説明

樹脂モールドモータの製造方法

【目的】 樹脂モールドモータに関し、樹脂成形時にステータ巻線の損傷を防止する成形手段を提供することを目的とする。
【構成】 巻線を施したステータコアの内径を挿通する下型の支柱の基部に外方に突出し軸方向に伸びるガイドリブを設け、ガイドリブをステータコアの歯溝に挿入することにより、巻線を施したステータコアの位置決めを行い、ステータ巻線の相隣るコイルエンドとの間隙に合わせて上型のピンゲートを形成してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、樹脂モールドモータに関し、詳しくは樹脂成形時にステータ巻線の損傷を防止する成形手段に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ステータコアにステータ巻線をインサータにより挿入し、コイル整形機によりコイルエンドの形状を整えバインド糸により結束し、さらにその状態を保つためにワニスを塗布して固め、図3に示すように成形金型内にステータコアの内径をガイドにして支柱に保持し、成形金型のゲートより充填材を混入した熱硬化性樹脂を注入固化し、巻線とステータコアの外周に絶縁性の外被を形成する方法が取られている。この場合、バインド糸による結束のためステータコアの側面とコイルエンドの間に適当な間隙を取る必要があり、且つバインド糸による結束の際にはコイルエンドをステータコアの方向に押付ける力がかからず、バインド後のコイルエンドの形状がバラツキ、バラツキを含んでコイルエンドの絶縁を確保するためにコイルエンドの厚み方向の外被を厚くする必要が生じ、製品の薄型化に支障を来している。また、図3のように充填材を混入した熱硬化性樹脂の注入を金型のパーテイングラインに沿って側面から行う場合、樹脂が矢印に示すようにコイルエンドを直撃することになり、コイルエンドを変形させたり、巻線自体の断線または絶縁破壊する等の問題を生じている。また、図4に示すように成型金型の固定側からピンゲートにより樹脂を注入する場合にも、ピンゲートの位置を特定しない場合には成型条件からコイルエンドの巻線の上に配置されることがあり、樹脂の注入圧力により巻線自体の断線または絶縁破壊する事例が発生している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたもので、巻線を施したステータコアを一体成型する際にコイルエンドの変形や巻線自体の断線または絶縁破壊を生じることのない樹脂モールドモータの成形手段を提供しようとすることを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、上型の複数のピンゲートの位置をステータコアの相隣る整形したコイルエンドとの間隙に対向するように配置した。
【0005】
【作用】上記の構成によれば、巻線を施したステータコアの相隣る整形したコイルエンドとの間隙に対向して上型のピンゲートを配置し、ピンゲートより樹脂を注入し固定子の外被を成形することにより、樹脂の注入圧力によるコイルエンドの変形と巻線自体の断線または絶縁破壊を抑えることができる。
【0006】
【実施例】本発明の実施例を添付図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の詳細を示す金型セット時の側断面図で、成形金型は上型1と下型2から構成され、上型1の所定の位置に外部から成形樹脂を注入する複数のピンゲート3が設けられ、下型2の底面中央にはステータコア4の内径に嵌通しステータコア4を所定の位置に支持し上型1まで延びる支柱5が形成され、支柱5の基部には外方に突出し軸方向に伸びるガイドリブ6が形成されている。ガイドリブ6は、上型1の一つのピンゲート3の位置と対向するように配置されている。上記構成において、その製造方法を説明する。先ず、ガイドリブ6に巻線7を施したステータコア4の相隣るコイルエンド8との間隙を合わせるように、下型2にステータコア4を支柱5に沿って嵌入し、その上に上型1を支柱5に合わせて被せ、ピンゲート3がステータコア4の相隣るコイルエンド8との間隙に対向する位置になるようにする。この状態で、型締め圧力を加え、ピンゲート3より充填材を混入した熱硬化性樹脂を注入すると、図中矢印で示すように熱硬化性樹脂はコイルエンド8を直撃することなくキャビティ内を流れて充填され、コイルエンド8の変形や巻線自体の断線または絶縁破壊を生じることなく固定子を成形することができる。図2は成形された固定子のピンゲート3の位置を示す要部断面側面図で、複数のピンゲート3を内側の巻線7の内側に設けた状態を示している。成型条件により、相隣る外側の巻線7との間、または内側の巻線7と外側の巻線7により囲まれた間隙にも同様にピンゲート3を設置することができる。
【0007】
【発明の効果】以上のように本発明においては、下型の支柱に設けられたガイドリブにステータ巻線の相隣るコイルエンドとの間隙を合わせ支柱に沿ってステータコアを嵌入することにより、上型のピンゲートの位置とステータ巻線の相隣るコイルエンドとの間隙の位置を合わせることにより、上型のピンゲートから注入された熱硬化性樹脂がコイルエンドを直撃することを避け、熱硬化性樹脂の注入圧力によるコイルエンドの変形や巻線自体の断線または絶縁破壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の詳細を示す金型セット時の側断面図である。
【図2】成形された固定子のピンゲートの位置を示す要部断面側面図である。
【図3】従来の成形金型セット時の側断面図である。
【図4】金型のピンゲートの位置を特定しない時のピンゲートの位置を示す要部断面側面図である。
【符号の説明】
1 上型
2 下型
3 ピンゲート
4 ステータコア
5 支柱
6 ガイドリブ
7 巻線
8 コイルエンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】 巻線を施したステータコアの内径を成形金型の下型中央に立設した支柱に嵌入し型締めにより所定の位置に固定し、上型に設けた複数のピンゲートから充填材を混入した熱硬化性樹脂を注入固化し固定子を形成してなる樹脂モールドモータにおいて、上記上型の複数のピンゲートの位置をステータコアの相隣る整形したコイルエンドとの間隙に対向するように配置してなることを特徴とする樹脂モールドモータの製造方法。
【請求項2】 上記下型の支柱基部に外方に突出し軸方向に伸びるガイドリブを設け、同ガイドリブにステータコアの歯溝を挿入しステータコアの位置決めしてなることを特徴とする請求項1記載の樹脂モールドモータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平5−56610
【公開日】平成5年(1993)3月5日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−210757
【出願日】平成3年(1991)8月22日
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)