説明

植生補修材料

【課題】本発明の目的は、植生袋が腐食または溶解した後でも脱落しにくく、かつ、すくない労力で施工できる植生補修材料を提供すること。
【解決手段】植生基材及び植物種子を収容した植生袋からなる植生補修材料において、繊維状材料や水和硬化材料を用いることで、傾斜地に施工した場合でも植生基材および植物種子が脱落しにくい植生補修材料。本発明の植生補修材は、法面において優れた定着性を有するため、法面だけでなく様々な場所に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植生基材および植生種子を収容した植生袋であり、水分を浸透させることにより植生種子が発芽および成長を開始し、水分との非接触下では長期保存できることを特徴とする植生補修材であり、植生基材が繊維状材料や水和硬化材料を含有することを特徴とする植生補修材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
河川堤防や道路沿線などの法面は、降雨による土砂流出防止のためにその表面に芝や樹木等の植物を生育することで土壌の流出や崩落を防いでいる。この植物による土壌保護は、地中深く伸びた根によるネットワーク構造による地盤補強、及び地上部における葉等の地表面の保護作用によるものである。この地表を覆う植生が、気象変動や、物理的要因などにより劣化又は脱落した場合には、これを放置すると土砂の流失などにより、極端なケースでは法面の崩落を起こすことがある。
【0003】
従って、これら植生の劣化に対しては速やかに補修する必要があった。これらを補修するためには、あらかじめ育成した植物の移植が一般的であり、生育した植物を扱うことから、植物の維持管理や多量の水分を含んだ土壌をも含めた移送など、多大な労力と費用を必要としていた。
【0004】
また、植物種子を播いて補修する方法も有るが、種子を単に播くだけでは、法面では脱落しやすく、また虫や鳥などの害を受けやすかった。さらに、のりなどの粘着材に種子を加えて法面に塗布する方法も提案されているが、虫や鳥の害を防げないばかりか、少量の降雨でも流失するなど、施工性及び安定性に問題があった。
【0005】
特許文献1には、植生物の発芽育成可能な目合いが形成された網状本体を袋状に縫製して成る緑化用植生袋において、網状本体を強力レーヨンによって編織してあることを特徴とする緑化用植生袋が開示されている。該緑化用植生袋は、法面の保護ならびに植生物の育成の面から、法面に設置された植生袋が最短で半年、余裕を見込んで二年程度は維持されるものが理想的と記載されている。しかしながら、緑化用植生袋を高強度なものにしたとしても、植生袋が腐食した後は、雨等により脱落しやすい問題点があった。
植生袋が腐食した後でも、脱落しにくい植生補修材料が求められている。
【0006】
特許文献2には、法面等の緑化に用いられる樹木種子袋であって、少なくとも一部が経時的に分解するシートによって袋体を形成し、この袋体に樹木種子を収容して密封してなることを特徴とする樹木種子袋が開示されている。しかしながら、樹木種子袋が腐食した後に雨などにより、植生種子や植生基材が脱落しやすい問題点があった。ネット等で固定する必要があり、多大な労力を要する問題点がある。
【0007】
以上より、植生袋が腐食または溶解した後でも脱落しにくく、かつ、少ない労力で施工できる植生補修材料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平05−148840号公報
【特許文献2】特開平08−158370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、植生袋が腐食または溶解した後でも脱落しにくく、かつ、すくない労力で施工できる植生補修材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討した結果、植生基材及び植物種子を収容した植生袋からなる植生補修材料において、繊維状材料や水和硬化材料を用いることで、傾斜地に施工した場合でも植生基材および植物種子が脱落しにくいものとすることができた。
【0011】
すなわち、本発明は以下に示すものである。
【0012】
第一の発明は、植生基材および植生種子を収容した植生袋であり、水分を浸透させることにより植生種子が発芽および成長を開始し、水分との非接触下では長期保存できることを特徴とする植生補修材料である。
【0013】
第二の発明は、植生基材の水分量が10質量%以下であることを特徴とする第一の発明に記載の植生補修材料である。
【0014】
第三の発明は、水との接触で一部が溶解する植生袋からなることを特徴とする第一又は第二の発明に記載の植生補修材料である。
【0015】
第四の発明は、植生基材が繊維状材料を含有することを特徴とする第一から第三の発明のいずれかに記載の植生補修材料である。
【0016】
第五の発明は、植生基材が水和硬化性材料を含有することを特徴とする第一から第四の発明のいずれかに記載の植生補修材料である。
【0017】
第六の発明は、植生袋の大きさが1000cm以下であることを特徴とする第一から第五の発明のいずれかに記載の植生補修材料である。
【0018】
第七の発明は、第一から第六の発明のいずれかに記載の植生補修材料を用いて植生を補修させる方法である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明について詳細に説明する。
【0020】
本発明は、植生基材および植生種子を収容した植生袋であり、水分を浸透させることにより植生種子が発芽および成長を開始し、水分との非接触下では長期保存できることを特徴とする植生補修材料である。
【0021】
<植生袋>
本発明に用いる植生袋は、素材が水で溶解する紙であり、法面の保護及び育成面から、法面に設置された植生袋の強度が1日〜2週間程度維持され、かつ、植生種子がある程度育成した後に溶解して、土壌に同化する条件を備えるものが理想である。
【0022】
本発明に用いる植生袋は、植生基材及び植生種子を水分が浸透するまで植生袋に収容することができ、水分を加えない状態では、植生種子が発芽させないまま保存することができる特徴を有している。
【0023】
<植物種子>
植物種子としては、特に制限されないが、野菜種子や芝種子等が挙げられる。野菜種子としては、ダイコン、ハクサイ、カブ、キャベツ等のアブラナ科、エダマメ、シロクローバ、アカクローバ、ヘアリーベッチ、アルファルファ、クリムソンクローバ、バーズフットトレホイル、レンゲなどのマメ科、キク科、ニンジン、アスパラガス等が挙げられる。芝種子としては、トールフェスク、チューイングフェスク等のフェスク類、ペレニアルライグラス等のライグラス類、バミューダグラス類、センチピートグラス類、ノシバ類、ベントグラス類、ブルーグラス類、その他カーペットグラス、バヒアグラス、ローズグラス、ウウィーピングラブグラス、ダイカンドラ等が挙げられる。
【0024】
<植生基材>
発芽した植物の根を定着できる材料であれば良く、土壌のほか、肥料、ケイ石粉、繊維状材料、水和硬化性材料等が挙げられる。
植生基材の水分含有量が10質量%以下であることが好ましく挙げられ、特に5質量%以下であることが望ましい。前記水分含有量にすることで、植生基材と混合することで発芽せずに、長期間保存することができる。
【0025】
<水和硬化性材料>
水和硬化性材料とは、水和により硬化する材料である。水和硬化性材料とは、水和により針状結晶を精製しこれらの複合的発達により硬化する材料である。植生基材が降雨などにより崩壊するのを遅らせる目的で用い、含有量としては全体の20質量%以下であることが好ましく挙げられる。
【0026】
水和硬化性材料としては、有機材料及び無機材料の基材保持成分が挙げられる。有機材料の水和硬化性材料としては、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、リグニン等の水溶性樹脂が挙げられる。無機材料の水和硬化性材料としては、石膏、セメント、水ガラス、粘土鉱物等が挙げられる。
これらの中で、セメントが植生補修材料を固定する点で特に好ましく挙げられる。
【0027】
本発明の植生補修材における植生基材、植生種子の含有量は、植生基材90〜99.99質量%、植生種子0.01〜10質量%が好ましく挙げられる。
【0028】
本発明の植生補修材を用いることにより、水分を浸透させるまでは発芽しないことから、多量に生産及び保管することも可能であり、工業生産においてもコスト低減が可能となった。また、植生基材の構成材料として繊維状材料を含ませることにより、傾斜地に施工した場合でも植生基材及び植物種子が脱落しにくいものとすることができた。
【0029】
この植生基材として、繊維状材料や水和硬化性材料を配合することにより、水分浸透後の硬化作用により植生基材が崩壊しにくいものとすることができた。
さらに、植生袋の大きさを1000cm以下にすることで、法面の植生の隙間に、簡易に施工することが可能となる。
【0030】
<植生補修材の施工方法及び補修方法>
施工方法には特に制限はなく、単に地表面に置く方法、埋設による施工、ネット等により施工する方法等、自由に選ぶことができる。本発明の適用場所は傾斜地である法面が予想されることからアンカーピン等の固定部材を用いて地表面に固定するのが望ましい。
法面の植物の生えていないところに、本願発明の植生補修材料を施工することで、法面の植生を補修することができる。
【0031】
本発明の植生補修材は、植生袋が腐食しても、法面から脱落せず、優れた定着性を有し、また、少ない労力で施工することができる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例によりなんら限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
市販の水溶性紙袋(日本製紙パピリア社製)140mm×140mmに、市販の黒土を150g(水分量1.8%まで乾燥させたもの)、市販の粒状化成肥料1g、木綿2g、西洋芝トールフェスクの種子20粒を均一に混ぜたものを入れ、傾斜角45度の斜面に竹製のアンカーピン(φ2mm×150mm)を用いて固定した。
2週間後、水溶紙は80%ほど溶失し、トールフェスクの発芽(3mm)が確認でき、4週間後にはトールフェスクの苗は110mmまで良好に成長し、法面への植生定着が確認できた。
この場合、6サンプル中6サンプルとも、降雨による植生基材の崩れは見られず、良好に植生が定着できた。
【0034】
(実施例2)
市販の水溶性紙袋(日本製紙パピリア社製)140mm×140mmに、市販の黒土を135g(水分量1.8%まで乾燥させたもの)、市販のポルトランドセメント15g、市販の粒状化成肥料1g、西洋芝トールフェスクの種子20粒を均一に混ぜたものを入れ、傾斜角45度の斜面に竹製のアンカーピン(φ2mm×150mm)を用いて固定した。
2週間後、水溶紙は80%ほど溶失し、トールフェスクの発芽(2mm)が確認でき、4週間後にはトールフェスクの苗は90mmまで良好に成長し、法面への植生定着が確認できた。
この場合、6サンプル中6サンプルとも、降雨による植生基材の崩れは見られず、良好に植生が定着できた。
【0035】
(実施例3)
市販の水溶性紙袋(日本製紙パピリア社製)140mm×140mmに、市販の黒土を130g(水分量1.8%まで乾燥させたもの)、市販のポルトランドセメント10g、市販の粒状化成肥料1g、木綿2g、西洋芝トールフェスクの種子20粒を均一に混ぜたものを入れ、傾斜角45度の斜面に竹製のアンカーピン(φ2mm×150mm)を用いて固定した。
2週間後、水溶紙は80%ほど溶失し、トールフェスクの発芽(2mm)が確認でき、4週間後にはトールフェスクの苗は90mmまで良好に成長し、法面への植生定着が確認できた。
この場合、6サンプル中6サンプルとも、降雨による植生基材の崩れは見られず、良好に植生が定着できた。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の植生補修材は、法面において優れた定着性を有するため、法面だけでなく様々な場所に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植生基材および植生種子を収容した植生袋であり、水分を浸透させることにより植生種子が発芽および成長を開始し、水分との非接触下では長期保存できることを特徴とする植生補修材料。
【請求項2】
植生基材の水分量が10質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の植生補修材料。
【請求項3】
水との接触で一部が溶解する植生袋からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の植生補修材料。
【請求項4】
植生基材が繊維状材料を含有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の植生補修材料。
【請求項5】
植生基材が水和硬化性材料を含有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の植生補修材料。
【請求項6】
植生袋の大きさが1000cm以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の植生補修材料。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の植生補修材料を用いて植生を補修させる方法。

【公開番号】特開2012−187032(P2012−187032A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52262(P2011−52262)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000228349)日本カーリット株式会社 (269)
【Fターム(参考)】