説明

植物栽培室の冷房装置および冷房方法

【課題】植物栽培用の温室内が過熱された時に微霧を噴霧して冷房する冷房装置を提供する。
【解決手段】ノズル付きの吸気用送風機を温室内の下部と中高部の少なくとも一方に設置し、前記吸気用送風機の温室内に位置する吐出側は、前記下部に設置する場合は横向きとするとともに中高部に設置する場合は斜め下向きとし、該吐出側にノズルを取り付け、該ノズルから温室内に噴霧させると共に該噴霧を前記吸気用送風機から吐出する送風に乗せる一方、前記温室内の空気を外部に排気する排気用送風機を前記温室の上部に設置し、前記温室内に設置する前記ノズル付き吸気用送風機と上部に設置する前記排気用送風機との相対位置関係を、前記ノズルからの噴霧が前記温室内を循環するように設置していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物栽培室の冷房装置および冷房方法に関し、詳しくは、植物栽培用の温室内の温度が栽培植物の適正温度から上昇した場合に適正温度に冷房するものである。
【背景技術】
【0002】
植物栽培用ビニルハウスや植物栽培工場等の植物栽培用の温室では、夏季等の高温下において栽培植物の栽培適正温度より上昇する場合がある。このように、温室内の温度が過度に上昇した場合、温室内を冷房して栽培適正温度とするための種々の提案がなされている。
例えば、温室内に向けてノズルより水を噴霧する細霧冷房方法がある。該細霧冷房方法は、温室内に設置したノズルに配管を通して水を供給し、ノズルから水を噴霧することで温室内の温度を低下させている。この細霧冷房方法は、設備が簡単で、コストはエアコンよりも安価である利点がある。
【0003】
しかしながら、前記細霧冷房方法は、ノズル周辺近傍では噴霧された霧を気化させて潜熱を奪い、周辺の温度を低下させることができるが、離れた領域での冷房効果が低い。よって、温室内部で温度差が発生して気流が生じ、ノズルから噴霧された未蒸発の水滴が栽培植物に付着しやすくなる。夏季等の高温下で噴霧を継続すると、特定領域の栽培植物に常時水滴が付着して、植物に病害が発生しやすくなると共に植物の成長が抑制される問題が生じる。
【0004】
前記問題に対して、特許第4431789号公報で提示された温室の冷房装置では、上向きに細霧を発生させるノズルを設置し、該ノズルの下側に上向きに乱流を発生させる送風機を設置し、かつ、該送風機とノズルとを栽培する植物群落より上に設置している。
前記送風機でノズルからの噴霧を上向で拡散させ、ノズル配置位置より上側で水滴を蒸発させているため、未蒸発の水滴がノズルおよび送風機より下方の植物に付着するのを抑制または防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4431789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1の冷房装置では、ノズルから噴霧された未蒸発の水滴が植物に付着するのを抑制または防止できるが、湿気を含んだ冷気を温室内部の全体に循環させていないため、栽培ゾーンの温度および湿度をスピーディに制御できない。特に、栽培植物を設置する温室内の下部には冷気が循環しないため、植物は適正な冷房温度下におかれず、高温下に晒されたままとなる。
さらに、栽培する植物の上部に霧が充満し、必要な日照、照度が上部の霧で減少し、植物が成長不良になる恐れもある。
【0007】
本発明は前記問題を解消し、ノズルからの噴霧で発生する冷気を温室内部に循環させて効率よく冷房すると共に、該ノズルから噴霧する未蒸発の水滴が栽培植物に付着するのを抑制または防止することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、ノズル付きの吸気用送風機を温室内の下部と中高部の少なくとも一方に設置し、前記吸気用送風機の温室内に位置する吐出側は、前記下部に設置する場合は横向きとするとともに中高部に設置する場合は斜め下向きとし、該吐出側にノズルを取り付け、該ノズルから温室内に噴霧させると共に該噴霧を前記吸気用送風機から吐出する送風に乗せる一方、
前記温室内の空気を外部に排気する排気用送風機を前記温室の上部に設置し、
前記温室内に設置する前記ノズル付き吸気用送風機と上部に設置する前記排気用送風機との相対位置関係を、前記ノズルからの噴霧が前記温室内を循環するように設置していることを特徴とする植物栽培室の冷房装置を提供している。
【0009】
前記のように、ノズル付き吸気用送風機(吸気用ファン)と排気用送風機(排気用ファン)とを温室に配置して、温室内の空気を強制的に循環させることにより、温室内の全体を冷房することができる。かつ、ノズルからの噴霧は吸気用送風機から吐出する送風で噴射距離を増大させ、かつ、吸気用送風機からの送風の吐出力とノズルの噴射力との合力で風速を速めている。このように、霧の噴射距離を増大させると共に霧の風速を速めることで温室内に迅速に霧を循環させ、霧の蒸発を温室内部の全域で且つ効率よく行わせることができる。よって、栽培植物に未蒸発の水滴が付着するのを抑制または防止でき、かつ、温室内を迅速に冷房することができる。
【0010】
前記ノズル付き吸気用送風機は、送風機の吸気側にダクトを取り付け、該ダクトを温室の壁に設けた開口まで延在させてダクトから外気を直接に吸引させ、または温室の外壁に設けた窓の近辺に設置して、前記窓から導入される外気を吸引させることが好ましい。
前記排気用送風機は温室の天井に設置し、前記ノズル付き吸気用送風機で前記温室の下部に充満させる微霧を前記排気用送風機で天井側へと引き込む設定としていることが好ましい。
前記排気用送風機は温室の広さに応じて設置個数および設置位置を設定し、温室が比較的小さい場合は天井の中央に1つ設置すればよい。
【0011】
前記ノズル付き吸気用送風機は、温室の外周壁、四隅または/および扉に設置し、室内側に位置する該吸気用送風機の吐出側に取り付ける前記ノズルの噴霧方向は噴霧が温室内の全体にわたるようにしている。
【0012】
前記温室が比較的大きい場合は、ノズル付き吸気用送風機は温室の下部または/および中高部の4隅に配置すると共に対向する両側外壁に沿って千鳥配置で設置し、ノズルからの噴霧が温室内において縦横方向の全域にわたって充満されるように配置する。さらに、温室が広い場合には、前記温室の外周壁および温室の中央部に、所要間隔をあけてノズル付き吸気用送風機または/およびノズルを配置することが好ましい。
【0013】
成長時の背丈が高い栽培植物の場合には、前記ノズル付き吸気用送風機は前記中高部の高さ位置に設置すると共に、栽培ベッドの列の間の空間位置で且つ前記温室の一辺の外壁と温室中央部とに同一方向の斜め下向きに設置し、
前記ノズル付き吸気用送風機からの噴霧を吸引する排気用送風機を対向する外壁の下部に設置することが好ましい。
前記のように、栽培ベッドの間に下向きで噴霧するのは、植物の葉に噴霧が直接に当たらないようにするためである。
【0014】
前記ノズル付き吸気用送風機は上下方向または左右方向に回転する首振りタイプとしてもよい。
具体的には、栽培する植物が背丈が低い葉野菜やイチゴ等の場合には、下部に設置し、左右方向に回転する首振り、背丈が高いトマトやキュウリ等の場合には中高部に下向きに傾斜させて設置し、左右方向の首振りできるタイプとすることが好ましい。
さらに、温室の4隅に配置するノズルは左右方向の首振りタイプとし、対向する周壁に千鳥配置するノズルは上下方向に首振りタイプとしてもよい。首振りは自動または手動のいずれでもよい。
ノズル付き吸気用送風機は下部と中高部の両方に設置しておき、栽培する植物に応じて使い分けしてもよい。また、温室内が過度に温度上昇した場合に下部と中高部に設置した両方のノズルから噴霧して温室内を迅速に冷房してもよい。
【0015】
前記吸気用および排気用の送風機の駆動およびノズルからの噴霧は、温室内に設置した温度および湿度センサで検知される検知データに基づいて、吸気、排気、噴霧の開始および停止を制御することが好ましい。例えば、温室内の温度が30℃に達すると吸気、排気、噴霧を開始し、温度30℃未満または湿度80%以上に達するとノズルの噴霧および前記送風機の駆動を停止する設定としている。
さらに、温室外部の気象条件を検知し、雨天時には稼働させず、晴天時のみ稼働し、乾燥した外気を吸気用送風機で温室内に導入するようにしてもよい。
【0016】
前記吸気用送風機に取り付ける前記ノズルは、平均粒径が30μm以下の水滴を含むセミドライフォグとして噴射するノズルを用いることが好ましい。該ノズルは水だけを噴射する一流体ノズルでよいが、水と空気とを噴射する二流体ノズルとしてもよい。
このように、温室内に設置するノズルから噴霧する水滴を微粒子の微霧とすると、温室内で迅速に蒸発し、未蒸発の大きな水滴が植物に付着しにくいものとなることが好ましい。
該ノズルとしては、特に、平均粒径が10μm以上30μm以下の水滴を含むセミドライフォグとして噴射するノズルが好適に用いられる。
ドライフォグとは空中に浮遊して物体に付着しない濡れない霧であり、セミドライフォグとは物体に付着するがすぐに蒸発する霧である。
【0017】
前記温室は、植物栽培用のビニルハウス、ガラスハウス、植物工場等のいずれで形成しても良い。また、該温室内での植物の栽培方法も特定されない。
【0018】
さらに、本発明は、外気を温室内に吸気用送風機で導入すると共に、温室内の空気を排気用送風機で外部に排気し、該温室内に設置したノズルからの噴霧を前記吸気用送風機から吐出する送風に乗せて温室内を循環させて前記排気用送風機側へと導出する植物栽培室の冷房方法を提供している。
【0019】
前記のように、温室内のノズルから噴射した霧を、温室に設置する吸気用送風機と排気用送風機とで温室内を循環させた後に排気させると、温室内の全域で水滴を蒸発させて温室内を均等に冷房でき、未蒸発の水滴が植物に付着するのを抑制、防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
前記のように、本発明では、ノズル付き吸気用送風機と排気用送風機を温室内に設置し、温室内の空気を強制的に循環させて換気し、ノズルから温室内に噴射する微霧の蒸発効率を高めて温室内の全体で気化熱により温度をさげることができ、かつ、未蒸発の水滴が植物に付着するのを抑制、防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態の温室を示す概略平面図である。
【図2】図1の温室の概略正面図である。
【図3】ノズル付き吸気用送風機を示し、(A)は右側面図、(B)は正面図、(C)は左側面図である。
【図4】(A)(B)は吸気用送風機に取り付けるノズルを示す図面である。
【図5】第2実施形態を示し、(A)は概略平面図、(B)は概略正面図である。
【図6】第3実施形態を示し、(A)は概略平面図、(B)は概略正面図である。
【図7】第4実施形態の斜視図である。
【図8】(A)は前記第4実施形態の概略正面図、(B)は概略平面図である。
【図9】第5実施形態で用いるノズル付き吸気用送風機の側面図である。
【図10】(A)(B)は第6実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の栽培室の冷房装置の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4に第1実施形態の植物栽培室の冷房装置を示す。
第1実施形態は、ビニルハウスからなる植物栽培ハウス1で囲まれた温室2内の冷房装置に関する。
前記温室2内には葉物、イチゴからなる比較的背丈の低い植物Pの栽培ベッド9が配置され、該栽培ベッド9の高さは約1mである。栽培ベッド9は培地となっており、植物Pが根をはっている。
該温室2は図示のように水平断面が長方形で、周壁2a〜2dおよび天井2sで囲み、周壁2a〜2dの適宜箇所に開閉扉および窓を設けている。
【0023】
温室2内の四隅に窓2hを設け、該窓2hから外気を導入する部分に面して、ノズル付きの吸気用送風機3(3A〜3D)を設置している。また、天井2sの中心に排気用送風機4を取り付けている。
【0024】
各ノズル付きの吸気用送風機3は図3(A)(B)(C)に示す構成としている。吸気用送風機3は温室2の中央側に面するリングヘッダー6を備え、該リングヘッダー6に一定間隔をあけて複数のノズル5を取り付けている。
【0025】
各吸気用送風機3は基台3aから突出するフレーム3bの上端にブラケット3cを突設し、該ブラケット3cに円形のファン3dの背面に突出した支持部3eを回転軸3fを介して上下方向に回転可能に取り付けている。前記支持部3eはハンドル3uを操作して上下方向に首振りできるようにしている。かつ、前記フレーム3bの下端を回転板3rに固定し、該回転板3rを基台3a内に収容したモータ(図示せず)で水平方向に90度の角度で往復回転させて左右方向に首振りできるようにしている。モータは首振りスイッチ3sでオンする自動首振り機構としている。
【0026】
ファン3dの背面中央には電源コード3gを接続して駆動するモータ3hを取り付け、該モータ3hによりファン3dの羽根3iを回転し、背面側から吸気して、正面側から吐出している。
上記ファン3dの正面側に突出した円環枠3kの正面に前記リングヘッダー6を取り付け、配管3jと接続している。
ファン3dの設置高さは栽培ベッド9の上面位置以下とし、温室2内では比較的下部に配置している。
【0027】
前記のように、吸気用送風機3は窓2hを設けた温室2の4隅に設置し、窓2hから導入される外気を吸気用送風機3で吸引し、吸引した外気を温室2内に吐出するものとしている。該吸気用送風機3の室内面側のリングヘッダー6に固定したノズル5から温室2の中央側に向けて噴霧するようにしている。
【0028】
前記ノズル5として、図4(A)(B)に示す1流体ノズルを用いている。該1流体ノズル5は水のみを噴霧し、10μm以上30μm以下のセミドライフォグを発生させるものである。ノズル5から噴霧する霧をセミドライフォグとしても、水滴が落下せず、中空部の空中に浮遊させることができる。なお、ノズル5は1流体ノズルに限定されず、2流体ノズルでもよい。
【0029】
前記1流体ノズル5として、本出願人の先願である特開2008−104929号公報に開示したノズルを用いている。該ノズル5は筒状の本体62、該本体62の噴射側壁62bの内面に固定したノズルチップ63からなる。本体62は円筒状の周壁62aの一端を噴射側壁62bで閉鎖し、その中央に噴口62cを設ける一方、周壁62aの他端は開口62dとし、開口62dは供給用配管と連通し、本体62の中空部62eに流入している。
【0030】
前記ノズルチップ63は大略円盤形状とし、本体62の成型時にモールドして、本体62の噴射側壁62bの内面に固定している。ノズルチップ63は本体62の噴射側壁62bの中心の噴口62cと連通する噴射穴63aを中央部に備え、噴射穴63aから噴口62cを通して旋回流として養液および水を噴霧する構成としている。前記噴射穴63aは、流入側から縮径するテーパ状穴部63a−1と、該テーパ状穴部63a−1に連続して噴口62cに連通する小径穴部63a−2とからなる。ノズルチップ63の内面には90度間隔をあけて円弧状に湾曲させた旋回溝63bを設け、これら旋回溝63bの内周端をテーパ状穴部63a−1の周縁と連通させ、旋回溝63bを通して液体を旋回させながら流入する構成としている。
【0031】
前記ノズル5では、リングヘッダー6から本体62に流入する水は、噴射側において、ノズルチップ63の旋回溝63bを通り、旋回流となって噴射穴63aのテーパ状穴部63a−1に流入する。該テーパ状穴部63a−1内で、該穴部の内周面に旋回しながら衝突するため水滴が微細化され、該テーパ状穴部63a−1より噴射側の小径穴部63a−2に流入し、さらに、連通した本体62の噴口62cから、10〜30μmの微細な水滴となって、セミドライフォグとして噴射される。
【0032】
温室2内の周縁と中央部には、高さ方向の下位置、中位置、高位置に、温度と湿度とを検出するセンサ8を分散配置している。該センサ8で検出される平均温度が所定の閾値、例えば、30℃になると、前記ノズル5からの噴霧、吸気用送風機3、排気用送風機4を自動的に運転開始する制御装置(図示せず)を設けている。かつ、該制御装置で、前記センサ8で検出される平均温度が30℃未満になると運転を停止し、または湿度が所定の閾値例えば、80%以上になると運転を停止する設定としている。
【0033】
前記構成として、温室2の内部が30℃に達すると、ノズル5からの噴霧と、吸気用送風機3および排気用送風機4を自動的に運転開始する。
これにより、吸気用送風機3から吐出される外気の回りにノズル5から噴射される微霧が乗り、噴霧距離が長くなると共に風速が早くなる。温室2の下部で噴霧された微霧は、温室2の天井に設置した排気用送風機4により天井側へと吸引され、温室2の下部から天井2sへと温室内部の全域を通って上昇し外部へ排気される。
【0034】
このように、温室2の下部の4隅のノズル5から、温室2の中央部に向けて横向きに噴射された微霧は吸気用送風機3から吐出される外気に助勢されて、温室2の下部の全域にわたって充満する。さらに、吸気用送風機3に設けた首振りスイッチ3sをオンすると、自動的にノズル5は左右方向に首振りとなり、温室2の下部の全域に急速に微霧を充満させることができる。
【0035】
この温室2の下部に充満させた微霧の気化熱により、下部の温度は低下し、温室2内の暖気は上昇して温室2の天井2sの中央部に設置した排気用送風機4で外部へ排出される。かつ、下部に充満した微霧も排気用送風機4により上方へと吸引される。これにより、ノズル5から噴射された微霧は温室2の下部に滞留することなく、上部に向けて迅速に上昇する。
【0036】
このように温室2内の全体にわたって迅速に微霧は流れ、該流れる過程で水滴は気化熱を奪って蒸発し、温室2の内部温度を迅速に低下させることができる。
ノズル5からの噴霧は、栽培植物Pの根元以下に向けて噴射される。微霧に含まれる未蒸発で栽培植物Pに付着しようとする水滴があれば、栽培ベッドの下の地面に吸収される。
栽培植物Pの下部に相当する温室2の下部に充満した微霧は天井中央に設けた排気用送風機4で吸引されて上昇する。その際、温室2内に残っている暖気が先に上昇して排気用送風機4で外部に排出され、温室2の内部は迅速に冷房される。
温室内部が設定した閾値の30℃未満になり、または湿度が80%に達すると、噴霧、吸気および排気を停止する。
このように、温室2内の温度上昇に応じて自動的に冷房でき、設定温度まで低下すると自動的に停止し、温室2内の過熱を防止し、植物の生育に適した温度条件に保持することができる。
【0037】
図5(A)(B)に第2実施形態を示す。
第2実施形態では、ノズル5を取り付けた吸気用送風機3(3A〜3D)を温室2の4隅ではなく、左右対向する周壁2aと2cに沿って、それぞれ間隔をあけてノズル5を取り付けた吸気用送風機3Aと3C、3Bと3Dを設置し、栽培ベッド9の間の通路7の両側で対向配置している。
また、天井2sには中央の左右に排気用送風機4(4A、4B)を2つ設置している。 他の構成は第1実施形態と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
作用効果も第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0038】
図6(A)(B)に第3実施形態を示す。
第3実施形態では、ノズル5を取り付けた吸気用送風機3(3A〜3D)を温室2の4隅ではなく、左右対向する周壁2aと2cに沿って間隔をあけて配置し、かつ、左右で千鳥配置とし、4本の各通路7(7A〜7D)の一方側に配置している。
ノズル付き吸気用送風機3Aと3C、3Bと3Dを栽培ベッド9の間の通路7の両側で千鳥配置している。
栽培する植物Pはトマトやキュウリ等の比較的背丈が高くなる植物としており、よって、ノズル付き吸気用送風機3(3A〜3D)は上下方向に首振りタイプとしている。
他の構成は第1実施形態と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
作用効果も第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0039】
図7および図8に第4実施形態を示す。
第4実施形態は第3実施形態と同様に、栽培する植物はトマトやキュウリ等の比較的背丈が高くなる植物としている。前記第3実施形態ではノズル付き吸気用送風機3(3A〜3D)を下部に設置し、上下方向に首振りタイプとしていて、上向きにも噴射しているが、本第4実施形態では、ノズル付き吸気用送風機3(3A、3B、3C…)を地上約2mの中高部の位置に設置し、噴霧が下向き傾斜して流れるように噴射している。
【0040】
かつ、栽培ベッド9の間の通路7の長さ方向の一端側に前記ノズル付き吸気用送風機3Aを配置し、長さ方向の中央位置にノズル付き吸気用送風機3Bを配置している。さらに、長さ方向の他端側の外壁の下部に排気用送風機4を設置している。かつ、温室2の天井にも排気用送風機4を設置している。
【0041】
前記のように、温室2内においてノズル付き吸気用送風機3を下部ではなく、栽培植物の成長時の背丈以上の中高部に設置し、下向き傾斜して噴霧を発生させると、温室2の全体を効率よく冷房することができる。温室2内の通路7等に吸気用送風機を設置する場合、下部ではなく中高部に配置すると、作業の邪魔にならない。
なお、温室2が大型で長さ方向が大である場合は、長さ方向に間隔をあけて3個以上のノズル付き吸気用送風機3を設置してもよい。
【0042】
図9に第5実施形態を示す。
第5実施形態はノズル付き吸気用送風機3のファン3dの吸気側となる背面に吸気ダクト30を連結し、温室2の外壁に穿設したダクト穴32に吸気ダクト30を内嵌している。
該構成とすると、吸気ダクト30を通して外気を直接にファン3dで吸い込んで、温室2内に吐出して送風することができる。
他の構成および作用効果は第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0043】
図10(A)(B)に第6実施形態を示す。
第6実施形態は断面矩形状の大型の温室2に適用した場合を示し、ノズル付き吸気用送風機3を外壁に沿って多数配置している。(A)では幅方向が狭い側に両側外壁に沿って千鳥配置している。(B)では幅方向および長さ方向にノズル付き吸気用送風機3を並列している。
このように、大型の温室2では、温室2の全域にわたってノズルからの噴霧が行き渡るように、多数のノズル付き吸気用送風機3を設置している。
【符号の説明】
【0044】
1 植物栽培ハウス
2 温室
2a〜2d 周壁
2s 天井
3(3A〜3D) 吸気用送風機
4 排気用送風機
5 ノズル
6 リングヘッダー
7 通路
8 センサ
9 栽培ベッド
P 植物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル付きの吸気用送風機を温室内の下部と中高部の少なくとも一方に設置し、前記吸気用送風機の温室内に位置する吐出側は、前記下部に設置する場合は横向きとするとともに中高部に設置する場合は斜め下向きとし、該吐出側にノズルを取り付け、該ノズルから温室内に噴霧させると共に該噴霧を前記吸気用送風機から吐出する送風に乗せる一方、
前記温室内の空気を外部に排気する排気用送風機を前記温室の上部に設置し、
前記温室内に設置する前記ノズル付き吸気用送風機と上部に設置する前記排気用送風機との相対位置関係を、前記ノズルからの噴霧が前記温室内を循環するように設置していることを特徴とする植物栽培室の冷房装置。
【請求項2】
前記ノズル付き吸気用送風機は、送風機の吸気側にダクトを取り付け、該ダクトを温室の壁に設けた開口まで延在させて該ダクトを通して外気を直接に吸引させ、または、温室の外壁に設けた窓の近辺に設置して前記窓から導入される外気を吸引させるものである請求項1に記載の植物栽培室の冷房装置。
【請求項3】
前記排気用送風機は温室の天井に設置し、前記ノズル付き吸気用送風機で前記温室に充満させる微霧を前記排気用送風機で天井側へと引き込む設定としている請求項1または請求項2に記載の植物栽培室の冷房装置。
【請求項4】
前記ノズル付き吸気用送風機は、前記温室の外周壁、四隅または/および扉に設置し、室内側に位置する該吸気用送風機の吐出側に取り付ける前記ノズルの噴霧方向を噴霧が温室内の全体にわたるように設定している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の植物栽培室の冷房装置。
【請求項5】
前記ノズル付き吸気用送風機は温室の対向する両側の周壁内面に両側で千鳥配置で設置している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の植物栽培室の冷房装置。
【請求項6】
成長時の背丈が高い栽培植物の場合、前記ノズル付き吸気用送風機は前記中高部の高さ位置に設置すると共に、栽培ベッドの列の間の空間位置で且つ前記温室の一辺の外壁と温室中央部とに同一方向の斜め下向きに設置し、
前記ノズル付き吸気用送風機からの噴霧を吸引する排気用送風機を対向する外壁の下部に設置している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の植物栽培室の冷房装置。
【請求項7】
前記ノズルは吸気用送風機のファンの外周に設けたリングヘッダーに所要間隔をあけて配置し、上下方向あるいは左右方向に首振りできるタイプとしている請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の植物栽培室の冷房装置。
【請求項8】
前記吸気用送風機に取り付ける前記ノズルは、平均粒径が30μm以下の水滴を含むセミドライフォグとして噴射するノズルとしている請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の植物栽培室の冷房装置。
【請求項9】
外気を温室内に吸気用送風機で導入すると共に、温室内の空気を排気用送風機で外部に排気し、該温室内に設置したノズルからの噴霧を前記吸気用送風機から吐出する送風に乗せて温室内を循環させて前記排気用送風機側へと導出する植物栽培室の冷房方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−115256(P2012−115256A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197551(P2011−197551)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(390002118)株式会社いけうち (26)
【Fターム(参考)】