説明

植物の生産および消費者特性を改良する方法

【課題】本発明は、商品の消費者および商業用植物の栽培者に好ましい多様な特性を賦与された、植物、植物材料および種子を作製するための方法、並びにこれらの方法によって作製される改良された植物、植物材料および種子を提供する。
【解決手段】本発明による方法は、sugary-1(su1)、sugary enhancer-1(se1)および/またはshrunken-2(sh2)対立遺伝子のような一つ以上の他の対立遺伝子に沿ってゲノムにシーケンシャルレイヤリングされた、変異shrunken-2i(sh2-i)対立遺伝子を有し、且つ、最も食用に適した段階後の延長された糖質保持能力や、種子発芽、土壌からの苗発生および植物発達の間の、植物、植物材料および/または種子の、非常に強化された生長力および適合性を含む、様々な有益な特徴を有する、ハイブリッド植物、植物材料、及び種子を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた味覚特性と相まって、種子の生長力や耐寒性、苗の出芽および植物の生育のような生産特性ならびに消費者特性を極めて有利に強化した植物、植物材料および種子を提供する独自の方法、ならびに、このような方法により提供され、上述のような特性を有する改良植物、改良植物材料、及び改良種子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(トウモロコシ)
コーン(トウモロコシ,Zea mays)は、自然界にある最も多様な穀類のうちの1種である。コーンには多くの異なるタイプがあり、通常、穀粒胚乳の特徴によって分類される。コーンで最も一般的なタイプには、フリント種、フラワー種、デント種、ポップ種、スウィート種およびポッド種などがある。各種穀粒の外観は、穀粒自体の胚乳の形態、質および量によって決定される。
【0003】
スイートコーンはZea mays, var. rugosaとして分類されるコーン植物の一種であって、白、黄またはバイカラーの穀粒を有し、これらが未成熟の乳状段階であるときには糖の含量が高いため、非常に甘い。スイートコーン穀粒の糖水準高いほど、浸透ポテンシャルが低く、穀粒がより多くの水分を取り込む。概して、スイートコーンはトウモロコシの穂軸から直接に、または穂軸から甘い穀粒を採取して、野菜として、人間の食用とされる。また、動物飼料または粉末として生産するというよりは、主に生食用として世界中で栽培される、主要な野菜作物である。
【0004】
スイートコーンは、飼料用コーンの自発変異体として生じ、コーン穀粒の胚乳内部の糖の澱粉への転換を制御する遺伝子の自然変異によって生じうる。一般的に穀粒が乾燥および完熟する(デント段階)ときに収穫する家畜飼料用コーン品種と異なり、スイートコーンは一般的に未発達(ミルク段階)のときに採集され、穀物としてというよりは野菜として食用とされる。成熟の過程は糖を澱粉に転換させることを伴うので、スイートコーンは一般的に保存に適さず、穀粒が硬くなる前、および/または澱粉質になる前に、生食、缶詰、または冷凍で食用とすることができる。収穫後、または茎上に非常に長く残しておいた場合、一般的なスイートコーンのショ糖は急速に澱粉に転換する。穀粒は、収穫後室温に24時間程度おくと、ショ糖を50%程度失うおそれがある。
【0005】
開放授粉した(非ハイブリッド)ホワイトスイートコーンの品種は、19世紀の米国において広く流通し始めた。今日においても依然として入手可能な最も永続的な品種のうちの2品種は、Country Gentleman(不規則な列の小さく白い穀粒を有するシューペグ(Shoepeg)コーン)およびStowell's Evergreenである。20世紀のスイートコーン生産は、以下に示す重要な開発の影響を受けている。
(i) より均質な成熟、ならびに、品質および耐病性の改善を可能にしたハイブリダイゼーション
(ii)これらの特性に基づく、コーンの甘さと、品種作出の能力とに関与する別個の遺伝子変異(以下に例示する)の同定
・su(normal sugary)
・se(sugary enhanced)
・sh2(shrunken-2)
多くの品種の連続的な開発により、現在、スイートコーンには何百もの品種がある
【0006】
スイートコーン植物の果実はコーン穀粒であり、穂先は穂軸上のひとまとまりの穀粒から成る。コーンが単子葉植物であるので、常に偶数の穀粒列がある。穂先は、葉(外皮)に堅く包まれている。
【0007】
スイートコーンは、抗酸化活性が非常に高く、心疾患および/または癌の進行のおそれを低減することができる。さらに、スイートコーンは、フェルラ酸含有率を増加させて、更なる健康効果をもたらす。
【0008】
様々なタイプのスイートコーンに関与するいくつかの既知の遺伝子変異がある。初期の品種は、変異su1(sugary-1)対立遺伝子に起因するものであった。従来のsu1品種は、約5〜10重量%の糖質を含む。
【0009】
shrunken-2(sh2)遺伝子を含むスイートコーンの品種は、典型的には、糖質含有率が正常レベルより高く、且つ、従来のスイートコーンと比較してより長い貯蔵寿命を有し、しばしばスーパースイート種と称される。スイートコーンにおけるひとつの特異的な遺伝子、shrunken-2(sh2)遺伝子は、乳状段階を超えて穀粒を成熟させることで、成熟したコーン穀粒を乾燥させて縮ませ、苗発芽、早期の出芽、および植物の成長に望ましくない特性をもたらすものである。従来のsh2スイートコーン穀粒の胚乳は、従来のsu1スイートコーンより貯蔵澱粉量が少ないが、貯蔵糖質量は約4倍〜約10倍多い。このことは、スイートコーンの長距離輸送を可能にすると共に、製造業者が、糖または塩を追加することなくスイートコーンを缶詰めにできるようにした。
【0010】
第3の遺伝子変異はse1(sugary enhanced-1)対立遺伝子である。それはEverlasting Heritage種のゲノムに組み込まれている。se1対立遺伝子を有する従来のスイートコーン品種は、概して、貯蔵寿命が比較的長く、糖含有率が約12%〜約20%である(すなわち、従来のsu1品種と比較すると糖含有率が非常に高い)。
【0011】
スイートコーンに関与する対立遺伝子は全て劣性であるので、通常、スイートコーンは、同時に花粉を放出するあらゆる飼料用コーン品種から隔離されなければならない。胚乳は両親(雌性および雄性)由来の遺伝子から発現し、穀粒は通常堅く、澱粉質である。
【0012】
トウモロコシは、まず、その胚乳に貯蔵される炭水化物に従って分類された。スイートコーンに存在する最も識別可能な糖成分はショ糖であり、それはその甘さによる差別化の非常に大きな要因である。(Abbott and Cobb社, Plant Protection No. 9600094 (1998).) 遊離還元糖(ブドウ糖およびフルクトース)は、スイートコーン中に極少量存在する。これらの還元糖は主にショ糖の自然加水分解により生じる。
【0013】
現在商業的に使用されている、トウモロコシ(および他の作物植物)の胚乳変異遺伝子の多くを下記の表1に一覧で示す。これらの胚乳変異は、全て、穀粒の発育中の澱粉合成に影響を及ぼすと考えられており、トウモロコシについて、特徴づけられ、染色体上でマッピングされた。
【0014】
【表1】

表1に示す胚乳変異体の中で、商業的に最も広く使われている変異体は、se1およびsh2である。
【0015】
(Su1(Sugary-1)変異遺伝子)
スイートコーンに存在する劣性のsugary-1(su1)の遺伝子型は、胚乳発達の間、糖から澱粉への通常の転換を遅らせる(有意に減速する)効果を有し、澱粉の味よりも、極めて望ましい甘味をもたらす。この遺伝子は、クローニングされスイートコーンの染色体4の短腕にマッピングされた。そのゲノム配列およびアミノ酸配列翻訳は、「Isolation of the SU1 starch debranching enzyme, the product of the maize gene sugary 1」という表題の特許文献1および本願明細書に記載されている。
【0016】
sugary(su1)遺伝子は、細胞プラスチド中で活性のクラスII澱粉脱分枝酵素をコードする。それは澱粉合成中に澱粉のα-(l,6)分岐結合を加水分解するイソアミラーゼである。(非特許文献1)
【0017】
sugary(su1)遺伝子は、コーン穀粒全体の糖水準をやや増加させるが、不都合なことに、「スーパースイート」コーン品種の総糖含量の約半分に過ぎず、コーンの消費者には著しく不十分である。さらに、不都合なことに、コーン穀粒中での糖から澱粉への転化が比較的早いため、食用に最適な段階(穀粒水分約75%)に達した後から、コーン穀粒の甘味が劣化する前まで、収穫適期を狭めてしまう。
【0018】
sugary(su1)の遺伝子は、その名前に反して、通常非常に高い糖水準をもたらすものではない。しかしながら、それは通常、フィトグリコーゲンまたは水溶性多糖(WSP)のレベルを著しく上昇させる。(非特許文献2)フィトグリコーゲンおよびWSPによって、通常のsu1スイートコーン品種の穀粒の胚乳に、従来のスイートコーン品種の滑らかな質感およびクリーミーな特徴が得られる。非変異コーンの成熟した胚乳は、一般にほぼ2%のWSPを含有するが、sugary(su1)遺伝子のホモ接合のコーン系統は最高で約35%のWSPを含有し得る。
【0019】
劣性のsugary-1(su1)遺伝子についての付加的情報は、非特許文献3および非特許文献4に記載される。
【0020】
(Se1(Sugary Enhancer-1)変異遺伝子)
sugary enhancer(se1)変異遺伝子は、sugary-1(su1)遺伝子変異体の劣性の変更遺伝子である。(非特許文献5)ホモ接合の際、sugary enhancer(se1)対立遺伝子は、従来のsugary-1(su1)品種のコーン穀粒中の総糖を、shrunken-2(sh2)品種コーン穀粒と同等の水準に増大させ、また、フィトグリコーゲン含量を減少させることがない。
【0021】
sugary enhancer(se1)遺伝子は、コーン穀粒の総糖量の上昇、色の明化、および乾燥劣化を遅らせる等の効果があり、これらの効果は、IL1677aと称される近交のコーン系統に当初から表れていた。これらの効果が、sugary enhancer(se1)遺伝子によるものであるということは後になってから判明した。(非特許文献6)
【0022】
sugary enhancer(se1)遺伝子により、収穫後の期間のスイートコーン穀粒の含水量が
比較的高くなるとともに、フィトグリコーゲンについても比較的高水準に維持される。この遺伝子の更なる利点は、穀粒皮率が減少し、コーン穀粒が柔らかくなり、および糖マルトースレベルが上昇することである。(非特許文献7)
【0023】
sugary enhancer(se1)遺伝子およびsugary(su1)遺伝子が両方劣性の場合、sugary(su1)遺伝子変異コーン穀粒と比較すると、sugary enhancer(se1)遺伝子は、収穫ピークの成熟したコーン穀粒に約1.5から約2倍のショ糖を非常に有利に含有させる。
【0024】
sugary enhancer(se1)遺伝子座は、スイートコーンの染色体2の長腕に位置している。sugary enhancer(se1)遺伝子と同一とみなし得る変異株は、近年、検討され、明らかとされている。
【0025】
科学者達は、近年、sugary enhancer(se1)遺伝子の遺伝形質を特定する上での明らかな困難に直面している。このような困難は、一つには、さらに困難なコンコミタント表現型測定法(concomitant phenotypic measurement)に起因すると考えられている。
【0026】
sugary enhancer(se1)遺伝子の酵素の基礎(enzymatic basis)は、現在解明されておらず、sugary enhancer(se1)遺伝子のヌクレオチド配列は、現在解明されておらず、トウモロコシの遺伝学および遺伝子データベース、またはGenBankデータベースにない。しかしながら、本願明細書に記載のように、sugary enhancer(se1)遺伝子の遺伝は、第2染色体上の、以下に示す隣接する分子マーカーによって当業者によって決定され得る。このような決定手法は、他の変異遺伝子についても適用可能である。
【0027】
sugary enhancer-1(se1)遺伝子についての更なる情報は、非特許文献7および8に記載されている。
【0028】
(Sh2(Shrunken-2)変異遺伝子)
1953年に、変異体である劣性shrunken-2(sh2)遺伝子はスイートコーン産業にて応用できることが示唆された。(非特許文献9) それ以来、高糖含量コーンとshrunken-2 (sh2)遺伝子に関連する非常に多くの調査が行われている。shrunken-2 (sh2)遺伝子は、スイートコーンの第3染色体の長腕に位置し、クラスI酵素であるADP-グルコースピロホスホリラーゼ(AGP)の大サブユニットをコードする。この酵素は、ショ糖から澱粉への転換経路において重要である。
【0029】
従来の、shrunken-2 (sh2)種のスイートコーン(スーパースイートと称される)は、米国の商業コーン市場の大半を占める。成熟し乾燥したshrunken-2(sh2)種コーン穀粒は、従来のsugary-1(su1)品種コーン穀粒と比較すると、総糖含有率がおよそ2倍、澱粉濃度がおよそ1/3〜1/2であり、且つ、フィトグリコーゲンの含有率がごく微量である。Shrunken-2(sh2)タイプのスイートコーンは、一般に、成熟ピーク時に総炭水化物量が激減し、従来のsugary-1(su1)変異スイートコーンと比較するとおよそ2倍以上のショ糖を含有する。更に、これらのスイートコーンにおいて、食用に最適な段階の後(すなわち、食用に最適な段階直後の一定期間)の糖保持率は、概して、従来のsugary-1(su1)およびsugary enhancer-1(se1)変異スイートコーンと比較して非常に良好である。
【0030】
コーンの遺伝子構造は、shrunken-2(sh2)遺伝子を含むことにより、コーンの甘さが増大するという有利な効果を奏すること判明している。しかしながら、コーンの遺伝子構造にこの遺伝子を含むことにより、非常に不利益なことにコーンの水溶性多糖含量を低下させ、胚乳含量を減らし、そして、澱粉含量(およびこれに付随するエネルギー量)を低下させることが明らかになった。不都合にも、従来のコーンのshrunken-2(sh2)品種の水溶性多糖がかように減少すると、概して、従来のsugary-1(su1)およびsugary enhancer-1(se1)変異コーン品種のなめらかでクリーミーな質感が欠如する。(非特許文献5) また、非常に不都合にも、澱粉含量が減少し、付随してエネルギーが減少した結果、従来のsugary-1(su1)およびsugary enhancer-1(se1)のスイートコーン品種と比較すると、従来のコーンのshrunken-2(sh2)種は、発芽、土壌からの出芽、植物の発育、及び成長過程における、苗の活力、適応性、健全性に著しく乏しい。その結果、コーン植物は、軽く、貧弱で細長い外観を呈し、容易に損傷するものとなり、環境または他のストレスに直面した場合に大抵すぐに枯れてしまい、コーン農家は、全てのコーン作物を失い、そして、これらの作物からの期待所得を失うおそれがある。スイートコーンのshrunken-2(sh2)種は、概して、乾燥種子状態(段階)で顕著に押しつぶされた穀粒のような外観を呈し、この乾燥種子の「しぼんだ(shrunken)」外観および対応して減少している穀粒の澱粉蓄えにより、苗の出芽および栽植時期または生育中の生長力が比較的減弱する傾向がある。概して、正確に種を蒔き、立毛を形成することは、更に非常に難しい。かかる種子の発芽は、近交種の作出及びハイブリッドの立毛の両方で問題となるおそれがある。
【0031】
生長力および発芽を改善するために、デントコーン(飼料用コーンの種)は、shrunken-2 (sh2)遺伝子の遺伝的バックグラウンドとして使用されてきた。しかしながら、優性デントコーン遺伝子は、飼料用コーンおよびスイートコーンからハイブリッドを遺伝的隔離せざるを得ず、および、すべての外来の花粉は全てのコーン穀粒をデントコーンの特性にするおそれがある。
【0032】
(ショ糖率、糖保持能力および果皮率の比較)
最も食用に適した段階、すなわち、7日間の、sugary-1(su1)遺伝子、sugary enhancer-1(se1)遺伝子またはshrunken-2(sh2)の遺伝子を含有している従来のスイートコーン品種のショ糖量、糖保持(貯留)能力、果皮率および果皮率の変化の比較を、それぞれ図1-4に示す。(Abbott and Cobb社, Plant Protection No. 9600094 (1998).)
【0033】
図1は、最も食用に適した段階(含水率約75%)での従来のsugary-1(su1)、sugary enhancer-1(se1)およびshrunken-2(sh2)遺伝子変異系統の典型的な胚乳ショ糖率の一般化比較を示す図である。図1は、sugary-1(su1)の系統がショ糖(約7.5%)で最も低い水準を有し、次にsugary enhancer-1(se1)系統(約12.5%)、そして次にその他の2つの系統に比べて非常に高いショ糖量を有するshrunken-2(sh2)系統(約27.5%)が続くことを示す。
【0034】
図2は、最も食用に適した段階(含水率約75%)の従来のsugary-1(su1)、sugary enhancer-1 (se1)およびshrunken-2(sh2)遺伝子変異系統の7日間(1日目〜7日目)にわたる、室温での相対的胚乳糖貯留つまり「保持能力」を示す。3つの異なる遺伝子タイプの胚乳ショ糖率の代表的な経時的変化を示す。図2は、7日間の間、sugary-1(su1)系統のショ糖率が常に最低であり(1日目の約4%から、7日目の約1%の範囲)、次いでsugary enhancer-1(se1)系統(1日目の約12%から、7日目の約2%の範囲)、さらに、shrunken-2(sh2)系統が続く。shrunken-2(sh2)系統は、他の2つの系統と比較すると1日目〜7日目のそれぞれで(1日目の約25%から、7日目の約13%の範囲)ショ糖率が非常に高い。
【0035】
図3は、従来のsugary-1(su1)、sugary enhancer-1(se1)およびshrunken-2(sh2)遺伝子変異系統の最も食用に適した段階(含水率約75%)での典型的な果皮率の比較を示す。sugary enhancer-1(se1)系統は果皮率(約0.75%)が最も低く、次にsugary-1(su1)系統(約1.1%)が続き、そしてその他の2つの系統と比較すると非常に高い果皮率(約1.6%)を有するshrunken-2(sh2)系統が続くことを示す。
【0036】
図4は、従来のsugary-1(su1)、sugary enhancer-1(se1)およびshrunken-2 (sh2)遺伝子変異系統の最も食用に適した段階(含水率約75%)での7日間(1日目〜7日目)にわたる室温の相対果皮率を示す。3つの異なる遺伝子型の系統のの果皮率の典型的な経時的変化を示す。図4は、shrunken-2 (sh2)系統は、7日間の間、概して果皮率が最低であり(1日目の約1.6%から、 7日目の約2.1%までの範囲)、次にsugary enhancer-1(se1)系統(1日目の約1.1%から、7日目の約4.9%までの範囲)およびsugary-1(su1)の系統(1日目の約1.7%から7日目の約4.9%までの範囲)が続くことを示す。
【0037】
糖含有率が比較的の高いタイプのコーン、すなわちsugary enhancer-1(se1)およびshrunken-2(sh2)品種の主要な利点は(i)比較的甘味が強く、(ii)収穫適期が比較的長く、及び(iii)貯蔵寿命が比較的長いことである。初期の糖含有率が比較的高く、収穫時または最も食用に適した段階直後一定期間内の糖の減少が比較的緩やかであるため、収穫および取り扱い条件がより柔軟になり、貯蔵寿命がより長くなる。
【0038】
(Sh2-i(Shrunken-2i)変異遺伝子)
特許文献2は、shrunken-2i(sh2-i)として指定された、shrunken-2(sh2)遺伝子の変異型の同定およびキャラクタリゼーションを記載する。この変異対立遺伝子(およびその変異株)は、トウモロコシ植物内に存在するとき、sh2-R遺伝子を発現するトウモロコシ植物と比較して、発芽特性を強化できることが判明した。本願発明は、この変異対立遺伝子(および変異株)によって植物を形質転換する方法およびそれらのゲノムに組み込まれるこの変異対立遺伝子を有する植物に関するものである。
【0039】
ADP-グルコースピロホスホリラーゼは、トウモロコシ胚乳酵素であり、澱粉の合成に重要な酵素であり、ATPおよびα-グルコース−1−リン酸をADPグルコースおよびピロリン酸へ転換する触媒作用を有する。この酵素の作用に起因するADP-グルコースは、植物の澱粉生合成のためのブドウ糖の主要な供給源である。AGP酵素は、光合成植物および非光合成組織から単離された、2つの異なるサブユニットを含有するヘテロテトラマである。
【0040】
トウモロコシ胚乳ADP-グルコースピロホスホリラーゼは、2つの非連鎖遺伝子shrunken-2(sh2)およびbrittle-2(bt2)によってコードされる2つの異なるサブユニットから成る。(非特許文献10、11) これらの遺伝子はこの酵素の大サブユニットおよび小サブユニットをそれぞれコードする。shrunken-2遺伝子によって作製されるタンパク質の推定分子量は、57,179Daである。(非特許文献12)
【0041】
shrunken-2(sh2)およびbrittle-2(bt2)トウモロコシ胚乳変異体は、概して、澱粉含有率が非常に低く、これに対応してAGP活性レベルも低減、または欠損している。いずれかの遺伝子変異体では、AGP活性が約95%まで減少した(非特許文献13及び14) 。変異酵素は、一般に、反応速度特性が異なり、その酵素活性は機能的野生型shrunken-2(sh2)およびbrittle-2(bt2)対立遺伝子の数に応じて増大すると認められた。AGPは植物の澱粉生合成の律速段階であると考えられている(非特許文献15)。
【0042】
AGP酵素サブユニットをコードしている遺伝子のクローニングおよびキャラクタリゼーションは、様々な植物について報告されており、トウモロコシ由来のshrunken-2(sh2)cDNA、shrunken-2(sh2)のゲノムDNA、およびbrittle-2(bt2)cDNA、米由来の小サブユニットcDNAおよびゲノムDNA、ホウレンソウの葉由来の小および大サブユニットcDNA、およびジャガイモ塊茎を含む。加えて、cDNAクローンが小麦胚乳および葉組織並びにシロイヌナズナ葉から単離されている。
【0043】
遺伝子スプライシングは、基本的には2段階の切断-結合反応であり、遺伝子、例えば野生型shrunken-2(sh2)遺伝子に分子傷害もたらしうる。第一段階にて、5'スプライス部位で切断が起こり、3'スプライス部位の上流に位置するブランチポイント配列のアデノシン残基によって投げ縄状のイントロンが形成される。この後、エキソンが連結され、投げ縄状のイントロンが放出される(非特許文献16、非特許文献17、非特許文献18、非特許文献19、非特許文献20、非特許文献21)。このような、一連の現象は、pre-mRNAと、核内低分子RNA(snRNA)およびリボヌクレオソームタンパク質複合体(スプライセオソーム)を構成する核タンパク質の集合体とによって実行される。このような、基本的な過程は、全ての真核細胞での遺伝子発現に共通するものであり、遺伝子発現の制御に多様な影響を及ぼし得る。例えば、選択的スプライシングは遺伝子発現の制御において重要であることもあるが、不正確または誤ったpre-mRNAスプライシングによって、突然変異表現型が生じることもある(非特許文献22、非特許文献23、非特許文献24、非特許文献25)脊椎動物のイントロンおよび酵母イントロンから植物イントロンを区別できる構造的な/配列相違がある。(非特許文献26、非特許文献27) 。他の生物のイントロンと、植物イントロンとを明確に区別する1つの特徴は、AUが多いことである。このことは、イントロンのプロセシングや、イントロン/エキソン接合の定義づけのために重要であることがこれまでに示されている(非特許文献28、非特許文献29、非特許文献30)。より厳密には、AUが多い領域は単子葉植物よりも双子葉植物において必須であり、単子葉植物イントロンにはGCが多いものがある。
【0044】
野生型shrunken-2(sh2)遺伝子すなわち配列番号1に示すヌクレオチド配列は、16のエキソンを有し、つまり図5に示されているように15のイントロンによって分離される。この遺伝子の長さは、およそ6000塩基対であると推定される。1つのイントロンは特にsh2-i対立遺伝子に重要である。「イントロン2」と称されるこのイントロンは、sh2-i遺伝子の少なくとも約7,800塩基対を含有する。
【0045】
図5および図9に示すように、野生型shrunken-2(sh2)遺伝子と比較すると、変異shrunken-2i(sh2-i)遺伝子はイントロン2末端での1塩基対の変化によって特徴づけられる。変異ポリヌクレオチドは、イントロン2の終端の野生型末端塩基が、Gから他の塩基、例えばA、CまたはT(野生型のGヌクレオチドでない)へ、好ましくはAへ置換されている。例えば、トウモロコシのshrunken-2遺伝子が、このイントロンの末端ヌクレオチドがGからAに置換された変異を有する場合、結果的に、この植物遺伝子イントロンの末端にみられるAGヌクレオチド配列は、このイントロンの3'末端のAA配列に変化する。言い換えると、結果的に、トウモロコシsh2遺伝子のイントロン2の末端塩基がGからAへ変異し、sh2-i対立遺伝子の分子傷害を引き起こす。
【0046】
変異sh2-i対立遺伝子(およびその変異株)が植物(例えばトウモロコシ)で発現した場合、例えば、発芽並びに苗、種子および/または植物生長力のような繁殖特性が向上し、これに相まって、例えば甘味などの望ましい消費者特性を有する植物となる。
【0047】
変異sh2-i対立遺伝子を含有しているインブレッドスイートコーン系統は、最も食用に適した段階(含水率約75%)で、対応する従来のshrunken-2(sh2)と同様の甘味および糖水準を一般的に示す。しかしなから、最も食用に適した段階をちょうど過ぎた時点で、変異sh2-iインブレッド植物系統は、急速に澱粉合成を加速し始める。この結果、対応するshrunken-2(sh2)よりも、非常に丸々とし外観で、重く、そして、改良したフリントコーン種子の外観にいくらか似ている、乾燥種子表現型となる。最終的に、植物成長特性が強化されたことに伴って、種子および苗の発芽および生長力、ならびに植物生長力が全体的に強化される。このようにして、発芽が改善され、植物成長が加速されることで、直接的に、品種の潜在収量及び収量安定性につながる。
【0048】
本発明の発明者らによる、研究室での低温土壌発芽試験にて、従来のshrunken-2(sh2)のハイブリッドトウモロコシの品種と、shrunken-2i(sh2-i)遺伝子を発現するトウモロコシ品種とを比較したところ、sh2-iハイブリッドの方が大幅に高いスコアを示した。以下に示す表2は、ACX 5137Y(sh2-i対立遺伝子を発現しない)およびACX SS 7501Y(sh2-i対立遺伝子を発現する)として表わされる準同質遺伝子系統(NIL)のコーンハイブリッドの、研究室での低温土壌発芽スコアを示すものである。これらは、基本的に、sh2-i対立遺伝子の有無だけが異なる、2つのトウモロコシハイブリッドを比較したものである。スコアは、各々100穀粒についての反復試験の平均値を示す。
【0049】
【表2】

【0050】
sh2-i対立遺伝子を含有する、または含有しない従来のshrunken-2(sh2)ハイブリッド間の、多くの他のハイブリッド比較について、類似の研究室結果が得られている。加えて、フロリダおよびカリフォルニアにおけるフィールドでの発芽および立毛形成についてのデータは、研究室データを実証した。
【0051】
しかしながら、準同質遺伝子系統(NIL)の多数のコーンハイブリッド(sh2-i対立遺伝子を含有する、又は含有しない、従来のshrunken-2(sh2)ハイブリッドの戻し交雑による形質転換種)の官能試験では、不利なことに、概して、sh2-iハイブリッドについて、最も食用に適した段階直後に急速に澱粉含有率が上昇したことを示す甘味評価スコアが得られた。sh2-iハイブリッドは、最も食用に適した段階直後約24〜約48時間以内に甘味の減少を示し、最も食用に適した段階の3日目後には多くの糖の劣化および損失を示した。
【0052】
図6は、最も食用に適した段階(含水率約75%)直後1日〜7日経過時の、変異shrunken-2i(sh2-i)対立遺伝子を含有しない従来のshrunken-2(sh2)ハイブリッド準同質遺伝子系統(NIL)の澱粉蓄積の官能平均値について、変異shrunken-2i(sh2-i)対立遺伝子を含有する従来のshrunken-2(sh2)ハイブリッドの対応する準同質遺伝子系統(NIL)の澱粉蓄積の官能平均値と比較して示す。官能スコアは、1(ほとんど澱粉風味が無く甘い)から、10(相当な澱粉風味が有り、ほとんど甘味がない)の範囲である。図6は、変異shrunken-2i(sh2-i)対立遺伝子を含有しないshrunken-2(sh2)ハイブリッド準同質遺伝子系統(NIL)は、変異shrunken-2i(sh2-i)対立遺伝子を含有する従来のshrunken-2(sh2)ハイブリッドに対応する準同質遺伝子系統(NIL)(1日目の約1.9から7日目の約7.9の範囲)と比較して、非常に低い官能スコア(1日目の約1から7日目の約4の範囲)を有することを示す。
【0053】
要するに、従来のスイートコーン品種にshrunken-2i(sh2-i)対立遺伝子を組み込むことは、最も食用に適した段階直後の一定期間の澱粉の急速な蓄積することや、これに関連して貯留性能および貯蔵寿命が損なわれることに鑑みると、非実用的であると考えられる。
【0054】
(他の技術の説明)
特許文献3は、商業的な量のハイブリッドスイートコーン種子を作製するために規定された方法、水溶性多糖含量を大幅に減らすことなくスイートコーンの糖含量を増大させるように規定された方法、そして、最少量の甘味料の添加により加工可能なスイートコーンをもたらす種子を作製するために規定された方法を記載する。それは、shrunken-2(sh2)遺伝子を用いて、水溶性多糖を大幅に減らさずにスイートコーンの糖含量を増大可能であること、およびインブレッドスイートコーン(ホモ接合のsu1sh2)とホモ接合のsugary-1(su1)インブレッド種であるスイートコーンを組み合わせることで、およそ50%多いショ糖と、33%多い総糖を含み、さらに、スイートコーン(ホモ接合のsu1)に近い水溶性多糖類の含有率を有するヘテロ接合のハイブリッドをもたらすことを記載している。高い水溶性多糖およびショ糖水準は、特に、例えば缶詰および冷凍産業などの食品加工産業において望ましいとされている。
【0055】
特許文献4および特許文献5は、Sh2-m1Rev6と表されるトウモロコシ遺伝子shrunken-2(sh2)の変異遺伝子と、その遺伝子を使用する方法を記載する。Sh2-m1Rev6は、タンパク質のアロステリックな結合部位中またはその近くに追加のアミノ酸が挿入されているADP-グルコースピロホスホリラーゼ(AGP)酵素のサブユニットをコードするとされている。Sh2-m1Rev6遺伝子を発現するコーン種子は、野生型種子よりも重量15%が増加し、この種子重量の増加は、種子の澱粉含量率の増加と全く関連しないとされている。
【0056】
特許文献6は、作物種に生産力を与える対立遺伝子に関連するとされる遺伝マーカーを特定する方法を記載する。特許文献6によれば、現在の選り抜きの系統のセットと、数十年間に渡る植物育種の過程で、それらを派生させた祖先の個体群の遺伝マーカー分析を行うことによって、選り抜きの個体の多数の多形性遺伝子座で、予測及び観察された対立遺伝子頻度を決定および比較できると記載されている。
【0057】
特許文献1は、トウモロコシ(Zea mays)胚乳において活性なsugary(su1)遺伝子によってコードされる澱粉脱分枝酵素、そしてこの酵素をコードするcDNAおよび遺伝子配列を記載する。その酵素のアミノ酸配列は、α-(1→6)グリコシド結合を加水分解する酵素、細菌イソアミラーゼのアミノ酸配列と非常に類似であるとされている。特許文献1では、su1のアミノ酸配列類似性によって、澱粉加水分解酵素のα-アミラーゼスーパーファミリーの一員として規定するとしている。さらに、特許文献1は、su1タンパク質に反応性がある抗体、su1タンパク質に対する抗体を作製する方法、su1を含む融合タンパク質を作製する方法および修飾su1遺伝子を有する遺伝形質転換植物を作製する方法を開示する。
【0058】
特許文献6は、植物のAGP-グルコースピロホスホリラーゼの大サブユニットをコードする遺伝子の変異対立遺伝子、変異対立遺伝子によって植物を形質転換させる方法、およびゲノムに組み込まれた変異対立遺伝子を有する植物を記載する。変異対立遺伝子は、トウモロコシ植物内にある場合、sh2-R遺伝子を発現する植物よりも良好な発芽特性を植物に与えるとされている。
【0059】
特許文献7は、植物の果実サイズおよび/または細胞分裂を制御するとされている核酸分子の単離および同定、およびこの核酸分子によってコードされるタンパク質を記載する。特許文献7は、また、コードしている核酸を含有する発現ベクターと、この核酸分子によって植物を形質転換することによって、果実サイズを小さく/大きくし、細胞分裂を制御するとされる方法と、を記載する。それはまた、この核酸分子を含有する宿主細胞、遺伝形質転換植物および植物種子についても検討している。
【0060】
特許文献8は、親の系統の一群、例えばハイブリッド植物系統の生産に望ましい能力の組合せを有する、親インブレッド植物系統(特定の遺伝的背景を有する)を選ぶ方法を記載する。特許文献8では、このような親インブレッド植物系統を、交雑実験における「優れたコンバイナ(excellent combiner)」と称する。このような親インブレッド植物系統と、他の親インブレッド植物系統(異なる遺伝的背景を有する)とを掛け合わせると、2つの親インブレッド植物系統は、高いヘテロシス効果を有するハイブリッド植物系統を生じ得るとされ、掛け合わせ、選抜したインブレッド系統は収集され、ハイブリッド植物を得るために随意に作付および栽培される。特許文献8は、コントロール条件およびストレス条件下でのミトコンドリア内の電子フローをin vitroで測定することによって、前述のハイブリッドを含む様々な植物系統の農業生産力を測定する方法も記載する。特許文献8は、同じ種(品種)由来の一群の植物系統から、生長力および生産力が最高のハイブリッド(またはその他の)植物系統を選択する方法を提供するという目的を記載する。特許文献8は、生長力の点で影響を受ける植物系統を特定するために使用可能であるとされる、生長力アッセイ(vigor assay)について記載及び例示する(図1)。
【0061】
非特許文献31では、変異対立遺伝子sh2-iおよびsh2-N2340(Maize Stock Center(Urbana/Champaign, IL)から公的に入手可能である)をEMS変異誘発によって作製し、中間表現型または漏出表現型を調整した。また、非特許文献1によれば、sh2-R参照対立遺伝子と比較して、sh2-iおよびsh2-N2340穀粒は見た目上類似しており、同じ供給源に由来し、および、成熟時にはそれほど押しつぶされた形状とはならない。非特許文献1によれば、シークエンシングによって、sh2-iは、イントロン2の3-末端におけるGからAへ変異を包含し(Lal et al., Plant Physiol. 120:65-72, 1999)、およびsh2-i転写産物のおよそ10%は、変異体のイントロンスプライス部位を利用して正しくスプライシングされ、中間穀粒表現型をもたらすアデノシン二リン酸グルコースピロホスホリラーゼ活性を低水準とすることが明らかになった。非特許文献1によれば、対立遺伝子sh2-iおよびsh2-N2340が同じ変異を含むか否か判定するため、若いシュート材料を、発芽させたsh2-N2340穀粒から取得し、Plant DNAZOL Reagent(Invitrogen, Carlsbad, CA)を使用してゲノムDNAを調製し、およびエキソン1から4にわたるDNAをLalらによって記載されているプライマーを使用したPCRによって増幅した。非特許文献1には、PCR産物のシークエンシングによって、sh2-iおよびsh2-N2340は共に、イントロン2の最終ヌクレオチドにおけるGからAへの変異を包含していることが判明したので、同じ変異体に2つの異なる意味がある(すなわち、同じ変異対立遺伝子に2つの異なる名前がある)と思われると記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0062】
【特許文献1】米国特許第5,912,413号明細書
【特許文献2】米国特許第6,184,438号B1明細書
【特許文献3】米国特許第3,971,161号明細書
【特許文献4】米国特許第5,589,618号明細書
【特許文献5】米国特許第5,650,557号明細書
【特許文献6】米国特許第5,746,023号明細書
【特許文献7】米国特許第6,756,524号B2明細書
【特許文献8】米国特許第7,084,320号B2明細書
【非特許文献】
【0063】
【非特許文献1】JA Shultz et al., "Current Models for Starch Synthesis and the Sugary Enhancer 1 (se 1) Mutation in Zea maysi," Plant Physiology and Biochemistry 42(6), 457-464 (2004).
【非特許文献2】W.F. Tracey, In A.R. Hellauer (ED) Specialty Corns (CRC Press, Boca Raton, Florida) 147-187 (1994).
【非特許文献3】M.G. James et al., "Characterization of the Maize Gene Sugary-1, a Determinant of Starch Composition in Kernels," The Plant Cell, Vol. 7, 417-429 (1995)
【非特許文献4】D. Pan et al., "A Debranching Enzyme Deficiency in Endosperms of the Sugary-1 Mutants of Maize," Plant Physiol. 74(2), 324-328 (1984)
【非特許文献5】JA Shultz et al., "Current Models for Starch Synthesis and the Sugary Enhancer 1 (se 1) Mutation in Zea mays," supra.
【非特許文献6】RA Brink, "Identity and Sources of a Sugary Enhancer Gene Located on the Long Arm of Chromosome 4 in Maize," J. Heredity 82, 176 (1991).
【非特許文献7】JE Ferguson et al., "Genetics of Sugary Enhancer (Se), an Independent Modifier of Sweet Corn (Su)," J. Heredity 69(6), 377-380 (1978).
【非特許文献8】D.R. La Bonteらの"Sugary Enhancer (se) Gene Located on the Long Arm of Chromosome 4 in Maize (Zea mays L.), The Journal of Heredity 82, 176-178 (1991)
【非特許文献9】J.R. Laughnan, "The Effects of sh2 Factor on Carbohydrate Reserves in the Mature Endosperm of Maize," Genetics 38, 485-499 (1953).
【非特許文献10】M. Bhave et al., "Identification and Molecular Characterization of Shrunken-2 cDNA Clones of Maize," The Plant Cell 2:581-588 (1990)
【非特許文献11】J. Bae et al., "Cloning and Characterization of the Brittle-2 Gene of Maize," Maydica 35:317-322 (1990).
【非特許文献12】J. Shaw et al., "Genomic Nucleotide Sequence of a Wild-Type Shrunken-2 Allele of Zea mays" Plant Physiol. 98:1214-1216 (1992).
【非特許文献13】C. Tsai et al., "Starch-Deficient Maize Mutant Lacking Adenosine Diphosphate Glucose Pyrophosphorylase Activity," Science 151:341-343 (1966);
【非特許文献14】D. Dickinson et al., "Presence of ADP-Glucose Pyrophosphorylase in Shrunken-2 and Brittle-2 Mutants of Maize Endosperm," Plant Physiol. 44:1058-1062 (1969).
【非特許文献15】D. Stark et al., "Regulation of the Amount of Starch in Plant Tissues by ADP Glucose Pyrophosphorylase," Science 258:287-292 (1992).
【非特許文献16】M.J. Moore et al., "Evidence of Two Active Sites in the Spliceosome Provided by Stereochemistry of Pre-mRNA Splicing," Nature 365:364-368 (1993)
【非特許文献17】M.J. Moore et al., "Splicing of Precursors to mRNAs by the Spliceosome" in The RNA World. 303-308 (R. Gesteland and J. Atkins, eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1993)
【非特許文献18】P.A. Sharp, "Split Genes and RNA Splicing," Cell 77:805-815 (1994)
【非特許文献19】J.W.S. Brown, "Arabidopsis Intron Mutations and Pre-mRNA Splicing," Plant J. 10(5): 771-780 (1996)
【非特許文献20】G.G. Simpson et al., "Mutation of Putative Branchpoint Consensus Sequences in Plant Introns Reduces Splicing Efficiency," Plant J. 9(3): 369-380 (1996)
【非特許文献21】; G.G. Simpson et al., "Splicing of Precursors to mRNA in Higher Plants: Mechanism, Regulation and Sub-nuclear Organization of the Spliceosomal Machinery," Plant Mol. Biol. 32:1-41 (1996).
【非特許文献22】C.F. Weil et al., "The Effects of Plant Transposable Element Insertion on Transcription Initiation and RNA Processing," Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Mol. Biol. 41:527-552 (1990)
【非特許文献23】R. Nishihama et al., "Possible Involvement of Differential Splicing in Regulation of the Activity of Arabidopsis ANP1 that is Related to Mitogen-Activated Protein Kinase Kinase Kinases (MAPKKKs)," Plant J. 12(1): 39-48 (1997)
【非特許文献24】M. Golovkin et al., "Structure and Expression of a Plant U1 snRNP 70K Gene: Alternative Splicing of U1 snRNP 70K Pre-mRNAs Produces Two Different Transcripts," Plant Cell 8:1421-1435 (1996)
【非特許文献25】J. Callis et al., "Introns Increase Gene Expression in Cultured Maize Cells," Genes and Development 1: 1183-1200
【非特許文献26】G.J. Goodall et al., "The AU-Rich Sequences Present in the Introns of Plant Nuclear Pre-mRNAs Are Required for Splicing," Cell 58:473-483 (1989)
【非特許文献27】G.J. Goodall et al., "Different Effects of Intron Nucleotide Composition and Secondary Structure on Pre-mRNA Splicing in Monocot and Dicot Plants," EMBO J. 10(9): 2635-2644 (1991).
【非特許文献28】H. Lou et al., "3' Splice Site Selection in Dicot Plant Nuclei is Position Dependent," Mol. Cell. Biol. 13(8): 4485-4493 (1993)
【非特許文献29】A.J. McCullough, "Factors Affecting Authentic 5' Splice Site Selection in Plant Nuclei," Mol. Cell. Biol. 13(3): 1323-1331 (1993)
【非特許文献30】J.C. Carle-Urioste et al., "In Vivo Analysis of Intron Processing using Splicing-Dependent Reporter Gene Assays," Plant Mol. Biol. 26:1785-1795 (1994).
【非特許文献31】M.Clancy, LC Hannah"The Mutations sh2-i and sh2-N2340 Share an Identical Intron Splice Site Mutation and are Most Likely the Same Allele," Maize Genetics Cooperation Newsletter 80 (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0064】
shrunken-2i(sh2-i)、sugary-1(su1)、およびsugary enhancer-1(se1)は、既知であったにも関わらず、現在まで誰も、これらの遺伝子をうまく組み合わせて、最も食用に適した段階後の一定期間中における高糖水準などの望ましい消費者特性を保持する一方、生長力を強化した植物、植物材料および種子を作製することができていなかった。このことは、植物育種家、植物栽培者および消費者の間で不満になっていた。したがって、以前から、産業には未解決の長期にわたる切実な要望があった。その要望とは、従来の対照植物と比較して、乾燥種子の段階でより充実した内容を(すなわちより多くの蓄積エネルギー)を示す種子を有し、種子発芽、土壌からの苗発生および植物発達の間、(従来のsh2-iスイートコーンの様に)強化された生長力をもたらすが、最も食用に適した段階後の一定期間中における高糖水準、植物またはその植物の各部分(種子、果実、野菜、コーン穀粒、コーンの穂先、など)の甘味または望ましい味を維持するような、望ましい消費者特性も保持する、インブレッドおよびハイブリッド植物を商業生産するための、費用効果的で、信頼性があり、効率的で、そして、成功した方法についての要望である。スイートコーンのような植物の、改良された成長特性および味覚特性は、これらの植物の商業生産に重要な前進をもたらす。
【0065】
様々な商業的な植物育種家および栽培者、例えばRogers NK (Boise, ID)およびSyngenta Seeds社(Stanton, MN)は、生産者および消費者の両者が満足する植物品種を得るため、形質をうまく組み合わせることを試行錯誤していた。Rogers NK は、トウモロコシshrunken-2i (sh2-i)対立遺伝子をゲノムに含む1つの商業的なトウモロコシ製品(命名「ブライトン」)を有していたが、この製品の食感品質(味、質感など)が消費者に魅力的ではないことからこの製品は商業的に成功していなかった。
【0066】
更に、上記に参照した文献または本明細書に記載したその他のいずれも、本発明に係るの方法、植物、植物材料または種子を教示または示唆しない。
【課題を解決するための手段】
【0067】
本発明は、ユニークで、費用効果的で、信頼性があり、効率的で、そして、成功した方法であって、これらの製品の消費者にとって、また商業植物栽培者および家庭の園芸家にとっても、多様な、非常に望ましい特性を、非常に有利に付与され、そして有する、スイートコーン穀粒およびスイートコーンなどの植物、植物材料および種子を開発および作製するための方法、並びにこれらの方法に従って作製された改良植物、植物材料および種子を提供する。これらの、本発明による方法は、ゲノムに変異shrunken-2i(sh2-i)対立遺伝子が組み込まれ、一つ以上の他の変異対立遺伝子、例えばsugary-1(su1)、sugary enhancer-1(se1)および/またはshrunken-2(sh2)対立遺伝子などが連続して共に組み込まれ、並びに非常に有益で望ましい多様な特徴を非常に有するハイブリッド植物、植物材料および種子を提供する。これらの特徴には、なめらかでクリーミーな質感、非常に望ましい甘味または他の味覚をもたらす高い糖レベル、最適な食用段階後の長期の糖保持能力(および例えばスイートコーンの甘味のような、この特徴に付随する味覚上の利点)、より長い植物収穫敵期、より長い植物保持能力(スイートコーンの穂先など)、および最も食用に適した段階の後に甘味が劣化する前のより長い植物の保存寿命が挙げられる。さらに、本発明による方法は、乾燥種子の段階で、外観上に比較的ふくらんでいて、比較的高い炭水化物および水溶性多糖類(WSP)含量を有する種子および/若しくは穀粒を提供し、ならびに/または、種子発芽、苗の出芽および植物生育中の植物、植物材料および/若しくは種子に対して、非常に高い生長力および適応性を提供する。
【0068】
1つの態様において、本発明は、従来の変異shrunken-2(sh-2)または変異shrunken-2i(sh2-i)ハイブリッド植物、植物材料または種子と比較すると高い生長力および従来の変異sugary-1(su1)またはshrunken-2i (sh2-i)ハイブリッド植物、植物材料または種子と比較して、その最も食用に適した段階直後の一定期間の高い糖の保持能力を有するハイブリッド植物、植物材料または種子を作製する方法であって、一つ以上の分子マーカーを使用して、植物、植物材料または種子に前述の特徴を与える変異shrunken-2i (sh2i)対立遺伝子および一つ以上の他の変異対立遺伝子を、植物、植物材料または種子のゲノム中に連続して含めることを含む方法を提供する。
【0069】
もうひとつの態様において、従来の変異shrunken-2(sh-2)またはshrunken-2i(sh2-i)ハイブリッド植物、植物、植物材料または種子と比較すると強化された生長力と、従来の変異sugary-1(su1)若しくはshrunken-2i(sh2-i)ハイブリッド植物、植物、植物材料または種子と比較して強化された、その最も食用に適した段階直後の一定期間にわたって糖を保持する能力(または一つ以上の他の望ましい特徴)と、を有するハイブリッド植物、植物、植物材料または種子を作製する方法であって、あらゆる適切な順序で以下のステップを含む方法を提供する。
(a) sugary 1(su1)、sugary enhancer(se1)およびshrunken 2(sh2)変異対立遺伝子を単独に又は組合わせで含むか、またはこれらに限定せず一つ以上の所望の変異対立遺伝子をそのゲノムに含む、インブレッド植物系統を特定する、任意に分子マーカーを使用するステップと、
(b) ゲノム中にshrunken-2i(sh2-i)変異対立遺伝子を有する親植物系統と組み合わせて遺伝的背景として使用するため
(i) Su1Su1 Se1Se1 sh2sh2
(ii) Su1Su1 se1se1 sh2sh2、または
(iii) su1su1 se1se1 sh2sh2(トリプル劣性の組み合わせ)
のトリプル対立遺伝子の組み合わせを含むかまたはこれらに限定されず所望の遺伝子型を有する、一つ以上の準同質遺伝子系統(NIL)を作製するステップと、
(c) 一つ以上の分子マーカーを使用して、shrunken-2i(sh2-i)対立遺伝子を、例えばsu1su1 se1se1 sh2sh2またはsu1su1 se1se1である、所望の遺伝的背景を有する準同質遺伝子系統のゲノムに組み込む、ステップと、
(d) su1su1 se1se1の遺伝的背景または一つ以上の他の好ましい変異対立遺伝子の遺伝的背景上に重ねられた(layer)shrunken-2i(sh2-i)対立遺伝子をゲノムに有する雌性準同一遺伝子植物系統(「準同質遺伝子系統を改変した」雌性)を選択するステップと、
(e) su1su1 se1se1 sh2sh2(または高いまたは強化された食感品質を有するハイブリッド植物を提供することができるいくつかの他のトリプルホモ接合の劣性対立遺伝子組合せ)のトリプルホモ接合劣性対立遺伝子組合せを有する雄性系統と、準同質遺伝子系統を改変した雌性とを交雑し、栽培者および/または消費者の求める一つ以上の特徴を有するハイブリッド植物を作製する、任意のステップと、
(f) ステップ(d)および/またはステップ(e)の植物から生じる種子(または穀粒)の(従来のまたは他の植物由来の種子または穀粒との比較による)なめらかさ、ふくらみおよび/または相対的重量といった特徴について、物理的外観(表現型)を調べる任意のステップと、
(g) ステップ(d)および/またはステップ(e)の植物から生じる種子(または穀粒)について、暖温、低温および/またはその他の発芽を実施し、かかる種子が消費者および/または栽培者が所望する一つ以上の特徴、例えば、強化された発芽、苗発生および植物成長性能並びに変異shrunken-2i(sh2-i)対立遺伝子と関連した生長力を有することを確かめる任意のステップと、
(h) ステップ(d)および/またはステップ(e)の植物によって作製される種子(または穀粒)から栽培された、植物(またはその部分、例えばコーンの穂先)について一つ以上の官能試験を行い、それらについての味および/または他の官能特徴を決定するステップであって、好適には、栽培者および/または消費者が所望する一つ以上の特徴を発現する植物と整合する全体的な物理的および園芸的特徴(すなわち表現型)を調べる任意のステップ。
【0070】
上記の過程に従うことによって、(他の特徴の間でも)炭水化物蓄積の制御および果皮柔軟性について、植物、植物材料および/または種子において操作でき、および、変異shrunken-2i(sh2-i)対立遺伝子は、所望の生産および消費者特性を与えるために植物、植物材料または種子のゲノムに組み込むことができる。植物、植物材料および種子は、他の植物品種または系統と比較すると乾燥種子段階でより中身が充実し、種子発芽、土壌からの苗発生および/または植物発達の間の強化された生長力を与え、且つ、高い糖水準を維持することで、最も食用に適した段階後の一定期間にわたって、植物、植物材料および/または種子の甘味または他の好ましい味をもたらすようにすることができる。当業者は、上記過程に含まれる特定のステップ、例えば、準同質遺伝子系統の戻し交雑ステップについて、上記過程を成功させるために行うべきの実施回数を決定することができる。このように、好ましくは、幾つかのステップは複数回実施される。
【0071】
別の態様においては、本発明は、従来の変異shrunken-2(sh-2)若しくはshrunken-2i(sh2-i)のハイブリッド植物、植物、植物材料または種子と比較すると強化された生長力、および従来の変異sugary-1(su1)若しくはshrunken-2i(sh2-i)のハイブリッド植物、植物、植物材料または種子と比較して強化された最も食用に適した段階直後の一定期間にわたって糖を保持する能力を有する、あらゆる適切な順序の上述のステップ(a)〜(p)による、ハイブリッド植物、植物、植物材料または種子を提供する。
【0072】
さらにもう一つの態様において、本発明は、上記の方法のいずれか一つによって作製される植物種子を提供する。
【0073】
別の態様においては、本発明は、一つ以上の更なる変異対立遺伝子の遺伝的背景にシーケンシャルレイヤリング(sequential layering、逐次重ねる)することで一つ以上の好ましい特徴を植物種子に与える、shrunken-2i(sh2-i)対立遺伝子を含むゲノムからなるハイブリッドまたは他の植物種子を提供し、当該植物種子は、従来の変異shrunken-2(sh-2)またはshrunken-2i(sh2-i)植物種子と比較して強化された生長力と、従来の変異sugary-1(su1)またはshrunken-2i(sh2-i)植物種子と比較して教科された最も食用に適した段階直後の一定期間にわたる糖を保持する能力とを賦与される。
【0074】
さらに別の態様において、本発明は、一つ以上の更なる変異対立遺伝子の遺伝的背景に、シーケンシャルレイヤリングすることで一つ以上の好ましい特徴を植物種子に与えるshrunken-2i(sh2-i)対立遺伝子を含むゲノムからなるハイブリッドまたは他の植物種子を提供し、植物種子は、従来の変異shrunken-2(sh-2)またはshrunken-2i(sh2-i)植物種子と比較すると強化された生長力と、従来の変異sugary-1(su1)またはshrunken-2i(sh2-i)植物種子と比較すると強化された最も食用に適した段階直後の一定期間にわたり糖を保持する能力とを賦与される。
【0075】
別の態様においては、本発明は、上記の方法のいずれか一つによって作製される植物または植物材料を提供する。
【0076】
さらにもう一つの態様において、本発明は、一つ以上の更なる変異対立遺伝子の遺伝的背景に、シーケンシャルレイヤリングすることで一つ以上の好ましい特徴を植物または植物材料に与えるshrunken-2i(sh2-i)対立遺伝子を含むゲノムからなるハイブリッドまたは他の植物または植物材料を提供し、植物または植物材料は、従来の変異shrunken-2(sh-2)またはshrunken-2i(sh2-i)植物または植物材料と比較すると強化された生長力と、従来の変異sugary-1(su1)またはshrunken-2i(sh2-i)植物または植物材料と比較すると強化された最も食用に適した段階直後の一定期間にわたり糖を保持する能力とを賦与される。
【0077】
もう一つの態様において、本発明は、一つ以上の更なる変異対立遺伝子の遺伝的背景に、シーケンシャルレイヤリングすることで一つ以上の好ましい特徴を植物または植物材料に与えるshrunken-2i(sh2-i)対立遺伝子を含むゲノムからなるハイブリッドまたは他の植物または植物材料を提供し、植物または植物材料は、従来の変異shrunken-2(sh-2)または従来の変異shrunken-2i(sh2-i)植物または植物材料と比較すると強化された生長力と、従来の変異sugary-1(su1)または従来の変異shrunken-2i(sh2-i)植物または植物材料と比較すると強化された最も食用に適した段階直後の一定期間にわたり糖を保持する能力を賦与される。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】従来のsugary-1(su1)、sugary enhancer-1(se1)およびshrunken-2 (sh2)の遺伝子変異系統の、最も食用に適した段階(含水率約75%)での、典型的な胚乳のショ糖水準の一般化比較を示す棒グラフである。
【図2】従来のsugary-1(su1)、sugary enhancer-1(se1)およびshrunken-2 (sh2)の遺伝子変異系統の、7日間(1-7日)を通じて最も食用に適した段階(含水率約75%)での、室温での相対的胚乳糖貯留または「保持能力」を示す線グラフである。3つの異なる遺伝子型について、胚乳ショ糖水準の典型的な経時変化を示す。
【図3】従来のsugary-1(su1)、sugary enhancer-1(se1)およびshrunken-2(sh2)遺伝学的変異系統の、最も食用に適した段階(含水率約75%)での、典型的な果皮率の比較を示す棒グラフである。
【図4】従来のsugary-1(su1)、sugary enhancer-1(se1)およびshrunken-2(sh2)遺伝子変異系統の、最も食用に適した段階(含水率約75%)での7日間(1-7日)の室温での相対的果皮率を示す線グラフである。3つの異なる遺伝子型について、果皮率の典型的な経時変化を示す。
【図5】イントロン(図5の線によって示される)によって分離される16のエキソン(図5のボックスによって示される)から成る、野生型sh2遺伝子(sh2-R)の線図である。この遺伝子は、およそ6,000塩基対長である。sh2-R遺伝子は、イントロン2-エキソン4領域(図5の三角形によって示される)の中に大きい(少なくとも7,800の塩基対)挿入を有する。この挿入に接するプライマー(図5の矢印によって示される)は、大きなサイズの挿入のため、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物を生じない。対照的に、sh2-i遺伝子はイントロン2の終端に単一の塩基対変化を含有しており、sh2-iの挿入部位の側面に位置するプライマーはPCR生成物を生ずる。
【図6】最も食用に適した段階(含水率約75%)を1-7日過ぎたsh2-i対立遺伝子を含有するまたは含有しない、いずれかの準同質遺伝子系統(NIL)の従来のハイブリッドshrunken-2(sh2)の、澱粉の官能スコア平均を示す(澱粉蓄積の官能平均値)線グラフである。
【図7】コーン品種Beyond、PassionおよびACX SS 7501Yの最も食用に適した段階(含水率約75%)直後の7日間の官能平均甘味スコアを示す線グラフである。この7日間にわたるこれらの3つのスイートコーン品種中の比較の官能糖水準を示す。
【図8】コーン品種Beyond、PassionおよびACX SS 7501Yの、最も食用に適した段階(含水率約75%)直後7日間の、官能平均果皮柔軟性のスコアを示す線グラフである。この7日間にわたるこれらの3つのスイートコーン品種についての、官能果皮柔軟性水準比較を示す。
【図9】変異shrunken-2i(sh2-i)対立遺伝子(エキソン1-4)のスプライス部位異常を有するゲノム配列の概略図を示す。変異sh2-iのイントロン2のスプライス部位AGをAAに変えた点突然変異は、ボックスで示す。線でつながれた矢印は、変異転写産物を生じるRNAスプライシングの間に使用する供給部位および受容部位を示す。
【図10−1】実施例1に記載の実験で調製された個体インブレッドNILのサンプルの分子地図である。
【図10−2】実施例1に記載の実験で調製された個体インブレッドNILのサンプルの分子地図である。
【図10−3】実施例1に記載の実験で調製された個体インブレッドNILのサンプルの分子地図である。
【図10−4】実施例1に記載の実験で調製された個体インブレッドNILのサンプルの分子地図である。
【図10−5】実施例1に記載の実験で調製された個体インブレッドNILのサンプルの分子地図である。
【図10−6】実施例1に記載の実験で調製された個体インブレッドNILのサンプルの分子地図である。
【図10−7】実施例1に記載の実験で調製された個体インブレッドNILのサンプルの分子地図である。
【図10−8】実施例1に記載の実験で調製された個体インブレッドNILのサンプルの分子地図である。
【図10−9】実施例1に記載の実験で調製された個体インブレッドNILのサンプルの分子地図である。
【図10−10】実施例1に記載の実験で調製された個体インブレッドNILのサンプルの分子地図である。
【図10−11】実施例1に記載の実験で調製された個体インブレッドNILのサンプルの分子地図である。
【図10−12】実施例1に記載の実験で調製された個体インブレッドNILのサンプルの分子地図である。
【図10−13】実施例1に記載の実験で調製された個体インブレッドNILのサンプルの分子地図である。
【図10−14】実施例1に記載の実験で調製された個体インブレッドNILのサンプルの分子地図である。
【図10−15】実施例1に記載の実験で調製された個体インブレッドNILのサンプルの分子地図である。
【図10−16】実施例1に記載の実験で調製された個体インブレッドNILのサンプルの分子地図である。
【図10−17】実施例1に記載の実験で調製された個体インブレッドNILのサンプルの分子地図である。
【図10−18】実施例1に記載の実験で調製された個体インブレッドNILのサンプルの分子地図である。
【図10−19】実施例1に記載の実験で調製された個体インブレッドNILのサンプルの分子地図である。
【図10−20】実施例1に記載の実験で調製された個体インブレッドNILのサンプルの分子地図である。
【図10−21】実施例1に記載の実験で調製された個体インブレッドNILのサンプルの分子地図である。
【発明を実施するための形態】
【0079】
(配列の簡単な説明)
配列番号1は、米国特許第6,184,438号B1においても公開されている、Zea Mays(トウモロコシ)の野生型Shrunken-2(sh2)対立遺伝子の7739塩基対ゲノム・ヌクレオチド配列である。(全体を参照により本明細書に組み込む米国特許第6,184,438号B1の図1は、Zea Mays(トウモロコシ)の野生型Shrunken-2(sh2)対立遺伝子のゲノムヌクレオチド配列も示す。イントロンは、小文字によって示される。塩基番号1は、転写開始点である。矢印は、cDNAの3’末端を示す。推定のTATA、RY二分子(dyad)およびエンハンサー配列は、下線部である。)
【0080】
配列番号2は、米国特許第5,912,413号において公開されている、Zea Mays(トウモロコシ)のsugary-1(su1)対立遺伝子をコードしているcDNA配列である。su1 cDNAクローンの2712塩基対ヌクレオチド配列は、クローンの一端に位置する、14の連続的なT残基配列を含み、それはポリアデニル化サイトおよびmRNAの3'末端を同定する。789コドンの連続オープンリーディングフレーム(ORF)は、cDNAクローンの5’末端から88ヌクレオチドで開始し、ポリ(A)アデニル化サイトより240前のヌクレオチドで終了する。このORFは、789のアミノ酸(配列番号3)のポリペプチドに相当する。cDNAおよび部分的なゲノム配列(配列番号4)の比較によって、ゲノムDNAの4つのエキソンおよびイントロンを同定する。これらの4つのエキソンは、ヌクレオチド658からヌクレオチド1107、ヌクレオチド1352からヌクレオチド1536、ヌクレオチド1657からヌクレオチド1753およびヌクレオチド2076からヌクレオチド2227に延在する。エキソン配列または配列番号4の全配列が、完全長ゲノム配列を得るために、当業者に周知の方法にてプローブとして使われ得る。
【0081】
配列番号3は、米国特許第5,912,413号においても公開されている配列番号2に示されるcDNAクローンのsugary-1(su1)ヌクレオチド配列のアミノ酸翻訳である。
【0082】
配列番号4は、部分的なsugary-1(su1)ゲノムヌクレオチド配列であり、米国特許第5,912,413号においても公開されている。
【0083】
配列番号5はsu1(配列番号4)の推測されたアミノ酸配列であり、米国特許第5,912,413号においても公開されている。
【0084】
配列番号6は、プライマーumc1551(染色体2上のsugary enhancer-1(se1)対立遺伝子用の分子マーカーのためのプライマー)のヌクレオチド配列である。
【0085】
配列番号7は、プライマーumc1551(染色体2上のsugary enhancer-1(se1)対立遺伝子用の分子マーカーのためのプライマー)のヌクレオチド配列である。
【0086】
配列番号8は、プライマーbnlg1520(染色体2上のsugary enhancer-1(se1)対立遺伝子用の分子マーカーのためのプライマー)のヌクレオチド配列である。
【0087】
配列番号9は、プライマーbnlg1520(染色体2上のsugary enhancer-1(se1)対立遺伝子用の分子マーカーのためのプライマー)のヌクレオチド配列である。
【0088】
配列番号10は、プライマーphi427434(染色体2上のsugary enhancer-1(se1)対立遺伝子用の分子マーカーのためのプライマー)のヌクレオチド配列である。
【0089】
配列番号11は、プライマーphi427434(染色体2上のsugary enhancer-1(se1)対立遺伝子用の分子マーカーのためのプライマー)のヌクレオチド配列である。
【0090】
配列番号12は、プライマーumc2077(染色体2上のsugary enhancer-1(se1)対立遺伝子用の分子マーカーのためのプライマー)のヌクレオチド配列である。
【0091】
配列番号13は、プライマーumc2077(染色体2上のsugary enhancer-1(se1)対立遺伝子用の分子マーカーのためのプライマー)のヌクレオチド配列である。
【0092】
配列番号14は、プライマーumc2174(第3染色体上のshrunken-2(sh2)対立遺伝子のための分子マーカーのためのプライマー)のヌクレオチド配列である。
【0093】
配列番号15は、プライマーumc2174(第3染色体上のshrunken-2(sh2)対立遺伝子用の分子マーカーのためのプライマー)のヌクレオチド配列である。
【0094】
配列番号16は、プライマーdupssr33(第3染色体上のshrunken-2(sh2)対立遺伝子用の分子マーカーのためのプライマー)のヌクレオチド配列である。
【0095】
配列番号17は、プライマーdupssr33(第3染色体上のshrunken-2(sh2)対立遺伝子用の分子マーカーのためのプライマー)のヌクレオチド配列である。
【0096】
配列番号18は、プライマーbmc1257(第3染色体上のshrunken-2(sh2)対立遺伝子用の分子マーカーのためのプライマー)のヌクレオチド配列である。
【0097】
配列番号19は、プライマーbmc1257(第3染色体上のshrunken-2(sh2)対立遺伝子用の分子マーカーのためのプライマー)のヌクレオチド配列である。
【0098】
配列番号20は、プライマーumc2277(第3染色体上のshrunken-2(sh2)対立遺伝子用の分子マーカーのためのプライマー)のヌクレオチド配列である。
【0099】
配列番号21は、プライマーumc2277(第3染色体上のshrunken-2(sh2)対立遺伝子用の分子マーカーのためのプライマー)のヌクレオチド配列である。
【0100】
配列番号22は、プライマーphi295450(染色体4上のsugary-1(su1)対立遺伝子用の分子マーカーのためのプライマー)のヌクレオチド配列である。
【0101】
配列番号23は、プライマーphi295450(染色体4上のsugary-1(su1)対立遺伝子用の分子マーカーのためのプライマー)のヌクレオチド配列である。
【0102】
配列番号24は、プライマーphi308090(染色体4上のsugary-1(su1)対立遺伝子用の分子マーカーのためのプライマー)のヌクレオチド配列である。
【0103】
配列番号25は、プライマーphi308090(染色体4上のsugary-1(su1)対立遺伝子用の分子マーカーのためのプライマー)のヌクレオチド配列である。
【0104】
配列番号26は、プライマーphi076(染色体4上のsugary-1(su1)対立遺伝子用の分子マーカーのためのプライマー)のヌクレオチド配列である。
【0105】
配列番号27は、プライマーphi076(染色体4上のsugary-1(su1)対立遺伝子用の分子マーカーのためのプライマー)のヌクレオチド配列である。
【0106】
配列番号28は、プライマーphi079(染色体4上のsugary-1(su1)対立遺伝子用の分子マーカーのためのプライマー)のヌクレオチド配列である。
【0107】
配列番号29は、プライマーphi079(染色体4上のsugary-1(su1)対立遺伝子用の分子マーカーのためのプライマー)のヌクレオチド配列である。
【0108】
配列番号1-29に存在する配列は省略形を使用する。それはIndustrial Property Information and Documentation、Standard ST.25上の世界知的所有権機関(WIPO)ハンドブックに記載されており、これによって完全に本願明細書に引用したものとする。
【0109】
本発明は、次の本発明の好ましい実施例の詳細な説明およびそこに含まれる実施例を参照することでより容易に理解されるであろう。
【0110】
(定義)
明確にするため、この明細書および添付の請求の範囲の全体にわたって使われる様々な用語および表現は、以下に詳述のように定義する。
【0111】
この明細書または添付の請求の範囲において使われる用語またはフレーズが下で定められない、またはこの明細書中において定められていない場合には、用語またはフレーズは通常の意味を示すと理解されたい。
【0112】
本願明細書において使われる用語「農学」は、作物生産の科学を意味する。
【0113】
本願明細書において使われる用語「対立遺伝子」は、ある遺伝子(対をなす遺伝子の片一方)の代替の遺伝子を指し、それは特定の染色体の特定の位置に位置する。対立遺伝子は、遺伝子の特徴の異なる特徴を引き起こす遺伝子の異型であり、コード配列または非コード配列のいずれにおいても異なり得る。
【0114】
用語「アミノ酸」は分子を意味して本願明細書において使われ、通常、塩基性アミノ基(NH2)、酸性カルボキシル基(COOH)、水素原子(-H)および炭素原子に付いた有機側鎖基(R)、を含有するので、NH2CHRCOOHの基本化学式で表される。アミノ酸は、各々がコドンによってコーディングされ、ペプチド結合で相互に結合されるタンパク質の基礎単位である。それぞれ異なるR基を有する100以上のアミノ酸が自然に発生することが知られている。それらのうちの20のアミノ酸がタンパク質を合成する際に関係し、それらが必須でないか必須であるかで分類される。非必須アミノ酸は、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、プロリン、セリンおよびチロシンを含む。必須アミノ酸は、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファンおよびバリンを含む。アミノ酸の省略形は、当業者によって周知である。
【0115】
本願明細書において使われている用語「戻し交雑」は、その両親のうちの1方と、または、その両親のうちの1方と遺伝的に同一または類似の個体と、交雑(ハイブリッドであるか他の植物)することを意味する。
【0116】
本願明細書において使用されていている用語「炭水化物」は、炭素、酸素および水素を含んでいる単純な有機化合物を意味し、一般に多くのヒドロキシル基が付加されている(通常、アルデヒド官能基またはケトン官能基の一部分でない各炭素原子について一つのヒドロキシル基が付加される)。基本的な炭水化物ユニットは、単糖(例えばブドウ糖、ガラクトースおよびフルクトース)である。炭水化物は、例えばエネルギーの貯蔵および輸送(例えば澱粉またはグリコーゲン)および構造成分(例えば植物のセルロース)等、生物において多くの役割を有する。それらは、エネルギー貯蔵、燃料および代謝中間体として役立つ。リボースおよびデオキシリボース糖は、RNAおよびDNAの構造的な骨組みの部分を形成する。多糖は植物の細胞壁中に存在する構造的な要素である。炭水化物は、多くのタンパク質および脂質に結合し、それらは、細胞環境中での、細胞間の相互作用、ならびに、細胞および他の要素間の相互作用の媒介をすることによって重要な役割を果たす。単糖は、多種多様な方法によって多糖に互いに結合し得る。
【0117】
本願明細書において使われる用語「細胞呼吸」は、通常細胞の中で起こる一連の代謝プロセスを意味し、そこにおいて生化学エネルギーが、例えばグルコースのような有機物から得られ、細胞のエネルギーが必要な活動のために、エネルギーキャリア(ATP)として貯蔵される。これらの活動は、解糖、クエン酸回路、クレブス回路、および、酸化的リン酸化によって構成される。細胞は、分子酸素(電子受容体)を取り入れ、(最終産物として)二酸化炭素を放出する方法で「呼吸する」ように見える(好気的過程)。生化学エネルギーは多くの代謝プロセス、例えば生合成、移動運動、膜を介した分子の輸送、などにエネルギーを供給するために作り出されるので、細胞呼吸は、真核細胞および原核細胞に必須である。全ての過程が原核生物の細胞質で行われる一方、真核生物では、通常、解糖は細胞質において行われ、クレブス回路および酸化的リン酸化はミトコンドリアにおいて行われる。原核細胞が通常最高38のATP分子を生成することができる一方、真核細胞は通常最高36のATP分子を生成することができる。
【0118】
本願明細書において使われる用語「コード配列」は、タンパク質をコーディングする遺伝子またはmRNAの一部を指す。
【0119】
本願明細書において使用されている用語「コドン」は、3つの隣接したヌクレオチド(トリプレット)の1セットを意味する。mRNAにおいて、その塩基対が特定のアミノ酸を運搬するtRNA分子の対応するアンチコドンを伴うため、タンパク質合成のアミノ酸のタイプおよび配列を特定する。例えば、GCC(グアニン-シトシン-シトシン)→アラニン、GUU(グアニン-ウラシル-ウラシル)→バリン、CUA(シトシン-ウラシル-アデニン)→ロイシン、およびUCA(シトシン-シトシン-アデニン)→セリンである。
【0120】
sugary-1(su1)、sugary enhancer(se1)、shrunken-2(sh2)、shrunken-2i(sh2-i)または他の変異対立遺伝子と関連して本願明細書において使われている用語「従来の変異ハイブリッド植物、植物材料、種子、系統または品種」は、連続した、または他の2つ以上の変異対立遺伝子の組み合わせというよりはむしろ、本願明細書において記載されている形質を与える、通常ただ1つの変異対立遺伝子をそのゲノムに含む、ハイブリッド植物、植物材料、種子、系統または品種を意味する。例えば、変異shrunken-2i(sh2-i)対立遺伝子をそのゲノムに含むがsugary-1(su1)、sugary enhancer(se1)またはshrunken-2(sh2)変異対立遺伝子を含まないもの、または変異sugary-1(su1)対立遺伝子をそのゲノムに含むがsugary enhancer(se1)、shrunken-2(sh2)またはshrunken-2i(sh2-i)変異対立遺伝子を含まないものを意味する。
【0121】
本願明細書において使われる用語「コーン」および「トウモロコシ」は広く栽培されるあらゆる多数の栽培された品種で、通常、大きい穂先上に穀物または穀粒を持つ背の高い一年生穀類のイネ科植物(トウモロコシ)を意味し、スイートコーンおよびスーパースイートコーンの種々の変種を含む。この植物の穀物または穀粒は、人間および家畜用の食物として、または食用油または澱粉の抽出用に用いられてもよい。穀粒は、生または調理済みで食用可能であり、さらに、当業者に既知の他の方法で缶詰にし、冷凍し、および/または貯蔵することも可能である。
【0122】
本願明細書において使用される用語「交雑する」、「交雑」、「交配させ」および「異種交雑する」は、ハイブリッドを作り出すために植物の異なる種または品種を混合する行為を意味する。一遺伝子雑種交雑は、1つの形質が異なる親世代生物間での品種改良実験である。一遺伝子雑種交雑では、通常、1つの特定の遺伝子に関する異なる対立遺伝子を有する両親間の遺伝的交雑が行われる。一方の親は2つの優性対立遺伝子を有し、他方の親は2つの劣性対立遺伝子を有する。そして、すべての子孫(一遺伝子雑種)は、上記特定の遺伝子に関する1つの優性対立遺伝子と、1つの劣性対立遺伝子とを有する(すなわち、その一つの遺伝子座についてハイブリッドである)。これらの子孫間で交雑すると、次の世代における、優性表現型:劣性表現型の比率が、特徴的な3:1(一遺伝子雑種)という割合で生じる。例えば、緑のさや色(G)の対立遺伝子は優性であり、黄色のさや色(g)の対立遺伝子は劣性である。親のさや色が緑色の植物と、親のさや色が黄色の植物とを人工受粉すると、全て、緑の子世代(すなわち、全ての遺伝子型は、Ggである)を生じる。二遺伝子雑種交雑は、2つの特徴が異なる親世代生物間の品種改良実験である。二遺伝子雑種交雑では、通常、異なる遺伝子座の遺伝子によって制御される2つの特徴が異なる親世代の遺伝的交雑が行われる。グレゴール・メンデルは、エンドウ植物を用いて、種子の色および質感の特徴に基づく二遺伝子雑種交雑を行った。親の植物は、なめらかな黄色の種子(SSYY)(優性特徴)またはしわが寄っている緑の種子(ssyy)(劣性の特徴)を有した。子の植物は、全て、2つの対立遺伝子の異種接合体(SsYy)のなめらかな黄色の種子を有した。これらの子孫間の交雑により、9:3:3:1の比率でなめらかな黄色、なめらかな緑、しわが寄っている黄色およびしわが寄っている緑の種子で構成される植物のF2世代が得られた。メンデルは、これらの結果に基づいて、独立遺伝の法則を導いた。三遺伝子雑種交雑は、3つの特徴その他が異なる親世代生物間の品種改良実験である。
【0123】
本願明細書において用いられる用語「作物」は、食料、家畜飼料、燃料、または他のいかなる経済(または他の)目的のために相当量収穫されるように栽培されるあらゆる植物の周期的、例えば年間または季節的な、収穫物である。多くの種類の作物は、工業目的で用いられる。例えば、利益を生み、人々を潤すという唯一の目的のために、栽培および収穫され、さらには、作物を栽培するのに適している特定の領域において大量に栽培される。
【0124】
本願明細書において用いられる用語「優性」は、生物の表現型で発現される対立遺伝子または遺伝子を意味し、その存在下では、一般に劣性対立遺伝子または劣性遺伝子の影響を被覆する。遺伝学において、優性対立遺伝子または優性遺伝子は、生物の表現型を決定するものである。その効果は、劣性対立遺伝子または劣性遺伝子の効果と比較すると、容易に認識される。一般に、例えば、Hh(Hが優性対立遺伝子に関し、hが劣性対立遺伝子に関する)のように、優性対立遺伝子は大文字によって表され、劣性対立遺伝子は小文字によって表される。
【0125】
本願明細書において用いられる用語「乾燥種子段階」は、例えばスイートコーンなどの植物の発芽における最初の一時的な現象や、種子または穀粒が通常約12%未満の含水量を有するときを意味する。
【0126】
本願明細書において用いられる用語「ダンカンの新多重範囲検定(Duncan's New Multiple Range Test)」および「MRT」は、平均値の集合を比較するためにスチューデント化された範囲統計qrを用いる多重比較統計方法を意味し、特に、偽陰性(Type II)過誤から保護するためのものである。この検定は、農学および他の種類の農業研究で共通して使用され、当業者によって周知である。この検定についての付加的情報は、D.B.Duncan, "Multiple Range and Multiple F Tests," Biometrics 11:1-42, 1955に記載されている。本願明細書において使用される統計方法と、それに付随する計算は、当業者によって知られている方法で、コンピュータおよびソフトウェアに実行させてもよい。
【0127】
本願明細書において用いられていている用語「胚」は、種子植物において有性または無性の卵から発達し、種子の中に含有される苗を意味する。
【0128】
本願明細書において用いられていている用語「胚乳」は、多くの植物の種子に存在し、これらの種子中で胚を囲む栄養組織を意味する。胚乳は、胚に栄養分を供給する。胚乳は、通常トウモロコシの穀粒発達中の大部分の澱粉堆積部位であり、胚乳澱粉含量は穀粒または種子の乾燥重量のおよそ70%を占める。
【0129】
本願明細書において用いられる用語「エネルギー」は、仕事を行い、または変化を生み出す能力を意味する。エネルギーは様々な状態で存在するが、生成されることも消滅することもない。エネルギーは、別の状態に変化するだけであり、ジュールまたはエルグで示される。多くの場合、エネルギーは、細胞内に生体分子(例えば炭水化物(糖)および脂質)として貯蔵される。エネルギーは、通常、これらの分子が細胞呼吸中に酸化されると放出され、ATP、すなわちエネルギーキャリア分子によって保持および輸送される。
【0130】
本願明細書において用いられる用語「酵素」は、一般に、例えば植物のような生命体の化学反応の速度を上げるタンパク質(またはタンパク質を主成分とする分子)を意味する。酵素は、一般に特異的な化学反応のための触媒として作用する。そして、特定の組み合わせの反応物(基質)を特定の生成物に変換する。酵素は、一般に、おりたたまれて、分子にユニークな性質を与える特異的な三次元構造を提供するアミノ酸の特徴配列を有する。さらに、酵素は一般に、それらが触媒する反応に従って分類および命名される。
【0131】
本願明細書において用いられていている用語「上位性」は1つの遺伝子の変異が異なる遺伝子の発現を被覆することを意味する。(対照的に、優位性に関しては、遺伝子の1つの対立遺伝子は、同じ遺伝子の他の対立遺伝子の発現を被覆する。)
【0132】
本願明細書において用いられる用語「エキソン」は、ゲノムDNA配列に含まれる複数の部分であって、最終的な成熟mRNA(すなわち遺伝子のポリペプチドをコードするゲノムDNAの連続セグメント)に存在する各部分を意味する。また、用語「エキソン」は、最終的なRNAに含まれる、対応のセグメントをも意味しうる。エキソンは、コード配列、5’非翻訳領域および/または3’非翻訳領域を含んでもよい。
【0133】
本願明細書において用いられている用語「発現」は、文脈に応じて、遺伝子の影響が現れること、影響または表現型を生じさせること、または、遺伝形質を現すことを意味する。遺伝子の発現は、遺伝子中にコードされる情報の、タンパク質またはRNAへの翻訳である。発現遺伝子は、メッセンジャーRNA(mRNA)に転写されてタンパク質に変換される遺伝子を含み、また、例えばタンパク質に変換されないトランスファーRNA(tRNA)およびリボソームRNA(rRNA)などの種々のRNAに転写される遺伝子も含む。遺伝子発現過程におけるいくつかのステップは、転写、RNAスプライシング、タンパク質の翻訳および翻訳後修飾を含む調整がされ得る。遺伝子調節は、構造および作用について細胞制御し、さらに、細胞分化、形態形成、ならびに、植物のような生物の汎用性及び適応力の基礎となる。
【0134】
本願明細書において用いられる用語「適応性」は、例えば植物のような生物、または遺伝子型の、所与の時点の所与の個体数での相対的な繁殖成功率の指標にを意味する。次世代に最も多くの子孫を寄与する個体は、最も適応した固体である。したがって、適応性は、生物がどれくらい良好にその環境に適応しているかを反映し、それはその生存を決定する。
【0135】
本願明細書において用いられる用語「遺伝子」は、子孫に遺伝形質を伝えるために必要とされる情報を保持する生命体(植物、動物または微生物)における遺伝(遺伝形質)の基本構成単位に関する。遺伝子は、表現型/機能に寄与するデオキシリボ核酸(DNA)のセグメントである。DNAは、アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)またはグアニン(G)から選択される2つの対塩基を螺旋はしごの各段に有する、二重螺旋の形の分子である。特定の塩基は常に互いにペア(ATおよびGC)で、塩基対の異なる配列はコーディングされたメッセージを形成する。遺伝子はすべて、さらに、非常に大きな構造である染色体の全長にわたって正確な配列で配置される。
【0136】
本願明細書において用いられる用語「遺伝子地図」は、任意の種の範囲内で染色体(または連鎖群)上の遺伝子座間の遺伝子の連鎖関係を示す図である。「マッピング」は、遺伝マーカーを使用し、このマーカーを分離する個体数、および標準的な遺伝子組換え頻度の法則に基づいて遺伝子座の結合関係を定める過程である。「地図位置」は、対立遺伝子が任意の種内で見つかる遺伝子地図上の特定座位である。
【0137】
本願明細書において用いられていている用語「ゲノム」は、文脈に応じて、例えば植物のような生物の遺伝子一式、染色体一式の全遺伝子構成を意味する。
【0138】
本願明細書において用いられる用語「遺伝子型」は、その遺伝コード中に含まれる遺伝的命令を意味する。一般に、遺伝子の遺伝子型は、その遺伝子が包含する対立遺伝子一式である。
【0139】
本願明細書において用いられていている用語「発芽」は、休眠種子が休眠期間を脱して発芽を開始し、適切な生長条件で苗に生長する過程を意味する。最も一般的な発芽の例は、被子植物または裸子植物の種子から苗を発芽させることである。発芽は、種子中に含まれる幼植物が成長し、苗を形成することである。
【0140】
本願明細書において用いられる用語「グルコース」は、エネルギーの主要な供与源として、および大部分の生きもののための重要な代謝基質として役立つ単純な単糖を意味する。グルコースの化学式は、C6H12O6である。グルコースは、植物の光合成産物のうちの1つであり、グルコース分子は、糖質(例えば澱粉)の反復構成単位として貯蔵される。グルコースは、また、細胞呼吸の重要な代謝中間体として機能する。
【0141】
本願明細書において用いられていている用語「収穫」は、あらゆる種類(例えばトウモロコシ)の作物を取り入れる(収集する、および/または、集める)ことを意味する。
【0142】
本願明細書において用いられていている用語「ヘテロ接合」は、同じ遺伝子または形質をコーディングする異なる対立遺伝子を有することを意味する。例えば、特定の形質についての1つの優性対立遺伝子と1つの劣性対立遺伝子(すなわちAa)とを有する接合体である。
【0143】
本願明細書において染色体と関連して用いられている用語「相同」は、遺伝子の同一の直鎖配列を有し、減数分裂の間に対になるものを意味する。各相同染色体は、両親のうちの1方から提供される染色体の1つの複製であり、一般に、相同染色体の各ペアは形状およびサイズが同一である。
【0144】
本願明細書において用いられていている用語「ホモ接合性」は、相同的染色体セグメントにおいて一つ以上の遺伝子座(遺伝子が位置する染色体上の特異的な場所)で同一の対立遺伝子が存在することを意味する。
【0145】
本願明細書において用いられていている用語「ハイブリッド」は、異なる種または亜種(すなわち、異種交配由来)の両親間の交雑から生じる子孫を意味する。単交雑ハイブリッドは、純粋種の両親間の交雑で生じた子孫の第1世代である。複交雑ハイブリッドは、2つの単交雑ハイブリッド間の交雑から生じた子孫である。三系交雑ハイブリッドは、単交雑ハイブリッド系およびインブレッド系との間の交雑による子孫である。トリプルクロスハイブリッド(triple cross hybrid)は、2つの異なる三系交雑ハイブリッドを交雑させることによって生じた子孫である。
【0146】
本願明細書において用いられていている用語「ハイブリダイゼーション」は、ハイブリッドを作製するために、異なる品種または種の生物を交配する行為または過程を意味する。
【0147】
本願明細書において用いられるフレーズ「独立遺伝」は、その他の遺伝子の対立遺伝子が分離した方法とは無関係に、一つの遺伝子の対立遺伝子が分離して生殖細胞(配偶子)に入ることを意味する。この過程によって、全ての想定される対立遺伝子の組み合わせが、同程度の頻度で配偶子に発生するようになる。実際には、同じ染色体に位置している対立遺伝子が一緒に継承される傾向があるので、これが必ずしも起こるというわけではない。しかしながら、対立遺伝子ペアAaおよびBbが異なる染色体上に存在する場合、AB、Ab、aBおよびabの組み合わせが、通常同程度に配偶子に発生しうる。
【0148】
本願明細書において用いられていている用語「インブレッド」は、同系交配によって生じる子孫(同グループの近縁の生物から品種改良することで得られるすべての生物(例えば、植物)の後継世代)を意味する。概して、系統が十分にインブレッドであれば、特定の対立遺伝子がホモ接合状態であるとみなすことができる。
【0149】
用語、本願明細書において用いられている用語「同系交配する」は、生物の隔離されたまたは閉じたグループ内での近縁の生物の品種改良を意味する。同系交配とは、好ましい特徴を維持するために、極めて近縁の生物同士を継続的に交雑することである。
【0150】
本願明細書において用いられる用語「イントロン」は、コード配列でないゲノムDNAの複数の部分を意味する。それらは、転写され、(そして転写一次産物中に存在する)が、その後、スプライシングされる。したがって、イントロンは対応する成熟mRNAには存在しない。
【0151】
本願明細書において用いられる用語「遺伝子座」は、種のゲノム中において、特定の遺伝子型が存在する特定の染色体位置を意味する。
【0152】
本願明細書において用いられる用語「メンデルの法則」は、遺伝学の基礎であるグレゴール・メンデルの遺伝理論を集約した2つの法則を意味する。分離の法則は、各遺伝的特徴が2つの「因子」(対立遺伝子)によって制御され、それは分裂(分離)して、別々の胚細胞(生殖細胞)に入ることをいう。独立遺伝の法則は、生殖細胞が形成される場合、「因子」(対立遺伝子)のペアが互いに独立に分離することをいう。
【0153】
本願明細書において用いられる用語「分子マーカー」は、全ゲノムの範囲内で特定し得るDNAの特定の断片を意味する。分子マーカーは、通常ゲノムの特異的な位置に存在し、特定の特徴に対する特定の遺伝子または遺伝の位置に「標識を付ける」ために用いられる。遺伝的交雑では、目的の形質を与える遺伝子は、通常、染色体上で比較的近くに位置する分子マーカーに連鎖される。したがって、マーカーが所望の特徴の存在を表すので、変異は分子マーカーが存在するところに限定できる。例えば、分子マーカーは、単純反復配列(simple sequence repeats: SSRs)、一塩基多型(single nucleotide polymorphisms: SNPs)、ランダム増幅多型DNA(randomly ampliried polymorphic DNA: RAPDs)および制限酵素断片長多型(restriction fragment length polymorphisms: RFLPs)を含む。トウモロコシのインブレッド系統を特徴づけると共に同定し、系統を認証し、さらに、インブレッド系統内での関連性を示すのに用いられる分子マーカーの使用についての付加的情報は、J.S.Smith らの"An Evaluation of the Utility of SSR loci as Molecular Markers in Maize (Zea Mays L.): Comparisons with Data from RFLPS and Pedigree," Theor Appl Genet 95:163-173 (1997)に記載されている。マイクロサテライトまたは単純反復配列(SSRs)は比較的短いヌクレオチド配列で、通常、2から3塩基長のタンデム配列の反復である。増幅多型(amplifiable polymorphisms)は、通常各遺伝子座に保存される配列の間に位置するタンデムリピートの数の相違により明らかとなる。マイクロサテライトの遺伝子座は非常に多型で、トウモロコシを含む多くの植物種の遺伝マーカーとして有効である。
【0154】
本願明細書において用いられる用語「多数の」、「多くの」および「複数の」は、1以上、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60その他を意味する。用語「多くの」は、また、1を含むことができる。
【0155】
本願明細書において用いられる用語「変異」は、単一遺伝子における、または、染色体の数もしくは構造における、遺伝物質の永続的な遺伝性の変化に関する。ある遺伝子によって運ばれる遺伝情報を変えるような方法でその遺伝子が変更される場合に、変異は起こる。一旦遺伝子が変わると、その遺伝子から転写されるmRNAはすぐに変更されたメッセージを運び、変更されたmRNAを翻訳することによって製造されるポリペプチドは、アミノ酸の異なる配列を含むようになる。このポリペプチドを折りたたむことによって得られるタンパク質の作用も、変化または失われる。変異を起こした生物の表現型は、微妙にまたは非常に明白に変化し得る。変異は小規模(遺伝子のヌクレオチド配列に影響する)または大規模(染色体の変化を伴う)であり得る。紫外線、電離放射線、化学的変異源、ウイルスその他に暴露することによって、欠失(遺伝物質中の一つ以上のヌクレオチドの欠失)、挿入(遺伝子材料中の新たな場所に一つ以上の追加のヌクレオチドの挿入)または置換(例えばAからGへの転換のような、遺伝物質中の1つ以上のヌクレオチドの変更)が起こり得る。例えば、置換は、(i)異なるアミノ酸をコードするコドンに変更し、生成されたタンパク質に僅かな変化を引き起こすもの、(ii)同じアミノ酸をコードするコドンに変更し、生成されたタンパク質に変化を生じさせないもの、または、(iii)アミノ酸コーディングコドンを「ストップ」コドンに変更し、不完全なタンパク質を生成するもの、であり得る。変異は、新たな特徴または形質を作り出すことができる。変異は生物の適応性を向上し、自然淘汰をうけながら後の世代個体群を経て広がり得る。変異は、遺伝子変異の主たる要因であり、特定の変異遺伝子または対立遺伝子を対応する野生型遺伝子または対立遺伝子と比較して、これら2つの遺伝子または対立遺伝子間の差異を決定することができる。変異には、様々な種類がある。例えば、点変異は遺伝子中の一つのヌクレオチドの置換であり、一つの遺伝子中にいくつかの点変異があり得る。点変異は一般的に読み枠のシフトを起こすことはなく、したがって、大抵の場合、一つのアミノ酸置換を引き起こすだけである。タンパク質をコーディングしているDNAが3塩基長のコドンに分割されるので、挿入および欠失によって、遺伝子がもはやそのメッセージを正確に解読できないように変更されてしまうおそれがある。これらの変化は「フレームシフト」として知られている。フレームシフトでは、同様のエラーはDNAレベルで生じ、コドンが誤って解読される。これは通常、不要な、不完全なタンパク質を生成する。変異に関する付加的情報は、Mutation:Science of Everyday Things (Gale Group, 2002)に記載されている。
【0156】
本願明細書において用いられていている用語「NIL」は、例えばスイートコーンのような植物の系統の、1つの遺伝子座を除いて遺伝的に同一である準同質遺伝子系統を意味する。
【0157】
本願明細書において用いられているフレーズ「官能試験」は、分解により必ず生じる物理的および/または化学的変化の試験を意味する。官能試験は、例えばスイートコーンなどの食品について、温度、味、におい、質感、および/または、その他の人間または動物の感覚器官に感知されうる性質を測定および評価するために行うことができる。「官能」とは味、色、におい、および/または、感触などの、物質の感覚特性を意味し、「官能試験」とは味覚、感触、におい、および/または、視覚による物質の試験を意味する。
【0158】
本願明細書において用いられている用語「表現型」は、スイートコーンにおけるその形態、発達、および/または、生化学的若しくは生理的特性のような、生物の観察可能な特徴または形質を意味する。一般的に表現型は、生物の遺伝子の発現と環境要因、およびこれら2つの間に起こりうる相互作用により生じる。自然界の固体群では、ほとんどの表現型の変動は継続的であり、1つまたは複数の遺伝子座の対立遺伝子により影響される。
【0159】
本願明細書において用いられている用語「植物」は、以下の特性によって特徴づけられる、植物界に属するあらゆる生物を意味する。
・光合成により自ら食糧を生成する能力(すなわち、クロロプラストの内の緑の色素(クロロフィル)でエネルギーを捕捉することができ、二酸化炭素および水を用いて食糧としての糖、副産物として酸素を作り出すことができる
・食糧は糖および澱粉の形で貯蔵することができる
・細胞膜とは別に、硬い細胞壁を有する
・真核細胞(すなわち、膜によって囲まれ、区別された核を有する)である
・ほとんどが多細胞(すなわち、特定の機能を行うために体系化された多くの細胞からなる)である
・分裂組織(もし存在すれば)で制限なく成長する
・器官が固定、支持および光合成に特化している(例えば、根、茎、葉、等)
・感覚器および神経系がないため、刺激への応答がいくぶん遅い
・可動性器官を欠くため、動きが制限されている、および/または、
・胞子体および配偶体段階を有する生活環を有する。
植物は生態系において主要な生産者であり、例えば木、草本、低木、草、つる草、シダおよびコケを含む。特定の植物の例を非限定的に列挙すると、レタス、タバコ、綿、コーン、米、小麦、にんじん、きゅうり、ニラネギ、エンドウ、メロン、ポテト、トマトウモロコシ、ライ麦、オートムギ、サトウキビ、ピーナツ、亜麻、豆、テンサイ、ソーヤおよびヒマワリがある。
【0160】
本願明細書において用いられている用語「プラスミド」は、一般的に植物細胞で見られる色素性の細胞質性器官で、食糧の合成および貯蔵など、多くの生理学的な機能を有する。
【0161】
本願明細書において用いられている用語「多面発現性の」は、ひとつの遺伝子から多数の効果がおきるという意味である。例えば、ヒトにおいて、マルファン遺伝子は多面発現性であり、長い指および足指、目のレンズの転置および大動脈の解離性大動脈瘤を生じさせ得る。
【0162】
本願明細書において用いられている用語「花粉」は、ほとんどの植物で雄性の生殖細胞を含む花粉の粒から成る細粒のパウダー様の物質である。花粉は一般的に種子植物の葯によって作られる。
【0163】
本願明細書において用いられている用語「授粉」は、子孫を作成するため(種子を形成するため)に、植物花粉が通常、植物の葯から柱頭に(雄性生殖器官から雌性生殖器官へ)移動されるプロセスを意味する。顕花植物では、花粉は葯から柱頭に、大抵風または虫によって移動する。コーンを結実する植物(cone-bearing plant)では、雄性(male)コーンは花粉を放出し、放出された花粉は、通常風によって雌性(female)コーンの胚珠へ運ばれる。花粉粒は、一般に生殖細胞および管細胞の2つの細胞を含む。雄原核は分裂して2つの精核を形成する。その管細胞は通常、卵巣に含まれる胚珠のうちの1つにたどり着くまで雌蕊中で伸長する。2つの精子は管の下に移動して胚珠に入り、通常1つの雄核が卵子と結びつく。もう一方の雄核が、通常胚珠内に存在する極核と結合し、「重複受精」として知られている過程を完了する。その後、これらの受精核は、一般に、胚に養分を供給する組織である内果皮に発達する。胚珠自体は、一般に、花の子房(それは、果実に熟する)に含まれる種子に発達する。裸子植物において、胚珠は露出しており(子房に収容されていない)、雄性生殖構造によって作製された花粉は、直接雌性生殖構造の胚珠に到達する。
【0164】
本願明細書において用いられるフレーズ「PCR法」および「PCR」は、当業者に周知の技術であり、余分な非特異的DNAの存在下であっても、in vitroでDNAの特定部分を複製する技術を意味する。プライマー(各鎖の転写を始める)はヌクレオチドおよび熱安定性のTaqポリメラーゼとともに加えられる。温度を循環させることによって、標的DNAは反復して変性および複製される。新たに合成されたDNA鎖は、その後、同じプライマー配列の追加の単プレートとして機能するため、その後のプライマーアニーリング、鎖伸長および解離の循環により、所望の配列を迅速且つ非常に特異的に増幅することができる。PCRはまた、DNAサンプルに所定配列が存在するか判定するために用いることもできる。他の不要なDNAと混合されている場合であっても、標的DNAの単一コピーを増幅して何億もの複製を得ることができる。RNAが逆転写酵素によってDNAに最初に変換される場合、PCRはRNA配列を増幅するために用いることができる。PCRバッファ、プライマー、プローブ、コントロール、マーカー、増幅キット、sDNA合成キット、一般のPCRキットなどは、当業者に既知の供与源、例えばアプライドバイオシステム社(Foster City、CA)から入手可能であり、本発明の当業者によって容易に用いることができる。
【0165】
本願明細書において用いられる用語「最も食用に適した段階」および「ピークの食用段階」は、植物、例えばスイートコーン、が最も好ましい、または、最も甘い味がする段階を意味し、それは、本願発明の当業者によって容易に決定可能である。スイートコーンでは、最も食用に適した段階は、コーン穀粒が含水率約75%のときであり得る。例えば、スイートコーンは、全てが同時に熟成する傾向があり、最も食用に適した段階を過ぎると、甘味は一般に減少するかなくなり、消費者に好ましくない、味気ない、澱粉質な味に変わってしまう。
【0166】
本願明細書において用いられる用語「ヌクレオチド」は、核酸(例えばDNAおよびRNA)の基本構造ブロック(サブユニット)を意味する。それは、通常、窒素性塩基、糖およびリン酸基から成る有機化合物である。DNA分子は糖成分がデオキシリボースであるヌクレオチドから成るが、RNA分子は糖がリボースであるヌクレオチドを有する。最も一般的なヌクレオチドは、窒素性塩基の構造に基づいて、プリンおよびピリミジンに分割される。DNAにおいて、プリン塩基はアデニンおよびグアニンであり、ピリミジン塩基はチミンおよびシトシンである。RNAは、アデニン、グアニン、シトシン、および、チミンの代わりにウラシルを含む。核酸の前駆体として役立つこととは別に、ヌクレオチドは、細胞シグナリングおよび代謝の重要な補因子としても役立つ。これらの補因子は、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、フラビンモノヌクレオチド、アデノシン三リン酸(ATP)およびニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)を含む。DNAまたはRNA分子を形成するために、通常何千ものヌクレオチドが長鎖において相互に接続される。DNAオリゴヌクレオチドは、比較的少数の(オリゴ)ヌクレオチド塩基から成るDNAの短い断片である。
【0167】
本願明細書において用いられる用語「果皮」は一般に子房壁から生長する植物果実、例えばコーン穀粒、の壁を意味し、それは外側の外果皮、中心の中果皮および内側の内果皮を含む。
【0168】
本願明細書において用いられる用語「フィトグリコーゲン」は、グリコーゲンと類似の構造および類似の性質を有している植物多糖を意味する。例えば、スイートコーンに存在するフィトグリコーゲンは、高い分岐度の、平均単位鎖長13の水溶性グリカンである。
【0169】
本願明細書において用いられる用語「ポリヌクレオチド」は、鎖状に共有結合されたヌクレオチドモノマーで構成される有機ポリマー分子を意味する。DNA(デオキシリボ核酸)およびRNA(リボ核酸)は、異なった生物学的作用を有するポリヌクレオチドの例である。
【0170】
本願明細書において用いられる用語「多糖」は、例えば、グリコシド結合でつながれる多くの単糖からなる澱粉およびセルロースなど、あらゆる炭水化物類を意味する。
【0171】
本願明細書において用いられる用語「タンパク質」は、タンパク質をコーディングする遺伝子のヌクレオチドの塩基配列によって決定される、一つ以上の、特定の順序のアミノ酸の鎖から成る大きな分子を意味する。タンパク質は、細胞の構成、作用および制御のために必要であり、各々のタンパク質はユニークな作用を有する。
【0172】
本願明細書において遺伝子と関連して用いられている用語「劣性の」は、ホモ接合状態で表現型の影響が発現される遺伝子で、優性対立遺伝子がある場合(その遺伝子についてヘテロ接合の生物の場合)には、覆い隠される遺伝子を意味する。通常、優性遺伝子は機能的生成物を作製するが、劣性対立遺伝子は作製しない。通常、優性対立遺伝子は、一つの核につき、1つでも2つでもその表現型を発現するが、劣性対立遺伝子は優性対立遺伝子が全く存在しない場合にのみ発現する。
【0173】
本願明細書において用いられていている用語「種子」は、裸子植物および被子植物(雌雄性細胞)の有性の生殖周期において形成される、胚および貯蔵養分を取り囲んでいる保護膜を含む繁殖器官を意味する。一般的に、種子は、植物の受精胚珠内の小さく固い果実である。種子は、2つの主たる構成要素として、胚および胚乳を有する。胚乳は、胚に豊富な養分を供給して、長期間にわたって胚が徐々に生長できるように、養分を貯蔵する。大部分の種子は、活発な成長がない休止の一定期間を経る。この間に、種子は新しい場所へ問題なく運ばれ、および/または、生長に適した条件になるまで不適切な気候条件を乗り切ることができる。種子は胚を含み、さらに、大部分の植物では、種子は、種皮に包まれた貯蔵養分を含む。好適な生育条件下では、種子は発芽し始め、胚組織は生長を再開して苗へと成長する。種子、苗、発芽および植物成長についての付加的情報は、P. Raven らによる、 Biology of Plants (7th Edition, New York: W. H. Freeman and Company), 504-508 (2005)、および、B. Larkinsらによる, Cellular and Molecular Biology of Plant Seed Development (Kluwer Academic Publishers, 1997)に記載されている。
【0174】
本願明細書において用いられる用語「苗」は、種子の植物胚から発達する苗胞子体を意味する。苗の発育は、種子の発芽によって始まる。典型的な苗は、3つの主要な部分、 (i)幼根(胚の根)、(ii)胚軸(胚の苗条)、および、(iii)子葉(種子の葉)から成る。一般的に、発芽中、苗は、保護種皮からはじめに幼根を出し、その後、子葉を出す。幼根は重力の方向へ向かい、胚軸は重力と反対方向へ向かう。そして、胚軸は、細胞増殖して伸張し、地面から子葉を押しだす。概して、苗の生育は暗形態形成で開始するが、苗は土壌中で生長し、できるだけ速く光に到達するように成長する。通常、この段階中、子葉はきつく閉じており、土壌中を押し進む間、茎頂分裂組織の損傷を防ぐため、先端にフックを形成する。多くの植物において、さらなる保護のために種皮は子葉をまだ覆っている。地表からでて光に到達すると、苗の生育プログラムは光形態形成に通常切替えられる。子葉は、一般に光と接触して開き(まだ種皮が存在する場合、種皮を裂いて開く)、苗の第1の光合成器官を形成して緑色になる。この段階までは、苗は一般に種子に貯蔵されているエネルギーの蓄えを消費して生きる。子葉が開くと、一般に苗の第1本葉から成る茎頂分裂組織および幼芽が露出する。苗は、光レセプターフィトクロム(赤および近赤外光)およびクリプトクロム(青色光)で光を感知する。通常、苗は、一旦光合成を始めると種子のエネルギー備蓄にもはや依存しない。通常、頂端分裂組織は生長し始め、根(一般的に土壌表面下にある植物の器官)、および苗条(例えば茎および葉のような新規の植物成長)を増加させる。通常、第1の「本」葉が広がると、その種依存的に異なる形状により、丸い子葉とたいてい区別することができる。植物が生長して更なる葉を生じる間に、子葉は最終的に老化して落ちる。
【0175】
本願明細書において用いられる用語「分離比分析」は、対立性を確認するための方法を意味する。これは、ホモ接合であるが対象の遺伝子座に異なる対立遺伝子を含む2つの系統を交雑させることによって行うことができる。そうすると、予想されるメンデル分離パターンを試験するため、分離世代の対立遺伝子の分離を調べることができる。一般に、同じプローブに対するDNAフラグメントの相同性および多様なインブレッド系統間の相互排他性は、対立性の検定に妥当な性質である。
【0176】
本願明細書において用いられていている用語「自家受精」は、それ自身の柱頭上に花粉を置くことによって手作業で植物に授粉することを意味し、それは対立遺伝子をホモ接合性とすることができる品種改良戦略である。両親が同じ対立遺伝子のホモ接合である場合、この対立遺伝子は単に遺伝し、通常、子孫はこの同じ対立遺伝子のホモ接合となる。一方では、もし両親がホモ接合であるが異なる対立遺伝子、AおよびBのホモ接合であり、単交雑であれば、子孫はヘテロ接合体A/Bとなる。また、両親がホモ接合であるがAまたはBのホモ接合であり、多くの自家受精を伴うと、子孫はそれぞれ1/2となりうる。
【0177】
本願明細書において用いられる用語「sh2-i変異対立遺伝子」、「sh2-i対立遺伝子」、「sh2-i変異遺伝子」および「sh2-i遺伝子」は、本願明細書において記載され示される同じイントロンスプライス部位ポイントミューテーションを含む変異対立遺伝子または遺伝子を意味し、sh2-iとして、またはsh2-N2340のようないくつかの他の名称によって表され、本願明細書において記載されるような同じ特徴を与える。
【0178】
本願明細書において用いられていている用語「土」は、例えばトウモロコシ種子のような植物種子が一般的に植物へと適度に生長する、陸生植物の生長のための天然培地として役立つ、例えば地球の表面に存在する、遊離ミネラルまたは有機材料など、あらゆる種類の培地または培地の混合を意味する。このような培地は当業者に既知である。
【0179】
本願明細書において用いられる用語「澱粉」は、グリコシド結合で相互に結合する、多数のグルコース単糖単位を一般に含む多糖炭水化物を意味し、植物種子、球根および塊茎に存在する。澱粉は通常、主にアミラーゼおよびアミロペクチンとして存在する。植物は、多くのグルコースを貯蔵する方策として、および、ミトコンドリアの酸化的リン酸化中の食糧として澱粉を使用する。
【0180】
本願明細書において用いられている用語「スクロース」は、多くの植物に存在するグルコースおよびフルクトースから生成され、甘味料または防腐剤として広く使われている二糖を意味する。
【0181】
本願明細書において用いられる用語「糖」は、あらゆる二糖(例えばスクロース)および単糖(例えばフルクトースまたはグルコース)を意味する。糖は、生細胞の必須の構造成分であって、多くの生物(例えば植物)のためのエネルギー源である。植物は、エネルギーを貯蔵するために糖を用いる。糖は、分子に存在する単糖単位数に基づいて分類される。単糖が結合し、多くの複合糖類(例えば二糖)を形成する。
【0182】
本願明細書において用いられる用語「検定交雑」は、生物を、例えば未知の遺伝子型を有する植物を、ホモ接合劣性生物(テスター)に交雑させることを意味する。検定交雑は、未知の遺伝子型の個体またはヘテロ接合体(または多重ヘテロ接合体)をホモ接合劣性個体に対して交雑することである。
【0183】
本願明細書において用いられている用語「特徴」は、特徴的な品質または特徴に関し、通常、生物(例えばスイートコーン)の、例えば、スイートコーンの糖質含量のような、継承され得るおよび/または環境的に決定され得る表現型の特徴が異なる変異型である。植物育種の目的は、一般に、一つ以上の特性の性能が両親を上回る子孫を作製することである。かかる子孫(超越分離個体)は、例えば分離比分析のような当業者に周知の技術を用いて特定し得る。超越分離を観測するために、通常、様々な遺伝子座において好ましい対立遺伝子の点で相補的な両親を選択しなければならない。そうして交雑および遺伝子組換えによって、一方の親よりも好ましい対立遺伝子を含む子孫を生じることができる。
【0184】
本願明細書において用いられる用語「転写」は、DNAの命令下でのRNAの合成を意味する。RNA合成または転写は、RNA配列情報にDNAヌクレオチド配列情報を転写する過程である。両方の核酸配列は相補的言語を用い、その情報は、単純にある分子から他の分子に転写または複製される。DNA配列はRNAポリメラーゼによって酵素的に複製され、相補的ヌクレオチドRNA鎖(メッセンジャーRNA、すなわち、mRNA)が生成される。mRNAは、DNAの遺伝情報を細胞のタンパク質を合成する機構へ運ぶ。RNA配列とDNA配列との間の1つの重要な差異は、DNAのTすなわちチミジンの代わりにUすなわちウラシルが存在することである。タンパク質をコードしているDNAの場合、転写は通常、遺伝子からのタンパク質構成命令に忠実な転写産物である中間体mRNAの生産による遺伝子発現に関する第一段階である。1つのRNA分子に転写されるDNAの範囲は、転写単位である。タンパク質に変換されるDNA転写単位は、タンパク質に変換される配列をコーディングすることに加えて、タンパク質合成を命令および制御する配列を含む。(上流(-)、5’DNA末端に向かう)コード配列前の調節配列は5’非翻訳領域で、(下流(+)、3’DNA末端に向かう)コード配列後に見られる調節配列は、3’非翻訳領域である。DNA複製と同じように、RNAは、5’→3’方向に合成される。2つのDNA鎖のうちの一方のみが、転写される。この一方のDNA鎖は、RNA転写物のヌクレオチド配列を指示するテンプレートを提供するので、鋳型鎖である。もう一方のDNA鎖は、その配列が新しく作成されたRNA転写物と同様である(チアミンの代わりのウラシルを除いて)ため、コーディング鎖である。RNAポリメラーゼによってDNA鋳型鎖は、3’→5’で読まれ、新規なRNA鎖が5’→3’方向で合成される。ポリメラーゼは、DNA鋳型鎖上の遺伝子(プロモータ)の3’末端に結合し、5’末端へ移動する。転写は、翻訳開始前、翻訳開始、プロモーター除去、伸長および終了の5つの段階に分割される。転写についての付加的情報は、J. Berg J らによる、 Biochemistry (6th ed., San Francisco: W. H. Freeman, 2006)および R.J. Brooker, Genetics: Analysis and Principles (2nd ed., New York: McGraw-Hill, 2005)に記載されている。
【0185】
本願明細書において用いられていている用語「翻訳」は、ポリペプチド鎖を合成する過程を意味する。ポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、メッセンジャーRNAが転写される元となる遺伝子のDNAの塩基配列によって決定される。翻訳に関する付加的情報は、D.V.Limによる、Microbiology (3rd ed., Kendal/Hunt, 2003)に記載されているする。
【0186】
本願明細書において用いられていている用語「生長力」は、種まき後(すなわち、繁殖のために地面に種子を適当に蒔いた後)の時間を通じた植物成長および/もしくは葉体積の増加、並びに/または、種子、苗および/もしくは植物の強度および/若しくは成長のための力の発揮またはそれらの尺度を意味する。成長力は、文脈に応じて、例えば、強化された発芽、および/または、地面からの出芽を意味する。「活発」と言われ得る植物系統は、その系統が非常に健康に生える場合、様々な生体のおよび非生物的なストレスに耐性がありおよび/または高収率であり、最適状態に及ばない状態の下でおそらく安定である。生長力は、当業者に既知の方法によって、測定され、そして、異なる植物品種に対して(または特定の植物品種の範囲内の特定の系統に対して)パーセンテージ(0%から100%まで)で比較される。あるいは、一般に、特定の植物品種(または系統)の(種子、果実、野菜、植物および/またはその他の)生長および収穫が大きいほど、植物が有する生長力は高い。例えば、あるスイートコーン品種または系統は、他のスイートコーン品種または系統と比較して、10%より少ない穀粒を生産する。植物ハイブリッド「収穫生長力」(および他の生長力)を決定する1つの方法が、米国特許第7,084,320号B2に記載されている。生長力を決定する他の方法は、当業者に知られている。
【0187】
本願明細書において用いられている用語「収穫」は、植物(植物材料および/または種子生産性)に関し、例えば商業的に重要な特定の植物性産物の単位面積あたりの生産性である。例えば、大豆の収穫量は、季節ごとに、エーカーあたりの種子のブッシェルまたはヘクタールあたりの種子のメートルトンで一般に測定される。
【0188】
本願明細書において用いられている用語「野生型」は、変異前の固有または支配的な遺伝学的な構成に関し、通常、本来存在している遺伝学的な構成を意味する。
【0189】
(一般的説明および有用性)
本発明は、消費者及び商業的植物栽培者にとって、様々な非常に有益な特徴を付与され、有する、植物、例えばコーン穀粒などの植物材料および種子、そしてコーンを開発及び生産するための、ユニークで、費用効果的で、信頼性が高く、効率的で、そして、成功した方法を提供する。さらに、本発明は、これらの方法に従って作製された、改良および/または強化された植物、植物材料および種子を提供する。これらの、本発明による方法は、例えば比較的低い温度、乾燥条件、低養分およびその他の痩せた土壌状態、密集、病気、昆虫、動物、汚染などの、相当量の環境またはその他のストレスにさらされる場合でも、後述する(及びその他の)特徴または特性を一般に含む、多数の非常に有益なおよび好ましい特徴または特性を有する、インブレッド、ハイブリッドおよびその他の植物、植物材料並びに種子を非常に有利に提供する。コーン植物に関してこれらの有益な特性を以下に記載するが、他の植物種に関してもかかる特性を生じさせることができる。
【0190】
炭水化物含量が低く、したがって、初期およびその後のエネルギーレベルおよび/または水溶性の多糖類レベルが非常に低い、従来のshrunken-2(sh2)およびshrunken-2i(sh2-i)変異遺伝子コーン品種(および、野生型コーン品種のような他のコーン品種)と比較すると、コーン穀粒は乾燥種子の段階では外観上比較的ふっくらとしており、より高い炭水化物含量および水溶性多糖類(WSP)含量を有する。これにより、shrunken-2(sh2)およびshrunken-2i(sh2-i)変異遺伝子コーン品種(および他のコーン品種)と比較すると、植物の初期およびその後のエネルギーレベルおよび成長特性が非常に強化され、有利である。成長特性は、例えば、種子発芽、土壌からの苗の発生および植物発達の間の、比較的強い(そして、最大化された)コーンの生長力および適応性である。このような植物は、澱粉備蓄が比較的高いため、比較的強く且つ均一に成長し、したがって、植物生産者及び家庭の園芸家に非常に好ましいことに、植物が比較的丈夫になり、収穫量および植物収量が比較的多くなる。
【0191】
驚くべきことに、そのコーン穀粒は、従来のsugary-1(su1)、sugary enhancer-1(se1)およびshrunken-2(sh2)スイートコーン品種と比較して、さらには、これら3つの変異対立遺伝子の全てを含むスイートコーン品種と比較して、食感品質において有利に匹敵する。さらに、それらのスイートコーン品種(および他のスイートコーン品種、例えば野生型コーン品種)より、食感品質が良好な場合がある。上述のコーン穀粒は、全糖含有量が高い(多くの従来のコーン品種の糖質水準の2〜3倍)ので、従来のsugary-1(su1)変異遺伝子コーン品種および他のコーン品種と比較して、非常に好ましい甘みが感じられる。このことは、コーン穀粒が消費者の食用に供される際には、非常に好ましい。(コーン穀粒糖含量は、例えばガスクロマトグラフィなど当業者によって知られている方法を用いて定量化することができる。)最も食用に適した段階後(特に最も食用に適した段階直後1-14日間)のコーン穀粒の糖質貯留および糖質による甘味は、従来のsugary-1(su1)およびshrunken-2i(sh2-i)変異遺伝子コーン品種(および他のコーン品種)と比較すると非常に延長される。従来のsugary-1(su1)およびshrunken-2i(sh2-i)変異遺伝子コーン品種(および他のコーン品種)では、上述の期間に、糖質が澱粉に急速に転換する(糖質の損失が生じる)ことにより、コーン穀粒の甘味が減少し、甘味が劣化する前の収穫適期が最も食用に適した段階後すぐに終了してしまう。上述のような糖質貯留により、消費者にとって非常に有利なことに、コーン穀粒の甘味がより長く持続し、コーンの収穫適期がより長くなり、コーンの保持能力がより長く持続し、および最も食用に適した段階後甘味が悪化する前の期間である貯蔵寿命がより長くなるため、コーン生産者に対して非常に有利なことに、収穫及び取り扱い条件に非常に高い柔軟性をもたらす。従来のsugary-1(su1)およびshrunken-2i(sh2-i)変異遺伝子コーン品種(および他のコーン品種)と比較すると、最も食用に適した段階直後約1-14日の最も食用に適した段階(ピークの食感品質)、およびそれに続く現実的な期間で、コーン穀粒の澱粉蓄積を減少する。
【0192】
本発明の方法に従って作製されるハイブリッドトウモロコシ品種のコーン穀粒はなめらか且つ魅力的であり、甘く、柔らかく、ふっくらとしており、そしてクリーミーであり、世界中の消費者にとって非常に好ましい高い食感品質を有する。
【0193】
コーン育種家、コーン生産者、コーン栽培家、科学者その他は、上記各々および非常に好ましい生産量および消費者特性(すなわちこれらが統合された特性)を含むスイートコーンを生産することができなかった。更に、本発明の発明者は実験を行うことに4年以上を費やし、これらの非常に好ましい複合特性を有し、且つ、一つ以上の他の変異対立遺伝子とともにshrunken-2i(sh2-i)変異対立遺伝子を含むスイートコーンのハイブリッド種を成功裏に開発および栽培することを試み、そして、驚くべきことに、また、予想外なことに、最終的にこの目的を達成することができた。
【0194】
本発明の方法は、スイートコーンまたは他の植物に存在する特異的な変異対立遺伝子をshrunken-2i(sh2-i)遺伝子と組み合わせることができる。変異対立遺伝子は、sugary-1(su1)、sugary enhancer (se1)およびshrunken-2(sh2)を含むが、これに限定されるものではない。変異対立遺伝子は、shrunken-2i(sh2-i)遺伝子と結合してスイートコーン(または他の植物)ハイブリッドとなって発現される場合、スイートコーンに強化された成長特性、例えば、発芽および苗生長力を与え、さらには、上述したような他の非常に有益な特徴を与える。好ましくは、本発明による方法は、固有の、sh2-iと組み合わせて、su1 su1、se1 se1をシーケンシャルレイヤリングすることによって、商品保持能力(product holding ability)および貯蔵寿命に加えて、強化された苗発芽および生長力を維持することができる。
【0195】
本発明による方法は、上記の変異対立遺伝子を含む商業的な(および他の)ハイブリッド、インブレッドおよび他の植物系統の利用及び同定に関するものである。これらの植物系統は、単独でまたは組み合わせて利用及び同定され、さらに苗および植物の成長特性に関して従来の予想を上回るものである。これらの変異対立遺伝子は、特定の組み合わせに応じて異なる、強い甘味および薄い穀粒果皮を与える。
【0196】
本発明およびその目的によって解決される課題は、shrunken-2i(sh2-i)遺伝子を含むスイートコーンの炭水化物蓄積の制御および果皮柔軟性を操作することである。本願明細書において記載される実施例は、この課題を解決し、およびこの目的を達成するために行われた実験を記載する。
【0197】
本発明による方法に従って栽培し得る植物種子、植物材料および植物は、shrunken-2i(sh2-i)変異対立遺伝子と、少なくとも一つの他の有益な変異対立遺伝子とをゲノムに組み込まれて有することができる。少なくとも一つの他の有益な変異対立遺伝子は、変異sugary-1(su1)、sugary extender-1(se1)および/またはshrunken-2(sh2)を含むが、これらに限らない。これらの変異対立遺伝子は、発現されると本願明細書に記載するような、有益かつ複合的な生産者特性および消費者特性を与え、これらの特性は、当業者には明らかである。
【0198】
好ましい実施例において、本発明は、スイートコーンの変異sugary(su1)、sugary enhancer(se1)および/またはshrunken-2(sh2)対立遺伝子とshrunken-2i変異(sh2-i)対立遺伝子の、ユニークな逐次組み合わせまたは重ね合わせが関係するものである。変異sh2i対立遺伝子と組み合わせた、su1su1、se1se1のユニークなシーケンシャルレイヤリングは、生産物保持能力および貯蔵寿命とともに強化された苗発芽および生長力を維持するように機能し、および本願明細書において記載されている他の有益な特徴を有するスイートコーン(および他の植物)を提供する。
【0199】
(変異遺伝子のヌクレオチド配列)
本願明細書では、本発明の方法で使用し得るいくつかの変異遺伝子のヌクレオチド配列を記載する。本発明で使用し得る他の変異遺伝子のヌクレオチド配列、および関連したヌクレオチド配列、または他のヌクレオチド配列は、当業者に周知である供給元、例えばMaize GeneticsおよびGenomicsおよび/またはGenBankデータベースから容易に得られる。
【0200】
Maize GeneticsおよびGenomicsデータベースは、作物植物トウモロコシについての生物情報のためのコミュニティ・データベースであり、USDA Agricultural Research Serviceによって設立された。このデータベースを通じて、遺伝子、ゲノム、配列、遺伝子産物、機能的評価、参照文献および人/組織の連絡先などの情報を得ることができる。
【0201】
GenBank配列データベースは、オープンアクセスで、注釈つきの、全ての公的に利用可能なヌクレオチド配列およびそれらのタンパク質翻訳の情報の蓄積である。このデータベースは、国立衛生研究所(Bethesda, MD)の支所であるNational Centers for Biotechnology Informationにて作成され、Entrez検索エンジンによりオンラインで利用可能である。GenBankおよびその共同体は、世界中の研究室で作成される100,000以上の異なった生物の配列を受信する。それは指数関数的速度で増大し続け、18ヵ月ごとに2倍になる。それは、6千100万以上の配列に含まれる650億以上のヌクレオチド塩基を含む。
【0202】
(植物分子作用および分子マーカー)
植物分子作用のための標準材料および方法は、R. D. D. Croyによる、"Plant Molecular Biology Labfax" (BIOS Scientific Publications Ltd (UK) 及び Blackwell Scientific Publicationsによる共同出版、1993年、英国)、およびD. R. Duncanらによる"Methods in Molecular Biology, Plant Cell and Tissue Culture" (Humana Press, Clifton, NJ (1990))に記載されている。
【0203】
本発明による方法を導いた実験は、ゲノムのマーカーにより支援された選択の使用によって容易になった。
【0204】
分子マーカーは、植物育種家が比較的迅速かつ正確に、農業、園芸、ぶどう栽培、および、装飾産業のための植物を改良する、きわめて重大な形質を選択するために役立つことができる。それらは、また、ハイブリッド、変種およびインブレッド純度に関して、品質保証担当者が適切な判定をするのに役立つことができる。
【0205】
DNAベースのマーカーの適用により、植物育種家が分子レベルで物理的特徴を同定することが可能となり、そして植物品種の作成および複製の際の科学的な方法が可能となる。植物育種および種子生産プログラムは、分子マーカーを適用して、特性の選択およびマッピングを行い、または品種およびハイブリッドの遺伝子型を決定することによって、改良することができる。分子マーカーは、植物の分離集団を必要とする、量的形質を制御する遺伝子座の位置を決めておよび比較するための手段を提供する。各分離集団の遺伝子型は分子マーカーを用いて決定されうる。
【0206】
特定の特性を制御する遺伝子に密接に関連する個体群の両親間の多型を示す分子マーカーは、主にその遺伝的および観察可能な特性によって相互に分離する(すなわち、遺伝子の影響が大きい場合、表現型に従って分離する)。そして、植物が特性の発現に従って分類され、そして、極端なグループを多型マーカーで試験すると、それぞれ、2つのバルクのうちの一方の中にある2つのマーカー対立遺伝子の頻度は、大部分の個体群に予想される1:1の比率からかなり離れる。現在、多くの種で、多くの分子マーカーの染色体位置が決定されおり、必ずしも分離集団の各個体について遺伝子型を決定しなくても、密接に関連する遺伝子の地図位置を推測することができる。分子マーカーをトウモロコシその他の作物および植物の複合個体群に用いることで、様々な形質を伴う量的形質遺伝子座の位置を決めることができる。
【0207】
対照的に、従来の植物育種は、主に、方向性のあるハイブリダイゼーションにより生じた分離後代に含まれる所望の固体の表現型を選択することに基づいて行われてきた。いくつかの場合において、分離集団由来の植物は、形質の表現型発現に従って分類することができ、および個体群バルク間でバルク分離体分析(BSA)または他の方法を用いて対立遺伝子頻度の相違を試験することができる。アイソザイム、RFLP、RAPDなどの、遺伝子地図を作成するために用いたプローブと同じプローブは、BSAのために用いることができる。農学的に好ましい形質の表現型選択による作物改良により進歩してきたが、かかる過程の間にたいてい重大な問題に直面する。それらの問題は、遺伝子型環境相互作用、上位性および多面発現性の影響、または多数の他の因子により起こり得る。スイートコーン変異対立遺伝子の同定および定量は、表現型による同定および選択の不足によって特に妨げられる。
【0208】
特定の変異遺伝子の酵素の基礎が知られていない場合であっても、および酵素をコードしている遺伝子のヌクレオチド配列が知られていない場合であっても、およびMaize GeneticsおよびGenomicsまたはGenBankデータベースに存在しない場合であっても、本願明細書において詳細に実施例で記載されているように、依然として、遺伝子を含んでいる染色体上の近くの分子マーカーを追跡することによって、当業者は、遺伝子の遺伝を決定することができる。
【0209】
記載される実施例において用いられている分子マーカーのためのプライマーは公的に利用可能であり、インターネットサイトmaizegdb dot orgのMaize GeneticsおよびGenomicsデータベースにおいて見つけることができる。次のものは、役立つ分子マーカーの実施例用のプライマーである。
【0210】
(染色体2上のse1対立遺伝子の分子マーカー用のプライマー)

umc1551:
CACCGGAACACCTTCTTACAGTTT
CGAAACCTTCTCGTGATGAGC

bnlg1520:
TCCTCTTGCTCTCCATGTCC
ACAGCTGCGTAGCTTCTTCC

phi427434:
CAACTGACGCTGATGGATG
TTGCGGTGTTAAGCAATTCTCC

umc2077:
CTGGTTCGGATGCAAGTAGTCAG
AAACTCACTGAACATGATCCTGGC
【0211】
(染色体3上のsh2対立遺伝子の分子マーカー用のプライマー)
umc2174:
ACATAAATAAAACGTGTGCCGCAG
GTACGTACGCAGCCACTTGTCAG

dupssr33:
GTGCTTGGGACAAAAAGG
AGTCCACTCCAGAGGATG

bmc1257:
CGGACGATCTTATGCAAACA
ACGGTCTGCGACAGGATATT

umc2277:
CTCTTCACGCTCAATAAACCCAGT
TAACTGCAGAAACGGTGGTCAATA
【0212】
(染色体4上のsu1対立遺伝子の分子マーカー用のプライマー)
phi295450:
CCTTTTCATGTTGCTTTCCC
GCCCAATCCTTCCTTCCT

phi308090:
CAGTCTGCCACGAAGCAA
CTGTCGGTTTCGGTCTTCTT

phi076:
TTCTTCCGCGGCTTCAATTTGACC
GCATCAGGACCCGCAGAGTC

phi079:
TGGTGCTCGTTGCCAAATCTACGA
GCAGTGGTGGTTTCGAACAGACAA
【0213】
市販のトウモロコシマーカーライブラリ、具体的には単純反復配列(SSR)は形質識別のために用いられることができ、および当業者に周知の供給元から調達することができる。例えば、STA Laboratories(Longmont、CO)は、種子、植物育種、アイソエレクトリックフォーカシング(IEF)を用いたハイブリッド純度および品種の同定に関連する市販の分子マーカーおよびマッピングサービスを提供する。この会社は、特異的なスイートコーン変異対立遺伝子の同定しおよび組み込み用の分子サービスを提供する。
【0214】
本発明による方法を導いた実験では、市販のトウモロコシマーカーライブラリ、具体的には、単純反復配列(SSR)が取得されて、形質同定に用いられ、約330のSSRマーカーが、主にsugary-1(su1)、sugary enhancer-1(se1)およびshrunken-2(sh2)の公開されているゲノム染色体部位を対象として検定された。
【0215】
SSRマーカーライブラリと共に、専用(proprietary)のスイートコーンNIL(準同質遺伝子系統)が用いられ、マーカー有効性が評価され、また、変異sh2-i遺伝子との組み合わせのための特異的な好ましい変異対立遺伝子が作製された。特に重要な準同質遺伝子系統は以下の通りであった。
(i) Su1Su1 se1se1 sh2sh2
(ii) su1su1 se1se1 sh2sh2
【0216】
植物の分子マーカーライブラリおよび遺伝子地図の活用法についての付加的情報はA. Kalinskiによる、"Molecular Markers in Plant Genome Analysis" (Diane Publishing Co., 1995)、および H. Lorz らによる, "Molecular Marker Systems in Plant Breeding and Crop Improvement," (Springer, 2007)に記載されている。
【0217】
(植物を栽培および収穫する条件)
例えばスイートコーンなどの植物を適切におよびうまく植え、栽培しおよび収穫する方法は当業者に既知である。一般的に、例えば、スイートコーンは、約1インチの深さで種まきされ、十分な日光のもと、約6〜約6.5の範囲のpHを有する土壌にて栽培される。受精は、スイートコーン植物が、背の高い品種では、約12インチの高さ、および他の品種では約18"から約24"までの高さに達するとき、一般的に行われる。苗が発生したあと、スイートコーン植物は一般的におよそ64日で収穫される。当業者に周知のように、前述の条件は多様であり得る。
【0218】
スイートコーンおよび他の植物をどのように植え、栽培し、および、収穫することができるかについて記述する刊行物には、B.R. Lernerらによる、"Growing Sweet Corn," Department of Horticulture, Purdue University Cooperative Extension Service, Vegetables HO-98-W, 1-3 (2001)、 J. R. Schultheisによる、"Sweet Corn Production," North Carolina Cooperative Extension Service, North Carolina State University, Revised 12/94、 D. L. Larsonによる、 "Supersweet Sweet Corn: 50 Years in the Making," Inside Illinois Vol. 23, No. 3 (2003), University of Illinois at Urbana-Champaign News Bureau、および、 "Sweet Corn," Oregon State University, Horticulture 233 webpageなどがある。
【0219】
STA Laboratories社(Longmont、CO)は、苗成長力イメージングシステム(Seedling Vigor Imaging System:SVIS)やその他の種子分析サービスを用いて、物理的純度および成長力分析を行う。登録種子科学技術者(Registered Seed Technologists:RST)は、米国および海外の種子の表示規制に応じるための統一検定基準を保証する。STA Seed Health Laboratories社は、米国健全種子システム(National Seed Health System(NSHS))で公認されたUSDAである。
【0220】
(他の変異)
本願明細書において記載されている変異対立遺伝子の一部またはすべてをコードするヌクレオチド配列の欠失、添加および置換は、通常の(変異のない)ヌクレオチド配列と実質的に同じ表現型および特徴が表れる限り本発明の範囲内と考慮する。
【0221】
本発明の範囲内で考慮されるイントロンのヌクレオチド変異も、植物AGPポリペプチドまたは他のタンパク質または酵素をコードする遺伝子の他の変異と関連または組み合わせて用いられ得る。これらの他の変異は、変異対立遺伝子を発現する植物で、例えば熱安定性、耐病性および他の好ましい特徴の他の作物学的に好ましい形質を与える、野生型配列の変異を含むが、これに限定されるものではない。
【0222】
Shrunken-2(sh2)ゲノムのヌクレオチド配列のイントロン2の末端ヌクレオチドの変異は、本願明細書において特に例証される。しかしながら、他のShrunken-2(sh2)イントロンの末端ヌクレオチドの変異も、これらがイントロン2での変異と関連する特徴と実質的に同じ特徴、すなわち、対立遺伝子を発現する植物に対して、野生型Shrunken-2(sh2)の対立遺伝子を発現する植物と同等またはよりよい発芽および苗生長力を与え、さらに、例えばSh2-R対立遺伝子など野生型以上の甘味を提供する変異体に匹敵するか、それよりも高い食品品質または味覚品質を有する限りにおいて、本発明の範囲内である。当業者および本願明細書において記載されている教示に対する利益がある者は、遺伝子の他のイントロンの変異を容易に調製することができ、また、変異するイントロンが植物に所望の特徴を与えるかどうか決定することができる。
【0223】
本発明の範囲内で考慮される植物は、例えば、野菜または果実の高いショ糖含量および発芽、苗および植物成長生長力が所望の特徴である、トウモロコシ、スイートピー、トマト、バナナおよび他のいかなる植物を含む。本発明の範囲内で考慮される他の植物は本願明細書において他で記載されているものを含む。また、本発明の範囲内で考慮されるのはここに記載されているポリヌクレオチドを含む植物材料、例えば植物組織、細胞または種子である。
【0224】
(更なる参照文献)
次の更なる参照は、本発明を実施するにあたって関連し、且つ有効であり得る。T. Maniatis et al., "Molecular Cloning: A Laboratory Manual" (2d Edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989)、D.R. McCarty, "A Simple Method for Extraction of RNA from Maize Tissue," Maize Genet. Coop. Newslett. 60: 61 (1986)、 A. Gutierrex-Rojas, "Phenotypic Characterization of Quality Protein Maize Endosperm Modification and Amino Acid Contents in a Segregating Recombinant inbred Population," Crop Sci 48, 1714-1722 (2008)、 L. Hannah et al., "Characterization of Adenosine Diphosphate Glucose Pyrophosphorylases from Developing Maize Seeds," Plant Physiol. 55:297-302 (1975)、 L. Hannah et al., "Characterization of ADP-Glucose Pyrophosphorylase from Shrunken-2 and Brittle-2 Mutants of Maize," Biochemical Genetics 14(7,8): 547-560 (1976)、 M.J. Giroux et al., "ADP-Glucose Pyrophosphorylase in Shrunken-2 and Brittle-2 Mutants of Maize," Molecular & General Genetics 243(4): 400-408 (1994)、 L. Shailesh et al., "The AG Dinucleotide Terminating Introns is Important but not always Required for Pre-mRNA Splicing in the Maize Endosperm," Plant Physiology 120(1): 65-72 (1999)、 M. Clancy et al., "Maize Shrunken-1 Intron and Exon Regions Increase Gene Expression in Maize Protoplasts," Plant Science 98:151-161 (1994)、 J. Callis et al., "Introns Increase Gene Expression in Cultured Maize Cells." Genes & Development 1:1183-1200 (1987)、 K.R. Luehrsenet al., "Intron Creation and Polyadenylation in Maize are Directed by AU-rich RNA," Genes & Development 8:1117-1130 (1994)、 V.L. Van Santen et al., "Splicing of Plant Pre-mRNAs in Animal Systems and Vice Versa" Gene 56:253-265 (1987)、 V. Vasil et al., "Increased Gene Expression by the First Intron of Maize Shrunken-1 Locus in Grass Species" Plant Physiol. 91:1575-1579 (1989)、 J. Anderson et al., "The Encoded Primary Sequence of a Rice Seed ADP-glucose Pyrophosphorylase Subunit and Its Homology to the Bacterial Enzyme," The Journal of Biological Chemistry 264(21): 12238-12242 (1989)、 J. Anderson et al., "Molecular Characterization of the Gene Encoding a Rice Endosperm-Specific ADP Glucose Pyrophosphorylase Subunit and its Developmental Pattern of Transcription," Gene. 97:199-205 (1991)、 L. Copeland et al., "Purification of Spinach Leaf ADPglucose Pyrophosphorylase," Plant Physiol. 68:996-1001 (1981)、 M. Morellet al., "Affinity Labeling of the Allosteric Activator Site(s) of Spinach Leaf ADP-glucose Pyrophosphorylase," The Journal of Biological Chemistry 263(2): 633-637 (1988)、 B. Muller-Roberet al., "One of two Different ADP-Glucose Pyrophosphorylase Genes from Potato Responds Strongly to Elevated Levels of Sucrose," Mol. Gen. Genet., 224:136-146 (1990)、 P. Nakata et al, "Comparison of the Primary Sequences of Two Potato Tuber ADP-Glucose Pyrophosphorylase Subunits," Plant Molecular Biology 17:1089-1093 (1991)、 T. Okita et al, "The Subunit Structure of Potato Tuber ADPglucose Pyrophosphorylase," Plant Physiol. 93:785-790 (1990)、 M. Olive et al, "Isolation and Nucleotide Sequences of cDNA Clones Encoding ADP-Glucose Pyrophosphorylase Polypeptides from Wheat Leaf and Endosperm," Plant Molecular Biology 12:525-538 (1989)、 B. Keith et al, "Monocot and Dicot Pre-mRNAs are Processed with Different Efficiencies in Transgenic Tobacco," EMBO J. 5(10): 2419-2425 (1986)、 and Z. Kiss-Laszloet al., "Splicing of Cauliflower Mosaic Virus 35S RNA is Essential for Viral Infectivity," EMJO J. 14(14): 3552-3562 (1995)。
【0225】
(成分、材料および器材の供給元)
実施例において使用され、通常、本発明の方法で使用される成分、材料および器材のすべては当業者に既知の供給元から市販される。例えば、Abbott and Cobb社(Trevose、PA)、the Maize Stock Center (Urbana/Champaign, IL)、 STA Laboratories (Longmont, CO)、 GenBank (Bethesda, MD)、 The Maize Genetics and Genomics Database、 the American Tissue Culture Collection (ATCC) (Rockville, MD)、 Applied Biosystems (Foster City, CA)、 Response Genetics社 (Los Angeles, CA)、 Transgenomic (Omaha, NE)、 DiaPharma Group社 (West Chester, OH)、 Biomol GmbH (Hamburg, Germany)、 DxS Ltd. (Manchester, UK)、 Invitrogen (Carlsbad, CA)、 Syngenta Seeds社 (Stanton, MN)、 Rogers (Wilmington, DE)、 Monsanto Corporation (St. Louis, MO)、 Garst Seed Company (Slater, IA)、 Holden Foundation Seed (Williamsburg, IA)、 The University of Florida (Gainesville, FL)、 Life Technologies (Gaithersburg, MD)、 Alpha Innotech Corporation (San Leandro, CA)、 Amersham International PLC (Arlington Heights, IL)、 and Molecular Dynalics (Sunnyvalle, CA)である。例えば、アプライドバイオシステムは、そのウェブサイト(applied biosystems dot com) およびその他を通じてDNA塩基配列決定、(ライ
ゲーション、キャピラリー電気泳動などによる)DNA合成、DNAおよびRNA変更および標識化、DNAおよびRNA精製、遺伝子発現、遺伝子型決定、PCR、ペプチド合成、タンパク質配列、転写、翻訳、様々なアッセイのための、多種多様な製品およびコンピュータソフトウェアを国際的に販売する。これらは、例えば、本発明を実施するために当業者によって容易に使用され得る発現ベクター、プローブ、プライマーなどである。
【0226】
次の実施例は、本発明の方法を図と共に説明する。これらの実施例は、単に本発明の実例とすることだけを目的とし、範囲および趣旨のどちらも制限しない。当業者は、実施例に記載されている方法において使用されるその条件の特定の変異および/またはステップを使用することができると容易に理解するであろう。これらの実験がスイートコーン穀粒および植物を用いて行われたが、そこにおいて記載されている同じ方法は、他の植物種子および植物、例えば本願明細書において他で記載されているものに使用され得る。
【0227】
(実施例1)
(親およびインブレッド準同質遺伝子系統(NIL)の作成)
この実施例で記載されている実験において、変異sh2-i遺伝子を含んでいるスイートコーンの炭水化物蓄積量の範囲および果皮柔軟性を操作するという問題を解決するために、適切な親の準同質遺伝子系統(NIL)は、以下に記載した方法および/または当業者に既知の方法により、以下の遺伝子型で構成される。
(1) Su1Su1 Se1Se1 sh2sh2 =標準の食感品質を有する、従来の市販の「スーパースイート」タイプ
(2) Su1Su1 se1se1 sh2sh2 =非常に望ましい食感品質を有する、従来の市販の「スーパースイート」タイプ
(3) su1su1 se1se1 sh2sh2 =別格の食感品質を有する新種の限られた市販タイプ
【0228】
STA Laboratories社(Longmont, CO)は、識別および特定のスイートコーン変異対立遺伝子を同定し、トウモロコシ植物のゲノムに組み込む分子サービスの提供を支援してきた。市販の適切な、トウモロコシマーカーライブラリ、具体的には、単純反復配列(SSR)は、形質同定のために取得されてきた。約330のSSRマーカーが、主にsu1、se1およびsh2を対象の公開されているゲノム染色体部位を対象として検定された。
【0229】
NILを、当業者に既知の、反復親を適切に再構築するための方法で、十分な回数にわたり戻し交雑および自家授粉した。
【0230】
分子マーカーは、当業者に既知の、特にsu1およびse1変異対立遺伝子の識別を助けるための方法で利用された。これらの分子マーカーは、sh2-i変異遺伝子を組み込むことにより、su1、se1またはsh2変異遺伝子の発現を被覆する優性表現型が提供されるという点で、変異遺伝子型の識別に有効であった。
【0231】
最初に使用することを特に考慮されたのはsu1su1 se1se1 sh2sh2 NILトリプル劣性の対立遺伝子の併用であった。この特異的な組合せは、トウモロコシに対するsh2-i遺伝子の組み込みに伴う澱粉の急速な蓄積を相殺することができる澱粉欠陥遺伝子の戦略的な組み合わせとして選ばれた。そして反復親であるsu1su1 se1se1 sh2sh2 NILの戻し交雑は、フロリダ大学のC. L. ハンナ博士によって提供されたドナーsh2-i源を使用して始められた。(変異sh2-i遺伝子(およびその配列)は、米国特許第6,184,438号B1において詳細に図と共に記載されている。)この遺伝子供給源は、su1およびse1遺伝子の状態を決定するために適切な遺伝子系統へ検定交雑された。検定交雑の結果により、供給源は、sugary-1(su1)およびsugary enhancer(se1)遺伝子に関連するSu1Su1 Se1Se1であることを確認できた。
【0232】
BC1-S1個体群由来のコーンの穂先は、表現型的に調べられた。(BC1-S1はA&C育種個体群であり、および用語「BC1-S1」は最終産物の進行に関する時の、遺伝学的な、または植物育種家の用語である。本例での最終産物は、sh2-i変異対立遺伝子を添加するべき反復親の再構成である。)su1、sh2およびsh2-i穀粒タイプを単離するBC1-S1穂先のみが、連続して戻し交雑する(continued backcrossing)ために選択された。変異sh2sh2形態学的穀粒外観は、乾燥種子が外観上、半透明であり、非常にしぼんでおり、およびしわが寄っているという点で異なっている。変異sh2-i穀粒表現型は、なめらかで、より重く、よくふくらんでおり、フリント飼料用コーン(なめらかな外被を有する丸い穀粒を有している)に外観が良く似ている。図10に示し、また、本願明細書の他の箇所で説明するように、穀粒表現型は分子マーカーによって確認される。結果的に、BC2-S1選択穂先について、たった2つの表現型に限定されたことは、sh2-i遺伝子を発現する穀粒は、su1su1 sh2sh2遺伝的背景に重ねられたものであるということの確認になった。
【0233】
そして、BC1-S1選択sh2-i表現型由来の穀粒が、植えられ、およびse1se1の遺伝子確認されたインブレッドに検定交雑された。分子マーカー遺伝子確認は、付随して実行された。ホモ接合se1検定交雑で陽性であり、se1分子確定(molecular confirmation)を示している植物のみ、連続して戻し交雑し、自家受精および検定交雑し続けた。戻し交雑、自家受精および検定交雑、並びに分子確定は、6サイクル連続させた。この時点で、変異sh2-i遺伝子を包含させることによって、元々のsu1su1 se1se1 sh2sh2 NILは、適切に変換されたと考えられた。これらの、表現型的および分子的に確認された、トウモロコシの穂先が、su1su1 se1se1遺伝的背景の上に重ねられたsh2-i穀粒になったことを確認した。結果として生じる穀粒表現型は、なめらかで、ふくらんでいで、および比較的重い穀粒を有する外観上はsh2-i遺伝子を発現する穀粒の表現型と、主に類似だった。
【0234】
su1su1 se1se1 sh2sh2 NILインブレッドsh2-i転換穀粒について、実験用の暖温土および低温土での発芽試験を行い、変異sh2-i遺伝子(およびドナーsh2-i)に関連する良好な苗特性を検査した。実際の低温フィールド土壌試験も行って、改良された発芽および苗生長力を更に確認した。
【0235】
su1su1 se1se1 sh2sh2 NILについて、そのsh2-i対照物の穀粒に対して官能味覚試験を実行すると、澱粉合成が僅かに上昇したが、有意ではなかった。
【0236】
図10-1〜図10-21は、個々のインブレッドのNILサンプルの分子地図である。この分子地図において、
・ サンプル1-2(それぞれ、017および044)は、遺伝的に、Su1Su1 Se1Se1 sh2sh2である。
・ サンプル3-7(それぞれ、006、007、009、047および637)は、遺伝的に、Su1Su1 se1se1 sh2sh2である。
・ サンプル8-13(それぞれ、001、046、048、049、109および354)は、遺伝的に、su1su1 se1se1 sh2sh2である。
・ サンプル14は、変異sh2-i遺伝子の供給源である。
【0237】
図10-1〜図10-21に、Se1、Su1およびSh2サイトとして特徴づけられたといわれている染色体領域を強調表示する。多数の分子マーカーは、遺伝子型の同定において有効であった。特に、「umc 1551」と表わされる分子マーカーは、se1se1キャラクタリゼーションにおいて効果的であり、および「phi 079」として表わされる分子マーカーは、su1su1同定を行う際に、同じように効果的であった。図10-1〜図10-21に示される多数の他のマーカーは、マーカー支援割当を行ううえで、単独でまたは組み合わせで有用だった。
【0238】
(実施例2)
(分子マーカーおよびse1se1/su1su1遺伝的背景を使用したスイートコーンハイブリッドACX SS 7501Yの生産、およびその試験)
【0239】
この実施例で記載されている実験において、ACX SS 7501Yと表すスイートコーンハイブリッドが開発され、および試験された。
【0240】
変異sh2-i遺伝子は、実施例1で述べられるように、選択されたインブレッドコーン系統に組み込まれた。これらのインブレッドは、園芸基準および種子生産基準に基づいて選択された。
【0241】
ピークの食用段階後の容認できない澱粉合成および蓄積により、2つのsh2-i親のコーン系統の使用に基づくハイブリッドを作ることはできないことが、官能試験によって明らかになった。最良の代替案は、高品質の従来の雄性親のコーン系統と、sh2-i雌性コーン系統とを掛け合わせた構成のハイブリッド世代であることが確認された。
【0242】
商業的なトウモロコシ生産では、sh2-i転換インブレッドは、雌性親系統としてのみ使用されることとなった。この結論は多くの要因を根拠とする。雌性親としてsh2-i転換親を使用する、かかる要因のひとつは、その穀粒果皮が2Nであり、母性遺伝したという事実に基づくものである。雌性親としてsh2-i親を利用することで、sh2-i遺伝子の強化された発芽力および苗生長特徴が維持される。加えて、商業的な種子生産収率は、sh2-i種子の親系統の優れた発芽及び成長力の結果として、大幅に改良されるであろう。
【0243】
戦略的に、雄性親の遺伝子型は、所望の園芸品質を与える能力以外に、主に、高い食感品質への寄与に基づいて選択された。su1su1 se1se1 sh2sh2変異対立遺伝子を含む、雄性親の遺伝子型が使用された。
【0244】
上述のようにして作ったスイートコーンハイブリッドの官能評価は当業者に既知である方法を使用して行われた。かかるハイブリッドは、その発芽、苗生長力および全体としての作物生産性が高められたことから、コーン栽培家に有意な利益を与えると見られていた。加えて、これらのハイブリッド商品の消費者は、商品食感品質および貯蔵寿命の延長に関する有益な利益を享受した。
【0245】
図7は、ピークの食用段階の直後7日の一定期間にわたる3つのスイートコーン品種の比較官能糖質のスコアを示す。商業品種Passionは、モンサント(St. Louis, MO)を通じて販売および流通される。商業品種Beyondは、Abbott and Cobb社 (Trevose, PA)を通じて販売および流通され、主に東南の商業海運市場で標準的に取り扱われる。ACX SS 7501Yとして表される品種は、実施例1および2に従って作られるハイブリット品種である。官能スコアは、1(相当な澱粉風味を有し、甘味が非常に少ない)から10(ほとんど澱粉風味の無い甘味)までの範囲である。図7は、ACX SS 7501Yハイブリッドコーン品種は非常に有利に官能甘味スコアを、この7日間の間、常にPassionおよびBeyondの両コーン品種を超えて維持し、PassionおよびBeyondコーン品種とは対照的に、最も食用に適した段階を1〜2日過ぎてもスコア10を維持したことを示す。また、ACX SS 7501Yハイブリッドコーン品種が、(Passionはスコア約5であり、Beyondはスコア約3であったことと比較して)7日目では官能甘味スコア約8を有していることを示す。7日の試験期間にわたって、PassionおよびBeyondの比較品種と比べて、ACX SS 7501Yハイブリッドコーン品種は非常に高い甘味水準を保持し、維持した。
【0246】
図8は、ピークの食用段階の直後の7日間にわたる、図7に示されるものと同じ3つのスイートコーン品種の間を比較した官能果皮および柔らかさのスコアを示す。官能スコアは、1(非常に堅い果皮)から10(非常に柔らかい果皮)まで変動する。図8は、ACX SS 7501Yハイブリッドコーン品種は、非常に有利に、この7日間、常にPassionおよびBeyondコーン品種よりも高い官能果皮および柔らかさのスコアを維持したことを示す。また、ACX SS 7501Yハイブリッドコーン品種は、7日目に官能果皮および柔らかさのスコア約7であったことを示す(これに対して、Passionはスコア約5であり、Beyondはスコア約2であった)。7日の試験期間にわたって、ACX SS 7501Yハイブリッドコーン品種は、PassionおよびBeyondの比較品種と比べて非常に高い果皮柔軟性水準を保持し、維持した。ACX SS 7501Yハイブリッドコーン品種は、非常に柔らかくて、および優れた保持能力を有することが認められた。
【0247】
(実施例3)
(分子マーカーおよびse1se1/su1su1遺伝的背景を使用したスイートコーンハイブリッドACX SS 7078YおよびACX SS 7403RY生産、およびその試験)
この実施例で記載されている実験において、更なるスイートコーンハイブリッドはsh2-i遺伝子を利用して作成され、そしてその後に試験される。それらのハイブリッドは、実施例1および2に記載されている、スイートコーンハイブリッドACX SS 7501Yのための品種改良方法と同様の品種改良方法に従って作られた。両方の品種は、se1se1およびsu1su1遺伝的背景の上に、本明細書中に既に記載した分子マーカーを利用して、sh2-i遺伝子を重ねることによって作られた。
【0248】
その結果生じた、特に重要な2つsh2-iスイートコーンハイブリッドは、ACX SS 7078YおよびACX SS 7403RYと表わされるものであった。スイートコーンハイブリッドACX SS 7078Yは、ゲノムに組み込まれたはsh2-i変異対立遺伝子を有さないACX 1073YというAbbott and Cobb社の市販のハイブリッドのアイソジェニック変換体(isogenic conversion)である。同じように、ACX SS 7403RYは、ゲノムに組み込まれたはsh2-i変異対立遺伝子を有さないACX 7473RYというAbbott and Cobb社 の市販品種のアイソジェニック変換体である。これらの、sh2-i遺伝子を含む両方のハイブリッドの開発において、これらのアイソジェニックハイブリッドは、本願明細書において記載されていておよび/または当業者に公知である方法を使用して同定される場合、園芸的特徴および形態学的特徴のすべてにおいて、ほとんど同一であることがわかった。
【0249】
表3に、スイートコーン品種ACX1073Y、ACX SS 7078Y、ACX 7473 RYおよびACX SS7403RYについての、官能試験の結果得られたデータと、研究室における暖温および低温での発芽の実際の比較の結果得られたデータを示す。発芽データは、100個の穀粒について3回反復実験した値の平均値を反映したものであり、同一アルファベットを付していない発芽スコアは、ダンカンの新多重範囲検定による確率水準0.05にて有意に異なる値である。本明細書では、甘さ及び果皮柔軟性についての官能試験については既に記述した。図3は、sh2-i突然変異遺伝子がスイートコーンゲノムに加えられた両方の場合において、アイソジェニックハイブリッド比較の暖温および低温び研究室スコアが高められたことを示し、それは強化されたフィールド発生および生長力を示す。表3はまた、変異sh2-i遺伝子を含んでいる2つのスイートコーン品種が、この遺伝子を含まなかった2つのスイートコーン品種(最も食用に適した段階直後の7日間において7日目にスコア6または5を有する)より非常に有利に、より長くそれらの甘味を保持したこと(7日目にスコア8を有する)を示し、および、遺伝子を含まない2つのスイートコーン品種(最も食用に適した段階直後の7日間において7日目にスコア6または5を有する)よりも、より長く果皮の柔らかさの保持を有した(7日目にスコア7を有する)ことを示す。表3に示す甘味および果皮柔軟性スコアは、付随の好ましい貯蔵寿命および保持している能力とともに、良好な食感品質水準を示す。
【表3】

【0250】
(実施例4)
(分子マーカー、並びにse1se1/su1su1遺伝的背景を使用しないスイートコーンハイブリッドAC 151YとAC188Wの生産、およびそれらの試験)
この実施例に記載されている実験において、sh2-i遺伝子を利用して更なるスイートコーンハイブリッドが開発され、試験された。これらのハイブリッドは、実施例1、2および3に記載されているのと同じ品種改良方法に従って作られたが、例外的に、変異sh2-i遺伝子を含むインブレッド系統は、すでに本願明細書で記載するような分子マーカーを利用せずに、且つse1se1/su1su1対立遺伝子を組み込まずに作られた。対照的に、本実施例では、分子マーカーを利用してse1se1およびsu1su1遺伝的背景の上にsh2-i遺伝子の配列を重ねる前に、遺伝子アセンブリ(genetic assembly)を構築することは必要であると考えられた。
【0251】
特に重要な作成されたスイートコーンsh2-iハイブリッドは、AC 151YおよびAC 188Wと表されるものである。
【0252】
インブレッド系統AC 151Y(変異sh2-i遺伝子を含む)は、AC 128Y(変異sh2-i遺伝子を含まない)として表わされるAbbott and Cobb社のインブレッドのアイソジェニック対照物である。この実施例のこれらの2つのインブレッド系統との間の唯一の有意な遺伝子の相違は、インブレッド系統AC 151Yの変異sh2-i遺伝子の存在である。
【0253】
インブリッド系統AC 188W(変異sh2-i遺伝子を含む)は、ACR 5147WというAbbott and Cobb社 ハイブリッド(変異sh2-i遺伝子をゲノムに含まない)のアイソジェニック対照物である。ここでも、この実施例のこれらの2つのインブリッド系統間の唯一の有意な遺伝子の相違は、AC 188Wの変異sh2-i遺伝子の存在である。
【0254】
下記の表4は、スイートコーン品種AC 151Y、AC 128Y、AC 188W およびAC 116Wの、研究室での暖温および低温発芽データおよび官能試験の結果を実際に比較したデータを示す。発芽スコアは、100個の穀粒について3回反復実験した値の平均値である。同一アルファベットを付していない研究室スコアは、ダンカンの新多重範囲検定による確率水準0.05にて有意に異なる値である。甘味および果皮柔軟性に関する官能試験は、本明細書で既に記載されている。表4は、sh2-i変異遺伝子がスイートコーンゲノムに加えられた両方の場合において、アイソジェニックのハイブリッド対照体の暖温および低温研究室スコアは高められたことを示し、それは強化されたフィールド発芽および生長力を示す。しかしながら、表4はまた、この遺伝子を含まない2つのスイートコーン品種(最も食用に適した段階直後7日間の7日目に、スコア5および7を有する)と比較すると、その変異sh2-i遺伝子を含む2つのスイートコーン品種はより長くそれらの甘味を保持しなかった(7日目にスコア2および3を有する)ことを示し、そして、この遺伝子を有しない2つのスイートコーン品種(最も食用に適した段階直後の7日間の7日目にスコア3および2を有する)と比較して、より長く果肉の柔軟性を保持しなかった(7日目にスコア1および2を有する)ことを示す。表4に示した甘味および果皮柔軟性スコアは、se1se1およびsu1su1の遺伝的背景に対する、配列の重なりなしでの変異sh2-i遺伝子のインブレッドへの組込みは、すでに述べたように、全体としての食感品質(甘味および果皮柔軟性)については効果的ではなく、むしろ有害な効果をもたらすことを示唆する。
【0255】
上記に鑑みて、植物栽培者および消費者が所望する利益を最大限得るために、すでに述べた方法で、変異sh2-i遺伝子材料をまとめて、その構築に導く(すなわち、分子マーカーおよびse1se1およびsu1su1遺伝的背景を用いる)ことは、非常に好ましい(またはさらに必要)と、考えられる。
【表4】

【0256】
(実施例5)
(スイートコーンハイブリッドACX SS 7501Y、ACX SS 7078YおよびACX SS 7403RYの様々な物理的特性の比較)
この実施例で記載されている実験において、スイートコーンハイブリッドACX SS 7501Y、ACX SS 7078YおよびACX SS 7403RY(これらすべてが変異sh2-i遺伝子をゲノムに含み、および本願明細書において記載される有益な利益を有する)の物理的特性を調査し、当業者に既知である方法を使用して比較した。これらの試験および比較の結果は、下記の表5に記載される。表5の各々の欄において、スイートコーンハイブリッドACX SS 7501Yのデータ、スイートコーンハイブリッドACX SS 7078Yのデータ、スイートコーンハイブリッドACX SS 7403Yのデータが示されている。表5において、用語「成熟」は、成長するまでの、ハイブリッドが植えられた時からの経過日数を指す。
【表5】

【0257】
スイートコーンハイブリッドACX SS 7501Y、ACX SS 7078YおよびACX SS 7403RYの種子は、2009年8月11日上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の下で、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)(Manassas, VA)に寄託された。
【0258】
本発明が本願明細書において特異的におよびその特定の好ましい実施例に関して記載されていたが、記載されていた、可能な、そして本発明の範囲および主旨から逸脱しない多数の改変、修正および置換は、当業者に認識されるであろう。これらの修正及び改変のすべては、それが本願明細書において記載されおよび請求される本発明の範囲内であり、本発明は請求項の範囲によってのみ制限され、これらの請求項は妥当に広く解釈されたい。
【0259】
この文書中で、様々な本、特許、論文記事、ウェブサイトおよび他の刊行物が引用された。各々のこれらの本、特許、論文記事、ウェブサイトおよび他の刊行物の全体は、ここで本願明細書に引用したものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
従来の変異shrunken-2またはshrunken-2iハイブリッド植物、植物、植物材料または種子と比較して強化された生長力と、従来の変異sugary-1またはshrunken-2iハイブリッド植物、植物、植物材料若しくは種子と比較して強化された、最も食用に適した段階後の一定期間にわたって糖質を保持する能力のような、一つ以上の更なる望ましい特徴と、を有するハイブリッド植物、植物、植物材料または種子を作製する方法であって、あらゆる適切な順序で以下のステップ、すなわち、
(a)任意に一つ以上の分子マーカーを使用して、一つ以上の所望の変異対立遺伝子を単独又は組合わせでそのゲノムに含むインブレッド植物系統を同定するステップ、
(b)shrunken-2i対立遺伝子をそのゲノムに有する親植物系統と組合せて遺伝的背景として使用するための所望の遺伝子型を有する、一つ以上の準同質遺伝子系統を作製するステップ、
(c)一つ以上の分子マーカーを使用して、shrunken-2i対立遺伝子を、所望の遺伝的背景を有する準同質遺伝子系統のゲノムに組み込む、前記所望の遺伝的背景がsu1su1 se1se1 sh2sh2、su1su1 se1se1または、別の望ましい遺伝的背景であることを特徴とするステップ、
(d)Su1Su1 sh2 sh2の遺伝的背景または一つ以上の他の好ましい変異対立遺伝子の遺伝的背景に重ねられるshrunken-2i対立遺伝子をゲノムに有している雌性準同質遺伝子植物系統を選択するステップ、
(e) su1su1 se1se1 sh2sh2の組合せのトリプルホモ接合劣性対立遺伝子の組み合わせ、または一つ以上の栽培者および/または消費者に望ましい特徴を有するハイブリッド植物を与える、高いまたは強化された食感品質を有するハイブリッド植物を提供することができる他のトリプルホモ接合劣性対立遺伝子の組合せをゲノムに有している雄性系統と、前記選択された雌性準同質遺伝子系統とを交雑する、任意のステップ、
(f)ステップ(d)、ステップ(e)または両方のステップ(d)およびステップ(e)の植物によって作製される種子または穀粒のなめらかさ、ふくらみまたは相対的重量またはこれらの組合せの特徴について物理的外観を検討する、任意のステップ、
(g)ステップ(d)、ステップ(e)または両方のステップ(d)およびステップ(e)の植物により作製される種子または穀粒の、暖温、低温、または暖温及び低温の発芽を実施し、前記種子が一つ以上の栽培者または消費者に望ましい特徴またはそれらの組み合わせを有することを検査する、任意のステップ、および
(h)ステップ(d)、ステップ(e)、またはステップ(d)およびステップ(e)の両方の植物によって作製される種子または穀粒から栽培される植物または植物部位について、一つ以上の官能試験を実施し、それらの味または他の官能的特徴、またはそれら両方を決定する、任意のステップ
を含み、
前記ハイブリッド植物、植物、植物材料または種子は、従来の変異shrunken-2またはshrunken-2iハイブリッド植物、植物、植物材料または種子と比較して強化された生長力を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記所望の変異対立遺伝子がsugary-1、sugary enhancer-1、shrunken-2変異対立遺伝子またはこれらの組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記準同質遺伝子系統が、以下のトリプル対立遺伝子の組合せ、
(i) Su1Su1 Se1Se1 sh2sh2、
(ii) Su1Su1 se1se1 sh2sh2、または
(iii) su1su1 se1se1 sh2sh2、
のうちの1つを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記トリプル対立遺伝子の組合せがsu1su1 se1se1 sh2sh2である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
su1su1、se1se1またはsh2sh2またはそれらの組合せの遺伝的背景上にシーケンシャルレイヤリングされた、前記shrunken-2i突然変異対立遺伝子を発現する種子または穀粒を検査する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
su1su1 se1se1の遺伝的背景上に前記shrunken-2i突然変異対立遺伝子をシーケンシャルレイヤリングされて発現する種子または穀粒を検査する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
植えられた種子または穀粒によって生じた植物の検定交雑は、遺伝子確認されたインブレッドの、su1su1、se1se1、sh2sh2またはその組合せをもたらす、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記遺伝子確認されたインブレッドの、分子マーカー遺伝子確認を実施する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記選択された雌性準同質遺伝子系統を、su1su1 se1se1 sh2sh2の組合せのトリプルホモ接合劣性対立遺伝子の組み合わせ、または一つ以上の栽培者および/または消費者に望ましい特徴を有するハイブリッド植物を与える、高いまたは強化された食感品質を有するハイブリッド植物を提供することができる他のトリプルホモ接合劣性対立遺伝子の組合せをゲノムに有している雄性系統と交雑させる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記雄性系統がsu1su1 su1su1 sh2sh2のトリプルホモ接合劣性対立遺伝子の組合せを有する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップ(d)、前記ステップ(e)または両方の前記ステップ(d)および前記ステップ(e)の植物によって作製した種子または穀粒のなめらかさ、ふくらみまたは相対重量またはこれらの組み合わせの特徴について、物理的外観を検討する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ(d)、前記ステップ(e)または両方の前記ステップ(d)および前記ステップ(e)の植物により作製される種子または穀粒の、暖温、低温、または暖温及び低温の発芽を実施し、前記種子の強化された発芽、苗の発生、または植物成長、若しくはその組合せ、または最も食用に適した段階後の一定期間にわたって糖質を保持する強化された能力、若しくはこれら両方を有することを検査する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップ(d)、前記ステップ(e)、または前記ステップ(d)および前記ステップ(e)の両方の植物によって作製される種子または穀粒から栽培される植物または植物部位について、一つ以上の官能試験を実施し、それら味又はその他の官能特徴、又はこれら両方を決定する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
食用の植物、植物材料、種子または穀粒を作製する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
作物植物、植物材料、種子または穀粒を作製する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
作物植物、植物材料、種子または穀粒を作製する、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記作物が穀物作物である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記作物が穀物作物である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記穀物作物がZea maysに分類される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記穀物作物がZea maysに分類される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記穀物作物がZea mays,var. rugosaに分類される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記穀物作物がZea mays,var. rugosaに分類される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
従来の変異sugary-1またはshrunken-2iハイブリッド植物、植物、植物材料または種子と比較すると、前記ハイブリッド植物、植物、植物材料または種子が、最も食用に適した段階後の一定期間にわたって糖質を保持する強化された能力を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
従来の変異sugary-1またはshrunken-2iハイブリッド植物、植物、植物材料または種子と比較すると、ハイブリッド植物、植物、植物材料または種子が、最も食用に適した段階後の一定期間にわたって糖質を保持する強化された能力を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
スイートコーンハイブリッド ACX SS 7501Yを作製する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
スイートコーンハイブリッド ACX SS 7078Yを作製する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
スイートコーンハイブリッド ACX SS 7403RYを作製する、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
従来の変異shrunken-2またはshrunken-2i植物、植物材料または種子と比較して強化された生長力、および従来の変異sugary-1またはshrunken-2i植物、植物材料または種子と比較して強化された、最も食用に適した段階後の一定期間にわたって糖質を保持する能力の、両方を有するハイブリッド植物、植物、植物材料または種子を作製する方法であって、一つ以上の分子マーカーを使用して、植物、植物材料または種子のゲノムに、変異shrunken-2i対立遺伝子をsu1su1 se1se1 遺伝的背景の上にシーケンシャルレイヤリングすることを構成する方法。
【請求項29】
従来の変異shrunken-2またはshrunken-2iハイブリッド植物、植物、植物材料または種子と比較して強化された生長力と、従来の変異sugary-1またはshrunken-2iハイブリッド植物、植物、植物材料または種子と比較して強化された、最も食用に適した段階後の一定期間にわたって糖質を保持する能力のような、一つ以上の他の望ましい特徴と、を有するハイブリッド植物、植物材料または種子を作製する方法であって、あらゆる適切な順序で以下のステップ、すなわち、
(a)任意に一つ以上の分子マーカーを使用して、一つ以上の所望の変異対立遺伝子を単独又は組合わせでそのゲノムに含むインブレッド植物系統を同定するステップ、
(b)shrunken-2i対立遺伝子をそのゲノムに有する親植物系統と組合せて遺伝的背景として使用するための所望の遺伝子型を有する、一つ以上の準同質遺伝子系統を作製するステップ、
(c)一つ以上の分子マーカーを使用して、shrunken-2i対立遺伝子を、所望の遺伝的背景を有する準同質遺伝子系統のゲノムに組み込む、前記所望の遺伝的背景がsu1su1 se1se1 sh2sh2、su1su1 se1se1または、別の望ましい遺伝的背景であることを特徴とするステップ、
(d)Su1Su1 sh2 sh2の遺伝的背景または一つ以上の他の好ましい変異対立遺伝子の遺伝的背景に重ねられるshrunken-2i対立遺伝子をゲノムに有している雌性準同質遺伝子植物系統を選択するステップ、
(e) su1su1 se1se1 sh2sh2の組合せのトリプルホモ接合劣性対立遺伝子の組み合わせ、または一つ以上の栽培者および/または消費者に望ましい特徴を有するハイブリッド植物を与える、高いまたは強化された食感品質を有するハイブリッド植物を提供することができる他のトリプルホモ接合劣性対立遺伝子の組合せをゲノムに有している雄性系統と、前記選択された雌性準同質遺伝子系統とを交雑する、任意のステップ、
(f)ステップ(d)、ステップ(e)または両方のステップ(d)およびステップ(e)の植物によって作製される種子または穀粒のなめらかさ、ふくらみまたは相対的重量またはこれらの組合せの特徴について物理的外観を検討する、任意のステップ、
(g)ステップ(d)、ステップ(e)または両方のステップ(d)およびステップ(e)の植物により作製される種子または穀粒の、暖温、低温、または暖温及び低温の発芽を実施し、前記種子が一つ以上の栽培者または消費者に望ましい特徴またはそれらの組み合わせを有することを検査する、任意のステップ、および
(h)ステップ(d)、ステップ(e)、またはステップ(d)およびステップ(e)の両方の植物によって作製される種子または穀粒から栽培される植物または植物部位について、一つ以上の官能試験を実施し、それらの味または他の官能的特徴、またはそれら両方を決定する、任意のステップ
をからなり、
前記ハイブリッド植物、植物、植物材料または種子は、従来の変異shrunken-2またはshrunken-2iハイブリッド植物、植物、植物材料または種子と比較して強化された生長力を有することを特徴とする方法。
【請求項30】
一つ以上の好ましい特徴を植物に与える一つ以上の追加の変異対立遺伝子の遺伝的背景上にシーケンシャルレイヤリングされた、shrunken-2i対立遺伝子を含んでいるゲノムを含む植物であって、該植物は、従来の変異shrunken-2またはshrunken-2i植物と比較すると強化された生長力、および、従来の変異sugary-1またはshrunken-2i植物と比較すると強化された最も食用に適した段階の一定期間にわたって糖質を保持する能力のような一つ以上の他の有益な特徴を付与されたことを特徴とする植物。
【請求項31】
前記他の変異対立遺伝子が、sugary-1、sugary enhancer-1またはshrunken-2変異対立遺伝子またはその組合せである、請求項30に記載の植物。
【請求項32】
前記遺伝的背景がsu1su1, se1se1若しくはsh2sh2またはその組合せである、請求項31に記載の植物。
【請求項33】
前記遺伝的背景がsu1su1 se1se1である、請求項32に記載の植物。
【請求項34】
前記植物がsu1su1 se1se1遺伝的背景上に重ねられたゲノム中にshunken-2i対立遺伝子を含む、請求項33に記載の植物。
【請求項35】
前記植物が作物植物である、請求項30に記載の植物。
【請求項36】
前記植物が作物植物である、請求項34に記載の植物。
【請求項37】
前記作物が穀物作物である、請求項35に記載の植物。
【請求項38】
前記作物が穀物作物である、請求項36に記載の植物。
【請求項39】
前記穀物植物がZea maysに分類される、請求項37に記載の植物。
【請求項40】
前記穀物植物がZea maysに分類される、請求項38に記載の植物。
【請求項41】
前記穀物作物がZea mays,var. rugosa.に分類される、請求項39に記載の植物。
【請求項42】
前記穀物作物がZea mays, var. rugosa.に分類される、請求項40に記載の植物。
【請求項43】
前記植物が従来の変異sugary-1またはshrunken-2i植物と比較すると強化された、最も食用に適した段階後の一定期間にわたって糖質を保持する能力を有する、請求項41に記載の植物。
【請求項44】
前記植物が従来の変異sugary-1またはshrunken-2i植物と比較すると強化された、最も食用に適した段階後の一定期間にわたって糖質を保持する能力を有する、請求項42に記載の植物。
【請求項45】
前記植物が、スイートコーンハイブリッド ACX SS 7501Yである、請求項44に記載の植物。
【請求項46】
前記植物が、スイートコーンハイブリッド ACX SS 7078Yである、請求項44に記載の植物。
【請求項47】
前記植物が、スイートコーンハイブリッド ACX SS 7403RYである、請求項44に記載の植物。
【請求項48】
従来の変異shrunken-2またはshrunken-2i植物と比較して強化された生長力を有し、且つ、従来の変異sugary-1またはshrunken-2i植物と比較すると強化されている、その最も食用に適した段階後の一定期間にわたって糖質を保持する能力のような、一つ以上の他の好ましい特徴を有する、請求項1の方法によって作製される植物。
【請求項49】
従来の変異shrunken-2またはshrunken-2i植物と比較して強化された生長力を有し、且つ、従来の変異sugary-1またはshrunken-2i植物と比較すると強化されている、その最も食用に適した段階後の一定期間を超えて糖質を保持する能力のような、一つ以上の他の好ましい特徴を有する、請求項29の方法によって与えられている、植物。
【請求項50】
一つ以上の好ましい特徴を植物種子に与える一つ以上の追加の変異対立遺伝子の遺伝的背景上にシーケンシャルレイヤリングされた、shrunken-2i対立遺伝子を含んでいるゲノムを含む植物種子であって、該植物は、従来の変異shrunken-2またはshrunken-2i植物種子と比較すると強化された生長力、および、従来の変異sugary-1またはshrunken-2i植物種子と比較すると強化された最も食用に適した段階の一定期間にわたって糖質を保持する能力のような一つ以上の他の有益な特徴を付与されたことを特徴とする植物種子。
【請求項51】
前記追加の変異対立遺伝子が、sugary-1、sugary enhancer-1またはshrunken-2変異対立遺伝子またはその組合せである、請求項50に記載の植物種子。
【請求項52】
前記遺伝的背景が、su1su1、se1se1またはsh2sh2またはその組合せである、請求項51に記載の植物種子。
【請求項53】
前記遺伝的背景が、su1su1 se1se1である、請求項52に記載の植物種子。
【請求項54】
前記植物種子が、su1su1 se1se1遺伝的背景上に重ねられたゲノム内にshrunken-2i対立遺伝子を含む、請求項53に記載の植物種子。
【請求項55】
前記植物種子が作物植物の種子である、請求項50に記載の植物種子。
【請求項56】
前記植物種子が作物植物である、請求項54に記載の植物種子。
【請求項57】
前記作物が穀物作物である、請求項55に記載の植物種子。
【請求項58】
前記作物が穀物作物である、請求項56に記載の植物種子。
【請求項59】
前記穀物作物がZea maysに分類される、請求項57に記載の植物種子。
【請求項60】
前記穀物作物がZea maysに分類される、請求項58に記載の植物種子。
【請求項61】
前記穀物作物がZea mays,var.rugosa.に分類される、請求項59に記載の植物種子。
【請求項62】
前記穀物作物がZea mays,var.rugosa.に分類される、請求項60に記載の植物種子。
【請求項63】
前記植物種子が従来の変異sugary-1またはshrunken-2i植物種子と比較して強化された、最も食用に適した段階後の一定期間にわたって糖質を保持する能力を有する、請求項61に記載の植物種子。
【請求項64】
前記植物種子が従来の変異sugary-1またはshrunken-2i植物種子と比較して強化された、最も食用に適した段階後の一定期間にわたって糖質を保持する能力を有する、請求項62に記載の植物種子。
【請求項65】
前記植物種子がスイートコーンハイブリッドACX SS 7501Y由来である、請求項64に記載の植物種子。
【請求項66】
前記植物種子がスイートコーンハイブリッドACX SS 7078Y由来である、請求項64に記載の植物種子。
【請求項67】
前記植物種子がスイートコーンハイブリッド ACX SS 7403RY由来である、請求項64に記載の植物種子。
【請求項68】
従来の変異shrunken-2またはshrunken-2i植物種子と比較して強化された生長力を有し、且つ、従来の変異sugary-1またはshrunken-2i植物種子と比較して強化された、最も食用に適した段階後の一定期間にわたって糖質を保持する能力のような、一つ以上の他の好ましい特徴を有する、請求項1の方法によって作製される植物種子。
【請求項69】
従来の変異shrunken-2またはshrunken-2i植物種子と比較して強化された生長力を有し、且つ、従来の変異sugary-1またはshrunken-2i植物種子と比較して強化された、最も食用に適した段階後の一定期間にわたって糖質を保持する能力のような一つ以上の他の好ましい特徴を有する、請求項29の方法によって作製される植物種子。
【請求項70】
一つ以上の好ましい特徴を植物材料に与える一つ以上の追加の変異対立遺伝子の遺伝的背景上にシーケンシャルレイヤリングされた、shrunken-2i対立遺伝子を含んでいるゲノムを含む植物材料であって、該植物材料は、従来の変異shrunken-2またはshrunken-2i植物と比較すると強化された生長力、および、従来の変異sugary-1またはshrunken-2i植物と比較すると強化された最も食用に適した段階の一定期間にわたって糖質を保持する能力のような一つ以上の他の有益な特徴を付与されたことを特徴とする植物材料。
【請求項71】
従来の変異shrunken-2またはshrunken-2i植物材料と比較して強化された生長力を有し、且つ、従来の変異sugary-1またはshrunken-2i植物材料と比較すると強化された、最も食用に適した段階後の一定期間にわたって糖質を保持する能力のような一つ以上の他の好ましい特徴を有する、請求項1の方法によって作製される、植物材料。
【請求項72】
従来の変異shrunken-2またはshrunken-2i植物種子と比較して強化された生長力を有し、且つ、従来の変異sugary-1またはshrunken-2i植物種子と比較して強化された、最も食用に適した段階後の一定期間にわたって糖質を保持する能力のような一つ以上の他の好ましい特徴を有する、請求項29の方法によって作製される、植物材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図10−3】
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【図10−4】
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【図10−5】
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【図10−6】
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【図10−7】
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【図10−8】
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【図10−9】
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【図10−10】
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【図10−11】
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【図10−12】
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【図10−13】
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【図10−14】
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【図10−15】
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【図10−16】
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【図10−17】
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【図10−18】
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【図10−19】
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【図10−20】
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【図10−21】
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【公表番号】特表2012−514471(P2012−514471A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545328(P2011−545328)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/004623
【国際公開番号】WO2011/019331
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(511050099)アボット アンド コブ インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT & COBB, INC.
【Fターム(参考)】