節における骨の関節面に投与する工程を包含する、方法。
(項目46)
前記関節面において、前記組成物をインサイチュで重合開始剤に曝露し、それによって該関節面をコーティングする架橋ポリマーが形成される、工程をさらに包含する、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記重合開始剤が電磁放射線である、項目46に記載の方法。
(項目48)
組織サンプル中の、軟骨分解活性の存在を評価する方法であって、該方法は、以下:
a)架橋ポリマーマトリックスおよび検出可能剤を含んで成る組成物を提供する工程;
b)組織サンプルを提供する工程;
c)該組成物を該組織サンプルに接触させる工程;および
d)該組成物からの該検出可能剤の放出を評価する工程、
を包含する、方法。
(項目49)
前記組織サンプルが、骨格関節の生検に由来する、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記生検が関節軟骨を含む、項目49に記載の方法。
(項目51)
前記生検が滑液を含む、項目49に記載の方法。
(項目52)
患者において関節炎を診断する方法であって、該方法は、以下:
a)コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成り、捕捉された検出可能剤を有する架橋ポリマーマトリックスを提供する工程;
b)該患者の骨格関節生検に由来する組織サンプルを提供する工程;
c)該ポリマーマトリックスを該組織サンプルに接触させる工程;および
d)該ポリマーマトリックスからの該検出可能剤の放出を評価する工程、
を包含し、そのような放出が、該患者における関節炎に関連する軟骨分解活性の存在を示す、方法。
(項目53)
患者における関節炎の治療の有効性をモニタリングする方法であって、該方法は、以下:
a)関節炎について該患者を処置する前に、該患者から骨格関節組織の生検を得る工程;
b)工程(a)の生検に由来する組織サンプルを、項目48に記載の方法に従って軟骨分解活性の存在について評価する工程;
c)該患者に関節炎についての処置を行う工程;
d)関節炎についての該患者の処置後に、該患者から骨格関節組織の生検を得る工程;
e)工程(d)の生検に由来する組織サンプルを、項目48に記載の方法に従って軟骨分解活性の存在について評価する工程、
を包含し、ここで、工程(b)で得られた軟骨分解活性に対する軟骨分解活性における変化が、該処置の有効性と相関する、方法。
(項目54)
フィルムで十分にコーティングされた表面を備える固体支持体であって、該フィルムが、コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成る架橋ポリマーマトリックスを含む、固体支持体。
(項目55)
検出可能剤が前記フィルム内に捕捉されている、項目54に記載の固体支持体。
(項目56)
前記検出可能剤が色素である、項目54に記載の固体支持体。
(項目57)
前記色素が蛍光剤である、項目56に記載の固体支持体。
(項目58)
組織サンプルにおける軟骨分解活性の存在を評価するためのキットであって、項目54に記載の固体支持体、コンドロイチナーゼ活性に十分な溶液を生成する手段、および使用のための指示書を備える、キット。
(項目59)
コンドロイチナーゼ活性に十分な溶液を生成する前記手段が、pH8.0に緩衝化されたTris−HClの溶液を含有する容器を含む、項目58に記載のキット。
(項目60)
必要とする患者において、軟骨を再建するための方法であって、官能化コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成る組成物を、該患者における所望の軟骨形成部位に投与する工程を包含する、方法。
(項目61)
アミン部分を含む化合物を提供し、それによって、コンドロイチン硫酸架橋ポリマーマトリックスを形成する工程をさらに包含する、項目60に記載の方法。
(項目62)
前記組成物が、その中に懸濁した生存可能な軟骨形成細胞をさらに含んで成る、項目60に記載の方法。
(項目63)
前記組成物をインサイチュで光照射し、それによって、その中に捕捉された前記細胞を有するコンドロイチン硫酸架橋マトリックスを形成する工程をさらに包含する、項目60に記載の方法。
(項目64)
必要とする患者において、軟骨を再建する方法であって、該方法は、以下:
(a)光透過性容器を提供する工程であって、その内面が所望の軟骨部分の外形を規定する、工程;
(b)該容器に、懸濁された生存可能な軟骨形成細胞を有する官能化コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成る組成物を充填する工程;
(c)該充填した容器を光照射するか、またはアミン基を含む化合物を該容器にさらに添加し、それによって、捕捉された細胞を有するコンドロイチン硫酸架橋ポリマーマトリックスを形成する工程;
(d)該容器から該ポリマーマトリックスを取り出す工程;および
(e)該軟骨部分を必要とする部位において、該患者に該ポリマーマトリックスを移植し、その後、該細胞がインビボで軟骨性細胞外マトリックスを形成し、それによって該軟骨部分を形成する、工程、
を包含する、方法。
(項目65)
前記架橋ポリマーマトリックスが、その中に捕捉された細胞を含んで成る、項目64に記載の方法。
(項目66)
前記所望の軟骨形成部位が骨格関節である、項目60または64に記載の方法。
(項目67)
前記所望の軟骨形成部位が椎間円板である、項目60または64に記載の方法。
(項目68)
前記所望の軟骨形成部位が鼻である、項目60または64に記載の方法。
(項目69)
前記所望の軟骨形成部位が耳である、項目60または64に記載の方法。
(項目70)
前記細胞が軟骨細胞または間葉幹細胞である、項目62または64に記載の方法。
(項目71)
必要とする患者において、創傷を封鎖または充填する方法であって、官能化コンドロイチン硫酸を含んで成る組成物を投与する工程を包含する、方法。
(項目72)
前記組成物が、アミン部分を含む化合物をさらに含んで成り、それによって、前記創傷を充填または封鎖する架橋マトリックスを形成する、項目71に記載の方法。
(項目73)
該組成物が、アルブミンをさらに含んで成る、項目71に記載の方法。
(項目74)
創傷を封鎖するデバイスの非存在下で、前記組成物が、前記創傷部位を規定する組織面への付着を維持するのに十分な機械的強度を有する架橋ポリマーマトリックスを生成する、項目72に記載の方法。
(項目75)
前記組成物が、生体適合性ポリマーをさらに含んで成る、項目71に記載の方法。
(項目76)
前記創傷において、該組成物をインサイチュで光照射し、それによって、該創傷を架橋マトリックスで充填するかまたは封鎖する工程をさらに包含する、項目75に記載の方法。
(項目77)
創傷を充填する工程が、部分的にまたは完全に剥離した組織を再付着させる工程を包含する、項目71に記載の方法。
(項目78)
前記組成物が、生物学的に活性な物質をさらに含んで成る、項目71に記載の方法。
(項目79)
前記生物学的に活性な物質が、創傷治癒を促進する物質である、項目78に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、メタクリル化コンドロイチン硫酸(CS−MA)の合成経路を示す概略図である(陽子/炭素標識h*およびc*を含む)。
【図2】図2は、コンドロイチン硫酸の遊離メタクリレート結合を示す1H NMRスペクトルを示す線グラフである。上から下までの曲線は、それぞれ第1日、第3日、第5日、第7日、第10日および第15日を示す。
【図3】図3は、コンドロイチン硫酸の遊離メタクリレート結合を示す13C NMRスペクトルを示す線グラフである。第1日を上の表に示し、第15日を下の表に示す。
【図4】図4は、PEODMのパーセントの関数として変化するCS−MAの混合ゲル(cogels)の膨潤率を示す線グラフである。
【図5A】図5Aは、動的剪断弾性率|G*|の関数としてCS−MAおよびPEODAの混合ゲルの度数(frequency)を示す線グラフである。
【図5B】図5Bは、位相角δの関数としてCS−MAおよびPEODAの混合ゲルの度数を示す線グラフである。
【図6】図6は、CS−MAブロックの表面の走査電子顕微鏡写真画像(1200倍)を示す図である(バー=2μm)。
【図7】図7は、CS−MAおよびPEODAブロックの表面の走査電子顕微鏡写真画像(2400倍)を示す図である(バー=1μm)。
【図8】図8は、CS−MAの表面の走査電子顕微鏡写真画像を示す図であり、(A)は、CS−MAブロックの切り口(640倍)であり(バー=10μm);(B)は、PEODAブロックの切り口(6400倍)である(バー=1μm)。
【図9】図9は、A:コンドロイチナーゼ消化緩衝剤、およびB:コンドロイチナーゼ無添加における分解時間に伴う重量変化を示す、20%(w/v)CS−MAゲルの分解プロフィールを示す線グラフである。
【図10】図10は、種々の酵素濃度の消化緩衝溶液の光吸収における、分解時間に伴う変化を示す線グラフである(A:2.5g/mL、B:0.25g/mL、C:0.025g/mL、D:0.0025g/mLおよびE:コンドロイチナーゼ無添加)。
【図11】図11は、軟骨細胞の光捕捉から1日後の捕捉を示す画像である:(A)は、生存細胞および死亡細胞を視覚化する生存/死亡アッセイであり(原画倍率10x);(B)ミトコンドリア代謝活性を有する細胞のMTT染色(黒色)である(原画倍率10x)。
【図12】図12は、遊離のメタクリレート結合体の置換効率についての反応速度曲線を示す線グラフである:(A)は、総置換効率および開環およびエステル交換による寄与を示し;(B)は、2つの開環生成物(2および3)によるそれぞれの寄与を示す。
【図13】図13は、アルデヒドで官能化したコンドロイチン硫酸の1つの合成経路、およびアルブミンを使用した架橋ポリマーマトリックスの形成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(発明の詳細な説明)
(1.概要)
本発明は、少なくとも部分的に、架橋ポリマー、マトリックスおよびゲル、ならびに架橋マトリックス、ポリマーおよびゲルの生成方法および使用方法に関する。そのような架橋ポリマーは、官能化した糖を含んで成る。
【0031】
例えば、本発明は、官能化コンドロイチン硫酸を提供する。官能化コンドロイチン硫酸は、架橋ポリマーマトリックスから生成でき、それは、例えば骨格関節における、軟骨再建、および創傷の封鎖または充填などに有用である。官能化多糖を含有する架橋ポリマーマトリックスは、軟骨分解活性の存在の検出に使用するのにも有用である。
【0032】
(2.定義)
便宜上、本発明をさらに説明する前に、明細書、実施例および請求の範囲に使用されるいくつかの用語をここに集めた。これらの定義は、開示の他の部分に照らして理解され、当業者に理解されるものである。他に定義されなければ、本明細書に使用される全ての専門用語および科学用語は、当業者に一般に理解されているのと同じ意味を有するものとする。
【0033】
冠詞「a」および「an」は、1つまたは1つより多くの(即ち、少なくとも1つ)の冠詞の文法的対象物を意味する。例えば「an element」は、1つの要素または1つより多くの要素を意味する。
【0034】
「含んで成る」および「含んで成っている」という語句は、包括的な広い意味で使用され、付加的要素も含有し得ることを意味する。
【0035】
「包含する」という語句は、「包含するが、それらに限定されない」ことを意味する「包含する」および「包含するが、それらに限定されない」は、互換的に使用される。
【0036】
「関節面」という用語は、関節における2つの骨の間の軟骨の、表面および円板を意味する。本明細書において「関節面」と言う場合、健康な関節において、2つの骨の上の2つの軟骨コーティング面が、関節を曲げたり伸ばしたりする際に、互いに接触しながら、擦れ合い、滑動し、回転し、またはそれ以外の動きをすることを意味する。そのような2つの面の、この種の可動性相互作用は関節と称され、そのような動きの際に互いに接触し押し合う2つの軟骨コーティング面は「関節をなしている」と言われる。2つの骨の間の軟骨の円板は、「関節軟骨」と呼ばれる。
【0037】
「活性物質」および「生物学的に活性な物質」は、本明細書において互換的に使用され、所望の薬理学的、生理学的作用を有する化学的または生物学的化合物を意味し、その作用は予防的または治療的であってよい。この用語は、本明細書に特に記載されている活性物質の、薬学的に受容可能であり薬理学的に活性な誘導体も包含し、この誘導体は、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝産物、類似体等を包含するがそれらに限定されない。「活性物質」、「薬理学的活性物質」および「薬剤」という用語が使用されている場合、出願人は、活性剤そのもの、ならびに薬学的に受容可能であり薬理学的に活性な塩、エステル、アミド、プロドラッグ、代謝産物、類似体等を包含することを意図するものと理解される。
【0038】
ポリマーに関して使用される「生体適合性ポリマー」、「生体適合性架橋ポリマーマトリックス」および「生体適合性」という用語は、当分野において認識されている。例えば、生体適合性ポリマーは、宿主(例えば、動物またはヒト)にそれ自体で毒性でなく、宿主においてモノマーまたはオリゴマーサブユニットまたは他の副生物を毒性濃度で生じる速度で分解しない(ポリマーが分解する場合)ポリマーを包含する。本発明の特定の実施形態において、生分解は、生体における、例えば事実上非毒性であることが公知のモノマーサブユニットへの、ポリマーの分解を一般に含む。しかし、そのような分解から生じた中間体オリゴマー生成物は、種々の毒物学的特性を有し得るか、または生分解は、ポリマーのモノマーサブユニット以外の分子を生じる酸化または他の生化学的反応を含み得る。従って、特定の実施形態において、患者への移植または注入のような生体内使用を目的とした生分解性ポリマーの毒性を、1つまたはそれ以上の毒性分析後に決定し得る。いずれの本発明の組成物も、生体適合性とみなされるために100%の純度を有する必要はなく、実際には、本発明の組成物が上記のような生体適合性であるだけでよい。従って、本発明の組成物は、99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、80%、75%またはそれ以下の生体適合性ポリマーを含有するポリマー(例えば、本明細書に記載されているポリマーおよび他の物質および賦形剤を包含する)を含んで成ってよく、それでもなお生体適合性である。
【0039】
ポリマーまたは他の物質が生体適合性であるかどうかを決定するために、毒性分析を行なうことが必要な場合がある。そのような分析は当分野でよく知られている。そのような分析の1つの例は、GT3TKB腫瘍細胞のような生きた癌細胞を使用して以下のように行なえる:サンプルを、37℃にて1M NaOH中で、完全な分解が観察されるまで分解させる。次に、溶液を1M HClで中和する。種々の濃度の分解サンプル生成物約200μLを、96穴組織培養皿に入れ、ヒト癌細胞(GT3TKB)を104/穴の密度で接種する。分解サンプル生成物をGT3TKB細胞と共に48時間培養する。分析の結果を、組織培養穴中の分解サンプルの濃度に対する相対増殖%としてプロットし得る。さらに、本発明のポリマー、ポリマーマトリックスおよび配合物を、よく知られている生体内試験、例えば、皮下移植部位において有意なレベルの刺激または炎症が生じないことを確認するラットにおける皮下移植によっても評価し得る。
【0040】
「生分解性」という用語は、当分野で認識されており、使用中に分解することを意図した、本明細書に記載のようなポリマー、ポリマーマトリックス、ゲル、組成物および配合物を包含する。生分解性ポリマーおよびマリックスは、一般に、それらが使用中に分解し得るという点で非生分解性ポリマーと異なる。特定の実施形態において、そのような使用は、生体内治療のような生体内使用を含み、他の特定の実施形態において、そのような使用は生体外使用を含む。一般に、生分解性に起因する分解は、生分解性ポリマーのその部分サブユニットへの分解、または、例えば生化学過程による、ポリマーのより小さい非高分子サブユニットへの消化を含む。特定の実施形態において、2つの異なるタイプの生分解を一般に同定し得る。例えば、1つのタイプの生分解は、ポリマー主鎖における結合(共有結合またはその他の結合)の開裂を含む。そのような生分解において、モノマーおよびオリゴマーが一般に生成され、より一般的には、そのような生分解が、ポリマーの1つまたはそれ以上のサブユニットを連結する結合の開裂によって起こる。これに対して、もう1つのタイプの生分解は、側鎖の内部の結合または側鎖をポリマー主鎖につなぐ結合(共有結合またはその他の結合)の開裂を含む。例えば、ポリマー主鎖に側鎖として結合している治療薬、生物学的に活性な物質または他の化学成分を、生分解によって遊離し得る。特定の実施形態において、1つのまたは他方のまたは両方の一般的なタイプの生分解が、ポリマーの使用中に起こり得る。本明細書において使用される「生分解」という用語は、両方の一般的なタイプの生分解を包含する。
【0041】
生分解性ポリマーの分解速度は、いずれかの分解に関与する結合の化学特性、そのようなポリマーの分子量、結晶度、生物安定性および架橋度、インプラントの物理的特性、形および大きさ、ならびに投与の方法および部位を包含する種々の要因に部分的に依存する場合が多い。例えば、分子量が大きく、結晶度が高く、そして/または生物安定性が高いほど、どのような生分解性ポリマーの生分解も一般により遅くなる。「生分解性」という用語は、「生物侵食性」とも称される物質および方法を包含するものとする。
【0042】
特定の実施形態において、そのようなポリマーの生分解速度は、酵素、例えばコンドロイチナーゼの存在によって特徴付けられる。そのような場合、生分解速度は、ポリマーマトリックスの化学特性および物理的性質だけでなく、そのような酵素の特性にも依存し得る。
【0043】
特定の実施形態において、本発明のポリマー配合物は、所望の適用に許容される期間内に生分解する。生体内治療のような特定の実施形態において、そのような分解は、pH6〜8、温度約25〜37℃の生理溶液への曝露において、一般に、約5年、1年、6ヶ月、3ヶ月、1ヶ月、15日、5日、3日、または1日以内に起こる。他の実施形態において、所望の適用に依存して、ポリマーは約1時間〜数週間で分解する。いくつかの実施形態において、ポリマーまたはポリマーマトリックスは、分解時に遊離される検出可能剤を含有し得る。
【0044】
「軟骨分解活性」という用語は、軟骨の分解を生じ得る物質の活性または存在、例えば分解酵素の活性または存在、または軟骨における小線維化、侵食またはひび割れの存在を意味する。
【0045】
「軟骨形成細胞」という用語は、軟骨を形成するか、または軟骨の形成を促進する細胞を包含する。そのような細胞は、軟骨細胞および間葉幹細胞を包含する。
【0046】
本明細書における「架橋」という用語は、分子間架橋および任意に分子内架橋を有し、共有結合の形成によって生じる組成物を意味する。2つの架橋性成分間の共有結合は、直接的である場合もあり(その場合、1つの成分中の原子が、他の成分中の原子に直接的に結合している)、または結合基を介して間接的である場合もある。架橋ゲルまたはポリマーマトリックスは、共有結合に加えて、水素結合および静電(イオン)結合のような分子間および/または分子内非共有結合も含有し得る。「架橋性」という用語は、架橋結合組成物を形成する反応を受けることができる成分または化合物を意味する。
【0047】
本明細書において使用される「電磁放射線」は、波長10−20〜10mを有する放射線を包含するがそれに限定されない。本発明の電磁放射線の特定の実施形態は、以下の電磁放射線を使用する:γ線(10−20〜10−13m)、X線(10−11〜10−9m)、紫外線(10nm〜400nm)、可視光線(400nm〜700nm)、赤外線(700nm〜1.0mm)、およびマイクロ波(1mm〜30cm)。
【0048】
「官能化」という用語は、他の官能基(例えば、スルフヒドリル基)との反応を受けて共有結合を形成することができる新たな反応性官能基(例えば、アクリレート基)を生成するかまたは導入するために、存在する分子セグメントを修飾することを意味する。例えば、ここでも公知の方法を使用して、カルボン酸基を、ハロゲン化アシル、例えば塩化アシルとの反応によって官能化して、無水物の形態の新たな反応性官能基を得ることができる。
【0049】
「ゲル」という用語は、液体と固体の中間の物質状態を意味し、液体媒質中で膨潤した架橋ポリマー網状構造であると一般に定義される。一般に、ゲルは、液体および固体の両方を含有する2相コロイド分散系であり、固体の量は、「ゾル」と称される2相コロイド分散系におけるより多い。従って、「ゲル」は、いくらかの液体特性(即ち、形が弾性かつ変形性である)、およびいくらかの固体特性(即ち、形が、二次元面において3つの寸法を維持するのに充分な分離性である)を有する。「ゲル時間」とも称される「ゲル化時間」は、組成物が、適度の応力下に非流動性になるのに要する時間を意味する。これは、弾性率G’が粘弾性率G’’に等しいかまたはそれを越える物理的状態に達した際、即ち、tan(δ)が1になる際(一般的な流動学的方法を使用して測定し得る)に一般に示される。
【0050】
「ヒドロゲル」という用語は、実質量の水を吸収して弾性ゲルを形成することができる水膨潤性ポリマーマトリックスを意味し、「マトリックス」は、共有または非共有架橋によって保持された高分子の三次元網状構造である。水性環境に置いた際に、乾燥ヒドロゲルは、架橋度によって許される程度に膨潤する。
【0051】
「指示資料」または「指示書」は、治療法における本明細書に開示した組成物の有用性、または本発明の組成物の生成方法または使用方法を伝えるために使用し得る、発行物、記録物、図表または他のあらゆる表現媒体を包含する。指示資料は、例えば、組成物を含有する容器に貼るか、または組成物を含有する容器と一緒に輸送するか、または組成物と共にキットに含有させる。または、受取人によって指示資料および組成物が共に使用されることを意図して、指示資料を容器と別に輸送してもよい。
【0052】
「ポリマー」という用語は、反復モノマー単位から構成される分子を意味し、ホモポリマー、ブロックコポリマー、ランダムコポリマーおよびグラフトコポリマーを包含する。「ポリマー」は、線状ポリマーならびに枝分れポリマーも包含し、枝分れポリマーは、高枝分れ、樹枝状および星状ポリマーを包含する。
【0053】
「重合開始剤」は、遊離基生成によってモノマーまたはマクロマー(macromers)の重合を開始させることができるあらゆる物質または刺激を意味する。例示的重合開始剤は、電磁放射線、熱および化学化合物を包含する。
【0054】
本明細書において使用される「糖類」という用語は、単糖類、ニ糖類、三糖類、またはより高いオーダーの糖類または寡糖類を意味する。代表的な単糖類は、グルコース、マンノース、ガラクトース、グルコサミン、マンノサミン、ガラクトサミン、フルクトース、グリセルアルデヒド、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルオース、イドース、タロース、プシコース、ソルボースおよびタガトースを包含する。例示的ニ糖類は、マルトース、ラクトース、スクロース、セロビオース、トレハロース、イソマルトース、ゲンチオビオース、メリビオース、ラミナリビオース、キトビオース、キシロビオース、マンノビオース、ソフォロース等を包含する。特定の三糖類およびそれ以上の寡糖類は、ラフィノース、マルトトリオース、イソマルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マンノトリオース、マンニノトリオース等を包含する。例示的多糖類は、デンプン、ナトリウムデンプングリコレート、アルギン酸、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、カラゲナン、キトサン、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ヒアルロン酸およびペクチン酸を包含する。
【0055】
本明細書に使用される「糖単位」は、少なくとも1個のピラノースまたはフラノース環を有する糖分子を意味する。いくつかの実施形態において、ヒドロキシル基をエステル化する際に、糖単位のヒドロキシル基から少なくとも1個の水素原子を除去し得る。
【0056】
「検出可能剤」という用語は、診断目的で使用し得る薬剤を包含する。そのような診断薬の例は、検出可能な画像を生じることができる画像化剤を包含する。そのような画像化剤は、色素、放射性核種およびそれらを含有する化合物(例えば、トリチウム、ヨウ素125、ヨウ素131、ヨウ素123、ヨウ素124、アスタチン210、炭素11、炭素14、窒素13、フッ素18、Tc−99m、Re−186、Ga−68、Re−188、Y−90、Sm−153、Bi−212、Cu−67、Cu−64およびCu−62)、不対スピン原子および遊離基(例えば、Fe、ランタニドおよびGd)、造影剤(例えば、キレート化(DTPA)マンガン)、および蛍光または化学発光剤を包含する。
【0057】
「処置する」または「処置」という用語は、当分野で認識されており、何らかの状態または疾患の少なくとも1つの状態の治療ならびに改善を包含する。処置とは、疾患、障害または状態が、動物(その疾患、障害および/または状態になりやすいが、まだそれを有すると診断されていない動物)において生じることを予防し;疾患、障害または状態を抑制し、例えばその進行を遅らせ;そして、疾患、障害または状態を軽減し、例えば、疾患、障害および/または状態の後退を生じさせることを包含する。さらに、疾患または状態の処置は、たとえ根元的な病態生理が影響を受けなくても、特定の疾患または状態の少なくとも1つの症状を改善することを包含する。
【0058】
本明細書において、粘性は、当分野において認識されているように、変形を受けた際の、流体の内部摩擦または流体物質によって示される流れに対する抵抗であるものと理解される。ポリマーの粘度は、ポリマーの分子量によって、ならびにポリマー主鎖の種々の異性体を混合することによって、調節することができ;特定ポリマーの物理的性質を変化させる他の方法は、日常試験を行なうだけで当業者に明らかである。本発明の組成物に使用されるポリマーの分子量は、硬質固体状態(一般に、より高い分子量)が所望されるか、または流体状態(一般に、より低い分子量)が所望されるかに依存して、広い範囲で変化することができる。
【0059】
「薬学的に受容可能な塩」という用語は、当分野で認識されており、限定されないが治療薬、賦形剤、他の物質等を含有する本発明の組成物の、相対的に非毒性の無機および有機酸付加塩を包含する。薬学的に受容可能な塩の例は、塩酸および硫酸のような無機酸から誘導される塩、およびエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のような有機酸から誘導される塩を包含する。塩の生成に好適な無機塩基の例は、アンモニア、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛等の水酸化物、炭酸塩および重炭酸塩を包含する。塩は、非毒性かつそのような塩の生成に充分に強い有機塩基を包含する好適な有機塩基を使用して、生成することもできる。例えば、そのような有機塩基の種類は以下のものを包含する:モノ−、ジ−およびトリアルキルアミン、例えば、メチルアミン、ジメチルアミンおよびトリエチルアミン;モノ−、ジ−またはトリヒドロキシアルキルアミン、例えば、モノ−、ジ−およびトリエタノールアミン;アミノ酸、例えば、アルギニンおよびリシン;グアニジン;N−メチルグルコサミン;N−メチルグルカミン;L−グルタミン;N−メチルピペラジン;モルホリン;エチレンジアミン;N−ベンジルフェネチルアミン;(トリヒドロキシメチル)アミノエタン等(例えば、J.Pharm.Sci.,66:1−19(1977)参照)。
【0060】
本発明の方法によって処置される「患者」、「対象」または「宿主」という用語は、ヒトまたは非ヒト、例えば、霊長類、哺乳類および脊椎動物を意味し得る。
【0061】
「予防的」または「治療的」処置は、当分野で認識されており、1つまたはそれ以上の本発明の組成物を宿主に投与することを包含する。好ましくない状態(宿主動物の疾患または他の好ましくない状態)の臨床的出現の前に投与する場合、その処置は予防的であり、即ち、好ましくない状態の発生から宿主を保護するものであり、好ましくない状態の出現後に投与する場合、その処置は治療的である(即ち、存在する好ましくない状態またはその副作用を減少させるか、改善するか、または安定化することを意図している)。
【0062】
「滑液」という用語は、関節の骨膜によって生産される液体を意味する。滑液は潤滑油として機能する。
【0063】
治療薬、色素、または他の物質および高分子組成物、例えば本発明の組成物に関して使用される「組み込まれた」、「封入された」および「捕捉された」という用語は、当分野で認識されている。特定の実施形態において、これらの用語は、所望の適用においてそのような物質の持続的放出を可能にする組成物への、そのような物質の組み込み、配合またはその他の含有を包含する。これらの用語は、治療薬または他の物質をポリマーマトリックスに組み込むあらゆる方法を包含し、そのような方法は、例えば以下の方法を包含する:そのようなポリマーのモノマーに結合させ(共有結合または他の結合相互作用による)、そのようなモノマーを重合の一部にして高分子配合物を得る;ポリマーマトリックスに分散させる;ポリマーマトリックスの表面に付加する(共有結合または他の結合相互作用による);ポリマーマトリックスに封入する等。「共組み込み」または「共封入」という用語は、治療薬または他の物質および少なくとも1つの他の治療薬または他の物質を、本発明の組成物に組み込むことを意味する。
【0064】
より具体的に言えば、いずれかの治療薬または他の物質をポリマーに封入した物理的形態は、特定の実施形態と共に変化し得る。例えば、治療薬または他の物質を微小球に先ず封入し、次に、微小球構造の少なくとも一部が維持されるようにポリマーと合わし得る。または、治療薬または他の物質が本発明のポリマー中で充分に不混和性であり、それによって、ポリマー中に、溶解せずに小滴として分散し得る。ある封入された治療薬または他の物質の持続放出が、その封入形態がある特定使用に充分に許容されるかどうかを決める限りにおいて、あらゆる形態の封入または組み込みが本発明によって考えられる。
【0065】
「創傷封鎖デバイス」は、創傷の封鎖または充填を補助するデバイスおよび物質、例えば、縫合糸、ステープル、シーラント、およびグルーまたは接着剤を包含する。
【0066】
「脂肪族」という用語は、当分野で認識されており、直鎖、分岐鎖および環状アルカン、アルケンまたはアルキンを包含する。特定の実施形態において、本発明の脂肪族基は、直鎖または分岐鎖であり、1〜約20個の炭素原子を有する。
【0067】
「アルキル」という用語は、当分野で認識されており、飽和脂肪族基を意味し、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキル(非環式)基、アルキル置換シクロルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基を包含する。特定の実施形態において、直鎖または分岐鎖アルキルは、その主鎖に約30個またはそれ以下の炭素原子を有する(例えば、直鎖についてはC1〜C30、分岐鎖についてはC3〜C30)か、または約20個またはそれ以下の炭素原子を有する。同様に、シクロアルキルは、その環構造に、約3〜約10個の炭素原子、または約5、6または7個の炭素原子を有する。
【0068】
さらに、「アルキル」(または「低級アルキル」)という用語は、「非置換アルキル」および「置換アルキル」の両方を包含し、後者は、炭化水素主鎖の1個またはそれ以上の炭素上の水素と置き換わった置換基を有するアルキル成分を意味する。そのような置換基は、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(例えば、カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミルまたはアシル)、チオカルボニル(例えば、チオエステル、チオアセテートまたはチオホフメート)、アルコキシル、ホスホリル、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、芳香族または複素芳香族成分を包含し得る。炭化水素鎖上で置換された成分は、適切であれば、それ自体置換されていてよいことは当業者に理解される。例えば、置換アルキルの置換基は、置換または非置換形態の、アミノ、アジド、イミノ、アミド、ホスホリル(ホスホネートおよびホスフィネートを包含する)、スルホニル(スルフェート、スルホンアミド、スルファモイルおよびスルホネートを包含する)およびシリル基、ならびにエーテル、アルキルチオ、カルボニル(ケトン、アルデヒド、カルボキシレートおよびエステルを包含する)、−CF3、−CN等を包含し得る。例示的置換アルキルを以下に記載する。シクロアルキルは、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキルチオ、アミノアルキル、カルボニル置換アルキル、−CF3、−CN等によってさらに置換されていてよい。
【0069】
「アラルキル」という用語は、当分野で認識されており、アリール基(例えば、芳香族基または複素芳香族基)で置換されたアルキル基を包含する。
【0070】
「アルケニル」および「アルキニル」という用語は、当分野で認識されており、長さおよび可能な置換において上記のアルキルと類似しているが、少なくとも1個の二重結合または三重結合をそれぞれ含有する不飽和脂肪族基を包含する。
【0071】
炭素の数が特に指定されていなければ、「低級アルキル」は、1〜10個の炭素原子、または1個〜約6個の炭素原子をその主鎖構造に有する上記のように定義されるアルキルを意味する。同様に、「低級アルケニル」および「低級アルキニル」も、同様の鎖長を有する。
【0072】
「メタクリレート」は、ビニルカルボキシレート、例えば、酸水素が置換されているメタクリル酸を意味する。代表的なメタクリル酸は、アクリル酸、メタクリル酸、α−クロロアクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−エチルアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、および上記ジカルボン酸の半エステルを包含する。
【0073】
「ヘテロ原子」という用語は、当分野で認識されており、炭素または水素以外のあらゆる元素の原子を包含する。例示的へテロ原子は、硼素、窒素、酸素、燐、硫黄およびセレンを包含するか、または酸素、窒素または硫黄を包含する。
【0074】
「アリール」という用語は、当分野で認識されており、0〜4個のヘテロ原子を含有し得る5、6および7員の単環式芳香族基、例えば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジン等を包含する。環構造にヘテロ原子を有するアリール基は、「アリール複素環」または「複素芳香族炭化水素」とも称し得る。芳香環は、1つまたはそれ以上の環位置において、上記のような置換基、例えば、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族または複素芳香族成分、−CF3、−CN等によって、置換されていてよい。「アリール」という用語は、2個またはそれ以上の環を有する多環系も包含し、2個またはそれ以上の炭素が2個の隣接する環に共有されており(その環は「縮合環」である)、この多環系において、少なくとも1個の環が芳香族であり、例えば、他の環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/またはヘテロシクリルであってよい。
【0075】
オルト、メタおよびパラという用語は、当分野で認識されており、1,2−、1,3−および1,4−二置換ベンゼンにそれぞれ適用される。例えば、1,2−ジメチルベンゼンおよびオルト−ジメチルベンゼンの名称は同義である。
【0076】
「ヘテロシクリル」および「複素環式基」という用語は、当分野で認識されており、1〜4個のヘテロ原子を含有する3〜約10員の環構造、例えば3〜約7員の環を包含する。複素環は、多環であってもよい。ヘテロシクリル基は、例えば、チオフェン、チアントレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサチイン(phenoxathiin)、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ピリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナルサジン、フェノチアジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、オキソラン、チオラン、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ラクトン、ラクタム、例えばアゼチジノンおよびピロリジノン、スルタム、スルトン等を包含する。複素環は、1つまたはそれ以上の位置において、上記のような置換基、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族または複素芳香族成分、−CF3、−CN等によって置換されていてよい。
【0077】
「ポリシクリル」および「多環式基」という用語は、当分野で認識されており、2個またはそれ以上の環(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/またはヘテロシクリル)を有する構造を意味し、例えば、2個またはそれ以上の炭素が2個の隣接する環に共有されている場合、その環は「縮合環」である。非隣接原子を介して結合し、例えば、3個またはそれ以上の原子が両方の環に共有されている環は、「架橋」環と称される。多環の各環は、上記のような置換基、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族または複素芳香族成分、−CF3、−CN等によって置換されていてよい。
【0078】
「炭素環」という用語は、当分野で認識されており、環の各原子が炭素である芳香環または非芳香環を包含する。当分野で認識されている以下の用語は、以下の意味を有する:「ニトロ」は−NO2を意味し;「ハロゲン」は−F、−Cl、−Brまたは−Iを意味し;「スルフヒドリル」は−SHを意味し;「ヒドロキシル」は−OHを意味し;「スルホニル」は−SO2−を意味する。
【0079】
「アミン」および「アミノ」という用語は、当分野で認識されており、非置換および置換アミンの両方、例えば、以下の一般式で示し得る成分を包含する:
【0080】
【化5】
【0081】
ここで、R50、R51およびR52は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、−(CH2)m−R61を表し、またはR50およびR51は、それらが結合しているN原子と一緒になって、環構造中に4〜8個の原子を有する複素環を形成し;R61は、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環または多環を表し;mは、0、または1〜8の整数である。
特定の実施形態において、R50またはR51の1つだけがカルボニルであってよく、例えば、R50、R51および窒素が一緒になってイミドを形成しない。他の実施形態において、R50およびR51(および任意にR52)は、それぞれ独立に、水素、アルキル、アルケニル、または−(CH2)m−R61を表す。従って、「アルキルアミン」という用語は、置換または非置換アルキルが結合した上記に定義したアミン基を意味し、即ち、R50およびR51の少なくとも1つがアルキル基である。
【0082】
「アシルアミノ」という用語は、当分野で認識されており、以下の一般式で示し得る成分を包含する:
【0083】
【化6】
【0084】
ここで、R50は上記のように定義され;R54は、水素、アルキル、アルケニルまたは−(CH2)m−R61を表し;mおよびR61は上記のように定義される。
【0085】
「アミド」という用語は、アミノ置換カルボニルとして当分野で認識されており、以下の式で示し得る成分を包含する:
【0086】
【化7】
【0087】
ここで、R50およびR51は上記のように定義される。
本発明におけるアミドの特定の実施形態は、不安定と考えられるイミドを包含しない。
【0088】
「アルキルチオ」という用語は、当分野で認識されており、硫黄基が結合した上記のように定義されるアルキル基を包含する。特定の実施形態において、「アルキルチオ」成分は、−S−アルキル、−S−アルケニル、−S−アルキニルおよび−S−(CH2)m−R61の1つによって示され、mおよびR61は上記のように定義される。代表的なアルキルチオ基は、メチルチオ、エチルチオ等を包含する。
【0089】
「カルボニル」という用語は、当分野で認識されており、以下の一般式で示し得る成分を包含する:
【0090】
【化8】
【0091】
ここで、X50は、結合であるか、または酸素または硫黄を表し;R55は、水素、アルキル、アルケニル、−(CH2)m−R61または薬学的に受容可能な塩を表し;R56は、水素、アルキル、アルケニルまたは−(CH2)m−R61を表し;mおよびR61は上記のように定義される。X50が酸素であり、R55またはR56が水素でないとき、その式は「エステル」を表す。X50が酸素であり、R55が上記のように定義されるとき、その成分は本明細書においてカルボキシル基と称され、特に、R55が水素であるとき、その式は「カルボン酸」を表す。X50が酸素であり、R56が水素であるとき、その式は「ホルメート」を表す。一般に、上記の式の酸素原子が硫黄で置き換えられているとき、その式は「チオカルボニル」基を表す。X50が硫黄であり、R55またはR56が水素でないとき、その式は「チオエステル」を表す。X50が硫黄であり、R55が水素であるとき、その式は「チオカルボン酸」を表す。X50が硫黄であり、R56が水素であるとき、その式は「チオホルメート」を表す。一方、X50が結合であり、R55が水素でないとき、上記の式は「ケトン」基を表す。Xが結合であり、R55が水素であるとき、上記の式は「アルデヒド」基を表す。
【0092】
「アルコキシル」または「アルコキシ」という用語は、当分野で認識されており、酸素基が結合している上記のように定義されるアルキル基を包含する。代表的なアルコキシル基は、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、tert−ブトキシ等を包含する。「エーテル」は、酸素によって共有結合している2個の炭化水素である。従って、そのアルキルをエーテルにするアルキルの置換基は、アルコキシルであるかまたはそれに類似し、例えば、−O−アルキル、−O−アルケニル、−O−アルキニル、−O−(CH2)m−R61(mおよびR61は上記のように定義される)の1つによって示し得る。
【0093】
「スルホネート」という用語は、当分野で認識されており、以下の一般式によって示し得る成分を包含する:
【0094】
【化9】
【0095】
ここで、R57は、電子対、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールである。
【0096】
「スルフェート」という用語は、当分野で認識されており、以下の一般式で示し得る成分を包含する:
【0097】
【化10】
【0098】
ここで、R57は上記のように定義される。
【0099】
「スルホンアミド」という用語は、当分野で認識されており、以下の一般式で示し得る成分を包含する:
【0100】
【化11】
【0101】
ここで、R50およびR56は上記のように定義される。
【0102】
「スルファモイル」という用語は、当分野で認識されており、以下の一般式で示し得る成分を包含する:
【0103】
【化12】
【0104】
ここで、R50およびR51は上記のように定義される。
【0105】
「スルホニル」という用語は、当分野で認識されており、以下の一般式で示し得る成分を包含する:
【0106】
【化13】
【0107】
ここで、R58は以下のうちの1つである:水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリール。
【0108】
「スルホキシド」という用語は、当分野で認識されており、以下の一般式で示し得る成分を包含する:
【0109】
【化14】
【0110】
ここで、R58は上記のように定義される。
【0111】
「ホスホロアミダイト」という用語は、当該分野で認識されており、以下の一般式で示される成分を包含する:
【0112】
【化15】
【0113】
ここで、Q51、R50、R51およびR59は上記のように定義される。
【0114】
「ホスホンアミダイト」という用語は、当分野で認識されており、以下の一般式で示される成分を包含する:
【0115】
【化16】
【0116】
ここで、Q51、R50、R51およびR59は上記のように定義され、R60は低級アルキルまたはアリールを表す。
【0117】
類似の置換を、アルケニル基およびアルキニル基に行なって、例えば、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アミドアルケニル、アミドアルキニル、イミノアルケニル、イミノアルキニル、チオアルケニル、チオアルキニル、カルボニル置換アルケニルまたはアルキニルを生成し得る。
【0118】
各語句の定義、例えば、アルキル、m、nなどが、ある構造中に2度以上存在する場合、明確にまたは文脈によって特に指定されなければ、同じ構造中の他の位置におけるその定義から独立しているものとする。
【0119】
「セレノアルキル」という用語は、当分野で認識されており、置換セレノ基が結合しているアルキル基を包含する。アルキル上で置換されていてよい例示的「セレノエーテル」は、−Se−アルキル−、−Se−アルケニル、−Se−アルキニル、および−Se−(CH2)m−R61から選択され、mおよびR61は上記のように定義される。
【0120】
トリフリル、トシル、メシルおよびノナフリルという用語は、当分野で認識されており、トリフルオロメタンスルホニル、p−トルエンスルホニル、メタンスルホニル、およびノナフルオロブタンスルホニルをそれぞれ意味する。トリフレート、トシレート、メシレートおよびノナフレートという用語は、当分野で認識されており、トリフルオロメタンスルホン酸エステル、p−トルエンスルホン酸エステル、メタンスルホン酸エステル、およびノナフルオロブタンスルホン酸エステル官能基、およびこの基を含有する分子をそれぞれ意味する。
【0121】
略語Me、Et、Ph、Tf、Nf、TsおよびMsは、当分野で認識されており、メチル、エチル、フェニル、トリフルオロメタンスルホニル、ノナフルオロブタンスルホニル、p−トルエンスルホニルおよびメタンスルホニルをそれぞれ表す。一般的な有機化学者によって使用されるより包括的な略語リストが、Journal of Organic Chemistryの各巻の第1版に見られる;このリストは、Standard List of Abbreviationsと題する表に一般に示されている。
【0122】
本発明の特定のモノマーサブユニットは、特定の幾何学的形態または立体異性体形態で存在し得る。さらに、本発明のポリマーおよび他の組成物は、光学的に活性であってもよい。本発明は、シス−およびトランス−異性体、R−およびS−エナンチオマー、ジアステレオマー、(d)−異性体、(l)−異性体、それらのラセミ混合物、およびそれらの他の混合物を包含する全てのそのような化合物を、本発明の範囲に含まれるものとして包含する。付加的不斉炭素原子が、アルキル基のような置換基に存在し得る。全てのそのような異性体ならびにそれらの混合物は、本発明に含まれるものとする。
【0123】
例えば、本発明化合物の特定エナンチオマーが所望される場合、それは、不斉合成によるかまたはキラル助剤を使用する誘導によって生成でき、得られたジアステレオマー混合物を分離し、補助基を開裂して、純粋な所望エナンチオマーを得る。または、分子が、アミノのような塩基性官能基、またはカルボキシルのような酸性官能基を含有する場合、適切な光学活性酸または塩基を使用してジアステレオマー塩を生成し、次に、そのようにして生成されたジアステレオマーを、分別結晶または当分野でよく知られているクロマトグラフィー手段によって分解し、次に、純粋エナンチオマーを回収する。
【0124】
「置換」または「〜で置換されている」という語句は、そのような置換が、置換される原子と置換基との許容原子価によって行なわれ、置換が安定な化合物を生じ、例えば、再配列、結晶化、除去または他の反応によるような変換を自発的に受けないという暗黙の条件を含むものと理解される。
【0125】
「置換されている」という語句は、全ての許容される置換基または有機化合物を包含するものとも理解される。広い解釈において、許容される置換基は、有機化合物の、非環式および環式、分岐または非分岐、炭素環および複素環、芳香族および非芳香族置換基を包含する。例示的置換基は、例えば、上記の置換基を包含する。許容される置換基は、適切な有機化合物に関して、1個またはそれ以上であってよく、同じかまたは異なっていてよい。本発明の目的のために、窒素のようなヘテロ原子は、水素置換基、および/またはヘテロ原子の原子価を満足させる本明細書に記載した有機化合物のあらゆる許容される置換基を有し得る。本発明は、有機化合物の許容される置換基によって決して限定されるものではない。
【0126】
本発明の目的のために、化学元素は、Periodic Table of the Elements,CAS version,Handbook of Chemistry and Physics、第67版、1986−87、インサイドカバー(inside cover)によって同定される。「炭化水素」という用語は、当分野で認識されており、少なくとも1個の水素および炭素原子を有するあらゆる許容される化合物を包含する。例えば、許容される炭化水素は、置換または非置換、非環式および環式、分岐および非分岐、炭素環および複素環、芳香族および非芳香族有機化合物を包含する。
【0127】
「保護基」という語句は、当分野で認識されており、潜在的に反応性の官能基を、望まない化学変換から保護する一時的置換基を意味する。そのような保護基の例は、カルボン酸のエステル、アルコールのシリルエーテル、アルデヒドのアセタール、およびケトンのケタールを包含する。保護基化学分野が概説されている(Greenら、Protective Groups in Organic Synthesis,第2版,Wiley,New York,(1991))。
【0128】
「ヒドロキシル保護基」という語句は、当分野で認識されており、合成手順の間に、望ましくない反応からヒドロキシル基を保護することを目的とした基を意味し、例えば、ベンジルまたは当分野で公知の他の好適なエステルまたはエーテル基を包含する。
【0129】
「電子吸引基」という用語は、当分野で認識されており、隣接原子から原子価電子を引きつける置換基の傾向、即ち、置換基が隣接原子に対して電気陰性であることを意味する。電気吸引能力レベルの定量化は、ハメットシグマ(σ)定数によって得られる。この周知の定数は、多くの文献、例えば、March,Advanced Organic Chemistry 251−59,McGraw Hill Book Company,New York,(1977)に記載されている。ハメット定数値は、一般に、電子供与基についてはマイナスであり(NH2について、σ(P)=−0.66)、電子吸引基についてはプラスである(窒素基について、σ(P)=0.78)(σ(P)はパラ置換を示す)。例示的電子吸引基は、ニトロ、アシル、ホルミル、スルホニル、トリフルオロメチル、シアノ、クロリド等を包含する。例示的電子供与基は、アミノ、メトキシ等を包含する。
【0130】
いくつかの実施形態において、本発明は、少なくとも1つの重合可能な部分によって官能化されたコンドロイチン硫酸のような糖の、少なくとも1つのモノマー単位を含んで成る組成物に関する。コンドロイチン硫酸は、軟骨の天然成分であり、その再生に有用な骨格材料である。コンドロイチン硫酸は、10〜60kDaグリコサミノグリカンの種類に含まれる。コンドロイチン硫酸の反復単位またはモノマー単位は、二糖、β(1−4)架橋D−グルクロニルβ(1−3)N−アセチル−D−ガラクトサミン硫酸から成る。
【0131】
重合可能な部分は、重合開始剤に曝露された際に重合し得るあらゆる成分を包含する。重合可能な部分は、アルケニル成分、例えば、アクリレート、メタクリレート、ジメタクリレート、オリゴアクリレート、オリゴメトアクリレート、エタクリレート、イタコネート、アクリルアミドを包含し得る。他の重合可能な部分はアルデヒドを包含する。他の重合可能な部分は、エチレン的不飽和モノマーを包含し、その例は以下のものである:アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、ラウリルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルアクリレート、ベンジルメタクリレート;この酸のヒドロキシアルキルエステル、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、および2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、この酸のニトリルおよびアミド、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびメタクリルアミド、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニリデンクロリド、ビニルクロリド、およびビニル芳香族化合物、例えば、スチレン、t−ブチルスチレンおよびビニルトルエン、ジアルキルマレエート、ジアルキルイタコネート、ジアルキルメチレン−マロネート、イソプレンおよびブタジエン。カルボン酸基を含有する好適なエチレン的不飽和モノマーは、アクリル酸モノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、モノアルキルイタコネート(モノメチルイタコネート、モノエチルイタコネートおよびモノブチルイタコネートを包含する)、モノアルキルマレエート(モノメチルマレエート、モノエチルマレエートおよびモノブチルマレエートを包含する)、シトラコン酸およびスチレンカルボン酸を包含する。好適なポリエチレン的不飽和モノマーは、ブタジエン、イソプレン、アリルメタクリレート、アルキルジオールのジアクリレート、例えば、ブタンジオールジアクリレートおよびヘキサンジオールジアクリレート、ジビニルベンゼン等を包含する。
【0132】
いくつかの実施形態において、コンドロイチン硫酸のモノマー単位は、コンドロイチン硫酸のモノマー上に位置する1個またはそれ以上のチオ、カルボン酸またはアルコール成分によって官能化し得る。
【0133】
官能化モノマーコンドロイチン硫酸は、式I、IIまたはIIIによって示し得る:
【0134】
【化17】
【0135】
ここで、Rはアルケニルであり、R1はアルデヒドまたはアルコールから独立に選択され、少なくとも1個のR1はアルデヒドである。
【0136】
いくつかの実施形態において、Rは、
【0137】
【化18】
【0138】
である。
【0139】
例えば、コンドロイチン硫酸の官能化モノマーは、以下の式によって示し得る:
【0140】
【化19】
【0141】
コンドロイチン硫酸(CS)は、軟骨の天然成分であり、従って、軟骨再生の有用な骨格材料になり得る。CSのモノマー単位は、以下の式で示し得る:
【0142】
【化20】
【0143】
本発明の代表的な実施形態において、官能化糖成分の生成方法を提供し、この方法は、少なくとも1つの糖成分およびアルキレン成分を含んで成る溶液を準備し、この溶液を、例えば、少なくとも10日間、少なくとも11日間、または少なくとも15日間攪拌することを含んで成る。または、溶液を、約10〜約15日間、または約14〜約15日間攪拌するかまたは維持してもよい。溶液は、極性溶媒、例えば水性溶媒を含有してもよい。
【0144】
例示的反応式を図1に示す。GMA−CSのNMRスペクトルを、図2および3に示す。関連NMRピークの割当てを、図1において、対応する水素/炭素−標識によって示す。2つの1H−NMRピーク(「h1」および「h2」を付す)は、δビニル−H6.03ppmおよび5.61ppmのそれぞれにおける2つのビニル陽子を示す。これらのピークを使用して、コンドロイチン硫酸(CS)上のメタクリレートの存在を確定する。メタクリル化から1日後に、H−NMRにおける「h1」および「h2」の導入は、CSの初期メタクリル化を示した。メタクリル化は、δc=136ppmおよび128ppmに存在するビニル−炭素ピーク(「C=」で標識)を使用する13C−NMR(図3)によっても確認される。
【0145】
グリセリルスペーサーについての分光測定証拠の欠如、およびグリシドール脱離基のかなりの安定性は、エステル交換反応が反応の第一日において電気陰性グリシドールの可逆開裂によって支配したことを確認するものと言える。第3日〜第15日において、5.51ppm(標識「h3」)および5.20ppm(「h4」)におけるグリセリルメチン陽子が、時間と共に増加する強度でH−NMRにおいて現れはじめる。第15日におけるC−NMRスペクトルにおいて、ビニル−炭素ピークが4つに分れ;元の2つのピーク(ピーク「C=」)が強化され、新しく生じた2つのピーク(「C」を付す)はそれぞれ121ppmおよび143ppmに存在する。これらの付加的ピークは、グリセリルスペーサーの存在も示す。さらに、13C−NMRによる開環の付加的証拠は、グリセリルスペーサー上の骨格炭素を示す63ppmにおけるピーク(「C#」を付す)の出現である。グリセリル成分は、GMAのグリシジル残基上の開環反応から生じる。2つの開環生成物は、反応式1において化合物(2)および(3)として示されている。
【0146】
定量分析は、1H−NMRデータに基づき得る。ビニル陽子ピーク「h1」および「h2」の積分(integral)、[h1]+[h2]は、エステル交換生成物(1)および開環生成物(2)、(3)の両方によって与えられる。開環生成物(2)および(3)は、それらの特徴的グリセリルメチンピークを、それぞれ「h3」および「h4」に有する。「h1〜4」は全て単結合を表すので、総置換効率は、([h1]+[h2])/2として算出でき、開環の寄与は、図12に示すように([h3]+[h4])である。エステル交換は、反応速度的に迅速、かつ熱力学的に可逆性の処置である。1日程度で反応平衡に達し、約50%総置換効率のエステル交換生成物の収率である。開環処置は反応速度的に遅く、従って、たった1日後では十分に検出できない。しかし、開環処置は、熱力学的に不可逆性のメカニズムに基づく。反応は実質的に直線的に進み、他の処置から独立している。第5日に、2つの反応メカニズムによる総メタクリル化への寄与は、ほぼ等しくなる。第15日までに、開環メカニズムは80%より高い置換効率に寄与し、エステル交換生成物は約20未満に減少し得る。
【0147】
官能化コンドロイチン硫酸を生成する別の反応式が、図13に示されている。例示的な、コンドロイチン硫酸の官能化モノマー単位は、以下の式によって示し得る:
【0148】
【化21】
【0149】
次にラジカル重合を受けられるようにポリマーを改質するために、多くの化学選択肢を使用できる。例えば、メタクリル酸無水物、塩化メタクリロイルおよびメタクリル酸グリシジルを使用して、メタクリレート基を、ポリマー鎖の1つまたはそれ以上のモノマーに付加し得る。メタクリル酸グリシジルは、例えば、反応の効率のために使用し得る。さらに、細胞毒性副生物の欠乏(lack)を最適化するように改質剤を選択し得る。
【0150】
いくつかの実施形態において、ポリマー単位当たりの重合成分の数は、少なくとも1成分/約10モノマー単位、少なくとも約2成分/約10モノマー単位であってよい。または、ポリマー単位当たりの重合成分の数は、少なくとも1成分/約12モノマー単位または約14モノマー単位であってよい。例えば、少なくとも約1個のメタクリレート基/10個のコンドロイチン硫酸二糖単位であってよい。実施形態において、コンドロイチン硫酸を、約12%のメタクリレート基で官能化してもよい。
【0151】
本開示は、架橋ポリマーマトリックスを含んで成る組成物も提供し、この組成物において、この架橋ポリマーマトリックスは、官能化コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成る。いくつかの実施形態において、この架橋ポリマーマトリックスは、生体適合性ポリマーの少なくとも1個のモノマー単位をさらに含んで成る。他の実施形態において、架橋ポリマーマトリックスは、1個またはそれ以上のアミン基を含有する化合物、例えばタンパク質をさらに含んで成る。
【0152】
好適なポリマーは、以下の反復単位を有する生体適合性モノマーを包含する:ポリ(ホスホエステル)、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(酸無水物)、ポリ(アミド)、ポリ(ウレタン)、ポリ(エステルアミド)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ジオキサン)、ポリ(アセタール)、ポリ(ケタール)、ポリ(カーボネート)、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(アルキレンオキサレート)、ポリ(アルキレンスクシネート)、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ヒドロキシセルロース)、キチン、キトサン、ならびに上記物質のコポリマー、ターポリマーまたは組合せまたは混合物。
【0153】
他の好適な合成ポリマーは、アミン基を含有するポリマー、例えば化学合成ポリペプチドを包含する。そのようなポリペプチドは、第一級アミノ基を含有するアミノ酸(例えばリシン)、および/またはチオール基を含有するアミノ酸(例えばシステイン)を組み込むように合成された多求核性ポリペプチドを包含し得る。他の好適な合成ポリマーはポリ(アミノ)酸を包含する。
【0154】
アミン基を含有する他の好適な化合物は、アルブミンのようなタンパク質を包含する。アルブミンは哺乳動物由来であってよいが、他のアルブミン源も使用し得る。大部分のアルブミンは、本発明の方法によって用意に架橋されると考えられる。ウシ血清アルブミン(BSA)も使用し得る。または、アルブミンは、当分野で公知の方法を使用して組換えアルブミン遺伝子を発現する細胞から単離した組換えアルブミンであってもよい。部分タンパク質分解または組換え手段によって生成される、アルブミン配列の少なくとも100残基を含んで成るアルブミンの主フラグメントも、天然アルブミンの代わりに使用し得る。または、有用なフラグメントは、アルブミン配列の少なくとも50残基、より好ましくは少なくとも75残基を含有し得る。最後に、種々の形態のアルブミンの混合物(例えば、ヒト、ウシ、組換え、または断片化)、およびアルブミンに富む血漿分画も使用し得る。アルブミンは、当分野でよく知られている方法を使用して、組織または細胞から直接的に精製し得る。
本発明のポリマーマトリックスは、本発明の所望の特性を阻害しない限り、付加的生体適合性モノマー単位も含んで成ることができる。そのような付加的モノマー単位は、標的薬剤送達または組織工学に所望される正確なプロフィールの設計におけるより高い柔軟性、または他の適用に所望される正確な速度(precise rate)の生分解性または生体適合性を与え得る。
【0155】
いくつかの実施形態において、架橋ポリマーマトリックスは、少なくとも約75wt%、少なくとも約50wt%、少なくとも約25wt%、または少なくとも約10wt%のこの生体適合性ポリマーまたはアミン基含有化合物と共に、官能化コンドロイチン硫酸を含んで成ってよい。または、架橋ポリマーマトリックスは、25wt%未満のこの生体適合性ポリマーまたはアミン基含有化合物を含んで成ってよい。
【0156】
別の実施形態において、架橋ポリマーマトリックスを含んで成る組成物の生成方法を提供する。架橋ポリマーマトリックスを含んで成る組成物の生成方法は、官能化コンドロイチン硫酸の少なくとも1個のモノマー単位を含んで成るポリマーを提供する工程、このポリマーを少なくとも1つの重合開始剤に曝露し、それによってこの架橋マトリックスを生成する工程を包含する。
【0157】
あるいは、架橋ポリマーは、アルデヒド官能化コンドロイチンの少なくとも1個のモノマー単位を含んで成るポリマーを準備し、そして、タンパク質、例えばポリ(アミノ)酸またはアルブミンを準備し、それによってアルデヒド官能化コンドロイチンを、例えばアルブミンと架橋させることによって、生成し得る。そのような架橋の反応メカニズムは、当分野で公知のシッフ塩基反応であり得る。
【0158】
本発明の重合反応は、従来法、例えば、塊状重合、溶液(または均質)重合、懸濁重合、乳化重合、放射線重合(γ線、電子ビーム等を使用)等によって行なうことができる。
【0159】
重合開始剤は、電気機械放射線を包含する。重合の開始は、約200〜約700nm、または約320nmまたはそれより大、または約514nm〜約365nmの波長を有する光の照射によって行なってよい。いくつかの実施形態において、光度は約10m W/cm3である。
【0160】
他の開始剤の例は、有機溶媒溶解性開始剤、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ジ−tertブチルペルオキシド等、水溶性開始剤、例えば、過硫酸アンモニウム(APS)、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等、そのような開始剤とテトラメチルエチレン、Fe2+塩、亜硫酸水素ナトリウム等の還元剤との組合せである酸化還元型開始剤等である。
【0161】
有用な光開始剤は、遊離基生成によって、最小限の細胞毒性を有するモノマーのラジカル重合を開始させるのに使用できる光開始剤である。いくつかの実施形態において、開始剤は、短時間、例えば数分または数秒で作用し得る。紫外線または可視光線開始用の例示的色素は、エチレンエオシン2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−メトキシ−2−フェニルアセトフェノン、他のアセトフェノン誘導体、およびカンファーキノンを包含する。全ての場合に、架橋および重合は、光活性化ラジカル重合開始剤、例えば、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、またはエチルエオシン(10−4〜10−2M)とトリエタノールアミン(0.001〜0.1M)の組合せによって、マクロマー間で開始される。
【0162】
重合を開始させるために使用し得る他の光酸化性および光還元性色素は、アクリジン色素、例えば、アクリブラリン;チアジン色素、例えばチオニン;キサンチン色素、例えばローズベンガル;およびフェナジン色素、例えばメチレンブルーを包含する。これらは、以下のような助触媒と共に使用し得る:アミン、例えばトリエタノールアミン;硫黄化合物、例えばRSO2R1;複素環式化合物、例えばイミダゾール;エノレート;有機金属化合物;および他の化合物、例えばN−フェニルグリシン。他の開始剤は、カンファーキノンおよびアセトフェノン誘導体を包含する。
【0163】
熱重合開始剤系も使用し得る。37℃で不安定であり、生理温度でラジカル重合を開始し得るそのような系は、例えば、過硫酸カリウム(テトラメチルエチレンジアミンを共に使用または不使用);過酸化ベンゾイル(トリエタノールアミンを共に使用または不使用);および過硫酸アンモニウム(亜硫酸水素ナトリウムを共に使用)である。
【0164】
本発明の架橋ポリマーマトリックスは、ヒドロゲルを包含し得る。ヒドロゲルの含水量は、孔構造に関する情報を与え得る。さらに、含水量は、例えば、ヒドロゲルに封入された細胞の生存に影響を与える要因になり得る。ヒドロゲルが吸収し得る水の量は、架橋密度および/または孔サイズに関係し得る。例えば、官能化コンドロイチン硫酸マクロマー上のメタクリレート基のパーセントは、吸収可能な水の量を規定し得る。
【0165】
例えば、ポリ(エチレンオキシド)−ジアクリレート(PEODA)を、軟骨組織工学用のポリマー系に使用でき、架橋ポリマーマトリックスは、CS−MA(コンドロイチン硫酸−メタクリレート)およびPEODAの混合ゲルを包含し得る。CS−MAヒドロゲルは、PEODAヒドロゲルより多くの水を吸収し、従って、図4に示すように、混合ゲルにおけるCS−MAのパーセントの増加は、含水量を増加させる。
【0166】
ヒドロゲル骨格のような架橋ポリマーマトリックスの機械的特性も、ヒドロゲル孔構造に関係し得る。組織工学における用途について、所望の臨床適用に依存して、種々の機械的特性を有する骨格が望ましい。例えば、関節における軟骨組織工学用の骨格は、形成外科用途のために皮下に埋め込まれる軟骨組織工学系より高い機械的応力に耐えなければならない。従って、容易に操作される機械的応力を有するヒドロゲルが要求される。
【0167】
本明細書に開示する動的度数−掃引試験(dynamic frequency−sweep experiments)は、種々のPEODA/CS−MA比率を有するヒドロゲルが弾性優位であり、剪断度数(shear frequency)に非感受性であることを示した(図5a)。動的剪断弾性率|G*|の標準値(norm)は剪断度数と共に増加するが、そのような増加は|G*|の平均値と比較して優位でない。位相角δは、全ての度数および全ての重量比について、約1°〜約6°の狭い範囲で変化する。これは、PEODAおよびCS−MAの流動学的特性が類似しており、共重合はこれらの特性を優位に変化させないことを示す。PEODAのより高い比率(100%および75%)を有する混合ゲルは、より高い機械的強度(|G*|によって示される)を有し、50%、25%および0%PEODAを有する混合ゲルは、PEODA濃度に伴う|G*|の減少を示した(図5b)。100%および75%サンプルは、CS−MAゲルの3〜4倍の|G*|値を有していた。これは、PEODAゲルがCS−MAゲルより高度に架橋していることを示した膨潤試験と一致している。
【0168】
ゲルの形態学的分析は、膨潤および機械的分析によって示されたCS−MAおよびPEODAヒドロゲルの孔構造を確認した。膨潤および機械的データによって示されるように、CS−MAゲルは、表面および内部の両方において、PEODAゲルより大きい孔構造を示した(図6)。図6、7および8に示されているSEM形態学的調査は、ゲルの表面および内部の両方において、均質な孔構造を示している。膨潤および機械的データの再現性(低い標準偏差)も、コンドロイチン硫酸が、均質かつ一貫性をもって、置換されヒドロゲルを形成することを示している。
【0169】
損傷した軟骨組織のコンドロイチナーゼABC処置は、修復細胞による欠損のコーティング、および欠損縁における機能統合を促進し得る。例えば、コンドロイチナーゼABCを添加していない緩衝剤中で培養されたCS−MAゲルは、1日以内で完全に分解した酵素を使用して培養したCS−MAゲルと比較して分解する(図9a)。分解と酵素濃度との間に用量反応関係も存在する。図9bは、酵素を使用しない最少分解での、コンドロイチナーゼの増加濃度に伴う、吸収によって測定した分解二糖の増加を示す。
【0170】
生体高分子骨格系の細胞毒性は、軟骨細胞(軟骨を構成する細胞)を使用して、例えば生存−死亡蛍光細胞アッセイおよびMTT、活性代謝細胞を黄色から紫色に変える化合物を使用することによって評価し得る。図11aは、活性代謝MTT(図11b)でもある大多数の生存細胞の写真を示す図である。
【0171】
(生物学的に活性な物質および主題の組成物)
本発明の1つの局面において、架橋ポリマーマトリックスまたはゲル、および1つまたはそれ以上の生物学的に活性な物質を含んで成る組成物を生成し得る。生物学的に活性な物質は、組成物の意図する目的によって広範囲に変化し得る。「生物学的に活性な物質」という用語は、当分野で認識されており、生物学的、生理学的または薬理学的に活性な物質であり、患者において局所的または全身的に作用するあらゆる化学成分を意味する。「薬剤」とも呼び得る生物学的に活性な物質の例は、周知の文献、例えば、Merck Index、Physicians Desk Reference、およびThe Pharmacological Basis of Therapeuticsに記載されており、それらは以下の物質を包含するがそれらに限定されない:薬剤;ビタミン;ミネラルサプリメント;疾患または病気の治療、予防、診断、治癒または緩和に使用される物質;身体の構造または機能に作用する物質;または、生理的環境に置かれた後に生物学的に活性なるかまたはより活性になるプロドラッグ。患者に投与した際に、本発明の組成物から、例えば隣接組織または流体に、放出させることができる種々の形態の生物学的に活性な物質を使用し得る。いくつかの実施形態において、生物学的に活性な物質を本発明の架橋ポリマーマトリックスにおいて使用して、例えば、創傷治癒または軟骨形成を促進し得る。他の実施形態において、生物学的に活性な物質を本発明の架橋ポリマーマトリックスに使用して、例えば創傷治癒または軟骨形成を促進すると共に、疾患または症状を治療、改善、抑制または予防し得る。
【0172】
生物学的に活性な物質のさらなる例は、酵素、受容体拮抗薬または作用薬、ホルモン、成長因子、自己骨髄、抗生物質、抗微生物剤または抗体を包含するがそれらに限定されない。「生物学的に活性な物質」という用語は、本発明の組成物に組み込むことができる種々の細胞型および遺伝子も包含するものとする。
【0173】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、全組成物の重量に基づいて約1%〜約75%の生物学的に活性な物質、または約2.5%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%または70%の生物学的に活性な物質を含んで成る。
【0174】
生物学的に活性な物質の非制限的な例は、以下の物質を包含する:アドレナリン遮断薬、アナボリック薬、男性ホルモンステロイド、制酸薬、喘息治療薬、抗アレルギー物質、抗コレステロール血症および抗脂質薬、抗コリン作用薬および交換神経作用薬、抗血液凝固薬、抗痙攣薬、下痢止め薬、抗嘔吐薬、抗高血圧薬、抗感染薬、抗炎症薬、例えば、ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、抗マラリア薬、抗躁病薬、制吐薬、抗腫瘍薬、抗肥満薬、抗パーキンソン症候群薬、解熱および鎮痛薬、鎮痙薬、抗血栓薬、抗尿酸血症薬、抗狭心症薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、食欲抑制薬、ベンゾフェナントリジンアルカロイド、生物製剤、心臓作用薬、脳拡張薬、冠状動脈拡張剤、鬱血除去薬、利尿薬、診断薬、赤血球生成薬、エストロゲン、去痰薬、胃腸鎮静薬、体液薬、高血糖症薬、催眠薬、低血糖症薬、イオン交換樹脂、緩下薬、ミネラルサプリメント、縮瞳薬、粘液溶解薬、神経筋薬、栄養物質、抹消血管拡張薬、プロゲステロン薬、プロスタグランジン、抗うつ薬、向精神薬、鎮静薬、興奮薬、甲状腺および抗甲状腺薬、精神安定薬、子宮弛緩薬、ビタミン、抗原性物質、およびプロドラッグ。
【0175】
上記分類の有用な生物学的に活性な物質の特定の例は、以下の物質を包含する:(a)抗腫瘍薬、例えば、アンドロゲン阻害薬、代謝拮抗薬、細胞毒性薬および免疫調節薬;(b)鎮咳薬、例えば、デキストロメトルファン、臭化水素酸デキストロメトルファン、ノスカピン、クエン酸カルベタペンタン、および塩酸クロフェジアノール;(c)抗ヒスタミン薬、例えば、マレイン酸クロルフェニラミン、酒石酸フェニンダミン、マレイン酸ピリラミン、琥珀酸ドキシラミン、およびクエン酸フェニルトロキサミン;(d)鬱血除去剤、例えば、塩酸フェニレフリン、塩酸フェニルプロパノールアミン、塩酸プソイドエフェドリン、およびエフェドリン;(e)種々のアルカロイド、例えば、燐酸コデイン、硫酸コデイン、およびモルフィン;(f)ミネラルサプリメント、例えば、塩化カリウム、塩化亜鉛、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、および他のアルカリ金属およびアルカリ土類金属塩;(g)イオン交換樹脂、例えば、コレスチラミン;(h)抗不整脈薬、例えば、N−アセチルプロカインアミド;(i)解熱および鎮痛薬、例えば、アセトアミノフェン、アスピリンおよびイブプロフェン;(j)食欲抑制薬、例えば、塩酸フェニルプロパノールアミンまたはカフェイン;(k)去痰薬、例えばグアイフェネシン;(l)制酸薬、例えば、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウム;(m)生物製剤、例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質およびアミノ酸、ホルモン、インターフェロンまたはサイトカインおよび他の生物活性ペプチド化合物、例えば、hGH、tPA、カルシトニン、ANF、EPOおよびインスリン;(n)抗感染薬、例えば、抗真菌薬、抗ウイルス薬、防腐薬および抗生物質;および(m)脱感作薬および抗原性物質、例えばワクチン適用に有用な物質。
【0176】
より具体的には、有用な生物学的に活性な物質の非制限的な例は、以下の治療薬分類を包含する:鎮痛薬、例えば、非ステロイド性抗炎症薬、アヘン作用薬およびサリチレート;抗ヒスタミン薬、例えば、H1遮断薬およびH2遮断薬;抗感染薬、例えば、駆虫薬、抗嫌気性生物薬、抗生物質、アミノグリコシド抗生物質、抗真菌性抗生物質、セファロスポリン抗生物質、マクロライド系抗生物質、雑(miscellaneous)βラクタム抗生物質、ペニシリン抗生物質、キノロン抗生物質、スルホンアミド抗生物質、テトラサイクリン抗生物質、抗マイコバクテリア薬、抗結核性抗マイコバクテリア薬、抗原生動物薬、抗マラリア性抗原生動物薬、抗ウイルス薬、抗レトロウイルス薬、殺疥癬虫薬、および抗泌尿器感染薬;抗腫瘍薬、例えば、アルキル化剤、ナイトロジェンマスタードアルキル化剤、ニトロソ尿素アルキル化剤、代謝拮抗薬、プリン類似体代謝拮抗薬、ピリミジン類似体代謝拮抗薬、ホルモン性抗腫瘍薬、自然抗腫瘍薬、抗生物質性自然抗腫瘍薬、およびビンカアルカロイド自然抗腫瘍薬;自律神経薬、例えば、抗コリン作用薬、抗ムスカリン性抗コリン作用薬、麦角アルカロイド類、副交感神経作用薬、コリン作用薬性副交感神経作用薬、コリンエステラーゼ阻害薬性副交感神経作用薬、交感神経遮断薬、α遮断薬性交感神経遮断薬、β遮断薬性交感神経遮断薬、交感神経作用薬、およびアドレナリン作用薬性交感神経作用薬;心臓血管薬、例えば、抗狭心症薬、β遮断薬性抗狭心症薬、カルシウムチャンネル遮断薬性抗狭心症薬、ニトレート(nitrate)抗狭心症薬、抗不整脈薬、強心配糖体抗不整脈薬、クラスI抗不整脈薬、クラスII抗不整脈薬、クラスIII抗不整脈薬、クラスIV抗不整脈薬、抗高血圧薬、α遮断薬性抗高血圧薬、アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)性抗高血圧薬、β遮断薬性抗高血圧薬、カルシウムチャンネル遮断薬性抗高血圧薬、中枢作用性アドレナリン作用性抗高血圧薬、利尿性抗高血圧薬、抹消血管拡張薬性抗高血圧薬、抗脂肪血症薬、胆汁酸金属イオン封鎖剤性抗脂肪血症薬、HMG−CoA還元酵素阻害薬性抗脂肪血症薬、強心薬、強心配糖体性強心薬、および血栓崩壊薬;皮膚科薬、例えば、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、コルチコステロイド性抗炎症薬、かゆみ止め薬/局所麻酔薬、局所抗感染薬、抗真菌性局所抗感染薬、抗ウイルス性局所抗感染薬、および局所抗腫瘍薬;電解および腎臓薬、例えば、酸性化剤、アルカリ化剤、利尿薬、カルボニックアンヒドラーゼ阻害薬性利尿薬、ループ利尿薬、浸透圧性利尿薬、カリウム保持性利尿薬、サイアザイド利尿薬、電解質置換薬、および尿酸排泄薬;酵素、例えば、膵臓酵素および血栓崩壊酵素;胃腸薬、例えば、下痢止め薬、抗嘔吐薬、胃腸抗炎症薬、サリチレート胃腸抗炎症薬、制酸性抗潰瘍薬、胃酸ポンプ阻害薬性抗潰瘍薬、胃粘膜抗潰瘍薬、H2遮断薬性抗潰瘍薬、胆石分解薬、消化薬、催吐薬、緩下薬および便軟化薬、およびプロキネティック(prokintic)薬;全身麻酔薬、例えば、吸入麻酔薬、ハロゲン化吸入麻酔薬、静脈内麻酔薬、バルビツレート静脈内麻酔薬、ベンゾジアゼピン静脈内麻酔薬、およびアヘン作用薬性静脈内麻酔薬;血液剤、例えば、抗貧血薬、造血性抗貧血薬、凝固薬、抗凝固薬、止血性凝固薬、血小板阻害薬性凝固薬、血栓溶解酵素凝固薬、および血漿増量剤;ホルモンおよびホルモン修飾物質、例えば、人口妊娠中絶薬、副腎薬、コルチコステロイド副腎薬、男性ホルモン、抗男性ホルモン、抗糖尿病薬、スルホニル尿素抗糖尿病薬、抗低血糖症薬、経口避妊薬、プロゲスチン避妊薬、エストロゲン、排卵誘発剤、分娩促進薬、副甲状腺薬、下垂体ホルモン、プロゲスチン、抗甲状腺薬、甲状腺ホルモン、および早産防止薬;免疫生物学的物質、例えば、免疫グロブリン、免疫抑制剤、トキソイド、およびワクチン;局所麻酔薬、例えば、アミド局所麻酔薬、およびエステル局所麻酔薬;筋骨格薬、例えば、抗通風性抗炎症薬、コルチコステロイド性抗炎症薬、金化合物抗炎症薬、免疫抑制性抗炎症薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、サリチレート抗炎症薬、骨格筋弛緩薬、神経筋遮断薬性骨格筋弛緩薬、および逆神経筋遮断薬性骨格筋弛緩薬;神経学的物質、例えば、抗痙攣薬、バルビツレート抗痙攣薬、ベンゾジアゼピン抗痙攣薬、抗偏頭痛薬、抗パーキンソン症候群薬、抗眩暈薬、アヘン作用薬、およびアヘン拮抗薬;眼科用薬剤、例えば、抗緑内障薬、β遮断薬性抗緑内障薬、縮瞳性抗緑内障薬、散瞳薬、アドレナリン作用薬性散瞳薬、抗ムスカリン性散瞳薬、眼科用麻酔薬、眼科用抗感染薬、眼科用アミノ配糖体抗感染薬、眼科用マクロライド系抗感染薬、眼科用キノロン抗感染薬、眼科用スルホンアミド抗感染薬、眼科用テトラサイクリン抗感染薬、眼科用抗炎症薬、眼科用コルチコステロイド性抗炎症薬、眼科用非ステロイド性抗炎症薬(NSAID);向精神薬、例えば、抗鬱薬、複素環系抗鬱薬、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(MAOI)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、三環系抗鬱薬、躁病薬、抗精神病薬、フェノチアジン抗精神病薬、抗不安薬、鎮静薬および催眠薬、バルビツレート鎮静薬および催眠薬、ベンゾジアゼピン抗不安薬、鎮静薬および催眠薬、および精神刺激薬;呼吸薬、例えば、鎮咳剤、気管支拡張薬、アドレナリン作用薬性気管支拡張薬、抗ムスカリン気管支拡張薬、去痰薬、粘液溶解薬、呼吸性抗炎症薬、および呼吸性コルチコステロイド性抗炎症薬;毒物学物質、例えば、解毒薬、重金属拮抗薬/キレート剤、物質乱用薬、デテレント(deterrent)物質乱用薬、および離脱物質乱用薬(withdrawal substance abuse
agents);ミネラル;およびビタミン、例えば、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンEおよびビタミンK。
【0177】
上記分類の生物学的に活性な物質の他の種類は、以下の物質を包含する:(1)一般に鎮痛薬、例えば、リドカイン、他のカイン鎮痛薬またはその誘導体、および非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)性鎮痛薬(ジクロフェナク、イブプロフェン、ケトプロフェンおよびナプロキセンを包含する);(2)アヘン作用薬性鎮痛薬、例えば、コデイン、フェンタニル、ヒドロモルホンおよびモルヒネ;(3)サリチレート鎮痛薬、例えばアスピリン(ASA)(腸溶性ASA);(4)H1遮断薬性抗ヒスタミン薬、例えば、クレマスチンおよびテルフェナジン;(5)H2遮断薬性抗ヒスタミン薬、例えば、シメチジン、ファモチジン、ニザジン(nizadine)およびラニチジン;(6)抗感染薬、例えばムピロシン;(7)嫌気性生物抗感染薬、例えば、クロラムフェニコールおよびクリンダマイシン;(8)抗真菌性抗生物質性抗感染薬、例えば、アンホテリシンb、クロトリマゾール、フルコナゾールおよびケトコナゾール;(9)マクロライド系抗生物質性抗感染薬、例えば、アジスロマイシンおよびエリスロマイシン;(10)雑(miscellaneous)βラクタム抗生物質性抗感染薬、例えば、アズトレオナムおよびイミペネム;(11)ペニシリン抗生物質性抗感染薬、例えば、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリンGおよびペニシリンV;(12)キノロン抗生物質性抗感染薬、例えば、シプロフロキサシンおよびノルフロキサシン;(13)テトラサイクリン抗生物質性抗感染薬、例えば、ドキソサイクリン、ミノサイクリンおよびテトラサイクリン;(14)抗結核性抗マイコバクテリア抗感染薬、例えば、イソニアジド(INH)およびリファンピン;(15)抗原生動物性抗感染薬、例えば、アトバクオンおよびダプソン;(16)抗マラリア性抗原生動物性抗感染薬、例えば、クロロキンおよびピリメタミン;(17)抗レトロウイルス性抗感染薬、例えば、リトナビルおよびジドブジン;(18)抗ウイルス性抗感染薬、例えば、アシクロビル、ガンシクロビル、インターフェロンα、およびリマンタジン;(19)アルキル化抗腫瘍薬、例えば、カルボプラチンおよびシスプラチン;(20)ニトロソ尿素アルキル化抗腫瘍薬、例えばカルムスチン(BCNU);(21)代謝拮抗物質性抗腫瘍薬、例えばメトトレキサート;(22)ピリミジン類似体代謝拮抗物質性抗腫瘍薬、例えば、フルオロウラシル(5−FU)およびゲムシタビン;(23)ホルモン抗腫瘍薬、例えば、ゴセレリン、ロイプロリドおよびタモキシフェン;(24)自然抗腫瘍薬、例えば、アルデスロイキン、インターロイキン−2、ドセタキセル、エトポシド(VP−16)、インターフェロンα、パクリタキセル、他のタキサン誘導体、トレチノイン(ATRA);(25)抗生物質性自然抗腫瘍薬、例えば、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシンおよびマイトマイシン;(26)ビンカアルカロイド自然抗腫瘍薬、例えば、ビンブラスチンおよびビンクリスチン;(27)自律神経薬、例えばニコチン;(28)抗コリン作用性自律神経薬、例えば、ベンゾトロピンおよびトリヘキシフェニジル;(29)抗ムスカリン性抗コリン作用性自律神経薬、例えば、アストロピンおよびオキシブチニン;(30)麦角アルカロイド自律神経薬、例えばブロモクリプチン;(31)コリン作用薬性副交感神経作用薬、例えばピロカルピン;(32)コリンエステラーゼ阻害薬性副交感神経作用薬、例えばピリドスチグミン;(33)α遮断薬性交感神経遮断薬、例えばプラゾシン;(34)β遮断薬性交換神経遮断薬、例えばアテノロール;(35)アドレナリン作用薬性交感神作用薬、例えば、アルブテロールおよびドブタミン;(36)心臓血管薬、例えば、アスピリン(ASA)(腸溶性ASA);(37)β遮断薬性抗狭心症薬、例えば、アテノロールおよびプロパノロール;(38)カルシウムチャンネル遮断薬性抗狭心症薬、例えば、ニフェジピンおよびベラパミル;(39)ニトレート抗狭心症薬、例えば、イソソルビドジニトレート(ISDN);(40)強心配糖体抗不整脈薬、例えばジゴキシン;(41)クラスI抗不整脈薬、例えば、リドカイン、メキシレチン、フェニトイン、プロカインアミドおよびキニジン;(42)クラスII抗不整脈薬、例えば、アテノロール、メトプロロール、プロプラノロールおよびチモロール;(43)クラスIII抗不整脈薬、例えばアミオダロン;(44)クラスIV抗不整脈薬、例えば、ジルチアゼムおよびベラパミル;(45)α遮断薬性抗高血圧薬、例えばプラゾシン;(46)アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)性抗高血圧薬、例えば、カプトプリルおよびエナラプリル;(47)β遮断薬性抗高血圧薬、例えば、アテノロール、メトプロロール、ナドロールおよびプロパノロール;(48)カルシウムチャンネル遮断薬性抗高血圧薬、例えば、ジルチアゼムおよびニフェジピン;(49)中枢作用性アドレナリン作用性抗高血圧薬、例えば、クロニジンおよびメチルドパ;(50)利尿性抗高血圧薬、例えば、アミロライド、フロセミド、ヒドロクロロチアジド(HCTZ)およびスピロノラクトン;(51)抹消血管拡張薬性抗高血圧薬、例えば、ヒドララジンおよびミノキシジル;(52)抗脂肪血症薬、例えば、ゲムフィブロジルおよびプロブコール;(53)胆汁酸金属イオン封鎖剤性抗脂肪血症薬、例えばコレスチラミン;(54)HMG−CoA還元酵素阻害薬性抗脂肪血症薬、例えば、ロバスタチンおよびプラバスタチン;(55)強心薬、例えば、アムリノン、ドブタミンおよびドーパミン;(56)強心配糖体性強心薬、例えばジゴキシン;(57)血栓崩壊薬、例えば、アルテプラーゼ(TPA)、アニストレプラーゼ、ストレプトキナーゼおよびウロキナーゼ;(58)皮膚科薬、例えば、コルヒチン、イソトレチノイン、メトトレキサート、ミノキシジル、トレチノイン(ATRA);(59)皮膚科用コルチコステロイド性抗炎症薬、例えば、ベタメタゾンおよびデキサメタゾン;(60)抗真菌性局所抗感染薬、例えば、アンホテリシンB、クロトリマゾール、ミコナゾールおよびニスタチン;(61)抗ウイルス性局所抗感染薬、例えばアシクロビル;(62)局所抗腫瘍薬、例えばフルオロウラシル(5−FU);(63)電解および腎臓薬、例えばラクツロース;(64)ループ利尿薬、例えばフロセミド;(65)カリウム保持性利尿薬、例えばトリアムテレン;(66)サイアザイド利尿薬、例えばヒドロクロロチアジド(HCTZ);(67)尿酸排泄薬、例えばプロベネシド;(68)酵素、例えば、RNアーゼおよびDNアーゼ;(69)血栓崩壊酵素、例えば、アルテプラーゼ、アニストレプラーゼ、ストレプトキナーゼおよびウロキナーゼ;(70)抗嘔吐薬、例えばプロクロルペラジン;(71)サリチレート胃腸抗炎症薬、例えばスルファサラジン;(72)胃酸ポンプ阻害薬性抗潰瘍薬、例えばオメプラゾール;(73)H2遮断薬性抗潰瘍薬、例えば、シメチジン、ファモチジン、ニザチジンおよびラニチジン;(74)消化薬、例えばパンクレリパーゼ;(75)プロキネティック(prokintic)薬、例えばエリスロマイシン;(76)アヘン作用薬性静脈内麻酔薬、例えばフェンタニル;(77)造血性抗貧血薬、例えば、エリスロポイエチン、フィルグラスチム(G−CSF)およびサルグラモスチン(GM−CSF);(78)凝固薬、例えば抗血友病因子1−10(AHF1−10);(79)抗凝固薬、例えばワルファリン;(80)血栓溶解酵素凝固薬、例えば、アルテプラーゼ、アニストレプラーゼ、ストレプトキナーゼおよびウロキナーゼ;(81)ホルモンおよびホルモン修飾物質、例えばブロモクリプチン;(82)人口妊娠中絶薬、例えばメトトレキサート;(83)抗糖尿病薬、例えばインスリン;(84)経口避妊薬、例えば、エストロゲンおよびプロゲスチン;(85)プロゲスチン避妊薬、例えば、レボノルゲストレルおよびノルゲストレル;(86)エストロゲン、例えば、抱合卵胞ホルモン、ジエチルスチルベストロール(DES)、エストロゲン(エストラジオール、エストロンおよびエストロピペート);(87)排卵誘発剤、例えば、クロミフェン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)およびメノトロピン;(88)副甲状腺薬、例えばカルシトニン;(89)下垂体ホルモン、例えば、デスモプレシン、ゴセレリン、オキシトシンおよびバソプレシン(ADH);(90)プロゲスチン、例えば、メドロキシプロゲステロン、ノルエチンドロンおよびプロゲステロン;(91)甲状腺ホルモン、例えばレボチロキシン;(92)免疫生物学的物質、例えば、インターフェロンβ−1bおよびインターフェロンγ−1b;(93)免疫グロブリン、例えば、免疫グロブリンIM、IMIG、IGIMおよび免疫グロブリンIV、IVIG、IGIV;(94)アミド局所麻酔薬、例えばリドカイン;(95)エステル局所麻酔薬、例えば、ベンゾカインおよびプロカイン;(96)筋骨格コルチコステロイド性抗炎症薬、例えば、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾンおよびプレドニソン;(97)筋骨格抗炎症性免疫抑制薬、例えば、アザチオプリン、シクロホスファミドおよびメトトレキサート;(98)筋骨格非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えば、ジクロフェナク、イブプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラクおよびナプロキセン;(99)骨格筋弛緩薬、例えば、バクロフェン、シクロベンザプリンおよびジアゼパム;(100)逆神経筋遮断薬性骨格筋弛緩薬、例えばピリドスチグミン;(101)神経学的物質、例えば、ニモジピン、リルゾール、タクリンおよびチクロピジン;(102)抗痙攣薬、例えば、カルバマゼピン、ガバペンチン、ラモトリジン、フェニトインおよびバルプロ酸;(103)バルビツレート抗痙攣薬、例えば、フェノバルビタールおよびプリミドン;(104)ベンゾジアゼピン抗痙攣薬、例えば、クロナゼパム、ジアゼパムおよびロラゼパム;(105)抗パーキンソン症候群薬、例えば、プロモクリプチン、レボドパ、カルビドパおよびペルゴリド;(106)抗眩暈薬、例えばメクリジン;(107)アヘン作用薬、例えば、コデイン、フェンタニル、ヒドロモルホン、メタドンおよびモルヒネ;(108)アヘン拮抗薬、例えばナロキソン;(109)β遮断薬性抗緑内障薬、例えばチモロール;(110)縮瞳性抗緑内障薬、例えばピロカルピン;(111)眼科用アミノ配糖体抗感染薬、例えば、ゲンタマイシン、ネオマイシンおよびトブラマイシン;(112)眼科用キノロン抗感染薬、例えば、シプロフロキサシン、ノルフロキサシンおよびオフロキサシン;(113)眼科用コルチコステロイド性抗炎症薬、例えば、デキサメタゾンおよびプレドニゾロン;(114)眼科用非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えばジクロフェナク;(115)抗精神病薬、例えば、クロザピン、ハロペリドールおよびリスペリドン;(116)ベンゾジアゼピン抗不安薬、鎮静薬および催眠薬、例えば、クロナゼパム、ジアゼパム、ロラゼパム、オキサゼパムおよびプラゼパム;(117)精神刺激薬、例えば、メチルフェニデートおよびペモリン;(118)鎮咳剤、例えばコデイン;(119)気管支拡張薬、例えばテオフィリン;(120)アドレナリン作用薬性気管支拡張薬、例えばアルブテロール;(121)呼吸性コルチコステロイド性抗炎症薬、例えばデキサメタゾン;(122)解毒薬、例えば、フルマゼニルおよびナロキソン;(123)重金属拮抗薬/キレート剤、例えばペニシラミン;(124)デテレント(deterrent)物質乱用薬、例えば、ジスルフィラム、ナルトレキソンおよびニコチン;(125)離脱物質乱用薬、例えば、ブロモクリプチン;(126)ミネラル、例えば、鉄、カルシウムおよびマグネシウム;(127)ビタミンB化合物、例えばシアノコバラミン(ビタミンB12)およびナイアシン(ビタミンB3);(128)ビタミンC化合物、例えばアスコルビン酸;および(129)ビタミンD化合物、例えばカルシトリオール。
【0178】
さらに、以下のような組換えまたは細胞由来タンパク質も使用し得る:組換えβ−グルカン;ウシ免疫グロブリン濃縮物;ウシスーパーオキシドジスムターゼ;フルオロウラシル、エピネフリンおよびウシコラーゲンを含んで成る配合物;組換えヒルジン(r−Hir)、HIV−1イムノゲン;組換えヒト成長ホルモン(r−hGH);組換えEPO(r−EPO);遺伝子活性化EPO(GA−EPO);組換えヒトヘモグロビン(r−Hb);組換えヒトメカセルミン(r−IGF−1);組換えインターフェロンβ−1a;レノグラスチム(G−CSF);オランザピン;組換え甲状腺刺激ホルモン(r−TSH);およびトポテカン。
【0179】
なおさらに、以下のようなペプチド、タンパク質および他の大分子も使用し得る:インターロイキン1〜18(変異体および類似体を包含する);インターフェロンα、γおよびβ;軟骨再生に有用と考えられる軟骨細胞;黄体化ホルモン放出ホルモン(LHRH)および類似体;性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH);トランスホーミング増殖因子(TGF);線維芽細胞増殖因子(FGF);腫瘍壊死因子−αおよびγ(TNF−αおよびγ);神経発育因子(NFG);成長ホルモン放出因子(GHRF);上皮増殖因子(EGF);結合組織活性化ペプチド(CTAP);骨形成因子;線維芽細胞増殖因子同族体因子(FGFHF);肝細胞増殖因子(HGF);インスリン成長因子(IGF);浸潤阻害因子−2(IIF−2);骨形態形成タンパク質1〜7(BMP1〜7);ソマトスタチン;サイモシン−α−1−;γ−グロブリン;スーパーオキシドジスムターゼ(SOD);および補体因子、およびそのような因子、例えば増殖因子の生物学的に活性な類似体、フラグメントおよび誘導体。
【0180】
多機能性調節タンパク質であるトランスホーミング増殖因子(TGF)超遺伝子ファミリーのメンバーを、本発明のポリマーマトリックスに組み込み得る。TGF超遺伝子ファミリーのメンバーは、以下のものを包含する:TGF−β、βトランスホーミング増殖因子(例えば、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3);骨形態形成タンパク質(例えば、BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9);ヘパリン結合増殖因子(例えば、線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インスリン様成長因子(IGF));インヒビン(例えば、インヒビンA、インヒビンB);成長分化因子(例えばGDF−1);およびアクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB)。増殖因子は、哺乳動物細胞のような天然または自然源から分離するか、または組換えDNA法または種々の化学的方法によって合成的に生成することができる。さらに、天然分子の生物学的活性の少なくともいくらかを示すことを条件として、これらの因子の類似体、フラグメントまたは誘導体を使用することができる。例えば、類似体は、部位特異性変異誘発または他の遺伝工学法によって変化させた遺伝子の発現によって生成することができる。
【0181】
種々の形態の生物学的に活性な物質を使用し得る。これらは、移植、注射またはそれ以外の方法で患者に与えた際に生物学的に活性化される非荷電分子、分子複合体、塩、エーテル、エステル、アミド等のような形態を包含するがそれらに限定されない。
【0182】
特定の実施形態において、1つまたはそれ以上の生物学的に活性な物質に加えて、他の物質を本発明の組成物に組み込み得る。例えば、当分野で公知の可塑剤および安定剤を本発明の組成物に組み込み得る。特定の実施形態において、可塑剤および安定剤のような添加剤を、それらの生物学的適合性のために選択する。
【0183】
本発明の組成物は、1つまたはそれ以上の補助物質、例えば、充填剤、増粘剤等をさらに含有してよい。他の実施形態において、補助剤として作用する物質を、組成物と合わしてよい。そのような付加的物質は、得られる組成物の特性に作用し得る。例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)またはマウス血清アルブミン(MSA)のような充填剤を、ポリマー組成物と合わしてよい。特定の実施形態において、充填剤の量は、組成物の重量の約0.1〜約50%またはそれ以上、または約2.5%、5%、10%、25%、40%で変化し得る。そのような充填剤の組み込みは、あらゆる封入物質の持続放出速度に作用し得る。当業者に公知の他の充填剤、例えば、炭水化物、砂糖、デンプン、糖類、セルロースおよび多糖類(マンニトース(mannitose)およびスクロースを包含する)を、本発明の特定の実施形態に使用し得る。
【0184】
緩衝剤、酸および塩基を組成物に組み込んでpHを調節し得る。組成物から放出される物質の拡散距離を増加させる物質も含有させてよい。
【0185】
添加剤を使用することによって、あらゆる本発明の組成物の電荷、脂肪親和性または親水性を、変更し得る。例えば、界面活性剤を使用して、低混和性液体の混和性を増加し得る。好適な界面活性剤の例は、デキストラン、ポリソルベートおよびラウリル硫酸ナトリウムを包含する。一般に、界面活性剤は、約5%未満の低濃度で使用される。
【0186】
生物学的に活性な物質は、混合によって、架橋合成ポリマー組成物に組み込み得る。または、これらの物質を合成ポリマー上の官能基に結合させることによって、この物質を架橋ポリマーマトリックスに組み込み得る。そのような組成物は、例えば酵素的分解によって、容易に生分解することができる結合を含有してよく、その結果として標的組織に活性物質を放出し、そこで所望の治療作用を示し得る。
【0187】
求核基を含有する生物学的に活性な物質を架橋ポリマー組成物に組み込む簡単な方法は、多求核性成分の添加前に、活性物質を多求電子性成分と混合することを含む。反応性組成物の種々の成分の相対モル量を変化させることによって、得られる架橋ポリマー組成物の正味電荷を変化させて、タンパク質またはイオン化可能薬剤のような荷電化合物送達用のマトリックスを生成することができる。そのようにして、中性担体マトリックスから一般に急速に拡散する荷電タンパク質または薬剤の送達を調節することができる。
【0188】
例えば、モル過剰の多求核性の成分を使用する場合、得られるマトリックスは正味陽電荷を有し、陰荷電化合物にイオン的に結合し、送達するのに使用し得る。これらのマトリックスから送達することができる陰荷電化合物の例は、種々の薬剤、細胞、タンパク質および多糖類を包含する。
【0189】
モル過剰の多求電子性の成分を使用する場合、得られるマトリックスは正味陰電荷を有し、陽荷電化合物にイオン的に結合し、送達するのに使用することができる。これらのマトリックスから送達することができる陽荷電化合物の例は、種々の薬剤、細胞、タンパク質および多糖を包含する。
【0190】
本発明の架橋ポリマーマトリックス組成物は、新しい組織を形成するために、所望の投与部位に種々のタイプの生きた細胞または遺伝子を送達するのにも使用できる。ここで使用される「遺伝子」という用語は、自然源からの遺伝物質、合成核酸、DNA、アンチセンス−DNAおよびRNAを包含するものとする。
【0191】
例えば、ポリマーマトリックスを使用して間葉幹細胞を送達して、それらが送達される組織と同じタイプの細胞を形成することができる。間葉幹細胞は分化しないことがあり、従って、活性物質の存在または局所組織環境の作用(化学的作用、物理的作用等)によって分化して、種々のタイプの新しい細胞を形成し得る。間葉幹細胞の例は、骨芽細胞、軟骨細胞および線維芽細胞を包含する。例えば、骨芽細胞を骨の欠損部位に送達して、新しい骨を形成することができ;軟骨細胞を軟骨の欠損部位に送達して、新しい軟骨を形成することができ;線維芽細胞を送達して、新しい結合組織を必要とするどのような部位でもコラーゲンを生成することができ;ニューレクトダーマル(neurectodermal)細胞を送達して、新しい神経組織を形成することができ;上皮細胞を送達して、新しい上皮組織、例えば肝臓を形成することができる。
【0192】
細胞または遺伝子は、由来において、同種異系または異種であってよい。例えば、組成物を使用して、遺伝的に修飾した他の種からの細胞または遺伝子を送達することができる。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は生体内で容易に分解されなくてもよい、架橋ポリマーマトリックス組成物中に捕捉される細胞および遺伝子を患者自身の細胞から分離し、それによって、患者において免疫反応を生じさせない。
【0193】
架橋ポリマーマトリックス中に細胞または遺伝子を捕捉するために、細胞または遺伝子を、例えば、官能化コンドロイチン硫酸および任意に他の生体適合性ポリマーを含んで成る組成物と予備混合し、次に、重合剤を混合物に適用して架橋ポリマーマトリックスを形成し、それによって細胞または遺伝子をマトリックス中に捕捉する。
【0194】
(損傷組織の修復または置換)
本発明の組成物は、以下のような(それらに限定されない)多くの組織修復用途に使用し得る:漿液腫および血腫の予防、皮膚および筋肉弁の付着、エンドリーク(endoleaks)の修復および予防、動脈解離の修復、気腫肺減量、神経管修復、および微小血管吻合および神経吻合の形成。さらに本発明の組成物は、損傷組織の修復における接着組成物としても使用し得る。
【0195】
1つの実施形態において、損傷組織の修復は、切開術および腹腔鏡術を包含する、組織への接近および修復を可能にするあらゆる標準的外科的方法によって行える。損傷組織へ一旦接近したら、必要であれば何らかの外科的に許容されるパッチまたはインプラントと共に、本発明の組成物を損傷組織に接触して配置する。例えば2つまたはそれ以上の組織面を結合することによって、裂けたまたは分離した組織の修復に適用する場合、組成物を組織面の1つまたはそれ以上に適用し、次に、それらの面を互いに接触して配置させ、それらの間に接着を生じさせる。
【0196】
脱出組織の修復に使用する場合、外科的に許容されるパッチを脱出組織の周囲組織領域に付着させて、脱出領域をコーティングし、それによって、損傷組織を強化し、欠損を修復することができる。周囲組織にパッチを付着させる場合、本発明の組成物を、パッチ、周囲組織、またはパッチを脱出組織に配置した後のパッチに適用し得る。一旦パッチおよび組織を互いに接触させると、それらの間に付着が生じ得る。
【0197】
1つの実施形態において、本発明の組成物の実質的に全ての反応性成分を先ず混合し、次に、例えば電磁放射線によって、実施的な架橋が生じる前に、所望の組織または表面に送達する。次に、組成物を適用した面または組織を、残りの面、即ち他の組織面またはインプラント面に、好ましくは直ぐに、接触させて、接着し得る。
【0198】
付着させる面を手または他の適切な手段を使用して合わし、その間に架橋反応を終了するまで進ませる。架橋は、接着組成物の成分を混合してから約5〜60秒以内で接着が生じるのに一般に充分に終了し得る。しかし、架橋が終了するのに必要とされる時間は、各反応性成分のタイプおよび分子量、官能化の程度、および架橋性組成物における成分の濃度(成分濃度が高いほど、より速い架橋時間である)を包含する多くの要因に依存する。
【0199】
従って、1つの実施形態において、成分を別々に送達することを可能にする装置を使用して、本発明の組成物を投与部位に送達する。そのような送達システムは、多成分スプレーデバイスを包含し得る。または、特定の調節可能押出システムを使用して成分を送達することができ、または分離したペースト、液体または乾燥粉末の形態において手で送達することもでき、そして投与部位において手で混合することもできる。多成分組織封鎖剤/止血剤の送達に適合させた多くのデバイスが、当分野で公知であり、本発明の実施にも使用することができる。
【0200】
本発明の組成物のさらに別の送達法は、不活性形態の反応性成分を液体または粉末として生成する。次に、そのような組成物を、組織部位への適用の後またはすぐ前に、活性化剤を適用することによって活性化することができる。1つの実施形態において、活性化剤は、それと混合した際に組成物を活性化するpHを有する緩衝液である。さらに他の組成物送達法は、予備形成シートを生成し、そのシートを投与部位に適用する方法である。当業者は、公知のゲル強度およびゲル化時間を有するある特定組成物と共に使用すべき適切な投与プロトコルを容易に決めることができる。
【0201】
本発明の組成物は、気体、液体または固体の漏出を防止するコーティングまたは封鎖層を必要とする医学的状態に使用することができる。その方法は、以下の封鎖を行なうために、損傷した組織または器官に両成分を適用することを含む:1)血流を止めるかまたは最小限にするための、血管および/または他の組織または器官の封鎖;2)空気の漏出を止めるかまたは最小限にするための、胸組織の封鎖;3)便または組織含有物の漏出を止めるかまたは最小限にするための、胃腸管または膵臓組織の封鎖;4)尿の漏出を止めるかまたは最小限にするための、膀胱または尿管の封鎖;5)CSFの漏出を止めるかまたは最小限にするための硬膜の封鎖;6)漿膜流体の漏出を止めるための、皮膚または漿膜組織の封鎖。これらの組成物を使用して、小管、神経または皮膚組織のような組織を接着し得る。この物質は、1)1つの組織の表面にこの物質を適用し、次に、第二組織を第一組織に素早く押し付けることによるか、または2)組織を近接併置し、次に、この物質を適用することによって、使用することができる。さらに、この組成物を使用して、疾患または手術によって形成される軟組織および硬組織における腔を充填することもできる。
【0202】
例えば、本発明のポリマーマトリックスを使用して哺乳類患者の体内の種々の管腔および空隙を封鎖するかまたは充填することができる。組成物をバイオシーラントとして使用して、組織または構造物(例えば血管)内の裂溝または間隙、または隣接する組織または構造物間の結合部を封鎖し、血液または他の生物学的流体の漏出を防止することもできる。
【0203】
組成物を、手術または照射処置の間に、体腔における器官置換用の大空間充填デバイスとして使用して、例えば、骨盤への計画照射過程の間に腸を保護することもできる。
【0204】
血管または卵管のような生理学的管腔の内面を本発明の組成物でコーティングし、それによって封鎖剤として作用して、例えば、血管の内面から動脈斑沈着物を除去するバルーンカテーテル法または卵管の内部からの瘢痕組織または子宮内膜組織の除去のような医学的処置後の管腔の再狭窄を防止することができる。第一および第二合成ポリマーの混合後すぐに、反応混合物の薄い層を血管の内面に適用する(例えば、カテーテルによる)のが好ましい。本発明の組成物は生体内で容易分解性でないので、コーティング物の分解による再狭窄の可能性が最小限にされる。
【0205】
本発明の組成物は、哺乳類患者の体内の軟組織または硬組織の増大にも使用することができる。軟組織増大の適用の例は、括約筋(例えば、尿道、肛門、食道括約筋)増大、およびシワおよび瘢痕の治療を包含する。硬組織増大の適用の例は、骨および/または軟骨組織の修復および/または置換を包含する。
【0206】
本発明の組成物は、変形性関節症の関節における骨液の置換物質として使用し得る。本発明の組成物は、関節における軟質ゲル網状構造を回復させることによって、関節痛を減少させ、関節機能を向上させ得る。架橋ポリマー組成物は、損傷した椎間円板の髄核の置換物質として使用することもできる。損傷した椎間円板の髄核を先ず除去し、次に、反応性組成物を、円板の中央に注射するかまたはそれ以外の方法で導入する。本発明の組成物は、円板への導入前に架橋していてもよく、またはインサイチュで架橋させてもよい。
【0207】
いくつかの実施形態において、1つまたは2つまたはそれ以上の重合剤を使用し得る。例えば、電磁放射線を、単独で、または光開始剤と共に、使用してよい。光開始剤だけを使用してもよい。付加的にまたは独立に、酸化還元重合剤を使用し得る。電磁放射線または光開始剤は、急速重合を誘発する。そのような急速重合は、組成物が所望の位置に留まることを確実にし得る。酸化還元重合剤は、電磁放射線と同時に、前に、または後に使用し得る。酸化還元重合剤は、例えば約2時間の、遅い重合を誘発し得る。
【0208】
哺乳類患者の体内において組織または円板の増大を生じさせる一般的方法において、増大を必要とする組織または円板部位に、反応性組成物の成分を同時に注射するか、植え込むか、または注入する。本発明の組成物は、この注射、植え込み、注入または方向付けのために適切な賦形剤を含有して生成し得る。一旦、患者の体内に入れば、官能化コンドロイチン硫酸、および例えばアミン基含有化合物を、互いに反応させて、架橋ポリマー網状構造をインサイチュで形成し得る。官能化コンドロイチン硫酸を、例えば患者自身の組織内のコラーゲン分子のリシン残基上の、第一級アミノ基と反応させて、宿主組織による組成物の「生物学的固定」を与えてもよい。
【0209】
または、ポリマーマトリックスを、解剖学的領域に植え込み可能な固体物質として、またはその領域の部分をコーティングするのに使用し得るフィルムまたは網として、形成してもよい。関連する解剖学的領域に固体物質を植え込む種々の方法も、当業者に公知である。
【0210】
いくつかの実施形態において、再建すべき外科的に形成した欠損に、本発明の組成物を配置し、再建が実施された後もこの位置に残しておく。本発明は、局所組織再建、有茎皮弁再建または遊離皮弁再建に使用するのに好適である。
【0211】
(アッセイおよびキット)
いくつかの実施形態において、本発明は、関節炎のような軟骨分解疾患についての有効度評価および診断用のアッセイおよびキットに関する。いくつかの実施形態において、アッセイまたはキットは、本発明の架橋ポリマーマトリックスを分解し得る酵素の存在を検出する。
【0212】
例えば変形性関節症は、関節の関節軟骨の変形性疾患である。その初期の段階において、それは主に非炎症性であり、慢性関節リウマチと異なる。変形性関節症は、単独の疾患ではなく、種々の要因(例えば、遺伝的素因、機械的酷使、関節奇形または以前の損傷等)によって生じ得る関節不全を示すものと考えられる。関節軟骨の破壊は、変形性関節症の主要な進行性の特徴である。関節軟骨を破壊し得る他の疾患は以下の疾患を包含する:慢性関節リウマチ、若年性関節リウマチ、硬直性脊椎炎、乾癬性関節炎、ライター症候群、再発性多発性軟骨炎、下背部痛症候群(low back pain syndrome)、および関節炎の他の感染性形態。一般に、関節炎は、軟骨分解活性に関係している。
【0213】
本明細書に開示するアッセイ、方法およびキットは、中等度症状患者における加速性軟骨分解の早期徴候を検出し、より進行した患者における疾患進行をモニタリングことに使用でき、薬剤または他の療法の効果をモニタリング手段として使用できる。他の実施形態において、本発明は、本発明の組成物および架橋ポリマーマトリックスおよび任意に使用のための指示書を含有するキットを含む。そのようなキットの使用は、例えば治療への応用を含む。本発明は、疾患または状態の治療に使用されるキットも提供する。例えば、キットは、既に混合されているかまたは別々に供給される、本発明の官能化コンドロイチン硫酸化合物、および生体適合性ポリマーまたはアミン成分含有化合物を含んで成る。
【0214】
使用される試験キットは、コンドロイチナーゼおよびコラーゲナーゼのような軟骨分解酵素の存在下に分解する、官能化二糖を含んで成る架橋マトリックスポリマーを含有し得る。そのようなキットを使用して、他のプロテアーゼおよび酵素も検出し得る。
【実施例】
【0215】
(実施例)
ここで、本発明が一般的に記載されることで、以下の実施例を参照することによって本発明がより容易に理解される。実施例は、本発明の特定の局面および実施形態の例示目的のためのみに含まれ、本発明を限定することを意図されない。
【0216】
(実施例1:物質)
コンドロイチン硫酸Aナトリウム塩(CS、タイプA70%、ウシ気管からのタイプCで平衡)およびアセトン(<0.5%水)を、SIGMA,MOから入手する。メタクリル酸グリシジル(GMA、純度98%)を、Polysciences,PAから入手する。アクリレート−PEG−アクリレート(PEODA、100%M3127、多分散度=1.03(GPC分析によって測定))を、Shearwater,ALから入手する。燐酸塩緩衝液(PBS、pH7.4)はGIBCOから入手し得る。
【0217】
(実施例2:GMA−CSの合成)
室温で勢いよく攪拌しながら、CS10gをPBS100mLに溶解し、次に、GMA10mLを添加する。アセトン析出によってサンプルを第1、3、5、7、10および15日に採集し、アセトン抽出によって2回精製する。GMA−CS生成物(第1、3、5、7、10および15日)を24時間凍結乾燥し、4℃で保存する。
【0218】
(実施例3:アルデヒド官能化CSおよび架橋マトリックスの合成)
コンドロイチン硫酸タイプA(隣接ジオール0.8〜1.2mmol、70%CS−A、Sigma)600mg、および過沃素酸ナトリウム(約2.88mmol、NaIO4、Sigma)616mgを一緒に脱イオン水10mLに溶解し、光から保護する。暗所で勢いよく攪拌しながら、反応を約14時間継続させる。不溶性副生物を0.22μmフィルターで除去し、生成物をSephedex G−25(Sigma)サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)カラムに装填し、それによって生成物を水溶性副生物および未反応小分子から精製する。生成物コンドロイチン硫酸−アルデヒド(CS−ald)を、凍結乾燥によって約90%の収率で得る。アルデヒド置換度の測定を、塩酸ヒドロキシルアミン滴定によって行なう。結果は60〜70%の置換である。
【0219】
等容量(20μL)の25%CS−aldおよび40%ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma)を混合することによって、組織粘着物(tissue adhesive)を配合する。その粘着物を配合後すぐに使用し、反応をシッフ塩基メカニズムによって2〜5分間で終了させる。
【0220】
(実施例4:NMR法)
NMRスペクトルを、Unity Plus 500 MHz分光計(Varian Associates)で記録する。ジュウテリウム−d2(D20、99.9% h、SIGMA)におけるH−NMRについては、約50mgの物質をD2O1.0mLに溶解し、4.8ppmにおける2HOHを基準ピークとして使用した。ジュウテリウム−d2(D20、99.9% 2H、SIGMA)における13C−NMRについては、パルスは51.9度であり、パルス長さ7μs、取得時間1.300秒、および50℃における80000反復を使用する。
【0221】
(実施例5:光架橋およびヒドロゲル膨潤率)
GMA−CSおよびPEODAを1:1(w/w)で混合し、水に溶解して、GMA−CS濃度10%(w/w)とする。マクロマー溶液(10%w/v)150Lを、ティシューインサート(tissue insert)(直径8mm)に入れ、重合させる。細胞適合性紫外線開始剤Ingracure 2959(0.05% w/w、Ciba Geigy)および365nm光を使用して、ラジオメータで測定して約10mW/cm2において、光架橋を開始する。マクロマーを30分間光重合させる。
【0222】
光架橋ヒドロゲルを、PBSにおいて37℃で18時間にわたって平衡させる。ヒドロゲルの含水量を、構造物の湿重量(Ww)を測定することによって求める。ヒドロゲルの乾燥重量(Wd)を24時間凍結乾燥した後に測定した。ヒドロゲル平衡膨潤率qは、q≒Ww/Wdによって算出される。
【0223】
(実施例6:流体力学的特徴付け)
PBS平衡共重合CS−MAおよびポリ(エチレンオキシド)−ジアクリレート(PEODA)(3,400;Shearwater Polymers,Knoxville,TN)マクロマー(20% w/v)ヒドロゲル構造物を、上記のティシューカルチャーインサートにおいて調製する。構造物は、カレントセンシング(current sensing)マイクロメータで測定したところ、平均して、直径13.21±0.86mmおよび厚さ4.67±0.16mmである。構造物におけるPEODAおよびCS−MAの重量パーセントは、0%(即ち、純粋PEODA)、25%、50%、75%および100%(即ち、純粋CS−MA)である。RFS−3流動計(Rheometric Scientific Inc.)において平衡板配置を使用して、流動学的試験を行なう。度数(frequency)6.28rad/秒における予備的動的剪断歪−掃引試験は、種々の濃度比率を有するサンプルについて、直線的応力−歪範囲にある0.1%剪断歪を示し、そのような直線性は、動的剪断度数−掃引試験の前に各被験サンプルについて動的剪断歪−掃引試験を使用して確認される。動的剪断度数−掃引を、0.1〜100rad/秒の度数で、0.1%の剪断振幅(amplitude)で試験する。
【0224】
(実施例7:形態学的分析)
CS−MAおよびPEODAの20%(w/v)マクロマー溶液から合成したヒドロゲルブロックをカットし、凍結し、凍結乾燥した。ヒドロゲルの表面および切り口を、LEO 1530 Field Emission走査電子顕微鏡(LEO Electron Microscopy Inc.)で分析する。
【0225】
(実施例8:分解実験)
重合ヒドロゲルの分解を、pH8.0Tris−HCl緩衝消化溶液(Tris−HCl60mM/L、酢酸ナトリウム40mM/L、およびウシ血清アルブミン1.5x10−4mg/L)において、37℃、5%CO2で行なう。光重合CS−MAヒドロゲル(20%w/v)を計量し、コンドロイチナーゼABC(0.8mg/mL)を添加するかまたは添加せずに、2.5mL消化緩衝液と共に24穴細胞培養皿に入れる。所定の時点で、構造物の重さを計る。コンドロイチナーゼABC濃度も変化させ(0.0025g/mL、0.025g/mL、0.25g/mLおよび2.5g/mL)、所定の時点で、消化溶液の吸収を、600nmにおけるバックッグラウンド減算で232nmにおいて測定して、分解の進行に伴う二糖の発生をモニタリング(n=3)。数値をヒドロゲル構造物の原重量に標準化する。図9は、コンドロイチンABCの存在下の、33時間にわたるCS−MAゲル重量の減少を示す。実験を通して定重量を維持する酵素を添加せずに培養した対照ゲルと比較して、酵素の存在下に、33時間までにゲルが完全に分解される。ゲルからの分解コンドロイチン硫酸の遊離を、種々の濃度のコンドロイチナーゼ酵素を含有する緩衝液において測定した。酵素濃度の増加は、周囲緩衝液において観測される分解副生物の濃度を増加させる。
【0226】
(実施例9:細胞封入および生存度)
CS−MAおよびPEODAを1:1の比率で混合し、100U/mLペニシリンGおよび100μg/mLストレプトマイシンを含有するPBSに溶解して、20%(w/v)溶液を調製する。0.05%Irgacure D−2959(w/v)を添加した後、マクロマー溶液を添加して、細胞ペレットを再懸濁し、最終濃度20x106細胞/mLにし、次に、10mW/cm2紫外線で8分間光重合させる。次に、構造物を、軟骨細胞培地高グルコースダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM)(10%ウシ胎児血清(FBS)、10μg/mLビタミンC、12.5mM HEPES、0.1mM非必須アミノ酸、および0.4mMプロリン)に移し、37℃、5%CO2で培養する。
【0227】
MTTアッセイおよび生存/死亡染色アッセイをそれぞれ行なって、培養の1日後に細胞生存力を測定する。MTTアッセイについては、構造物をPBSで2回洗浄し、2mLのMTT溶液(2%FBSを含有するDMEM中0.5mg/mL)を各穴に2〜4時間添加する。活発に代謝している細胞を、光学顕微鏡で観察する。封入された細胞の細胞生存力を、生存/死亡 生存力/細胞毒性キット(Molecular Probes,Eugene,OR,U.S.A.)によっても評価する。外科用ナイフを使用して、構成物から3層の薄片(100〜200μm)を調製する。薄片を、生存/死亡アッセイ試薬(2μMカルセインAMおよび4μM)中で30分間培養する。カルセインAMに蛍光光学フィルター(485±10nm)、およびエチジウムホモダイマー−1にローダミン光学フィルター(530±12.5nm)を使用して、蛍光顕微鏡検査を行なう。
【0228】
(実施例10:IVD適用)
0.1%(w/v)Irgacure D2959光開始剤を添加した80%CSMAを含有するポリマー組成物、または0.1%(w/v)Irgacure D2959を添加した50%CSMA/10%PEODAを含有するポリマー組成物を使用する。パートAにおけるIVDスペースにおいて光重合したゲルを除去し、膨潤率を測定する。0.1%D2959および0.15M過硫酸ナトリウム−0.12Mチオ硫酸ナトリウムを含有するCSMAと共に、水溶性酸化還元開始系を使用する。その系を、死体IVDスペースに埋め込む。光重合の後に、死体脊柱(spine)を37℃のインキュベータに入れて酸化還元重合させる。ゲル化の後、ゲルのサイズおよび含水量を測定する。このモデルにおいて得られる結果は、生体内結果に対応すると予想される。
【0229】
(実施例11:ウサギ試験)
IVDウサギ穿刺モデルを使用して、正常円板変性過程を模倣する。50mg/kgケタミンIMおよび10mg/kgキシラジンIMで動物に麻酔をかけ、18ゲージ針を使用してIVD円板スペースに刺創を形成する。ポリマー注入の前に、円板を4週間変性させる。ポリマー配合物を、崩壊した円板スペースに注入し、重合させる。対照IVD円板スペースには、ポリマーの変わりに食塩水を注入する。動物を1週間に1回、X線撮影によって監視して、インプラント配置、円板高さ、および組織分解または炎症をモニタリング。4、8および12週間後に動物を犠牲にし、組織学的分析を行なって、ポリマーサイズおよび形、炎症、および周囲組織統合および修復を観測する。
【0230】
(等価物)
本明細書に開示されているポリマー、ポリマーマトリックス、サブユニットまたは他の組成物の予想される等価物は、その意図する目的を達成するそのような分子または組成物の有効性に不利な影響を与えない1つまたはそれ以上の簡単な置換基の変更がなされている以外はそれらに対応し、それと同じ一般的特性(例えば、生体適合性)を有する物質を包含する。一般に、本発明化合物は、容易に入手可能な出発物質、試薬および一般的合成手順を使用して、以下のような一般反応式に例示されている方法によるか、またはその変法によって生成し得る。これらの反応において、それ自体公知であるがここでは記載しない別形を使用することもできる。
【0231】
本明細書に記載されている全ての刊行物および特許(以下のものを含む)は、個々の刊行物または特許が参照として本明細書に組み入れられることが特にかつ個々に示されているかのように、その全体が参照として本明細書に援用される。係争の際には、本明細書に記載したあらゆる定義を含む本出願が支配する。
【0232】
The Institute for Genomic Research(TIGR)(www.tigr.org)および/またはNational Center for Biotechnology Information(NCBI)(www.ncbi.nlm.nih.gov)によって管理されているような公共データベースへの登録に対応するアクセッション番号の付いたあらゆるポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列も、全体として参照として組み入れられる。
【0233】
また、以下のものが参考として本明細書中に援用される。
【0234】
(特許および特許出願)
U.S.2002/0022588、U.S.6605294、U.S.6602975、U.S.2003/0119985、U.S.2003/0031697。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書または図面に記載される発明。
【請求項1】
明細書または図面に記載される発明。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−121961(P2011−121961A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3497(P2011−3497)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【分割の表示】特願2004−539986(P2004−539986)の分割
【原出願日】平成15年9月25日(2003.9.25)
【出願人】(504303274)ジョーンズ・ホプキンス・ユニバーシティ・スクール・オブ・メディシン (3)
【出願人】(509303349)ユニバーシティー オブ メリーランド (2)
【出願人】(510168302)ザ ナショナル インスティテューツ オブ ヘルス (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【分割の表示】特願2004−539986(P2004−539986)の分割
【原出願日】平成15年9月25日(2003.9.25)
【出願人】(504303274)ジョーンズ・ホプキンス・ユニバーシティ・スクール・オブ・メディシン (3)
【出願人】(509303349)ユニバーシティー オブ メリーランド (2)
【出願人】(510168302)ザ ナショナル インスティテューツ オブ ヘルス (1)
【Fターム(参考)】
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