説明

棒状菓子の製造方法

【課題】真っ直ぐな形状の棒状菓子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】穀粉を主成分とする紐状の紐状生地10から棒状菓子を製造する棒状菓子の製造方法であって、複数のハーフカット状の切れ目15が長手方向に沿って形成されると共にアルカリ液が含浸された紐状生地10を加熱面30に載置して焼成する焼成ステップS6と、焼成された紐状生地10を切れ目15において切断して棒状生地40を形成する切断ステップS7とを備える棒状菓子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状菓子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、棒状のプレッツエルや、この棒状のプレッツエルの表面にチョコレート等をコーティングした複合菓子等の棒状菓子が知られている。このような棒状菓子を製造する方法として、特許文献1に開示されている方法が知られている。
【0003】
この方法は、まず、小麦粉に砂糖や油脂、イースト、水などを混合攪拌して生地を生成し、次に、エクストルーダー等の機械により生地を紐状に押し出した後、この押し出された生地を所定長さに切断して棒状の成形生地を得る。その後、棒状の成形生地にアルカリ処理を施してオーブン等で焼成して棒状菓子を製造するというものである。なお、アルカリ処理は、焼成された棒状菓子に香ばしい風味と、サクサクした食感を付与するために行われる処理であり、アルカリ液に棒状の成形生地を浸漬すること等により行われる。
【0004】
また、チョコレート等がコーティングされた棒状菓子を製造するには、焼成後の棒状の成形生地の一方の端部をクリップ等のホルダーで挟み、液状のチョコレート等が収容された容器内に棒状の成形生地の他方の端部を浸漬することによって行われるのが一般的である。
【特許文献1】特開平10−14480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の棒状菓子の製造方法によって棒状菓子を製造する場合、棒状の成形生地の焼成時において、その両端部が反って変形してしまうため、直線状の棒状菓子を製造することが困難であるという問題があった。
【0006】
また、細長い棒状の成形生地の表面にチョコレート等のコーティングを施した棒状菓子を製造する際において、ホルダーで挟まれる焼成後の成形生地の一方の端部が反って曲がっているため、ホルダーによって成形生地を確実に把持することが困難であり、コーティング作業中に成形生地が回転したり、脱落してしまうという生産上の問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題を解決すべくなされたものであって、真っ直ぐな形状の棒状菓子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、穀粉を主成分とする紐状の紐状生地から棒状菓子を製造する棒状菓子の製造方法であって、複数のハーフカット状の切れ目が長手方向に沿って形成されると共にアルカリ液が含浸された前記紐状生地を加熱面に載置して焼成する焼成ステップと、焼成された前記紐状生地を前記切れ目において切断して棒状生地を形成する切断ステップとを備える棒状菓子の製造方法により達成される。
【0009】
また、この棒状菓子の製造方法において、前記切断ステップの終了後、前記棒状生地の少なくとも一部にコーティング材をコーティングするコーティングステップを更に備えることが好ましい。
【0010】
また、本発明の上記目的は、棒状生地と該棒状生地の表面にコーティングされたコーティング材とを備える棒状菓子であって、前記棒状生地は、複数のハーフカット状の切れ目が長手方向に沿って形成されると共にアルカリ液が含浸された紐状生地を加熱面に載置して焼成した後、前記切れ目において前記紐状生地を切断することによって形成されており、前記棒状生地の断面の最大幅は、2.5mm〜3.5mmである棒状菓子により達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、真っ直ぐな形状の棒状菓子およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、棒状菓子の製造工程を示すフローチャートであり、図2は、棒状菓子の製造過程を模式的に表した説明図である。本実施形態に係る棒状菓子の製造方法は、図1に示すように、ベース生地生成ステップS1と、シート状生地形成ステップS2と、紐状生地形成ステップS3と、ハーフカット形成ステップS4と、アルカリ処理ステップS5と、焼成ステップS6と、切断ステップS7と、冷却ステップS8と、包装ステップS9とを備えている。
【0013】
棒状菓子を製造するには、まず、ベース生地生成ステップS1において、穀粉を主成分とするベース生地1を生成する。ベース生地1は、穀粉に糖類、油脂および水等を混合・攪拌して生成する。本発明で使用する穀粉、糖類および油脂としては、従来公知のものが使用され得る。穀粉としては、例えば、小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、オーツ粉、コーンフラワー等が使用され得る。糖類としては、例えば、砂糖、麦芽糖、乳糖、ブドウ糖、果糖、転化糖、水飴、異性化糖等が使用され得る。これらは、穀粉100重量部に対して、例えば、8重量部〜20重量部の割合で配合する。油脂としては、例えば、バター、ショートニング、マーガリン、液状油、硬化油等が使用され得る。この油脂は、穀粉100重量部に対して、例えば、5重量部〜15重量部の割合で配合する。また、必要に応じて、乳製品、卵、食塩、香料、化学調味料、イースト、膨張材、その他食品添加物等の原材料を適量加えてベース生地1を生成することもできる。
【0014】
次に、ロールシーター等を用いて、図2(b)に示すように、ベース生地1をシート状に圧延して2mm〜3mm程度の厚さのシート状生地5を作る(シート状生地形成ステップS2)。ベース生地1を圧延する際、一度の圧延で極端に薄く圧延すると、シート状生地5のシート表面が荒れたり、穴が生じたりして製品外観が悪くなったり、製品強度が低下する場合があるため、ベース生地1の圧延は、ロールシーターのロール間隔を徐々に狭めて、少しずつシート状生地5の厚みを薄くしていくことが好ましい。
【0015】
次いで、図2(c)に示すように、紐状生地形成ステップS3において、シート状生地5を、例えば2mm〜3mmの幅を有する紐状に切断して紐状生地10を形成する。
【0016】
そして、ハーフカット形成ステップS4において、図2(d)に示すように、紐状生地10に対して、複数のハーフカット状の切れ目15を当該紐状生地10の長手方向に沿って所定の間隔で形成する。これら各切れ目15間で挟まれる紐状生地10の各部分は、最終製品である棒状菓子に相当する棒状菓子相当部10aである。各切れ目15間の間隔Lは、例えば、50mm〜150mmの間隔となるように設定することが好ましい。なお、切れ目15の形状は特に限定されず、図2(d)に示すように紐状生地10の下部側に切り残しを形成するような形状であってもよく、あるいは、紐状生地10を厚み方向に両側から挟み込むようにして切れ目15を形成したり、紐状生地10の所定位置においてその外周部全域に切れ目15を形成するようにしてもよい。
【0017】
その後、アルカリ処理ステップS5において、複数のハーフカット状の切れ目15が形成された紐状生地10に対してアルカリ処理を施してアルカリ液を含浸させる。アルカリ処理の方法としては、例えば、図2(e)に示すように、アルカリ液が収容されたアルカリバス20に紐状生地10を浸漬させることにより行う。アルカリ液としては、例えば、水酸化ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウム、炭酸カリウムおよび炭酸カルシウム等のアルカリ基剤うち1種又は2種以上を水に溶解したものを挙げることができる。アルカリ液の濃度は、アルカリ基剤として強アルカリである水酸化ナトリウムを使用する場合には、0.1重量%〜2.0重量%程度の濃度が好ましく、0.5重量%〜1.5重量%程度の濃度がより好ましい。また、アルカリ基剤として弱アルカリであるリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムおよび炭酸カルシウムなどを使用する場合には、1.0重量%〜10.0重量%程度の濃度が好ましく、2.0重量%〜8.0重量%程度の濃度がより好ましい。アルカリ液の濃度を上述のように設定することにより、香ばしくて、サクサクとした心地よい食感を有する棒状菓子を製造することができる。なお、このアルカリ処理による効果は、アルカリ基剤の濃度、アルカリ液の温度および紐状生地10の浸漬時間によって変化するので、アルカリ液の濃度は、実際に使用するアルカリ液の温度および紐状生地10の浸漬時間に応じて適宜調整させる。また、アルカリ処理の方法として、例えば、スプレーによりアルカリ液を紐状生地10に噴射することによって行ってもよい。
【0018】
焼成ステップS6においては、図2(f)に示すように、複数のハーフカット状の切れ目15が長手方向に沿って形成されると共にアルカリ液が含浸された紐状生地10をヘビーメッシュやライトメッシュ、スチールベルト等の加熱面30に載置して、加熱装置31により焼成を行う。加熱装置31としては、例えば、固定オーブン、連続オーブン、ダイレクトオーブン、熱風循環オーブン等のいずれも使用可能である。焼成時間は、紐状生地10の太さによって異なるが、通常100℃〜350℃の範囲において2分〜20分間である。
【0019】
焼成ステップS6終了後、切断ステップS7において、図2(g)に示すように、焼成された紐状生地10をハーフカット状の切れ目15において切断して棒状生地40を形成する。切断された棒状生地40は、その後、冷却ステップS8においてクーリングトンネル内を通過させる等により冷やされた後、包装ステップS9においてパッケージングされて棒状菓子製品として出荷される。
【0020】
上述の焼成ステップS6においては、紐状生地10の各棒状菓子相当部10aが互いに連結した状態で焼成が進行する。つまり、互いに連結している各棒状菓子相当部10aが、それぞれ隣り合う棒状菓子相当部10aの端部に反り変形が発生することを互いに規制し合った状態で焼成が進行することになり、焼成後の紐状生地10に変形が生じることを防止することができる。その結果、反り変形が発生しない真っ直ぐな棒状菓子を製造することが可能になる。特に、棒状生地40の断面の最大幅が、例えば2.5mm〜3.5mm程度である細い形状のものを製造する場合であっても、反り変形が発生することを効果的に防止して、真っ直ぐな形状の棒状菓子を製造することができる。断面の最大幅が2.5mm〜3.5mmである棒状菓子は、従来からある棒状菓子に比べて細いので、とても食べやすく、従来にない食感を楽しむことができると共に、需要者の購買意欲を喚起することができる。
【0021】
また、各棒状菓子相当部10a同士は、上述のように互いに連結した状態である上に、焼成開始時においては紐状生地10(各棒状菓子相当部10a)の表面がアルカリ液によって濡れた状態になっているため、各棒状菓子相当部10a同士の連結部分において、当該連結部分と加熱面30との接着性は、各棒状菓子相当部10aを分離している場合に比べて良好な状態となっている。この結果、各棒状菓子相当部10a同士の連結部分が加熱面30から剥がれるような事態が発生することを効果的に抑制し、当該両端部に反り変形が発生することを防止することができる。
【0022】
更に、棒状菓子相当部10aの両端部におけるハーフカット状の切れ目15から、紐状生地10内部に存在する水分が抜け出るため、紐状生地10内部に水分が偏って残存することを防止することが可能となる。この結果、紐状生地10内部において偏って残存する水分の影響により棒状菓子に反り変形が発生することを効果的に防止することができる。
【0023】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されない。本実施形態においては、ハーフカット状の切れ目15を紐状生地形成ステップS3終了後、アルカリ処理ステップS5開始前に行うような構成を採用しているが、このような構成に特に限定されず、例えば、アルカリ処理ステップS5終了後、焼成ステップS6開始前にハーフカット状の切れ目15を紐状生地10に形成するような構成を採用することができる。あるいは、シート状生地形成ステップS2終了後、紐状生地形成ステップS3開始前に、シート状生地5にハーフカット状の切れ目15を形成するように構成することもできる。
【0024】
また、本実施形態において、例えば、図3の製造過程のフローチャートに示すように、切断ステップS7終了後に、棒状生地40の少なくとも一部にチョコレートやクリーム等のコーティング材をコーティングするコーティングステップS10を更に備える構成を採用することができる。棒状生地40にコーティング材をコーティングするには、例えば、図4に示すような整列装置50を用いて棒状生地40を等間隔に整列させた後、図5に示すような把持装置60のホルダー61によって棒状生地40の一方の端部を把持し、液状のコーティング材が収容されている容器62に棒状生地40の他方の端部を浸漬する。その後、棒状生地40を引き上げると共に、棒状生地40の表面に付着する余分なコーティング材を除去するために、ホルダー61で棒状生地40を把持した状態でタッピングを行う。そして、把持状態を維持して、冷風が循環するクーリングトンネル内に棒状生地40を通過させて、棒状生地40の表面にコーティングされたコーティング材を固化させる。
【0025】
なお、整列装置50は、棒状生地40を供給する搬送コンベア51と、供給された棒状生地40を一本ずつ収容する溝部52aを上面に備える整列コンベア52と、搬送コンベア51から整列コンベア52の上面に供給された棒状生地40を溝部52aに案内する整列案内板53とを備えている。搬送コンベア51から整列コンベア52の上面に供給された棒状生地40は、整列案内板53の作用により整列コンベア52の上面を転がりながら溝部52a内に収容されることになる。把持装置60は、整列装置50の整列コンベア52上に並べられた複数の棒状生地40の一方の端部をホルダー61が把持した状態のまま、当該棒状生地40を直立状態にさせたり水平状態にさせたりしながら移動できるように構成されている。
【0026】
本実施形態に係る棒状菓子の製造方法によれば、反り変形が発生しない真っ直ぐな棒状生地40を製造することが可能になるため、コーティング作業において、把持装置60のホルダー61が棒状生地40の一方の端部を確実に把持することができる。したがって、棒状生地40がホルダー61から脱落したり、回転したりするような事態が発生することを確実に防止することができ、コーティング材で表面を被覆された棒状菓子を効率良く製造することができる。
【0027】
また、ホルダー61によって棒状生地40の端部を把持する場合において、棒状生地40の端部に反り変形が発生していると、隣接する棒状生地40の端部同士(ホルダー61によって把持されていない側の端部同士)が互いに近接したり接触する整列不良が生じる。このような場合、棒状生地40の表面にコーティングされるコーティング材を介して隣接する棒状生地40同士が連結されてしまう事態が生じうる。しかしながら、本実施形態に係る棒状菓子の製造方法によれば、真っ直ぐな形状の棒状生地40を製造することが可能になるので、上述のような事態が発生することを確実に防止することができ、効率良くコーティング材が表面にコーティングされた棒状菓子を製造することができる。
【0028】
また、整列装置の整列コンベア52の上面において、棒状生地40を転がして溝部52a内に収容し整列させる場合において、棒状生地40に反り変形が生じていると、棒状生地40は転がりにくく、溝部52a内に棒状生地40を効率良く収容し整列させることが困難になるという事態が生じうる。しかしながら、本実施形態に係る棒状菓子の製造方法によれば、反り変形が発生せず真っ直ぐな形状の棒状生地40を製造することが可能になるので、上述のような事態が発生することを確実に防止することができ、棒状生地40の整列を効率良く行うことが可能になる。
【0029】
また、断面の最大幅が、例えば2.5mm〜3.5mmと細い棒状生地40であっても、コーティング材を当該棒状生地40の表面にコーティングすることによって、強度が高くて折れにくい棒状菓子を製造することが可能になる。
【0030】
なお、棒状生地40にコーティング材をコーティングするには、上述のように液状のコーティング材が収容された容器62に棒状生地40を浸漬させて行う方法の他、例えば、コーティング材を棒状生地40の表面にスプレーすることにより、あるいは、液状のコーティング材をカーテン状に落下させ、その下をコンベアに載せた棒状生地40を通過させること等により行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る棒状菓子の製造工程を示すフローチャートである。
【図2】棒状菓子の製造過程を模式的に表した説明図である。
【図3】図1に示す棒状菓子の製造工程の他の例を示すフローチャートである。
【図4】コーティング工程において使用される整列装置の一例を示す概略構成図である。
【図5】コーティング工程において使用される把持装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ベース生地
5 シート状生地
10 紐状生地
10a 棒状菓子相当部
15 切れ目
30 加熱面
31 加熱装置
40 棒状生地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粉を主成分とする紐状の紐状生地から棒状菓子を製造する棒状菓子の製造方法であって、
複数のハーフカット状の切れ目が長手方向に沿って形成されると共にアルカリ液が含浸された前記紐状生地を加熱面に載置して焼成する焼成ステップと、
焼成された前記紐状生地を前記切れ目において切断して棒状生地を形成する切断ステップとを備える棒状菓子の製造方法。
【請求項2】
前記切断ステップの終了後、前記棒状生地の少なくとも一部にコーティング材をコーティングするコーティングステップを更に備える請求項1に記載の棒状菓子の製造方法。
【請求項3】
棒状生地と該棒状生地の表面にコーティングされたコーティング材とを備える棒状菓子であって、
前記棒状生地は、複数のハーフカット状の切れ目が長手方向に沿って形成されると共にアルカリ液が含浸された紐状生地を加熱面に載置して焼成した後、前記切れ目において前記紐状生地を切断することによって形成されており、
前記、棒状生地の断面の最大幅は、2.5mm〜3.5mmである棒状菓子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−312691(P2007−312691A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−146311(P2006−146311)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000000228)江崎グリコ株式会社 (187)
【Fターム(参考)】