説明

植物支持体

【課題】植物を支持する部材を前後に配置した場合に、日当たりの悪い側にも日射を確保できる植物支持体を提供する。
【解決手段】地表に立設された支柱1を前後に挟んで、植物を支持可能なメッシュパネル2が対向して配置され、メッシュパネル2は、両端部が対向するメッシュパネル2に向けて曲折されて側面部23が形成されて断面コ字状となされると共に、対向するメッシュパネル2の側面部23どうしの間には隙間S1が設けられるように植物支持体を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蔓性植物等の植物を支持する植物支持体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、建物や建物の外構等の壁面等には、ヒートアイランド対策等として、植栽が施され緑化対策が施されている。これらの植栽は、建物に対する日射を避けて建物内の温度上昇を低減させることが主な目的である場合が多く、周辺を通行する通行人の目を休める等の効果は期待できても、通行人に対して木陰を提供できるものではない。
【0003】
一方、通行人に対して木陰を提供するには、比較的大きな樹木を植栽する必要があるが、この場合、植物に見合った歩道の幅が必要となり、又植物の剪定や管理が大がかりとなるため、実施できる場所は限られる。
【0004】
そこで、直立軸の四周を網状体で囲繞して内部に蔓性植物の育成空間を設けた巻き付け体と、該巻き付け体に巻き付けた蔓性植物と、巻き付け体を地面に支持する支持脚とからなる疑似樹木が提案されている。
【0005】
この疑似樹木は、巻き付け体に対して植物が絡み付きやすく、種々の形状の疑似樹木をつくることができ、しかも巨大化することがないので、維持管理費を軽減させることができるものである。
【特許文献1】実開平3−106315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般に、四周を網状体で囲繞して内部に蔓性植物の育成空間を設けた場合、日当たりの良い箇所と、その反対側の日当たりの悪い箇所ができるので、植物の生長に差が生じる場合がある。生長が早い植物は、網状体の上端まで伸びると、次は網状体に沿って横方向に伸びる。そして、日当たりの悪い箇所の上方にまで回り込んで伸びると、日当たりの悪い側の植物は、側方のみでなく上方の日当たりも悪くなって、生長が阻害される恐れがあり、その点が問題であった。
【0007】
本発明は、前記の如き問題点を解消し、植物を支持する部材を前後に配置した場合に、日当たりの悪い側にも日射を確保できる植物支持体を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわちこの発明に係る植物支持体は、地表に立設された支柱を前後に挟んで、植物を支持可能なメッシュパネルが対向して配置され、該メッシュパネルは、両端部が対向するメッシュパネルに向けて曲折されて側面部が形成されて断面コ字状となされると共に、対向するメッシュパネルの前記側面部どうしの間には隙間が設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係る植物支持体において、メッシュパネルから前方に向けて照明装置を突設した構成としたものでもよい。
【0010】
又、本発明に係る植物支持体において、前記照明装置を、太陽電池パネルと照明部材とが一体的に設けられているように構成してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、支柱を挟んで間隔をおいて対向して配置されたメッシュパネルは、両端部から対向するメッシュパネルに向けて曲折されて側面部が形成された断面コ字状となされると共に、対向するメッシュパネルの前記側面部どうしの間は隙間が設けられているので、一方のメッシュパネルに支持された植物がパネル上端まで生長しても、もう一方のメッシュパネルへは伸びにくく、もう一方のメッシュパネルに支持された植物に対して上方からの日射が確保され生長させることができる。
【0012】
本発明に係る植物支持体において、メッシュパネルから外方に向けて照明装置を突設すれば、照明装置による照明光は、植物支持体により後方への照射が遮られ、前方或いは側方にのみに照射されるため、植物支持体の後方に建物等がある場合に、通行人のために夜間連続照射しても、建物側には照射光が当たりにくくなり、建物に住む人の就寝を阻害するおそれが少なくなる。
【0013】
又、本発明に係る植物支持体において、前記照明装置を、太陽電池パネルと照明部材とが一体的に設けられるようにすれば、電源工事が不要となり、任意の箇所に適宜設置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照し、具体的に説明する。
【0015】
すなわち、図1は本発明に係る植物支持体の第1の実施形態を示す説明図、図2は図1の斜視図、図3は図1の主要部の部分拡大図、図4は本発明に係る植物支持体の第2の実施形態を示す斜視図、図5は本発明に係る植物支持体の第3の実施形態を示す斜視図、図6は本発明に係る植物支持体の第4の実施形態を示す斜視図である。
【0016】
図面において、1は支柱、2は支柱1の前後に取付けられたメッシュパネルであり、本発明に係る植物支持体は、支柱1とメッシュパネル2とから主に構成され、メッシュパネル2に蔓性植物等の植物Kが支持できるようになされたものである。
【0017】
図1〜図3は、本発明に係る植物支持体Pの第1の実施形態を説明するものである。図1は本実施形態に係る植物支持体Pの説明図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図を示すものである。図2において(a)は図1の斜視図であり、(b)は植物支持体Pに植物Kが支持された状態である。先ず、支柱1は、地表から立設され、支柱1から前後に突設された取付部材3を介して、支柱1の前後にメッシュパネル2が取付けられたものである。これにより、前後のメッシュパネル2を所定の間隔に保持することができる。支柱1は、一般には、一般には鋼管、アルミニウム合金型材等からなる金属管から作成され、塗装や鍍金などの表面塗装が適宜施されたものである。
【0018】
支柱1は、本実施形態では、図1,2に示すように、左右方向に間隔をおいて2個の支柱1が立設され、それぞれの支柱1,1から前後に突設された取付部材3を介してメッシュパネル2が取付けられている。これにより、メッシュパネル2の側端部の前後方向に対する位置調整が可能となる。
【0019】
メッシュパネル2は、蔓性植物等の植物Kを巻きつかせて生長させる支持材料であれば、特に限定されるものではなく、例えば、縦横の線材を格子状に組み合わせたもの、サインカーブ状あるいは鋸歯状等の波形に形成された線材を格子状に組み合わせたもの、線材が縦方向のみに並行に配置されたもの、あるいはこれらを組み合わせたもの、線材が右斜め及び左斜めに配置されて菱形状の網目が形成されたもの、線材の代わりに合成繊維や紐等を用いたもの、金属板に並行かつ千鳥状に配列された切れ目を多数形成させて切れ目を網目状に拡げてなるエキスパンドメタルでもよい。また、線材や紐等の交点は、溶接や止め金具等による接合、互いに組み合わせた接合、互いに結び合わせた接合等により接合されてもよく、交点で接合されない形態でもよい。
【0020】
本形態に係るメッシュパネル2は、いずれも亜鉛めっきが施された多数本の鋼線材21を縦横格子状に組合せ、その格子の各交点は電気溶接により接合され、更に表面全体を樹脂で被覆されたものであり、生産性や防錆性能等を考慮すると本形態がより好ましい。上下、左右の格子間隔は、植物Kの生長の仕方や葉の大きさ等に応じて適宜設定することができる。
【0021】
メッシュパネル2は、パネル本体21の側端部が、対向するメッシュパネル2に向けて曲折されて側面部22,22が設けられて断面コ字状に形成されている。これにより、メッシュパネル2の剛性が高められて捻れ等の変形が抑えられると共に、側面部22にも植物Kを支持することが可能となるため、正面側のみでなく側面側からも支柱1が見えにくくなり、景観性を高めることができる。尚、側面部22は、本実施形態では、平板状のメッシュパネル2において、その側部の横線材をプレス加工により垂直に折り曲げて形成されたものであり、部材数が少なく、加工も容易であるため好適に実施できるが、例えば、メッシュパネル2の側端部に別部材となされた側面部22を接合するものでもよく、更に、前記接合時に接合金具等を用いて接合してもよい。
【0022】
図3は、図1の主要部の部分拡大図であり、支柱1、メッシュパネル2、及び連結部材3との取付構造を示し、(a)は正面図の部分拡大図、(b)は平面図の部分拡大図、(c)及び(d)はメッシュパネル2を支柱1から離れる方向に移動させた後の状態を示す正面図及び平面図の部分拡大図である。支柱1から前後に突設された取付部材3は、支柱1に固着される基部31と、メッシュパネル2の線材を固定し基部31を介して支柱1に対して前後方向に移動可能となされた線材固定部32とからなる。これにより、支柱1との間隔を調整しながらメッシュパネル2を取付けることができる。
【0023】
取付金具3は、本実施形態では、図1,2に示すように、左右方向に間隔をおいて立設された支柱1からそれぞれ上下3段で前後に突設されたものである。これにより、前後のメッシュパネル2において両側端部の前後方向の位置ずれを抑えて両メッシュパネル2を平行に配置することができる。加えて、左右の取付部材3の上にメッシュパネル2の横線材23を載置することにより、メッシュパネル2を仮置きすることができるため、作業者が1人であっても取付作業が容易となる。
【0024】
取付金具3の線材固定部32は、本実施形態では、固定部本体33とその前面に押さえ部材34とを備え、固定部本体33と押さえ部材34との間にメッシュパネル2の横線材23が挟持可能となされている。尚メッシュパネル2の挟持方法は、本実施形態に限られるものではなく、例えば、固定部本体33の前面下部から支持部が突出され、その上に横線材23が載置され、更にその上から押さえ部材を配置して横線材23を挟持するものでもよい。
【0025】
又、線材固定部32は、固定部本体33の後面から基部31の先端に向けて螺子部35が突設され、基部31の先端から内部に向けて螺入されている。又、基部31は、本実施形態では、後面から内部に向けて螺子孔が形成され、支柱1から前後方向に突設された螺子部に螺合されている。これにより、メッシュパネル2の横線材23を挟持した状態でメッシュパネル2を前号方向へ移動させることが可能となり、支柱1とメッシュパネル2との間隔調整とメッシュパネル2の取付作業がより容易となる。
【0026】
更に、図3に示すように、支柱1の前後に取付けられた対向するメッシュパネル2,2の側面部22,22どうしの間には隙間S1が設けられている。これにより、一方のメッシュパネル2に支持された蔓性植物等の植物Kの方が早く生長しても、この隙間S1を超えて対向するメッシュパネル2まで伸びていきにくくなり、もう一方のメッシュパネル2に支持された植物Kは、上方から日射を受ける空間を確保することができ、持続的にメッシュパネル2の上端まで生長することができる。
【0027】
隙間S1の離間寸法は、特に限定されるものではなく、メッシュパネル2に支持される植物Kの種類に応じて適宜設定すればよい。又、隙間S1の離間寸法は、前記に示すように取付金具3を用いることにより、設置後でも変更することができるので、植物Kの生長状況に合わせて後から変更してもよい。
【0028】
対向するメッシュパネル2,2において、パネル本体21,21どうしの隙間S2は、側面部22,22どうしの隙間S1より広くなされている。これにより、パネル本体21の上端まで生長した植物Kは、隙間S2を超えて対向するパネル本体21に伸びていきにくいが、取付部材3を伝って対向するパネル本体21にまで伸びていく可能性があるので、パネル本体1の上端から、取付部材3に取付けられた横線材231までの距離は、隙間S2の離間寸法より長い方が好ましい。
【0029】
又、一般に、葉の茂った木立のかげは緑陰と呼ばれ、この緑陰を通った風は温度が下がると言われている。これは、風が葉と葉の間を通るときに、葉表面からの水分の蒸散等により周囲から気化熱が奪うために生じるものと考えられる。従って、メッシュパネル2のパネル本体21,21を前後方向に通り抜ける風により、周囲の温度低下が期待できるが、メッシュパネル2に支持された植物Kが繁茂すると、前後のパネル本体21,21が2重の抵抗となり、風が前後方向には通り抜けにくくなるおそれもあるので、隙間S1を確保しておけば、左右方向の風の通路を確保することができ、周囲の温度低下も期待することができる。
【0030】
図4は、本発明に係る植物支持体Pの第2の実施形態を示す斜視図である。本形態に係る植物支持体Pは、図1〜3に示された植物支持体Pと比べて、メッシュパネル2に照明装置4が設けられた点が異なるのみであり、その他の点については、図1〜3に示された植物支持体Pと同様である。
【0031】
すなわち、図4に示された植物支持体Pは、前方のメッシュパネル2から前方に向けて照明装置4が突設されたものであり、これにより、メッシュパネル2に支持される植物Kを照らし出し、演出性を高めることができる。又、メッシュパネル2の前面が全面的に植物Kで覆われる様になされれば、照明装置4から後方に向けて照射される照射光は植物Kに遮られるので、夜間、照明装置4を連続的に点灯する場合に、植物支持体Pの後方に建物があっても、建物には照明が当たりにくくなり、建物の住人の睡眠を妨げるような問題は起こりにくくなる。
【0032】
照明装置4は、本実施形態では、照明装置本体41の後方にはメッシュパネル2の横線材23に係止される係止部42が左右に間隔をあけて突設され、照明装置本体41の下面にはLEDによる照射面43が形成され、その上面には、図示していないが太陽電池パネルが取付けられ、LEDに電力を供給するようになされている。これにより、商用電源等の配線が不要であり、必要な箇所に植物支持体Pを取付けることができる。
【0033】
図5は、本発明に係る植物支持体Pの第3の実施形態を示す斜視図である。本形態に係る植物支持体Pは、図1〜3に示された植物支持体Pと比べて、メッシュパネル2にサイン5が取付けられた点が異なるのみであり、その他の点については、図1〜3に示された植物支持体Pと同様である。
【0034】
すなわち、図5に示された植物支持体Pは、前方のメッシュパネル2の前面にサイン5が取付けられたものであり、(a)に示すように、1個のサイン5が取付けられたものでもよく、(b)及び(c)に示すように、複数のサイン5が取付けられたものでもよい。
【0035】
図6は、本発明に係る植物支持体Pの第4の実施形態を示す斜視図である。本形態に係る植物支持体Pは、図1〜3に示された植物支持体Pと比べて、メッシュパネル2にサイン5が取付けられた点が異なるのみであり、その他の点については、図1〜3に示された植物支持体Pと同様である。
【0036】
すなわち、図5に示された植物支持体Pは、前方のメッシュパネル2に照明装置4及びサイン5が取付けられたものであり、(a)に示すように、照明装置4の下方に1個のサイン5が取付けられたものでもよく、(b)及び(c)に示すように、照明装置4の下方に複数のサイン5が取付けられたものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る植物支持体の第1の実施形態を示す説明図である。
【図2】図1の斜視図である。
【図3】図1の主要部の部分拡大図である。
【図4】本発明に係る植物支持体の第2の実施形態を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る植物支持体の第3の実施形態を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る植物支持体の第4の実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
1 支柱
2 メッシュパネル
21 パネル本体
22 側面部
23 横線材
3 取付金具
31 基部
32 線材固定部
33 固定部本体
34 押さえ部材
35 螺子部
4 照明装置
5 サイン
K 植物
P 植物支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表に立設された支柱を前後に挟んで、植物を支持可能なメッシュパネルが対向して配置され、該メッシュパネルは、両端部が対向するメッシュパネルに向けて曲折されて側面部が形成されて断面コ字状となされると共に、対向するメッシュパネルの前記側面部どうしの間には隙間が設けられていることを特徴とする植物支持体。
【請求項2】
前記メッシュパネルは、前方に向けて突設された照明装置を有していることを特徴とする請求項1に記載の植物支持体。
【請求項3】
前記照明装置は、太陽電池パネルと照明部材とが一体的に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の植物支持体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−57420(P2010−57420A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226678(P2008−226678)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】