説明

樹木寄生性有害生物防除組成物

【課題】 樹木に寄生する有害生物を効率的に防除する手段を提供する
【解決手段】 O−エチル−S−プロピル[(2E)−2−(シアノイミノ)−3−エチル−1−イミダゾリジニル]ホスホノチオエートを有効成分として含有する樹木寄生性有害生物防除組成物、O−エチル−S−プロピル[(2E)−2−(シアノイミノ)−3−エチル−1−イミダゾリジニル]ホスホノチオエートを有効成分として使用する樹木寄生性有害生物の防除方法ならびにO−エチル−S−プロピル[(2E)−2−(シアノイミノ)−3−エチル−1−イミダゾリジニル]ホスホノチオエートを有効成分として使用する樹木の保護方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、O−エチル−S−プロピル[(2E)−2−(シアノイミノ)−3−エチル−1−イミダゾリジニル]ホスホノチオエート(一般名:イミシアホス(imicyafos))を有効成分とする樹木寄生性有害生物防除組成物、当該有害生物の防除方法並びに樹木の保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、イミシアホスを含む有機リン系化合物が殺虫、殺ダニ、殺線虫剤の有効成分として有用であることが記載されているが、マツノザイセンチュウの防除に関する具体的記載はない。特許文献2には、イミシアホスの(−)光学異性体及びその有害動物防除剤としての有用性が記載されており、植物寄生センチュウとしてマツノザイセンチュウが例示されているものの、その防除に関する具体的記載は見当たらない。
【0003】
【特許文献1】米国特許第5405961号
【特許文献2】特開2003−81987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹木に有害生物が寄生すると、食害や生成される毒素などの影響により樹木の成育が阻害されたり、樹木が枯れたりする。この問題に対し、薬剤を樹幹に注入処理したり、寄生が認められた樹木の一部又は全部を焼却処分してそれ以上の被害を防止したりといった対策が講じられているが、依然として有効な対策が見出せない状態にある。また、樹木に対して薬害が出ないような防除方法が希求されていた。
本発明の目的は、樹木に寄生する有害生物を、樹木に対する薬害を生じることなく、また、低薬量で効率的に、また、即効的に防除する手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題の解決のために鋭意検討した結果、特定の有効成分を用いることにより所期の目的を達成できるとの知見を得、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち本発明は、イミシアホスを有効成分として含有する樹木寄生性有害生物防除組成物(以下単に組成物と略す)、イミシアホスを有効成分として使用する樹木寄生性有害生物の防除方法(以下単に防除方法と略す)並びにイミシアホスを有効成分として使用する樹木の保護方法(以下単に保護方法と略す)に関する。
【0007】
イミシアホスには光学異性体が存在するが、本発明においては各異性体、異性体混合物の双方の使用を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
保護の対象となる樹木には特に限定はないが、例えば松、杉、檜、ブナ、樫のような林木;柑橘、リンゴ、ナシ、イチジク、カキ、モモ、ブドウ、クリ、桜桃、プラム、プルーン、ビワ、グミ、梅のような果樹;サツキ、ツツジ、サザンカ、ツバキ、ムクゲ、サクラ、モクセイ、カエデのような緑化木などが挙げられるが、なかでも林木に寄生する有害生物の防除に有効であり、特に松に寄生する有害生物の防除に有効である。尚、保護の対象となる松は、山林のものだけでなく、公園、庭園、松林、ゴルフ場など多岐にわたる場所におけるものを含む。
【0009】
防除の対象となる有害生物としては、例えばマツノザイセンチュウのような樹木の成育に悪影響を及ぼす線虫類;マツノマダラカミキリのようなカミキリムシ類、マツノキクイムシのようなキクイムシ類、マツノシラホシゾウムシのようなゾウムシ類などの樹木の中に入り込んで食害する穿孔性害虫;マツオオアブラムシ、エゾマツカサアブラムシのようなアブラムシ類、カイガラムシ類、ロウムシ類などの吸汁性害虫;スギノハダニのようなハダニ類;マツバノタマバエ、スギタマバエのようなハエ類;ハマキガ類、シャクトリムシ類、ミノガ類、ケムシ類、シンクイムシ類、ハバチ類のような食害性害虫などが挙げられるが、なかでも線虫類、穿孔性害虫の防除に有効であり、特にマツノザイセンチュウ、マツノマダラカミキリの防除に有効である。
【0010】
本発明の組成物は、線虫類と穿孔性害虫の双方を防除することができるので、極めて効率的に樹木を有害生物の被害から守ることができる。例えば、松の木に松枯れが発生する問題においては、マツノザイセンチュウが松に寄生し、松の生理異常を引き起こすことがその主たる要因であるので、その防除を行えば松枯れは防げるはずであるが、マツノザイセンチュウはマツノマダラカミキリと共生しており、マツノマダラカミキリがマツノザイセンチュウを媒介することによりその寄生範囲が広範囲に及ぶことから、松枯れの主たる要因であるマツノザイセンチュウの防除のみでは根本的な解決には至らない。したがって、松枯れのような樹木の成育阻害の主たる要因を排除(例えばマツノザイセンチュウを防除)でき、且つ、二次的な要因を排除(例えば媒介虫であるマツノマダラカミキリも防除)することが可能な本発明の組成物は、少ない処理量で、広範囲にわたって効果を奏するので、極めて有用かつ実用的である。
【0011】
本発明の組成物の処理方法は、特に限定されるものではなく、例えば樹体注入処理、樹冠下土壌処理、茎葉処理、塗布処理などが挙げられる。前記樹体注入処理としては、例えば樹木の幹や根系に処理する方法などが挙げられ、樹冠下土壌処理としては、例えば各種製剤を水等の希釈剤で適宜希釈した散布液や液状製剤自身を土壌に処理する方法、固体状製剤自身を土壌表面又は土壌を数cm程掘って処理する方法などが挙げられる。前記した処理方法の中では、樹冠下土壌処理が望ましく、その中でも各種製剤を水等の希釈剤で適宜希釈した散布液や液状製剤自身を土壌に灌注処理する樹冠下土壌灌注処理が更に望ましいが、処理に際しては散布機器で処理しても、手作業により処理してもよい。樹冠下土壌灌注処理は、種々の利点を有する処理方法であり、当該利点としては例えば、1)特別な技能を必要とせず、樹木の周りに薬液を土壌灌注するだけといった簡便な処理方法であること、2)薬剤の処理時期が制限されないこと、3)樹木1本あたりに要する処理作業の時間が、当該分野で商業的に実施されることが多い樹幹注入処理に比し短いこと、4)樹幹注入処理で必要となる処理後のボトルの回収が不要であること、5)樹幹注入処理で必須となる樹木への穴あけが不要であることから、外観を損ねたり、薬剤注入孔からの菌や風雪の進入による樹木の腐敗や抵抗力低下を招くことがないこと等が挙げられる。
【0012】
本発明の組成物は、有効成分であるイミシアホスが樹木内を浸透移行するので、局所的な処理により所望の効果を奏することができるが、前述したような樹冠下土壌処理、より望ましくは樹冠下土壌灌注処理により有効成分であるイミシアホスが根から樹幹へ浸透移行し所望の効果を奏するので、特に有用である。
【0013】
例えば、マツノザイセンチュウや、マツノマダラカミキリなどのように、松の樹木内部、より詳しくは、樹幹内部、枝内部及び/又は根部に寄生している有害生物を、樹冠下土壌処理のような本発明組成物の局所処理により防除することができる。
【0014】
また本発明の組成物は、予防的効果と治療的効果の双方を奏することができる。すなわち、樹木の被害が発生する前や寄生性有害生物の存在が確認される前の任意の時期に処理して所望の効果を得る方法と、樹木の被害が発生した後や寄生性有害生物の存在が確認された後の任意の時期に処理して所望の効果を得る方法の双方をとることが可能である。
【0015】
本発明の組成物の処理は、保護の対象となる樹木の種類や大きさ、防除の対象となる有害生物の種類や発生状況、更には気象や土壌の条件、処理時期、製剤形態などにより異なり一概に規定できないが、通常有効成分であるイミシアホスの樹木中の濃度が0.1〜100ppm、望ましくは0.5〜50ppm、さらに望ましくは0.5〜10ppmとなるように行い、その処理量は、例えば胸高径(地上から約1m付近の幹の直径)10cm程度の樹木であれば、1樹木あたりイミシアホスが5〜2000g、望ましくは20〜1000gの範囲である。但し、最適な処理濃度又は処理量は、上記した各種条件等を勘案し、適宜予備試験を行うなどして個別に決定することができる。例えば、本発明の組成物は、樹木に対し高い安全性を有することから、保護の対象となる樹木の種類や大きさ、防除の対象となる有害生物の種類や発生状況、気象や土壌の条件、処理時期、製剤形態などの各種条件に応じて、処理量を多めに設定することが可能であり、具体例としては、前記した処理量の上限付近で処理することが可能である。この場合、薬剤の効果を長期間維持できるメリットがある。一方、本発明の組成物は、低薬量で効率的に樹木に寄生する有害生物を防除することができることから、前記した各種条件に応じて、処理量を少なめに設定することも可能であり、具体例としては、前記した処理量の下限付近、例えば胸高径10cm程度の樹木であれば、1樹木あたりイミシアホスを5〜400g、望ましくは20〜100gの範囲で処理することが可能である。
【0016】
本発明の防除方法は、有効成分であるイミシアホスを前記した処理濃度又は処理量となるよう保護の対象となる樹木又はその周辺に処理し、有害生物を防除する方法であり、その処理方法は前記した通り種々の方法を採用することができ、また、その処理時期も任意の時期を選択することができる。本発明の保護方法は、このようにして有害生物を防除し、対象となる樹木を保護する方法である。
【0017】
本発明においては、イミシアホスとともに他の樹木寄生性有害生物防除成分を混用又は併用することができ、更には所望により他の農薬(殺虫剤、殺線虫剤、殺ダニ剤、殺土壌害虫剤、殺菌剤、抗ウィルス剤、誘引剤、抗生物質、植物ホルモン、除草剤、植物成長調整剤等)、肥料、土壌改良資材、薬害軽減剤、土壌浸透剤などを混用又は併用することができる。尚、イミシアホスと上記他の各種成分は、各々別々に製剤したものを処理時に混合して処理しても、両者を一緒に製剤したものを処理してもよい。
【0018】
本発明において、イミシアホスは当該分野の各種製剤方法に従って各種製剤型に製剤されるが、樹冠下土壌処理、より望ましくは樹冠下土壌灌注処理に適した製剤型に製剤することが有用である。このような製剤型としては、例えば粉剤、粒剤、粉粒剤、錠剤、水和剤、顆粒水和剤、水溶剤、顆粒水溶剤、懸濁剤、乳濁剤、マイクロエマルジョン剤、サスポエマルジョン剤、乳剤、液剤、ゲル剤、塗布剤、カプセル剤などが挙げられるが、なかでも粒剤や液剤が望ましく、液剤がより望ましい。
【0019】
製剤調製の際に用いることができる各種補助剤としては、クレー、珪藻土、炭酸カルシウム、タルク、酸性白土、ベントナイト、パイロフィライト、アタパルジャイト、カオリナイト、パーライト、バーミキュライト、ゼオライト、珪砂、珪石、軽石、ホワイトカーボン、石膏、芒硝、炭酸ナトリウム、重曹、硫安、塩化ナトリウム、尿素、ショ糖、ブドウ糖、小麦粉、澱粉などの固型担体;キシレン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、シクロヘキサン、ソルベントナフサ、ケロシン、クロロベンゼン、ジクロロメタン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、水などの溶剤;脂肪酸塩、安息香酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリカルボン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキル硫酸塩、アルキルアリール硫酸塩、アルキルジグリコールエーテル硫酸塩、アルコール硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ポリスチレンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、アルキルアリールリン酸塩、スチリルアリールリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩のような陰イオン系の界面活性剤;ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ポリグリセライド、脂肪酸アルコールポリグリコールエーテル、アセチレングリコール、アセチレンアルコール、オキシアルキレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンスチリルアリールエーテル、ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシプロピレン脂肪酸エステルのような非イオン系の界面活性剤;オリーブ油、カポック油、ひまし油、シュロ油、椿油、ヤシ油、ごま油、トウモロコシ油、米ぬか油、落花生油、綿実油、大豆油、菜種油、亜麻仁油、きり油、液状パラフィンなどの植物油や鉱物油などが挙げられる。
【0020】
また、展着剤、増粘剤、沈降防止剤、凍結防止剤、分散安定剤、防黴剤、薬害軽減剤、固化防止剤、流動性改良剤、消泡剤、分解防止剤など通常使用される各種補助剤も使用することができる。補助剤は本発明の目的から逸脱しないかぎり、当該分野で知られたものの中から更に選んで用いることができる。イミシアホスと各種補助剤の配合割合は、一般に0.01 : 99.99 〜95:5、望ましくは0.1:99.9 〜90:10である。これら製剤の実際の使用に際しては、そのまま使用するか、又は水等の希釈剤で所定濃度に希釈し、必要に応じて各種展着剤を添加して使用することができる。
【0021】
本発明において、特に望ましい態様を以下に記載する。
〔1〕樹木寄生性有害生物が、松に寄生する線虫類である場合の、前記組成物、防除方法又は保護方法。
〔2〕樹木寄生性有害生物が、松に寄生する穿孔性害虫である場合の、前記組成物、防除方法又は保護方法。
〔3〕樹木寄生性有害生物が、松に寄生する線虫類と穿孔性害虫の双方である場合の、前記組成物、防除方法又は保護方法。
〔4〕樹冠下土壌処理により、松に寄生する線虫類を防除する前記防除方法又は保護方法。
〔5〕樹冠下土壌処理により、松に寄生する穿孔性害虫を防除する前記防除方法又は保護方法。
〔6〕樹冠下土壌処理により、松に寄生する線虫類と穿孔性害虫の双方を防除する前記防除方法又は保護方法。
〔7〕処理方法が樹冠下土壌灌注処理である前記〔4〕、〔5〕又は〔6〕の防除方法又は保護方法。
〔8〕線虫類がマツノザイセンチュウである前記〔1〕、〔3〕、〔4〕又は〔6〕の組成物、防除方法又は保護方法。
〔9〕穿孔性害虫がマツノマダラカミキリである前記〔2〕、〔3〕、〔5〕又は〔6〕の組成物、防除方法又は保護方法。
〔10〕イミシアホスを使用し、松に寄生する線虫類及び/又は穿孔性害虫を防除する。
〔11〕イミシアホスを使用し、松に寄生するマツノザイセンチュウ及び/又はマツノマダラカミキリを防除する。
〔12〕イミシアホスを樹冠下土壌に処理し、松に寄生する線虫類及び/又は穿孔性害虫を防除し、又は松を保護する。
〔13〕イミシアホスを樹冠下土壌に処理し、松の樹木内部に寄生する線虫類及び/又は穿孔性害虫を防除する。
〔14〕イミシアホスを樹冠下土壌に処理し、松に寄生するマツノザイセンチュウ及び/又はマツノマダラカミキリを防除する。
〔15〕イミシアホスを樹冠下土壌に処理し、松の樹木内部に寄生するマツノザイセンチュウ及び/又はマツノマダラカミキリを防除する。
【実施例】
【0022】
以下に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない。まず、製剤調製例を記載する。
【0023】
製剤例1
イミシアホス10.5g、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルとドデシルベンゼンスルホネートの混合物(商品名:ソルポール355;東邦化学工業株式会社製)4g及び高沸点有機溶剤(商品名:DBE;デュポン株式会社製)85.5gを混合し、液剤を得る。
【0024】
製剤例2
イミシアホス31.6g、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル(商品名:ノイゲンEA−137;第一工業製薬株式会社製)8g及びジプロピレングリコールメチルエーテル(商品名:ダワノールDPM;ダウケミカル日本株式会社製)60.4gを混合し、液剤を得る。
【0025】
製剤例3
イミシアホス52.6g、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルとドデシルベンゼンスルホネートの混合物(商品名:ソルポール355H;東邦化学工業株式会社製)20g及びトリプロピレングリコールメチルエーテル(商品名:ダワノールTPM;ダウケミカル日本株式会社製)27.4gを混合し、液剤を得る。
【0026】
製剤例4
イミシアホス2.1gと20〜50メッシュの珪石粒(東海工業株式会社製)197.9gを混合し、粒剤を得る。
【0027】
製剤例5
イミシアホスに対し20重量%のポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル(商品名:ノイゲンEA−177;第一工業製薬株式会社製)を混合したもの6.6gを、鉱物粒(商品名:クニミネ細粒;クニミネ工業株式会社製)93.4gに吸油させ、粒剤を得る。
【0028】
製剤例6
イミシアホス10.5gを16〜50メッシュの粒状石膏(商品名:アグソーブCN;OIL DRI社製)89.5gに吸油させ、粒剤を得る。
【0029】
製剤例7
イミシアホス21.1g、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル(商品名:ソルポールT15;東邦化学工業株式会社製)6g、ポリオキシエチレンキャスターオイル(商品名:ソルポールCA50;東邦化学工業株式会社製)4g及び芳香族系溶剤(商品名:ソルベッソ150;エクソンジャパン株式会社製)68.9gを混合し、乳剤を得る。
【0030】
次に、試験例を記載する。
試験例1
96Wellマイクロプレートに、マツノザイセンチュウを培養した懸濁液100μl(約50頭のマツノザイセンチュウを含む)及び所定濃度になるように調整したイミシアホスを含む水溶液100μlを加えた。このものを25℃の恒温室で72時間管理し、経時的に不活動虫(全く動かない又は極僅かに動くマツノザイセンチュウ)を計数し、不活動虫率を下記式により求めて第1表の結果を得た。
不活動虫率(%)=[不活動虫数/イミシアホス処理前の全マツノザイセンチュウ数]×100
【0031】
【表1】

【0032】
試験例2
直径8cmプラスチック製シャーレにPSA培地を用いボトリチス菌を培養した。ボトリチス培養シャーレに薬液を含む培地全体の濃度が所定濃度になるように調整した薬液を培地上に満遍なく広がるように滴下し、全体に染渡ったことを確認後、マツノザイセンチュウを培養した水懸濁液1ml(約100頭のマツノザイセンチュウを含む)を接種した。25℃の恒温室にて12日間培養後、培地中に存在するセンチュウをベールマン法により検出を行い、計数し、無処理区に対するマツノザイセンチュウの増殖阻害率を求めた。結果を第2表に示した。
【0033】
【表2】

【0034】
試験例3
温室内で12号プラスチック製ポットに植えつけたアカマツ幼木(直径1.0cm木)の株元の土壌を円周状に5cm掘り、そこへ1株当たりイミシアホスを200mg含有する水溶液100mlを処理して土壌を埋め戻した。処理25日後に、マツノザイセンチュウ懸濁液を、傷を付けた松の枝部分に3,000頭/株となるように接種し、温室にて育苗管理した。マツノザイセンチュウ接種121日後に幼木の生死を外観により評価した後、幹より材質2gを採取しベールマン法によりマツノザイセンチュウの有無を調査した。結果を第3表に示した。
【0035】
【表3】

【0036】
試験例4
温室内で12号プラスチック製ポットに植えつけたアカマツ幼木(直径1.0cm木)の株元の土壌を円周状に5cm掘り、そこへ1株当たりイミシアホスを400mg或いは800mg含有する水溶液100mlを処理して土壌を埋め戻す。処理30日後、アカマツ幼木に問題となる薬害は観察されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
O−エチル−S−プロピル[(2E)−2−(シアノイミノ)−3−エチル−1−イミダゾリジニル]ホスホノチオエートを有効成分として含有する樹木寄生性有害生物防除組成物。
【請求項2】
O−エチル−S−プロピル[(2E)−2−(シアノイミノ)−3−エチル−1−イミダゾリジニル]ホスホノチオエートを有効成分として使用する樹木寄生性有害生物の防除方法。
【請求項3】
松に寄生する線虫類及び/又は穿孔性害虫を防除する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
松に寄生するマツノザイセンチュウ及び/又はマツノマダラカミキリを防除する請求項2に記載の方法。
【請求項5】
有効成分を樹冠下土壌に処理し、松に寄生する線虫類及び/又は穿孔性害虫を防除する請求項2に記載の方法。
【請求項6】
松の樹木内部に寄生する線虫類及び/又は穿孔性害虫を防除する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
有効成分を樹冠下土壌に処理し、松に寄生するマツノザイセンチュウ及び/又はマツノマダラカミキリを防除する請求項2に記載の方法。
【請求項8】
松の樹木内部に寄生するマツノザイセンチュウ及び/又はマツノマダラカミキリを防除する請求項7に記載の方法。
【請求項9】
O−エチル−S−プロピル[(2E)−2−(シアノイミノ)−3−エチル−1−イミダゾリジニル]ホスホノチオエートを有効成分として使用する樹木の保護方法。
【請求項10】
有効成分を樹冠下土壌に処理し、松を保護する請求項9に記載の方法。

【公開番号】特開2008−179626(P2008−179626A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334085(P2007−334085)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000000354)石原産業株式会社 (289)
【Fターム(参考)】