説明

検出装置および方法、並びにプログラム

【課題】ランダムに検出される検出位置情報に基づいて、正確に物体の進行方向および速度を検出できるようにする。
【解決手段】検出位置特定部81は、検出された物体の検出位置における速度、距離、および角度に基づいて、物体の相対的な検出位置を特定し、含有数カウント部86は、物体の相対的な検出位置を時刻に対応付けて、水平方向の検出位置を示す軸と進行方向の検出位置までの距離を示す軸とで設定される2次元の平面上にプロットし、物体の進行方向の先頭部分が所定時間内に通過すると予想される平面上の形状からなるフレームを所定の回転角度で回転させながら、回転角度毎にフレーム内に含まれるプロットされた検出位置の数をカウントし、方向決定部87は、カウントされたプロット数が最大となるフレームの回転角度に基づいて、物体の存在する存在位置、および進行方向を決定する。本発明は、車両安全装置に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置および方法、並びにプログラムに関し、特に、接近する物体の進行方向および速度を検出できるようにした検出装置および方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車と他車との間の相対速度や距離を測定するセンサとして、2周波CW(Continuous Wave)方式のセンサが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。すなわち、この2周波CW方式のセンサは、受信された搬送波に対するドップラ信号の周波数(以下、ドップラ周波数と称する)や位相を検出し、それらを利用して、自車と他車との相対速度や距離を測定する。
【0003】
また、自車と他車との相対的な位置を示す角度を測定するセンサとして、モノパルス方式のセンサが知られている。
【0004】
このように、2周波CW方式のセンサを用いて自車と他車との距離を測定し、モノパルス方式のセンサにより自車と他車との角度を測定することで、接近する他車の存在する位置を検出することが可能となっている。
【0005】
【特許文献1】特許第3203600号公報
【特許文献2】特開2004−69693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した2周波CW方式で距離を推定し、モノパルス方式で角度を推定する方式のレーダである場合、検出位置は車両の存在範囲内でばらつきが生じることが知られている。
【0007】
そこで、従来、車載レーダによる電波を出力し、その反射波により接近する車両の速度、距離、および方向を検出して、衝突可能性を予検知する際、速度情報や検出位置情報にフィルタをかけたうえで速度ベクトルを推測し、実際に存在する車両の位置を推測していた。このフィルタでは出力のばらつきが一定の分布を示すことが予見される必要がある。例えば、カルマンフィルタでは、出力のばらつきがガウス性分布を示すことが前提となっている。
【0008】
しかしながら、車両から反射される電波の場合、必ずしもノイズやS/N比(Signal to Noise Ratio)で分布が決まるわけではない。すなわち、レーダと車両との位置関係と、車両外形によって決定する電波の干渉状態によって、検出される座標(電波の反射中心)は決定するものであるため、このばらつきは、正規分布に従ったばらつきとはならず、ランダムなばらつきとなり、検出される物体の中心の経路を推定するために、得られた検出結果にローパスフィルタを通したり、カルマンフィルタを通したりしても、正確な結果を得ることはできない。
【0009】
このため、フィルタを用いた方法では、電波による検出位置から、正確な車両位置を特定することができないことがあった。
【0010】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、接近する物体の位置検出結果に基づいて、接近する物体の進行方向および速度の少なくともいずれかを検出できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面の検出装置は、物体を検出する検出装置であって、所定の方向に電波を照射することにより送信信号を送信する送信手段と、前記送信手段により送信された送信信号としての電波のうち、反射されてくる電波を受信し、受信した前記電波より受信信号を生成する受信手段と、前記受信手段により生成された受信信号を、所定時間の間でサンプリングすることにより、物体の速度、距離、および角度を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された物体の距離および角度に基づいて、前記物体の相対的な検出位置を特定する位置特定手段と、前記位置特定手段により特定された検出位置を2次元の平面上にプロットするプロット手段と、フレームを設定するフレーム設定手段と、前記フレームを所定の回転角度で回転させながら、前記回転角度毎に前記フレーム内に含まれるプロットされた複数の検出位置を用いて所定の判定手法に基づいて、前記物体の存在する存在位置、および進行方向の少なくとも、そのいずれかを決定する方向決定手段とを含む。
【0012】
前記物体は、車両とすることができる。
【0013】
送信手段は、例えば、送信部であり、車両の真後ろに近い所定の方向であって、所定の距離近傍の範囲からなる所定範囲に電波を照射することにより送信信号を送信することができる。
【0014】
受信手段は、例えば、受信部であり、車両の真後ろに近い所定の方向であって、所定の距離近傍の範囲からなる所定範囲における、送信信号のうち反射されてくる電波を受信し、受信した電波より受信信号を生成することができる。
【0015】
検出手段は、例えば、ドップラ周波数算出部、距離算出部、および角度算出部であり、受信信号に基づいて、FFTにより受信信号を所定の周期でサンプリングして検出位置における速度、距離、および角度を検出することができる。
【0016】
位置特定手段は、例えば、検出位置特定部であり、速度、距離、および角度に基づいて、物体、すなわち、車両の検出位置を特定することができる。
【0017】
プロット手段は、例えば、含有数カウント部であり、検出位置記憶部に記憶されている物体の検出位置2次元の平面上に検出位置をプロットし、車両の進行方向に対して、フレーム設定手段により設定された、所定の速度で掃き出される範囲を示すフレームを所定の回転角度毎に回転させながら、回転角度毎にフレーム内に含まれるプロットされた検出位置の数をカウントする。
【0018】
方向決定手段は、例えば、方向決定手段であり、プロット手段によりフレームの回転角度毎のカウント値のうち、最大となるフレームの回転角度に基づいて、車両の進行方向を決定する。この際、フレームの中心位置を車両の存在する位置として決定する。この処理により、検出位置は、ランダムにばらつくことが知られているが、検出位置がランダムにばらついても、車両の存在すると考えられる検出位置が最も多い回転角度のフレームの位置を車両の通行経路であるとみなすことができるので、車両の存在位置を適正に求めることが可能となる。結果として、車両の正確な存在位置から、衝突の有無を正確に判定することが可能となり、衝突の発生が予期される状況に際して、的確に衝突予備動作を実施させることができるので、衝突時の安全性を向上させることが可能となる。
【0019】
前記方向決定手段により決定された存在位置、および進行方向に基づいて、前記物体の速度ベクトルを設定する速度ベクトル設定手段と、前記速度ベクトル設定手段により設定された速度ベクトルを、設定された時刻に対応付けて記憶する速度ベクトル記憶手段と、前記速度ベクトル記憶手段により過去の時刻に記憶された速度ベクトルに基づいて、現在時刻において設定された速度ベクトルを補正する補正手段をさらに含ませるようにすることができる。
【0020】
速度ベクトル設定手段とは、例えば、ベクトル設定部であり、速度ベクトル記憶部とは、例えば、ベクトル記憶部であり、補正手段とは、例えば、ベクトル補正部であり、速度ベクトル設定手段により求められ、時刻情報と対応付けられて速度ベクトル記憶部に記憶された過去の速度ベクトル情報から、現在の速度ベクトルが補正される。このため、車両の存在位置と、移動方向とを正確に認識することができるので、衝突の有無を的確に判定することが可能となり、衝突時の安全性を向上させることが可能となる。
【0021】
前記車両の速度が、所定速度より高速で、かつ、前記存在位置が、所定範囲であるとき、衝突予備動作を実行する衝突予備動作実行手段を含ませるようにすることができる。
【0022】
衝突予備動作実行手段とは、例えば、衝突予備動作制御部であり、方向決定部により決定された車両の存在位置と、ドップラ周波数算出部により算出された車両の速度との情報から接近する車両との衝突の可能性がある場合、衝突に備えた予備的な動作を実行させるようにすることができ、車両に設けられたとき、衝突時の安全性を向上させることができる。
【0023】
前記平面上にプロットされた前記検出位置、並びに、前記車両の存在位置、および進行方向に基づいて、前記プロットされた検出位置におけるばらつきと、前記受信手段により受信される電波の強度に対応したノイズにより推定されるばらつきとから、検出される車両の大きさを推定する推定手段をさらに含ませるようにすることができる。
【0024】
前記衝突予備動作実行手段には、前記推定手段により推定される車両の大きさが所定の大きさよりも大きい場合、前記所定の速度を小さくし、前記所定の範囲を広く設定させるようにすることができ、前記物体の速度が、前記所定速度より高速で、かつ、前記存在位置が、前記所定範囲であるとき、衝突予備動作を実行させるようにすることができる。
【0025】
推定手段とは、例えば、車格推定部であり、プロットされた検出位置のばらつき、受信信号の強度から推定されるノイズによるばらつき、車両の存在位置、および進行方向から検出された車両の大きさを推定することで、接近する車両の車格を推定し、車格に応じた衝突の有無の判定基準を切り替えると共に、衝突の可能性がある場合の衝突予備動作を車格に応じて切り替えるようにすることができるので、車格に応じた衝突の判断と、車格に応じた衝突予備動作とが可能となり、結果として、衝突時の安全性を向上させることが可能となる。
【0026】
本発明の一側面の検出方法は、物体を検出する検出装置の検出方法であって、所定の方向に電波を照射することにより送信信号を送信する送信ステップと、前記送信ステップの処理により送信された送信信号としての電波のうち、反射されてくる電波を受信し、受信した前記電波より受信信号を生成する受信ステップと、前記受信手段により生成された受信信号を、所定時間の間でサンプリングすることにより、物体の速度、距離、および角度を検出する検出ステップと、前記検出手段により検出された物体の距離および角度に基づいて、前記物体の相対的な検出位置を特定する位置特定ステップと、前記位置特定ステップの処理により特定された検出位置を2次元の平面上にプロットするプロットステップと、フレームを設定するフレーム設定ステップと、前記フレームを所定の回転角度で回転させながら、前記回転角度毎に前記フレーム内に含まれるプロットされた複数の検出位置を用いて所定の判定手法に基づいて、前記物体の存在する存在位置、および進行方向の少なくとも、そのいずれかを決定する方向決定ステップと前記物体の存在する存在位置、および進行方向を決定する方向決定ステップとを含む。
【0027】
本発明の一側面のプログラムは、物体を検出する検出装置を制御するコンピュータに、所定の方向に電波を照射することにより送信信号を送信する送信ステップと、前記送信ステップの処理により送信された送信信号としての電波のうち、反射されてくる電波を受信し、受信した前記電波より受信信号を生成する受信ステップと、前記受信手段により生成された受信信号を、所定時間の間でサンプリングすることにより、物体の速度、距離、および角度を検出する検出ステップと、前記検出手段により検出された物体の距離および角度に基づいて、前記物体の相対的な検出位置を特定する位置特定ステップと、前記位置特定ステップの処理により特定された検出位置を2次元の平面上にプロットするプロットステップと、フレームを設定するフレーム設定ステップと、前記フレームを所定の回転角度で回転させながら、前記回転角度毎に前記フレーム内に含まれるプロットされた複数の検出位置を用いて所定の判定手法に基づいて、前記物体の存在する存在位置、および進行方向の少なくとも、そのいずれかを決定する方向決定ステップとを含む処理を実行させる。
【0028】
本発明の一側面においては、所定の方向に電波を照射することにより送信信号が送信され、送信された送信信号としての電波のうち、反射されてくる電波が受信され、受信された前記電波より受信信号が生成され、生成された受信信号が、所定時間の間でサンプリングされることにより、物体の速度、距離、および角度が検出され、検出された物体の距離および角度に基づいて、前記物体の相対的な検出位置が特定され、特定された検出位置が2次元の平面上にプロットされ、フレームが設定され、前記フレームを所定の回転角度で回転させながら、前記回転角度毎に前記フレーム内に含まれるプロットされた複数の検出位置を用いて所定の判定手法に基づいて、前記物体の存在する存在位置、および進行方向の少なくとも、そのいずれかが決定される。
【0029】
以上により、プリクラッシュ安全装置における衝突発生を正確に判定させることが可能になると共に、衝突に対する適切な衝突予備動作を実施することが可能となるので、衝突時の安全性を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、接近する物体の存在する位置、進行方向および速度を検出することが可能となり、自動車に利用した場合には、物体の衝突時の安全性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1は、本発明に係るレーダ装置の一実施の形態の構成例を示す図である。
【0032】
レーダ装置1は、車両に搭載され、車両の後方範囲(ほぼ真後ろであって、比較的遠い部分を含む範囲)に相対速度が所定の速度以上の高速で接近する車両を検出して、衝突を予期して、衝突に備えた予備的な動作を実行させる、いわゆるプリクラッシュ機能を備えたものである。
【0033】
レーダ装置1は、送信部11、受信部12、衝突予備動作用信号処理部13、および衝突予備動作制御部14とから構成されている。
【0034】
送信部11は、2周波CW(Continuous Wave)からなる電波を送信信号として発生し照射する。受信部12は、送信部11より送信された送信信号である電波のうち、物体により反射されてくる電波を受信して、受信した電波より受信信号を生成し、衝突予備動作用信号処理部13に供給する。
【0035】
衝突予備動作用信号処理部13は、受信部12より供給されてくる受信信号を比較的短い周期でサンプリングし、後方からの他車の接近を検出して、衝突の有無を判定し、判定結果に応じて、衝突予備動作制御部14に対して衝突予備動作を実行させる。衝突予備動作制御部14は、例えば、音声警告装置、シートベルト、エアバッグ、または可動式ヘッドレストなどのいわゆる衝突時に乗員を保護する衝突保護機器の動作を制御し、衝突予備動作用信号処理部13より衝突予備動作を実施するように指示が出されると、音声により衝突の発生を事前警告して注意を促し、シートベルトを引き上げて乗員を座席に固定させ、いわゆる鞭打ち症などの発生を抑止したり、衝突前に適切なタイミングでエアバッグを動作させて衝突時の乗員の衝撃を吸収したり、さらには、可動式ヘッドレストを動作させて乗員の頭部に押し当てるなどして、乗員の衝突時の頭部への反動による衝撃を抑制させるといった処理を実行させる。
【0036】
次に、送信部11の詳細な構成について説明する。
【0037】
送信部11は、発振部31、周波数切替部32、増幅部33、3分岐部34、増幅部35、およびアンテナ36より構成されている。
【0038】
発振部31は、周波数切替部32から所定の間隔で供給されてくる切替信号に基づいて、数10GHz帯の周波数f1のCW信号と、周波数f1と数MHz異なる周波数f2のCW信号とを搬送波として切り替えて発生し、増幅部33で増幅させて3分岐部34に供給する。周波数切替部32は、発振部31に発振すべき周波数の切替を指示する切替信号を供給すると共に、受信部12にも切替信号を供給する。
【0039】
3分岐部34は、増幅部33より供給されてくる周波数f1またはf2のCW信号を受信部12、および、増幅部35のそれぞれに分岐して供給する。増幅部35は、3分岐部34より供給されてくる周波数f1またはf2のCW信号を送信信号としてアンテナ36より電波として出力する。
【0040】
アンテナ36は、車両本体の後方中央部付近に設けられており、図2で示されるような範囲Z1を検知できるような強度分布特性を有している。図2においては、図中下方向が車両C1の進行方向であり、車両C1の後方中央部付近に設けられたアンテナA(図1におけるアンテナ36,51−1,51−2が一体となって構成されている)から電波が発せられているときの強度分布特性が示されている。
【0041】
図2の強度分布特性における範囲Z1は、アンテナAの存在する位置から後方正面を中央とした、水平方向に角度αで、かつ、所定の距離までを含む図中の斜線部の範囲である。尚、図2においては、車両C1が、車線L1乃至L3のうちの車線L2を図中の下方向に走行している状態が示されている。
【0042】
次に、受信部12の構成について説明する。
【0043】
受信部12は、アンテナ51−1,51−2、加算部52、減算部53、LNA(Low Noise Amplifier)54−1,54−2、混合器55−1,55−2、振分部56,57、LPF(Low Pass Filter)58−1乃至58−3、増幅部59−1乃至59−3、ADC(Analog Digital Converter)60−1乃至60−3、および受信レベル出力部61から構成されている。
【0044】
アンテナ51−1,51−2は、送信部11のアンテナ36より照射された送信信号としての電波のうち、車両、または、人間などの物体に反射してくる電波を順次受信し、受信した電波に対応する信号をそれぞれ加算部52、および減算部53に供給する。また、アンテナ51−2は、受信した電波に対応する信号を受信レベル出力部61に供給する。尚、受信レベル出力部61は、受信した電波のレベルを出力するものであるので、供給される受信された電波は、アンテナ51−2からのものに限らずアンテナ51−1からのものであってもよい。また、上述したように送信信号は、周波数f1,f2が順次切り替えられて送信されるが、物体が移動している場合、反射によって、周波数f1,f2に対応して、ドップラ周波数fd1,fd2が発生することになる。このため、アンテナ51−1,51−2により受信される電波は、周波数f1+fd1のCW信号に対応するものと、周波数f2+fd2のCW信号に対応するものとが、送信信号におけるf1,f2周波数の切替タイミングど同期して、順次切り替えられて受信されることになる。また、送信部11および受信部12の構成を含むレーダ装置1は、一体のパッケージとして構成され、車両の後部略中央部に搭載されるものであり、車両の大きさからみて、アンテナ51−1,51−2と、アンテナ36とは、実質的に略同位置に配置されるものである。このため、アンテナ51−1,51−2は、アンテナ36で出力された送信信号としての電波のうち、物体により反射され、略同一の位置に反射されて戻ってくる電波を受信する。
【0045】
加算部52は、アンテナ51−1,51−2より供給されてくる信号を加算して、f1和信号(周波数f1のCW信号が反射することにより受信されたドップラ周波数fd1を含む周波数(f1+fd1)の和信号)、およびf2和信号(周波数f2のCW信号が反射することにより受信されたドップラ周波数fd2を含む周波数(f2+fd2)の和信号)としてLNA54−1に供給する。減算部53は、アンテナ51−1,51−2より供給されてくる信号を減算して、f1差信号(周波数f1のCW信号が反射することにより受信されたドップラ周波数fd1を含む周波数(f1+fd1)の差信号)、およびf2差信号(周波数f2のCW信号が反射することにより受信されたドップラ周波数fd2を含む周波数(f2+fd2)の差信号)としてLNA54−1に供給する。
【0046】
LNA54−1,54−2は、それぞれ加算部52および減算部53より供給されてくるf1和信号またはf2和信号、およびf1差信号またはf2差信号を、それぞれ後段の混合器55−1,55−2に3分岐部34より供給されてくる周波数f1またはf2のCW信号のレベルと同程度にまで増幅し、混合器55−1,55−2に供給する。
【0047】
混合器55−1,55−2は、送信部11の3分岐部34より供給されてくる周波数f1またはf2のCW信号と、LNA54−1,54−2のそれぞれから供給されてくるf1和信号およびf1差信号、または、f2和信号およびf2差信号とを混合し、それぞれ振分部56,57に供給する。尚、f1和信号およびf1差信号が、周波数f1のCW信号と混合された信号については、それぞれfd1和信号およびfd1差信号と称するものとし、f2和信号およびf2差信号が、周波数f2のCW信号と混合された信号については、それぞれfd2和信号およびfd2差信号と称するものとする。
【0048】
振分部56は、混合器55−1より供給されてくる信号を、切替信号に対応して、LPF58−1,58−2に周波数ごとに、それぞれfd1和信号およびfd2和信号として振り分けて出力する。振分部57は、それぞれ混合器55−2より供給されてくるfd1差信号、およびfd2差信号のうち、切替信号に対応して、fd1差信号のみをLPF58−3に振り分けて出力する。
【0049】
LPF58−1乃至58−3は、それぞれ振分部56,57より供給されてくるfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号を平滑化した後、増幅部59−1乃至59−3に供給する。増幅部59−1乃至59−3は、それぞれLPF58−1乃至58−3より供給されてきたfd1和信号、fd2和信号、および、fd1差信号を増幅して、ADC60−1乃至60−3に供給する。ADC60−1乃至60−3は、平滑化されて、さらに増幅されたfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号を、デジタル信号に変換し、受信信号として、衝突予備動作用信号制御部13に供給する。
【0050】
受信レベル出力部61は、アンテナ51−2により受信された信号の受信レベルを測定し、デジタル化した信号に変換して、衝突予備動作用信号処理部13に供給する。
【0051】
次に、衝突予備動作用信号処理部13の構成について説明する。
【0052】
衝突予備動作用信号処理部13は、FFT(Fast Fourier transform:高速フーリエ変換部)71−1乃至71−3、衝突判定用FFTタイミング制御部72、ドップラ周波数算出部73、距離算出部74、角度算出部75、衝突判定部76より構成されている。
【0053】
FFT71−1乃至71−3は、衝突判定用FFTタイミング制御部72からの制御信号に基づいて、受信部12より受信信号としてそれぞれに供給されてくるfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号を順次サンプリングして、FFT処理し、FFT71−1が、fd1和信号のスペクトル分布から得られる結果を距離算出部74および角度算出部75に供給し、FFT71−2が、fd2和信号のスペクトル結果から得られる結果をドップラ周波数算出部73、および距離算出部74に供給し、FFT71−3が、fd1差分信号のスペクトル分布から得られる結果を角度算出部75に供給する。
【0054】
衝突判定用FFTタイミング制御部72は、内蔵するカウンタ72aを所定時間ごとに加算し、所定時間T1が経過したところで、FFT71−1乃至71−3に対してFFT処理を実行するように指示する。
【0055】
ドップラ周波数算出部73は、FFT71−2より供給されてくるfd2和信号のスペクトル結果に基づいて、ドップラ周波数fd2を算出すると共に、求められたドップラ周波数fd2から検出物体の検出位置における速度v1を算出し、距離算出部74、角度算出部75、および衝突判定部76に供給する。
【0056】
距離算出部74は、FFT71−1,71−2より供給されてくるfd1和信号およびfd2和信号、並びにドップラ周波数算出部73より供給されてくる速度v1に基づいて、fd1和信号とfd2和信号との位相差の情報から、物体を検出した位置までの距離D1を算出し、衝突判定部76に供給する。
【0057】
角度算出部75は、FFT71−1からのfd1和信号とFFT71−3からのfd1差信号、並びに速度v1に基づいて、fd1和信号とfd1差信号との強度比から物体を検出した位置の角度θ1を算出し、衝突判定部76に供給する。
【0058】
衝突判定部76は、検出位置特定部81、検出位置記憶部82、フレームマッチング判定部83、フレーム設定部84、フレーム回転部85、含有数カウント部86、方向決定部87、ベクトル設定部88、ベクトル記憶部89、ベクトル補正部90、車格推定部91、および速度範囲判定部92を備えており、ドップラ周波数算出部73より供給される検出物体の速度v1、距離算出部74より供給される距離D1、および角度算出部75の角度θ1に基づいて、衝突の有無を判定し、衝突の可能性があることを判定する場合、衝突予備動作制御部14に対して、衝突予備動作を実行させる。
【0059】
検出位置特定部81は、検出物体の検出位置における速度v1、距離D1、および角度θ1に基づいて、検出物体の検出位置を特定し、検出時刻に対応付けて検出位置記憶部82に記憶させる。尚、ここでいう、検出位置は、検出物体である車両の中心位置とは、必ずしも一致するものではなく、送信部11により送信された電波が、例えば、車両の先頭部分のどこかで反射された位置である。
【0060】
フレームマッチング判定部83は、検出位置記憶部82に記憶されている、過去の検出位置の情報の数に基づいて、後述するフレームマッチングが可能であるか否かを判定する。すなわち、検出位置が、所定数以上なければ、フレームマッチングは不可能であるため、フレームマッチングが可能な数だけ検出位置の情報が蓄積されているか否かが判定される。
【0061】
フレーム設定部84は、速度v1に基づいて、フレームマッチングに必要とされるマッチングフレームの大きさを設定する。すなわち、フレームマッチングにおいて設定されるべきマッチングフレームは、被検物である車両の幅に相当する幅であって、かつ、車両の速度に応じた長さを持つ略方形状である。そこで、フレーム設定部84は、一般的な普通車の平均的な車幅(例えば、1.7m程度)をマッチングフレームの幅として設定し、さらに、速度v1に所定時間を乗じた距離をマッチングフレームの長さとして設定する。
【0062】
フレーム回転部85は、フレーム設定部84により設定されたマッチングフレームを今現在の検出位置を基準として所定角度毎に回転させる。含有数カウント部86は、このフレーム回転部85により所定の回転角度毎に回転されるマッチングフレーム内に含まれる検出位置の個数を含有数としてカウントし、回転角度毎に記憶する。
【0063】
方向決定部87は、含有数カウント部86に記憶されている回転角度毎の含有数のうち、最大値となる回転角度を、車両の進行方向であるものとして方向を決定する。また、方向決定部87は、含有数が最大となるマッチングフレームの位置の情報に基づいて、車両の存在位置を決定する。
【0064】
ベクトル決定部88は、方向決定部87により決定された車両の存在位置と進行方向の情報に基づいて、検出された車両の速度ベクトルを決定し、検出された時刻に対応付けてベクトル記憶部89に記憶させる。
【0065】
ベクトル補正部90は、ベクトル記憶部89に記憶されている過去の速度ベクトルを用いて、現在の速度ベクトルを補正する。
【0066】
車格推定部91は、検出位置のばらつきと、ノイズによるばらつきとから車両の幅を推定する。検出位置のばらつきは、車両の幅の違いによって生じるばらつき成分とノイズによって生じるばらつき成分を含んでいる。したがって、車格推定部91は、検出位置のばらつきからノイズによって生じるばらつき成分を除去する事によって、車両の幅を求める。ノイズによるばらつきの大きさは、受信レベルの大きさと相関関係がある。受信レベル出力部61より供給されてくる受信レベル毎に対応して予め検出性能により規定されるノイズのばらつきを定めておく。車格推定部91は、検出位置のばらつきから受信レベルに対応したノイズによるばらつきを除くことによって、車両の幅によって生じるばらつきを求め、車両の車格、すなわち、普通車よりも大きな大型車両であるか、または、普通車程度であるか(それより小さい車両を含む)を推定する。
【0067】
速度範囲判定部92は、車格判定部92aを備えており、車格推定部91により推定された車格を判定させると共に、判定された車格と、速度とに応じて、衝突を警告する警告範囲を判定する。衝突判定部76は、この警告範囲内に車両の存在位置が含まれるか否かに応じて、衝突の可能性を判定する。
【0068】
衝突予備動作指示部93は、衝突判定部76が衝突の可能性があると判定したとき、衝突予備動作制御部14に対して、車格に応じた衝突予備動作を実行させる。
【0069】
次に、衝突予備動作制御部14の構成例について説明する。
【0070】
衝突予備動作制御部14は、大型車予備動作制御部14aおよび普通車予備動作制御部14bを備えており、衝突判定部76より大型車による衝突予備動作の指示がなされた場合、大型車予備動作制御部14aを制御して、大型車の衝突に備えた衝突予備動作を衝突保護機器に実行させるように制御する。また、衝突予備動作制御部14は、衝突判定部76より普通車による衝突予備動作の指示がなされた場合、普通車予備動作制御部14bを制御して、普通車の衝突に備えた衝突予備動作を衝突保護機器に実行させるように制御する。
【0071】
次に、図3のフローチャートを参照して、図1のレーダ装置1による物体の計測処理について説明する。
【0072】
ステップS1において、発振部31は、周波数切替部32からの切替信号に基づいて、f1周波数のCW信号、または、f2周波数のCW信号のいずれかを発振し、増幅部33で増幅させて3分岐部34に出力させる。このとき、周波数切替部32は、同一の切替信号を受信部12にも供給する。
【0073】
ステップS2において、3分岐部34は、増幅部33より供給されてきたf1周波数のCW信号、または、f2周波数のCW信号のいずれかのCW信号を分岐して、受信部12および増幅部35にそれぞれ供給する。そして、増幅部35は、3分岐部34より供給されてきたf1周波数のCW信号、または、f2周波数のCW信号のいずれかのCW信号をアンテナ36より電波を出力することにより、送信信号として送信する。このとき、アンテナ36より送信された送信信号としての電波は、例えば、図2で示されるような強度分布で出力される。尚、図2における範囲Z1からなる形状は、厳密なものである必要はなく、概ね同様の形状となるような強度分布となるように送信されれば良いものである。
【0074】
ステップS2の処理により出力された電波としての送信信号は、図2で示される強度分布により出力されるため、範囲Z1から構成される範囲に物体(車両)が存在する場合、その物体により反射される。すなわち、送信信号は、上述の通り、図4の上部で示されるように、アンテナA(図4では、アンテナ36,51−1,51−2を一体化したものとし簡略化して表現している)より順次周波数f1およびf2のCW信号が切り替えられて出力される。このため、物体である車両C1で反射されると、それぞれの周波数のCW信号に対応してドップラ周波数fd1またはfd2が発生することにより、図4の下部で示されるように、順次周波数f1+fd1、または、f2+fd2のCW信号として反射され、この反射波となる電波が受信されることになる。
【0075】
そこで、ステップS3において、アンテナ51−1,51−2は、反射されてくる電波を受信し、受信した電波に対応する信号を加算部52、および減算部53にそれぞれ供給する。このとき、アンテナ51−2は、受信した電波に対応する信号を受信レベル出力部61にも供給する。
【0076】
ステップS4において、加算部52は、アンテナ51−1,51−2より供給されてきた受信信号を相互に加算してf1和信号またはf2和信号を生成し、LNA54−1に出力し、所定の電圧まで増幅して混合器55−1に出力させる。
【0077】
ステップS5において、減算部53は、アンテナ51−1,51−2より供給されてきた受信信号を相互に減算してf1差信号、またはf2差信号を生成し、LNA54−2に出力し、所定の電圧まで増幅して混合器55−2に出力させる。
【0078】
ステップS6において、混合器55−1は、送信部11の3分岐部34より供給されてくる送信信号と、和信号とを混合し、和信号の混合信号として振分部56に出力する。また、混合器55−2は、送信部11の3分岐部34より供給されてくる送信信号と、差信号とを混合し、差信号の混合信号として振分部57に出力する。
【0079】
尚、このステップS2乃至S6の処理は、フローチャートの表記として異なるタイミングで処理されるものとされているが、実際の処理は、ほぼ同時に処理されており、実質的に並列処理されているものである。
【0080】
ステップS7において、振分部56は、送信部11の周波数切替部32よりステップS10の処理で供給されてくる切替信号が、周波数f1に対応する切替信号のとき、対応する和信号であるfd1和信号をLPF58−1に供給し、切替信号が、周波数f2に対応する切替信号のとき、対応する和信号であるfd2和信号をLPF58−2に供給する。また、振分部57は、送信部11の周波数切替部32よりステップS10の処理で供給されてくる切替信号が、周波数f1に対応する切替信号のときのみ、対応する差信号であるfd1差信号をLPF58−3に供給する。
【0081】
すなわち、図5の左上段で示されるように、周波数切替部32が、切替信号として、周波数f1のときHiを、周波数f2のときLowを出力する場合、図5の左中段で示されるように、振分部56には、切替信号に対応して、混合器55−1より周波数f1に対応する和信号であるfd1和信号、および周波数f2に対応する和信号であるfd2和信号が交互に順次供給されてくる。このとき、振分部56は、切替信号が周波数f1に対応するHiのとき、図5の右上段で示されるように、fd1和信号をLPF58−1に供給し、切替信号が周波数f2に対応するLowのとき、図5の右中段で示されるように、fd2和信号をLPF58−2に供給する。
【0082】
また、図5の左上段で示されるように、周波数切替部32が、切替信号として、周波数f1のときHiを、周波数f2のときLowを出力する場合、図5の左下段で示されるように、振分部57には、切替信号に対応して、混合器55−2より周波数f1に対応する差信号であるfd1差信号、および周波数f2に対応する差信号であるfd2差信号が交互に順次供給されてくる。このとき、振分部57は、切替信号が周波数f1に対応するHiのときのみ、図5の右下段で示されるように、fd1差信号をLPF58−3に供給する。
【0083】
ステップS8において、LPF58−1乃至58−3は、順次振分部56,57より供給されてくるfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号を、それぞれ平滑化して増幅部59−1乃至59−3に供給する。増幅部59−1乃至59−3は、供給されてきたfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号を、それぞれ増幅し、ADC60−1乃至60−3に供給する。ADC60−1乃至60−3は、平滑化され、さらに増幅されたfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号をデジタル信号に変換し、衝突予備動作用信号処理部13に受信信号として供給する。このとき、受信レベル出力部61は、アンテナ51−2より供給されてきた受信された電波に対応する信号のレベルを所定のデジタル信号に変換して衝突予備動作用信号処理部13に出力する。
【0084】
ステップS9において、周波数切替部32は、今現在出力している周波数f1、またはf2のいずれかのCW信号に切り替えてから所定時間が経過したか否かを判定し、所定時間が経過していないと判定された場合、処理は、ステップS2に戻る。一方、ステップS9において、所定時間が経過していると判定された場合、ステップS10において、周波数切替部32は、切替信号を切り替えて、すなわち、それまでに出力していた周波数とは別の周波数に切り替えて、発振部31にCW信号を発振させる。
【0085】
以上の処理を纏めると以下のようになる。ステップS2の処理において、例えば、送信部11のアンテナ36より出力される電波が、以下の式(1)で表されるものとすると、アンテナ51−1,51−2で受信される電波は、以下の式(2),式(3)として表される。
【0086】
【数1】

【0087】
【数2】

【0088】
【数3】

【0089】
ここで、Tiは送信電波を、Rx1Rx2は、それぞれアンテナ51−1,51−2の受信電波を、A,Bは、それぞれ送信電波および受信電波の強度を、dは物体までの距離を、vはレーダ装置1を搭載した車両と送信信号としての電波を反射する物体としての車両C1との相対速度を、fiは送信された電波の周波数(i=1のとき周波数f1、i=2のとき周波数f2)を、cは光速を、Lは、例えば、図6で示されるアンテナ51−1,51−2間の距離を、θは図6で示されるアンテナ51−1,51−2間の中心から物体C1の角度(到来角)を、それぞれ表している。また、式(3)における括弧内の第3項のLsin(θ)は、図6で示されるように、アンテナ51−1,51−2の双方に到達する電波の経路差を示すものである。したがって、車両C1から受信される電波のアンテナ51−1,51−2への経路は平行であるものとすれば、アンテナ51−1,51−2の双方で受信される受信信号には、経路差Lsin(θ)分に相当する位相差が生じていることになる。
【0090】
そこで、ステップS4の処理においては、加算部52が、式(2),式(3)で示されるアンテナ51−1,51−2で受信される電波の信号を加算することにより、以下の式(4)で示される和信号Raddを生成する。式(4)においては、経路差Lsin(θ)により生じる位相差の情報が、振幅として表されている。すなわち、式(4)においては、2Bcos(π・Lsin(θ)・fi/c)の項により、経路差Lsin(θ)により生じる位相差の情報が振幅として表されている。
【0091】
【数4】

【0092】
また、ステップS5の処理においては、減算部53が、式(2),式(3)で示されるアンテナ51−1,51−2の受信電波に対応する信号を減算することにより、以下の式(5)で示される差信号Rsubを生成する。式(5)においては、経路差Lsin(θ)により生じる位相差の情報が、振幅として表される。すなわち、式(5)においては、2Bsin(π・Lsin(θ)・fi/c)の項により、経路差Lsin(θ)により生じる位相差の情報が振幅として表されている。
【0093】
【数5】

【0094】
そして、ステップS6の処理により、混合器55−1、55−2が、式(4),式(5)で表される和信号Raddおよび差信号Rsubを、それぞれ送信信号と混合することにより、以下の式(6),式(7)で示される和信号の混合信号Radd_dおよび差信号の混合信号Rsub_dが求められる。
【0095】
【数6】

【0096】
【数7】

【0097】
この和信号の混合信号Radd_dが、図5における周波数f1またはf2に対応するfd1和信号またはfd2和信号であり、差信号の混合信号Rsub_dが、図5における周波数f1に対応するfd1差信号である。
【0098】
すなわち、以上の処理により、式(6),式(7)で表されるfd1和信号およびfd2和信号、並びにfd1差信号が、周波数f1またはf2の切替信号に同期して、図5で示されるように、それぞれLPF58−1乃至58−3に供給される。そして、ステップS9の処理により、LPF58−1乃至58−3は、離散的に供給されてくるfd1和信号およびfd2和信号、並びにfd1差信号を、それぞれに平滑化することにより連続的な値に変換し、増幅部59−1乃至59−3に供給する。増幅部59−1乃至59−3は、それぞれを増幅して、ADC60−1乃至60−3に供給する。さらに、ADC60−1乃至60−3がデジタル信号に変換して、衝突予備動作用信号処理部13に、3種類の受信信号(平滑化された後にデジタル信号にされたfd1和信号およびfd2和信号、並びにfd1差信号)として供給される。
【0099】
次に、図7のフローチャートを参照して、衝突予備動作用信号処理について説明する。
【0100】
ステップS21において、衝突判定用FFTタイミング制御部72は、衝突判定用FFTタイミング計測用のカウンタ72aのカウント値Xを初期化してカウントを開始する。
【0101】
ステップS22において、FFT71−1乃至71−3は、受信部12より供給されてくるデジタル信号からなるfd1和信号およびfd2和信号、並びにfd1差信号を取得し、順次記憶し、サンプリングする。
【0102】
ステップS23において、衝突判定用FFTタイミング制御部72は、カウンタ72aのカウント値Xが所定の時間T1を超えているか否か、すなわち、所定のサンプリング時間を超えているか否かを判定する。尚、この時間T1は、衝突を判定し、衝突が判定された場合には、衝突に対応するための予備動作を実行させる必要があるため、比較的短い時間とする必要がある。
【0103】
ステップS23において、カウント値Xが所定の時間T1よりも大きくないと判定された場合、処理は、ステップS22に戻る。すなわち、所定の時間T1が経過するまで、ステップS22,S23の処理が繰り返され、サンプリングが継続される。
【0104】
ステップS23において、例えば、カウント値Xが所定の時間T1よりも大きいと判定され、サンプリングを終了して処理を開始するタイミングに到達したと判定された場合、ステップS24において、衝突判定用FFTタイミング制御部72は、FFT71−1乃至71−3に対してFFTの処理を実行させる。この指示を受けて、FFT71−1乃至71−3は、それぞれサンプリングしたデータに基づいて、FFTの処理を行い、FFT71−1が、fd1和信号のスペクトル分布から得られる結果を距離算出部74に供給する。また、FFT71−2が、fd2和信号のスペクトル分布から得られる結果をドップラ周波数算出部73、および距離算出部74に供給する。さらに、FFT71−3が、fd1差信号のスペクトル分布から得られる結果を角度算出部75に供給する。
【0105】
ステップS25において、ドップラ周波数算出部73は、fd2和信号のスペクトルに基づいて、ドップラ周波数fd2を求め、さらに、ドップラ周波数fd2より、物体の検出位置における速度v1を算出し、距離算出部74、角度算出部75、および衝突判定部76に出力する。すなわち、ドップラ周波数fd2と物体の速度vとの関係は、以下の式(8)で示される関係となる。ここで、vは速度を、fi(i=1or2)はCW信号の周波数、cは光速である。したがって、ドップラ周波数算出部73は、fd2和信号のスペクトル分布から求められたドップラ周波数fd2に基づいて、式(8)を変形して速度vを物体の検出位置における速度v1として算出する。
【0106】
【数8】

【0107】
ステップS26において、距離算出部74は、FFT71−1より供給されてくるfd1和信号のスペクトル分布から得られる結果、および、FFT71−2より供給されてくるfd2和信号のスペクトル分布から得られる結果、並びに、速度v1に基づいて、fd1和信号とfd2和信号との位相差から物体の検出位置までの距離D1を算出し、衝突判定部76に供給する。
【0108】
すなわち、周波数f1が数10GHzであるのに対して、周波数f2は、周波数f1と数MHzの周波数差でしかないため、ドップラ周波数fd1,fd2は、いずれも2vf1/c,2vf2/cで表されるが、いずれも同一であるものとして考えることができる。
【0109】
また、上述した式(6),式(7)で表される和信号の混合信号Radd_dと、差信号の混合信号Rsub_dとの位相差Δφは、以下の式(9)で表される。ここで、周波数f1,f2の周波数差をΔfとすれば、物体の検出位置までの距離dは、以下の式(10)で表される。
【0110】
【数9】

【0111】
【数10】

【0112】
そこで、ステップS26において、距離算出部74は、上述した式(10)を用いて、物体の検出位置までの距離dを距離D1として計算する。
【0113】
ステップS27において、角度算出部75は、FFT71−1より供給されてくるfd1和信号のスペクトル分布から得られる結果、およびfd1差信号のスペクトル分布から得られる結果、並びに速度v1に基づいて、fd1和信号のスペクトル分布から得られる結果とfd1差信号のスペクトル分布から得られる結果との比率から物体の検出位置の角度θ1(図6の到来角θに相当する)を算出する。すなわち、上述した式(6),式(7)で表される和信号の混合信号Radd_dと、差信号の混合信号Rsub_dとにおける振幅Aadd,Asubは、それぞれ以下の式(11),式(12)で表される。
【0114】
【数11】

【0115】
【数12】

【0116】
ここで、図6における到来角θは、以下の式(13)で示されるように表される。
【0117】
【数13】

【0118】
角度算出部75は、上述した式(13)を用いて、角度θを角度θ1として算出し、衝突判定部76に供給する。
【0119】
以上の処理により、この時点で衝突判定部76には、検出位置における検出された物体の速度v1、距離D1、および角度θ1が供給されていることになる。
【0120】
そこで、ステップS28において、衝突判定部76は、検出位置特定部81を制御して、速度v1、距離D1、および角度θ1に基づいて、検出された車両の検出位置Ptを特定させ、ステップS29において、時刻情報tと対応付けて検出位置記憶部82に記憶させる。すなわち、例えば、図8で示されるように、本レーダ装置1を搭載した車両C1が図中下方向に走行中に、その背後から車両C2が同一方向に走行しながら、接近しているような場合、検出位置Ptは、例えば、検出位置Pt1乃至Pt11のように順次検出されて、順次検出位置記憶部82に記憶されていく。尚、図8においては、縦軸が車両C1から検出位置までの、車両C1の進行方向の距離を示す軸であり、横軸が水平方向の検出位置を示す軸を表しており、検出位置がそれぞれプロットされた例を示している。すなわち、検出位置Pt1乃至Pt11は、図中の上から時系列に配置されてプロットされており、時刻毎の水平方向の検出位置が示されている。
【0121】
また、この検出位置は、レーダ装置と車両との位置関係と、車両外形によって決定する電波の干渉状態によってばらつきが生じる。このため、例えば、図9で示されるように、正規分布に従ったばらつきとはならず、図8で示されるようなランダムなばらつきとなり、例えば、検出される車両の中心の経路を推定するために、得られた検出位置の情報をローパスフィルタや、カルマンフィルタなどにより処理しても、高い精度で推定することはできない。尚、図9においては、図中下方向にレーダ装置1を搭載した車両C1が下方向に走行中に、その背後から車両C2が同一方向に走行しながら、接近しているような場合、検出位置が図中下部に示されるような正規分布にしたがって分布したときの例を示したものである。しかしながら、現実には、上述したように、検出位置のプロット結果は、図9で示すような正規分布に従ってばらつきとはならない。
【0122】
ステップS30において、衝突判定部76は、フレームマッチング判定部83を制御して、検出位置記憶部82に記憶されている検出位置Ptの個数に応じてフレームマッチングを実行することが可能であるか否かを判定する。すなわち、後述するフレームマッチングにおいては、検出位置Ptの情報が所定数以上なければ正確な判定が困難であるため、具体的には、フレームマッチング判定部83は、検出位置記憶部82に記憶されている検出位置Ptの個数が、フレームマッチングが可能な所定数よりも多く、十分にフレームマッチングが可能であるか否かを判定する。
【0123】
ステップS30において、検出位置記憶部82に記憶されている検出位置の情報が所定数よりも多く記憶されており、フレームマッチングが可能であると判定された場合、ステップS31において、衝突判定部76は、フレーム設定部84を制御して、速度v1に対応するマッチングフレームを設定させる。
【0124】
すなわち、検出位置は、図8で示されるように、水平方向の検出位置を表す軸と、車両C1から検出位置までの、車両C1の進行方向の距離を示す軸とからなる2次元の空間上の分布として表現される。以降、この検出位置の分布を示す空間を検出位置分布空間と称するものとする。上述したように、検出位置分布空間における、この検出位置のばらつきは、正規分布に従ったものではないが、少なくとも検出位置は、車両の一部が存在していることを示している。そこで、この検出位置の分布において、車両の先頭部分が所定時間だけ通過する領域をマッチングフレームとして仮定すると、ノイズによるばらつきが無ければ、検出位置の分布は、マッチングフレーム内に全て含まれるはずである。フレームマッチングは、このような仮定に基づいて、車両が先頭部分が、所定時間において通過する領域をマッチングフレームとして設定し、設定したマッチングフレームの方向を変化させ(必要に応じて位置も変化させて)、検出位置の情報を最も多く含む位置と方向とを割り出すことにより、車両の中心位置の進行経路を推定するものである。
【0125】
そこで、フレーム設定部84は、普通車の平均的な車幅をマッチングフレームの幅に設定し、速度v1に応じてマッチングフレームの長さを設定する。すなわち、速度v1が、低速である場合、例えば、検出位置分布空間における検出位置の分布は、図10の左部で示される検出位置Pt1乃至Pt10となる。一方、速度v1が高速である場合、検出位置分布空間における検出位置の分布は、図10の右部で示されるように、検出位置の間隔が広がるため、分布自体が希薄なものとなる。そこで、フレーム設定部84は、速度v1が低速であれば、図10の左部で示されるように、マッチングフレームF1またはF2で示されるようなマッチングフレームを設定し、速度v1が高速であれば、長さを大きくして、図10の右部で示されるようにマッチングフレームF11またはF12のような大きさに設定する。すなわち、フレーム設定部84は、速度v1の速度に比例して、マッチングフレームの長さを変化させて設定する。
【0126】
ステップS32において、衝突判定部76は、フレーム回転部85を制御して、フレーム設定部84により設定されたマッチングフレームの回転角度φiをカウントするカウンタiを0に設定し、マッチングフレームの回転角度φiを初期化する。すなわち、例えば、フレーム回転部85は、検出位置分布空間において、図10の左部のマッチングフレームF1、または、図10の右部のマッチングフレームF11で示されるようにマッチングフレームを初期化する(マッチングフレームを回転させる初期の角度に設定する)。
【0127】
ステップS33において、衝突判定部76は、含有数カウント部86を制御して、検出位置分布空間における、マッチングフレームとして設定されている領域内にプロットされている検出位置の個数を含有数Ciとしてカウントさせ、記憶させる。
【0128】
ステップS34において、衝突判定部76は、フレーム回転部85を制御して、全ての回転角度φiについて検出位置の個数がカウントされたか否かを判定する。ステップS34において、全ての回転角度φiで検出位置の個数がカウントされていないと判定された場合、ステップS35において、衝突判定部76は、フレーム回転部85を制御して、カウンタiを1インクリメントして、対応する回転角度φiを所定角度だけ回転させて設定し、処理は、ステップS33に戻る。すなわち、衝突判定部76は、フレーム回転部85を制御して、例えば、図10の左部で示されるように、矢印方向に所定角度だけマッチングフレームF1を回転させる、または、図10の右部で示されるように、矢印方向に所定角度だけマッチングフレームF11を回転させる。
【0129】
すなわち、所定の回転角度だけ回転させながら、回転角度毎に検出位置分布空間内でマッチングフレーム内にプロットされている検出位置の個数を示す含有数Ciをカウントする処理を繰り返し、全回転角度について、含有数Ciがカウントされるまで、ステップS33乃至S35の処理が繰り返される。
【0130】
そして、ステップS35において、例えば、図10の左部で示されるマッチングフレームF1が所定の回転角度ずつ回転されて、マッチングフレームF2まで回転される、または、図10の右部で示されるマッチングフレームF11が所定の回転角度ずつ回転されて、マッチングフレームF12まで回転されるなどして、全回転角度について、回転角度毎に検出位置がプロットされた個数を示す含有数Ciがカウントされたと判定された場合、ステップS36において、衝突判定部76は、方向決定部87を制御して、含有数Ciが最大となる回転角度φiを接近する車両の進行方向として決定する。
【0131】
ステップS37において、衝突判定部76は、ベクトル設定部88を制御して、車両の速度ベクトルを設定し、検出時刻に対応付けてベクトル記憶部89に記憶させる。すなわち、マッチングフレームの重心位置が車両の重心位置における進行経路と仮定することにより、例えば、ベクトル設定部88は、含有数Ciが最大となるマッチングフレームの重心位置を始点とし、速度v1に対応する大きさと方向のベクトルを車両の速度ベクトルとして設定し、ベクトル記憶部89に記憶させる。
【0132】
ステップS38において、衝突判定部76は、ベクトル補正部90を制御して、ベクトル記憶部89に記憶されている、過去の時刻における速度ベクトルを利用して、今現在の速度ベクトルを補正させる。すなわち、例えば、図11で示されるように、速度ベクトルVc1乃至Vc5がベクトル記憶部89に記憶されている場合であって、今現在タイミングにおいて、速度ベクトルVc6が検出された場合、ベクトル補正部90は、始点の位置がずれているので、例えば、始点の位置を直近の速度ベクトルVc5の終点の位置に補正し、速度ベクトルVc6’を補正後の速度ベクトルVc6としてベクトル記憶部89に記憶させる。
【0133】
ステップS39において、衝突判定部76は、車格推定部91を制御して、補正された速度ベクトルに対応するマッチングフレーム内に存在する検出位置の情報のばらつきから、受信部12の受信レベルに応じて予め計測されているノイズのばらつきを考慮して、検出された車両の大きさを推定させ、推定された車両の大きさから車格を推定させる。すなわち、実際に検出される検出位置の情報のばらつきは、反射される電波のばらつきに加えて、受信レベルに応じて予め認識可能なノイズによるばらつきが含まれている。そこで、車格推定部91は、マッチングフレーム内にプロットされた検出位置により得られる幅に、受信レベルに応じたノイズにより生じるばらつき幅を考慮して検出された車両の車幅を推定し、推定された車幅に応じて車格を推定する。
【0134】
より具体的には、車格推定部91は、例えば、マッチングフレーム内における最も左側、および、右側にプロットされた検出位置間の幅に対して、受信レベル出力部61より供給されてくる受信レベルに応じて予め発生することが推定されるノイズによるばらつき幅を加算した結果を、検出された車両の車幅であるものと仮定し、その車幅に対応して検出した車両の車格が普通車両であるか、または、普通車両よりも大きな大型車両であるかを推定する。
【0135】
ステップS40において、衝突判定部76は、速度範囲判定部92を制御して、車格推定部91により推定された車格が大型車両であったか否かを判定させる。このとき、速度範囲判定部92は、車格判定部92aを制御し、車格推定部91からの推定結果に基づいて、車格が大型車両であったか否かを判定する。ステップS40において、例えば、推定された車格が大型車両であると判定された場合、処理は、ステップS41に進む。
【0136】
ステップS41において、速度範囲判定部92は、大型車両の衝突の可能性を考慮する範囲として衝突範囲A2(図2)を設定する。そして、衝突判定部76は、検出された大型車両の速度v1が所定の所定速度V2(<V1)より大きく、かつ、衝突範囲A2内であるか否かを判定する。ステップS41において、検出された大型車両の速度v1が所定の所定速度V2(<V1)より大きく、かつ、衝突範囲A2内である場合、ステップS42において、大型車両による衝突の可能性があるとみなし、衝突判定部76は、衝突予備動作指示部93を制御して、衝突予備動作制御部14に対して大型車両に対応した衝突予備動作を指示する。
【0137】
これに応じて、ステップS43において、衝突予備動作制御部14は、大型車予備動作制御部14aを制御して、大型車両の衝突に備えて、例えば、警告音声を発することで衝突の発生を警告すると共に、普通車両の衝突時よりも強い拘束力でシートベルトを引き上げて、乗員を座席に固定させ、いわゆる鞭打ち症などの発生を抑止したり、大型車両用の衝突前の適切なタイミングでエアバッグを動作させて衝突時の衝撃を吸収したり、さらには、可動式ヘッドレストを頭部に普通車両のときよりも強く押し当てるなどして、乗員の衝突時の頭部への反動による衝撃を抑制させるといった大型車両の衝突に対応した衝突予備動作を実施する。
【0138】
一方、ステップS40において、例えば、推定された車格が大型車両ではなく、普通車両であると判定された場合、処理は、ステップS44に進む。
【0139】
ステップS44において、速度範囲判定部92は、普通車両の衝突の可能性を考慮する範囲として衝突範囲A1(図2)を設定する。そして、衝突判定部76は、検出された大型車両の速度v1が所定の所定速度V1(>V2)より大きく、かつ、衝突範囲A1内であるか否かを判定する。ステップS44において、検出された大型車両の速度v1が所定の所定速度V1より大きく、かつ、衝突範囲A1内である場合、ステップS45において、普通車両による衝突の可能性があるとみなし、衝突判定部76は、衝突予備動作指示部93を制御して、衝突予備動作制御部14に対して普通車両に対応した衝突予備動作を指示する。
【0140】
これに応じて、ステップS46において、衝突予備動作制御部14は、普通車予備動作制御部14bを制御して、普通車両の衝突に備えて、例えば、警告音声を発することで衝突の発生を警告すると共に、普通車両の衝突時の適切な拘束力でシートベルトを引き上げて、乗員を座席に固定させ、いわゆる鞭打ち症などの発生を抑止したり、普通車両用の衝突前の適切なタイミングでエアバッグを動作させて衝突時の衝撃を吸収したり、さらには、可動式ヘッドレストを頭部に普通車両用に適切に押し当てるなどして、乗員の衝突時の頭部への反動による衝撃を抑制させるといった普通車両の衝突に対応した衝突予備動作を実施する。
【0141】
すなわち、検出された車両が普通車両の場合、例えば、図2で示されるように、自車である車両C1からみて比較的近い点線で示される衝突範囲A1を、衝突の可能性を考慮する範囲として設定して、大型車両の衝突が検出された場合、自車である車両C1からみて遠い範囲までも含む一点鎖線で示される衝突範囲A2を、衝突の可能性を考慮する範囲として設定することにより、衝突時の被害が大きい大型車両に対しては、遠い範囲から衝突の可能性を判定し、より早期のタイミングで衝突に対応した予備動作を実行させることにより、衝突時の安全性を向上させることが可能となる。
【0142】
また、速度v1による衝突の可能性を判定するに当たり、大型車両の場合、衝突の可能性を判定する速度v1が、普通車の衝突の可能性を判定する所定速度V1よりも低速の所定速度V2に設定することにより、低速でも衝突による被害が大きいことが予想される大型車両の衝突に対する予備動作をより確実に実行させることにより、衝突時の安全性を向上させることが可能となる。
【0143】
尚、ステップS44において、検出された大型車両の速度v1が所定の所定速度V1より大きくないか、若しくは衝突範囲A1内ではない場合、ステップS41において、検出された大型車両の速度v1が所定の所定速度V2(<V1)より大きくないか、若しくは、衝突範囲A2内ではない場合、または、ステップS30において、フレームマッチングが不可能であると判定された場合、処理は、ステップS21に戻り、それ以降の処理が繰り返される。
【0144】
また、以上においては、検出された物体の速度の算出にあたり、ドップラ周波数fd2を用いる例について説明してきたが、周波数f1,f2との周波数差は数MHzであるため、ドップラ周波数fd1を用いて求めるようにしても略同一の速度を求めることができる。また、同様に、以上においては、距離の計算に当たり、fd1和信号およびfd2和信号の位相差を用いる例について説明してきたが、fd1差信号およびfd2差信号の位相差を用いるようにしても良く、例えば、いずれも計測できる構成とし、fd1和信号およびfd2和信号の信号品質と、fd1差信号およびfd2差信号の信号品質とを比較した上で、信号品質の高いものを用いて距離を計算するようにし、精度を向上させるようにしても良い。さらに、同様に、以上においては、角度の計算に当たり、fd1和信号とfd1差信号との比率により求める例について説明してきたが、fd2和信号とfd2差信号との比率により求めるようにしてもよく、さらには、fd1和信号およびfd1差信号の信号品質と、fd2和信号およびfd2差信号の信号品質とを比較し、信号品質の高いものを用いて角度を計算するようにし、精度を向上させるようにしても良い。
【0145】
以上の如く、本発明によれば、接近する物体の位置を検出するに当たり、正規分布などの処理が不可能な分布となる検出位置の情報を用いても、検出位置のプロット結果を用いたフレームマッチングにより、正確に接近する物体の位置、進行方向、および速度を特定することが可能となるので、正確に物体の存在する存在位置を特定することが可能となる。
【0146】
また、接近する物体の存在位置、進行方向、および速度を正確に特定することが可能となるため、例えば、プリクラッシュ安全装置などにおいて、衝突予備動作を的確なタイミングで実施させることが可能となる。
【0147】
さらに、検出位置のばらつきに対して、予め認識可能な受信レベルに応じたノイズによるばらつき幅を考慮して、接近する車両(物体)の大きさを推定することができるので、結果として、プリクラッシュ安全装置などにおいて、接近する車両の車格に対応した衝突予備動作を実施することが可能となり、衝突時の安全性をさらに向上させることが可能となる。
【0148】
ところで、上述した一連の監視処理は、ハードウェアにより実行させることもできるが、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、記録媒体からインストールされる。
【0149】
図12は、汎用のパーソナルコンピュータの構成例を示している。このパーソナルコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)1001を内蔵している。CPU1001にはバス1004を介して、入出力インタフェース1005が接続されている。バス1004には、ROM(Read Only Memory)1002およびRAM(Random Access Memory)1003が接続されている。
【0150】
入出力インタフェース1005には、ユーザが操作コマンドを入力するキーボード、マウスなどの入力デバイスよりなる入力部1006、処理操作画面や処理結果の画像を表示デバイスに出力する出力部1007、プログラムや各種データを格納するハードディスクドライブなどよりなる記憶部1008、LAN(Local Area Network)アダプタなどよりなり、インターネットに代表されるネットワークを介した通信処理を実行する通信部1009が接続されている。また、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini Disc)を含む)、もしくは半導体メモリなどのリムーバブルメディア1011に対してデータを読み書きするドライブ1010が接続されている。
【0151】
CPU1001は、ROM1002に記憶されているプログラム、または磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、もしくは半導体メモリ等のリムーバブルメディア1011から読み出されて記憶部1008にインストールされ、記憶部1008からRAM1003にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM1003にはまた、CPU1001が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0152】
尚、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理は、もちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】本発明を適用したレーダ装置の一実施の形態の構成を示す図である。
【図2】図1の送信部により照射される電波の強度分布である。
【図3】計測処理を説明するフローチャートである。
【図4】計測処理を説明する図である。
【図5】振分部の動作を説明する図である。
【図6】受信部におけるアンテナの経路差を説明する図である。
【図7】衝突予備動作用信号処理を説明するフローチャートである。
【図8】衝突予備動作用信号処理を説明する図である。
【図9】衝突予備動作用信号処理を説明する図である。
【図10】衝突予備動作用信号処理を説明する図である。
【図11】衝突予備動作用信号処理を説明する図である。
【図12】汎用のパーソナルコンピュータの構成例を説明する図である。
【符号の説明】
【0154】
1 レーダ装置
11 送信部
12 受信部
13 衝突予備動作用信号処理部
14 衝突予備動作制御部
36 アンテナ
51−1,51−2 アンテナ
71−1乃至71−3 FFT
72 衝突判定用FFTタイミング制御部
73 ドップラ周波数算出部
74 距離算出部
75 角度算出部
76 衝突判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を検出する検出装置において、
所定の方向に電波を照射することにより送信信号を送信する送信手段と、
前記送信手段により送信された送信信号としての電波のうち、反射されてくる電波を受信し、受信した前記電波より受信信号を生成する受信手段と、
前記受信手段により生成された受信信号を、所定時間の間でサンプリングすることにより、物体の速度、距離、および角度を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された物体の距離および角度に基づいて、前記物体の相対的な検出位置を特定する位置特定手段と、
前記位置特定手段により特定された検出位置を2次元の平面上にプロットするプロット手段と、
フレームを設定するフレーム設定手段と、
前記フレームを所定の回転角度で回転させながら、前記回転角度毎に前記フレーム内に含まれるプロットされた複数の検出位置を用いて所定の判定手法に基づいて、前記物体の存在する存在位置、および進行方向の少なくとも、そのいずれかを決定する方向決定手段と
を含む検出装置。
【請求項2】
前記方向決定手段により決定された存在位置、および進行方向に基づいて、前記物体の速度ベクトルを設定する速度ベクトル設定手段と、
前記速度ベクトル設定手段により設定された速度ベクトルを、設定された時刻に対応付けて記憶する速度ベクトル記憶手段と、
前記速度ベクトル記憶手段により過去の時刻に記憶された速度ベクトルに基づいて、現在時刻において設定された速度ベクトルを補正する補正手段とをさらに含む
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記物体は、車両である
請求項1に記載の検出装置。
【請求項4】
前記車両の速度が、所定速度より高速で、かつ、前記存在位置が、所定範囲であるとき、または、前記速度ベクトルが所定値より大きく、かつ方向が所定範囲であるとき、衝突予備動作を実行する衝突予備動作実行手段を含む
請求項2および3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記平面上にプロットされた前記検出位置、並びに、前記車両の存在位置、および進行方向に基づいて、前記プロットされた検出位置におけるばらつきと、前記受信手段により受信される電波の強度に対応したノイズにより推定されるばらつきとから、検出される車両の大きさを推定する推定手段をさらに含む
請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記衝突予備動作実行手段は、前記推定手段により推定される車両の大きさが所定の大きさよりも大きい場合、前記所定の速度を小さくし、前記所定の範囲を広く設定し、前記物体の速度が、前記所定速度より高速で、かつ、前記存在位置が、前記所定範囲であるとき、衝突予備動作を実行する
請求項4に記載の検出装置。
【請求項7】
物体を検出する検出装置の検出方法において、
所定の方向に電波を照射することにより送信信号を送信する送信ステップと、
前記送信ステップの処理により送信された送信信号としての電波のうち、反射されてくる電波を受信し、受信した前記電波より受信信号を生成する受信ステップと、
前記受信手段により生成された受信信号を、所定時間の間でサンプリングすることにより、物体の速度、距離、および角度を検出する検出ステップと、
前記検出手段により検出された物体の距離および角度に基づいて、前記物体の相対的な検出位置を特定する位置特定ステップと、
前記位置特定ステップの処理により特定された検出位置を2次元の平面上にプロットするプロットステップと、
フレームを設定するフレーム設定ステップと、
前記フレームを所定の回転角度で回転させながら、前記回転角度毎に前記フレーム内に含まれるプロットされた複数の検出位置を用いて所定の判定手法に基づいて、前記物体の存在する存在位置、および進行方向の少なくとも、そのいずれかを決定する方向決定ステップと
を含む検出方法。
【請求項8】
物体を検出する検出装置を制御するコンピュータに、
所定の方向に電波を照射することにより送信信号を送信する送信ステップと、
前記送信ステップの処理により送信された送信信号としての電波のうち、反射されてくる電波を受信し、受信した前記電波より受信信号を生成する受信ステップと、
前記受信手段により生成された受信信号を、所定時間の間でサンプリングすることにより、物体の速度、距離、および角度を検出する検出ステップと、
前記検出手段により検出された物体の距離および角度に基づいて、前記物体の相対的な検出位置を特定する位置特定ステップと、
前記位置特定ステップの処理により特定された検出位置を2次元の平面上にプロットするプロットステップと、
フレームを設定するフレーム設定ステップと、
前記フレームを所定の回転角度で回転させながら、前記回転角度毎に前記フレーム内に含まれるプロットされた複数の検出位置を用いて所定の判定手法に基づいて、前記物体の存在する存在位置、および進行方向の少なくとも、そのいずれかを決定する方向決定ステップと
を含む処理を実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−112829(P2010−112829A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285557(P2008−285557)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】