説明

椅子における操作レバーの取付構造

【課題】 少ない部品点数で、ねじ止め作業を行うことなく、簡単かつ確実に、操作レバーを支持部材に取り付けることができるようにした椅子における操作レバーの取付構造を提供する。
【解決手段】 操作レバー41の操作軸41aを、その狭幅部41fを挿入口67に通すことにより、大径軸孔66に側方より挿入し、次いで、操作軸41aをその先端方向に移動して、突部68を切欠部62に挿通させつつ、小径軸41dを枢支部材53の小径軸孔61に挿入し、その後、操作レバー41を、操作軸41aを中心として回動させるだけで、ねじ止め作業を行うことなく、操作レバー41を、簡単かつ確実に、支持部材である支基4に取り付けることができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子における支持部材に、椅子における被操作体を操作する操作レバーを回動可能に取り付ける取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の椅子には、座の昇降装置や背凭れの傾動装置等の被操作体を操作するための操作レバーが、座や背凭れを支持する支基、背凭れフレーム、または座の下面等の支持部材に取り付けられている。
その取付構造の一例としては、例えば、先端部をクランク状に折曲して、その折曲部分で、背凭れを起立する方向に付勢するガススプリングを操作するようにした操作レバーの軸部を、背凭れフレームにねじ止めした保持金具により保持したものがある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−163966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に記載されているものにおいては、操作レバーを取り付けるのに、保持金具を支持部材にねじ止めしなければならず、そのねじ止め作業が煩雑で、取り付けに手間と時間がかかるとともに、部品点数が多くなるという問題がある。
【0004】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、少ない部品点数で、ねじ止め作業を行うことなく、簡単かつ確実に、操作レバーを支持部材に取り付けることができるようにした椅子における操作レバーの取付構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によると、上記課題は次のようにして解決される。
(1) 椅子における支持部材に、椅子における被操作体を操作する操作レバーを回動可能に取り付ける取付構造であって、前記支持部材に、小径軸孔の一部に切欠部を設けた軸受片と、前記小径軸孔より大径の大径軸孔の一部に、この大径軸孔の直径より小さい開口幅をもって、この大径軸孔を側方に開口させる挿入口を設けた軸受片とを、前記両軸孔が整合し、かつ互いに離間するようにして設け、前記操作レバーにおける操作部と一体の操作軸の外径を、前記大径軸孔とほぼ同径とするとともに、この操作軸の先端に、前記小径軸孔とほぼ同径の小径軸を連設し、前記操作軸におけるその先端から前記両軸受片の間隔より小さい距離だけ離間した部分に、前記挿入口の開口幅より小さい幅の狭幅部を形成し、前記小径軸の先端部外周に、前記切欠部を挿通可能な突部を設け、前記操作軸の端面と突部とにより、小径軸孔を設けた軸受片を挟むようにして、その小径軸孔により小径軸を軸受し、かつ前記大径軸孔により、操作軸を軸受する。
【0006】
(2) 上記(1)項において、被操作体を操作するのに必要な操作レバーの回動範囲において、操作レバーにおける突部と、軸受片における切欠部とが整合しないように、前記突部と切欠部との位置関係を定める。
【0007】
(3) 上記(1)または(2)項において、操作レバーといずれかの軸受片との間に、操作レバーの回動範囲を規制するストッパを設ける。
【0008】
(4) 上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、操作軸における先端と狭幅部との間に、被操作体との連係手段を設ける。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、次のような効果を奏することができる。
請求項1記載の発明によると、操作レバーの操作軸を、その狭幅部を挿入口に通すことにより、大径軸孔に側方より挿入し、次いで、操作軸をその先端方向に移動して、突部を切欠部に挿通させつつ、小径軸を小径軸孔に挿入し、その後、操作レバーを、操作軸を中心として回動させるだけで、ねじ止め作業を行うことなく、操作レバーを、簡単かつ確実に、支持部材に取り付けることができる。
また、保持金具や固定ねじ等の別部材を用いる必要がなく、部品点数を削減することができる。
【0010】
請求項2記載の発明によると、被操作体を操作するのに必要な操作レバーの回動範囲においては、突部と切欠部とが整合することがないので、操作レバーの回動操作中に、突部が切欠部を通って移動し、操作レバーが支持部材から脱落するといったおそれがなくなる。
【0011】
請求項3記載の発明によると、操作レバーの回動範囲が、ストッパにより規制されるので、操作レバーが支持部材から脱落するおそれはさらになくなる。
【0012】
請求項4記載の発明によると、操作軸に設けた連係手段の両側方において、操作軸が1対の軸受片により支持されるので、連係手段が安定して支持部材に支持される。
この連係手段は、請求項1記載の発明の構成と結合し、かつ請求項1記載の発明の効果として上述した要領で、操作軸を支持部材に取り付けることにより、予め操作軸と一体に形成しておくことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態を備える椅子の前方斜視図、図2は、同じく分解前方斜視図である。
この椅子は、先端部にキャスタ1を設けた放射状の5本の脚杆2の中心部に立設された伸縮可能の脚柱3と、この脚柱3の上端に設けられた支基4と、この支基4に貫挿された左右方向を向く枢軸5と、この枢軸5の両端に固着された左右1対のブラケット6、6と、背凭れ7を支持するとともに、下端より前方に向かって延出する左右1対の前向杆8a、8aを、枢軸5とブラケット6とに連結し、それらと一体となって、支基4に対して回動するようにした背凭れフレーム8と、座9を支持するとともに、後部が左右1対のブラケット6、6の後端部に連結され、かつ前部が左右1対のリンクレバー10、10をもって、支基4の前部に連結され、背凭れフレーム8の後傾動作に連動して、支基4に対して後下方に移動するようにした座受枠11と、座9の両側部に設けられた肘掛装置12、12とを備えている。
【0014】
図3〜図5は、支基4の内部機構を示す分解斜視図である。
この支基4は、脚柱3の上端に取付けられた基部13aと、この基部13aの前端両側部より前上方に向かって突出するとともに、周縁部に互いに内方を向く折曲縁部13bが形成された左右1対の腕部13c、13cとを有する、平面視ほぼ前向U字状の支基フレーム13を備えている。
基部13aは、中央部に脚柱3の上端部が下方より圧嵌されるようにした受孔14を有する水平板15の両側部と後部とに、上下の縁が内方を向くように円弧状に折曲された外周枠16を固着してなり、外周枠16は、左右の腕部13c、13cに連続するように形成されている。
【0015】
支基フレーム13における左右の腕部13c、13cの内面には、補強板17がそれぞれ固着されており、各腕部13cと補強板17とにより、中空箱状体を形成して、強度を高め、使用する材料の板厚を大としたり、高価な材料を用いたりする必要がないようにしてある。
【0016】
各腕部13cと補強板17との後部には、左右方向を向く軸受筒18が止着され、左右の軸受筒18、18には、左右方向を向く枢軸5の端部が枢支されている。
枢軸5には、背凭れ7を起立する方向に付勢する付勢手段である左右1対のねじりコイルばね19、19が外嵌されている。
また、左右の腕部13cと補強板17との前部には、枢軸5と平行をなし、かつ座9の前部を支持する左右1対のリンクレバー10、10の下端部を枢支する左右方向を向く支軸20が貫設されている。
【0017】
支基フレーム13の左右の腕部13c、13cと補強板17、17との上部同士および下部同士間には、それぞれ上部連結板21および下部連結板22が架設され、この上下部連結板21、22を嵌挿して、左右1対のねじりコイルばね19、19の付勢力調節手段23が取付けられている。
【0018】
このように、支基フレーム13を平面視ほぼ前向U字状とし、その両腕部13c、13cの内面に補強板17、17を取り付けてあるので、その間に、付勢手段である左右1対のねじりコイルばね19、19や、付勢力調節手段23等の部材を、上方からだけでなく、下方や前方からも取り付けることができ、組立ての能率を向上させることができるとともに、支基4の強度を高めることができる。
【0019】
さらに、支基フレーム13に、補強板17、17、ねじりコイルばね19、19、付勢力調節手段23、上下部連結板21、22、および後述する支基4内の部品を取り付けた状態で、それらを、上部カバー24と下部カバー25とにより、上下から覆ってあるので、支基4の外観は体裁よくなっている。
【0020】
次に、支基4内における背凭れの傾動装置の詳細について説明する。
枢軸5は、両端部を円形軸部5a、5aとし、それ以外の中間部分は角軸部5bとしてあり、左右の補強板17、17により挟まれた空間内における角軸部5bの両側部には、ばね受け部材26における左右方向を向くばね受片26aの両側端より後上方に起立する両側片26b、26bの先端部に設けられて角孔27、27が外嵌され、ばね受け部材26は、枢軸5および背凭れ7と一体となって回動するようになっている。
【0021】
左右のねじりコイルばね19、19は、左右対称をなし、各巻回部19aの外側端部には、巻線の外端末を、下部から前方に向けて延出させたて第1アーム19bが形成され、巻回部19aの内側端部には、巻線の内端末を上部から前方に向けて延出させた第2アーム19cが形成されている。
【0022】
ばね受け部材26における左右の側片26b、26b間における枢軸5の角軸部5bには、図6〜図7に示すように、両ねじりコイルばね19、19の巻回部19aへ嵌合されるようにしたガイド筒28における角孔29が外嵌されている。
ガイド筒28は、上半部28aと下半部28bとに分離可能となっており、上半部28aの左右方向の中央部外周面には、半環状の凹溝30が、また下半部28bの左右方向の中央部外周面には、半円弧状の拡径鍔31が設けられている。
【0023】
ガイド筒28におけるねじりコイルばね19の第1アーム19bが当接する下半部28bの外端部と、同じく第2アーム19cが当接する上半部28aの内方寄りの部分とは、他部より大径の最大径部としてあり、上半部28aの他の外周面は、上記最大径部より外方に向かって漸次小径となるテーパー面とし、下半部28bの他の外周面は、上記最大径部より内方に向かって漸次小径となるテーパー面としてある。なお、テーパー面ではなく、階段状等とすることもある。
【0024】
図8に示すように、各ねじりコイルばね19における第1アーム19bと第2アーム19cとは、常時ガイド筒28の外周面に当接し、その当接部分から離れるに従って漸次拡大する楔状の空間が、各ねじりコイルばね19の巻回部19aの内面とガイド筒28の外周面との間に形成され、この空間により、各ねじりコイルばね19の巻き締め時の縮径が許容されるようになっている。
【0025】
したがって、各ねじりコイルばね19における上下のアーム19b、19cは、同方向に延出させても、常時ガイド筒28に当接して案内され、ねじりコイルばね19は、上下方向に捩れが生じたり、遊動したりすることなく、安定して支持され、設定通りの反力が得られる。
また、各ねじりコイルばね19における第1アーム19bと第2アーム19cとは、ともに巻回部19aから同方向に延出されているので、ねじりコイルばね19自体、およびそれを収容する部分等の前後方向の寸法を小として、小型化を図ることができる。
さらに、各ねじりコイルばね19は、ガイド筒28における上記テーパー面に沿って、円滑に拡縮することができる。
【0026】
左右のねじりコイルばね19、19における各第1アーム19bは、ばね受け部材26におけるばね受片26aの上面の両側部に当接するように係止され、また第2アーム19cは、付勢力調節手段23におけるばね受け部材32の下面に当接するように係止されている。
【0027】
付勢力調節手段23は、上部連結板21と下部連結板22との中央部間に回転自在に枢支され、かつ下部連結板22の下方に設けた回転ハンドル33により回転させられるようにしたほぼ上下方向を向くねじ杆34と、このねじ杆34に螺合するねじ孔35が中央に設けられた昇降駒36と、この昇降駒36の左右両側面に枢着されたローラー状とした1対の上記ばね受け部材32、32とからなっている。
なお、ねじりコイルばね19、19の付勢力を調節する必要のないときは、ねじ杆34に代えて、下端を下部連結板22に係止した牽引杆(図示略)の上端に、ばね受け部材32、32係止して実施することもできる。
【0028】
ばね受け部材26は、左右のねじりコイルばね19、19により、下方に向かって付勢され、常時は、下部連結板22の上面に設けたストッパ37に当接して停止されており、このとき、背凭れ7は、起立状態となっている。
この状態から、着座者が背凭れ7を後方に押すと、背凭れ7は、左右のねじりコイルばね19、19の付勢力に抗して、枢軸5、ばね受け部材26等と一体となって、枢軸5を中心として後傾することができ、両ねじりコイルばね19、19の付勢力は、背凭れ7の起立方向への復帰回動力として作用する。
【0029】
この復帰回動力は、付勢力調節手段23により調節することができる。
すなわち、回転ハンドル33により、ねじ杆34を回転させて、昇降駒36を下降させると、左右のねじりコイルばね19、19が同期して巻き締められて、背凭れ7の起立方向への付勢力が強くなり、逆に、昇降駒36を上昇させると、左右のねじりコイルばね19、19は同期して緩められ、背凭れ7の起立方向への付勢力が弱くなる。
【0030】
次に、背凭れ7を、段階的な所望の傾斜角度でロックするロック装置38の詳細について説明する。
このロック装置38は、図3、図5および図9に示すように、支持部材である支基4における左方の補強板17に複数の係合孔39を、可動部材であるばね受け部材26の移動方向である枢軸5を中心とする円弧状に並べて設け、可動部材であるばね受け部材26に、上記複数の係合孔39に選択的に係脱しうるロックピン40を、いずれかの係合孔39に係合する図9(c)に示すロック位置と、係合孔39から離脱した図9(a)に示すアンロック位置とに移動可能として装着するとともに、操作手段である操作レバー41の操作により移動させられる作動部材としてのワイヤエンド部材42を、図9(b)および(c)に示すロック予約位置と、図9(a)および(d)に示すアンロック予約位置とに移動可能として装着し、ワイヤエンド部材42がロック予約位置に位置しているときは、ロックピン40をロック位置に向かって付勢し、ワイヤエンド部材42がアンロック予約位置に位置しているときは、ロックピン40をアンロック位置に向かって付勢する付勢手段43を、ばね受け部材26のばね受け片26a上に設けたものよりなっている。
【0031】
ロックピン40は、ばね受け部材26のばね受け片26a上に設けた左右方向を向く角管状のケース44内に、摺動自在に嵌合され、左端部が、ばね受け部材26における左方の側片26bを貫通して、外側方に進退しうるようになっている。
ロックピン40の右端部寄りに、左右方向に摺動可能として外嵌された摺動体45は、ケース44の上面に設けられた左右方向を向く長孔46を通って、ケース44の上方に突出し、長孔46内を左右方向に摺動しうるようになっている。
【0032】
ケース44の上面における長孔46の左端部には、チューブホルダ47が固着されており、チューブホルダ47の下面に突設したばね受け片48は、長孔46を通って、ケース44内に突入している。
【0033】
ロックピン40の中間部には、Eリングよりなる拡径鍔部49が設けられ、この拡径鍔部49と摺動体45との間におけるロックピン40回りには、作動部材であるワイヤエンド部材42がロック予約位置に位置しているときに、ロックピン40をロック位置に向かって付勢する第1付勢手段をなす圧縮コイルばね50が縮設されており、また、拡径鍔部49とばね受け片48との間におけるロックピン40回りには、ワイヤエンド部材42がアンロック予約位置に位置しているときに、ロックピン40をアンロック位置に向かって付勢する第2付勢手段をなす圧縮コイルばね51が縮設されている。
第1付勢手段である圧縮コイルばね50のばね定数は、第2付勢手段である圧縮コイルばね51のばね定数より大としてあり、これら2個の圧縮コイルばね50、51により、付勢手段43が形成されている。
【0034】
操作手段である操作レバー41と、作動部材であるワイヤエンド部材42とは、ボーデンケーブル52により連結されている。
ボーデンケーブル52は、操作レバー41の操作軸41aが枢支されている支基4における枢支部材53の右側面に止着されたチューブホルダ59に一端が止着され、かつ他端がチューブホルダ47に止着された可撓性のアウターチューブ54と、このアウターチューブ54内に軸線方向に摺動自在に挿通され、アウターチューブ54の一端から引き出された端部が、チューブホルダ59と一体的に形成されたワイヤガイド60の円弧状の外周面に沿って案内されるとともに、端末が操作レバー41の操作軸41aの基端側より前方に突出する第1アーム41bの先端部に係止され、かつアウターチューブ54の他端からロックピン40の移動方向と平行に引き出された端部が、摺動体45の上部に設けた左右方向を向くスリット55を通って、その先端がスリット55と連続して摺動体45の上部右側面に設けられた収容孔56に収容されたワイヤエンド部材42に止着されたワイヤ57とからなっている。
枢支部材53は、正面視下向きコ字状をなし、前部が上部連結板21の下面中央に固着されている。
【0035】
このボーデンケーブル52により、操作レバー41とワイヤエンド部材42とが連結されているため、操作レバー41が、前方を向くアンロック位置に位置しているときは、ワイヤエンド部材42は、アンロック予約位置に位置し、その状態から、操作レバー41を、前下方を向くロック位置へ回動させると、ワイヤエンド部材42は、ロック予約位置に移動させられることになる。
【0036】
次に、このロック装置の作用について説明する。
操作レバー41が、アンロック位置に位置しているときは、図9(a)に示すように、ワイヤエンド部材42は、アンロック予約位置に位置し、この状態では、左右の圧縮コイルばね51、50は、ともに伸長し、ロックピン40は、アンロック位置に位置し、いずれの係合孔39からも離脱している。
【0037】
この状態では、着座者が背凭れ7を後方に押すと、背凭れ7は、左右のねじりコイルばね19、19の付勢力に抗して、枢軸5、ばね受け部材26等と一体となって、枢軸5を中心として自由に後傾することができ、背凭れ7の後方への押圧力を解除すると、背凭れ7は、左右のねじりコイルばね19、19の付勢力により、元の起立状態へ復帰回動させられる。
【0038】
この状態から、背凭れ7を所望の後傾位置まで倒した後、操作レバー41を、ロック位置に切り換えると、図9(b)に示すように、ワイヤエンド部材42は、ロック予約位置へ移動させられ、それによって摺動体45が左方へ移動させられ、圧縮コイルばね50が圧縮され、ロックピン40が左方に付勢される。
【0039】
このとき、ロックピン40がいずれかの係合孔39と整合していると、ロックピン40は、即座にその係合孔39に嵌合し、図9(c)に示すロック状態となるが、ロックピン40がいずれの係合孔39とも整合していない場合は、ロックピン40は、先端が補強板17の内側面に当接し、図9(b)に示すように、圧縮コイルばね50が圧縮されたままの状態となる。
【0040】
その後、背凭れ7が前後いずれかにわずかに傾動した時点で、圧縮コイルばね50が伸長し、かつ圧縮コイルばね51が圧縮されて、ロックピン40は、最も近い係合孔39に嵌合し、図9(c)に示すロック状態となって、背凭れ7は、その位置でロックされる。
【0041】
このようなロック状態から、着座者が背凭れ7に凭れたまま、操作レバー41を、アンロック位置に切り換えると、図9(d)に示すように、ワイヤエンド部材42は、アンロック予約位置へ移動させられるが、背凭れ7に負荷が掛かっているので、ロックピン40の先端部は、係合孔39から離脱できず、ロック位置に保持される。
このとき、圧縮コイルばね51は圧縮されたままとなり、圧縮コイルばね50は、ほぼ無負荷状態まで伸長して、摺動体45を若干右方に押動する。摺動体45は、図9(d)に示す位置に停止し、ワイヤエンド部材42のみが、収容孔56から離脱する。ワイヤエンド部材42と収容孔56の内面との摩擦が大きい場合は、摺動体45が、ワイヤエンド部材42とともに右方に移動し、圧縮コイルばね50から離間することもあるが、いずれでもよい。
【0042】
その後、背凭れ7が前後いずれかにわずかに傾動した時点で、圧縮コイルばね51が伸長し、ロックピン40は、係合孔39から離脱して、図9(a)に示す元のアンロック位置に復帰させられる。
【0043】
図3および図5に示すように、支基4の後上部には、操作レバー41と左右対称をなすように、支基4の高さ調節用の操作レバー58が設けられている。
次に、図3〜図5、および図10〜図14を参照して、これらの操作レバー41、58の支基4への取付構造について説明する。
【0044】
支持部材である支基4における枢支部材53の両側片53a、53aには、小径軸孔61が設けられるとともに、この小径軸孔61の前後部に、方形の切欠部62、62が設けられ、右方の側片53aは、操作レバー41の内端部を軸受する軸受片、左方の側片53aは、操作レバー58の内端部を軸受する軸受片となっている。
【0045】
各側片53aにおける小径軸孔61の前方には、ねじ孔63が、同じく後方には、位置決め孔64が設けられている。
【0046】
左右の補強板17、17の後上部には、上記側片53aと対向するように、軸受片64が上向き突設されており、この軸受片64には、上記小径軸孔61より大径の大径軸孔66と、この大径軸孔66の後部を、この大径軸孔66の直径より小さい開口幅をもって、後方に開口させる挿入口67とが設けられている。
小径軸孔61と大径軸孔66とは、互いに左右方向に整合し、かつ図10に示すように、所要距離D1だけ離間している。
【0047】
図3および図10に示すように、操作レバー41は、上記大径軸孔66の内径とほぼ同一、すなわち、大径軸孔66内にがたつくことなく、しかも円滑に回動しうるように嵌合しうる程度の外径とした操作軸41aと、その基端側より前方に突出する第1アーム41bと、操作軸41aの外端より斜め前方を向くように一体的に連設された板状の操作部41cと、操作軸41aの内端に連設され、かつ小径軸孔61の内径とほぼ同一、すなわち、小径軸孔61内にがたつくことなく、しかも円滑に回動しうるように嵌合しうる程度の外径とした小径軸41dと、第1アーム41bとほぼ直角をなすようにして、操作軸41aの外周面に突設された第2アーム41eとを有している。
第1アーム41bは、被操作体であるロック装置38との連係手段をなしている。
【0048】
また、図10に示すように、操作レバー41の操作軸41aにおける内端から、上記距離D1より小さい距離D2だけ離間した部分は、その外周面に1対の平削面を形成することにより、上記挿入口67の開口幅W1より小さい幅W2の狭幅部41fとなっている。
【0049】
さらに、小径軸41の先端部外周には、上記切欠部62、62に対応するように、それらを挿通可能な突部68、68が突設されている。
【0050】
しかして、操作レバー41は、操作軸41aの狭幅部41fを挿入口67に通すことにより、操作軸41aを大径軸孔66に側方より挿入し、次いで、操作軸41aを内方に移動して、予め枢支部材53の右側面に仮止めしておいたワイヤガイド60に設けた孔60aを貫通させ、かつ突部68、68を切欠部62、62に挿通させつつ、小径軸41dを枢支部材53の小径軸孔61に挿入し、その後、操作レバー41を、操作軸41aを中心として適宜の角度だけ回動させることにより、ねじ止め作業を行うことなく、簡単かつ確実に、支持部材である支基4に取り付けることができる。
【0051】
上記のようにして支基4に取り付けられた操作レバー41は、操作軸41aの端面と突部68、68とをもって、枢支部材53の右方の側片53aを挟むことにより、軸線方向に移動不能として拘束され、かつその側片53aと軸受片65とにより、安定して、回動自在に支持される。
【0052】
操作レバー41における第1アーム41bと第2アーム41eとの間に位置するように、ストッパピン(ストッパ)69が、ねじ孔63に螺合する固定ねじ70をもって、ワイヤガイド60とともに、枢支部材53の右方の側片53aに共締めされることにより、操作レバー41は、ワイヤ57を牽引した状態で、第2アーム41eがストッパピン69に当接したロック位置と、ワイヤ57を緩めた状態で、第1アーム41bがストッパピン69に当接したアンロック位置とに回動可能となっており、このロック位置からアンロック位置までの回動範囲内においては、突部68は切欠部62と整合しないようになっている。
【0053】
したがって、操作レバー41の回動操作中に、突部68が切欠部62を通って移動し、操作レバー41が支基4から脱落することはない。
【0054】
第1アーム41aと枢支部材53とには、ねじりコイルばねとしたクリックスプリング71の巻線の端末が係止され、このクリックスプリング71により、操作レバー41は、回動範囲の中間位置からロック位置側に移動したときは、ロック位置に向かって、また同じくアンロック位置側に移動したときは、アンロック位置に向かって付勢され、ロック位置とアンロック位置とにおいて安定して保持されるようになっている。
【0055】
操作レバー58は、操作レバー41におけるのと同様に、大径軸孔66の内径とほぼ同一の外径とした操作軸58aと、その基端側より下方に突出する第1アーム58bと、操作軸58aの外端より斜め前方を向くように一体的に連設された板状の操作部58cと、操作軸58aの内端に連設され、かつ小径の小径軸孔61の内径とほぼ同一の外径とした小径軸58dと、第1アーム58bとほぼ直角をなして後方を向くようにして、操作軸58aの外周面に突設された第2アーム58eとを有している。
【0056】
また、操作レバー58の操作軸58aには、操作レバー41の操作軸41aにおける狭幅部41fと同様の狭幅部58fが設けられるとともに、操作レバー41にはない第3アーム58gが、上方を向くようにして突設されている。
【0057】
操作レバー58は、操作レバー41と左右対称の同様の構造と、同様の組み付け要領とをもって、枢支部材53の左方の側片53aと、左方の軸受片65とに装着されている。
【0058】
図14に示すように、操作レバー58における第1アーム58bの先端部と、脚柱3を形成するガススプリング72における支基フレーム13の基部13aより上方に突出する上端部に設けられた作動片73とは、ワイヤ74をもって連結され、操作レバー58が、図14における反時計方向に回動させられることにより、ワイヤ74が牽引させられて、作動片73が前傾させられ、ガススプリング72がフリー状態となって、内蔵されたばねの付勢力により、伸長させられるようになっている。
【0059】
支基4が所望の高さまで上昇、または下降させられた状態で、操作レバー58から手を離すと、作動片73は、内部の復帰用のばね力により、起立状態に復帰させられ、ガススプリング72は、そのときの伸長状態でロックされる。
また、作動片73の起立状態への復帰に伴って、操作レバー58は原位置に復帰させられる。
【0060】
操作レバー58における第2アーム58eと第3アーム58gとの間に位置するように、規制手段をなすストッパピン75が、ねじ孔63に螺合する固定ねじ76をもって、枢支部材53の左方の側片53aに固着されることにより、操作レバー58は、ワイヤ74を牽引操作するのに必要十分な範囲に回動範囲が規制され、操作レバー58の回動操作中に、突部68が切欠部62を通って移動し、操作レバー58が支基4から脱落することはないようにしてある。
【0061】
以上から明らかなように、この実施形態においては、操作レバー41、58を、ねじ止め作業を行うことなく、簡単かつ確実に、支持部材である支基4に取り付けることができる。
また、保持金具や固定ねじ等の別部材を用いる必要がなく、部品点数を削減することができる。
【0062】
本発明は、上記の実施形態のみに制限されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で、変形した態様での実施が可能である。
例えば、操作レバー41、58を、上記と同様の構造と組み付け要領をもって、支持部材としての座9の下面や背凭れフレーム8の前向杆8a等に取り付けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態を備える椅子の斜視図である。
【図2】同じく、分解斜視図である。
【図3】支基の分解斜視図である。
【図4】支基の一部を組み付けたときの分解斜視図である。
【図5】支基の大部分を組み付けたときの分解斜視図である。
【図6】枢軸にガイド筒を外嵌したときの斜視図である。
【図7】同じく、正面図である。
【図8】同じく、縦断正面図である。
【図9】(a)〜(d)は、ロック装置の互いに異なる作動状態を略示する作用説明図である。
【図10】操作レバーの取付構造を示すための支基を右斜め後方より見た分解斜視図である。
【図11】同じく、支基を左斜め後方より見た分解斜視図である。
【図12】同じく、背面図である。
【図13】図12のXIII−XIII線に沿う縦断側面図である。
【図14】図12のXIV−XIV線に沿う縦断側面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 キャスタ
2 脚杆
3 脚柱
4 支基
5 枢軸
5a円形軸部
5b角軸部
6 ブラケット
7 背凭れ
8 背凭れフレーム
8a前向杆
9 座
10 リンクレバー
11 座受枠
12 肘掛装置
13 支基フレーム
13a基部
13b折曲縁
13c腕部
14 受け孔
15 水平板
16 外周縁
17 補強板
18 軸受筒
19 ねじりコイルばね
19a巻回部
19b第1アーム
19c第2アーム
20 支軸
21 上部連結板
22 下部連結板
23 付勢力調節手段
24 上部カバー
25 下部カバー
26 ばね受け部材
26aばね受け片
26b側片
27 角孔
28 ガイド筒
28a上半部
28b下半部
29 角孔
30 凹溝
31 拡径鍔
32 ばね受け部材
33 回転ハンドル
34 ねじ杆
35 ねじ孔
36 昇降駒
37 ストッパ
38 ロック装置
39 係合孔
40 ロックピン
41 操作レバー
41a操作軸
41b第1アーム(連係手段)
41c操作部
41d小径軸
41e第2アーム
41f狭幅部
42 ワイヤエンド部材(作動部材)
43 付勢手段
44 ケース
45 摺動体
46 長孔
47 チューブホルダ
48 ばね受け片
49 拡径鍔部
50 圧縮コイルばね
51 圧縮コイルばね
52 ボーデンケーブル
53 枢支部材
53a側片(軸受片)
54 アウターチューブ
55 スリット
56 収容孔
57 ワイヤ
58 操作レバー
58a操作軸
58b第1アーム(連係手段)
58c操作部
58d小径軸
58e第2アーム
58f狭幅部
59 チューブホルダ
60 ワイヤガイド
60a孔
61 小径軸孔
62 切欠部
63 ねじ孔
64 位置決め孔
65 軸受片
66 大径軸孔
67 挿入口
68 突部
69 ストッパピン(ストッパ)
70 固定ねじ
71クリックスプリング
72 ガススプリング
73 作動片
74 ワイヤ
75 ストッパピン(ストッパ)
76 固定ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
椅子における支持部材に、椅子における被操作体を操作する操作レバーを回動可能に取り付ける取付構造であって、前記支持部材に、小径軸孔の一部に切欠部を設けた軸受片と、前記小径軸孔より大径の大径軸孔の一部に、この大径軸孔の直径より小さい開口幅をもって、この大径軸孔を側方に開口させる挿入口を設けた軸受片とを、前記両軸孔が整合し、かつ互いに離間するようにして設け、前記操作レバーにおける操作部と一体の操作軸の外径を、前記大径軸孔とほぼ同径とするとともに、この操作軸の先端に、前記小径軸孔とほぼ同径の小径軸を連設し、前記操作軸におけるその先端から前記両軸受片の間隔より小さい距離だけ離間した部分に、前記挿入口の開口幅より小さい幅の狭幅部を形成し、前記小径軸の先端部外周に、前記切欠部を挿通可能な突部を設け、前記操作軸の端面と突部とにより、小径軸孔を設けた軸受片を挟むようにして、その小径軸孔により小径軸を軸受し、かつ前記大径軸孔により、操作軸を軸受したことを特徴とする椅子における操作レバーの取付構造。
【請求項2】
被操作体を操作するのに必要な操作レバーの回動範囲において、操作レバーにおける突部と、軸受片における切欠部とが整合しないように、前記突部と切欠部との位置関係を定めた請求項1記載の椅子における操作レバーの取付構造。
【請求項3】
操作レバーといずれかの軸受片との間に、操作レバーの回動範囲を規制するストッパを設けた請求項1または2記載の椅子における操作レバーの取付構造。
【請求項4】
操作軸における先端と狭幅部との間に、被操作体との連係手段を設けた請求項1〜3のいずれかに記載の椅子における操作レバーの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−206769(P2008−206769A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−46812(P2007−46812)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】