説明

樹脂成形体およびその製造方法

【課題】透明性や機械強度に優れる樹脂成形体およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】無機粒子と、無機粒子の表面に結合する有機基とを含有し、有機基の立体障害により、無機粒子が互いに接触しない形状を有している有機無機複合粒子を調製し、有機無機複合粒子と樹脂とを配合して、粒子含有樹脂組成物を調製して、粒子含有樹脂組成物から粒子含有樹脂成形体を形成し、粒子含有樹脂成形体から、有機無機複合粒子を除去することにより形成される微細孔を形成することにより、樹脂成形体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂を多孔質化することにより得られる多孔質樹脂には、樹脂本来の物性に加え、種々の物性が多孔質化により付与されることが知られている。
【0003】
例えば、ポリイミド樹脂前駆体にポリエチレングリコールジメチルエーテルを配合し、混合樹脂溶液を調製して、皮膜を形成し、続いて、皮膜を高温高圧の二酸化炭素に接触させて、ポリエチレングリコールジメチルエーテルを抽出することにより、多孔質化ポリイミド樹脂を得る方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1の多孔質化ポリイミド樹脂は、孔(セル)が均一に形成されており、多孔質ポリイミド樹脂の誘電率は、多孔質化していないポリイミド樹脂の誘電率に比べて、低く設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−26850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、多孔質樹脂において、孔(セル)を小さい孔径で形成する要求がある。そこで、例えば、小さい粒子径の無機微粒子を樹脂に配合し、その後、かかる無機微粒子を抽出することが試案される。
【0007】
しかしながら、無機微粒子を樹脂に配合すると、無機微粒子が樹脂中で凝集してしまい、そのため、孔(セル)を小さい孔径で形成できず、そのため、多孔質樹脂が不透明になり、さらには、多孔質樹脂の機械強度が不十分となって、可撓性が低下し、自立したフィルムとして形成することができないという不具合がある。
【0008】
また、多孔質樹脂において、孔(セル)の配列を設計したい要求もある。
【0009】
本発明の目的は、透明性や機械強度に優れる樹脂成形体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の樹脂成形体は、樹脂と、無機粒子と、前記無機粒子の表面に結合する有機基とを含有し、前記の立体障害により、前記無機粒子が互いに接触しない形状を有している有機無機複合粒子とを含有する粒子含有樹脂成形体から、前記有機無機複合粒子を除去することにより形成される微細孔を有することを特徴としている。
【0011】
また、本発明の樹脂成形体では、前記有機無機複合粒子の最大長さの平均値が、400nm以下であることが好適である。
【0012】
また、本発明の樹脂成形体では、前記粒子含有樹脂成形体において、前記有機無機複合粒子が、前記樹脂中に1次粒子で分散しているが好適であり、または、前記粒子含有樹脂成形体は、前記樹脂からなる樹脂相、および、前記有機無機複合粒子からなり、前記樹脂相から相分離する粒子相から形成される相分離構造を有することが好適であり、さらに、前記相分離構造は、前記粒子相が三次元的に連続する共連続相分離構造であることが好適である。
【0013】
また、本発明の樹脂成形体では、前記有機無機複合粒子が部分的に残存していることが好適であり、また、前記有機無機複合粒子の残存率が、前記樹脂成形体の一方に向かうに従って高いことが好適である。
【0014】
また、本発明の樹脂成形体では、前記有機基は、互いに異なる複数の有機基を含有することが好適である。
【0015】
また、本発明の樹脂成形体の製造方法は、無機粒子と、前記無機粒子の表面に結合する有機基とを含有し、前記有機基の立体障害により、前記無機粒子が互いに接触しない形状を有している有機無機複合粒子を調製する工程、前記有機無機複合粒子と樹脂とを配合して、粒子含有樹脂組成物を調製して、前記粒子含有樹脂組成物から粒子含有樹脂成形体を形成する工程、および、前記粒子含有樹脂成形体から、前記有機無機複合粒子を除去することにより形成される微細孔を形成する工程を備えることを特徴としている。
【0016】
また、本発明の樹脂成形体の製造方法において、前記有機無機複合粒子を調製する工程では、無機原料を、高温高圧の水中下、有機化合物で表面処理するが好適であり、あるいは、前記有機無機複合粒子を調製する工程では、無機原料を、高温の有機化合物中で表面処理することが好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の樹脂成形体の製造方法により得られる本発明の樹脂成形体では、透明性や機械強度に優れる。
【0018】
そのため、本発明の樹脂成形体を、透明性や信頼性に優れる樹脂成形体として、光学用途を含む各種産業用途に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、実施例6の多孔質フィルムのTEM写真の画像処理図を示す。
【図2】図2は、実施例7の多孔質フィルムのTEM写真の画像処理図を示す。
【図3】図3は、実施例13の多孔質フィルムのTEM写真の画像処理図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の樹脂成形体は、樹脂と、有機無機複合粒子とを含有する粒子含有樹脂成形体から、有機無機複合粒子を除去することにより得ることができる。
【0021】
樹脂は、樹脂成形体を形成するマトリクス成分であって、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0022】
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂(熱硬化性フッ素系ポリイミド樹脂を含む)、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0023】
熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、マレイミド樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂(熱可塑性フッ素系ポリイミド樹脂を含む)、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、セルロース樹脂、液晶ポリマー、アイオノマーなどが挙げられる。
【0024】
これら樹脂は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0025】
上記した樹脂のうち、粒子含有樹脂組成物(後述)から成形される粒子含有樹脂成形体に優れた機械強度や優れた透明性を付与したい場合には、好ましくは、ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂などが挙げられる。
【0026】
ポリエステル樹脂としては、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが挙げられる。
【0027】
また、上記した樹脂は、好ましくは、官能基を有している。官能基としては、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基などの親水基、例えば、炭化水素基などの疎水基などが挙げられる。
【0028】
また、樹脂の波長633nmの光に対する屈折率が、例えば、1を超過し、3以下、好ましくは、1.2〜2.5、さらに好ましくは、1.3〜2.0である。屈折率は、例えば、屈折計によって測定される。
【0029】
また、樹脂の波長550nmの光に対する反射率が、例えば、1〜10%、好ましくは、2〜9%、さらに好ましくは、3〜8%である。反射率は、例えば、分光光度計によって測定される。
【0030】
また、樹脂の誘電率は、例えば、1.5〜1000、好ましくは、2〜100、さらに好ましくは、2〜10である。誘電率は、例えば、誘電体損自動測定装置によって周波数1MHzにて測定される。
【0031】
有機無機複合粒子は、溶媒(後述)および/または樹脂中に1次として分散することができ、かつ、抽出溶媒によって樹脂から抽出される粒子であって、無機粒子と、その無機粒子の表面に結合する有機基とを含有している。
【0032】
具体的には、有機無機複合粒子は、無機粒子を形成する無機原料が有機化合物により表面処理されることによって、得られる。なお、有機無機複合粒子は、1種類または2種以上組み合わせて利用することができる。
【0033】
無機粒子を形成する無機原料としては、典型元素、遷移元素などの金属元素からなる金属、例えば、ホウ素、ケイ素などの非金属元素からなる非金属、例えば、金属元素および/または非金属を含む無機化合物および/または錯体などが挙げられる。
【0034】
金属元素または非金属元素としては、例えば、長周期型周期表(IUPAC、1989)で第IIIB属のホウ素(B)−第IVB属のケイ素(Si)−第VB属のヒ素(As)−第VIB属のテルル(Te)−第VIIB属のアスタチン(At)を境界として、これらの元素およびその境界より、長周期型周期表において左側および下側にある元素が挙げられ、具体的には、例えば、Li、Na、K、Rb、CsなどのI属元素(アルカリ金属)、例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、RaなどのII属元素(アルカリ土類金属)、例えば、Sc、YなどのIIIA属元素、例えば、Ti、Zr、HfなどのIVA属元素、例えば、V、Nb、TaなどのVA属元素、例えば、Cr、Mo、WなどのVIA属元素、例えば、Mn、ReなどのVIIA属元素、例えば、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、PtなどのVIII属元素、例えば、Cu、Ag、AuなどのIB属元素、例えば、Zn、Cd、HgなどのIIB属元素、例えば、B、Al、Ga、In、TlなどのIIIB属元素、例えば、Si、Ge、Sn、PbなどのIVB属元素、例えば、As、Sb、BiなどのVB元素、例えば、Te、PoなどのVIB属元素、例えば、La、Ce、Pr、Ndなどのランタニド系列元素、例えば、Ac、Th、Uなどのアクチニウム系列元素などが挙げられる。
【0035】
無機化合物としては、例えば、水素化合物、水酸化物、窒化物、ハロゲン化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、硫化物、炭化物、リン化合物などが挙げられる。また、無機化合物は複合化合物でもよく、例えば、酸化窒化物、複合酸化物などが挙げられる。
【0036】
無機化合物として、好ましくは、酸化物、炭酸塩、硫酸塩などが挙げられる。
【0037】
酸化物として、例えば、酸化金属が挙げられ、好ましくは、酸化チタン(二酸化チタン、酸化チタン(IV)、チタニア:TiO)、酸化セリウム(二酸化セリウム、酸化セリウム(IV)、セリア:CeO)、酸化亜鉛(酸化亜鉛(II)、亜鉛華あるいは亜鉛白、ZnO)などが挙げられる。
【0038】
酸化物は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0039】
炭酸塩において、炭酸と化合する元素としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが挙げられる。アルカリ金属およびアルカリ土類金属としては、上記と同様のものが挙げられる。
【0040】
炭酸と化合する元素のうち、好ましくは、アルカリ土類金属が挙げられる。
【0041】
具体的には、炭酸塩としては、好ましくは、アルカリ土類金属を含む炭酸塩が挙げられ、そのような炭酸塩としては、例えば、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、炭酸ラジウムなどが挙げられる。これら炭酸塩は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0042】
硫酸塩は、硫酸イオン(SO2−)と、金属のカチオンとの化合物(より具体的には、硫酸(HSO)の水素原子が金属と置換した化合物)であって、硫酸塩に含まれる金属としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが挙げられる。アルカリ金属およびアルカリ土類金属としては、上記と同様のものが挙げられる。
【0043】
金属のうち、好ましくは、アルカリ土類金属が挙げられる。
【0044】
具体的には、硫酸塩としては、好ましくは、アルカリ土類金属を含む硫酸塩が挙げられ、そのような硫酸塩としては、例えば、硫酸ベリリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、硫酸バリウム、硫酸ラジウムなどが挙げられ、好ましくは、硫酸バリウムが挙げられる。
【0045】
これら硫酸塩は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0046】
上記した無機原料は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0047】
有機化合物は、例えば、無機粒子の表面に有機基を導入する(配置させる)有機基導入化合物であって、具体的には、無機粒子の表面と結合可能な結合基と、有機基とを含んでいる。
【0048】
結合基としては、無機粒子の種類に応じて適宜選択され、例えば、カルボキシル基、リン酸基(−PO(OH)、ホスホノ基)、アミノ基、スルホ基、ヒドロキシル基、チオール基、エポキシ基、イソシアネート基、ニトロ基、アゾ基、シリルオキシ基、イミノ基、アルデヒド基(アシル基)、ニトリル基、ビニル基(重合性基)などの官能基が挙げられる。好ましくは、カルボキシル基、リン酸基、アミノ基、スルホ基、ヒドロキシル基、チオール基、エポキシ基、アゾ基、ビニル基などが挙げられ、さらに好ましくは、カルボキシル基、リン酸基が挙げられる。
【0049】
カルボキシル基は、カルボン酸エステル基(カルボキシエステル基)を含む。
【0050】
また、リン酸基は、リン酸エステル基(ホスホン酸エステル基)を含む。
【0051】
これら結合基は、有機化合物に1つあるいは複数含まれる。具体的には、結合基は、有機基の末端または側鎖に結合されている。
【0052】
結合基は、上記した無機粒子に応じて適宜選択され、具体的には、無機粒子が、酸化セリウム、炭酸ストロンチウムおよび/または硫酸バリウムを含んでいる場合には、例えば、カルボキシル基が選択され、無機粒子が酸化チタンおよび/または酸化亜鉛を含んでいる場合には、例えば、リン酸基が選択される。
【0053】
有機基は、例えば、脂肪族基、脂環族基、芳香脂肪族基、芳香族基などの炭化水素基などを含んでいる。
【0054】
脂肪族基としては、例えば、飽和脂肪族基、不飽和脂肪族基などが挙げられる。
【0055】
飽和脂肪族基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基などが挙げられる。
【0056】
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、へプチル、オクチル、2−エチルへキシル、3,3,5−トリメチルヘキシル、イソオクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシルなどの、炭素数1〜20の直鎖または分岐アルキル基(パラフィン炭化水素基)などが挙げられる。好ましくは、炭素数4〜18の直鎖または分岐アルキル基が挙げられる。
【0057】
不飽和脂肪族基としては、例えば、炭素数2〜20のアルケニル基、アルキニル基などが挙げられる。
【0058】
アルケニル基としては、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、オクタデセニル(オレイル)、イコセニルなどの炭素数2〜20のアルケニル基(オレフィン炭化水素基)が挙げられる。
【0059】
アルキニル基としては、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、デシニル、ウンデシニル、ドデシニル、トリデシニル、テトラデシニル、ペンタデシニル、ヘキサデシニル、ヘプタデシニル、オクタデシニルなどの炭素数2〜20のアルキニル基(アセチレン炭化水素基)が挙げられる。
【0060】
脂環族基としては、例えば、炭素数4〜20のシクロアルキル基、炭素数7〜20のシクロアルケニルアルキレン基などが挙げられる。
【0061】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、シクロドデシルなどが挙げられる。
【0062】
シクロアルケニルアルキレン基としては、例えば、ノルボルネンデシル(ノルボネリルデシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エニル−デシル)などが挙げられる。
【0063】
芳香脂肪族基としては、例えば、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、フェニルブチル、フェニルペンチル、フェニルヘキシル、フェニルヘプチル、ジフェニルメチルなどの炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられる。
【0064】
芳香族基としては、例えば、フェニル、キシリル、ナフチル、ビフェニルなどの炭素数6〜20のアリール基が挙げられる。
【0065】
上記した有機基は、無機粒子の表面に疎水性を付与するための疎水基とされる。
【0066】
従って、上記した疎水基を含む有機化合物は、無機粒子を疎水処理するための疎水化有機化合物として供される。
【0067】
そのような疎水化有機化合物としては、具体的には、結合基がカルボキシル基である場合には、例えば、ヘキサン酸、デカン酸などの飽和脂肪族基含有カルボン酸(飽和脂肪酸)や、例えば、オレイン酸などの不飽和脂肪族基含有カルボン酸(不飽和脂肪酸)などの脂肪族基含有カルボン酸などが挙げられる。また、疎水化有機化合物としては、具体的には、結合基がカルボキシル基である場合には、例えば、シクロヘキシルモノカルボン酸などの脂環族基含有カルボン酸(脂環族カルボン酸)、例えば、6−フェニルヘキサン酸などの芳香脂肪族基含有カルボン酸(芳香脂肪族カルボン酸)、例えば、安息香酸、トルエンカルボン酸などの芳香族基含有カルボン酸(芳香族カルボン酸)などが挙げられる。
【0068】
また、疎水化有機化合物として、具体的には、結合基がリン酸基(リン酸エステル基を含む)である場合には、例えば、オクチルホスホン酸エチル、デシルホスホン酸エチルなどの飽和脂肪族基含有リン酸エステルなどの、脂肪族基含有リン酸エステルが挙げられる。
【0069】
一方、有機化合物を、無機粒子を親水処理するための親水化有機化合物として供することもでき、その場合には、親水化有機化合物における有機基は、上記した炭化水素基と、それに結合する親水基とを有している。
【0070】
つまり、親水基は、親水化有機化合物において、上記した炭化水素基の末端(結合基に結合される末端(一端)と逆側の末端(他端))または側鎖に結合されている。
【0071】
親水基は、極性を有する官能基(つまり、極性基)であって、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、リン酸基、アミノ基、スルホ基、カルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アルデヒド基、チオール基などが挙げられる。これら親水基は、親水化有機化合物に1つあるいは複数含まれる。
【0072】
カルボキシル基を含む有機基(親水基がカルボキシル基であるカルボキシル基含有有機基)としては、例えば、3−カルボキシプロピル、4−カルボキシブチル、6−カルボキシヘキシル、8−カルボキシオクチル、10−カルボキシデシルなどのカルボキシ飽和脂肪族基や、例えば、カルボキシブテニルなどのカルボキシ不飽和脂肪族基などのカルボキシ脂肪族基などが挙げられる。また、カルボキシル基を含む有機基としては、例えば、カルボキシシクロヘキシルなどのカルボキシ脂環族基、例えば、カルボキシフェニルヘキシルなどのカルボキシ芳香脂肪族基など、例えば、カルボキシフェニルなどのカルボキシ芳香族基などが挙げられる。
【0073】
ヒドロキシル基を含む有機基(親水基がヒドロキシル基であるヒドロキシル基含有有機基)としては、例えば、4−ヒドロキシブチル、6−ヒドロキシルヘキシル、8−ヒドロキシオクチルなどのヒドロキシ飽和脂肪族基(ヒドロキシ脂肪族基)、例えば、4−ヒドロキシベンジル、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル、6−(4−ヒドロキシフェニル)ヘキシルなどのヒドロキシ芳香脂肪族基、例えば、ヒドロキシフェニルなどのヒドロキシ芳香族基などが挙げられる。
【0074】
リン酸基を含む有機基(親水基がリン酸基であるリン酸基含有有機基)としては、例えば、6−ホスホノヘキシルなどのホスホノ飽和脂肪族基(ホスホノ脂肪族基)、6−ホスホノフェニルヘキシルなどのホスホノ芳香脂肪族基などが挙げられる。
【0075】
アミノ基を含む有機基(親水基がアミノ基であるアミノ基含有有機基)としては、例えば、6−アミノヘキシルなどのアミノ飽和脂肪族基(アミノ脂肪族基)、6−アミノフェニルヘキシルなどのアミノ芳香脂肪族基などが挙げられる。
【0076】
スルホ基を含む有機基(親水基がスルホ基であるスルホ基含有有機基)としては、例えば、6−スルホヘキシルなどのスルホ飽和脂肪族基(スルホ脂肪族基)、6−スルホフェニルヘキシルなどのスルホ芳香脂肪族基などが挙げられる。
【0077】
カルボニル基を含む有機基(親水基がカルボニル基であるカルボニル基含有有機基)としては、例えば、3−オキソペンチルなどのオキソ飽和脂肪族基(オキソ脂肪族基)などが挙げられる。
【0078】
シアノ基を含む有機基(親水基がシアノ基であるシアノ基含有有機基)としては、例えば、6−シアノヘキシルなどのシアノ飽和脂肪族基(シアノ脂肪族基)などが挙げられる。
【0079】
ニトロ基を含む有機基(親水基がニトロ基であるニトロ基含有有機基)としては、例えば、6−ニトロヘキシルなどのニトロ飽和脂肪族基(ニトロ脂肪族基)などが挙げられる。
【0080】
アルデヒド基を含む有機基(親水基がアルデヒド基であるアルデヒド基含有有機基)としては、例えば、6−アルデヒドヘキシルなどのアルデヒド飽和脂肪族基(アルデヒド脂肪族基)などが挙げられる。
【0081】
チオール基を含む有機基(親水基がチオール基であるチオール基含有有機基)としては、例えば、6−チオールヘキシルなどのチオール飽和脂肪族基(チオール脂肪族基)などが挙げられる。
【0082】
具体的には、親水基を含む有機化合物としては、例えば、カルボキシル基含有有機化合物、ヒドロキシル基含有有機化合物、リン酸基含有有機化合物、アミノ基含有有機化合物、スルホ基含有有機化合物、カルボニル基含有有機化合物、シアノ基含有有機化合物、ニトロ基含有有機化合物、アルデヒド基含有有機化合物、チオール基含有有機化合物などが挙げられる。
【0083】
カルボキシル基含有有機化合物としては、結合基および親水基がともにカルボキシル基である場合には、例えば、ジカルボン酸などが挙げられ、そのようなジカルボン酸としては、例えば、プロパン二酸(マロン酸)、ブタン二酸(コハク酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、オクタン二酸、デカン二酸(セバシン酸)などの飽和脂肪族ジカルボン酸や、イタコン酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸、例えば、シクロヘキシルジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、例えば、6−カルボキシフェニルヘキサン酸などの芳香脂肪族ジカルボン酸、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸など芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。また、カルボキシル基含有有機化合物としては、結合基がカルボキシル基であり、親水基がリン酸エステル基である場合(無機粒子が、例えば、酸化セリウム、炭酸ストロンチウムまたは硫酸バリウムである場合)、あるいは、結合基がリン酸エステル基であり、親水基がカルボキシル基である場合(無機粒子が、例えば、酸化亜鉛または硫酸バリウムである場合)には、カルボキシル基含有リン酸エステルなども挙げられ、具体的には、カルボキシデシルリン酸エチル、カルボキシオクチルリン酸エチルなども挙げられる。
【0084】
ヒドロキシル基含有有機化合物としては、具体的には、結合基がカルボキシル基であり、親水基がヒドロキシル基である場合(無機粒子が、例えば、酸化セリウム、炭酸ストロンチウムまたは硫酸バリウムである場合)には、例えば、モノヒドロキシルカルボン酸が挙げられ、そのようなモノヒドロキシルカルボン酸としては、具体的には、4−ヒドロキシブタン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、8−ヒドロキシオクタン酸、4−ヒドロキシフェニル酢酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、6−(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン酸、ヒドロキシ安息香酸などが挙げられる。
【0085】
リン酸基含有有機化合物としては、結合基がカルボキシル基であり、親水基がリン酸基である場合(無機粒子が、例えば、酸化セリウム、炭酸ストロンチウムまたは硫酸バリウムである場合)には、例えば、モノホスホノカルボン酸が挙げられ、具体的には、6−ホスホノヘキサン酸、6−ホスホノフェニルヘキサン酸などが挙げられ、また、上記したカルボキシル基含有リン酸エステルも挙げられる。
【0086】
アミノ基含有有機化合物としては、具体的には、結合基がカルボキシル基であり、親水基がアミノ基である場合(無機粒子が、例えば、酸化セリウム、炭酸ストロンチウムまたは硫酸バリウムである場合)には、例えば、モノアミノカルボン酸が挙げられ、具体的には、6−アミノヘキサン酸、6−アミノフェニルヘキサン酸などが挙げられる。
【0087】
スルホ基含有有機化合物としては、具体的には、結合基がカルボキシル基であり、親水基がスルホ基である場合(無機粒子が、例えば、酸化セリウム、炭酸ストロンチウムまたは硫酸バリウムである場合)には、例えば、モノスルホカルボン酸が挙げられ、具体的には、6−スルホヘキサン酸、6−スルホフェニルヘキサン酸などが挙げられる。
【0088】
カルボニル基含有有機化合物としては、具体的には、結合基がカルボキシル基であり、親水基がカルボニル基である場合(無機粒子が、例えば、酸化セリウム、炭酸ストロンチウムまたは硫酸バリウムである場合)には、例えば、モノカルボニルカルボン酸が挙げられ、具体的には、4−オキソ吉草酸などが挙げられる。
【0089】
シアノ基含有有機化合物としては、具体的には、結合基がカルボキシル基であり、親水基がシアノ基である場合(無機粒子が、例えば、酸化セリウム、炭酸ストロンチウムまたは硫酸バリウムである場合)には、例えば、モノシアノカルボン酸が挙げられ、具体的には、6−シアノヘキサン酸などが挙げられる。
【0090】
ニトロ基含有有機化合物としては、具体的には、結合基がカルボキシル基であり、親水基がニトロ基である場合(無機粒子が、例えば、酸化セリウム、炭酸ストロンチウムまたは硫酸バリウムである場合)には、例えば、モノニトロカルボン酸が挙げられ、具体的には、6−ニトロヘキサン酸などが挙げられる。
【0091】
アルデヒド基含有有機化合物としては、具体的には、結合基がカルボキシル基であり、親水基がアルデヒド基である場合(無機粒子が、例えば、酸化セリウム、炭酸ストロンチウムまたは硫酸バリウムである場合)には、例えば、モノアルデヒドカルボン酸が挙げられ、具体的には、6−アルデヒドヘキサン酸が挙げられる。
【0092】
チオール基含有有機化合物としては、具体的には、結合基がカルボキシル基であり、親水基がチオール基である場合(無機粒子が、例えば、酸化セリウム、炭酸ストロンチウムまたは硫酸バリウムである場合)には、例えば、モノチオールカルボン酸が挙げられ、具体的には、6−チオールヘキサン酸などが挙げられる。
【0093】
また、上記した有機基は、互いに同一または相異なっていてもよい。
【0094】
有機基が相異なる場合、つまり、有機基が、種類が互いに異なる複数の有機基を含む場合には、複数の同族の有機基および/または複数の互いに異なる族の有機基を含んでいる。
【0095】
同族の有機基としては、例えば、複数の脂肪族基同士の組合せ、複数の脂環族基同士の組合せ、複数の芳香脂肪族基同士の組合せ、複数の芳香族基同士の組合せが挙げられる。また、同族の有機基として、例えば、複数のカルボキシ脂肪族基同士の組合せ、複数のカルボキシ脂環族基同士の組合せ、複数のカルボキシ芳香脂肪族基同士の組合せ、複数のカルボキシ芳香族基同士の組合せ、複数のヒドロキシ脂肪族基同士の組合せ、複数のヒドロキシ芳香脂肪族基同士の組合せ、複数のヒドロキシ芳香族基同士の組合せ、複数のホスホノ脂肪族基同士の組合せ、複数のホスホノ芳香脂肪族基同士の組合せ、複数のアミノ脂肪族基同士の組合せ、複数のアミノ芳香脂肪族基同士の組合せ、複数のスルホ脂肪族基同士の組合せ、複数のスルホ芳香脂肪族同士の組合せ、複数のオキソ脂肪族基同士の組合せ、複数のシアノ脂肪族基同士の組合せ、複数のニトロ脂肪族基同士の組合せ、複数のアルデヒド脂肪族基同士の組合せ、複数のチオール脂肪族基同士の組合せなども挙げられる。
【0096】
同族の有機基として、好ましくは、複数の脂肪族基同士の組合せが挙げられ、さらに好ましくは、複数の飽和脂肪族基同士の組合せが挙げられ、とりわけ好ましくは、炭素数10未満の飽和脂肪族基および炭素数10以上の飽和脂肪族基の組合せが挙げられ、具体的には、ヘキシルおよびデシルの組合せ、オクチルおよびデシルの組合せが挙げられる。
【0097】
有機基が複数の同族の有機基を含んでいれば、有機基が、サイズ(長さまたは/および大きさ。つまり、炭素数。)が異なる複数の有機基を含んでいる。そのため、隣接する大きいサイズの有機基の間には、小さいサイズの有機基に対応して形成される空隙(ポケット)に樹脂の分子が入り込み、大きいサイズの有機基と樹脂分子との相互作用を向上させることができる。その結果、有機無機複合粒子の分散性を向上させることができる。
【0098】
異なる族の有機基としては、例えば、脂肪族基、脂環族基、芳香脂肪族基、芳香族基、カルボキシ脂肪族基、カルボキシ脂環族基、カルボキシ芳香脂肪族基、カルボキシ芳香族基、ヒドロキシ脂肪族基、ヒドロキシ芳香脂肪族基、ヒドロキシ芳香族基、ホスホノ脂肪族基、ホスホノ芳香脂肪族基、アミノ脂肪族基、アミノ芳香脂肪族基、スルホ脂肪族基、スルホ芳香脂肪族基、オキソ脂肪族基、シアノ脂肪族基、ニトロ脂肪族基、アルデヒド脂肪族基、チオール脂肪族基からなる群から選択される少なくとも2つの異なる族の組合せが挙げられる。
【0099】
有機基が複数の異なる族の有機基を含んでいれば、樹脂が複数の樹脂成分の混合物として調製される場合に、有機基は、各族の有機基と相溶性が優れた各樹脂成分の樹脂分子に対して、優れた相溶性をそれぞれ発現することができる。そのため、有機基と樹脂成分の樹脂分子との相互作用を向上させることができる。その結果、有機無機複合粒子の分散性を向上させることができる。
【0100】
上記した有機基は、有機無機複合粒子における無機粒子の表面に存在する。具体的には、有機基は、無機粒子の表面に結合基を介して結合している。また、有機基は、無機粒子の表面から結合基を介して無機粒子の外側に向かって延びている。
【0101】
上記した有機無機複合粒子は、無機原料と有機化合物とを、反応処理、好ましくは、高温処理することによって調製される。
【0102】
高温処理は、溶媒中で実施される。溶媒としては、例えば、水、例えば、上記した有機化合物が挙げられる。
【0103】
具体的には、無機原料および有機化合物を水中で高圧下において高温処理する(水熱合成:水熱反応)か、または、無機原料を有機化合物中で高温処理(有機化合物中での高温処理)することにより、有機無機複合粒子を得る。つまり、無機原料により形成される無機粒子の表面を有機化合物で(あるいは存在下)で、表面処理することにより、有機無機複合粒子を得る。
【0104】
水熱合成では、例えば、上記した無機原料と、有機化合物とを、高温および高圧下において、水の存在下で、反応させる(第1の水熱合成)。
【0105】
第1の水熱合成に供せられる無機原料として、好ましくは、無機化合物、さらに好ましくは、炭酸塩、硫酸塩が挙げられる。
【0106】
すなわち、まず、無機原料、有機化合物および水を耐圧性の密閉容器に投入し、それらを加熱することにより、反応系を高温および高圧下に調製する。
【0107】
各成分の配合割合は、無機原料100質量部に対して、有機化合物が、例えば、1〜1500質量部、好ましくは、5〜500質量部、さらに好ましくは、5〜250質量部であり、水が、例えば、50〜8000質量部、好ましくは、80〜6600質量部、さらに好ましくは、100〜4500質量部である。
【0108】
なお、有機化合物の密度が、通常、0.8〜1.1g/mLであることから、有機化合物の配合割合は、無機原料100gに対して、例えば、1〜1500mL、好ましくは、5〜500mL、さらに好ましくは、5〜250mLである。
【0109】
また、有機化合物の配合モル数は、無機原料1モルに対して、例えば、0.01〜1000モル、好ましくは、0.02〜50モル、さらにこのましくは、0.1〜10モルに設定することもできる。
【0110】
有機化合物は、種類が異なる複数(例えば、2つ)の有機基を含んでいる場合、具体的には、一方の有機基を含む有機化合物と、他方の有機基を含む有機化合物とのモル比は、例えば、10:90〜99.9:0.1、好ましくは、20:80〜99:1である。
【0111】
また、水の密度が、通常、1g/mL程度であることから、水の配合割合は、無機原料100gに対して、例えば、50〜8000mL、好ましくは、80〜6600mL、さらに好ましくは、100〜4500mLである。
【0112】
水熱反応における反応条件は、具体的には、加熱温度が、例えば、100〜500℃、好ましくは、200〜400℃である。また、圧力が、例えば、0.2〜50MPa、好ましくは、1〜50MPa、さらに好ましくは、10〜50MPaである。また、反応時間が、例えば、1〜200分間、好ましくは、3〜150分間である。一方、連続式の反応装置を用いた場合の反応時間は、1分以下にすることもできる。
【0113】
上記の反応において、必要により、アンモニア水溶液、水酸化カリウム水溶液などのpH調整水溶液を適宜の割合で配合することができる。
【0114】
上記の反応において、得られる反応物は、主に水中に沈殿する沈殿物と、密閉容器の内壁に付着する付着物とを含んでいる。
【0115】
沈殿物は、例えば、反応物を、重力または遠心力場によって、沈降させる沈降分離によって得る。好ましくは、遠心力場によって沈降させる遠心沈降(遠心分離)によって、反応物の沈殿物として得られる。
【0116】
また、付着物は、例えば、へら(スパ−テル)などによって、回収する。
【0117】
なお、反応物は、溶媒を加えて未反応の有機化合物を洗浄し(つまり、有機化合物を溶媒に溶解させ)、その後、溶媒を除去して、回収(分離)することもできる(回収工程)。
【0118】
溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール(ヒドロキシル基含有脂肪族炭化水素)、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどのケトン(カルボニル基含有脂肪族炭化水素)、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素、例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素、例えば、テトラヒドロフランなどのエーテル、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、例えば、上記したpH調整水溶液などが挙げられる。好ましくは、アルコールが挙げられる。
【0119】
洗浄後における反応物は、例えば、濾過、デカンテーションなどによって、溶媒(上澄み液)から分離して、回収する。その後、必要に応じて、反応物を、例えば、加熱または気流などにより乾燥する。
【0120】
これにより、無機粒子と、その無機粒子の表面に結合する有機基とを有する有機無機複合粒子を得る。
【0121】
なお、第1の水熱合成では、反応前の無機原料と、反応後の無機粒子とが、同一組成である。
【0122】
一方、無機原料(仕込み原料)と、有機化合物とを水熱合成させることにより、仕込み原料である無機原料と異なる組成の無機物から形成される無機粒子を含む有機無機複合粒子を得ることもできる(第2の水熱合成)。
【0123】
第2の水熱合成に供せられる無機原料としては、例えば、水酸化物、酢酸塩、錯体などが挙げられる。
【0124】
水酸化物において、水酸化物に含まれる元素(ヒドロキシルイオン(OH)と化合するカチオンを構成する元素。)としては、上記した酸化物における酸素と化合する元素と同様のものが挙げられる。
【0125】
水酸化物としては、具体的には、例えば、水酸化チタン(Ti(OH))、水酸化セリウム(Ce(OH))が挙げられる。
【0126】
酢酸塩において、酢酸イオン(CHCOO)と化合する元素としては、例えば、IIB属元素が挙げられ、好ましくは、Zn、Cdなどが挙げられる。
【0127】
具体的には、酢酸塩としては、好ましくは、IIB属元素を含む酢酸塩が挙げられ、そのような酢酸塩としては、具体的には、酢酸亜鉛、酢酸カドミウムなどが挙げられる。これら酢酸塩は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0128】
錯体は、中心原子および/または中心イオンと、それに配位する配位子とを含んでいる。
【0129】
中心原子としては、上記した金属元素と同様の金属元素が挙げられ、好ましくは、IVA属元素、さらに好ましくは、Tiが挙げられる。
【0130】
中心イオンとしては、上記した金属元素のカチオンが挙げられる。
【0131】
配位子としては、例えば、カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、アセチルアセトンなどの配位化合物、例えば、上記した配位化合物のカチオン、水酸化物イオンなどの配位イオンなどが挙げられる。
【0132】
カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、フタル酸などのジカルボン酸などが挙げられる。
【0133】
ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、2−ヒドロキシオクタン酸、乳酸、グリコール酸などのモノヒドロキシモノカルボン酸(具体的には、α−モノヒドロキシカルボン酸)、例えば、リンゴ酸などのモノヒドロキシジカルボン酸、例えば、クエン酸などのモノヒドロキシトリカルボン酸などが挙げられる。
【0134】
配位数は、例えば、1〜6、好ましくは、1〜3である。
【0135】
錯体は、上記した金属元素および配位子から調製して、得ることができる。
【0136】
上記した錯体は、塩および/または水和物として形成(調製)することもできる。塩としては、アンモニウムイオンなどのカチオンとの塩が挙げられる。
【0137】
有機化合物としては、例えば、上記した第1の水熱合成に用いられる有機化合物と同様のものが挙げられる。
【0138】
そして、第2の水熱合成では、無機原料と、有機化合物とを、高温および高圧下において、水の存在下で、反応させる。
【0139】
各成分の配合割合は、無機化合物100質量部に対して、有機化合物が、例えば、1〜1500質量部、好ましくは、5〜500質量部、さらに好ましくは、5〜250質量部であり、水が、例えば、50〜8000質量部、好ましくは、80〜6600質量部、さらに好ましくは、80〜4500質量部である。
【0140】
また、有機化合物の配合割合は、水酸化物100gに対して、例えば、0.9〜1880mL、好ましくは、4.5〜630mL、さらに好ましくは、4.5〜320mLであり、有機化合物の配合モル数は、水酸化物1モルに対して、例えば、0.01〜10000モル、好ましくは、0.1〜10モルに設定することもできる。
【0141】
また、水の配合割合は、水酸化物100gに対して、例えば、50〜8000mL、好ましくは、80〜6600mL、さらに好ましくは、100〜4500mLである。
【0142】
第2の水熱合成における反応条件は、上記した第1の水熱合成における反応条件と同一である。
【0143】
これにより、仕込み無機原料と組成が異なる無機物から形成される無機粒子と、その無機粒子の表面に結合する有機基とを有する有機無機複合粒子を得る。
【0144】
有機化合物中での高温処理では、無機原料と、有機化合物とを配合し、例えば、常圧下において、それらを加熱する。なお、有機化合物は、有機基導入化合物、および、無機原料を分散または溶解させるための溶媒を兼ねながら、高温処理に供される。
【0145】
有機化合物の配合割合は、無機原料100質量部に対して、例えば、10〜10000質量部、好ましくは、100〜1000質量部である。また、有機化合物の体積基準の配合割合は、無機原料100gに対して、例えば、10〜10000mL、好ましくは、100〜1000mLである。
【0146】
加熱温度は、例えば、100℃を超過する温度、好ましくは、125℃以上、さらに好ましくは、150℃以上であり、通常、例えば、300℃以下、好ましくは、275℃以下である。加熱時間は、例えば、1〜60分間、好ましくは、3〜30分間である。
【0147】
このようにして得られる有機無機複合粒子(1次粒子)の形状は特に限定されず、例えば、異方性または等方性を有していてもよく、その平均粒子径(異方性を有している場合には、最大長さの平均値)が、例えば、400nm以下、好ましくは、200nm以下、さらに好ましくは、100nm以下であり、通常、例えば、1nm以上、好ましくは、3nm以上である。
【0148】
有機無機複合粒子の平均粒子径は、後の実施例で詳述するが、動的光散乱法(DLS)による測定、および/または、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)の画像解析によって、算出される。
【0149】
有機無機複合粒子の平均粒子径が上記した範囲を超えると、微細孔(後述)が過度に大きくなり、樹脂成形体(多孔質フィルム、後述)の透明性が低下する場合がある。また、樹脂と混合する際に破砕される場合もある。また、平均粒子径が上記した範囲を超えると、樹脂と混合する際に破砕される場合もある。
【0150】
一方、有機無機複合粒子の平均粒子径が上記した範囲に満たないと、有機無機複合粒子の表面に対する有機基の体積の割合が高くなり、無機粒子の機能が得られにくくなる場合がある。
【0151】
このようにして得られる有機無機複合粒子は、乾燥状態で、凝集しにくくなっており、たとえ、乾燥状態で見かけ上凝集しても、粒子含有樹脂組成物および粒子含有樹脂成形体において、無機粒子同士の凝集が防止される。
【0152】
すなわち、有機無機複合粒子は、有機基の立体障害により、無機粒子が互いに接触しない形状を少なくとも有している。
【0153】
また、有機無機複合粒子は、一旦乾燥させても溶媒(後述)を加えるだけで容易に再分散する粒子でもある。
【0154】
また、有機無機複合粒子において、有機基の表面積の、無機粒子の表面積に対する割合、つまり、有機無機複合粒子における有機基の表面被覆率(=(有機基の表面積/無機粒子の表面積)×100)は、例えば、30%以上、好ましくは、60%以上であり、通常、200%以下である。
【0155】
なお、表面被覆率の算出では、まず、透過型電子顕微鏡(TEM)により無機物粒子の形状を確認し、さらに平均粒子径を算出し、無機物粒子の形状と平均粒子径とから粒子の比表面積を算出する。また、示差熱天秤(TG−DTA)により有機無機複合体粒子を800℃まで加熱したときの重量変化から、有機無機複合体粒子に占める有機基の割合を算出する。その後、有機基の分子量、粒子の密度、平均体積から、粒子一個に占める有機基の量を算出する。そして、それらから、表面被覆率を求める。
【0156】
また、少なくとも、表面被覆率が高く、有機無機複合体粒子の有機基が無機粒子の電荷を打消す程度の長さがある場合には、有機無機複合体粒子を分散させる溶媒(媒体)の種類を、有機基の種類で制御(設計または管理)することができる。
【0157】
また、上記により得られた有機無機複合粒子を、湿式分級することもできる。
【0158】
すなわち、有機無機複合粒子に溶媒を加えて、それらを攪拌後、静置し、その後、上澄みと沈殿物とに分離する。溶媒としては、有機基の種類に依存するが、例えば、上記と同様のものが挙げられ、好ましくは、ヒドロキシル基含有脂肪族炭化水素、カルボニル基含有脂肪族炭化水素、脂肪族炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、pH調整水溶液が挙げられる。
【0159】
その後、上済みを回収することにより、平均粒子径の小さい有機無機複合粒子を得ることができる。
【0160】
湿式分級により、得られる有機無機複合粒子の平均粒子径を、例えば、400nm以下、好ましくは、200nm以下、さらに好ましくは、100nm以下で、通常、例えば、0.1nm以上、好ましくは、0.3nm以上に調整することができる。
【0161】
また、樹脂と有機無機複合粒子とを、それらの溶解度パラメーター(SP値)が所定の関係を満たすように、選択することもできる。
【0162】
すなわち、樹脂と有機無機複合粒子とは、所定のSP値の差(ΔSP、詳しくは、樹脂の溶解度パラメーター(SPresin値)と有機無機複合粒子の溶解度パラメーター(SPparticle値)との差の絶対値)となるように、選択される。
【0163】
官能基と有機基とがともに有する親水基としては、好ましくは、カルボキシル基およびヒドロキシル基が挙げられ、官能基と有機基とがともに有する親水基としては、好ましくは、炭化水素基などが挙げられる。官能基および有機基がともに同一の性質(親水性または疎水性)を示す上記した基を有することにより、有機無機複合粒子と樹脂との親和性を向上させることができる。
【0164】
そして、本発明の樹脂成形体を得るには、まず、次いで、上記した樹脂と有機無機複合粒子とを配合して、粒子含有樹脂組成物を調製する。
【0165】
なお、調製される粒子含有樹脂組成物は、有機無機複合粒子が含有する有機基の組成によって、粒子含有樹脂組成物の内部における有機無機複合粒子の存在(分散)状態が変化する。そのため、粒子含有樹脂組成物の内部における有機無機複合粒子の存在(分散)状態は、樹脂と有機無機複合粒子との配合割合(後述)に限定されない。
【0166】
粒子含有樹脂組成物を調製するには、例えば、溶媒、有機無機複合粒子および樹脂を配合して、それらを攪拌する(溶液調製)。なお、このようにして調製される粒子含有樹脂組成物は、溶媒を含むワニス(溶液)とされる。
【0167】
溶媒としては、特に限定されず、例えば、上記した洗浄で用いられる溶媒が挙げられ、さらには、それら以外に、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環属炭化水素、例えば、酢酸エチルなどのエステル、例えば、エチレングリコール、グリセリンなどのポリオール、例えば、N−メチルピロリドン、ピリジン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミドなどの含窒素化合物、イソステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソボロニルアクリレート、ブチルアクリレート、メタクリレート、アクリル酸、テトラヒドロフルフリルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、アクロイルモルフォリンなどのアクリル系モノマー、例えば、スチレン、エチレンなどのビニル基含有モノマー、例えば、ビスフェノールA型エポキシなどのエポキシ基含有モノマーなどが挙げられる。
【0168】
これら溶媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。好ましくは、ハロゲン化脂肪族炭化水素が挙げられる。
【0169】
具体的に、粒子含有樹脂組成物を調製するには、まず、上記した溶媒と樹脂とを配合して、樹脂を溶媒中に溶解させて、樹脂溶液を調製する。その後、樹脂溶液と有機無機複合粒子とを配合して、それらを攪拌することによって、粒子含有樹脂組成物を調製する(第1の調製方法)。
【0170】
樹脂の配合割合は、樹脂溶液100質量部に対して、例えば、40質量部以下、好ましくは、35質量部以下、さらに好ましくは、30質量部以下であり、通常、1質量部以上である。樹脂の配合割合が上記した範囲を超える場合には、樹脂の溶解性が低下する場合がある。
【0171】
有機無機複合粒子の配合割合は、樹脂溶液の固形分(樹脂)100質量部に対して、例えば、1〜5000質量部、好ましくは、5〜3000質量部、さらに好ましくは、10〜300質量部である。
【0172】
とりわけ、例えば、有機無機複合粒子を樹脂中に1次粒子で分散(後述)させるには、有機無機複合粒子の配合割合を、比較的低く設定(つまり、有機無機複合粒子を低濃度で配合)し、具体的には、樹脂溶液の固形分(樹脂)100質量部に対して、例えば、1000質量部未満、好ましくは、500質量部以下、さらに好ましくは、300質量部以下であり、例えば、1質量部以上に設定する。
【0173】
一方、有機無機複合粒子と樹脂相とを相分離(後述)させるには、有機無機複合粒子の配合割合を、比較的高く設定(つまり、有機無機複合粒子を高濃度で配合)する。とりわけ、粒子含有樹脂成形体を共連続構造(後述)で形成するには、有機無機複合粒子の配合割合を、樹脂溶液の固形分(樹脂)100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上、さらに好ましくは、20質量部以上であって、通常、例えば、5000質量部以下に設定する。
【0174】
また、粒子含有樹脂成形体を二相分離構造(海島構造、後述)で形成するには、有機無機複合粒子の配合割合は、粒子含有樹脂成形体を共連続構造で形成する場合の配合割合に対して、例えば、50〜500%、好ましくは、80〜400%である。
【0175】
また、溶媒と有機無機複合粒子とを配合して、有機無機複合粒子を溶媒中に分散させて、粒子分散液を調製し、その後、粒子分散液と樹脂とを配合して、それらを攪拌することによって、粒子含有樹脂組成物を調製することもできる(第2の調製方法)。
【0176】
なお、粒子分散液において、有機無機複合粒子は、溶媒中に1次粒子で分散されている。
【0177】
有機無機複合粒子の配合割合は、粒子分散液100質量部に対して、例えば、0.1〜80質量部、好ましくは、0.2〜60質量部、さらに好ましくは、0.5〜50質量部である。
【0178】
樹脂の配合割合は、粒子分散液の固形分(有機無機複合粒子)100質量部に対して、例えば、1〜10000質量部、好ましくは、5〜2000質量部、さらに好ましくは、10〜1000質量部である。
【0179】
とりわけ、有機無機複合粒子を樹脂中に1次粒子で分散(後述)させるには、樹脂の配合割合を、比較的高く設定(つまり、樹脂を高濃度で配合)し、具体的には、粒子分散液の固形分(有機無機複合粒子)100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、10質量部以上、さらに好ましくは、20質量部以上、とりわけ好ましくは、40質量部以上であり、例えば、10000質量部以下に設定する。
【0180】
一方、有機無機複合粒子と樹脂相とを相分離(後述)させるには、樹脂の配合割合を、比較的低く設定(つまり、樹脂を低濃度で配合)する。具体的には、粒子含有樹脂成形体を共連続構造(後述)で形成するには、粒子分散液の固形分(有機無機複合粒子)100質量部に対して、例えば、2000質量部未満、好ましくは、1000質量部以下、さらに好ましくは、500質量部以下で、例えば、1質量部以上に設定する。
【0181】
また、粒子含有樹脂成形体を二相分離構造(海島構造)で形成するには、樹脂の配合割合は、粒子含有樹脂成形体を共連続構造で形成する場合の配合割合に対して、例えば、10〜300%、好ましくは、20〜200%である。
【0182】
さらに、例えば、溶媒と有機無機複合粒子と樹脂とを一度に配合して、それらを攪拌することにより、粒子含有樹脂組成物を調製することもできる(第3の調製方法)。
【0183】
各成分の配合割合は、有機無機複合粒子と樹脂との総量100質量部に対して、有機無機複合粒子の配合割合が、例えば、0.1〜99.9質量部、好ましくは、1〜99質量部、さらに好ましくは、3〜95質量部であり、樹脂で、0.1〜99.9質量部、好ましくは、1〜99質量部、さらに好ましくは、5〜97質量部である。
【0184】
また、溶媒の配合割合は、有機無機複合粒子と樹脂との総量100質量部に対して、例えば、1〜10000質量部、好ましくは、10〜5000質量部である。
【0185】
とりわけ、有機無機複合粒子を樹脂中に1次粒子で分散(後述)させるには、有機無機複合粒子の配合割合を、比較的低く設定(つまり、有機無機複合粒子を低濃度で配合)し、具体的には、有機無機複合粒子と樹脂との総量100質量部に対して、例えば、99質量部未満、好ましくは、90質量部以下、さらに好ましくは、80質量部以下、とりわけ好ましくは、70質量部以下であり、例えば、0.1質量部以上に設定する。
【0186】
一方、有機無機複合粒子と樹脂相とを相分離させるには、有機無機複合粒子の配合割合を、比較的高く設定(つまり、有機無機複合粒子の高濃度で配合)する。とりわけ、粒子含有樹脂成形体を共連続構造で形成するには、有機無機複合粒子の配合割合を、有機無機複合粒子と樹脂との総量100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上、さらに好ましくは、20質量部以上であり、例えば、99質量部以下に設定する。
【0187】
また、粒子含有樹脂成形体を二相分離構造(海島構造)で形成するには、有機無機複合粒子の配合割合は、粒子含有樹脂成形体を共連続構造で形成する場合の配合割合に対して、例えば、50〜500%、好ましくは、80〜400%である。
【0188】
また、粒子含有樹脂組成物を調製するには、まず、樹脂溶液と、粒子分散液とをそれぞれ調製し、次いで、樹脂溶液と粒子分散液とを配合して攪拌することもできる(第4の調製方法)。
【0189】
樹脂溶液における樹脂の配合割合は、上記した第1の調製方法で例示した配合割合と同様である。
【0190】
粒子分散液における有機無機複合粒子の配合割合は、上記した第2の調製方法で例示した配合割合と同様である。
【0191】
樹脂溶液と粒子分散液とを、有機無機複合粒子の配合割合が、有機無機複合粒子と樹脂との総量100質量部に対して、例えば、0.1〜99.9質量部、好ましくは、1〜99質量部、さらに好ましくは、3〜95質量部となるように、配合する。
【0192】
とりわけ、有機無機複合粒子を樹脂中に1次粒子で分散(後述)させるには、樹脂溶液と粒子分散液とを、有機無機複合粒子の配合割合が、比較的低く(つまり、有機無機複合粒子が低濃度と)なるように、配合する。具体的には、樹脂溶液と粒子分散液とを、有機無機複合粒子と樹脂との総量100質量部に対して、例えば、99質量部未満、好ましくは、90質量部以下、さらに好ましくは、80質量部以下、とりわけ好ましくは、70質量部以下であり、例えば、0.1質量部以上となるように、配合する。
【0193】
一方、有機無機複合粒子と樹脂相とを相分離(後述)させるには、樹脂溶液と粒子分散液とを、有機無機複合粒子の配合割合が、比較的高く(つまり、有機無機複合粒子が高濃度と)なるように、配合する。とりわけ、粒子含有樹脂成形体を共連続構造で形成するには、樹脂溶液と粒子分散液とを、有機無機複合粒子と樹脂との総量100質量部に対して、有機無機複合粒子の配合割合が、例えば、99.9質量部未満、好ましくは、99質量部以下、さらに好ましくは、95質量部以下、とりわけ好ましくは、90質量部以下であり、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上、さらに好ましくは、20質量部以上となるように、配合する。
【0194】
また、粒子含有樹脂成形体を二相分離構造(海島構造)で形成するには、有機無機複合粒子の配合割合は、粒子含有樹脂成形体を共連続構造で形成する場合の配合割合に対して、例えば、50〜500%、好ましくは、80〜400%である。
【0195】
さらにまた、粒子含有樹脂組成物を調製するには、例えば、溶媒を配合することなく、樹脂を加熱により溶融させて、有機無機複合粒子と配合することもできる(第5の調製方法)。
【0196】
このようにして調製される粒子含有樹脂組成物は、溶媒を含まない粒子含有樹脂組成物の溶融物とされる。
【0197】
加熱温度は、樹脂が熱可塑性樹脂からなる場合には、その溶融温度と同一あるいはそれ以上であり、具体的には、200〜350℃である。また、樹脂が熱硬化性樹脂からなる場合には、樹脂がBステージ状態となる温度であって、例えば、85〜140℃である。
【0198】
樹脂の配合割合は、樹脂および有機無機複合粒子の総量100質量部に対して、例えば、1〜90質量部、好ましくは、5〜80質量部、さらに好ましくは、10〜70質量部である。
【0199】
とりわけ、有機無機複合粒子を樹脂中に1次粒子で分散(後述)させるには、有機無機複合粒子の配合割合を、比較的低く設定(つまり、有機無機複合粒子を低濃度で配合)し、具体的には、樹脂および有機無機複合粒子の総量100質量部に対して、例えば、99質量部未満、好ましくは、90質量部以下、さらに好ましくは、80質量部以下、とりわけ好ましくは、70質量部以下であり、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上、さらに好ましくは、1質量部以上となるように、配合する。
【0200】
一方、有機無機複合粒子と樹脂とを相分離(後述)させるには、有機無機複合粒子の配合割合を、比較的高く設定(つまり、有機無機複合粒子の高濃度で配合)する。とりわけ、粒子含有樹脂成形体を共連続構造で形成するには、有機無機複合粒子の配合割合を、有機無機複合粒子と樹脂との総量100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上、さらに好ましくは、20質量部以上であり、例えば、99質量部以下に設定する。
【0201】
また、粒子含有樹脂成形体を二相分離構造(海島構造)で形成するには、有機無機複合粒子の配合割合は、粒子含有樹脂成形体を共連続構造で形成する場合の配合割合に対して、例えば、50〜500%、好ましくは、80〜400%である。
【0202】
上記した各調製方法により得られる粒子含有樹脂組成物では、有機基の立体障害により無機粒子が互いに接触しない形状を有していることから、無機粒子同士の凝集が防止されている。
【0203】
次いで、本発明の樹脂成形体を得るには、上記により調製した粒子含有樹脂組成物から粒子含有樹脂成形体を形成する。
【0204】
粒子含有樹脂成形体を形成するには、粒子含有樹脂組成物を、例えば、基材上に塗布して皮膜を作製し、この皮膜を乾燥することにより、粒子含有樹脂成形体をフィルム(粒子含有樹脂フィルム)として成形する。その後、フィルムを基材から引き剥がす。
【0205】
基材は、後述する抽出液に溶解しない材料からなり、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)などのポリエステルフィルム、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどのオレフィンフィルム、例えば、ポリ塩化ビニルフィルム、例えば、ポリイミドフィルム、例えば、ナイロンフィルムなどのポリアミドフィルム、例えば、レーヨンフィルムなどの合成樹脂フィルムが挙げられる。また、基材として、例えば、上質紙、和紙、クラフト紙、グラシン紙、合成紙、トップコート紙などの紙製基材なども挙げられる。さらに、基材として、例えば、ガラス板、銅板、アルミニウム板、ステンレス(SUS)などの無機基材なども挙げられる。
【0206】
基材の厚みは、例えば、2〜1500μmである。
【0207】
粒子含有樹脂組成物の塗布では、例えば、スピンコータ法、バーコータ法などの公知の塗布方法が用いられる。なお、この粒子含有樹脂組成物の塗布において、塗布と同時にまたは直後には、溶媒が、揮発により除去される。なお、必要により、塗布後に、加熱により、溶媒を乾燥させることもできる。
【0208】
得られるフィルムの厚みは、用途および目的に応じて適宜設定され、例えば、0.1〜2000μm、好ましくは、0.2〜1000μm、さらに好ましくは、0.3〜500μmである。
【0209】
なお、上記した粒子含有樹脂組成物を押出成形機などによって押出成形する溶融成形方法によって、粒子含有樹脂成形体をフィルムとして成形することもできる。
【0210】
また、粒子含有樹脂組成物を金型などに注入し、その後、例えば、熱プレスなどの熱成形によって、粒子含有樹脂成形体をブロック(塊)として成形することもできる。
【0211】
このようにして成形される粒子含有樹脂成形体では、有機無機複合粒子が低濃度で配合される場合には、有機無機複合粒子が樹脂中に1次粒子で分散している。つまり、この粒子含有樹脂成形体では、有機無機複合粒子が凝集して2次粒子を形成することが防止されている。
【0212】
一方、粒子含有樹脂成形体は、有機無機複合粒子が高濃度で配合される場合には、樹脂から樹脂相、および、有機無機複合粒子からなる粒子相から形成される相分離構造を有している。粒子相は、樹脂相から相分離している。
【0213】
上記した相分離構造として、例えば、粒子相が樹脂相中に分散する二相分離構造(海島構造)が挙げられる。
【0214】
また、相分離構造としては、例えば、粒子相が三次元的に連続する共連続分離構造も挙げられる。共連続分離構造では、粒子相が三次元的に連続しているので、粒子相における有機無機複合粒子を連続して抽出すること(後述)ができる。
【0215】
また、相分離構造として、例えば、ハニカム構造、柱状構造なども挙げられる。
【0216】
その後、粒子含有樹脂成形体から有機無機複合粒子を除去することにより、本発明の樹脂成形体を得ることができる。
【0217】
有機無機複合粒子を除去するには、例えば、粒子含有樹脂成形体に抽出溶媒を接触させる抽出法が採用される。抽出法では、具体的には、粒子含有樹脂成形体を抽出液に浸漬する。
【0218】
抽出液としては、例えば、有機無機複合粒子を溶解し、かつ、樹脂を腐食(損傷)させることなく樹脂に浸透する溶媒が挙げられる。そのような溶媒としては、例えば、酸またはアルカリが挙げられる。
【0219】
酸としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸、炭酸、リン酸などの無機酸、例えば、蟻酸、酢酸などの有機酸などが挙げられる。
【0220】
アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機アルカリ、例えば、アンモニアなどの有機アルカリが挙げられる。
【0221】
好ましくは、酸、さらに好ましくは、無機酸が挙げられる。
【0222】
また、上記した抽出液を、例えば、水、アルコール(エタノールなど)、脂肪族炭化水素(ヘキサンなど)などの希釈剤によって希釈することができ、例えば、抽出液の濃度が、抽出液および希釈剤の総質量に対して、例えば、1質量%以上100質量%未満である。
【0223】
抽出液として溶媒が採用される場合には、有機無機複合粒子の濃度の高低(つまり、粒子含有樹脂成形体における有機無機複合粒子または粒子相の構造)にかかわらず、有機無機複合粒子を溶解することができる。とりわけ、粒子含有樹脂成形体において、上記した有機無機複合粒子が低濃度で配合され、かかる有機無機複合粒子が樹脂中に1次粒子で分散する場合に、好ましく採用される。その場合には、溶媒は、樹脂に浸透するとともに、樹脂中に1次粒子で分散する有機無機複合粒子を溶解する。
【0224】
一方、抽出液としては、例えば、有機無機複合粒子を分散し、かつ、樹脂を腐食(損傷)させず、さらに、樹脂に浸透しない分散媒などであればよく、特に限定されない。分散媒としては、例えば、上記した洗浄工程に用いられる溶媒と同様の分散媒が挙げられ、具体的には、水、pH調整水溶液、ヒドロキシル基含有脂肪族炭化水素、カルボニル基含有脂肪族炭化水素、脂肪族炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素、エーテル、芳香族炭化水素などが挙げられる。分散媒として、好ましくは、脂肪族炭化水素が挙げられる。
【0225】
抽出液として分散媒が採用される場合には、粒子含有樹脂成形体において、有機無機複合粒子が高濃度で配合され、かかる有機無機複合粒子からなる粒子相が三次元的に連続する場合に、かかる粒子相が、粒子含有樹脂成形体の表面に露出することから、かかる露出面から有機無機複合粒子を連続して引き抜いて、分散媒中に分散(抽出)させることができる。
【0226】
抽出温度としては、例えば、0〜150℃、好ましくは、10〜100℃である。抽出温度が上記範囲に満たない場合には、次に説明する所望の抽出時間を超え、製造コストが増大する場合がある。また、抽出温度が上記範囲を超える場合には、樹脂が劣化する場合や製造コストが増大する場合がある。
【0227】
また、抽出時間は、例えば、30秒間〜5時間、好ましくは、1分間〜3時間である。
【0228】
抽出時間が上記範囲に満たない場合には、抽出効率が低下する場合がある。抽出時間が上記範囲を超える場合には、製造コストが増大する場合がある。
【0229】
そして、上記した有機無機複合粒子を除去することによって、粒子含有樹脂成形体において、微細孔が形成される。
【0230】
微細孔は、有機無機複合粒子の周囲の樹脂によって仕切られる開口(空隙)として形成されている。
【0231】
微細孔の形状および寸法(孔径)は、樹脂中に除去された有機無機複合粒子と実質的に同一の外形形状および寸法に形成されている。
【0232】
つまり、微細孔は、粒子含有樹脂成形体において有機無機複合粒子が樹脂中に比較的低濃度に配合され、有機無機複合粒子が1次粒子で分散されていた場合には、樹脂中に均一に分散された独立孔(独立泡)として形成される。
【0233】
これによって、微細孔が形成された樹脂成形体、つまり、多孔質成形体を得ることができる。なお、樹脂成形体をフィルムとして形成する場合には、多孔質フィルムとして得る。
【0234】
そして、上記した方法では、粒子含有樹脂成形体において、有機無機複合粒子が1次粒子で分散しており、有機無機複合粒子を除去することにより形成される微細孔を有する樹脂成形体では、透明性および機械強度に優れる。
【0235】
そのため、この樹脂成形体を、例えば、低屈折フィルム、反射防止膜などの光学フィルムなどの光学用途、例えば、低誘電基板などの電気・電子基板などの電気・電子用途に用いることができる。
【0236】
しかも、この樹脂成形体は、上記した範囲の平均粒子径の有機無機複合粒子が除去されることにより形成される独立孔(微細孔)を有するので、透明性をより向上させることができる。
【0237】
例えば、樹脂成形体を低屈折フィルムとして用いる場合には、
その低屈折フィルムの波長633nmの光に対する屈折率が、樹脂の波長633nmの光に対する屈折率に対して、例えば、99%以下に低減され、好ましくは、95%以下に低減、さらに好ましくは、90%以下に低減されており、具体的には、例えば、1〜3、好ましくは、1.05〜2.5、さらに好ましくは、1.1〜2である。
【0238】
また、樹脂成形体を反射防止膜(低反射フィルム)として用いる場合には、その反射防止膜の波長550nmの光に対する反射率が、樹脂の波長550nmの光に対する反射率に対して、例えば、99%以下に低減され、好ましくは、95%以下に低減されており、具体的には、反射防止膜の波長550nmの光に対する反射率が、例えば、9%以下、好ましくは、1〜8%、好ましくは、1.5〜7%である。
【0239】
また、樹脂成形体を低誘電基板として用いる場合には、樹脂の誘電率に対して、例えば、99%以下に低減され、好ましくは、95%以下に低減され、さらに好ましくは、90%以下に低減されており、具体的には、例えば、1〜1000、好ましくは、1.2〜100、さらに好ましくは、1.5〜100である。
【0240】
一方、粒子含有樹脂成形体は、粒子含有樹脂成形体が、粒子相と樹脂相とから形成される相分離構造、より具体的には、粒子相が三次元的に連続する共連続分離構造を有していた場合には、微細孔は、樹脂中の連通孔として形成される。
【0241】
上記の場合には、樹脂成形体は、有機無機複合粒子を除去することにより形成される連通孔(微細孔)を有するので、機械強度に優れるとともに、厚み(表裏)方向を貫通する連通孔からなるパス(通路)を有する多孔質フィルム(多孔質成形体)として、サイズ制御フィルター、分子分離膜、吸着・分離フィルター、電解質膜などの各種用途に広く用いることができる。
【0242】
なお、上記した有機無機複合粒子の除去(抽出)において、その条件を調整して、有機無機複合粒子を部分的に残存させることもできる。
【0243】
有機無機複合粒子を樹脂成形体に部分的に残存させるには、抽出時間を、有機無機複合粒子を全部抽出する場合の抽出時間に対して、例えば、80%以下、好ましくは、65%以下、さらに好ましくは、50%以下に設定し、具体的には、例えば、60分間未満、好ましくは、30分間以下、例えば、1秒間以上に設定する。
【0244】
上記した抽出時間の抽出により得られる樹脂成形体では、有機無機複合粒子の残存率が、樹脂成形体の一方に向かうに従って高くなっており、具体的には、樹脂成形体の表面から内方(内部)に向かうに従って高くなる。換言すれば、樹脂成形体における微細孔の存在率が、樹脂成形体の内方から表面に向かうに従って高くなる。
【0245】
上記した樹脂成形体において、微細孔の厚み方向における濃度分布は、例えば、0〜90体積%の範囲、好ましくは、0〜60体積%の範囲、さらに好ましくは、0〜40体積%の範囲である。詳しくは、例えば、多孔質フィルムの表面における微細孔の濃度が90体積%(好ましくは、65体積%)であり、多孔質フィルムの厚み方向中央部における微細孔の濃度が0体積%であり、それらの間において、濃度勾配が形成される。
【0246】
また、粒子含有樹脂成形体を基材の上面にフィルムとして形成する場合には、フィルムの一方面に基材を積層した状態で、それら(積層体)を抽出液に浸漬させることができる。その後、積層体を抽出液から引き上げ、乾燥後、フィルムを基材から引き剥がす。
【0247】
フィルムおよび基材の積層体を抽出液に浸漬させることにより得られる多孔質フィルムでは、有機無機複合粒子の残存率が、裏面(厚み方向一方側面、基材側面)に向かうに従って高くなる。つまり、微細孔の存在率が、多孔質フィルムの表面(厚み方向他方側面、基材が積層されていない露出面)に向かうに従って高くなる。
【0248】
有機無機複合粒子が部分的に残存する多孔質フィルムにおいて、微細孔の厚み方向における濃度分布は、例えば、0〜90体積%の範囲、好ましくは、0〜65体積%の範囲、さらに好ましくは、0〜40体積%の範囲である。詳しくは、例えば、多孔質フィルムの表面における微細孔の濃度が90体積%(好ましくは、65体積%)であり、多孔質フィルムの裏面における微細孔の濃度が0体積%であり、それらの厚み方向途中において、濃度勾配が形成される。
【0249】
上記した有機無機複合粒子の残存率および微細孔の存在率は、SEMあるいはTEMにより測定される。
【0250】
そして、上記した多孔質フィルム(樹脂成形体)は、有機無機複合粒子を部分的に残存させ、しかも、微細孔の存在率を多孔質フィルムの厚み方向において異なるので、屈折分布光学フィルムや誘電分布基板などとして用いることができる。
【実施例】
【0251】
以下に、調製例、比較調製例、実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。
【0252】
なお、有機無機複合粒子、フィルム(抽出前のフィルム(粒子含有樹脂成形体))、および、多孔質フィルム(微細孔樹脂組成物)の評価方法を以下に記載する。
(1)X線回折法(XRD)
有機無機複合粒子をガラスフォルダーにそれぞれ充填し、下記の条件でX線回折をそれぞれ実施した。その後、得られたピークから、データベース検索によって無機物の成分を帰属した。
【0253】
X線回折装置:D8 DISCOVER with GADDS、Bruker AXS社製
(入射側光学系)
・X線源:CuKα(λ=1.542Å)、45kV、360mA
・分光器(モノクロメータ):多層膜ミラー
・コリメータ直径:300μm
(受光側光学系)
・カウンタ:二次元PSPC(Hi−STAR)
・有機無機複合粒子およびカウンタ間距離:15cm
・2θ=20、50、80度、ω=10、25、40度、Phi=0度、Psi=0度
・測定時間:10分
・帰属(半定量ソフトウェア):FPM EVA、Bruker AXS社製
(2)フーリエ変換赤外分光光度法(FT−IR)
下記の装置を用いるKBr法によって、有機無機複合粒子のフーリエ変換赤外分光光度測定を実施した。
【0254】
フーリエ変換赤外分光光度計:FT/IR−470Plus、JASCO社製
(3)動的光散乱法(DLS)による平均粒子径の測定
有機無機複合粒子を溶媒に分散させて粒子分散液(固形分濃度1質量%以下)を調製し、粒子分散液における有機無機複合粒子の平均粒子径を動的光散乱光度計(型番「ZEN3600」:シスメックス社製)にて測定した。
【0255】
なお、溶媒として、調製例1では、ヘキサンを用い、調製例2、3、5および6では、クロロホルムを用い、調製例4では、濃度1質量%のアンモニア水を用いた。
(4)透過型電子顕微鏡(TEM)による観察
フィルム(抽出前のフィルム(粒子含有樹脂成形体))を切断し、切断面を透過型電子顕微鏡(TEM、H−7650、日立ハイテクノロジーズ社製)にて観察して、フィルム中の有機無機複合粒子の分散状態を観察した。
【0256】
また、微細孔の厚み方向の濃度分布を観察した。
【0257】
なお、フィルムの切断面を明確にするため、フィルムをエポキシ樹脂に包埋して、切断(切削)した。
【0258】
また、TEM用グリッド(コロジオン膜、カーボン支持膜)上に溶媒で希釈した有機無機複合粒子の粒子分散液(固形分濃度1質量%以下)を滴下して、乾燥し、透過型電子顕微鏡(TEM、H−7650、日立ハイテクノロジーズ社製)にて有機無機複合粒子を観察するとともに、画像解析によって、有機無機複合粒子の平均粒子径を算出した。
(5)光学顕微鏡による観察
上記したTEMによる観察と同様にして、光学顕微鏡によって、フィルム中の有機無機複合粒子の分散状態を観察した。
(6)透明性
多孔質フィルムの透明性を目視により観察して評価した。
(7)屈折率
プリズムカプラー(SPA−4000、SAIRON TECNOLOGY社製)を用いて多孔質フィルムの屈折率を測定した。
【0259】
具体的には、なお、多孔質フィルムをシリコンウエハ上に置いて測定した。
【0260】
また、波長633nmの光を用いてフィルムの屈折率を測定した。
(8)反射率
日立分光光度計 U−4100(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて多孔質フィルムの反射率(波長550nm)を測定した。
(8)誘電率
TR−100型誘電体損自動測定装置(安藤電気社製)を用いて多孔質フィルムの誘電率を測定した。誘電率は、周波数1MHzで測定した。
(10)破断伸び
引張試験機(商品名、STM−T−50BP、東洋ボールドウィン社製)を用いて多孔質フィルムの破断伸びを測定した。
【0261】
具体的には、多孔質フィルムを幅5mm、長さ100mmのサンプルを作製し、それを上記した引張試験機にて、チャック間距離50mm、引張り速度5mm/minで伸び率を測定した。
【0262】
(有機無機複合粒子の調製)
調製例1
5mLの高圧反応器(AKICO社製)に、無機原料としての水酸化セリウム(Ce(OH):和光純薬工業社製)と、有機化合物としてのデカン酸およびヘキサン酸と、水とを、表1に記載の配合量で仕込んだ。
【0263】
次に、高圧反応器の蓋を締め、振とう式加熱炉(AKICO社製)にて400℃に加熱し、高圧反応器内を40MPaに加圧して、10分間振とうすることにより水熱合成した。
【0264】
その後、高圧反応器を冷水中に投入することによって、急速冷却した。
【0265】
次いで、エタノール(和光純薬工業社製)を加えて攪拌し、遠心機(商品名:MX−301、トミー精工社製)にて、12000Gで20分間遠心分離して、沈殿物(反応物)を上澄みから分離した(洗浄工程)。この洗浄操作を5回繰り返した。その後、沈殿物中のエタノールを80℃で加熱乾燥して、酸化セリウム(CeO)の表面にデシル基およびヘキシル基が結合する有機無機複合粒子を得た。
【0266】
次いで、50mLの遠沈管に、上記で得られた有機無機複合粒子と、クロロホルムとを仕込み、遠心機(商品名:MX−301、トミー精工社製)にて、4000Gで5分間遠心分離して、上澄みと沈殿物に分離させた(湿式分級)。
【0267】
次いで、上澄みを取り出し、これを乾燥させることによって、平均粒子径が小さい有機無機複合粒子を得た。
【0268】
その後、得られた有機無機複合粒子について、上記のXRD、FT−IR、DLSおよびTEMをそれぞれ評価した。
【0269】
その結果、XRDでは、無機粒子を形成する無機物がCeOであることを確認した。
【0270】
また、FT−IRでは、無機粒子の表面に飽和脂肪族基(デシル基およびヘキシル基)が存在していることを確認した。
【0271】
さらに、DLSでは、有機無機複合粒子の平均粒子径は、7nmであった。
【0272】
上記の結果を、表1に示す。
【0273】
【表1】

なお、表1中、「*」で特記される事項を以下に説明する。
*1:XRDにて組成を確認した。
*2:有機基をFT−IRにて確認した。
*3:平均粒子径をTEMにて測定した。但し、括弧内の数値は、DLSにて測定した結果を示す。
【0274】
調製例2〜6
表1の記載に準拠して、無機原料、有機化合物および水(あるいはpH調整水溶液)の配合処方(配合量)を変更した以外は、調製例1と同様にして、有機無機複合粒子を調製し、続いて、洗浄および湿式分級した。
【0275】
その後、得られた有機無機複合粒子について、調製例1と同様に評価した。それらの結果を、表1に示す。
【0276】
比較調製例1〜6
未処理の(つまり、高温処理していない)無機粒子を、比較調製例1〜6の無機粒子として用意し、後述する比較例1〜12の無機粒子として供した(表4参照)。
【0277】
(粒子含有樹脂組成物の調製、フィルムの作製、および、多孔質フィルムの作製)
実施例1
ポリエーテルイミド樹脂(型番:ウルテム1000、SABICイノベーティブプラスチックジャパン社製)とクロロホルムとを配合して、固形分濃度10質量%の樹脂溶液を調製した。
【0278】
また、調製例5の有機無機複合粒子(無機物:SrCO、有機基:6−フェニルヘキシル基)とクロロホルムとを配合して、固形分濃度10質量%の粒子分散液を調製した。
【0279】
次いで、樹脂溶液と粒子分散液とを、樹脂と有機無機複合粒子との配合割合が表2に記載の配合割合となるように配合し、超音波分散機を用いて、それらを攪拌した。これにより、透明な粒子含有樹脂組成物のワニスを調製した。
【0280】
次いで、得られたワニスを、スピンコート法によって、基材(ガラス基板、厚み1100μm)の上に塗布した。なお、クロロホルムは、塗布中にほとんど揮発した。
【0281】
その後、塗布された粒子含有樹脂組成物を、50℃で、1時間、乾燥(1段階目の乾燥)し、続いて、100℃で、10分間、乾燥(2段階目の乾燥)することにより、厚み15μmのフィルム(粒子含有樹脂成形体)を作製した。
【0282】
その後、得られたフィルムについて、上記のTEM(有機無機複合粒子の分散状態および平均粒子径)を評価した。それらの結果を表1(平均粒子径)および表2に示す。
【0283】
その後、得られたフィルムを基材から剥離し、続いて、表2に記載の抽出条件で有機無機複合粒子を樹脂中から抽出した。
【0284】
なお、この抽出では、抽出溶媒である硝酸エタノール溶液が、樹脂に浸透し、有機無機複合粒子を溶解した。
【0285】
これにより、樹脂中に微細孔が形成され、かかる微細孔を有する多孔質フィルム(樹脂成形体)を得た。
【0286】
その後、得られた多孔質フィルムについて、上記のTEM(厚み方向の濃度分布の有無)、透明性、屈折率、反射率、誘電率および破断伸びをそれぞれ評価した。それらの結果を表2に示す。
【0287】
実施例2〜15および比較例1〜12
表2〜4の記載に準拠して、樹脂溶液および粒子分散液の配合処方を変更した以外は、実施例1と同様にして、フィルムを作製し、続いて、表2〜表4の記載に準拠して、有機無機複合粒子を抽出することにより、多孔質フィルムを得た。
【0288】
なお、実施例8および9については、フィルムを基材から剥離することなく、フィルムを基材とともに抽出溶媒に浸漬した。
【0289】
また、比較例5〜12は、多孔質フィルムを基材から剥離する際、著しく破損してしまい、可撓性がなく、自立した多孔質フィルムとして得ることができなかった。
【0290】
得られたフィルム(抽出前のフィルム(粒子含有樹脂成形体))および多孔質フィルムについて、上記と同様に各評価事項を測定した。
【0291】
また、実施例6、7および13のTEM写真の画像処理図を図1〜図3にそれぞれ示す。
【0292】
【表2】

【0293】
【表3】

【0294】
【表4】

表2〜表4において、有機無機複合粒子の欄の数値は、粒子分散液における有機無機複合粒子の配合質量部数を示し、樹脂の欄の数値は、樹脂溶液における樹脂の配合質量部数を示す。
【0295】
また、表2〜表4に記載される樹脂、および、表4に記載される比較調製例1〜6の無機粒子の詳細を以下に記載するとともに、「*」で特記される事項を以下に記載する。
<樹脂>
ポリエーテルイミド樹脂:「ウルテム1000」、屈折率(波長633nm):1.63、反射率(波長550nm):7%、誘電率:3.2、SABICイノベーティブプラスチックジャパン社製
熱可塑性フッ素系ポリイミド樹脂:特開2003−315541号公報の実施例1の熱可塑性フッ素系ポリイミド樹脂、屈折率(波長633nm):1.52、反射率(波長550nm):5%、誘電率:2.8
ポリアリレート:特開2009−80440号公報の実施例4のポリアリレート樹脂、屈折率(波長633nm):1.49、反射率(波長550nm):5%、誘電率:3.0<無機粒子(比較例調製例1〜6)>
CeO:比較調製例1、平均粒子径200nm、高純度化学研究所社製
ZnO:比較調製例2、平均粒子径200nm、堺化学工業社製
TiO:比較調製例3、商品名「SSP−25」、平均粒子径9nm、堺化学工業社製SrCO:比較調製例4、平均粒子径200nm、本荘ケミカル社製
BaSO:比較調製例5、商品名「BF40」、平均粒子径10nm、堺化学工業社製
Al:比較調製例6、商品名「AEROXIDO@AluC」、平均粒子径15nm、日本アエロジル社製
<特記事項(*4〜*9)>
*4:固形分濃度10質量%の粒子分散クロロホルム液として調製。数値は、固形分質量部数。
*5:固形分濃度10質量%の樹脂溶液として調製。数値は、固形分質量部数。
*6:1mol/L(6.3重量%)硝酸水溶液50質量部と、エタノール50部とを混合することにより調製した、濃度3.2質量%の硝酸エタノール溶液。
*7:計算により算出した屈折率であり、表面の屈折率が1.39であり、内部の屈折率が1.49であることを示す。
*8:計算により算出した屈折率であり、露出面の屈折率が1.41であり、基材側面の屈折率が1.49であることを示す。
*9:TEMまたは光学顕微鏡の写真から判断した。
*10:目視で以下の基準で判断した。
【0296】
○:透明であった。
【0297】
×:不透明であった。
*11:以下の基準で破断伸びを評価した。
【0298】
○:伸び率が10%以上であった。
【0299】
×:伸び率が10%未満であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、
無機粒子と、前記無機粒子の表面に結合する有機基とを含有し、前記の立体障害により、前記無機粒子が互いに接触しない形状を有している有機無機複合粒子と
を含有する粒子含有樹脂成形体から、前記有機無機複合粒子を除去することにより形成される微細孔を有する
ことを特徴とする、樹脂成形体。
【請求項2】
前記有機無機複合粒子の最大長さの平均値が、400nm以下であることを特徴とする、樹脂成形体。
【請求項3】
前記粒子含有樹脂成形体において、前記有機無機複合粒子が、前記樹脂中に1次粒子で分散している
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の樹脂成形体。
【請求項4】
前記粒子含有樹脂成形体は、
前記樹脂からなる樹脂相、および、
前記有機無機複合粒子からなり、前記樹脂相から相分離する粒子相
から形成される相分離構造を有する
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の樹脂成形体。
【請求項5】
前記相分離構造は、前記粒子相が三次元的に連続する共連続相分離構造であることを特徴とする、請求項4に樹脂成形体。
【請求項6】
前記有機無機複合粒子が部分的に残存していることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂成形体。
【請求項7】
前記有機無機複合粒子の残存率が、前記樹脂成形体の一方に向かうに従って高いことを特徴とする、請求項6に記載の樹脂成形体。
【請求項8】
前記有機基は、互いに異なる複数の有機基を含有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の樹脂成形体。
【請求項9】
無機粒子と、前記無機粒子の表面に結合する有機基とを含有し、前記有機基の立体障害により、前記無機粒子が互いに接触しない形状を有している有機無機複合粒子を調製する工程、
前記有機無機複合粒子と樹脂とを配合して、粒子含有樹脂組成物を調製して、前記粒子含有樹脂組成物から粒子含有樹脂成形体を形成する工程、および、
前記粒子含有樹脂成形体から、前記有機無機複合粒子を除去することにより形成される微細孔を形成する工程
を備えることを特徴とする、樹脂成形体の製造方法。
【請求項10】
前記有機無機複合粒子を調製する工程では、
無機原料を、高温高圧の水中下、有機化合物で表面処理する
ことを特徴とする、請求項9に記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項11】
前記有機無機複合粒子を調製する工程では、
無機原料を、高温の有機化合物中で表面処理することを特徴とする、請求項9に記載の樹脂成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−236412(P2011−236412A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86803(P2011−86803)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】