説明

植物栽培装置及び植物栽培方法

【課題】 大面積・大容積の栽培環境を必要とせず、栽培密度を向上させ省電力・省スペースを達成し、合わせて苗の生長ばらつきを軽減することを可能とした暗黒・低温処理に好適な植物栽培装置を提供する。
【解決手段】 上面が光透過性を有し所要の空間を形成する壁体11a、11b、11c、11dにて構成されたキャリアボックス11と、このキャリアボックス11の上部に冷陰極蛍光ランプ16を備えた光源ユニット15を装着し、光源ユニット15はキャリアボックス11の上部開口面22より下方に装着されている植物栽培装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培中の暗黒・低温処理に好適な植物栽培装置及び植物栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イチゴやその他野菜類の促成栽培にあたり、栽培植物を所定条件の夜冷状態にする効果は従来から知られているところである。例えば特許文献1には、栽培植物を暗黒・低温処理することにより徒長が抑制され、出蕾・開花日が早くなるとの報告がなされている。すなわち、栽培植物を暗黒・低温処理するにあたり、対象植物に660±50nmの波長の赤色光を0.6μmol/m/sec以上のエネルギで4〜16時間/日照射することにより促成栽培を効果的に行うことができるとの報告である。しかしながら上述した特許文献1には、具体的な実施手段として一般的な蛍光灯を使用した例が開示されているに過ぎない。
【0003】
また、実際の栽培現場にあっては夜冷処理はごく一部でのみ行われているに過ぎず、一般的な方法は暗黒・低温処理である。暗黒・低温処理の代表的な手法としては、例えばイチゴ苗を2〜3週間程度暗黒・低温中に保管した後、定植を行うことにより花芽分化が促進され早期収穫を行うことを可能とした手法である。また、夜冷処理としては、夜には栽培植物を冷暗所に保存し暗黒・低温で保管を行うが、昼間は屋外の太陽光のもとで8時間/日栽培を行うことが一般的である。この方法は暗黒夜冷と比較して花芽分化率が向上する。
【0004】
特に、人工光源を用いた夜冷処理は行われておらず、一部行われている夜冷方法としては、例えば開閉式のハウスを使用し夜間は断熱遮光フィルムで暗黒状態を作り密閉した後、空調設備を稼動させて夜冷を行い、昼間は断熱遮光フィルムを開放し太陽光を取り入れ、短日処理を行っている。すなわち、植物が光を浴びる時間に応じて花芽などが生じることを利用し、光を照射する時間を制御することにより収穫時期などを制御するこが可能となる。
【0005】
なお、遮光フィルムに代えて苗自身を大きな台車上に載置させることによって、夜間と昼間を空調設備が稼動し低温状態が保持されている屋内と太陽光を照射する屋外との間を移動させることにより夜冷処理を行う方法もとられている。更に、低温処理を行いながら8時間/日、冷陰極蛍光ランプなどの人工光源で光を照射し残りの時間は暗黒中で処理を行う低温+短日処理も知られている。
【特許文献1】特開平7−322759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の方法によると、太陽光を短日処理のための光として利用しているため、栽培植物を平面的に配置する必要がある。このため、大規模なハウスの設備が必要となるうえ、大面積かつ大容積を冷却するため多くの電力を消費する空調設備が必要になる。また、点光源や照射均一性のない光源を使用して低温+短日処理を行うと、照射分布によって苗の生長にばらつきが生じてしまう。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたもので、大面積・大容積の栽培環境を必要とせず、栽培密度を向上させ省電力・省スペースを達成し、合わせて苗の生長ばらつきを軽減することを可能とした暗黒・低温処理に好適な植物栽培装置及び植物栽培方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係わる一実施形態の植物栽培装置は、上面が光透過性を有し所要の空間を形成する壁体にて構成されたキャリアボックスと、このキャリアボックスの上部に冷陰極蛍光ランプを備えた光源ユニットを装着し、前記光源ユニットは前記キャリアボックスの上部開口面より下方に装着されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係わる一実施形態の植物栽培装置は、上面が光透過性を有し所要の空間を形成する壁体にて構成されたキャリアボックスと、前記壁体の対向する一対の壁体上部に形成された一対の溝孔と、冷陰極蛍光ランプ並びにリフレクタからなる光源ユニットと、この光源ユニットの両端に形成された取付部材とを有し、前記リフレクタの光放射面は前記キャリアボックス内へ対向する如く配置され、前記取付部材は前記光源ユニットへの取着部と段部とから構成されており、前記光源ユニットが前記キャリアボックスの上部開口面より下方に設置されるよう前記取付部材を前記溝孔へ係止する如くしたことを特徴とする。
【0010】
本発明に係わる一実施形態の植物栽培方法は、上面が光透過性を有し所要の空間を形成する壁体にて構成されたキャリアボックスと、このキャリアボックスの上部に冷陰極蛍光ランプを備えた光源ユニットを装着し、前記光源ユニットは前記キャリアボックスの上部開口面より下方に装着されている植物栽培ユニット内に栽培植物を収納し、前記栽培植物に4〜16時間/日、前記光源ユニットから光を照射して暗黒・低温処理を行うことを特徴とする。
【0011】
本発明に係わる一実施形態の植物栽培装置は、前記光反射部材が支持板とこの支持板の前記リフレクタに対向する面に形成された光反射材とから構成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係わる一実施形態の植物栽培装置は、前記キャリアボックスの上部開口面に載置された蓋板と、この蓋板の裏面に前記光源ユニットが装着され、前記リフレクタの光放射面が前記キャリアボックス内へ対向する如く配置したことを特徴とする。
【0013】
本発明に係わる一実施形態の植物栽培装置は、前記リフレクタの開口部に光拡散部材が装着されていることを特徴とする。
【0014】
本発明に係わる一実施形態は、前記段部に前記壁体の厚さより幅広のスリットが形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明に係わる一実施形態の植物栽培装置は、前記冷陰極蛍光ランプの点灯回路を前記リフレクタに取り付けたことを特徴とする。
【0016】
本発明に係わる一実施形態の植物栽培装置は、前記段部が、前記溝孔から前記キャリアボックスの外部に出る如く形成されており、前記点灯回路が取り付けられる寸法を有することを特徴とする。
【0017】
本発明に係わる一実施形態の植物栽培装置は、前記キャリアボックスには前記光源ユニットが装着されており、前記段部に前記点灯回路が装着された複数のキャリアボックスを前記点灯回路を介して電気的に接続する如くしたことを特徴とする。
【0018】
本発明に係わる一実施形態の植物栽培装置は、前記壁体内面に光反射性の金属網を取り付けたことを特徴とする。
【0019】
本発明に係わる一実施形態の植物栽培装置は、前記壁体外面に光反射性の金属網を取り付けたことを特徴とする。
【0020】
本発明に係わる一実施形態の植物栽培方法は、前記植物栽培ユニットが前記キャリアボックスの上部開口面に設置された蓋板と、この蓋板の裏面に形成された光反射部材と、前記蓋板の裏面に前記光源ユニットが装着されて構成されており、前記リフレクタの光放射面が前記光反射部材に対向する如く配置されていることを特徴とする。
【0021】
本発明に係わる一実施形態の植物栽培方法は、前記植物栽培ユニットが前記キャリアボックスの上部開口面の一部に光透過性を有する空間を形成する如く前記キャリアボックスの上部開口面に配置された光反射部材と、この光反射部材の裏面に前記リフレクタの光放射面が前記光反射部材に対向する如く前記光源ユニットを前記光反射部材に装着して構成されていることを特徴とする。
【0022】
本発明に係わる一実施形態の植物栽培方法は、前記光源ユニットの光照射面が前記キャリアボックスの内部に対向していることを特徴とする。
【0023】
本発明に係わる一実施形態の植物栽培方法は、前記壁体に複数の通気孔を設けたことを特徴とする。
【0024】
本発明に係わる一実施形態の植物栽培方法は、前記壁体内面に光反射性の金属メッシュを取り付けたことを特徴とする。
【0025】
本発明に係わる一実施形態の植物栽培方法は、前記壁体外面に光反射性の金属メッシュを取り付けたことを特徴とする。
【0026】
本発明に係わる一実施形態の植物栽培方法は、前記栽培植物がイチゴであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、植物栽培にあたり大面積・大容積の栽培環境を必要とせず、栽培密度を向上させ省電力・省スペースを達成し、合わせて苗の生長ばらつきを軽減することを可能とし、特に暗黒・低温処理に好適な植物栽培装置及び植物栽培方法を可能とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に本発明に係わる実施形態を図を参照して説明する。図1は本発明に係わる一実施形態を説明するための斜視図であるが、イチゴ苗栽培用の例で説明する。図1(a)に示した幅52cm、奥行き32cm、高さ31cmの直方体のキャリアボックス11内部にはイチゴ苗を植え付けたポットを75個収納することが可能である。すなわち、キャリアボックス11は上部が開口面を形成しており、光透過性を有する空間を形成するように壁体11a、11b、11c、11dにて構成されている。
【0029】
このキャリアボックス11の底板12は、キャリアボックス11の側面から外側へ幅並びに奥行きとも張り出した形状となっている。また、キャリアボックス11の開口面には外側へ張り出した鍔部13が形成されている。この鍔部13は、後述するように、キャリアボックス11を積層する際に、作業者あるいは移送機械が、キャリアボックス11を持ち上げるために掛かる程度の幅があればよい。
【0030】
キャリアボックス11の開口面は蓋板14にて閉止されるが、この蓋板14の幅、奥行きは鍔部13と同一の寸法に形成されており、この蓋板14にてキャリアボックス11の開口面を閉止すると鍔部13と一体に密着される。蓋板14の裏面14a、すなわちキャリアボックス11の内部に対向する面の中央には、光源ユニット15がキャリアボックス11の長辺に平行に装着されている。この光源ユニット15は、外径3mm、長さ50cmの細管状の冷陰極蛍光ランプ16と、断面が放物線状のリフレクタ17から構成されている。
【0031】
蓋板14の裏面14a中央には光反射部材18が取り付けられており、光源ユニット15はこの光反射部材18に対向して8〜10cmの間隔をあけて装着されている。光源ユニット15のリフレクタ17の光放射面は光反射部材18に対向しており、その結果、冷陰極蛍光ランプ16からの光は直接イチゴ苗(図示せず)に照射されず、光反射部材18にて反射された間接光として照射される構成となっている。光反射部材18としては、アルミニューム板や銀蒸着フィルム、白色粉末を含んだポリエステルやアクリル樹脂などの反射シートでよい。なお、光源ユニット15の点灯回路は蓋板14の裏面14aに取り付ければよく、取り付ける場所としては光反射部材18以外の場所が望ましい。
【0032】
内側に細管状の冷陰極蛍光ランプ16を備えた光源ユニット15が装着された蓋板14を、キャリアボックス11の開口面に載置して、図1(b)に示すように植物栽培ユニット10が形成される。この植物栽培ユニット10は、底面12a並びに表面14bとも平坦になっており、図1(c)に示したように、複数の植物栽培ユニット10a、10b、…を高さ方向に積層することが可能である。このようにして、光源ユニット15は、キャリアボックス11の開口面の下方、すなわちキャリアボックス11の内側に配置されることになる。
【0033】
上記のように構成され2段に積層された植物栽培ユニット10a、10b内にイチゴ苗を収納して、低温処理状態において4〜16時間/日冷陰極蛍光ランプ16を点灯し光を内部のイチゴ苗に照射する。このような本発明に係わる栽培装置及び栽培方法を用いることにより、イチゴ苗を収納した植物栽培ユニット10a、10bを立体的に積層設置することが可能となった。この結果、栽培密度を上げることができ、小さな冷温庫で多くの低温・短日処理ができる。このため、建物や空調設備に必要な初期投資が少なくて済み、更に冷却を行う空調設備の容量も小さくて済む。また、空調を行う容積も栽培密度が増加したため少なくて済み、省電力化が可能となる。更にイチゴ苗の徒長を抑制でき、出蕾・開花日を早くすることができる。
【0034】
また、リフレクタ17の光照射面は植物栽培面とは反対面とし、一定間隔をあけた光反射部材18で再度光を反射させてあるので、非常に照射分布が均一である。ここでは、イチゴ苗と上面との間隔は8cmから10cmであるが、エッジ部においても光の減少度合いは40%以上である。このため、光分布が均一になるような構造を採用したことから、低温と短日処理期間(苗の花芽分化促進時期)における苗の生長度合い等が比較的同じになり、ばらつきの少ない苗となる。
【0035】
図2には光源ユニット15のみを抽出して示してあるが、図2(a)は斜視図、図2(b)は図2(a)のA−A線断面図である。図2に示した光源ユニット15は、図示しない点灯回路が光源ユニット15とは別体に配置されている例で、下方に開口されているリフレクタ17の下部中央に細管状の冷陰極蛍光ランプ16が装着されている。リフレクタ17は希望する方向に光を照射するためと、光の利用効率(集光性)を向上するために設けられる。光源ユニット15にはランプハーネス19並びにコネクタ20が接続されている。図3には光源ユニット15のリフレクタ17側面に点灯回路21を一体に取着した例を示した。
【0036】
次に本発明に係わる他の実施形態を図4を参照して説明する。図4(a)は要部透視斜視図、図4(b)は図4(a)のA−A線断面図である。図4に示した本発明に係わる他の実施形態では、キャリアボックス11の開口面22のやや下方中央には幅狭の光反射部材23が装着されている。この光反射部材23の両端には取付部材24が設けられており、キャリアボックス11の短辺側上部に形成された一対の溝孔25に取付部材24を挿入して着脱自在に取着する。光反射部材23の長さはキャリアボックス11の開口面22の長手方向と略同一であるが、奥行きは開口面22の短辺長の略1/3程度に形成されている。この結果、光反射部材23を開口面22に装着した場合、開口面22の全てが覆われることはなく、光反射部材23の両側は開放されたままとなる。すなわち、キャリアボックス11の開口部22は光反射部材23の両側が光透過性の状態に保持されていることになる。
【0037】
図4に示した光源ユニット15は後に詳述するが、リフレクタ17は上方すなわち光反射部材23の裏面に向かって開口しており、このリフレクタ17の中央には冷陰極蛍光ランプが取り付けられている。光源ユニット側面には点灯回路21が取り付けられており、キャリアボックス11側面の溝孔25から電源入力線26が外部に引き出されている。この実施形態においても、光源ユニット15は、キャリアボックス11の開口面の下方、すなわちキャリアボックス11の内側に配置される。
【0038】
図5には図4に示した光源ユニット15の詳細を示してある。図5(a)は全体斜視図、図5(b)は図5(a)のA−A線断面図、図5(c)は図5(a)の分解斜視図である。光反射部材23は支持板23aの下面に光反射材23bが貼着又は塗布されている。光源ユニット15は光反射材23bに対向して開口しているリフレクタ17とこの中央に装着されている冷陰極蛍光ランプ16から構成されている。光反射部材23と光源ユニット15は一対の取付部材24によって一体に固定される。取付部材24は、図4に示したキャリアボックス11の溝孔25に差し込むための係止片24aと、光源ユニット15から光反射部材23を所定間隔をあけて取り付けるための取付け片24bから構成されている。なお、リフレクタ17の側面には点灯回路21が取り付けられている。このような構造の光源ユニットを用いることにより、図4に示したキャリアボックス11内に収納された図示しないイチゴ苗には冷陰極蛍光ランプ16の光が間接照明にて照射されることになる。
【0039】
さて、図4に示した本発明に係わる一実施形態では、光源ユニット15をキャリアボックス11の側面に設けた溝孔25に掛けて取り付けたが、他の実施形態を図6を参照して説明する。すなわち、光源ユニット15の両端を一対の支持枠27、28に固定し、この状態でキャリアボックス11内へ設置する。支持枠27、28はそれぞれ上枠27a、28aとこれに一体に形成された支柱27b、28bから構成されている。
【0040】
このような構成とすることにより、キャリアボックス11側面には溝孔を開口する必要がなく、このためキャリアボックス11の光透過性を有する開口部は上部のみとなって、溝孔から光が侵入することもない。またキャリアボックス11内部の育成環境の均一化も保持される。図4に示したキャリアボックス11の側面に溝孔25を形成した構成と、図6に示した溝孔のない構成とは、栽培する植物の品種に応じた育成環境条件によって、選択的に採用すればよい。
【0041】
本発明にあっては、キャリアボックス11内で育成する植物の品種あるいは栽培時期に応じて最適な光が照射されるよう各種の光源ユニットを選択的に採用することができる。すなわち、図7(a)に示した例はすでに図5で説明したものであるが、光反射部材23は支持板23aの下面に光反射材23bを貼着あるいは塗布して形成する。光源ユニット15は光反射部材23と、この光反射部材23へ向けて開口するリフレクタ17の中央に装着された冷陰極蛍光ランプ16から構成されている。
【0042】
図7(b)に示した光反射部材29は光反射材によって形成されており、更に反射面が波型に形成されている。このような波型の光反射部材29を用いることにより栽培植物への照射光は乱反射光となる。図7(c)に示した光反射部材30は断面が円弧状の光反射材によって形成されており、光源ユニット15は光反射部材30の凹面に対向するように配置されている。この構成によると照射光は集束性を持つことになる。これとは逆に図7(d)に示した例は、光反射材からなる光反射部材31は断面が円弧状である点は図7(c)と同一であるが、光反射面が凸面となっている点が異なる。この結果、反射光はキャリアボックス内へ拡散的に照射される。
【0043】
以上の各例ではいずれも光源ユニット15のリフレクタ17開口部が光反射部材23、29、30、31の光反射面に対向する構成であったが、本発明における光源ユニット15として光反射部材を用いない構成も可能である。すなわち、図7(e)に示すように光反射面の断面が放物線状又は円弧状に形成されたリフレクタ17の中央に冷陰極蛍光ランプ16が装着されており、このリフレクタ17の開口部に光拡散部材32を取り付けた構成である。この光拡散部材32は保護板32aの内面に光拡散シート32bを貼着して形成することができる。光拡散シート32bとしては液晶表示パネルに広く採用されているが、例えばツジデン株式会社製のDシリーズ拡散シート(型番D−121)が知られている。
【0044】
なお、この光拡散部材32としては、光拡散シート以外でも樹脂板やレンズ等でもよい。また、図7(e)のように光拡散部材32の表面に保護板32aを設置したことにより外部からの衝撃や汚染から光拡散シート32bや冷陰極蛍光ランプ16を保護する機能を発揮する。
【0045】
図1、図4、図6にて説明した本発明に係わる実施形態は、いずれもキャリアボックス11の開口面に光反射部材を設置して、この光反射部材にリフレクタの開口部が対向するように光源ユニット15を配置した例であった。これらの例によるとキャリアボックス11内へ照射される光は間接光となる。本発明の他の実施形態によると、上述した間接光のみならず栽培植物へ直接光を照射するように構成することも可能である。図8を参照して説明する。なお、キャリアボックス11については図1で説明した構成と同一であるため、ここでは詳述しない。この実施形態においては、図8(a)に示すようにキャリアボックス11の蓋板14の裏面中央に光源ユニット15を取着し、同図(b)(c)のように植物栽培ユニット10a、10bを多段に積層することができる。
【0046】
さて、図8においては、図1の例とは異なり、光源ユニット15を構成するリフレクタ17の開口部はキャリアボックス11の内部へ向いている。この結果、収納されている栽培植物へ直接光源ユニット15からの光が照射される。栽培すべき植物の品種に応じて直接光が最適な場合に利用することになる。なお、図8には光源ユニット15としてリフレクタ17とこの中央に装着された冷陰極蛍光ランプ16のみの例を示したが、前述した図7(e)のリフレクタ17の開口部に光拡散部材32を取り付けた光源を用いてもよい。
【0047】
図9は本発明に係わる他の実施形態を説明する図であるが、図9(a)は要部透視斜視図、図9(b)は図9(a)の取付部材の斜視図、図9(c)は図9(a)のA−A線断面図である。この例は、リフレクタ17の開口部をキャリアボックス11の光透過性を有する開口面の下方すなわちキャリアボックス11内部へ向けて光源ユニット15を取り付けてある。図9(a)(c)に示すようにキャリアボックス11の短辺側壁体側面上部には溝孔25が形成されており、この溝孔25に両端に取付部材24が固定された光源ユニット15が挿入固定される。リフレクタ17の側面には点灯回路21が取り付けられている。
【0048】
取付部材24は、図9(b)に示すように上部に長形の光源ユニット取着部24aがあり、先端には屈折した段部24bが形成されている。この段部24bをキャリアボックス11の溝孔25に挿入して固定する。また、光源ユニット15はリフレクタ17の開口部が開放されているタイプでもよく、図7(e)に示した光拡散部材を取り付けたタイプであってもよい。
【0049】
図10は本発明の他の実施形態を説明する図であるが、図9と異なるところは、キャリアボックス11の溝孔25に挿入する取付部材24の形状にある。すなわち、図10(b)に示すように取付部材24の段部24(b)には差込みスリット24cが形成されている。この差込みスリット24cの間隔はキャリアボックス11の板厚よりわずかに幅広に設定されている。このようにして図10(a)、図10(c)に示してあるように光源ユニット15の両端に取着された取付部材24の差込みスリット24cに溝孔25の縁を挟み込み固定する。このような構造にすることによって、取付部材24は長手方向への位置ずれを防止することができる。
【0050】
図11は本発明の更に他の実施形態を説明する図であるが、図10と異なるところはキャリアボックス11の溝孔25に挿入する取付部材24の形状と点灯回路21の取り付け位置に関する点である。すなわち、取付部材24の前縁部24dを差込みスリット24cより更に下方へ伸ばした。そしてこの前縁部24dに点灯回路21を取着した。点灯回路21から電源入力線26が引き出されている。このように点灯回路21をキャリアボックス11の外部に取り付けたことから、点灯回路21から発生する熱がキャリアボックス11内の温度上昇を引き起こすことが抑制される。また、光源回路への入力電源線も容易に着脱可能となり、配線し易くなった。
【0051】
図12は本発明に係わる他の実施形態を示したもので、図11に示した点灯回路21をキャリアボックス11の外部に取り付けた構成を4台並列に接続した例である。すなわち、電源入力線26は最も左の第1キャリアボックス11aの点灯回路21aに接続される。第1キャリアボックス11aに隣接する第2キャリアボックス11bの点灯回路21bへの電源は、点灯回路21aから接続電源線33にて供給され、更に隣接するキャリアボックスにも図12のように順次接続電源によって並列接続される。このような構成とすることにより、各キャリアボックス毎に電源入力線を引き出す必要がなくなり、配線が簡素化された。
【0052】
図13は本発明の更に他の実施形態を示した図である。すなわち、光源ユニット15の両端を一対の支持枠27、28に固定し、この状態でキャリアボックス11内へ設置する。支持枠27、28はそれぞれ上枠27a、28aとこれに一体に接続された支柱27b、28bから構成されている。
【0053】
このような構成とすることにより、キャリアボックス11側面には溝孔を開口する必要がなく、このためキャリアボックス11の光透過性を有する開口面は上部のみとなって、溝孔から光が侵入することもなく、またキャリアボックス11内部の育成環境の均一化も保持される。図4に示したキャリアボックス11の壁体上部に溝孔25を形成した構成と、図6に示した溝孔のない構成とは、栽培する植物の品種に応じた育成環境条件によって、選択的に採用すればよい。また、光源ユニット15としては、下方に開口したリフレクタ17の中央に冷陰極蛍光ランプを装着してもいいし、図7(e)に示したリフレクタ17の開口部に光拡散部材32を設けたものを用いてもよい。
【0054】
次に図14を参照して本発明に係わる他の実施形態を説明する。図14(a)に示すように、キャリアボックス11の開口面は蓋板14によって閉鎖することができ、この蓋板14の下面には中央に冷陰極蛍光ランプ16を備えたリフレクタ17が開口面をキャリアボックス11内に向けて装着されている。また、キャリアボックス11の側面には多数の長形の通気孔34が設けられている。蓋板14でキャリアボックス11の開口面を閉鎖した状態を図14(b)に示し、図14(c)にはキャリアボックス11を2段縦に積層した状態を示したものである。
【0055】
さて、図14に示すようにキャリアボックス11の側壁に多数の通気孔34を設けたが、これはキャリアボックス11内にこもる冷陰極蛍光ランプ16や点灯回路からの発熱を外部に排出・換気するために設けたものである。なお、図では通気孔34の形状を長形としたが、側壁に孔を穿設する場合には、キャリアボックス24の側壁の強度を損なわない範囲で穿設する必要がある。また、通気孔の形状も長形に限ることはなく、キャリアボックス11の強度を保持し十分な換気が可能であれば他の形状であってもよい。
【0056】
図15は、図14に関連した本発明の他の実施形態を示す図である。この実施形態は、キャリアボックス11の換気機能を保持した状態で、キャリアボックス11内の光の照射量を増加させるようにした構成である。すなわち、図15(a)には側壁に長形の通気孔34を設けたキャリアボックス11の内面に光反射性を有する金属メッシュ35を貼着した例を示してある。図15(b)の例は、側壁に長形の通気孔34を設けたキャリアボックス11の側壁外面に、光反射性を有する金属メッシュ35を貼着したものである。このように、キャリアボックス11に通気孔34を設けたことにより、キャリアボックス11内部に熱がこもることがなく、栽培植物に悪影響を及ぼすことを回避することが可能となった。更に、側壁に光反射性の金属メッシュ35を貼着したことによって、光の利用効率が向上し省電力稼動を可能とした。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態を示す斜視図。
【図2】本発明の一実施形態に使用する光源ユニットを示す斜視図。
【図3】本発明の一実施形態に使用する他の光源ユニットを示す斜視図。
【図4】本発明の他の実施形態を示す一部透視斜視図並びに断面図。
【図5】図4の要部を示す斜視図、断面図並びに分解斜視図。
【図6】本発明の他の実施形態を示す一部透視斜視図。
【図7】本発明の実施形態に使用する光源ユニットの断面図。
【図8】本発明の他の実施形態を示す斜視図。
【図9】本発明の他の実施形態を示す一部透視斜視図、部品斜視図、並びに断面図。
【図10】本発明の他の実施形態を示す一部透視斜視図、部品斜視図、並びに断面図。
【図11】本発明の他の実施形態を示す一部透視斜視図、部品斜視図、並びに断面図、部品斜視図、並びに断面図。
【図12】本発明の他の実施形態を示す斜視図。
【図13】本発明の他の実施形態を示す一部透視斜視図、部品斜視図、並びに断面図。
【図14】本発明の他の実施形態を示す斜視図。
【図15】本発明の他の実施形態を示す斜視図。
【符号の説明】
【0058】
11…キャリアボックス
11a、11b、11c、11d…壁体
12…底板
13…鍔部
14…蓋板
15…光源ユニット
16…冷陰極蛍光ランプ
17…リフレクタ
18…光反射部材
19…ランプハーネス
20…コネクタ
21…点灯回路
22…開口面
23、29、30、31…光反射部材
24…取付部材
25…溝孔
26…電源入力線
27、28…支持枠
32…光拡散部材
33…接続電源線
34…通気孔
35…金属メッシュ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が光透過性を有し所要の空間を形成する壁体にて構成されたキャリアボックスと、このキャリアボックスの上部に冷陰極蛍光ランプ並びにリフレクタを備えた光源ユニットを装着し、前記キャリアボックスの複数個を積層可能とすべく前記光源ユニットは前記キャリアボックスの上部開口面より下方に装着されており、暗黒・低温処理に用いることを特徴とする植物栽培装置。
【請求項2】
前記キャリアボックスの上部開口面に載置された蓋板と、この蓋板の裏面に取着された光反射部材と、前記蓋板の裏面に前記光源ユニットが装着され、前記リフレクタの光放射面が前記光反射部材に対向する如く配置したことを特徴とする請求項1記載の植物栽培装置。
【請求項3】
前記キャリアボックスの開口面の一部に光透過性を有する空間を形成する如く前記キャリアボックスの上部に配置された光反射部材と、この光反射部材の裏面に前記リフレクタの光放射面が前記光反射部材に対向する如く前記光源ユニットを装着したことを特徴とする請求項1記載の植物栽培装置。
【請求項4】
前記キャリアボックスを構成する前記壁体の対向する一対の壁体上部に形成された一対の溝孔と、この溝孔に係止される如く前記光源ユニットの両端に形成された取付部材とを具備することを特徴とする請求項3記載の植物栽培装置。
【請求項5】
前記光源ユニットの両端は各々支持枠に固定され、前記支持枠は各々一対の支柱並びに上枠から構成されており、前記光源ユニットが固定された前記支持枠を前記キャリアボックス内に設置することを特徴とする請求項3記載の植物栽培装置。
【請求項6】
前記光反射部材は、前記リフレクタに対向する面が波状、凹面又は凸面に形成されていることを特徴とする請求項2乃至5記載の植物栽培装置。
【請求項7】
前記光源ユニットの光放射面は前記キャリアボックス内へ対向していることを特徴とする請求項1又は2記載の植物栽培装置。
【請求項8】
上面が光透過性を有し所要の空間を形成する壁体にて構成されたキャリアボックスと、前記壁体の対向する一対の壁体上部に形成された一対の溝孔と、冷陰極蛍光ランプ並びにリフレクタからなる光源ユニットと、この光源ユニットの両端に形成された取付部材とを有し、前記リフレクタの光放射面は前記キャリアボックス内へ対向する如く配置され、前記取付部材は前記光源ユニットへの取着部と段部とから構成されており、前記キャリアボックスの複数個を積層可能とすべく前記光源ユニットが前記キャリアボックスの上部開口面より下方に設置されるよう前記取付部材を前記溝孔へ係止する如くし、暗黒・低温処理することを特徴とする植物栽培装置。
【請求項9】
前記壁体に複数の通気孔を設けたことを特徴とする請求項1乃至8記載の植物栽培装置。
【請求項10】
上面が光透過性を有し所要の空間を形成する壁体にて構成されたキャリアボックスと、このキャリアボックスの上部に冷陰極蛍光ランプを備えた光源ユニットを装着し、前記キャリアボックスの複数個を積層すべく前記光源ユニットは前記キャリアボックスの上部開口面より下方に装着されている植物栽培ユニット内に栽培植物を収納し、前記栽培植物に4〜16時間/日、前記光源ユニットから光を照射して暗黒・低温処理を行うことを特徴とする植物栽培方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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