説明

植物における斑入り

調節領域へ作動可能なように連結された核酸を含み、該核酸がCpn21の発現を撹乱する植物。核酸は、典型的にはアンチセンスCpn21であり、かつ、調節領域は誘導性調節領域、組織特異的調節領域、または発生調節領域である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物における斑入り、およびこの特徴に基づく植物を選択する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物における斑入りは、斑点または縞模様の形状である、白色、クリーム色、黄色また時に他の色によって置き換えられた、植物の葉の通常緑色の部分と定義される。斑入りは葉の端(覆輪)または葉の中央(中斑)に起こり得る。斑入り植物の装飾的な性質から、これらの植物は園芸家によって望まれている。
【0003】
斑入りは、転位因子(例えば、Itohら、2002、Plant Cell Physiol. 43(5):578−8)、核内に位置するバリエゲイテッドアンドディストーテッドリーフ(variegated and distorted leaf)(vdl)遺伝子による植物形質転換(Wangら、2000、Plant Cell. 12(11):2129−42)、激しい植物被害を引き起こすGSA−ATの部分的もしくは完全な抑制を備える、クロロフィル合成を阻害するアンチセンスグルタメート1−セミアルデヒドアミノトランスフェラーゼ形質転換(Hofgenら、1994、Proc Natl Acad Sci U S A.、91:1726−1730)、または、オルガネラタンパク質あるいはオルガネラ遺伝子における変異を制御する核遺伝子における自然突然変異(Aluruら、2006、J. ExpBot. 57:1871−1881における総説)の使用を含む様々な方法によって植物において誘導されてきた。Apuyaらは(2001、Plant Physiol. 126、717−730)、シロイヌナズナ(Arabidopsis)のシャペロニン−60α遺伝子(Cpn60)におけるT−DNA変異が、ハート型段階の前に成長遅滞を引き起こす、胚発生における欠陥をもたらすことを報告する。
【0004】
葉の脱色は、センス配向およびアンチセンス配向(sense and antisense orientation)において構成的にシロイヌナズナのCpn60β転写産物を発現する遺伝子組換えタバコ植物において、成長不全、開花遅延、減少した根の発達などの他の異常な表現型と一緒に観察されている(Zabaleta, E,ら、1994、Plant Journal, Vol. 6、pp.425−432)。
【0005】
シャペロニンは、細菌、ミトコンドリアおよび色素体において見られるマルチサブユニットの二重リングオリゴマータンパク質である。シャペロニンは、熱ショック、マクロファージの細菌感染および変性タンパク質(unfolded protein)の細胞内含有量の増加などのストレスの後に量が増加する、豊富な構成タンパク質である。
【0006】
高等植物の葉緑体は21kDaのタンパク質、シャペロニン21(Cpn21)を含有する(Hirohashi T.ら、 Biochem Biophys Acta. 1999 1429(2):512−5)。葉緑体Cpn21ポリペプチドは共にタンデムに融合した2つのCpn10様ドメインから成る。シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来のCpn21(AtCpn21)前駆体タンパク質のcDNA配列は知られており、253アミノ酸長であるAtCpn21前駆体タンパク質の推定アミノ酸配列は、ほうれん草Cpn21タンパク質と61%の同一性を示す。AtCpn21前駆体タンパク質は、そのアミノ末端に51アミノ酸の典型的な葉緑体輸送ペプチドを含有し、46%の配列同一性を示す2つのドメインである2つのCpn10様ドメインを含有する。予測されるAtCpn21の成熟ポリペプチドを可溶性の21kDaのタンパク質として大腸菌内で発現させた。ゲル濾過および化学的架橋(chemical cross−linking)解析から、組換え成熟AtCpn21タンパク質は3つまたは4つのポリペプチドから構成される安定なホモオリゴマーを形成することが示された。
【0007】
Hananiaら、2007(Transgenic Res. 16:515−525)は、Cpn21が種有りブドウおよび種無しブドウにおいて異なって発現されること、およびいくつかの植物における種子の発育不全において役割を有するかもしれないことを開示した。
【0008】
Sjogrenら(2004、Plant Physiol、136: 4114−4126)は、ストロマ分子シャペロン(ClpC)の含有量を平均で65%欠如しているシロイヌナズナclpC1のT−DNA挿入変異体を開示する。変異体は、全ての発育段階を通して、成長遅滞の表現型である均質な(homogenous)萎黄病の外観を備える葉を示す。光合成能はノックアウト系列において損なわれ、相対的により少ない光化学系Iおよび光化学系II複合体を有するがATPアーゼおよびRuBisCOの含有量においては変化が無かった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は植物における斑入り、およびこの特徴に基づく植物を選択する方法に関する。
【0010】
改良された斑入り植物を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明により、調節領域へ作動可能なように連結された(operatively linked)核酸を含み、該核酸がシャペロニンの発現を撹乱する、斑入り植物が提供される。シャペロニンはシャペロニン21(Cpn21)であってもよい。核酸は、Cpn21のアンチセンス配列、インビトロでアンチセンスCpn21の相補配列(complement)と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸、またはCpn21の発現を撹乱するRNAiであってもよい。さらに、調節領域は誘導性調節領域、組織特異的調節領域、発生調節領域、または構成的調節領域であり得る。
【0012】
本発明は、第一の調節領域へ作動可能なように連結された第一の核酸であって、Cpn21もしくはCpn21の機能的ホモログの発現を直接的または間接的に撹乱する配列を含む第一の核酸、および、対象のタンパク質をコードし第二の調節領域へ作動可能なように連結された第二の核酸を含む、キメラ構築体を提供する。
【0013】
本発明はまた、
i)調節領域へ作動可能なように連結された核酸を含む植物を提供すること、ここに該核酸はCpn21の発現を撹乱するものである、および
ii)核酸の発現を引き起こす条件下で植物を生育させ、そのことによって斑入り植物を生産すること、
を含む、斑入り植物を生産する方法(A)を提供する。
【0014】
好ましくは、提供の工程における核酸はアンチセンスCpn21、インビトロでアンチセンスCpn21の相補配列と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸、またはCpn21の発現を撹乱するRNAiである。さらに、調節領域は誘導性調節領域、組織特異的調節領域、発生調節領域、または構成的調節領域であってもよい。組織特異的調節領域はRuBisCOプロモーターであってもよく、あるいは葉脈特異的プロモーターであってもよい。構成的調節領域はカリフラワーモザイクウイルス35S(CaMV 35Sまたは35S)プロモーター配列を含むことができる。誘導性調節領域はAlcR配列およびAlcAプロモーターを含むことができる。
【0015】
本発明はまた、
i)第一の調節領域へ作動可能なように連結された第一の核酸、ならびに対象のタンパク質をコードし第二の調節領域へ作動可能なように連結された第二の核酸を含む植物を提供すること、ここに該第一の核酸はCpn21の発現を撹乱するものである、
ii)第一および第二の核酸の発現を引き起こす条件下で植物を生育すること、および
iii)斑入りの表現型を示す植物を選択すること、
を含む、対象の核酸を含む植物を選択する方法(B)に関する。
【0016】
提供の工程における核酸はアンチセンスCpn21、インビトロでアンチセンスCpn21の相補配列と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸、またはCpn21の発現を撹乱するRNAiであってもよい。さらに、調節領域は誘導性調節領域、組織特異的調節領域、発生調節領域、または構成的調節領域であってもよい。組織特異的調節領域はRuBisCOプロモーターであってもよく、あるいは葉脈特異的プロモーターであってもよい。構成的調節領域はカリフラワーモザイクウイルス35S(CaMV 35Sまたは35S)プロモーター配列を含み得る。誘導性調節領域はAlcR配列およびAlcAプロモーターを含むことができる。
【0017】
本発明はまた、
i)調節領域へ作動可能なように連結された核酸であって、Cpn21の発現を撹乱する核酸を含むヌクレオチド配列で植物を形質転換すること、および
ii)核酸の発現を引き起こす条件下で植物を生育させ、そのことによって斑入り植物を生産すること、
を含む、斑入り植物を生産する方法(C)を提供する。
【0018】
本発明はまた、
i)第一の調節領域へ作動可能なように連結された第一の核酸、ならびに対象のタンパク質をコードし第二の調節領域へ作動可能なように連結された第二の核酸を含むヌクレオチド配列で植物を形質転換すること、ここに該第一の核酸はCpn21もしくはCpn21の機能的ホモログの発現を撹乱するものである、
ii)第一および第二の核酸の発現を引き起こす条件下で植物を生育すること、および
iii)対象の核酸を発現し、斑入りの表現型を示す植物を選択すること、
を含む、対象の核酸を含む植物を選択する方法(D)を提供する。
【0019】
提供または形質転換の工程における第一の核酸は、アンチセンスCpn21、インビトロでアンチセンスCpn21の相補配列と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸、またはCpn21の発現を撹乱するRNAiであってもよい。さらに、調節領域は誘導性調節領域、組織特異的調節領域、発生調節領域、または構成的調節領域であってもよい。
【0020】
対象のタンパク質をコードする第二の核酸配列は、例えば、任意の核酸、例えば薬学活性タンパク質をコードする核酸配列、例えば成長因子、成長調節物質、抗体、抗原、予防接種もしくはワクチン接種にとって有益であるそれらの誘導体等、インターロイキン、インスリン、G−CSF、GM−CSF、hPG−CSF、M−CSFまたはそれらの組合せ、インターフェロン類、例えばインターフェロン−アルファ、インターフェロン−ベータ、インターフェロン−ガンマ、血液凝固因子、例えば第VIII因子、第IX因子もしくはtPAまたはそれらの組合せを含むが、これらに限定されない。第二の核酸配列はまた、工業用酵素、タンパク質補助食品(protein supplement)、栄養補助食品、または飼料、食品、あるいは飼料使用および食品使用のための付加価値製品をコードし得る。そのようなタンパク質の例は、タンパク質分解酵素、酸化酵素、フィターゼ、チキナーゼ、インベルターゼ、リパーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、脂質生合成に関与する酵素等を含むが、これらに限定されない。
【0021】
上記に定義された方法を使用して生産された植物は斑入りの葉を示した。本明細書において記載される方法は、観賞目的のための斑入りの葉を備える植物を生産するために使用することができ、また、葉の斑入りは植物の形質転換が起こったことを示す選択マーカーとして使用される特徴であって、葉の斑入りの発生は植物の選択において支援する(assist)ために使用することができる。本発明の方法は、作物、観賞植物、飼料植物等、例えば、タバコ属(Nicotiana)、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)、キャノーラ、亜麻、麻(Hemp)、ヤマカモジグサ属(Brachypodium)、イネ属(Oryza)、セイヨウアブラナ、ペチュニア属(Petunia spp.)、シクラメン属(Cyclamen spp)、ベゴニア属(Begonia spp.)、ツツジ属(Azalea spp)、およびスパティフィラム属(Spatifilium spp.)、ヨモギ属(Artemisia spp.)、ポプラ(Poplar)、バラ属(Rosa spp.)、バラ、バショウ属(Musa spp.)(例えばバナナ)、コーヒーノキ(Coffea Arabica)、トウモロコシ(Maize)、ダイズ属(Glycine spp.)(例えば大豆)等を含むが、これらに限定されない任意の植物内で使用することができる。
【0022】
本発明はさらに、調節領域へ作動可能なように連結された核酸を含む核酸構築体を提供する。ここで該核酸はCpn21の発現を撹乱するものである。該核酸はアンチセンスCpn21、インビトロでアンチセンスCpn21の相補配列と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸、またはCpn21の発現を撹乱するRNAiであってもよい。調節領域は誘導性調節領域、組織特異的調節領域、発生調節領域、または構成的調節領域であってもよい。
【0023】
本発明はまた、第一の調節領域へ作動可能なように連結された第一の核酸、ならびに対象のタンパク質をコードする第二の核酸を含む核酸構築体を提供する。ここで該第一の核酸がCpn21の発現を撹乱するものである。第一の核酸はアンチセンスCpn21、インビトロでアンチセンスCpn21の相補配列と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸、またはCpn21の発現を撹乱するRNAiであり得る。調節領域は誘導性調節領域、組織特異的調節領域、発生調節領域、または構成的調節領域であり得る。第一の調節領域はAlcR配列を含むことができ、第二の調節領域はAlcAプロモーターを含むことができる。
【0024】
本発明はまた、本発明の核酸構築体を含むベクターを含む。
【発明の効果】
【0025】
アンチセンスシャペロニン21を発現する遺伝的に形質転換された植物は、葉および花の斑入りへの強い傾向を示す。そのような系の利点は、形質転換された植物およびそれらの子孫は異種の核酸がないことである。本明細書において記載される植物および方法は、観賞市場内での使用のための作物を含む、商業用途のための斑入り植物の生産のために使用することができる。さらに、本明細書において記載された方法を使用して植物において得られた斑入りの表現型は、選択マーカーとして使用することができる。例えば斑入りの葉は、対象のタンパク質をコードする植物の選択のための視覚的な基準を提供することができる。
【0026】
対象の核酸へ視覚的なマーカーを結合することもまた、同定および分離、または、工芸作物あるいはこの特徴を発現する他の遺伝的に改変された作物の同一性保持(identity preservation)のため、有益となり得る。組織特異的な斑入り(葉脈、葉頂、茎等)は、同じ植物種において異なる模様を作成するために、マーカーが植物の所望の部分において発現され、それゆえ同定し、かつ、その植物における異なる遺伝的に改変された特徴を識別するように使用することができる。
【0027】
本発明のこの概要は必ずしも発明のすべての特徴について記載するとは限らない。本発明の他の実施態様および特徴は、本発明の具体的な実施形態の以下の記載を検討することにより、技術分野における当業者へ明らかにされるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
これらおよび本発明の他の特徴は、添付図面について申し述べる以下の記載からより明らかとなる。
【0029】
【図1】図1は、Cpn21RNAi35Sで形質転換されたタバコ植物由来の斑入りの葉の模様を示す。WP−(形質転換されていない)野生型の植物−は、一番上の列の中央である。
【0030】
【図2】図2A−Eは、Cpn21RNAi−35S構築体を発現するT1タバコ植物を示す。斑入り模様の範囲および色彩強度は植物において示される。対照植物は図2Bの右隣に示される。
【0031】
【図3】図3は、AlcRCpn21RNAiで形質転換されたタバコの葉における斑入りを示す。AlcAプロモーターは2%エタノール溶液を吹きかけることによって誘導された。
【0032】
【図4】図4は、Cpn21RNAi−35Sでの形質転換後の選択培地上でのキャノーラ(Brassica napus)の再生個体を示す。
【0033】
【図5】図5は、Cpn21RNAi35Sで形質転換されたキャノーラにおける斑入りの模様を示す(WP−形質転換されていない対照は左下の葉)。
【0034】
【図6】図6は、Cpn21RNAi−35Sで形質転換された遺伝子組換えイネ(右側の鉢)を示し;左の鉢は対照(形質転換されていない植物)である。
【0035】
【図7】図7は、Cpn21RNAi35Sで形質転換された遺伝子組換えヤマカモジグサ(Brachypodium)を示し;右の鉢は対照(形質転換されていない植物)である。
【0036】
【図8】図8A:配列番号:1−シロイヌナズナ(A.thaliana)cpn21をコードする配列;図8B:配列番号:4−Cpn21アンチセンス35S;図8C:配列番号:5−イントロンを備えるCpn21RNAi断片;図8D:配列番号:6−Cpn21RNAiRBC;図8E:配列番号:7−Cpn21RNAiRBC;図8F:配列番号:8−AlcRCpn21RNAi配列;図8G:配列番号:9−35Sプロモーター;図8H:配列番号:10−最小限のAlcAプロモーター(ヌクレオチド1−232);図8I:配列番号:11−タバコ(N.tabacum)RuBisCO(RBC)プロモーター配列;図8J:配列番号:12−最小限の35Sプロモーターを備えるAlcR断片;図8K:配列番号:23−Cpn21アンチセンス;図8L:PCR−シロイヌナズナ(A.thaliana)Cpn21の増幅断片(配列番号:2);図8M:配列番号:28−pGreen0029−RBC構築体;図8N:配列番号:29−pUC57−RBC構築体。配列番号:4−Acpn21アンチセンス配列を含むヌクレオチド103−866;NOS末端配列を含むヌクレオチド904−1156;35Sプロモーター配列を含むヌクレオチド10232−10648。配列番号:5−ACpnRNAi断片1を含むヌクレオチド1−427;ACpnRNAi構築体のイントロンを含むヌクレオチド938−2017;ACpnRNAi断片2を含むヌクレオチド2156−2627。配列番号:6−35Sプロモーター配列を含むヌクレオチド8140−9175;ACpnRNAi断片1を含むヌクレオチド9324−9795;ACpnRNAi構築体のイントロンを含むヌクレオチド9934−11013;ACpnRNAi断片2を含むヌクレオチド11479−11948。配列番号:7−ヌクレオチド2−1026、RBCプロモーター;ACpnRNAi断片1を含むヌクレオチド1280−1747;ACpnRNAi構築体のイントロンを含むヌクレオチド1839−3193;ACpnRNAi断片2を含むヌクレオチド3349−3816。配列番号:8−35Sプロモーター配列を含むヌクレオチド717−1502;AlcR配列を含むヌクレオチド1529−4123;NOS末端配列を含むヌクレオチド4130−4388;AlcAプロモーター配列を含むヌクレオチド4389−4406;ACpnRNAi断片1を含むヌクレオチド5058−5525;ACpnRNAi構築体のイントロンを含むヌクレオチド5617−6971;ACpnRNAi断片2を含むヌクレオチド7127−7594。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(詳細な説明)
本発明は植物における斑入り、およびこの特徴に基づく植物を選択する方法に関する。
【0038】
本発明は、調節領域へ作動可能なように連結された核酸を含む斑入り植物を提供する。ここで該核酸はシャペロニン21(Cpn21)もしくはCpn21の機能的ホモログ、例えばCpn10の発現を撹乱するものである。Cpn21もしくはCpn21の機能的ホモログの発現を撹乱する核酸は、Cpn21もしくはCpn21の機能的ホモログのアンチセンス配列、インビトロでCpn21もしくはCpn21の機能的ホモログのアンチセンスの相補配列と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸、またはCpn21もしくはCpn21の機能的ホモログの発現を撹乱するRNAiを含むが、これらに限定されない。調節領域は誘導性調節領域、組織特異的調節領域、発生調節領域、または構成的調節領域であってもよい。
【0039】
Cpn21配列は配列番号:1またはCpn21活性を示す配列番号:1の断片を含み得る。配列番号:1はシロイヌナズナシャペロニン21(cpn21、Acpn21)配列(NCBI GenBank 登録番号AF428366.1 gi:16226910 Arabidopsis thaliana AT5g20720/T1M15_120 mRNA)に対応する。配列番号:1の断片は配列番号:1のヌクレオチド77−842を含むことができる。しかしながら、シャペロニン配列はまた、例えばブドウ(Vitis vinifera)cpn21(NCBI GenBank 登録番号AY680699)、ほうれん草Cpn21(Baneyzら 1995、JBC 270:10695−10702)を含むことができる。さらに、Cpn21ポリペプチドは共にタンデムに融合した2つのCpn10様ドメインから成り、Cpn21はCpn10の機能的ホモログと考えられており(登録番号:AF059037; Bertsch U.,ら、1992、PNAS 89:8696−8700; Hirohashi T.,ら、1999、Biochem Biophys Acta 1429:512−515)、それゆえ本発明のシャペロニン配列はまた、ほうれん草シャペロニンcpn10、Helicosporidium sp. ex Simulium jonesiiのcpn10(NCBI GenBank 登録番号AY596494)もしくはRbcX(Emlyn−Jonesら、2006 Plant & Cell Physiology 47:1630−1640)、またはCpn21の他の機能的なアナログを含むことができる。原核生物および(植物を含む)真核生物の両方に由来するシャペロニンの他の例は、cpndb−シャペロニンデータベース(例えば、URL:cpndb.cbr.nrc.ca/ ; Hillら 2004. Genome Research 14:1669−1657、出典明示により本明細書に組み込まれる)において見出される。シャペロニン21は略語「cpn21」または「Cpn21」によって示すことができる。
【0040】
本明細書において記載される方法は、Cpn21もしくはCpn21の機能的ホモログ、例えばCpn10の発現を撹乱、減少または除去する核酸配列の使用を含む。これは、例えば、以下に記載されるようなサイレンシング核酸を使用することによって達成することができるが、これらに限定されない。サイレンシング核酸の例は、アンチセンスCpn21配列もしくはアンチセンスCpn21機能的ホモログ配列、インビトロでアンチセンスCpn21配列もしくはアンチセンスCpn21機能的ホモログ配列の相補配列と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸、またはCpn21もしくはCpn21の機能的ホモログの発現を撹乱するRNAiを含むが、これらに限定されない。
【0041】
サイレンシング核酸の例は、配列番号:1、2もしくはそれらの断片の逆相補配列、配列番号:4もしくはそれらの断片、配列番号:5もしくはそれらの断片、配列番号:23もしくはそれらの断片、配列番号:5のヌクレオチド2078−2518、または配列番号:2のヌクレオチド223−663の逆相補配列:に応じた配列を含む核酸を含有する。Cpn10をコードする配列は、cpn21の断片と見なされ得るCpn10として使用することができる(Bertsch U.,ら、1992、PNAS 89:8696−8700; Hirohashi T.,ら、1999、Biochem Biophys Acta 1429:512−515)。
【0042】
上記の方法および構築体において使用される調節領域は、構成的調節領域、誘導性調節領域、組織特異的調節領域、または発生調節領域であってもよい。
【0043】
本発明はそれゆえ、
i)サイレンシングヌクレオチド配列に作動可能なように連結される(operatively associated)調節領域を含む核酸配列を植物へ導入すること、ここに該サイレンシングヌクレオチド配列の発現はCpn21の発現を減少または除去するものである、および
ii)植物内または植物内の組織内で該サイレンシングヌクレオチド配列を発現させることを含む、植物または植物の組織におけるCpn21のレベルを減少させるための方法を提供する。Cpn21の量は、植物または植物の組織におけるCpn21発現のレベルと、サイレンシング核酸配列を発現しない第二の植物または第二の植物からの組織におけるCpn21発現のレベルを比較することによって決定される。Cpn21の量はノーザン解析、ウェスタン解析、SDS−PAGE等を含む標準的な技術を使用して決定される。
【0044】
本発明はさらに、
i)サイレンシング核酸配列に作動可能なように連結される(operatively associated)調節領域を含むサイレンシング核酸配列を植物へ導入すること、および
ii)植物を成長させること、
を含む、斑入り植物を生産するための方法を提供する。該サイレンシング核酸配列は、配列番号:1もしくは2の逆相補配列、配列番号:1の逆相補配列の断片、配列番号:1もしくは2のアンチセンスの相補配列とハイブリダイズする配列、または配列番号:1のアンチセンスの相補配列の断片とハイブリダイズする配列を含んでもよい。
【0045】
配列番号:4、5もしくは23またはそれらの断片、配列番号:5のヌクレオチド2078−2518、または配列番号:2のヌクレオチド223−663の逆相補配列を含む他のサイレンシング核酸が上記の方法において使用することができる。Cpn10をコードする配列もまた使用することができる。
【0046】
該調節領域は、構成的調節領域、誘導性調節領域、組織特異的調節領域、または発生調節領域であり得る。誘導性調節領域が使用される場合、該方法はさらに、調節領域を誘導しサイレンシング核酸の発現を引き起こす化学薬品または環境条件に植物を供する工程を含む。
【0047】
シャペロニン発現が撹乱される実施形態において、サイレンシングヌクレオチド配列を発現しない第二の植物から得られたシャペロニン発現のレベルと比較した際に、シャペロニン発現は、約10%から約100%またはそれらの間の任意の量、減少させられ得る。例えば、Cpn21発現は、約10%から約60%もしくはそれらの間の任意の量、約10%から約50%もしくはそれらの間の任意の量、約10%から約40%もしくはそれらの間の任意の量、または、約10%から約30%もしくはそれらの間の任意の量、約10%から約20%もしくはそれらの間の任意の量、減少させられ得る。
【0048】
用語「発現」によって、核酸分子からの機能的なRNA、タンパク質またはそれらの両方の産生が意味される。
【0049】
「サイレンシングヌクレオチド配列」または「サイレンシング核酸配列」は、転写された際に標的配列の発現を撹乱、減少または除去することを引き起こす配列をいう。サイレンシングヌクレオチド配列は、例えば、アンチセンスヌクレオチド、RNAiまたはsiRNAをコードし得るが、これらに限定されない。
【0050】
「遺伝子発現の減少」もしくは「発現の減少」「発現の撹乱」もしくは「発現の除去」によって、核酸配列によってコードされるmRNA、タンパク質またはmRNAおよびタンパク質の両方のレベルの減少が意味される。発現は、約10%から約100%またはそれらの間の任意の量、例えば、約10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98および100%またはそれらの間の任意の量、減少させられ得る。発現の減少は、全長RNA、例えばmRNA、の産生欠如の結果として、あるいはサイレンシング核酸配列の発現を通して起こり得、例えばリボザイム(例えば、Methods in Molecular Biology、vol 74 Ribozyme Protocols、P.C. Turner,版、1997、Humana Pressを参照)、siRNAもしくはRNAi(例えば、Gene Silencing by RNA Interference、Technology and Application、M. Sohail版、2005、CRC Pressを参照)でのmRNAの切断を、また別の面では、アンチセンス(例えばAntisense Technology、A Practical Approach、C. LichtenstienおよびW. Nellen版、1997、Oxford University Pressを参照)、リボザイム、siRNAもしくはRNAi技術または技術分野において知られている他の関連する方法を使用して、RNAの半減期を減少させることを引き起こす。
【0051】
アンチセンス核酸分子はヌクレオチド配列の相補鎖と相互作用し、存在する時、標的核酸の発現を改変する。アンチセンス核酸はDNAもしくはRNAであってもよく、組成物として送達され、または、インビボもしくはインサイチュで鋳型核酸、ベクターもしくは人工染色体などの他の構築体または宿主細胞もしくは宿主生物のゲノムへ導入された遺伝子組換え配列から転写されてもよい。アンチセンス核酸は20−30ヌクレオチドから数百ヌクレオチドの様々な長さであり、一以上のmRNAと相互作用するアンチセンス配列を含むことができる。
【0052】
アンチセンス核酸は、ヘアピンループ構造を形成するために自己アニール(self anneal)する一本鎖RNAとして、鋳型核酸、プラスミドまたは他の遺伝子構築体(genetic construct)から転写されることができる。転写されたRNA鎖は、ループまたはRNAの非対合部分によって分離された、二本鎖を形成するためにアニールすることができる2つのパリンドローム配列を有する。該二本鎖領域は約15塩基対から数百塩基対の長さまたはそれらの間の任意の長さを形成することができ、例えば、植物において存在するDICERまたはRISC様酵素によってプロセシングされる際、短い二本鎖断片(siRNA)の形成を引き起こすことができる。短い二本鎖断片は、例えば、技術分野において一般的に知られているような、19塩基の二本鎖部分および3’末端に2塩基の突出を有する21塩基長であるが、これらに限定されない。
【0053】
配列番号:1のアンチセンス配列の例は、配列番号:23もしくはその断片、配列番号:5のヌクレオチド2078−2518もしくはその断片、または配列番号:2のヌクレオチド223−663の逆相補配列もしくはその断片、配列番号:1の逆相補配列もしくはその断片を含む。
【0054】
「作動可能なように連結された(operatively linked)」によって、特定の配列が、遺伝子発現の仲介(mediation)または調節などの意図される機能を実行するために、直接的または間接的のいずれかで相互作用することが意味される。作動可能なように連結された配列の相互作用は、例えば、作動可能なように連結された配列と相互作用するタンパク質によって仲介(mediation)されてもよい。対象のコード領域はまた、キメラ構築体を生産するために、典型的には異種の、他の配列を伴ってベクター内に導入されることができる。転写調節領域によって仲介(mediation)または調節される対象の配列の転写を可能にするために、配列が機能的に結合される際、転写調節領域および対象の配列は「作動可能なように連結される(operably linked)」。
【0055】
以下に記載するように、モデル系として、本明細書に記載される方法を使用して、タバコSR1(Nicotiana tabacum L.cv.SR1)、シロイヌナズナランズバーグ(Arabidopsis thaliana cv Landsberg)、セイヨウアブラナDH12075(Brassica napus cv.DH12075) イネ(Oryza sativa)およびミナトカモジグサダブロンブルースカイプランツ(Brachypodium distachyon cv.Doublon Blue Sky plants)を用いて斑入り植物が生産された。しかしながら、作物、観賞植物、飼料植物等、例えば、タバコ属(Nicotiana)、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)、キャノーラ、亜麻、麻(Hemp)、ヤマカモジグサ属(Brachypodium)、イネ属(Oryza)、セイヨウアブラナ、ペチュニア属(Petunia spp.)、シクラメン属(Cyclamen spp)、ベゴニア属(Begonia spp.)、ツツジ属(Azalea spp)、およびスパティフィラム属(Spatifilium spp.)、アルファルファ、トウモロコシ(corn)、大麦、米、タバコ、シロイヌナズナ、キャノーラ、亜麻、麻(Hemp)、例えば、アサ(Cannabis sativa)、じゃがいもを含む他の植物もまた、本明細書に記載される方法を使用して改変することができるが、これらに限定されない。植物の他の例は、カシューナットノキ属(Anacardium)、ラッカセイ属(Arachis)、アスパラガス属(Asparagus)、ベラドンナ属(Atropa)、カラスムギ属(Avena)、アブラナ属(Brassica)、ヤマカモジグサ属(Brachypodium)、ミカン属(Citrus)、スイカ属(Citrullus)、トウガラシ属(Capsicum)、ベニバナ属(Carthamus)、ココヤシ属(Cocos)、コーヒーノキ属(Coffea)、キュウリ属(Cucumis)、カボチャ属(Cucurbita)、ニンジン属(Daucus)、アブラヤシ属(Elaeis)、オランダイチゴ属(Fragaria)、ダイズ属(Glycine)、ワタ属(Gossypium)、ヒマワリ属(Helianthus)、ワスレグサ属(Heterocallis)、オオムギ属(Hordeum)、ヒヨス属(Hyoscyamus)、アキノノゲシ属(Lactuca)、アマ属(Linum)、ドクムギ属(Lolium)、ハウチワマメ属(Lupinus)、トマト属(Lycopersicon)、リンゴ属(Malus)、キャッサバ属(Manihot)、マヨナラ属(Majorana)、ウマゴヤシ属(Medicago)、タバコ属(Nicotiana)、オリーブ属(Olea)、イネ属(Oryza)、キビ属(Panieum)、チカラシバ属(Pannesetum)、ワニナシ属(Persea)、インゲンマメ属(Phaseolus)、カイノキ属(Pistachia)、エンドウ属(Pisum)、ナシ属(Pyrus)、サクラ属(Prunus)、ダイコン属(Raphanus)、トウゴマ属(Ricinus)、ライムギ属(Secale)、コオン属(Senecio)、シロガラシ属(Sinapis)、ナス属(Solanum)、モロコシ属(Sorghum)、カカオノキ属(Theobromus)、レイリョウコウ属(Trigonella)、コムギ属(Triticum)、ソラマメ属(Vicia)、ブドウ属(Vitis)、ササゲ属(Vigna)、およびトウモロコシ属(Zea)由来の種を含む。
【0056】
植物の形質転換のために使用された構築体は表4に提示され、かつ:
Cpn21AS(構成的な、CaMV 35Sプロモーターの転写制御下のアンチセンス配向におけるCpn21をコードする核酸配列)、
Cpn21RNAi−35S(35Sプロモーターの転写制御下のCpn21RNAiヘアピンループ)、
Cpn21RNAiRBC(組織特異的な、RuBisCO(RBC)プロモーターの転写制御下のCpn21RNAiヘアピンループ)、
Cpn21ASRBC(RBCプロモーターの転写制御下のアンチセンス配向にけるCpn21をコードする核酸配列)、
AlcRCpn21RNAi(アルコール誘導性プロモーターの転写制御下のCpn21RNAiヘアピンループ)、
を含むが、これらに限定されない。
【0057】
様々なレベルの葉の斑入りを備えるタバコ植物は、35Sプロモーターの制御下のCpn21のアンチセンス発現を使用して生産された。斑入りタバコ植物は、非選択培地上と同様にカナマイシン選択培地上またはハイグロマイシン選択培地上を使用して、産生された。斑入りのシロイヌナズナ、キャノーラ(B.napus)、イネ(O.sativa)およびミナトカモジグサ(B.distachyon)植物が、アンチセンス配向におけるCpn21遺伝子またはRNAiを用いた形質転換に続いてカナマイシン無しの選択培地上で同定された。
【0058】
本明細書において記載される方法は、観賞目的のための斑入りの葉を備える植物を生産するために使用することができ、また、葉の斑入りは植物の形質転換が起こったことを示す選択マーカーとして使用される特徴であって、葉の斑入りの発生は植物の選択において支援する(assist)ために使用することができる。
【0059】
それゆえ、本発明は、植物において、調節領域へ作動可能なように連結された核酸であって、Cpn21もしくはCpn21の機能的ホモログの発現を直接的または間接的に撹乱する配列を含む核酸を含む、キメラ構築体を提供する。本発明はまた、今述べた構築体で植物を形質転換すること、および、核酸の発現を引き起こす条件下で植物を生育させ、そのことによって斑入り植物を生産することを含む、斑入り植物を生産する方法を提供する。
【0060】
該核酸は、アンチセンスCpn21もしくはアンチセンスCpn21機能的ホモログ、インビトロでアンチセンスCpn21の相補配列もしくはアンチセンスCpn21機能的ホモログの相補配列と厳密な条件下インビトロでハイブリダイズする核酸、またはCpn21もしくはCpn21の機能的ホモログの発現を撹乱するRNAiであってもよい。さらに、調節領域は誘導性調節領域、組織特異的調節領域、発生調節領域、または構成的調節領域であってもよい。
【0061】
本発明はさらに、第一の調節領域へ作動可能なように連結された第一の核酸であって、Cpn21もしくはCpn21の機能的ホモログの発現を直接的または間接的に撹乱する第一の核酸、および対象のタンパク質をコードし第二の調節領域へ作動可能なように連結された第二の核酸を含む、キメラ構築体を提供する。
【0062】
本発明はまた、
i)第一の調節領域へ作動可能なように連結された第一の核酸、ならびに対象のタンパク質をコードし第二の調節領域へ作動可能なように連結された第二の核酸を含むヌクレオチド配列で植物を形質転換すること、ここに該第一の核酸はCpn21もしくはCpn21の機能的ホモログの発現を撹乱するものである、
ii)第一および第二の核酸の発現を引き起こす条件下で植物を生育すること、および
iii)対象の核酸を発現し、斑入りの表現型を示す植物を選択すること、
を含む、対象の核酸を含む植物を選択する方法を提供する。
【0063】
本発明はまた、
i)第一の調節領域へ作動可能なように連結された第一の核酸、ならびに対象のタンパク質をコードし第二の調節領域へ作動可能なように連結された第二の核酸を含む植物を提供すること、ここに該第一の核酸はCpn21もしくはCpn21の機能的ホモログの発現を撹乱するものである、
ii)第一および第二の核酸の発現を引き起こす条件下で植物を生育すること、および
iii)対象の核酸を発現し、斑入りの表現型を示す植物を選択すること、
を含む、対象の核酸を含む植物を選択する方法を提供する。
【0064】
(提供または形質転換の工程における)第一の核酸はアンチセンスCpn21もしくはCpn21の機能的ホモログのアンチセンス、インビトロでアンチセンスCpn21の相補配列もしくはアンチセンスCpn21機能的ホモログの相補配列と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸、またはCpn21もしくはCpn21の機能的ホモログの発現を撹乱するRNAiであり得る。さらに、調節領域は誘導性調節領域、組織特異的調節領域、発生調節領域、または構成的調節領域であり得る。
【0065】
対象のタンパク質をコードする第二の核酸配列は、任意の核酸、例えば、薬学活性タンパク質をコードする核酸配列、例えば成長因子、成長調節物質、抗体、抗原、予防接種もしくはワクチン接種にとって有益であるそれらの誘導体等、インターロイキン、インスリン、G−CSF、GM−CSF、hPG−CSF、M−CSFもしくはそれらの組合せ、インターフェロン類、例えばインターフェロン−アルファ、インターフェロン−ベータ、インターフェロン−ガンマ、血液凝固因子、例えば第VIII因子、第IX因子もしくはtPAまたはそれらの組合せ、を含み得るが、これらに限定されない。第二の核酸配列はまた、工業用酵素、タンパク質補助食品(protein supplement)、栄養補助食品、または飼料、食品、あるいは飼料使用および食品使用のための付加価値製品をコードし得る。そのようなタンパク質の例は、タンパク質分解酵素、酸化酵素、フィターゼ、チキナーゼ、インベルターゼ、リパーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、脂質生合成に関与する酵素等、を含むが、これらに限定されない。
【0066】
本発明は、配列番号:1とハイブリダイズする、または厳密なハイブリダイゼーション条件下でアンチセンスCpn21の相補配列とハイブリダイズする、アンチセンスcpn21活性を有するヌクレオチド配列を含む(Maniatisら、 in Molecular Cloning (A Laboratory Manual)、Cold Spring Harbor Laboratory (1982) p. 387−389; Ausubelら (eds)、1989、Current Protocols in Molecular Biology、Vol. 1、Green Publishing Associates、Inc.,およびJohn Wiley & Sons, Inc.、New York、at p. 2.10.3を参照; 両者とも出典明示により本明細書に組み込まれる)。厳密なハイブリダイゼーション条件の非限定的な例は、4×SSC中65℃で8−16時間のハイブリダイゼーションに続いて0.1×SSC中65℃で1時間の洗浄、または、5×SSCおよび50%ホルムアミド中42℃で8−16時間のハイブリダイゼーションに続いて約0.5×SSCから約0.2×SSC中65℃で1時間の洗浄、を含む。しかしながら、ハイブリダイゼーション条件は対象の配列に依存して公知の方法に従って改変することができる(Tijssen、1993、Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology −− Hybridization with Nucleic Acid Probes、Part I、Chapter 2 “Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays”、Elsevier、New Yorkを参照; 出典明示により本明細書に組み込まれる)。一般的に、限定されることは望まないが、厳密なハイブリダイゼーション条件は、確定したイオン強度およびpHでの具体的な配列に対する熱融解点(thermal melting point)より約5℃低く選択される。
【0067】
当業者によって理解されるように、配列番号:1または配列番号:1の相補配列とハイブリダイズする様々な長さのヌクレオチド配列は、インビボで転写される際、cpn21発現を減少する特性を示す。そのようなヌクレオチド配列は約15−約900ヌクレオチドの長さまたはそれらの間の任意の長さであり得る。(そのような配列の断片を含む)そのような配列の非限定的な例は:GenBank 登録番号AF059037(cpn10)、GenBank 登録番号NM_180714(cpn20)、GenBank 登録番号AF510565.1(hda2)、および配列番号:4を含む。
【0068】
本発明はまた、Cpn21に対するRNAi活性を有するヌクレオチド配列を含む。例えば、配列番号:5はイントロンによって分離された440ヌクレオチド配列(配列番号:2のヌクレオチド223−663)および配列番号:2のヌクレオチド223−663の逆相補ヌクレオチド配列を含む。配列番号:5の配列を有する核酸が転写される時、RNAはヘアピンループ構造を形成する(イントロンがループであり、配列番号:2に対応するヌクレオチドが対合領域を形成する)。当業者によって理解されるように、二本鎖領域はCpn21に対して特異的なより短い二本鎖RNAi分子へと切断される。
【0069】
本明細書において定義されたアンチセンスCpn21配列と約75−約100%の配列同一性または約80−約100%の配列同一性を有する配列もまた、該配列がアンチセンスcpn21活性を有するという条件で、含まれる。同一性の決定は、オリゴヌクレオチド配列比較(alignment)アルゴリズム、例えば、BLAST(Altschulら 1990. J. Mol Biol 215:403−410; 出典明示により本明細書に組み込まれる)を使用して行われるが、これに限定されない。BLAST解析を実行するためのソフトウェアはNational Center for Biotechnology Information(GenBank URL: ncbi.nlm.nih.gov/cgi−bin/BLAST/)を通して入手可能である。規定のパラメーターは:Program:blastn;Database:nr;Expect 10;filter:default;Alignment:pairwise;Query genetic Codes:Standard(1))を含む。配列同一性および配列類似性のパーセントを決定するための好適なアルゴリズムの別の例はFASTAである(Pearsonら 1988. Proc Natl Acad Sci USA 85:2444−8)。
【0070】
核酸の断片または部分は、核酸またはヌクレオチド配列の長さの約60%から約100%、またはそれらの間の任意の量を含む。例えば、核酸またはヌクレオチド配列の長さの約60%から約100%、約70%から約100%、約80%から約100%、約90%から約100%、約95%から約100%、またはそれらの間の任意の量。あるいは断片または部分は、約150から約500ヌクレオチド、またはそれらの間の任意の量である。例えば、断片は約150から約500ヌクレオチドまたはそれらの間の任意の量、約200から約500ヌクレオチドまたはそれらの間の任意の量、約250から約500ヌクレオチドまたはそれらの間の任意の量、約300から約500ヌクレオチドまたはそれらの間の任意の量、約350から約500ヌクレオチドまたはそれらの間の任意の量、約400から約500ヌクレオチドまたはそれらの間の任意の量、約450から約500ヌクレオチドまたはそれらの間の任意の量である。例えば、約5、10、20、30、40もしくは50ヌクレオチドまたはそれらの間の任意の量が、核酸またはヌクレオチド配列の5’末端、3’末端または5’末端および3’末端の両方から除去され得る。
【0071】
「調節領域」(あるいは調節エレメント)によって、調節領域に作動可能なように連結された配列の発現を制御する性質を有する核酸配列が意味される。そのような調節領域は、プロモーターあるいはエンハンサー領域、および技術分野における当業者によって認識される他の調節エレメントを含み得る。「プロモーター」によって、転写の開始のため、および転写速度の調節のために不可欠な全てのシグナルを含む、コード領域の5’末端のヌクレオチド配列またはその断片が意味される。
【0072】
発生的に調節される、誘導性、組織特異的、または構成的等を含む何種類かの調節エレメントが存在する。発生的に調節される調節エレメントは、ある器官または器官のある組織内で、その器官または組織の発生の間の特定の時期に活性化され、かつ遺伝子の差示的発現(differential expression)を調節する。しかしながら、発生的に調節されるいくつかの調節エレメントは、ある器官または組織内で特定の発生段階で優先的に活性化されてもよく、また、発生的に調節される方法において、あるいは植物内の他の器官または組織における基礎レベルでなお活性であってもよい。そのような調節エレメントは、任意の組織、例えば、葉、根、茎、芽、果実、種子、花、塊茎、胚珠、胚等において見出されるが、これらに限定されない。
【0073】
調節エレメントは、該調節エレメントが宿主植物において活性であることを条件に、任意の好適な資源(source)に由来することができる。調節エレメントは、それが使用される植物または植物細胞と同一の種または型(type)に由来することができ、あるいは異なる植物資源から獲得することができる。調節エレメントはまた、それが使用される宿主植物において該調節エレメントが活性であることを条件に、動物の核酸配列、細菌性核酸配列、ウイルス性核酸配列、原生動物の核酸配列、またはシアノバクテリア性核酸配列であってもよい。調節エレメントは、全体にまたは一部分に、自然においては発見されない合成核酸配列(合成調節エレメント)を含んでもよい。
【0074】
組織特異的調節エレメントは、組織特異的な方法において一以上のヌクレオチド配列または遺伝子の転写を、直接的または間接的に活性化することができる調節エレメントである。そのような調節エレメントは、葉特異的、孔辺細胞特異的、茎特異的、根特異的、緑色組織特異的、オルガネラ特異的等であってもよい。孔辺細胞特異的調節エレメントの非限定的な例は、シロイヌナズナTGG1遺伝子のプロモーター配列を含む(Husebyeら 2002. Plant Physiol 128:1180−1188; Pleschら 2000 Gene 249:83−9; PCT特許出願公開番号WO 93/018169; 出典明示により本明細書に組み込まれる)。オルガネラ特異的調節エレメントの非限定的な例は、エンドウのクロロフィルa/b結合タンパク質遺伝子AB80のプロモーター配列を含む(Zabaletaら 1994. Plant J. 6:425−432; 出典明示により本明細書に組み込まれる)。葉特異的調節エレメントの非限定的な例は、PCT特許公報WO 02/077248; WO02/036786; WO 98/00533(出典明示により本明細書に組み込まれる)において記載される。根特異的または根活性型調節エレメントの非限定的な例は、PCT特許公報WO 06/066193; WO 05/085449(出典明示により本明細書に組み込まれる)において記載される。
【0075】
誘導性調節エレメントは、誘導因子に応答して、一以上のDNA配列または遺伝子の転写を、直接的または間接的に活性化することができる調節エレメントである。誘導因子が無い場合、DNA配列または遺伝子は転写されない。典型的に、転写を活性化するために誘導性調節エレメントへ特異的に結合するタンパク質因子は、誘導因子によってその後活性型へと直接的または間接的に変換される不活性型で存在し得る。しかしながら、タンパク質因子は存在しなくてもよい。該誘導因子は、タンパク質、代謝物、成長調節物質、除草剤もしくはフェノール化合物などの化学薬品、または熱、低温、塩もしくは有毒物質によって直接的にあるいはウイルスなどの病原体(pathogen)もしくは病因物質(disease agent)を介して間接的に課せられる(imposed)生理学的ストレスであってもよい。誘導性調節エレメントを含む植物細胞は、噴射、散水、加熱あるいは同様の方法によってなど、細胞または植物への誘導因子の外部適用によって誘導因子へ暴露される。誘導性エレメントは植物または非植物遺伝子のいずれかに由来することができる。(例えば、Gatz, C.およびLenk, I.R.P.、1998、Trends Plant Sci. 3, 352−358; 出典明示により本明細書に組み込まれる)。潜在的誘導性プロモーターの例は、ステロイド誘導性プロモーター、例えばエストラジオールプロモーター、テトラサイクリン誘導性プロモーター(Gatz, C.、1997、Ann. Rev. Plant Physiol. Plant Mol. Biol. 48, 89−108; 出典明示により本明細書に組み込まれる)、ステロイド誘導性プロモーター(Aoyama, T.およびChua, N.H.、1997、Plant J. 2, 397−404; 出典明示により本明細書に組み込まれる)、アルコールもしくはエタノール誘導性プロモーター(Salter, M.G.,ら、1998、Plant Journal 16, 127−132; Caddick, M.X.,ら、1998、Nature Biotech. 16, 177−180、出典明示により本明細書に組み込まれる)、サイトカイニン誘導性IB6およびCKI1遺伝子(Brandstatter, I.およびKieber, J.J.、1998、Plant Cell 10, 1009−1019; Kakimoto, T.、1996、Science 274, 982−985; 出典明示により本明細書に組み込まれる)、オーキシン誘導性エレメント、DR5(Ulmasov, T.,ら、1997、Plant Cell 9, 1963−1971; 出典明示により本明細書に組み込まれる)、およびデキサメタゾン誘導性プロモーター(Sablowskiら、1998. Cell 92:93−103)を含むが、これらに限定されない。
【0076】
構成的調節エレメントは、植物の様々な部分の至る所で、かつ植物発生の間中、連続的に、遺伝子の発現を指示する。公知の構成的調節エレメントの例は、CaMV 35S転写産物に付随するプロモーター(Odellら、1985、Nature, 313: 810−812)、オクトピン合成酵素プロモーター(Frommら、1989. Plant Cell 1:977−984)、ノパリン合成酵素(NOS)プロモーター(Lamら、1990. J. Biol Chem. 265:9909−9913)、イネアクチン1(Zhangら、1991、Plant Cell, 3: 1155−1165)およびトリオースリン酸イソメラーゼ1(Xuら、1994、Plant Physiol. 106: 459−467)遺伝子、トウモロコシ(maize)ユビキチン1遺伝子(Cornejoら、1993、Plant Mol. Biol. 29: 637−646)、シロイヌナズナユビキチン1および6遺伝子(Holtorfら、1995、Plant Mol. Biol. 29: 637−646)、タバコt−CUPプロモーター(WO/99/67389; US 5,824,872)、HPLプロモーター(WO 02/50291)および、タバコ翻訳開始因子4A遺伝子(Mandelら、1995 Plant Mol. Biol. 29: 995-1004)、を含み、これらの全ては出典明示により本明細書に組み込まれる。用語「構成的」は本明細書において使用される場合、構成的調節エレメントの制御下において遺伝子が全ての細胞タイプにおいて同一のレベルで発現されることを必ずしも示さないが、たとえしばしば多量に変化が観察されても、広範囲の細胞タイプにおいて遺伝子が発現することを示す。
【0077】
発生的に調節される、誘導性、組織特異的、または構成的な調節エレメントの他の非限定的な例は表1に示され、表1における参考文献は、全て出典明示により本明細書に組み込まれる。
【0078】
【表1】

【0079】
調節エレメントの他の非限定的な例は特定の配列または応答エレメントを含み得る。例えば、調節エレメントは、アブシジン酸応答エレメント、Sph/RYエレメント、Myb認識エレメントまたはMyc認識エレメントなどの一以上のシス作用性モチーフを含むことができる。これらおよび/または他の調節エレメントは、非自然発生的なプロモーターを提供するために組み合わせることができ、発現されようとする所望の核酸(例えば、本明細書において記載されるアンチセンスcpn21またはRNAi)へシス、5’に挿入することができる。
【0080】
本発明の核酸構築体は必要に応じて、飼料植物、食用作物、観賞植物、または他の植物を含む任意の所望の植物へ導入することができる。それゆえ、本発明の実施形態は、広範囲の植物への用途を有する。そのような植物の例は、アルファルファ、トウモロコシ(corn)、大麦、米、タバコ、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)、キャノーラ、小麦、カラスムギ、アブラナ属(Brassica)、イネ属(Oryza)、麻(hemp)、大豆、エンドウ豆、朝鮮人参、亜麻、麻(hemp)、トウモロコシ(maize)、例えば、アサ(Cannabis sativa)、じゃがいも、および観賞植物、例えば、ペチュニア属(Petunia spp.)、シクラメン属(Cyclamen spp)、ベゴニア属(Begonia spp.)、ツツジ属(Azalea spp)、およびスパティフィラム属(Spatifilium spp.)を含むが、これらに限定されない。他の例は、カシューナットノキ属(Anacardium)、ラッカセイ属(Arachis)、ヨモギ属(Artemesia)、アスパラガス属(Asparagus)、ベラドンナ属(Atropa)、カラスムギ属(Avena)、アブラナ属(Brassica)、ヤマカモジグサ属(Brachypodium)、ミカン属(Citrus)、スイカ属(Citrullus)、トウガラシ属(Capsicum)、ベニバナ属(Carthamus)、ココヤシ属(Cocos)、コーヒーノキ属(Coffea)(例えばC.arabica、C.robusta)、キュウリ属(Cucumis)、カボチャ属(Cucurbita)、ニンジン属(Daucus)、アブラヤシ属(Elaeis)、オランダイチゴ属(Fragaria)、ダイズ属(Glycine)、ワタ属(Gossypium)、ヒマワリ属(Helianthus)、ワスレグサ属(Heterocallis)、オオムギ属(Hordeum)、ヒヨス属(Hyoscyamus)、アキノノゲシ属(Lactuca)、アマ属(Linum)、ドクムギ属(Lolium)、ハウチワマメ属(Lupinus)、トマト属(Lycopersicon)、リンゴ属(Malus)、キャッサバ属(Manihot)、マヨラナ属(Majorana)、ウマゴヤシ属(Medicago)、バショウ属(Musa)(例えばバナナ)、タバコ属(Nicotiana)、オリーブ属(Olea)、イネ属(Oryza)、キビ属(Panieum)、チカラシバ属(Pannesetum)、ワニナシ属(Persea)、インゲンマメ属(Phaseolus)、カイノキ属(Pistachia)、エンドウ属(Pisum)、ナシ属(Pyrus)、サクラ属(Prunus)、ダイコン属(Raphanus)、トウゴマ属(Ricinus)、バラ属(Rosa)、ライムギ属(Secale)、コオン属(Senecio)、シロガラシ属(Sinapis)、ナス属(Solanum)、モロコシ属(Sorghum)、カカオノキ属(Theobromus)、レイリョウコウ属(Trigonella)、コムギ属(Triticum)、ソラマメ属(Vicia)、ブドウ属(Vitis)、ササゲ属(Vigna)、トウモロコシ属(Zea)等由来の種を含むが、これらに限定されない。
【0081】
以下に概説する実施例において、タバコ、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)、キャノーラ、イネまたはヤマカモジグサ属(Brachypodium)が、本明細書において定義される構築体の発現のための試験生物として使用されたが、しかしながら、本発明の構築体は任意の植物において導入され発現され得ることが理解されるべきである。
【0082】
本明細書において記載される構築体、ベクターまたは核酸を含む遺伝子組換え植物もまた本発明の一部と見なされる。
【0083】
植物細胞から植物全体を再生する方法は技術分野において知られている。一般的に、形質転換された植物細胞は抗生物質などの選択剤を含有する適切な培地において培養され、選択マーカーが形質転換された植物細胞の同定を容易にするために使用される。一度カルスが形成すると、シュート形成は、公知の方法に従って適切な植物ホルモンを採用すること、および植物の再生のための発根培地へ移植させられたシュートによって促進され得る。植物はその後、種子からあるいは栄養繁殖技術を使用して、反復世代(repetitive generations)を確立するために使用される。
【0084】
形質転換された植物細胞の同定において補助するために、この発明の構築体は植物選択マーカーを含有するようさらに操作されてもよい。選択マーカーは、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、カナマイシン等などの抗生物質への抵抗性を提供する酵素を含み得る。同様に、GUS(ベータ−グルクロニダーゼ)などの色変化、ルシフェラーゼなどの発光、ホスホマンノースイソメラーゼなどの(非形質転換体の成長を阻害する)特定の炭素源の代謝による、識別可能な化合物の生産を提供する酵素が有用であるが、これらに限定されない。
【0085】
核酸、アンチセンス分子、サイレンシングヌクレオチド配列、ベクターまたは他の遺伝的構築体(genetic construct)(まとめて「構築体」または「核酸構築体」と呼ぶ)は、Tiプラスミド、Riプラスミド、植物ウイルスベクター、ダイレクトDNAトランスフォーメーション、マイクロ−インジェクション、エレクトロポレーション、フローラルディップ、微粒子銃パーティクルガン等を使用して、植物細胞内へ導入することができる。そのような技術の検討のため、例えば、WeissbachおよびWeissbach、Methods for Plant Molecular Biology, Academy Press, New York VIII, pp. 421-463 (1988); GeiersonおよびCorey、Plant Molecular Biology, 2d Ed. (1988); および、MikiおよびIyer、Fundamentals of Gene Transfer in Plants.In Plant Metabolism, 2nd edition DT. Dennis,ら、(編者)、Addison Wesley, Langmans Ltd. London, pp. 561-579 (1997); CloughおよびBent、1998 (Plant J. 16, 735−743)を参照のこと。麻(Hemp)、例えば、アサ(Cannabis sativa L.)は、FeenyおよびPunja、2006.(Methods Mol Biol 344: 373−382; 出典明示により本明細書に組み込まれる)によって記載されるように、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumifasciens)を使用して形質転換することができるが、これに限定されない。
【0086】
本発明はさらに核酸構築体を含む好適なベクターを含む。
【0087】
本発明の核酸構築体を含有する遺伝子組換え植物およびそれらの子孫もまた本発明の一部と考えられる。植物細胞から植物全体を再生する方法は技術分野において知られており、形質転換され、かつ再生された植物を獲得する方法はこの発明にとって重要ではない。一般的に、形質転換された植物細胞は抗生物質などの選択剤を含有する適切な培地において培養され、選択マーカーが形質転換された植物細胞の同定を容易にするために使用される。一度カルスが形成すると、シュート形成は、公知の方法に従って適切な植物ホルモンを採用すること、植物の再生のための発根培地へ移植させられたシュートによって促進され得る。該植物はその後、種子からあるいは栄養繁殖技術を使用して、反復世代(repetitive generations)を確立するために使用される。培養されたプロトプラストからの植物再生は、Evansら(Protoplasts Isolation and Culture, Handbook of Plant Cell Culture, pp. 124−176, MacMillian Publishing Company, New York, 1983; および、Binding, Regeneration of Plants, Plant Protoplasts, pp. 21−73, CRC Press, Boca Raton, 1985; 出典明示により本明細書に組み込まれる)に記載されている。再生は、植物カルス、外植片(explant)、器官、またはそれらの一部分からも獲得することができる。そのような再生技術は、Kleeら1987(Ann. Rev. Plant Phys. 38:467−486; 出典明示により本明細書に組み込まれる)において一般的に記載されている。
【0088】
本明細書において記載されるサイレンシングヌクレオチド配列または構築体は、第一の植物とサイレンシングヌクレオチド配列または構築体を含む第二の植物とを交配し、核酸の発現を選択することによって、植物へ導入することができる。
【0089】
【表2】

*下線部の配列はGateway商標(Invitrogen)伸長
【0090】
本発明はさらに以下の実施例において説明される。しかしながら、これらの実施例は説明目的のためのみであると理解されるべきであり、いかなる方法によっても本発明の範囲を制限するために使用されるべきではない。
実施例
方法
ベクター構築
【0091】
シロイヌナズナシャペロニン21配列(GenBank 登録番号AF428366.1 gi:16226910 Arabidopsis thaliana AT5g20720/T1M15_120 mRNA;配列番号:1)を使用して、クローニング目的のためのPml1サイトおよびSpe1サイトを組み込むPCRプライマーを設計した。
【0092】
35Sプロモーター下のCpn21アンチセンス(cpn21AS)(配列番号:4)
cpn21をコードする配列は、プライマーACpn21アンチセンスFおよびプライマーACpn21アンチセンスR(配列番号:26および27)を使用して、クローニング目的のため(5’末端で)Spe1および(3’末端で)Pml1制限酵素認識配列を組み込み、シロイヌナズナ(A.thaliana)から増幅された。得られたPCR産物はpGEM−Tへライゲーションされ、シークエンシングによって確認された(得られた構築体Acpn21アンチセンスpGEM−T)。ACpn21アンチセンスpGEM−TはPmlI/SpeIで消化され、Cpn21を含有する得られた800bpの断片はPmlI/SpeIで切断されたpCambia1302ベクターへライゲーションされ、シークエンシングによって確認された。
【0093】
pCambiaベクター(CAMBIAから入手可能)は、pPZP骨格(Hajdukiewiczら 1994. Plant Mol Biol 25:989−994; GenBank 登録番号:AF234301)に由来する。
【0094】
「Cpn21RNAi−35S」(配列番号:6)構築体は35Sプロモーター(配列番号:9)の制御下にCpn21のRNAi配列の発現をもたらす。Cpn21遺伝子の中央から500bp断片をGateway商標(Invitrogen)attB1(フォワード)5’伸長およびattB2(リバース)5’伸長を含むプライマー(ACpn21 RNAi FおよびACpn21 RNAi R、配列番号:24および25)を使用して、製造者の取扱説明書に従ってPCRにより増幅し、Cpn21RNAi構築体を作製した。Gateway商標BP組換え反応を使用して、Cpn21PCR産物をpDONR商標221ベクターへ挿入し、得られたCpn21 pDONR構築体はシークエンシングによって確認された。Gateway商標LR組換え反応を再度使用して、Cpn21 pDONRからCpn21配列をpKGW1WG2II(Karimiら、2002 Trends Plant Sci 7(5):193−195)へRNAフォーマットで挿入し(イントロンに隣接するセンスおよびアンチセンス配列;転写された際、核酸はヘアピンループ構造を形成する)(配列番号:5)、シークエンシングによって確認された。
【0095】
「cpn21RNAi−RBC」構築体はRuBisCO(RBC)プロモーター(配列番号:11)の制御下にCpn21のRNAi配列の発現をもたらす。pKGW1WG2IIからRNAi配向におけるcpn21挿入断片をXmnIで切り取り、pGreen0029−RBC(配列番号:28)へライゲーションし、XmnI/SmaIで直線化して、cpn21RNAi−RBC(配列番号:7)を作製した。pGreen0029は、タバコ(N.tabacum)のRBCプロモーター(配列番号:28のヌクレオチド699−1744)、マルチクローニングサイト(配列番号:28のヌクレオチド1745−1841)、NOSターミネーターをコードする配列(配列番号:28のヌクレオチド1842−2122)を含み、RBCプロモーターを含むpUC57−RBC(配列番号:29)のKpnI/ApaI断片を切り取り、この断片をKpnI/ApaIで直線化されたpGreen0029ベクターへライゲーションすることによって作製された。pGreenプラスミドは、技術分野において知られており、例えば、Hellensら、2000(Plant Mol Biol 42:819−832; Hellensら、2000 Trends in Plant Sci 5:10:446−451; GenBank登録番号;Y09374)による参考文献において記載される。
【0096】
pUC57ベクターは既知でありGenscript(GenScript USA Inc. 120 Centennial Ave Piscataway, NJ. カタログ# SD1176−50ug)から入手可能である。pUC57−RBCは、タバコ(N.tabacum)のRBCプロモーター(配列番号:29のヌクレオチド21−1066)、マルチクローニングサイト(配列番号:29のヌクレオチド1067−1163)、NOSターミネーターをコードする配列(配列番号:29のヌクレオチド1164−1444)を含む。
【0097】
得られたcpn21RNAi−RBC構築体は挿入断片の存在を確認するためにBamHI/XmnIで消化された。
【0098】
「Cpn21AS−RBC」構築体はRBCプロモーターの制御下にCpn21のセンス配向の発現をもたらす。RBCプロモーター(配列番号:11)をHindIIIおよびSpeIでの消化によってpUC57RBCから取り除き、アンチセンス配向におけるCpn21配列を含むpCambia 1302 AAS6(CAMBIAから;HindIII/SpeIで切断)へと挿入して、Cpn21AS−RBCを作製した。得られた構築体は正しい挿入断片の大きさの確認をするためHindIII/SpeIで切断された。
【0099】
Alcを含む誘導性の構築体もまた作製された。AlcレギュロンはCaddickら 1998において記載されている。簡単には、最小レギュロンはalcR配列およびAlcAプロモーターを含む。AlcRポリペプチド(転写因子)は、植物がエタノールへ暴露された際、誘導因子分子(エタノール)へ反応する;AlcAプロモーター配列へ作動可能なように連結しているオープンリーディングフレームの発現を刺激するAlcRポリペプチドはAlcAプロモーターへ結合する。
【0100】
「AlcR Cpn21 RNAi」構築体(配列番号:8)はアルコール誘導性プロモーター(AlcA)(AlcA−配列番号:10)の制御下にCpn21のRNAフォーマットの発現をもたらす。PspOMI/XmnIで消化されたpKGW1WG2II Cpn21 RNAiからRNAフォーマットで(イントロンに隣接するセンスおよびアンチセンス配列;転写された際、核酸はヘアピンループ構造を形成する)Cpn21を含む核酸配列を、SwaI/NotIで切断されたAIR−AIA pGreen0029由来AlcAプロモーターを含有する骨格へ挿入し、AlcRCpn21RNAiを作製した。構築体は正しいバンドパターンの確認をするためBglIIで消化された。AlcR−AlcA pGreen0029構築体はGenScriptから得られる。A1R配列(GenBank 登録番号XM_677155)およびAlAプロモーター配列(GenBank 登録番号M16196)は技術分野において既知である。
タバコ植物(タバコSR1(Nicotiana tabacum L.cv.SR1))の形質転換
【0101】
インビトロで生育させたタバコ植物が上記の構築体(Cpn21AS、Cpn21 RNAi−RBC、Cpn21AS−RBC、AlcR Cpn21 RNAi)でのアグロバクテリウム(Agrobacterium)形質転換のために利用された。対象の構築体を運ぶアグロバクテリウム・ツメファシエンス(A.tumifasciens)を、抗生物質添加LB培地中で撹拌しながら(28℃、200rpm)一晩、懸濁培養液(suspension culture)(400ml)で生育させた。菌液は遠心され5%スクロース中に再懸濁され、0.02%(200マイクロリットル(uL)/L)の濃度へとSilwetL−77が添加された。インビトロで生育している植物由来の葉片は、再懸濁されたアグロバクテリウム・ツメファシエンス(A.tumifasciens)へ30分間浸され、固体CT培地(Sigma−Aldrich)上での2日間の共培養が続いた。共培養は、暗所において22℃および湿度70%で実行された。形質転換体は、形質転換において使用される構築体によって、選択剤(カナマイシンまたはハイグロマイシン)あるいは誘導剤(アルコール)の存在下または非存在下で、選択培地(Murashige&Skoog−“MS”)を使用して選択された(培地、選択剤、誘導剤に関して表3、4参照)。斑入りを示す植物は発根し、土壌へ移植された。
【表3】

【表4】

【0102】
ハイグロマイシンB(Invitrogen)およびカナマイシン(Sigma/Aldrich)が選択剤として使用された。選択培地はまたチメンチン(GlaxoSmithKline)が添加された。2−4−D(Sigma)、BA(Sigma)、インドール−e−酢酸(IAA)(Invitrogen)およびカイネチン(Sigma)がカルスおよび/またはシュート再生の誘導のために使用された。
シロイヌナズナの形質転換
【0103】
シロイヌナズナの形質転換は、CloughおよびBent、1998の方法に従った。簡単には、シロイヌナズナは長日光条件(16/8時間の光周期、湿度70%、および22℃)下で、培養土(potsoil)において、開花期まで生育させられた。対象の構築体(Cpn21ASまたはCpn21 RNAi RBC)を運ぶアグロバクテリウム・ツメファシエンス(A.tumifasciens)を、抗生物質添加LB培地中で撹拌しながら一晩、懸濁培養液(400ml)で生育させた。菌液は遠心され5%スクロース中に再懸濁され(OD660〜0.8)、0.02%(200マクロリットル(uL)/L)の濃度へとSilwetL−77が添加された。開花している植物は、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(A.tumifasciens)懸濁液へ2−3秒間浸され、24時間プラスチックラップの下へ設置された(place)。乾燥成熟種子は回収され、滅菌され、かつ選択培地(50mg/l ハイグロマイシン)または非選択培地(ハイグロマイシン無し)上で、インビトロで発芽させられた。
キャノーラの形質転換
【0104】
高再生効率によって特徴づけられるセイヨウアブラナDH 12075(Brassica napus cultivar DH 12075)がシャペロニン−形質転換実験のために使用された。種子は1/2MS培地上で6日間、長日光条件(22℃、16/8時間の光周期、湿度70%)下で発芽させられた。6日齢の外植片から葉柄を伴う子葉が形質転換実験のために使用された。
【0105】
対象の構築体(Cpn21ASまたはCpn21 RNAi−35S)を運ぶアグロバクテリウム・ツメファシエンス(A.tumifasciens)は、抗生物質添加LB培地中で撹拌しながら(28℃、200rpm)一晩、懸濁培養液(400ml)で生育させられた。菌は遠心によって回収され、CT培地でOD660=0.4で再懸濁された。子葉は葉柄部分と一緒に小植物体(plantlet)から分離され、組織の切り口はアグロバクテリウム(Agrobacterium)懸濁液へ浸された。
【0106】
外植片は、100um アセトシリンゴン、1mg/l 2.4−Dおよび75mg/l DTTが添加されたCT寒天培地上で48時間共培養された。外植片はそれから4.5mg/l BA、200mg/l チメンチン、および5mg/l ハイグロマイシン有り無しで、および50mg/l カナマイシン有り無し、のいずれかが補強されたMMO選択培地へ移植された。
【0107】
良好に成長したシュートは外植片から分離され、新鮮培地へ移植された。発根は、成長調節物質を欠き、200mg/l チメンチン、ハイグロマイシン有り無しが添加されたMS培地において実行された。良好に発根した植物は土壌で固められた(hardened)。植物は、16/8時間の光周期で23℃、アイソレーターにおいて開花期へと生育させられた。成熟した種子は収穫され、滅菌され、かつ10mg/lのハイグロマイシンまたは100mg/lのカナマイシンが添加された選択培地上で、インビトロで発芽させられた。若芽はPCR解析のために収穫された。
【実施例1】
【0108】
Cpn21ASでのタバコ(N.tabacum)の形質転換
タバコSR1(Nicotiana tabacum L.cv.SR1)植物は記載されるようにcpn21で形質転換された。Cpn21アンチセンス配列は記載されるように、35Sプロモーターの制御下で構成的に発現された。
【0109】
様々な斑入り模様を示す200を超える植物が、アンチセンス配向またはRNAiにおける形質転換に続いて選択された。開花期でのT0植物は生育キャビネット内のアイソレーター下で生育させられた(日中23℃/夜間19℃;16/8時間の光周期)。無作為に選択された15の斑入り植物から種子が収穫され、滅菌され、かつ50mg/lのハイグロマイシン有りの1/2MS培地またはハイグロマイシン無しのMS培地上で、インビトロで発芽させられた(表3および4)。発芽から3週間後、HygRおよびHygSの苗の数が決定された。T0およびT1植物を、35S−ASRおよび35S−ASFプライマーでのPCRを使用して試験し、Cpn21アンチセンス配列の存在を確認した。
【0110】
ハイグロマイシン選択培地上で生育したシュートは、さらなるシュート伸長のためにハイグロマイシンが添加されたMS培地上へ継代培養された。シュート伸長段階では、いくつかの葉は端に濃緑色の組織の小さな部分を備えた薄緑色であった一方、その他は葉全体にわたって斑入りを示した。斑入りの植物はハイグロマイシン選択培地において発根を示した一方、退色した(bleached)葉を備える植物はより低い生存能力および減弱した生育を示した。退色した植物から種子は、産生されない、または産生された場合でも、インビトロでの栽培において発芽しない、のいずれかであった。部分的に斑入りの植物は遮光下(800ルクス)において生育させられ、生育可能な種子を産生した。再生されたシュートの67.4%がハイグロマイシン培地上に発根した。全てのハイグロマイシン耐性の発根した植物の12.2%が明白に斑入りであった。
【0111】
斑入りのタバコ(N.tabacum)植物はまたハイグロマイシン無しの培地(MS−hyg)上でも同定された。一以上の葉の一以上の領域が差示的着色を示した場合、植物は斑入りとみなされた。形質転換の効率は、植物が選択圧無しで再生された際わずかに減少した−再生された植物の11.3%が斑入りであり、4.4%が3週間後に発根した。これらの結果は、人工的な選択圧が無い場合、斑入り効果が形質転換された植物のマーカーとして使用され得ることを明示している。
【0112】
(T0植物の自家受粉によって産生された)T1植物はハイグロマイシン培地上で発芽した植物の〜25%において斑入りを示した。
【0113】
非形質転換植物はハイグロマイシンを分解せず、選択培地(ハイグロマイシン含有)上で生存したシュートはアルビノであった。選択培地上で生育させられた形質転換された植物は緑色であるか、またはいくつかの緑色の組織を有していた。
【実施例2】
【0114】
cpnRNAi−35Sでのタバコの形質転換
記載されるようにcpnRNAi−35Sでの葉組織の形質転換の後の3週間、シュートは斑入り、着色および発根を評価された。
【0115】
シュート再生(形成(initiation)および伸長)の段階の間、退色は選択条件下および非選択条件下の両方(+/−カナマイシン再生培地)で、いくつかのシュートにおいて観察された。良好に生育しているシュートは、さらなる伸長および発根のためにMS選択培地へ継代培養された。シュート伸長のこの段階で、葉の着色パターンは、葉全体におよぶ薄緑色の着色、斑入り模様または黄色端、を含んだ(図1)。斑入り植物を含む、再生されたシュートの67.4%がカナマイシン培地上に発根した。退色した葉を備える植物はより弱く、減弱した生育を示した。全体としては、カナマイシン発根植物の43.7%が斑入りを示した。
【0116】
斑入り植物はまたカナマイシン選択の無い培地上でも生育した。植物が選択圧無しで再生された際、形質転換効率はわずかに減少し、再生された少なくとも1つの斑入り植物を有する外植片の23.3%であった。
【0117】
開花期でT0植物は生育され、種子が収穫された。退色した植物は種子を産生し損ねたか、発芽しない種子を産生したかのいずれかであった。部分的に斑入りの植物は遮光下(800ルクス)において生育させられ、生育可能な種子を産生した。
【0118】
斑入り植物から収穫された種子は、T1子孫の産生のために、滅菌され、かつ適切な抗生物質(例えば500mg/lのカナマイシン)を備える1/2MS培地または抗生物質無しのMS培地上で、インビトロで発芽させられ、カナマイシン耐性(KanR)およびカナマイシン感受性(KanS)の苗の数が3週間の生育にて集計された。T0再生個体の自家受粉は、3:1近くまたは2:1のいずれかのカナマイシン陽性/陰性植物の分離比、および3:1の斑入り陽性/斑入り陰性植物の比を生じた。斑入りのT1植物はカナマイシン陰性培地上で容易に同定され、かつ、退色または薄緑色の葉端、より暗い葉組織を備える、より暗い葉組織を備える明るい葉脈(veination)、または葉全体に及ぶ多数の斑点状の(speckled)/まだらの(spotted)斑入りを含む、様々な斑入りのパターンが観察された。
【0119】
明白に斑入りのT1子孫からの組織に対しPCRを使用して、cpnRNAi−35Sで形質転換された再生個体の形質転換状態を確認したが、T1種子において著しい不稔症率(rate of sterility)が観察された。種子は選択無しのMS基本栽培培地上で発芽させられ、種子の42%が生育し、生育可能な植物を産生した。
【実施例3】
【0120】
Cpn21RNAi−RBCでのタバコの形質転換
組織特異的プロモーター下のCpn21RNAi−RBCで形質転換されたタバコ植物の形質転換効率は、Cpn21RNAi−35Sで形質転換されたものに類似していた。葉は一般的に対照(野生型)に比べてより明るく、後期生育段階で観察された形質転換された植物において斑入りを備えていた。茎の色、生存能力および形態は、形質転換された植物の栄養発生および開花期の間、非形質転換植物に類似し、種子は産生された。明白に斑入りのT1子孫からの組織に対してPCRを使用して、再生個体の形質転換状態を確認した。
【実施例4】
【0121】
Cpn21RNAi−AlcRでのタバコの形質転換
Cpn21RNAi−AlcRで形質転換されたタバコ植物の形質転換効率は、Cpn21RNAi−35SまたはCpn21RNAi−RBCで形質転換されたものに類似していた。再生された植物は通常の形態および種子生存能力を示した(T0世代に対して78%発芽;野生型対照に対して81%)。
【0122】
シュート伸長の段階の間、植物がエタノール誘導性プロモーター下のCpn21で形質転換された場合、2%の濃度のエタノールが選択培地へ追加された。新たに生育した葉は斑入りの形態を示した(図3)。いくつかのより古い葉は新芽成長点領域において斑入りを示した。
【0123】
AlcRプロモーターからの発現は、いくつかの方法のうちのいずれかによって誘導することができる:2%エタノールの栽培培地への添加;エタノール蒸気への再生個体の暴露(生育しているシュートと共に、マゼンタジャー(magenta jar)内へ99%エタノールを含有する小試験管を配置すること);2%エタノールの葉への噴霧(インビトロまたはインビボ)。3つの方法全ては、葉および茎を含む、生育している組織において斑入りを誘導する。
【0124】
エタノール無しの培地において生育している植物の約2%もまた、斑入り模様を生じた。
【0125】
抗生物質無しの培地(シュート伸長の間エタノールを添加された)上で再生された発根した植物の34.2%は明白に斑入りであった。再生された植物は土壌へ移植され、種子は産生され、収穫され、滅菌され、かつインビトロで発芽された。約3:1(発芽:不発芽)の発芽率が抗生物質選択(カナマイシン)培地上で観察された。エタノールが再生培地へ添加された際、植物の12.8%が斑入りを示した。
【実施例5】
【0126】
Cpn21S、Cpn21AS、Cpn21RNAi−35Sでのシロイヌナズナの形質転換
シロイヌナズナはCpn21ASおよび記載されるように生育させられた遺伝子組換え子孫で形質転換された。
【0127】
1%未満(0.4%)の効率がcpn21ASまたはCpn21RNAi−35S構築体で形質転換されたシロイヌナズナで観察され、0.2%のみが斑入りを示した。形質転換体の苗は退色を示し、かつ相当量の緑色着色を欠如した。
【0128】
Cpn21RNAi−35Sを含む形質転換体は、カナマイシン選択培地上で発根し、生育可能な種子がいくつかの斑入り植物によって生産された。カナマイシン耐性:感受性のT1分離比は約1:1であった;再生個体の63.2%が斑入りであった。明白に斑入りのT1子孫からの組織に対してPCRを使用して、Cpn21RNAi−35Sで形質転換された再生個体の形質転換状態を確認した。
【実施例6】
【0129】
Cpn21RNAi−35S、cpn21ASでのキャノーラ(セイヨウアブラナ(Brassica napus))の形質転換
Cpn21RNAi−35Sでの形質転換効率は低く、わずかの斑入り植物がカナマイシン選択の無い培地において同定された。約32の斑入りシュート(再生個体の総量の1.2%)がカナマイシン無しの培地において再生された。T0植物は根を発達させたが、生育は阻害された。種子発生は非形質転換植物と比較して遅延したが、しかしながら、生育可能な種子が産生され、発芽した種子は初期葉において斑入りを示し、非形質転換植物から識別可能であった(図4および5)。
【0130】
明白に斑入りのT1子孫植物からの組織に対しPCRを使用して、再生個体の形質転換状態を確認した。
【実施例7】
【0131】
葉脈特異的プロモーターを含む構築体および遺伝子組換え植物
シャペロニン構築体の葉脈特異的発現のためのプロモーターは植物を形質転換するために使用され得る。Cpn21AS構築体は、標準方法に従って、35Sプロモーターを取り除くために制限酵素で消化することができる。Imlauら 1999(Cell 11:309−322)において記載されるように増幅されたAtSUC2プロモーターは、切断されたベクターへライゲーションされ、構築体はシークエンシングによって確認された。簡単には、PCR増幅はHindIIIおよびPmlIサイトを含むHP−SUC2Pプライマー(配列番号:19)、およびSacI、NotIおよびNcoIサイトを含むSNN−SUC2Pプライマー(配列番号:20)を使用して実行され得る。葉脈特異的プロモーターを含む得られたプラスミドは本明細書において例示された方法などの既知の方法を使用して、対象の植物組織へ形質転換され得る。
【実施例8】
【0132】
Cpn21RNAi−35Sでのイネ(Oryza sativa)(インディカ)の形質転換
胚培養は、2mg/l 2−4Dが添加された2×N6培地上で、成熟したインディカ米の種子(品種ニッポンバレ)から形成された(initiate)。胚培養は、3週間ごとに新鮮培地へ継代培養することによって維持された。アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介形質転換のため、Kumarら、2005(Plant. Mol. Biol. Rep. 232: 67-73)の手順が使用された。再生されたシュートは、胚性カルス(embryonic callus)の再生培地(カナマイシン100mg/lおよび200mg/lチメンチンが添加された)への移植後4−6週で獲得された。伸長したシュートは選択培地上に発根した。良好に発根した植物は続いて、生育、成熟および種子の産生のために鉢へ移植された(図6)。自家受粉させられ、T1種子はカナマイシン(500mg/l)選択培地において発芽された。明白に斑入りのT1子孫植物からの組織に対しPCRを使用して、再生個体の形質転換状態を確認した。
【実施例9】
【0133】
Cpn21RNAi−35Sでのミナトカモジグサ(Brachypodium distachyon)の形質転換
未成熟の胚が、Draperら、(2001).(Plant Physiol. 127: 1539-1555)の手順を使用して、胚培養のための初代外植片の資源(source)として利用された。胚形成(initiation)は5mg/l 2−4Dが添加された培地(LS)(カルス誘導培地、CIM)上であった。胚培養は、3週間ごとにCIM新鮮培地上へ継代培養することによって維持された。アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介形質転換のためのため、Vogelら、2006(Cell, Tissue and Organ Culture 84: 199-211)の手順が使用された。再生されたシュートは、胚性カルス(embryonic callus)の再生培地(0.2mg/lカイネチン、50mg/lカナマイシンおよび150mg/lチメンチンが添加された)への移植後4−6週で獲得された。伸長したシュートは選択培地上に発根した。良好に発根した植物は続いて、生育、成熟および種子の産生のために鉢へ移植された(図7)。自家受粉させられたT1種子はカナマイシン(500mg/l)選択培地において発芽された。明白に斑入りのT1子孫植物からの組織に対しPCRを使用して、再生個体の形質転換状態を確認した。
【0134】
それぞれ個々の参考文献が出典明示により本明細書中に組み込まれるために具体的かつ個々に示されるかのように、かつ、本明細書中に完全に説明されるかのように、全ての引用は出典明示により本明細書中に組み込まれる。本明細書における参考文献の引用は、そのような参考文献が本発明に対する先行技術であるという自白とみなされることもなく、そのように解釈されることもない。
【0135】
一以上の現在好ましい発明の実施形態は実施例として記載されている。上記のように、実施例および図に関連して、発明は全ての実施形態、改変および変種を実質的に含む。請求項において定義された本発明の範囲から逸脱することなく、多数の変種および改変が作製されることは、技術分野における当業者にとって明らかである。そのような改変の例は、実質的に同一の方法によって同一の結果を達成するための、本発明の任意の態様に対する既知の同等物との置換を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調節領域へ作動可能なように連結された核酸を含み、該核酸がCpn21の発現を撹乱する、斑入り植物。
【請求項2】
核酸がアンチセンスCpn21、またはアンチセンスCpn21の相補配列と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸である、請求項1に記載の斑入り植物。
【請求項3】
調節領域が誘導性調節領域、組織特異的調節領域、発生調節領域、または構成的調節領域である、請求項1に記載の斑入り植物。
【請求項4】
誘導性調節領域がアルコール誘導性プロモーターである、請求項3に記載の斑入り植物。
【請求項5】
組織特異的調節領域がRuBisCOプロモーターである、請求項3に記載の斑入り植物。
【請求項6】
核酸がRNAiである、請求項1に記載の斑入り植物。
【請求項7】
RNAiが配列番号:1の断片を含む、請求項6に記載の斑入り植物。
【請求項8】
RNAiが配列番号:5、またはその断片もしくはその一部の断片を含む、請求項6に記載の斑入り植物。
【請求項9】
斑入り植物を生産する方法であって、
i)調節領域へ作動可能なように連結された核酸であって、Cpn21の発現を撹乱する核酸を含む植物を提供すること、および
ii)核酸の発現を引き起こす条件下で植物を生育させ、そのことによって斑入り植物を生産すること、
を含む方法。
【請求項10】
核酸がアンチセンスCpn21、またはアンチセンスCpn21の相補配列と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
調節領域が誘導性調節領域、組織特異的調節領域、発生調節領域、または構成的調節領域である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
i)第一の調節領域へ作動可能なように連結された第一の核酸、ならびに対象のタンパク質をコードし第二の調節領域へ作動可能なように連結された第二の核酸を含む植物を提供すること、ここに該第一の核酸はCpn21の発現を撹乱するものである、
ii)第一および第二の核酸の発現を引き起こす条件下で植物を生育すること、および
iii)斑入りの表現型を示し、対象の核酸を発現する植物を選択すること、
を含む、対象の遺伝子を含む植物を選択する方法。
【請求項13】
核酸がアンチセンスCpn21、またはアンチセンスCpn21の相補配列と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
調節領域が誘導性調節領域、組織特異的調節領域、発生調節領域、または構成的調節領域である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
誘導性調節領域がアルコール誘導性である、請求項14に記載の斑入り植物。
【請求項16】
第一の調節領域がAlcR配列を含み、第二の調節領域がAlcAプロモーターを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
調節領域がRuBisCOプロモーターを含む、請求項9に記載の斑入り植物。
【請求項18】
調節領域がAlcR配列およびAlcAプロモーターを含む、請求項9に記載の斑入り植物。
【請求項19】
調節領域が葉脈特異的プロモーターを含む、請求項9に記載の斑入り植物。
【請求項20】
調節領域へ作動可能なように連結された核酸であって、Cpn21もしくはCpn21の機能的ホモログの発現を直接的または間接的に撹乱する配列を含む核酸を含む、キメラ構築体。
【請求項21】
構築体がさらに、対象のタンパク質をコードし第二の調節領域へ作動可能なように連結された第二の核酸を含む、請求項20に記載のキメラ構築体。
【請求項22】
請求項21に記載のキメラ構築体を含むヌクレオチド配列で植物を形質転換すること、第一および第二の核酸の発現を引き起こす条件下で植物を生育すること、ならびに斑入りの表現型を示し、対象の核酸を発現する植物を選択すること、を含む、対象の遺伝子を含む植物を選択する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B1】
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【図8B2】
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【図8B3】
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【図8C】
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【図8D1】
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【図8D2】
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【図8D3】
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【図8D4】
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【図8E1】
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【図8E2】
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【図8E3】
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【図8F1】
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【図8F2】
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【図8F3】
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【図8F4】
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【図8G】
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【図8H】
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【図8I】
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【図8J】
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【図8K】
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【図8L】
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【図8M1】
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【図8M2】
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【図8N】
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【公表番号】特表2013−511262(P2013−511262A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539154(P2012−539154)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【国際出願番号】PCT/CA2010/001853
【国際公開番号】WO2011/060552
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(511055418)アルバータ イノヴェイツ−テクノロジー フューチャーズ (1)
【Fターム(参考)】