椅子の反力装置
【課題】反力調整を容易にする。操作力を軽くする。多段階調整に適した反力装置を提供する。製造コストの増加を抑える。
【解決手段】基体1と基体1に連結された揺動体2との間に設けられた複数の棒又は板状のスプリング3と、スプリング3毎に設けられ、対応するスプリング3にカム面6bが当接する突出位置4とカム面6bが突出位置4よりも対応するスプリング3から遠くに位置する退避位置5との間で回転変位可能な作動切換カム6と、作動切換カム6を回転変位させる操作装置7を備え、作動切換カム6は外周面がカム面6bになっており、操作装置7は突出位置4に変位させる作動切換カム6と退避位置5に変位させる作動切換カム6との組み合わせが異なる複数の反力調整位置を有し、突出位置4に変位された作動切換カム6は対応するスプリング3を揺動体2の揺動に応じて湾曲させて揺動に対する反力を発生させる。
【解決手段】基体1と基体1に連結された揺動体2との間に設けられた複数の棒又は板状のスプリング3と、スプリング3毎に設けられ、対応するスプリング3にカム面6bが当接する突出位置4とカム面6bが突出位置4よりも対応するスプリング3から遠くに位置する退避位置5との間で回転変位可能な作動切換カム6と、作動切換カム6を回転変位させる操作装置7を備え、作動切換カム6は外周面がカム面6bになっており、操作装置7は突出位置4に変位させる作動切換カム6と退避位置5に変位させる作動切換カム6との組み合わせが異なる複数の反力調整位置を有し、突出位置4に変位された作動切換カム6は対応するスプリング3を揺動体2の揺動に応じて湾曲させて揺動に対する反力を発生させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子の反力装置に関する。更に詳しくは、本発明は、多段階に反力調整可能な椅子の反力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
棒状のスプリングを備え、そのスプリングの弾性変形を利用して反力を発生させる椅子の反力装置として、例えば特開平9−56520号公報に記載されたものがある。この反力装置を図15に示す。この反力装置では棒状のスプリングとしてトーションバー101を備えている。トーションバー101の中央部バー102はブラケット103によって着座シート104の底面に取り付けられている。また、トーションバー101の側部バー105は後方に向けて折り曲げられて背凭れ部材106の底面に当接してこれを支持している。図15(A)の状態から(B)に示すように背凭れ部材106を後に倒すと、左右の側部バー105が下方に倒されて中央部バー102に捻りが生じ、背凭れ部材106の後傾に対する反力を発生させる。
【0003】
反力の大きさは反力調節手段107の調節ボルト108を回転操作することによって調節される。即ち、調節ボルト108を回転させて係止板109のねじ込み量を変化させると、係止板が上下に移動する。係止板109を下降させて凸出部110を下げると、中央部バー102の捻れ量が増加し、発生する反力が大きくなる。一方、係止板109を上昇させて凸出部110を上げると、中央部バー102の捻れ量が減少し、発生する反力が小さくなる。
【0004】
また、反力の大きさを段階的に調節する反力装置として、例えば特開2004−49713号公報に記載されたものがある。この反力装置を図16〜図19に示す。この反力装置は3つの単位付勢手段111,112,113を備えており、切換手段114によって作動させる単位付勢手段111,113を切り換えることで発生させる反力の大きさを切り換えている。単位付勢手段111,112,113は背凭れ支持桿115の揺動に連動して回転する内筒116と、突部117を有する外筒118と、内筒116と外筒118の間に設けられた弾性体119を備えている。切換手段114は操作レバー120の回転操作によって回転する一対の円筒カム121,122と、円筒カム121,122によって軸123上を移動される一対の作動部材124と、作動部材124を円筒カム121,122に押し付ける圧縮コイルばね125を備えている。
【0005】
中央の単位付勢手段112の突部117は支基126の停止片127に常時当接しており、背凭れ支持桿115が揺動すると弾性体119が弾性変形して反力を発生させる。一方、両側の単位付勢手段111,113の突部117は、停止片128が作動位置に移動している場合には停止片128に当接するが、停止片128が非作動位置に移動している場合には停止片128に当接しない。したがって、停止片128が作動位置に移動している場合にのみ、背凭れ支持桿115が揺動すると弾性体119が弾性変形して反力を発生させる。
【0006】
図19は円筒カム121,122のカム面の展開図である。円筒カム121,122の回転角度によって作動位置に移動させる停止片128が切り換わる。したがって、操作レバー120を操作して円筒カム121,122の回転角度を変えることで、反力を発生させる単位付勢手段111,112,113の組み合わせが変わり、発生させる反力の大きさを変えることができる。
【0007】
【特許文献1】特開平9−56520号
【特許文献2】特開2004−49713号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のトーションバー101を使用した反力装置では、調節ボルト108に対する係止板109のねじ込み量を変えることで反力調節を行っているので、反力を大きく変化させるためには調節ボルト108を何回も繰り返し回転させる必要がある。また、発生させる反力の増加に伴って係止板109を押し下げようとする力も増加するので、調節ボルト108を回転させるのに必要な力(操作力)も徐々に増加する。これらのため、反力調節の作業が面倒であると共に、反力装置の使い勝手が悪い。また、発生させる反力の増加に伴って操作力も増加するので、特に女性や年配者など握力が小さい人にとって、反力調節が大変な作業になる。
【0009】
また、上述の単位付勢手段111,112,113を使用した反力装置では、内筒116と外筒118の間に弾性体119を固着させており、しかもそのような構造の単位付勢手段111,112,113を3つも備えており、反力装置の製造コストが増加する。また、円筒カム121,122の回転によって停止片128を軸123上で移動させることで単位付勢手段111,113の作動・非作動を切り換えており、反力装置の小型化が困難であると共に、単位付勢手段111,112,113の数をあまり多くすることができず、反力調整の段数を増やすのが困難である。
【0010】
本発明は、反力調整が容易で、大きな操作力を必要とせず、多段階調整に適し、製造コストの増加を抑えることができる椅子の反力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するために、請求項1記載の椅子の反力装置は、基体と基体に連結された揺動体との間に設けられた複数の棒又は板状のスプリングと、スプリング毎に設けられ、対応するスプリングにカム面が当接する突出位置とカム面が突出位置よりも対応するスプリングから遠くに位置する退避位置との間で変位可能な作動切換カムと、作動切換カムを変位させる操作装置を備え、作動切換カムは外周面がカム面になっており、操作装置は突出位置に変位させる作動切換カムと退避位置に変位させる作動切換カムとの組み合わせが異なる複数の反力調整位置を有し、突出位置に変位された作動切換カムは対応するスプリングを揺動体の揺動に応じて湾曲させて揺動に対する反力を発生させるものである。
【0012】
したがって、棒又は板状のスプリングが作動切換カムに当接している状態で、即ち対応する作動切換カムが突出位置に回転変位している状態で、基体に対して揺動体が揺動すると、スプリングが湾曲し、揺動に対する反力を発生させる。一方、スプリングが作動切換カムから離れている状態、即ち対応する作動切換カムが退避位置に回転変位している状態では、基体に対して揺動体が揺動してもスプリングは作動切換カムによって湾曲されて反力を発生させることはない。操作装置は突出位置の作動切換カムと退避位置の作動切換カムとの組み合わせが異なる複数の反力調整位置を有しているので、操作装置の操作によって反力調整位置を切り換えることで、反力を発生させるスプリングの数が変化し、反力の大きさが段階的に切り換えられる。
【0013】
また、請求項2記載の椅子の反力装置は、操作装置には反力調整位置を示す位置表示が設けられている。したがって、位置表示を確認しながら操作装置を操作することができる。
【0014】
また、請求項3記載の椅子の反力装置は、複数のスプリングとして、長さの異なるものを有している。スプリングの長さが異なると、湾曲によって発生する反力の大きさが異なる。したがって、設定できる反力値のバリエーションを増やすことができる。
【0015】
さらに、請求項4記載の椅子の反力装置は、複数のスプリングとして、太さの異なるものを有している。スプリングの太さが異なると、湾曲によって発生する反力の大きさが異なる。したがって、設定できる反力値のバリエーションを増やすことができる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の椅子の反力装置では、作動切換カムを回転させて、突出位置の作動切換カムと退避位置の作動切換カムとの組み合わせを変えることで反力調整を行うので、反力調整作業を容易なものにすることができると共に、反力調整のために必要な操作力を軽くすることができる。即ち、コイルスプリングを圧縮させて反力調整を行う場合のように、発生させる反力を大きくするのに伴って操作に必要な力が増加することがない。また、スプリングは細く多数の設置が容易であり、スプリングの設置数を多くすることで、多段階の反力調整が可能となる。そのため、細かな反力調整を行うのに適した反力装置を提供することができる。さらに、多段階調整が可能な割には構造が簡単であり、製造コストの増加を抑えることができると共に、椅子の軽量化を図ることができる。
【0017】
また、請求項2記載の椅子の反力装置では、操作装置に位置表示が設けられているので、位置表示を確認しながら反力調整を行うことができる。また、椅子の使用者が自分の好みの位置を憶えておくことで、他人が使用していた椅子を自分が使用する場合に自分の好みの反力値に設定するのが容易である。
【0018】
また、請求項3記載の椅子の反力装置では、複数のスプリングとして長さの異なるものを有しているので、設定できる反力値のバリエーションを増やすことができる。
【0019】
さらに、請求項4記載の椅子の反力装置では、複数のスプリングとして太さの異なるものを有しているので、設定できる反力値のバリエーションを増やすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1〜図4に、本発明の椅子の反力装置の実施形態の一例を示す。椅子の反力装置は、基体1と基体1に連結された揺動体2との間に設けられた複数の棒又は板状のスプリング3と、スプリング3毎に設けられ、対応するスプリング3にカム面6bが当接する突出位置4とカム面6bが突出位置4よりも対応するスプリング3から遠くに位置する退避位置5との間で回転変位可能な作動切換カム6と、作動切換カム6を回転変位させる操作装置7を備えている。
【0022】
反力装置は、背もたれ8を後に倒した場合に背もたれ8を起こそうとする反力を発生させるものである。本実施形態では、背もたれ8の後傾に連動して座9を後に沈み込ませるシンクロタイプのロッキングチェアに当該反力装置を適用した場合について説明する。ただし、適用できる椅子としてはシンクロタイプのロッキングチェアに限るものではなく、例えば座9の連動を伴わずに背もたれ8を後傾させるタイプの椅子等に適用しても良い。
【0023】
椅子の脚柱10の上端には基体1としての脚側固定部材(以下、脚側固定部材1という)が取り付けられている。脚側固定部材1には、揺動体2としての座受け部材(以下、座受け部材2という)と背支桿11がそれぞれシャフト12,13によって揺動自在に連結されている。また、座受け部材2と背支桿11はシャフト14によって揺動自在に連結されている。脚側固定部材1と背支桿11を連結するシャフト13を通す脚側固定部材1の孔は長孔1aとなっている。座受け部材2と背支桿11はシンクロリンク15によって連結され、シンクロリンク15の下端と脚側固定部材1との間にはロック機構付きのガススプリング16が設けられている。シンクロリンク15とガススプリング16を連結するシャフトと、脚側固定部材1と背支桿11を連結するシャフト13は同軸上に配置されている。座9は座受け部材2に、背もたれ8は背支桿11にそれぞれ取り付けられている。
【0024】
揺動体2は背もたれ8の後傾動作、起立動作に連動して基体1に対して揺動する部材であり、本実施形態では座受け部材2である。ただし、座受け部材2に限るものではなく、例えば背支桿11等でも良い。また、他のタイプの椅子では、背もたれ8の後傾動作、起立動作に連動して基体1に対して揺動する部材であれば座受け部材2や背支桿11以外の部材でも良い。
【0025】
基体1は揺動体2を揺動自在に支持する部材であり、本実施形態では脚側固定部材1である。ただし、脚側固定部材1に限るものではない。また、他のタイプの椅子では、揺動体2を揺動自在に支持する部材であれば脚側固定部材1以外の部材でも良い。
【0026】
スプリング3は棒状又は板状のスプリングで、本実施形態では棒状のスプリング(以下、バースプリングという)を使用している。バースプリングとしては、丸棒でも角棒でも良い。本実施形態では、丸棒を使用している。バースプリング3は例えば4本設けられている。ただし、バースプリング3の数は4本に限るものではなく、複数であれば2本、3本でも良く、あるいは5本以上でも良い。発生させる反力の大きさは全てのバースプリング3について同じでも良く、あるいは一部又は全てのバースプリング3について変えても良い。発生させる反力の大きさを変える手段としては、バースプリング3の材料の変更、太さの変更、長さの変更、形状の変更等がある。本実施形態では、全てのバースプリング3の長さを同一にし、太さを変えることでバースプリング3毎に発生させる反力の大きさを変えている。
【0027】
バースプリング3の前端は脚側固定部材1に設けられた支持壁17の孔17aに通されている。孔17aの径はバースプリング3の直径よりも若干大きく形成され、座受け部材2の揺動に伴って前方又は後方にずれることができる。本実施形態では、脚側固定部材1内に左右一対の支持壁17を設けており、左右の支持壁17がそれぞれ2本のバースプリング3を支持している。バースプリング3の前方には壁18が設けられており、バースプリング3が前方に移動し過ぎて孔17aから抜けて外れるのを防止している。バースプリング3の後端は座受け部材2に取り付けられたスプリング受け19の穴19aに挿入されている。穴19aの径はバースプリング3の直径よりも若干大きく形成され、座受け部材2の揺動に伴って角度を変えることができる。スプリング受け19は、座受け部材2に対して例えばねじ止めされている。本実施形態では、1つのスプリング受け19に4つの穴19aを設けて4本一緒にバースプリング3を支持している。ただし、1つのスプリング受け19によって4本全てのバースプリング3を支持する必要はなく、スプリング受け19を複数設けて4本のバースプリング3をグループ分けして支持するようにしても良い。
【0028】
作動切換カム6は支持壁17とスプリング受け19との間でバースプリング3に対向して配置されている。本実施形態では、支持壁17の近傍に作動切換カム6が配置され、バースプリング3の前側の支持位置の近傍に作動切換カム6が当接可能になっている。ただし、作動切換カム6を当接させる位置はバースプリング3の前側の支持位置の近傍に限るものではなく、他の位置でも良い。作動切換カム6は外周面がカム面6bになっている回転カムである。作動切換カム6は操作装置7に取り付けられている。作動切換カム6の中心には非円形の孔6aが設けられている。孔6aの形状を非円形、即ち円形以外の形状とすることで、後述するように操作装置7のパイプシャフト20と一体的に回転するようにしている。
【0029】
ここで、突出位置4は座受け部材2が揺動していない状態でバースプリング3に当接する回転角度の位置(図1に2点鎖線で示す作動切換カム6の位置)であり、退避位置5は座受け部材2の揺動角度が最大にならなければバースプリング3に当接しない回転角度の位置(図1に実線で示す作動切換カム6の位置)である。本実施形態では、図5に示すように、回転角45度毎に突出位置4又は退避位置5が設定され、全部で8つの切換角度P1〜P8を有している。ただし、切換角度の数は8つに限るものではなく、他の数でも良い。また、突出位置4と退避位置5の組み合わせのパターン即ちカム面6bの形状は全ての作動切換カム6について同一にしても良いが、全て又は一部の作動切換カム6について相違させても良い。本実施形態では、全ての作動切換カム6でカム面6bの形状を相違させている。
【0030】
操作装置7は、作動切換カム6を突出位置4又は退避位置5に回転変位させるものである。本実施形態では、1つの操作装置7によって全ての作動切換カム6を一緒に操作するようにしている。ただし、全ての作動切換カム6を一緒に操作する必要はなく、作動切換カム6を順番に選択して別々に操作するようにしても良い。また、操作装置7の数は1つに限るものではなく、操作装置7を複数設け、グループ分けした作動切換カム6をグループ毎に専用の操作装置7で操作するようにしても良い。
【0031】
操作装置7は、例えば図6及び図7に示すように、作動切換カム6が嵌め込まれるパイプシャフト20と、このパイプシャフト20内を貫通するセンターボルト21と、パイプシャフト20の外周に装着されて作動切換カム6及びカムインデックス26を位置決めする4本のカラー22,23,24,25と、パイプシャフト20の基端に取り付けられるグリップ27より構成されている。センターボルト21のボルトヘッド21aには反力調整位置を合わせる際の目印となる基準マーク28が付されている。
【0032】
パイプシャフト20はセンターボルト21に対して相対回転自在になっている。パイプシャフト20の作動切換カム6を嵌め込む範囲の横断面形状は、作動切換カム6の孔6aの形状に一致する形状となっている。本実施形態では、外周面に2つの平坦部20aを形成してパイプシャフト20の横断面形状を作動切換カム6の孔6aの形状に一致させている。したがって、作動切換カム6はパイプシャフト20に対して相対回転することはできず、作動切換カム6とパイプシャフト20の回転角は一致する。一方、平坦部20aが形成されている範囲では作動切換カム6はパイプシャフト20の軸方向に移動することができるので、パイプシャフト20の先端側から作動切換カム6を嵌め込んで所定の位置まで移動させることができる。全ての作動切換カム6は切換角度P1〜P8を合わせた状体でパイプシャフト20に嵌め込まれている。
【0033】
カラー22〜25は作動切換カム6が対応するバースプリング3に対向するように位置決めするスペーサである。本実施形態では、4本のバースプリング3が左右に分けて2本ずつ配置されているので、これに合わせて作動切換カム6も左右に分けて2つずつ配置するようにカラー22〜25が設けられている。
【0034】
グリップ27はパイプシャフト20の基端に嵌め込まれ、例えば図示しない止めねじによって固定されている。したがって、グリップ27を回転させると、パイプシャフト20及び4つの作動切換カム6がセンターボルト21に対して同じ角度だけ回転し、突出位置4の作動切換カム6と退避位置5の作動切換カム6の組み合わせである反力調整位置が切り換えられる。グリップ27はセンターボルト21のボルトヘッド21aの内側に配置されている。グリップ27先端の外周面には反力調整位置を示す位置表示29が設けられている。
【0035】
操作装置7は、基体1に取り付けられている。本実施形態では、基体1である脚側固定部材1の左右の側板1b,1cに孔を設けて操作装置7を架け渡すように挿入し、側板1cから突出したセンターボルト21の先端のねじ部21bに丸ナット30と六角ナット31をねじ込むことで、センターボルト21を基体1に固定している。側板1c側のカラー25は側板1cの孔よりも大径である。したがって、カラー25の端面が側板1bに度当たりし、この側板1bを基準にして各作動切換カム6とインデックス26がカラー22〜25によって位置決めされる。グリップ27側のカラー22はグリップ27の端面に当接する。
【0036】
操作装置7は、突出位置4に変位させる作動切換カム6と退避位置5に変位させる作動切換カム6との組み合わせが異なる複数の反力調整位置を有している。反力調整位置は作動切換カム6の切換角度P1〜P8によって決定される。本実施形態では、回転角45度毎に合計8つの切換角度P1〜P8が設けられているので、反力調整位置A1〜A8も回転角45度毎に合計8つ設けられている。即ち、切換部材6を第1の切換角度P1にする操作装置7の回転角が第1の反力調整位置A1となり、切換部材6を第2の切換角度P2にする操作装置7の回転角が第2の反力調整位置A2となる。他の反力調整位置A3〜A8も同様である。本実施形態では、発生する反力の大きさが、第1の反力調整位置A1<第2の反力調整位置A2<…<第8の反力調整位置A8となるように、突出位置4の作動切換カム6と退避位置5の作動切換カム6との組み合わせが決定されている。ただし、このように反力の大きさを決定する必要はなく、例えば第1の反力調整位置A1>第2の反力調整位置A2>…>第8の反力調整位置A8としても良く、その他の順番にしても良い。
【0037】
また、操作装置7を各反力調整位置A1〜A8に移動させたときにその反力調整位置A1〜A8を表わす位置表示29が基準マーク28に合うように、位置表示29が付されている。位置表示29としては、単に反力調整位置A1〜A8を示すだけのものでも良いが、同時に反力の大小関係を示すようにしても良く、本実施形態では、反力調整位置A1〜A8と同時に反力の大小関係を示すものとしている。位置表示29としては、例えば数字やアルファベット等の文字、反力の大小を個数や大きさ等で表わす模様等がある。本実施形態では位置表示29として「1」〜「8」の数字を使用し、操作装置7を第1の反力調整位置A1に移動させたときに「1」が基準マークに対向し、第2の反力調整位置A2に移動させたときに「2」が基準マークに対向するように、それぞれの位置表示29が付されている。他の位置表示29も同様である。
【0038】
本実施形態では、操作装置7を各反力調整位置A1〜A8に合わせやすくするために位置合わせ装置32が設けられている。ただし、位置合わせ装置32を省略しても良い。位置合わせ装置32は、例えば図8及び図9に示すように、パイプシャフト20に嵌め込まれてこれと一体回転するカムインデックス26と、脚側固定部材1の側板1bに取り付けられたボールプランジャ33より構成されている。
【0039】
カムインデックス26の中心には作動切換カム6の孔6aと同じ形状の孔26aが設けられており、作動切換カム6と同様に、パイプシャフト21に対して相対回転できないようにして回転角が一致するようになっている。カムインデックス26には各反力調整位置A1〜A8に対応させて凹部26bが設けられている。本実施形態では、8つの反力調整位置A1〜A8が設定されているので、同一円周上に8つの凹部26bが形成されている。ボールプランジャ33は凹部26bに対向可能な位置に取り付けられており、カムインデックス26の回転によって凹部26bが正面に位置すると、ボールプランジャ33のボールが凹部26bに入り込む。即ち、カムインデックス26の回転角が反力調整位置A1〜A8に一致すると、ボールプランジャ33のボールが凹部26bに入り込む。これにより、カムインデックス26の回転を止める軽い力が発生し、操作装置7を反力調整位置A1〜A8に正確に合わせるのが容易になる。
【0040】
ガススプリング16のロックを解除した状態で着座者が背もたれ8を後に倒すと、背支桿11がシャフト14を中心に回転しながら座受け部材2の後部を下降させる(図1(B))。これにより、背もたれ8と座9が連動して角度を変える。また、脚側固定部材1に対して座受け部材2が揺動するので、反力装置が作動して揺動に対する反力を発生させる。
【0041】
座受け部材2の揺動によってシンクロリンク15が回転し、ガススプリング16を押し縮める。そして、背もたれ8を所望の角度まで倒した状態で着座者がガススプリング16をロック操作して伸縮できなくすると、脚側固定部材1に対して座受け部材2が揺動できなくなり、背支桿11が回転できなくなるので、背もたれ8及び座9がその角度で固定される。
【0042】
背もたれ8を起こす場合には、着座者が背もたれ8に寄り掛かっていない状態でガススプリング16をロック解除操作する。ロック解除操作によってガススプリング16の伸縮が可能となり、脚側固定部材1に対して座受け部材2と背支桿11が揺動可能となるので、反力装置が発生させる反力によって座受け部材2と背支桿11が連動してそれぞれ元の位置に戻され、背もたれ8が起こされると共に座9が元の位置に戻る。
【0043】
次に、反力装置の反力の発生について説明する。図1(B)に実線で示すように、作動切換カム6が退避位置5に移動している場合には、基体1に対して揺動体2が揺動してもバースプリング3は湾曲しない。したがって、バースプリング3は非作動状態のままであり、反力を発生させない。一方、図1(B)に2点鎖線で示すように、作動切換カム6が突出位置4に移動している場合には、基体1に対して揺動体2が揺動すると作動切換カム6はバースプリング3を湾曲させる。したがって、バースプリング3は作動状態となり、揺動に対する反力を発生させる。
【0044】
操作装置7は8つの反力調整位置を有しており、グリップ27の回転操作によって反力調整位置を切り換えることで、突出位置4に移動している作動切換カム6の組み合わせが変わる。したがって、作動状態になるバースプリング3の組み合わせが変わり、発生する反力の大きさを調整することができる。本実施形態では、反力調整位置として8つの位置が設けられているので、発生する反力の大きさを8段階に調整することができる。
【0045】
このように操作装置7のグリップ27を回転操作することで反力調整を行うので、反力調整作業が容易なものとなる。また、切換カム6を回転変位させてバースプリング3に当接する突出位置4と当接しない退避位置5とを切り換えるようにしているので、反力調整のために必要な操作力を軽くすることができる。これらのため、反力装置の使い勝手を向上させることができる。
【0046】
この反力装置では、作動切換カム6の回転変位によってバースプリング3の作動・非作動を切り換える構造であり、構造を簡単なものにすることができる。そのため、製造コストを安くすることができると共に、装置を小型軽量化することができる。
【0047】
この反力装置では、バースプリング3は細く多数の設置が容易であり、バースプリング3の設置数を多くすることで多段階の反力調整が可能となる。そのため、細かな反力調整を行うのに適した反力装置を提供することができる。また、作動切換カム6を軸方向に移動させることがないので、多数の作動切換カム6の設置も容易になる。このことからも細かな反力調整を行うのに適した反力装置を提供することができる。
【0048】
また、操作装置7に位置表示29を設けているので、位置表示29を確認しながら反力調整を行うことができる。また、椅子の使用者が自分の好みの位置を憶えておくことで、他人が使用していた椅子を自分が使用する場合に自分の好みの反力値に設定するのが容易になる。
【0049】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の説明では、座受け部材2の揺動角度が最大になるとバースプリング3が退避位置5の作動切換カム6に対しても当接したが、当接しないようにしても良い。また、座受け部材2の揺動角度が最大になる直前にバースプリング3が退避位置5の作動切換カム6に当接するようにすることで、座受け部材2の揺動角度、即ち背もたれ8の後傾角度が最大になる直前に反力を発生させるようにして、背もたれ8を最大に倒した時の底付き感を和らげるようにしても良い。
【0050】
また、上述の説明では、作動切換カム6である回転カムを同一方向に1回転以上回転可能、即ち、第1の反力調整位置→第2の反力調整位置→…→第8の反力調整位置→第1の反力調整位置→第2の反力調整位置→…、又は第1の反力調整位置→第8の反力調整位置→第7の反力調整位置→…→第2の反力調整位置→第1の反力調整位置→第8の反力調整位置→…へと操作できるようにしていたが、回転できる角度を360度未満にし、例えば第1の反力調整位置→第2の反力調整位置→…→第7の反力調整位置→第8の反力調整位置→第7の反力調整位置→…→第1の反力調整位置へと操作するようにしても良い。
【0051】
また、上述の説明では、操作装置7のパイプシャフト20の先端にグリップ27を取り付け、パイプシャフト20を直接回転させて反力調整位置を切り換えるようにしていたが、別の位置にグリップ27を設けてパイプシャフト20を間接的に回転させて反力調整位置を切り換えるようにしても良い。その一例を図10に示す。この例では、肘掛け34に操作レバー35を設け、操作レバー35の先端にグリップ27を設けている。グリップ27の回転はトルクワイヤ36を介してパイプシャフト20に伝えられる。この例では、着座者が手を伸ばさなくてもグリップ27を操作することができる。なお、操作レバー35はガススプリング16のロック機構の操作にも使用される。即ち、操作レバー35を上方に揺動させると、ロッキングコントロールワイヤ37が引かれてガススプリング16のロック機構を解除操作し、背もたれ8がロッキング(後傾)可能になる。そして、操作レバー35を下方に揺動させると、ロッキングコントロールワイヤ37が戻されてガススプリング16のロック機構をロック操作し、背もたれ8を固定する。
【実施例1】
【0052】
4本のバースプリング3を有する反力装置を試作した。丸棒形状のバースプリング3を使用した。第1のバースプリング3の直径を6.5mm、第2のバースプリング3の直径を7.0mm、第3のバースプリング3の直径を8.0mm、第4のバースプリング3の直径を5.1mmとした。4本のバースプリング3の長さは同一にした。各バースプリング3が発生させる反力の大きさは、第1のバースプリング3;196.1N(20kgf)、第2のバースプリング3;294.2N(30kgf)、第3のバースプリング3;392.3N(40kgf)、第4のバースプリング3;147.1N(15kgf)となった。脚側固定部材1の側板1bに近い方から、第1のバースプリング3、第4のバースプリング3、第3のバースプリング3、第2のバースプリング3の順番で4本を配置した。
【0053】
また、8つの反力調整位置を設定した。第1のバースプリング3に対応する第1の作動切換カム6を図5(A)示す。なお、図5において、切換角度P1〜P8を放射状の2点鎖線で示している。第1、第4〜第8の切換角度P1,P4〜P8で突出位置4になり、第2、第3の切換角度P2,P3で退避位置5になるようにカム形状を設計した。第2のバースプリング3に対応する第2の作動切換カム6を図5(B)示す。第2、第4、第7、第8の切換角度P2,P4,P7,P8で突出位置4になり、第1、第3、第5、第6の切換角度P1,P3,P5,P6で退避位置5になるようにカム形状を設計した。第3のバースプリング3に対応する第3の作動切換カム6を図5(C)示す。第3、第5、第6、第7、第8の切換角度P3,P5,P6,P7,P8で突出位置4になり、第1、第2、第4の切換角度P1,P2,P4で退避位置5になるようにカム形状を設計した。第4のバースプリング3に対応する第4の作動切換カム6を図5(D)示す。第6、第8の切換角度P6,P8で突出位置4になり、第1〜第5、第7の切換角度P1〜P5,P7で退避位置5になるようにカム形状を設計した。
【0054】
反力調整位置A1〜A8と作動状態になるバースプリング3と発生する反力の大きさの関係を図11に示す。この図からも明らかなように、第1の反力調整位置A1では第1のバースプリング3のみが作動し、196.1N(20kgf)の反力が発生する。また、第2の反力調整位置A2では第2のバースプリング3のみが作動し、294.2N(30kgf)の反力が発生する。また、第3の反力調整位置A3では第3のバースプリング3のみが作動し、392.3N(40kgf)の反力が発生する。また、第4の反力調整位置A4では第1、第2のバースプリング3が作動し、合計490.3N(50kgf)の反力が発生する。また、第5の反力調整位置A5では第1、第3のバースプリング3が作動し、合計588.4N(60kgf)の反力が発生する。また、第6の反力調整位置A6では第1、第3、第4のバースプリング3が作動し、合計735.5N(75kgf)の反力が発生する。また、第7の反力調整位置A7では第1、第2、第3のバースプリング3が作動し、合計882.6N(90kgf)の反力が発生する。また、第8の反力調整位置A8では全てのバースプリング3が作動し、合計1030N(105kgf)の反力が発生する。
【0055】
このように4本のバースプリング3を使用することで、98.07N(10kgf)又は147.1N(15kgf)おきに8段階の反力調整を行うことができた。
【実施例2】
【0056】
実施例1の反力装置に対して、別のバースプリング3を使用した反力装置を試作した。即ち、実施例1の反力装置と同じ作動切換カム6の組み合わせ及び操作装置7を使用して反力装置を試作した。図12及び図13に反力装置を示す。なお、図1の反力装置と同一の部材には同一の符号を付してある。横断面形状が一辺7.5mmの正方形を成す角棒形状のバースプリング3を使用した。支持壁17からスプリング受け19までの長さを、第1のバースプリング3;220mm、第2のバースプリング3;195mm、第3のバースプリング3;186mm、第4のバースプリング3;220mmとした。各バースプリング3が発生させる反力の大きさは、第1のバースプリング3;196.1N(20kgf)、第2のバースプリング3;343.2N(35kgf)、第3のバースプリング3;392.3N(40kgf)、第4のバースプリング3;196.1N(20kgf)となった。脚側固定部材1の側板1bに近い方から、第1のバースプリング3、第4のバースプリング3、第3のバースプリング3、第2のバースプリング3の順番で4本を配置した。
【0057】
反力調整位置A1〜A8と作動状態になるバースプリング3と発生する反力の大きさの関係を図14に示す。この図からも明らかなように、第1の反力調整位置A1では第1のバースプリング3のみが作動し、196.1N(20kgf)の反力が発生する。また、第2の反力調整位置A2では第2のバースプリング3のみが作動し、343.2N(35kgf)の反力が発生する。また、第3の反力調整位置A3では第3のバースプリング3のみが作動し、392.3N(40kgf)の反力が発生する。また、第4の反力調整位置A4では第1、第2のバースプリング3が作動し、合計539.4N(55kgf)の反力が発生する。また、第5の反力調整位置A5では第1、第3のバースプリング3が作動し、合計588.4N(60kgf)の反力が発生する。また、第6の反力調整位置A6では第1、第3、第4のバースプリング3が作動し、合計784.5N(80kgf)の反力が発生する。また、第7の反力調整位置A7では第1、第2、第3のバースプリング3が作動し、合計931.6N(95kgf)の反力が発生する。また、第8の反力調整位置A8では全てのバースプリング3が作動し、合計1128N(115kgf)の反力が発生する。
【0058】
このように4本のバースプリング3を使用することで、8段階の反力調整を行うことができた。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の椅子の反力装置の実施形態の一例を示し、(A)は揺動体が揺動していない状態のスプリングの様子を水平方向から示す基体及び揺動体の断面図、(B)は揺動体が揺動した状態のスプリングの様子を水平方向示す基体及び揺動体の断面図である。
【図2】同反力装置を示し、スプリングの様子を上方向から示す基体及び揺動体の断面図である。
【図3】同反力装置を備える椅子の側面図である。
【図4】同反力装置を備える椅子の正面図である。
【図5】作動切換カムを示し、(A)は第1の作動切換カムの正面図、(B)は第2の作動切換カムの正面図、(C)は第3の作動切換カムの正面図、(D)は第4の作動切換カムの正面図である。
【図6】操作装置の分解組立図である。
【図7】操作装置のグリップの取付状態を示す断面図である。
【図8】位置合わせ装置の断面図である。
【図9】位置合わせ装置のカムインデックスを示す正面図である。
【図10】操作装置の他の実施形態を一部切り欠いて示す図である。
【図11】実施例1の反力調整位置と作動状態になるバースプリングと発生する反力の大きさの関係を示す図である。
【図12】本発明の反力装置の他の実施形態を示し、揺動体が揺動していない状態のスプリングの様子を水平方向から示す基体及び揺動体の断面図である。
【図13】本発明の反力装置の他の実施形態を示し、スプリングの様子を上方向から示す基体及び揺動体の断面図である。
【図14】実施例2の反力調整位置と作動状態になるバースプリングと発生する反力の大きさの関係を示す図である。
【図15】従来の反力装置を示し、(A)は背凭れが後傾していな状態の断面図、(B)は背凭れが後傾している状態の断面図である。
【図16】従来の他の反力装置を示す断面図である。
【図17】図16のVI−VI線に沿う断面図である。
【図18】図16のVII−VII線に沿う断面図である。
【図19】円筒カムのカム面の展開図である。
【符号の説明】
【0060】
1 基体
2 揺動体
3 バースプリング
4 突出位置
5 退避位置
6 作動切換カム
6b カム面
7 操作装置
29 位置表示
A1〜A8 反力調整位置
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子の反力装置に関する。更に詳しくは、本発明は、多段階に反力調整可能な椅子の反力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
棒状のスプリングを備え、そのスプリングの弾性変形を利用して反力を発生させる椅子の反力装置として、例えば特開平9−56520号公報に記載されたものがある。この反力装置を図15に示す。この反力装置では棒状のスプリングとしてトーションバー101を備えている。トーションバー101の中央部バー102はブラケット103によって着座シート104の底面に取り付けられている。また、トーションバー101の側部バー105は後方に向けて折り曲げられて背凭れ部材106の底面に当接してこれを支持している。図15(A)の状態から(B)に示すように背凭れ部材106を後に倒すと、左右の側部バー105が下方に倒されて中央部バー102に捻りが生じ、背凭れ部材106の後傾に対する反力を発生させる。
【0003】
反力の大きさは反力調節手段107の調節ボルト108を回転操作することによって調節される。即ち、調節ボルト108を回転させて係止板109のねじ込み量を変化させると、係止板が上下に移動する。係止板109を下降させて凸出部110を下げると、中央部バー102の捻れ量が増加し、発生する反力が大きくなる。一方、係止板109を上昇させて凸出部110を上げると、中央部バー102の捻れ量が減少し、発生する反力が小さくなる。
【0004】
また、反力の大きさを段階的に調節する反力装置として、例えば特開2004−49713号公報に記載されたものがある。この反力装置を図16〜図19に示す。この反力装置は3つの単位付勢手段111,112,113を備えており、切換手段114によって作動させる単位付勢手段111,113を切り換えることで発生させる反力の大きさを切り換えている。単位付勢手段111,112,113は背凭れ支持桿115の揺動に連動して回転する内筒116と、突部117を有する外筒118と、内筒116と外筒118の間に設けられた弾性体119を備えている。切換手段114は操作レバー120の回転操作によって回転する一対の円筒カム121,122と、円筒カム121,122によって軸123上を移動される一対の作動部材124と、作動部材124を円筒カム121,122に押し付ける圧縮コイルばね125を備えている。
【0005】
中央の単位付勢手段112の突部117は支基126の停止片127に常時当接しており、背凭れ支持桿115が揺動すると弾性体119が弾性変形して反力を発生させる。一方、両側の単位付勢手段111,113の突部117は、停止片128が作動位置に移動している場合には停止片128に当接するが、停止片128が非作動位置に移動している場合には停止片128に当接しない。したがって、停止片128が作動位置に移動している場合にのみ、背凭れ支持桿115が揺動すると弾性体119が弾性変形して反力を発生させる。
【0006】
図19は円筒カム121,122のカム面の展開図である。円筒カム121,122の回転角度によって作動位置に移動させる停止片128が切り換わる。したがって、操作レバー120を操作して円筒カム121,122の回転角度を変えることで、反力を発生させる単位付勢手段111,112,113の組み合わせが変わり、発生させる反力の大きさを変えることができる。
【0007】
【特許文献1】特開平9−56520号
【特許文献2】特開2004−49713号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のトーションバー101を使用した反力装置では、調節ボルト108に対する係止板109のねじ込み量を変えることで反力調節を行っているので、反力を大きく変化させるためには調節ボルト108を何回も繰り返し回転させる必要がある。また、発生させる反力の増加に伴って係止板109を押し下げようとする力も増加するので、調節ボルト108を回転させるのに必要な力(操作力)も徐々に増加する。これらのため、反力調節の作業が面倒であると共に、反力装置の使い勝手が悪い。また、発生させる反力の増加に伴って操作力も増加するので、特に女性や年配者など握力が小さい人にとって、反力調節が大変な作業になる。
【0009】
また、上述の単位付勢手段111,112,113を使用した反力装置では、内筒116と外筒118の間に弾性体119を固着させており、しかもそのような構造の単位付勢手段111,112,113を3つも備えており、反力装置の製造コストが増加する。また、円筒カム121,122の回転によって停止片128を軸123上で移動させることで単位付勢手段111,113の作動・非作動を切り換えており、反力装置の小型化が困難であると共に、単位付勢手段111,112,113の数をあまり多くすることができず、反力調整の段数を増やすのが困難である。
【0010】
本発明は、反力調整が容易で、大きな操作力を必要とせず、多段階調整に適し、製造コストの増加を抑えることができる椅子の反力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するために、請求項1記載の椅子の反力装置は、基体と基体に連結された揺動体との間に設けられた複数の棒又は板状のスプリングと、スプリング毎に設けられ、対応するスプリングにカム面が当接する突出位置とカム面が突出位置よりも対応するスプリングから遠くに位置する退避位置との間で変位可能な作動切換カムと、作動切換カムを変位させる操作装置を備え、作動切換カムは外周面がカム面になっており、操作装置は突出位置に変位させる作動切換カムと退避位置に変位させる作動切換カムとの組み合わせが異なる複数の反力調整位置を有し、突出位置に変位された作動切換カムは対応するスプリングを揺動体の揺動に応じて湾曲させて揺動に対する反力を発生させるものである。
【0012】
したがって、棒又は板状のスプリングが作動切換カムに当接している状態で、即ち対応する作動切換カムが突出位置に回転変位している状態で、基体に対して揺動体が揺動すると、スプリングが湾曲し、揺動に対する反力を発生させる。一方、スプリングが作動切換カムから離れている状態、即ち対応する作動切換カムが退避位置に回転変位している状態では、基体に対して揺動体が揺動してもスプリングは作動切換カムによって湾曲されて反力を発生させることはない。操作装置は突出位置の作動切換カムと退避位置の作動切換カムとの組み合わせが異なる複数の反力調整位置を有しているので、操作装置の操作によって反力調整位置を切り換えることで、反力を発生させるスプリングの数が変化し、反力の大きさが段階的に切り換えられる。
【0013】
また、請求項2記載の椅子の反力装置は、操作装置には反力調整位置を示す位置表示が設けられている。したがって、位置表示を確認しながら操作装置を操作することができる。
【0014】
また、請求項3記載の椅子の反力装置は、複数のスプリングとして、長さの異なるものを有している。スプリングの長さが異なると、湾曲によって発生する反力の大きさが異なる。したがって、設定できる反力値のバリエーションを増やすことができる。
【0015】
さらに、請求項4記載の椅子の反力装置は、複数のスプリングとして、太さの異なるものを有している。スプリングの太さが異なると、湾曲によって発生する反力の大きさが異なる。したがって、設定できる反力値のバリエーションを増やすことができる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の椅子の反力装置では、作動切換カムを回転させて、突出位置の作動切換カムと退避位置の作動切換カムとの組み合わせを変えることで反力調整を行うので、反力調整作業を容易なものにすることができると共に、反力調整のために必要な操作力を軽くすることができる。即ち、コイルスプリングを圧縮させて反力調整を行う場合のように、発生させる反力を大きくするのに伴って操作に必要な力が増加することがない。また、スプリングは細く多数の設置が容易であり、スプリングの設置数を多くすることで、多段階の反力調整が可能となる。そのため、細かな反力調整を行うのに適した反力装置を提供することができる。さらに、多段階調整が可能な割には構造が簡単であり、製造コストの増加を抑えることができると共に、椅子の軽量化を図ることができる。
【0017】
また、請求項2記載の椅子の反力装置では、操作装置に位置表示が設けられているので、位置表示を確認しながら反力調整を行うことができる。また、椅子の使用者が自分の好みの位置を憶えておくことで、他人が使用していた椅子を自分が使用する場合に自分の好みの反力値に設定するのが容易である。
【0018】
また、請求項3記載の椅子の反力装置では、複数のスプリングとして長さの異なるものを有しているので、設定できる反力値のバリエーションを増やすことができる。
【0019】
さらに、請求項4記載の椅子の反力装置では、複数のスプリングとして太さの異なるものを有しているので、設定できる反力値のバリエーションを増やすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1〜図4に、本発明の椅子の反力装置の実施形態の一例を示す。椅子の反力装置は、基体1と基体1に連結された揺動体2との間に設けられた複数の棒又は板状のスプリング3と、スプリング3毎に設けられ、対応するスプリング3にカム面6bが当接する突出位置4とカム面6bが突出位置4よりも対応するスプリング3から遠くに位置する退避位置5との間で回転変位可能な作動切換カム6と、作動切換カム6を回転変位させる操作装置7を備えている。
【0022】
反力装置は、背もたれ8を後に倒した場合に背もたれ8を起こそうとする反力を発生させるものである。本実施形態では、背もたれ8の後傾に連動して座9を後に沈み込ませるシンクロタイプのロッキングチェアに当該反力装置を適用した場合について説明する。ただし、適用できる椅子としてはシンクロタイプのロッキングチェアに限るものではなく、例えば座9の連動を伴わずに背もたれ8を後傾させるタイプの椅子等に適用しても良い。
【0023】
椅子の脚柱10の上端には基体1としての脚側固定部材(以下、脚側固定部材1という)が取り付けられている。脚側固定部材1には、揺動体2としての座受け部材(以下、座受け部材2という)と背支桿11がそれぞれシャフト12,13によって揺動自在に連結されている。また、座受け部材2と背支桿11はシャフト14によって揺動自在に連結されている。脚側固定部材1と背支桿11を連結するシャフト13を通す脚側固定部材1の孔は長孔1aとなっている。座受け部材2と背支桿11はシンクロリンク15によって連結され、シンクロリンク15の下端と脚側固定部材1との間にはロック機構付きのガススプリング16が設けられている。シンクロリンク15とガススプリング16を連結するシャフトと、脚側固定部材1と背支桿11を連結するシャフト13は同軸上に配置されている。座9は座受け部材2に、背もたれ8は背支桿11にそれぞれ取り付けられている。
【0024】
揺動体2は背もたれ8の後傾動作、起立動作に連動して基体1に対して揺動する部材であり、本実施形態では座受け部材2である。ただし、座受け部材2に限るものではなく、例えば背支桿11等でも良い。また、他のタイプの椅子では、背もたれ8の後傾動作、起立動作に連動して基体1に対して揺動する部材であれば座受け部材2や背支桿11以外の部材でも良い。
【0025】
基体1は揺動体2を揺動自在に支持する部材であり、本実施形態では脚側固定部材1である。ただし、脚側固定部材1に限るものではない。また、他のタイプの椅子では、揺動体2を揺動自在に支持する部材であれば脚側固定部材1以外の部材でも良い。
【0026】
スプリング3は棒状又は板状のスプリングで、本実施形態では棒状のスプリング(以下、バースプリングという)を使用している。バースプリングとしては、丸棒でも角棒でも良い。本実施形態では、丸棒を使用している。バースプリング3は例えば4本設けられている。ただし、バースプリング3の数は4本に限るものではなく、複数であれば2本、3本でも良く、あるいは5本以上でも良い。発生させる反力の大きさは全てのバースプリング3について同じでも良く、あるいは一部又は全てのバースプリング3について変えても良い。発生させる反力の大きさを変える手段としては、バースプリング3の材料の変更、太さの変更、長さの変更、形状の変更等がある。本実施形態では、全てのバースプリング3の長さを同一にし、太さを変えることでバースプリング3毎に発生させる反力の大きさを変えている。
【0027】
バースプリング3の前端は脚側固定部材1に設けられた支持壁17の孔17aに通されている。孔17aの径はバースプリング3の直径よりも若干大きく形成され、座受け部材2の揺動に伴って前方又は後方にずれることができる。本実施形態では、脚側固定部材1内に左右一対の支持壁17を設けており、左右の支持壁17がそれぞれ2本のバースプリング3を支持している。バースプリング3の前方には壁18が設けられており、バースプリング3が前方に移動し過ぎて孔17aから抜けて外れるのを防止している。バースプリング3の後端は座受け部材2に取り付けられたスプリング受け19の穴19aに挿入されている。穴19aの径はバースプリング3の直径よりも若干大きく形成され、座受け部材2の揺動に伴って角度を変えることができる。スプリング受け19は、座受け部材2に対して例えばねじ止めされている。本実施形態では、1つのスプリング受け19に4つの穴19aを設けて4本一緒にバースプリング3を支持している。ただし、1つのスプリング受け19によって4本全てのバースプリング3を支持する必要はなく、スプリング受け19を複数設けて4本のバースプリング3をグループ分けして支持するようにしても良い。
【0028】
作動切換カム6は支持壁17とスプリング受け19との間でバースプリング3に対向して配置されている。本実施形態では、支持壁17の近傍に作動切換カム6が配置され、バースプリング3の前側の支持位置の近傍に作動切換カム6が当接可能になっている。ただし、作動切換カム6を当接させる位置はバースプリング3の前側の支持位置の近傍に限るものではなく、他の位置でも良い。作動切換カム6は外周面がカム面6bになっている回転カムである。作動切換カム6は操作装置7に取り付けられている。作動切換カム6の中心には非円形の孔6aが設けられている。孔6aの形状を非円形、即ち円形以外の形状とすることで、後述するように操作装置7のパイプシャフト20と一体的に回転するようにしている。
【0029】
ここで、突出位置4は座受け部材2が揺動していない状態でバースプリング3に当接する回転角度の位置(図1に2点鎖線で示す作動切換カム6の位置)であり、退避位置5は座受け部材2の揺動角度が最大にならなければバースプリング3に当接しない回転角度の位置(図1に実線で示す作動切換カム6の位置)である。本実施形態では、図5に示すように、回転角45度毎に突出位置4又は退避位置5が設定され、全部で8つの切換角度P1〜P8を有している。ただし、切換角度の数は8つに限るものではなく、他の数でも良い。また、突出位置4と退避位置5の組み合わせのパターン即ちカム面6bの形状は全ての作動切換カム6について同一にしても良いが、全て又は一部の作動切換カム6について相違させても良い。本実施形態では、全ての作動切換カム6でカム面6bの形状を相違させている。
【0030】
操作装置7は、作動切換カム6を突出位置4又は退避位置5に回転変位させるものである。本実施形態では、1つの操作装置7によって全ての作動切換カム6を一緒に操作するようにしている。ただし、全ての作動切換カム6を一緒に操作する必要はなく、作動切換カム6を順番に選択して別々に操作するようにしても良い。また、操作装置7の数は1つに限るものではなく、操作装置7を複数設け、グループ分けした作動切換カム6をグループ毎に専用の操作装置7で操作するようにしても良い。
【0031】
操作装置7は、例えば図6及び図7に示すように、作動切換カム6が嵌め込まれるパイプシャフト20と、このパイプシャフト20内を貫通するセンターボルト21と、パイプシャフト20の外周に装着されて作動切換カム6及びカムインデックス26を位置決めする4本のカラー22,23,24,25と、パイプシャフト20の基端に取り付けられるグリップ27より構成されている。センターボルト21のボルトヘッド21aには反力調整位置を合わせる際の目印となる基準マーク28が付されている。
【0032】
パイプシャフト20はセンターボルト21に対して相対回転自在になっている。パイプシャフト20の作動切換カム6を嵌め込む範囲の横断面形状は、作動切換カム6の孔6aの形状に一致する形状となっている。本実施形態では、外周面に2つの平坦部20aを形成してパイプシャフト20の横断面形状を作動切換カム6の孔6aの形状に一致させている。したがって、作動切換カム6はパイプシャフト20に対して相対回転することはできず、作動切換カム6とパイプシャフト20の回転角は一致する。一方、平坦部20aが形成されている範囲では作動切換カム6はパイプシャフト20の軸方向に移動することができるので、パイプシャフト20の先端側から作動切換カム6を嵌め込んで所定の位置まで移動させることができる。全ての作動切換カム6は切換角度P1〜P8を合わせた状体でパイプシャフト20に嵌め込まれている。
【0033】
カラー22〜25は作動切換カム6が対応するバースプリング3に対向するように位置決めするスペーサである。本実施形態では、4本のバースプリング3が左右に分けて2本ずつ配置されているので、これに合わせて作動切換カム6も左右に分けて2つずつ配置するようにカラー22〜25が設けられている。
【0034】
グリップ27はパイプシャフト20の基端に嵌め込まれ、例えば図示しない止めねじによって固定されている。したがって、グリップ27を回転させると、パイプシャフト20及び4つの作動切換カム6がセンターボルト21に対して同じ角度だけ回転し、突出位置4の作動切換カム6と退避位置5の作動切換カム6の組み合わせである反力調整位置が切り換えられる。グリップ27はセンターボルト21のボルトヘッド21aの内側に配置されている。グリップ27先端の外周面には反力調整位置を示す位置表示29が設けられている。
【0035】
操作装置7は、基体1に取り付けられている。本実施形態では、基体1である脚側固定部材1の左右の側板1b,1cに孔を設けて操作装置7を架け渡すように挿入し、側板1cから突出したセンターボルト21の先端のねじ部21bに丸ナット30と六角ナット31をねじ込むことで、センターボルト21を基体1に固定している。側板1c側のカラー25は側板1cの孔よりも大径である。したがって、カラー25の端面が側板1bに度当たりし、この側板1bを基準にして各作動切換カム6とインデックス26がカラー22〜25によって位置決めされる。グリップ27側のカラー22はグリップ27の端面に当接する。
【0036】
操作装置7は、突出位置4に変位させる作動切換カム6と退避位置5に変位させる作動切換カム6との組み合わせが異なる複数の反力調整位置を有している。反力調整位置は作動切換カム6の切換角度P1〜P8によって決定される。本実施形態では、回転角45度毎に合計8つの切換角度P1〜P8が設けられているので、反力調整位置A1〜A8も回転角45度毎に合計8つ設けられている。即ち、切換部材6を第1の切換角度P1にする操作装置7の回転角が第1の反力調整位置A1となり、切換部材6を第2の切換角度P2にする操作装置7の回転角が第2の反力調整位置A2となる。他の反力調整位置A3〜A8も同様である。本実施形態では、発生する反力の大きさが、第1の反力調整位置A1<第2の反力調整位置A2<…<第8の反力調整位置A8となるように、突出位置4の作動切換カム6と退避位置5の作動切換カム6との組み合わせが決定されている。ただし、このように反力の大きさを決定する必要はなく、例えば第1の反力調整位置A1>第2の反力調整位置A2>…>第8の反力調整位置A8としても良く、その他の順番にしても良い。
【0037】
また、操作装置7を各反力調整位置A1〜A8に移動させたときにその反力調整位置A1〜A8を表わす位置表示29が基準マーク28に合うように、位置表示29が付されている。位置表示29としては、単に反力調整位置A1〜A8を示すだけのものでも良いが、同時に反力の大小関係を示すようにしても良く、本実施形態では、反力調整位置A1〜A8と同時に反力の大小関係を示すものとしている。位置表示29としては、例えば数字やアルファベット等の文字、反力の大小を個数や大きさ等で表わす模様等がある。本実施形態では位置表示29として「1」〜「8」の数字を使用し、操作装置7を第1の反力調整位置A1に移動させたときに「1」が基準マークに対向し、第2の反力調整位置A2に移動させたときに「2」が基準マークに対向するように、それぞれの位置表示29が付されている。他の位置表示29も同様である。
【0038】
本実施形態では、操作装置7を各反力調整位置A1〜A8に合わせやすくするために位置合わせ装置32が設けられている。ただし、位置合わせ装置32を省略しても良い。位置合わせ装置32は、例えば図8及び図9に示すように、パイプシャフト20に嵌め込まれてこれと一体回転するカムインデックス26と、脚側固定部材1の側板1bに取り付けられたボールプランジャ33より構成されている。
【0039】
カムインデックス26の中心には作動切換カム6の孔6aと同じ形状の孔26aが設けられており、作動切換カム6と同様に、パイプシャフト21に対して相対回転できないようにして回転角が一致するようになっている。カムインデックス26には各反力調整位置A1〜A8に対応させて凹部26bが設けられている。本実施形態では、8つの反力調整位置A1〜A8が設定されているので、同一円周上に8つの凹部26bが形成されている。ボールプランジャ33は凹部26bに対向可能な位置に取り付けられており、カムインデックス26の回転によって凹部26bが正面に位置すると、ボールプランジャ33のボールが凹部26bに入り込む。即ち、カムインデックス26の回転角が反力調整位置A1〜A8に一致すると、ボールプランジャ33のボールが凹部26bに入り込む。これにより、カムインデックス26の回転を止める軽い力が発生し、操作装置7を反力調整位置A1〜A8に正確に合わせるのが容易になる。
【0040】
ガススプリング16のロックを解除した状態で着座者が背もたれ8を後に倒すと、背支桿11がシャフト14を中心に回転しながら座受け部材2の後部を下降させる(図1(B))。これにより、背もたれ8と座9が連動して角度を変える。また、脚側固定部材1に対して座受け部材2が揺動するので、反力装置が作動して揺動に対する反力を発生させる。
【0041】
座受け部材2の揺動によってシンクロリンク15が回転し、ガススプリング16を押し縮める。そして、背もたれ8を所望の角度まで倒した状態で着座者がガススプリング16をロック操作して伸縮できなくすると、脚側固定部材1に対して座受け部材2が揺動できなくなり、背支桿11が回転できなくなるので、背もたれ8及び座9がその角度で固定される。
【0042】
背もたれ8を起こす場合には、着座者が背もたれ8に寄り掛かっていない状態でガススプリング16をロック解除操作する。ロック解除操作によってガススプリング16の伸縮が可能となり、脚側固定部材1に対して座受け部材2と背支桿11が揺動可能となるので、反力装置が発生させる反力によって座受け部材2と背支桿11が連動してそれぞれ元の位置に戻され、背もたれ8が起こされると共に座9が元の位置に戻る。
【0043】
次に、反力装置の反力の発生について説明する。図1(B)に実線で示すように、作動切換カム6が退避位置5に移動している場合には、基体1に対して揺動体2が揺動してもバースプリング3は湾曲しない。したがって、バースプリング3は非作動状態のままであり、反力を発生させない。一方、図1(B)に2点鎖線で示すように、作動切換カム6が突出位置4に移動している場合には、基体1に対して揺動体2が揺動すると作動切換カム6はバースプリング3を湾曲させる。したがって、バースプリング3は作動状態となり、揺動に対する反力を発生させる。
【0044】
操作装置7は8つの反力調整位置を有しており、グリップ27の回転操作によって反力調整位置を切り換えることで、突出位置4に移動している作動切換カム6の組み合わせが変わる。したがって、作動状態になるバースプリング3の組み合わせが変わり、発生する反力の大きさを調整することができる。本実施形態では、反力調整位置として8つの位置が設けられているので、発生する反力の大きさを8段階に調整することができる。
【0045】
このように操作装置7のグリップ27を回転操作することで反力調整を行うので、反力調整作業が容易なものとなる。また、切換カム6を回転変位させてバースプリング3に当接する突出位置4と当接しない退避位置5とを切り換えるようにしているので、反力調整のために必要な操作力を軽くすることができる。これらのため、反力装置の使い勝手を向上させることができる。
【0046】
この反力装置では、作動切換カム6の回転変位によってバースプリング3の作動・非作動を切り換える構造であり、構造を簡単なものにすることができる。そのため、製造コストを安くすることができると共に、装置を小型軽量化することができる。
【0047】
この反力装置では、バースプリング3は細く多数の設置が容易であり、バースプリング3の設置数を多くすることで多段階の反力調整が可能となる。そのため、細かな反力調整を行うのに適した反力装置を提供することができる。また、作動切換カム6を軸方向に移動させることがないので、多数の作動切換カム6の設置も容易になる。このことからも細かな反力調整を行うのに適した反力装置を提供することができる。
【0048】
また、操作装置7に位置表示29を設けているので、位置表示29を確認しながら反力調整を行うことができる。また、椅子の使用者が自分の好みの位置を憶えておくことで、他人が使用していた椅子を自分が使用する場合に自分の好みの反力値に設定するのが容易になる。
【0049】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の説明では、座受け部材2の揺動角度が最大になるとバースプリング3が退避位置5の作動切換カム6に対しても当接したが、当接しないようにしても良い。また、座受け部材2の揺動角度が最大になる直前にバースプリング3が退避位置5の作動切換カム6に当接するようにすることで、座受け部材2の揺動角度、即ち背もたれ8の後傾角度が最大になる直前に反力を発生させるようにして、背もたれ8を最大に倒した時の底付き感を和らげるようにしても良い。
【0050】
また、上述の説明では、作動切換カム6である回転カムを同一方向に1回転以上回転可能、即ち、第1の反力調整位置→第2の反力調整位置→…→第8の反力調整位置→第1の反力調整位置→第2の反力調整位置→…、又は第1の反力調整位置→第8の反力調整位置→第7の反力調整位置→…→第2の反力調整位置→第1の反力調整位置→第8の反力調整位置→…へと操作できるようにしていたが、回転できる角度を360度未満にし、例えば第1の反力調整位置→第2の反力調整位置→…→第7の反力調整位置→第8の反力調整位置→第7の反力調整位置→…→第1の反力調整位置へと操作するようにしても良い。
【0051】
また、上述の説明では、操作装置7のパイプシャフト20の先端にグリップ27を取り付け、パイプシャフト20を直接回転させて反力調整位置を切り換えるようにしていたが、別の位置にグリップ27を設けてパイプシャフト20を間接的に回転させて反力調整位置を切り換えるようにしても良い。その一例を図10に示す。この例では、肘掛け34に操作レバー35を設け、操作レバー35の先端にグリップ27を設けている。グリップ27の回転はトルクワイヤ36を介してパイプシャフト20に伝えられる。この例では、着座者が手を伸ばさなくてもグリップ27を操作することができる。なお、操作レバー35はガススプリング16のロック機構の操作にも使用される。即ち、操作レバー35を上方に揺動させると、ロッキングコントロールワイヤ37が引かれてガススプリング16のロック機構を解除操作し、背もたれ8がロッキング(後傾)可能になる。そして、操作レバー35を下方に揺動させると、ロッキングコントロールワイヤ37が戻されてガススプリング16のロック機構をロック操作し、背もたれ8を固定する。
【実施例1】
【0052】
4本のバースプリング3を有する反力装置を試作した。丸棒形状のバースプリング3を使用した。第1のバースプリング3の直径を6.5mm、第2のバースプリング3の直径を7.0mm、第3のバースプリング3の直径を8.0mm、第4のバースプリング3の直径を5.1mmとした。4本のバースプリング3の長さは同一にした。各バースプリング3が発生させる反力の大きさは、第1のバースプリング3;196.1N(20kgf)、第2のバースプリング3;294.2N(30kgf)、第3のバースプリング3;392.3N(40kgf)、第4のバースプリング3;147.1N(15kgf)となった。脚側固定部材1の側板1bに近い方から、第1のバースプリング3、第4のバースプリング3、第3のバースプリング3、第2のバースプリング3の順番で4本を配置した。
【0053】
また、8つの反力調整位置を設定した。第1のバースプリング3に対応する第1の作動切換カム6を図5(A)示す。なお、図5において、切換角度P1〜P8を放射状の2点鎖線で示している。第1、第4〜第8の切換角度P1,P4〜P8で突出位置4になり、第2、第3の切換角度P2,P3で退避位置5になるようにカム形状を設計した。第2のバースプリング3に対応する第2の作動切換カム6を図5(B)示す。第2、第4、第7、第8の切換角度P2,P4,P7,P8で突出位置4になり、第1、第3、第5、第6の切換角度P1,P3,P5,P6で退避位置5になるようにカム形状を設計した。第3のバースプリング3に対応する第3の作動切換カム6を図5(C)示す。第3、第5、第6、第7、第8の切換角度P3,P5,P6,P7,P8で突出位置4になり、第1、第2、第4の切換角度P1,P2,P4で退避位置5になるようにカム形状を設計した。第4のバースプリング3に対応する第4の作動切換カム6を図5(D)示す。第6、第8の切換角度P6,P8で突出位置4になり、第1〜第5、第7の切換角度P1〜P5,P7で退避位置5になるようにカム形状を設計した。
【0054】
反力調整位置A1〜A8と作動状態になるバースプリング3と発生する反力の大きさの関係を図11に示す。この図からも明らかなように、第1の反力調整位置A1では第1のバースプリング3のみが作動し、196.1N(20kgf)の反力が発生する。また、第2の反力調整位置A2では第2のバースプリング3のみが作動し、294.2N(30kgf)の反力が発生する。また、第3の反力調整位置A3では第3のバースプリング3のみが作動し、392.3N(40kgf)の反力が発生する。また、第4の反力調整位置A4では第1、第2のバースプリング3が作動し、合計490.3N(50kgf)の反力が発生する。また、第5の反力調整位置A5では第1、第3のバースプリング3が作動し、合計588.4N(60kgf)の反力が発生する。また、第6の反力調整位置A6では第1、第3、第4のバースプリング3が作動し、合計735.5N(75kgf)の反力が発生する。また、第7の反力調整位置A7では第1、第2、第3のバースプリング3が作動し、合計882.6N(90kgf)の反力が発生する。また、第8の反力調整位置A8では全てのバースプリング3が作動し、合計1030N(105kgf)の反力が発生する。
【0055】
このように4本のバースプリング3を使用することで、98.07N(10kgf)又は147.1N(15kgf)おきに8段階の反力調整を行うことができた。
【実施例2】
【0056】
実施例1の反力装置に対して、別のバースプリング3を使用した反力装置を試作した。即ち、実施例1の反力装置と同じ作動切換カム6の組み合わせ及び操作装置7を使用して反力装置を試作した。図12及び図13に反力装置を示す。なお、図1の反力装置と同一の部材には同一の符号を付してある。横断面形状が一辺7.5mmの正方形を成す角棒形状のバースプリング3を使用した。支持壁17からスプリング受け19までの長さを、第1のバースプリング3;220mm、第2のバースプリング3;195mm、第3のバースプリング3;186mm、第4のバースプリング3;220mmとした。各バースプリング3が発生させる反力の大きさは、第1のバースプリング3;196.1N(20kgf)、第2のバースプリング3;343.2N(35kgf)、第3のバースプリング3;392.3N(40kgf)、第4のバースプリング3;196.1N(20kgf)となった。脚側固定部材1の側板1bに近い方から、第1のバースプリング3、第4のバースプリング3、第3のバースプリング3、第2のバースプリング3の順番で4本を配置した。
【0057】
反力調整位置A1〜A8と作動状態になるバースプリング3と発生する反力の大きさの関係を図14に示す。この図からも明らかなように、第1の反力調整位置A1では第1のバースプリング3のみが作動し、196.1N(20kgf)の反力が発生する。また、第2の反力調整位置A2では第2のバースプリング3のみが作動し、343.2N(35kgf)の反力が発生する。また、第3の反力調整位置A3では第3のバースプリング3のみが作動し、392.3N(40kgf)の反力が発生する。また、第4の反力調整位置A4では第1、第2のバースプリング3が作動し、合計539.4N(55kgf)の反力が発生する。また、第5の反力調整位置A5では第1、第3のバースプリング3が作動し、合計588.4N(60kgf)の反力が発生する。また、第6の反力調整位置A6では第1、第3、第4のバースプリング3が作動し、合計784.5N(80kgf)の反力が発生する。また、第7の反力調整位置A7では第1、第2、第3のバースプリング3が作動し、合計931.6N(95kgf)の反力が発生する。また、第8の反力調整位置A8では全てのバースプリング3が作動し、合計1128N(115kgf)の反力が発生する。
【0058】
このように4本のバースプリング3を使用することで、8段階の反力調整を行うことができた。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の椅子の反力装置の実施形態の一例を示し、(A)は揺動体が揺動していない状態のスプリングの様子を水平方向から示す基体及び揺動体の断面図、(B)は揺動体が揺動した状態のスプリングの様子を水平方向示す基体及び揺動体の断面図である。
【図2】同反力装置を示し、スプリングの様子を上方向から示す基体及び揺動体の断面図である。
【図3】同反力装置を備える椅子の側面図である。
【図4】同反力装置を備える椅子の正面図である。
【図5】作動切換カムを示し、(A)は第1の作動切換カムの正面図、(B)は第2の作動切換カムの正面図、(C)は第3の作動切換カムの正面図、(D)は第4の作動切換カムの正面図である。
【図6】操作装置の分解組立図である。
【図7】操作装置のグリップの取付状態を示す断面図である。
【図8】位置合わせ装置の断面図である。
【図9】位置合わせ装置のカムインデックスを示す正面図である。
【図10】操作装置の他の実施形態を一部切り欠いて示す図である。
【図11】実施例1の反力調整位置と作動状態になるバースプリングと発生する反力の大きさの関係を示す図である。
【図12】本発明の反力装置の他の実施形態を示し、揺動体が揺動していない状態のスプリングの様子を水平方向から示す基体及び揺動体の断面図である。
【図13】本発明の反力装置の他の実施形態を示し、スプリングの様子を上方向から示す基体及び揺動体の断面図である。
【図14】実施例2の反力調整位置と作動状態になるバースプリングと発生する反力の大きさの関係を示す図である。
【図15】従来の反力装置を示し、(A)は背凭れが後傾していな状態の断面図、(B)は背凭れが後傾している状態の断面図である。
【図16】従来の他の反力装置を示す断面図である。
【図17】図16のVI−VI線に沿う断面図である。
【図18】図16のVII−VII線に沿う断面図である。
【図19】円筒カムのカム面の展開図である。
【符号の説明】
【0060】
1 基体
2 揺動体
3 バースプリング
4 突出位置
5 退避位置
6 作動切換カム
6b カム面
7 操作装置
29 位置表示
A1〜A8 反力調整位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と前記基体に連結された揺動体との間に設けられた複数の棒又は板状のスプリングと、前記スプリング毎に設けられ、対応するスプリングにカム面が当接する突出位置と前記カム面が前記突出位置よりも前記対応するスプリングから遠くに位置する退避位置との間で回転変位可能な作動切換カムと、前記作動切換カムを回転変位させる操作装置を備え、前記作動切換カムは外周面が前記カム面になっており、前記操作装置は前記突出位置に変位させる作動切換カムと前記退避位置に変位させる作動切換カムとの組み合わせが異なる複数の反力調整位置を有し、前記突出位置に変位された作動切換カムは対応するスプリングを前記揺動体の揺動に応じて湾曲させて揺動に対する反力を発生させることを特徴とする椅子の反力装置。
【請求項2】
前記操作装置には、前記反力調整位置を示す位置表示が設けられていることを特徴とする請求項1記載の椅子の反力装置。
【請求項3】
前記複数のスプリングとして、長さの異なるものを有していることを特徴とする請求項1記載の椅子の反力装置。
【請求項4】
前記複数のスプリングとして、太さの異なるものを有していることを特徴とする請求項1記載の椅子の反力装置。
【請求項1】
基体と前記基体に連結された揺動体との間に設けられた複数の棒又は板状のスプリングと、前記スプリング毎に設けられ、対応するスプリングにカム面が当接する突出位置と前記カム面が前記突出位置よりも前記対応するスプリングから遠くに位置する退避位置との間で回転変位可能な作動切換カムと、前記作動切換カムを回転変位させる操作装置を備え、前記作動切換カムは外周面が前記カム面になっており、前記操作装置は前記突出位置に変位させる作動切換カムと前記退避位置に変位させる作動切換カムとの組み合わせが異なる複数の反力調整位置を有し、前記突出位置に変位された作動切換カムは対応するスプリングを前記揺動体の揺動に応じて湾曲させて揺動に対する反力を発生させることを特徴とする椅子の反力装置。
【請求項2】
前記操作装置には、前記反力調整位置を示す位置表示が設けられていることを特徴とする請求項1記載の椅子の反力装置。
【請求項3】
前記複数のスプリングとして、長さの異なるものを有していることを特徴とする請求項1記載の椅子の反力装置。
【請求項4】
前記複数のスプリングとして、太さの異なるものを有していることを特徴とする請求項1記載の椅子の反力装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−183624(P2009−183624A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29271(P2008−29271)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000108627)タカノ株式会社 (250)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000108627)タカノ株式会社 (250)
【Fターム(参考)】
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