説明

案内レールの敷設方法、案内軌条及び交通システム

【課題】案内レールの継ぎ目の影響を低減し、乗り心地の向上を図ることができる案内レールの敷設方法、案内軌条及び交通システムを提供する。
【解決手段】所定の長さの標準レール部材と、標準レール部材と異なる長さの調整レール部材とを準備するレール部材準備工程S1と、標準レール部材を両側に順次敷設する標準レール部材敷設工程S2と、標準レール部材敷設工程S2を実施して、次に敷設する両側の標準レール部材の先端が案内軌条の曲線部に位置する場合に、先端同士の間の離間距離が、曲線部の外側に対して、内側が走行方向後方側で車両における前後の案内輪の離間距離により規定される規制範囲に含まれるか否かを判断する判断工程S3と、判断工程S3で規制範囲に含まれると判断された場合に、曲線部の一方側で調整レール部材を敷設する調整レール部材敷設工程S4とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道系交通システムの車両を案内軌条の側方で案内する案内レールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
バスや鉄道以外の新たな交通手段として、ゴムタイヤからなる走行輪で案内軌条を走行するとともに、この車両の両側部に設けられた案内輪が案内軌条に設けられた案内レールによって案内される軌道系交通システムが知られている。このような軌道系交通システムは、一般に新交通システムやAPM(Automated People Mover)と呼ばれている
【0003】
このような軌道系交通システムの案内軌条の両側部それぞれにおいては、車両の走行方向に沿って複数の案内レールが連結金具によって連結されるとともに、各々の案内レールは、所定の間隔をあけて案内軌条の両側部に設置される案内レールポストによって支持されている。
【0004】
ここで、このように案内レール同士を連結する連結金具は、例えば特許文献1に開示されており、この連結金具は、案内レール同士の継ぎ目を跨いで案内レールのウェブの上下両側に配置されて、連結ボルト及び押しボルトによって、案内レールのウェブと内側フランジ及び外側フランジとに連結金具が面接触して、案内レール同士の連結を確実に行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−213603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された連結金具では、面接触によって案内レール同士の継ぎ目の緩みを解消可能としているものの、案内レールの熱伸びを吸収可能とするように、隣接する案内レール同士が車両の走行方向に接触した状態で連結されておらず、案内レール同士の間に多少の間隙が設けられている。従って、案内レール同士の間の上記間隙によって、案内輪が案内レールに接触した状態で継ぎ目を通過する場合には車両が衝撃を受けてしまうことも懸念されていた。
特に、軌道の曲線部を走行する際には、軌道の外軌(曲線部外側の案内レール)には車両の前方側に配置される案内輪が接触し、軌道の内軌(曲線部内側の案内レール)には車両の前方側に配置される案内輪が接触した状態となるため、内軌の継ぎ目及び外軌の継ぎ目に同時に案内輪が接触してしまった場合には、上述の継ぎ目の影響をさらに大きく受けてしまい、乗り心地の点で好ましくない。
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、案内レールの継ぎ目の影響を低減し、乗り心地の向上を図ることができる案内レールの敷設方法、及び案内軌条を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用している。
即ち、本発明に係る案内レールの敷設方法は、車両の両側部にそれぞれ複数設けられた案内輪を、それぞれ案内する一対の案内レールを備えた軌道系交通システムの案内軌条における案内レールの敷設方法であって、前記案内レールを構成するレール部材として、所定の長さの標準レール部材と、標準レール部材と異なる長さの調整レール部材とを準備するレール部材準備工程と、一対の前記案内レールとして、前記標準レール部材を両側に順次敷設する標準レール部材敷設工程と、前記標準レール部材敷設工程を実施して、次に敷設する両側の前記標準レール部材の先端が前記案内軌条の曲線部に位置する場合に、前記先端同士の間の離間距離が、前記曲線部の外側に対して、内側が走行方向後方側で前記車両における前後の前記案内輪の離間距離により規定される規制範囲に含まれるか否かを判断する判断工程と、前記判断工程で前記規制範囲に含まれると判断された場合に、前記曲線部の一方側で調整レール部材を敷設する調整レール部材敷設工程とを備えることを特徴とする。
【0009】
このような案内レールの敷設方法によると、標準レール部材敷設工程で標準レール部材を敷設した後に、判断工程によって曲線部に位置する標準レール部材の先端同士が、案内軌条の曲線部の外側の標準レール部材の先端と内側の標準レール部材の先端との間の距離が、ちょうど規制範囲に含まれるか否かが判断される。そして、外側の標準レール部材の先端と内側の標準レール部材の先端との間の距離が、上記規制範囲に含まれると判断された場合、調整レール部材敷設工程で、標準レール部材とは長さの異なる調整レール部材を、曲線部の外側と内側とのうちの一方側に敷設することによって、曲線部の外側と内側とで、標準レール部材及び調整レール部材の先端がちょうど上記規制範囲内に位置することを回避できる。このように本発明では、判断工程でこの規制範囲に対する判断を行ないながらレール部材を敷設することで、曲線部の外側及び内側の両方において、隣接するレール部材の先端同士の間の継ぎ目に、同時に案内輪が接触してしまうことを回避できる。
【0010】
さらに、本発明に係る案内軌条は、前記車両の両側部にそれぞれ複数設けられた案内輪を、それぞれ案内する一対の案内レールを備えた軌道系交通システムの案内軌条において、一対の前記案内レールは、それぞれ複数のレール部材が繋がれて構成されており、少なくとも曲線部では、一対の前記案内レールのそれぞれのレール部材の継ぎ目位置が、前記曲線部の外側に対して、内側が走行方向後方側で前記車両における前後の前記案内輪の離間距離により規定される規制範囲に含まれる位置から、位置ずれするように設定されていることを特徴とする。
【0011】
このような案内軌条によると、レール部材の継ぎ目位置が、曲線部の外側と内側とで規制範囲に含まれないように位置ずれして設けられている。従って、曲線部において、走行方向の前方側で曲線部外側に位置する案内輪と、走行方向の後方側で曲線部内側に位置する案内輪とが、それぞれ案内レールに接触する際に、曲線部の外側と内側との両方において、レール部材の継ぎ目に同時に案内輪が接触してしまうことを回避できる。この結果、継ぎ目における衝撃の影響を回避可能となり、継ぎ目の案内輪への影響を低減することによって、乗り心地の向上を図ることができる。
【0012】
また、本発明に係る交通システムは、車両と、前記車両を案内する上記の案内軌条とを備えることを特徴とする。
【0013】
このような交通システムによると、曲線部の外側と内側との両方において、レール部材の継ぎ目に同時に案内輪が接触してしまうことを回避でき、継ぎ目における衝撃の影響を回避可能となり、乗り心地の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の案内レールの敷設方法、案内軌条及び交通システムによると、曲線部の外側と内側とで同時に案内輪が案内レールにおけるレール部材の継ぎ目に接触することを回避でき、継ぎ目から案内輪への影響を低減して、乗り心地の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る案内レールの敷設方法によって、案内レールが敷設された案内軌条を車両が走行する様子を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る案内レールの敷設方法の手順を示すフロー図である。
【図3】本発明の実施形態に係る案内レールの敷設方法に関し、標準レール部材敷設工程を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る案内レールの敷設方法に関し、判断工程を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る案内レールの敷設方法に関し、判断工程でYESと判定された後に、調整レール部材敷設工程を実行する場合を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る案内レールの敷設方法に関し、判断工程でNOと判定された後に、標準レール部材敷設工程を実行する場合を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る案内レールの敷設方法に関し、判断工程でNOと判定された後に、標準レール部材敷設工程を実行し、さらにその後に判断工程でYESと判定された後に、調整レール部材敷設工程を実行する場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る軌道系交通システムの案内レール1の敷設方法について説明する。
図1に示すように、軌道系交通システムは、案内軌条10と、案内軌条10で案内されて走行する車両3とを備えている。
【0017】
車両3は、車両本体22と、車両本体22を支持する台車20a、20bとを備えている。本実施形態では、台車20a、20bは、車両本体22の前後2ヶ所に設けられている。また、それぞれの台車20a、20bは、案内軌条10を走行するための走行輪23と、車両本体22の両側部にそれぞれに設けられた案内輪21とを有している。本実施形態では、案内輪21は、各台車20a、20bの各側部に前後2つずつ設けられているため、車両3の全体としては、各側部に前後に並んで4つずつ、両側部で計8つ設けられている。
【0018】
案内軌条10は、車両3の走行輪23が走行する床盤10aと、幅方向両側で設けられ走行する車両3の案内輪21をそれぞれ案内する一対の案内レール1とを備えている。ここで、案内レール1において、走行方向Dに向かって幅方向左側を左側案内レール1a、走行方向Dに向かって幅方向右側を右側案内レール1bと称する。
【0019】
ここで、案内軌条10は、直線部11と、この直線部11に連続して設けられる曲線部12とを備えている。
【0020】
案内レール1は、案内軌条10の幅方向両側に車両3の走行方向Dに沿って所定の間隔をあけて設置される案内レールポスト2に支持されており、走行方向Dに沿って延在する一対の部材、即ち左側案内レール1a及び右側案内レール1bである。
【0021】
そしてこれら左側案内レール1a及び右側案内レール1bそれぞれは、一般的に使用される長さのレール部材である複数の標準レール部材4と、この標準レール部材4よりも長さの短いレール部材である1本の調整レール部材5と、走行方向Dに隣接するレール部材同士の間に設けられる継ぎ目部(継ぎ目)6とを有している。
【0022】
標準レール部材4は、例えば一般的に使用される長さ(本実施形態では12メートル)のレール部材であって、案内輪21と接触して車両3を案内可能とするように、標準レール部材4の幅方向内側を向く面と案内輪21の外周面とが対向するように配置されている。また標準レール部材4は、継ぎ目部6に干渉しない位置において、複数の案内レールポスト2によって支持されている。
【0023】
調整レール部材5は、標準レール部材4よりも短い長さ(本実施形態では、12メートル未満)のレール部材であって、標準レール部材4と同様に、案内輪21と接触して車両3を案内可能とするように、調整レール部材5の幅方向内側を向く面と案内輪21の外周面とが対向するように配置されている。また調整レール部材5は、継ぎ目部6に干渉しない位置において、複数の案内レールポスト2によって支持されている。
【0024】
さらに、案内軌条10の直線部11で、走行方向Dに向かって案内軌条10の左側部分で、曲線部12の外軌となる左側案内レール1aにおいては、継ぎ目部6を介して複数の標準レール部材4が走行方向Dに連結されている。
【0025】
一方で、案内軌条10の直線部11で、走行方向Dに向かって案内軌条10の右側部分で、曲線部12の内軌となる右側案内レール1bにおいては、継ぎ目部6を介して複数の標準レール部材4が連結されるとともに、直線部11と曲線部12との間を跨がないように、曲線部12の手前で標準レール部材4と調整レール部材5とが継ぎ目部6を介して連結されている。
【0026】
また、案内軌条10の曲線部12で、走行方向Dに向かって案内軌条10の左側部分で、外軌となる左側案内レール1aにおいては、直線部11の標準レール部材4に連続するように、継ぎ目部6を介して標準レール部材4が連結されている。
一方で案内軌条10の曲線部12で、走行方向Dに向かって案内軌条10の右側部分で、内軌となる右側案内レール1bにおいては、直線部11の調整レール部材5に連続するように、継ぎ目部6を介して標準レール部材4が連結されている。
【0027】
そして、走行方向Dの前側の台車20aにおける左側案内レール1aに対向する前側の案内輪21と後側の台車20bにおける右側案内レール1bに対向する前側の案内輪21との間の離間距離によって規定される規制範囲LVに、左側案内レール1aの継ぎ目部6と右側案内レール1bの継ぎ目部6との間の距離Lの値が含まれないように設定されている。
【0028】
ここで、案内軌条10の曲線部12を車両3が走行する際には、前側の台車20aにおける左側案内レール1aに対向する前側の案内輪21と、後側の台車20bにおける右側案内レール1bに対向する前側の案内輪21とが、それぞれ左側案内レール1a及び右側案内レール1bに接触した状態となる。従って、本実施形態における規制範囲LVは上記離間距離によって規定されている。
【0029】
具体的には、本実施形態の車両3ではそれぞれ前後2つの台車20a、20bは案内軌条10に沿ってそれぞれ旋回するため、上記離間距離は最大で200mm程度まで広がることとなる。このため規制範囲LVは、最小の上記離間距離から、この最小の上記離間距離に200mmを加えた値を含む範囲に設定されている。
【0030】
さらに、案内輪21は走行方向Dにある程度の寸法を有しているので、規制範囲LVはこの寸法を考慮して、下限は最小の上記離間距離より小さく、上限は最小の上記離間距離に200mmを加えたものよりも大きくなるように設定されている。
【0031】
次に、案内レール1の敷設方法の手順について説明する。
図2に示すように、案内レール1の敷設方法は、標準レール部材4及び調整レール部材5を準備するレール部材準備工程S1と、標準レール部材敷設工程S2と、標準レール部材4または調整レール部材5のいずれを敷設するのかを判断する判断工程S3と、調整レール部材敷設工程S4とを備えている。
【0032】
まず、レール部材準備工程S1を実施する。即ち、所定の長さ(本実施形態では12メートル)の標準レール部材4と、標準レール部材4よりも短い長さ(本実施形態では12メートル未満)の調整レール部材5を準備する。
【0033】
次に、図3に示すように、標準レール部材敷設工程S2を実施する。即ち、案内軌条10の直線部11において左側案内レール1a及び右側案内レール1bともに、案内軌条10の幅方向の両側に設置された案内ポストに標準レール部材4を固定して、継ぎ目部6を介して標準レール部材4を走行方向Dに向かって順次敷設していく。
【0034】
さらに、図4に示すように、判断工程S3を実施する。具体的には、標準レール部材敷設工程S2によって順次敷設した標準レール部材4の先端から走行方向Dに向かって、次の標準レール部材4を仮に配置する。なおこの際、仮に配置した標準レール部材4の先端は、案内軌条10の曲線部12に位置することになる。
【0035】
そして、この直線部11から曲線部12を跨いで仮に配置された標準レール部材4のうち、左側案内レール1aにおける標準レール部材4の先端に、走行方向Dの前側の台車20aの前側の案内輪21が位置した場合、右側案内レール1bにおける標準レール部材4の先端に後側の台車20bの前側の案内輪21が位置する状態となるか否かを判断する。より詳しくは、このような状態とは、左側案内レール1aにおける標準レール部材4の先端と右側案内レール1bにおける標準レール部材4の先端との間の距離Lが、前側の台車20aの前側の案内輪21と、後側の台車20bの前側の案内輪21との離間距離により規定される規制範囲LVとなる状態である。そして、距離Lが規制範囲LVに一致した状態を判断工程S3におけるYES判定とし、一方で距離Lが案内輪距離LVに一致しない状態を判断工程S3におけるNO判定とする。
【0036】
ここでまず、判断工程S3でYES判定と判断された場合について説明する。
この場合、図2及び図5に示すように、判断工程S3に続いて、調整レール部材敷設工程S4を実行する。即ち、左側案内レール1aにおいては、判断工程S3において仮に配置した標準レール部材4をそのまま敷設せずに、代わりに調整レール部材5を敷設する。そして、右側案内レール1bにおいては、判断工程S3で仮に配置した標準レール部材4をそのまま敷設する。
【0037】
次に、判断工程S3でNO判定と判断された場合について説明する。
この場合、図2及び図6に示すように、判断工程S3に続いて、標準レール部材敷設工程S2を実行する。即ち、左側案内レール1aと右側案内レール1bともに判断工程S3で仮に配置した標準レール部材4をそのまま設置することとなる。
【0038】
そして、判断工程S3でYES判定またはNO判定と判断がされて、標準レール部材敷設工程S2または調整レール部材敷設工程S4を実施したいずれの場合でも、その後、判断工程S3へ戻り、再度YES判定かNO判定かの判断を行なう。そして、この判断に応じて、調整レール部材敷設工程S4か、又は標準レール部材敷設工程S2を実施する。このように、判断工程S3と、標準レール部材敷設工程S2及び調整レール部材敷設工程S4とは、敷設する案内レール1の先端が曲線部12に位置する限り、繰り返し行われる。
【0039】
このような案内レール1の敷設方法によると、標準レール部材敷設工程S2と、判断工程S3と、調整レール部材敷設工程S4とが繰り返されることによって、案内軌条10の曲線部12において左側案内レール1aの継ぎ目部6と右側案内レール1bの継ぎ目部6との距離Lが規制範囲LVに常に含まれないように位置ずれして設けられることとなる。
【0040】
そして、特に案内軌条10の曲線部12では、左側案内レール1aには車両3の前側に配置される台車20aの前側の案内輪21が接触した状態となり、右側案内レール1bには車両3の後側に配置される台車20bの前側の案内輪21が接触した状態となるが、上述のように左側案内レール1aの継ぎ目部6と右側案内レール1bの継ぎ目部6とが位置ずれして設けられるため、左側案内レール1a、右側案内レール1bそれぞれに対向する案内輪21が同時に継ぎ目部6に接触することがない。
【0041】
さらに、車両3が曲線部12を走行する際には台車20a、20bが案内軌条10に沿って旋回し案内輪21同士の上記離間距離が200mm程度変動し、また案内輪21がある程度の寸法を有しているが、規制範囲LVがこれらの条件を考慮されて判断工程S3での判断が行なわれる。このため、確実に左側案内レール1a、右側案内レール1bの継ぎ目部6同士を位置ずれした状態で設置でき、案内輪21の両側の継ぎ目部6への同時接触を回避できる。
【0042】
ここで、案内レール1の走行方向Dの熱伸びに対応するために、継ぎ目部6には間隙が設けられて標準レール部材4及び調整レール部材5が連結されている。そして、案内レール1に案内輪21が接触した状態でこれら継ぎ目部6を案内輪21が通過すると、この間隙位置によって衝撃を受ける。このため、これら継ぎ目部6に左側案内レール1a、右側案内レール1bで同時に案内輪21が接触した状態で通過する場合には、この継ぎ目部6の影響をさらに大きく受けてしまう。
【0043】
この点、本実施形態では、継ぎ目部6の位置における衝撃を、左側案内レール1a、右側案内レール1bから同時に受けることを回避することができるため、案内輪21への継ぎ目部6への接触により発生する振動の影響を低減することによって、乗り心地の向上を図ることができる。
【0044】
本実施形態の案内レール1の敷設方法においては、案内軌条10の曲線部12で、左側案内レール1aと右側案内レール1bとの継ぎ目部6を同時に案内輪21が通過することを回避でき、継ぎ目部6の影響を低減して、乗り心地の向上が可能となる。
【0045】
なお、本実施形態で説明した敷設方法は2つの敷設方法を包含していることになる。1つ目の方法は、直線部11に調整レール部材5を設けることによって、曲線部12において、左側案内レール1aの継ぎ目部6と右側案内レール1bの継ぎ目部6との間の距離Lが、規制範囲LVに含まれないようにしているものである。
【0046】
そして2つ目の敷設方法としては、図7に示すように、曲線部12に調整レール部材5を設けることによって、曲線部12において、左側案内レール1aの継ぎ目部6と右側案内レール1bの継ぎ目部6との間の距離Lを規制範囲LVに含まれないようにしているものである。この2つ目の敷設方法では、例えば、曲線部12が長く連続する場合に、左側案内レール1aと右側案内レール1bとの間で継ぎ目部6の位置が徐々にずれてしまう場合においても、左側案内レール1aの継ぎ目部6と右側案内レール1bの継ぎ目部6とが規制範囲LVに一致することを回避できる。
【0047】
以上、本発明の実施形態についての詳細説明を行なったが、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内において、多少の設計変更も可能である。
例えば、本実施形態では右側案内レール1bに調整レール部材5を設置することで継ぎ目部6をずらしているが、左側案内レール1aに調整レール部材5を設けて継ぎ目部6をずらしてもよい。この場合判断工程S3では、走行方向Dの後側の台車20bにおける右側案内レール1bに対向する案内輪21が、右側案内レール1bにおいて仮に配置した標準レール部材4の先端に位置した場合に、前側の台車20aの左側案内レール1aに対向する案内輪21が、左側案内レール1aにおいて仮に配置した標準レール部材4の先端に位置する状態となるか否かを判断することになる。
【0048】
また調整レール部材5は、標準レール部材4よりも短いものを採用しているが、標準レール部材4よりも長いものを用いてもよい。
【0049】
さらに、案内軌条10の直線部11においても、調整レール部材5を敷設することによって、直線部11においても、継ぎ目部6の位置が案内輪距離LVに一致しないようにでき、直線部11においても案内レール1に常に案内輪21が接触して車両3が走行するような場合においては特に、直線部11でも継ぎ目部6の影響を低減でき、直線部11での乗り心地向上も図ることが可能となる。
【0050】
また、本実施形態では、判断工程S3で走行方向Dの前側の台車20aにおける左前の案内輪21と、走行方向Dの後側の台車20bにおける右前の案内輪21との間の離間距離に基づいて規制範囲LVを定義して、距離Lがこの規制範囲LVに含まれるか否かを判断していた。
【0051】
しかし例えば、走行方向Dの前側の台車20aにおける左後の案内輪21と、走行方向Dの後側の台車20bにおける右前の案内輪21とが、案内レール1へ接触する場合にはこの離間距離を規制範囲LVとしてもよい。
また、走行方向Dの前側の台車20aにおける左前の案内輪21と、走行方向Dの後側の台車20bにおける右後の案内輪21との間の離間距離を規制範囲LVとしてもよい。 さらに、走行方向Dの前側の台車20aにおける左後の案内輪21と、走行方向Dの後側の台車20bにおける右後の案内輪21との間の離間距離を規制範囲LVとしてもよい。そして、これら複数の規制範囲LVを同時に満足するように、案内レール1の敷設を行なってもよい。この場合、継ぎ目部6の影響をさらに回避でき、さらなる乗り心地の向上につながる。
【0052】
また、判断工程S3で判断の基準となる規制範囲LVは、ある程度の寸法範囲を有するものでなくともよく、所定の数値であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…案内レール 1a…左側案内レール 1b…右側案内レール 2…案内レールポスト 3…車両 4…標準レール部材 5…調整レール部材 6…継ぎ目部 10…案内軌条 10a…床盤 11…直線部 12…曲線部 20a、20b…台車 21…案内輪 22…車両本体 23…走行輪 S1…レール部材準備工程 S2…標準レール部材敷設工程 S3…判断工程 S4…調整レール部材敷設工程 LV…規制範囲 L…距離 D…走行方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の両側部にそれぞれ複数設けられた案内輪を、それぞれ案内する一対の案内レールを備えた軌道系交通システムの案内軌条における案内レールの敷設方法であって、
前記案内レールを構成するレール部材として、所定の長さの標準レール部材と、標準レール部材と異なる長さの調整レール部材とを準備するレール部材準備工程と、
一対の前記案内レールとして、前記標準レール部材を両側に順次敷設する標準レール部材敷設工程と、
前記標準レール部材敷設工程を実施して、次に敷設する両側の前記標準レール部材の先端が前記案内軌条の曲線部に位置する場合に、前記先端同士の間の離間距離が、前記曲線部の外側に対して、内側が走行方向後方側で前記車両における前後の前記案内輪の離間距離により規定される規制範囲に含まれるか否かを判断する判断工程と、
前記判断工程で前記規制範囲に含まれると判断された場合に、前記曲線部の一方側で調整レール部材を敷設する調整レール部材敷設工程とを備えることを特徴とする案内レールの敷設方法。
【請求項2】
車両の両側部にそれぞれ複数設けられた案内輪を、それぞれ案内する一対の案内レールを備えた軌道系交通システムの案内軌条において、
一対の前記案内レールは、それぞれ複数のレール部材が繋がれて構成されており、
少なくとも曲線部では、一対の前記案内レールのそれぞれのレール部材の継ぎ目位置が、前記曲線部の外側に対して、内側が走行方向後方側で前記車両における前後の前記案内輪の離間距離により規定される規制範囲に含まれる位置から、位置ずれするように設定されていることを特徴とする案内軌条。
【請求項3】
車両と、
前記車両を案内する請求項2に記載の案内軌条とを備えることを特徴とする交通システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−113040(P2013−113040A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261889(P2011−261889)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】