説明

樹脂被膜のトリミング方法

【課題】トリミング後の樹脂被膜の耳部のリサイクルを可能とし、更に、冷えると脆い樹脂系でも容易にトリミングでき、しかも、ラミネート板の両側の樹脂被膜部分を薄くして、上記ラミネート板の使用効率の向上を図ることができる樹脂被膜のトリミング方法を提供する。
【解決手段】基材10に樹脂をラミネートする際に発生する樹脂被膜16の耳部17のトリミング方法であって、基材の少なくとも片面に、基材幅Kよりも広幅のTダイ15から溶融樹脂Rを押し出して一対のコータロール11間を通し、コータロールの表面には筒状の弾性体14が装着され、弾性体を介して樹脂被覆基材を挟むとともに樹脂被膜の耳部に引き離し力を付与して、耳部が冷えない内にトリミングを行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の表面にTダイを用いて樹脂を押し出しラミネートして樹脂被膜を形成する際に発生する耳部のトリミングを行う樹脂被膜のトリミング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、金属板の表面に樹脂被膜を形成したラミネート板の製造に際しては、ネックイン現象で厚くなった樹脂被膜の両端部分の処置について、上記ラミネート板の両側に耳部として形成した後に必要最小限の金属板と共にトリミングをしたり、或いは耳部を生じないように金属基材幅を十分に広くして樹脂被膜のラミネートを行った後に相当量の基材幅と共にトリミングを行っていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前者の場合はトリミング工程に至るパス中に耳部の脱落や基材への巻き込み付着が生じやすい問題があり、一方、後者の場合は樹脂被膜が厚い部分は使用できないために金属板の使用効率が悪くなるという問題がある。また何れも、トリミングされた樹脂被膜が金属板と一体化しているためトリミングした樹脂被膜のリサイクルができないといった問題があった。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、トリミング後の樹脂被膜の耳部のリサイクルを可能とし、更に、冷えると脆い樹脂系でも容易にトリミングでき、しかも、ラミネート板の両側の樹脂被膜部分を薄くして、上記ラミネート板の使用効率の向上を図ることができる樹脂被膜のトリミング方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の請求項1の樹脂被膜のトリミング方法は、基材に樹脂をラミネートする際に発生する樹脂被膜の耳部のトリミング方法であって、基材の少なくとも片面に、基材幅よりも広幅のTダイから溶融樹脂を押し出して一対のコータロール間を通し、コータロールの表面には筒状の弾性体が装着され、上記弾性体を介して樹脂被覆基材を挟むとともに樹脂被膜の耳部に引き離し力を付与して、上記耳部が冷えない内にトリミングを行うことを特徴とする。
請求項2の樹脂被膜のトリミング方法は、請求項1において、上記コータロールの下流に一対のガイドベルトを配置し、基材の通板速度V1と該ガイドベルトの周速V2との関係を等速度としないで、上記耳部に引き離し力を付与することを特徴とする。
請求項3の樹脂被膜のトリミング方法は、請求項2において、上記ガイドベルトを、基材の通板方向に対して所定角度θ傾斜させて配置し、トリミングした樹脂被膜の耳部を挟み込んで外部へ排出するようにしたことを特徴とする。
請求項4の樹脂被膜のトリミング方法は、請求項1において、コータロール及びベルト装着ロールとの間に装着された一対のガイドベルトの下流に、一対の排出ベルトを配置し、基材の通板速度V1と該排出ベルトの周速V3との関係をV1<V3として上記耳部に引き離し力を付与することを特徴とする。
請求項5の樹脂被膜のトリミング方法は、請求項4において、上記排出ベルトを、基材の通板方向に対して所定角度θ傾斜させて配置し、トリミングした樹脂被膜の耳部を挟み込んで外部へ排出するようにしたことを特徴とする。
請求項6の樹脂被膜のトリミング方法は、請求項1において、上記樹脂被膜の耳部を、コータロールの下流に配置したブロアにより吸引し、基材の通板方向に対して所定角度θ傾斜させ、基材の通板速度V1とトリミングされる樹脂被膜の耳部の速度V4との関係をV1<V4として、上記耳部に引き離し力を付与することを特徴とする。
請求項7の樹脂被膜のトリミング方法は、請求項1において、上記樹脂被膜の耳部を、コータロールの下流に配置したガイドロールで挟み込み、基材の通板方向に対して所定角度θ傾斜させ、基材の通板速度V1と該ガイドロールの周速V4との関係をV1<V4として、上記耳部に引き離し力を付与することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、樹脂被膜の耳部のトリミングにおいて、トリミングが容易、確実、且つ円滑に行われる。
また、トリミング後の樹脂被膜のリサイクルを可能とし、更に、冷えると脆い樹脂系でも容易にトリミングでき、しかも、ラミネート板の両側の樹脂被膜部分を薄くして、上記ラミネート板の使用効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて具体的に説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る樹脂被膜のトリミング方法の斜視図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係る樹脂被膜のトリミング方法の略式側面図である。図3は、本発明の第1の実施形態に係る、中心線より右側の樹脂被膜のトリミング状態を示す概略断面図である。図4は、本発明の第1の実施形態に係る、中心線より右側の樹脂被膜の他のトリミング状態を示す概略断面図である。図5は、本発明の第2の実施形態に係る樹脂被膜のトリミングの側面概略図である。図6は、本発明の第2の実施形態に係る樹脂被膜のトリミングの他の側面概略図である。図7は、本発明の第3の実施形態に係る樹脂被膜のトリミングの側面概略図である。図8は、本発明の第3の実施形態に係る樹脂被膜のトリミングの他の側面概略図である。図9は、本発明の第4の実施形態に係る樹脂被膜のトリミングの側面概略図である。図10は、本発明の第3及び第4の実施形態に係る、中心線より右側の樹脂被膜の他のトリミング状態を示す概略断面図である。図11は、本発明の第3及び第4の実施形態に係る、中心線より右側の樹脂被膜の他のトリミング状態を示す概略断面図である。図12は、本発明の第3及び第4の実施形態に係る、中心線より右側の樹脂被膜のトリミング状態を示す概略説明図である。図13は、本発明の第5の実施形態に係る樹脂被膜のトリミングの概略側面図である。図14は、本発明の第6の実施形態に係る樹脂被膜のトリミングの概略側面図である。図15は、本発明の他の形態の変形例に係る樹脂被膜のトリミングの概略側面面である。
【0007】
[第1の実施形態]
図1乃至図3に基づいて本発明の第1の実施形態を説明する。図1及び図2に示すように、通板される金属板10の両表面に向けてTダイ15から溶融樹脂Rを押し出しながら、金属板10を一対のコータロール11間に通すことによって、上記金属板10の両表面に樹脂被膜16をラミネートする。その後、樹脂被膜16の両側縁に形成される耳部17を、上記耳部が冷えない内にトリミングを行い、トリミングされた耳部17を回転駆動するガイドベルト19によって挟み込んで外部へ排出する。ここで、冷えない内とは、樹脂被膜の種類によってその温度が異なるが、固化しない温度であればよい。この時、トリミングされる耳部17、より詳細には基材端部近傍の耳の切断される部分の温度が、例えば樹脂被膜がポリエステル樹脂であれば(Tg−20℃)以上の状態時にトリミングを行うのが、トリミングを容易かつ確実に行う点で好ましく、上記温度未満ではニップ力や引き離し力によるトリミングが困難になり、かつ、その後の耳の引き取り時に耳が切れ易くなり好ましくない。
【0008】
本実施形態では、図1及び図2に示すように、垂直方向に通板される基材の一例である金属板10の両表面側には、一対の長尺のコータロール11が、金属板10を挟む状態で配置されている。コータロール11は、図2及び図3に示すように、長尺のロール本体12の表面に、両端部を形成するベルト装着部13を残して筒状の弾性体14が装着されている。そして、この弾性体14を介して、金属板10は一対のコータロール11によって弾性的に圧着された状態で挟まれる。
【0009】
一方、図1及び図2に示すように、一対のコータロール11の上方(上流)には、それぞれ溶融樹脂Rを押し出し可能な一対のTダイ15が配設されている。そして、これらのTダイ15から溶融樹脂Rをそれぞれコータロール11と金属板10の対応する表面間に形成されるニップ部に押し出し、その後、一対のコータロール11で溶融樹脂Rを金属板10に圧着することによって、金属板10の両表面に樹脂被膜16を形成してラミネート板10Aを製造する。
尚、この際、Tダイ15から溶融樹脂Rの膜幅が金属板10の幅よりも広くなるように、Tダイ15の幅を設定することにより、樹脂被膜16の耳部17は図3示すように、弾性体14の両端に設けたベルト装着部13に装着されたガイドベルト19間に位置することになる。
【0010】
また、図1及び図2示すように、垂直方向に通板される基材の一例である金属板10の両側であって、一対の長尺コータロール11から下方(下流)の所定距離の位置に一対のベルト装着ロール18が金属板10の両面に接触しないように離して配設されており、トリミングされた樹脂被膜16の耳部17のコータロール11への巻き付きを防止しながら排出を行う。
尚、図示しないが、基材幅方向の一対のベルト装着ロール18を、コータロール11のように長尺のロール形態としても良い。
【0011】
さらに、図1及び図3に示すように、コータロール11の弾性体14の表面より逃げて段差を形成するように、一対のガイドベルト19がそれぞれ上記コータロール11の両端部のベルト装着部13とベルト装着ロール18に装着されている。
各ガイドベルト19は、それぞれ金属板10の両側縁に沿って平行に配設されており、その上下端部は、それぞれコータロール11の両端部のベルト装着部13及びベルト装着ロール18に巻着されている。
【0012】
本実施形態では図3に示すように、金属板10の幅(即ち、基材幅K)とコータロール11上の弾性体14の幅Lとの関係を、基材幅K<弾性体14の幅(弾性体幅L)とした場合のトリミング状態を示し、樹脂被膜16の耳部17を、金属板10のエッジ部及びコータロール11の弾性体14のニップ圧Plで剪断してトリミングする。
【0013】
また、本実施形態では図4に示すように、金属板10の幅(基材幅K)とコータロール11上の弾性体14の幅Lとの関係を、基材幅K>弾性体14の幅(弾性体幅L)とし、樹脂被膜16の耳部17を、金属板10のエッジ部及びガイドベルト19のニップ圧P2で剪断してトリミングを行っても良い。
このように、金属板のエッジを利用してトリミングを行っても、基材端部直近で連続かつ安定的に樹脂耳を取り除くことが可能である。
また、このようにトリミングを行うことにより、基材との干渉の危険があるナイフや回転刃等を用いなくても、基材端部直近で連続かつ安定的に樹脂耳を取り除くことが可能となる。
【0014】
[第2の実施形態]
図5は本発明の第2の実施形態を示し、樹脂被膜16の耳部17のトリミングに際して、基材10の通板速度V1とガイドベルト19の周速V2との関係を等速度としないで、トリミング時に、金属板から被膜を引き剥がす引き離し力を付与して樹脂被膜16の耳部17のトリミングを行う。
【0015】
尚、本実施形態においては、図6に示すように、一対のガイドベルト19を金属板10の通板方向に対して所定角度θ(傾斜角度)傾斜させて、この傾斜状態のガイドベルト19間にトリミングされた樹脂被膜16の耳部17を挟み込んで外部へ排出するようにしても良い。
上記したように、ガイドベルト19を傾斜させることにより、トリミングとほぼ同時に樹脂被膜16の耳部17の排出が開始される共に、トリミング後の上記耳部17が金属板10の通板方向から離隔した方向に案内されるため、一旦切り離した上記耳部17がラミネート板10Aに再付着したりコータロール11に巻き付くことなく、円滑、且つ確実に外部へ排出することができる。
【0016】
[第3の実施形態]
図7は本発明の第3の実施形態を示し、コータロール11で基材10に樹脂被膜16をラミネートした後、上記コータロール11の下方(下流)にガイドベルト19を配置し、上記ガイドベルト19で樹脂被膜16の耳部17のトリミングを行うものである。そして、この時の基材10の通板速度V1とガイドベルト19の周速V2との関係を等速度としないで、引き離し力を付与することによりトリミングを行う。尚、本実施形態においては図8に示すように、コータロール11の下方に配置した一対のガイドベルト19を、金属板10の通板方向に対して所定角度θ傾斜させて、トリミングした樹脂被膜16の耳部17を挟み込んで外部へ排出するようにしても良い。
【0017】
[第4の実施形態]
図9は、本発明の第4の実施形態を示し、本実施形態ではコータロール11及びガイドベルト19の下方に、一対の排出ベルト20を金属板10の通板方向に対して所定角度θ傾斜させて配置し、また、金属板10の通板速度V1と排出ベルト20の周速V3と関係をV1<V3とする。
この結果、本実施形態においては、コータロール11で基材10に樹脂被膜16をラミネートして上記樹脂被膜16の耳部17をガイドベルト19で案内した後、排出ベルト20の引き離し力によってトリミングが行われる。尚、排出ベルト20は所定角度θ傾斜させなくても良いが、トリミング後の耳部17のガイドロールへの巻き付きを防止し、円滑、且つ確実に外部へ排出する点で、所定角度θ傾斜させることが好ましい。
【0018】
図10乃至図12は、上述した第3及び第4の実施形態の引き離し力を付与してトリミングを行う際のトリミング状態を示す参考図である。図10に示す状態は、ガイドロール18のロールエッジ、即ち上記ガイドロール18の弾性体21の端縁31で樹脂被膜16の耳部17の近傍を押さえ付けながらトリミングする場合を示す。一方、図11に示す状態は、上記の耳部17を基材10のエッジでトリミングする場合を示し、いずれの場合も引き離し力の付与によってトリミングが行われている。
【0019】
尚、この場合、図12に示すように、図7及び図8で示した第3の実施形態においては一対のガイドベルト19を、また、図9で示した第4の実施形態においては一対の排出ベルト20を、金属板10の幅方向外方に離して配置するのが、引き離し力を付与して樹脂被膜16の耳部17のトリミングを容易に、確実、且つ円滑に行う点で好ましい。また、当初は接近させておいて、次第に離間させる方法も考えられる。
【0020】
[第5の実施形態]
図13は本発明の第5の実施形態を示し、樹脂被膜16の耳部17を、上記コータロールの下方配置したブロア(バキュームダクト)22により吸引し、金属板10の通板方向に対して所定角度θ傾斜させた状態で吸引、排出を行う。この時、基材の通板速度V1或いはブロア22の吸引を調整して、基材10の通板速度V1とトリミングされる樹脂被膜16の耳部17の速度V4との関係をV1<V4とし、引き離し力を付与することにより、上記耳部17のトリミングを行うことができる。
【0021】
[第6の実施形態]
図14は本発明の第6の実施形態を示し、上述した第5の実施形態と同様に樹脂被膜16の耳部17を、コータロールの下方配置したガイドロール(ニップロール)23で挟み込み、金属板10の通板方向に対して所定角度θ傾斜させた状態で引っ張り、排出を行う。この時、基材の速度V1とガイドロール23の周速を調整して、基材10の通板速度V1とトリミングされる樹脂被膜16の耳部17の速度V4との関係を、上述した第5の実施形態と同様にVl<V4とする。
【0022】
尚、上述した第2乃至第6の実施形態においては、第1の実施形態との併用が可能である。即ち、樹脂被膜16の耳部17のトリミングを、金属板10のエッジ部及びコータロール11の弾性体14のニップ圧Pl、ガイドベルト19のニップ圧P2、基材10の速度V1とガイドベルト19の周速V2とが等速度でないこと、排出ベルト20の周速V3、或いは樹脂被膜16の耳部の速度V4、等に起因する引き離し力を併用して行うことにより、上記耳部17のトリミングを行うことができる。
【0023】
以上、本発明に係る樹脂被膜のトリミング方法及び装置を、第1乃至第6の実施形態を参照して説明したが、本発明は、これらの実施形態に何ら限定されるものではなく、その他の実施形態や変形例が考えられる。例えば、上述した第1乃至第4の実施形態において、第5及び第6の実施形態で述べたブロア、バキュームダクト、ガイドロール、ニップロール等を、ガイドベルト或いは排出ベルトの下方(下流)に設けて、トリミング後の樹脂被膜の耳部を回収しても良い。また、図15に示すように、Tダイ15を、基材である金属板10の片面のみに樹脂をラミネートするように設け、上記金属板10の片面に樹脂被膜を形成する場合のトリミングにも適用できることは言うまでもない。
【0024】
なお、本発明で用いる素材を以下に説明する。
[基材]
本発明において用いられる基材として金属素材を用いることが望ましいが、金属基材としては各種の表面処理鋼板、軽金属板、金属箔等を用いることが好ましい。
【0025】
表面処理鋼板としては、冷延鋼板に亜鉛メッキ、錫メッキ、ニッケルメッキ、電解クロム酸処理、クロム酸処理等の表面処理の一種または二種以上行ったものを用いることができる。好適な表面処理鋼板の一例は、電解クロム酸処理鋼板であり、特に10〜200mg/mの金属クロム層と、金属クロム換算で1〜50mg/mのクロム水和酸化物層とを備えたものであり、塗膜密着性と耐腐食性との組合せに優れている。表面処理鋼板の他の例は、0.6〜11.2g/mの錫メッキ量を有するブリキ板である。このブリキ板は、表面に金属クロム換算で、クロム量が1〜30mg/mとなるようなクロム酸処理又はクロム酸/リン酸処理が行われていることが望ましい。また、アルミニウムメッキ、アルミニウム圧接等を施したアルミニウム被覆鋼板も用いることができる。
【0026】
金属板としては、純アルミニウム板の他にアルミニウム合金板の軽金属板も使用される。耐腐食性と加工性との点で優れたアルミニウム合金板は、Mn:0.2〜1.5重量%、Mg:0.8〜5重量%、Zn:0.25〜0.3重量%、及びCu:0.16〜0.26重量%、残部がAlの組成を有するものである。これらの金属板も、金属クロム換算で、クロム量が20〜300mg/mとなるようなクロム酸処理又はクロム酸/リン酸処理が行われていることが望ましい。
【0027】
金属板の厚みは、一般に0.10〜0.50mmの厚みのものが好ましく、この内でも表面処理鋼板の場合には、0.10〜0.30mmの厚み、また軽金属板の場合には0.15〜0.40mmの厚みを有するものが好ましい。勿論、金属の種類、ラミネート材の用途やサイズによっても相違することは考慮が必要である。
【0028】
金属素材には、接着プライマー層を形成しておくこともできる。プライマーは、金属素材と熱可塑性樹脂との両方に優れた接着性を示すものが必要である。プライマー塗料の例としては、種々のフェノール類とホルムアルデヒドから誘導されるレゾール型フェノールアルデヒド樹脂と、ビスフェノール型エポキシ樹脂とから成るフェノールエポキシ系塗料であり、特にフェノール樹脂とエポキシ樹脂とを50:50〜5:95重量比、特に40:60〜10:90の重量比で含有する塗料が好ましく適用できる。接着プライマー層は、0.3〜5μm程度の厚みが密着性等の観点から好ましい。
【0029】
[樹脂]
前記基材に被覆する樹脂としては熱可塑性樹脂を用いることが望ましいが、熱可塑性樹脂としては、押出成形可能で成膜性を有するものであればよい。例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンあるいはエチレン、ピロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフイン同士のランダムあるいはブロック共重合体等のポリオレフイン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体等のエチレン・ビニル化合物共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS、α−メチルスチレン・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリビニル化合物、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフエニレンオキサイド等あるいはそれらの混合物のいずれかの樹脂が適用できる。
【0030】
皮膜物性、加工性、耐食性等の観点から特に好適な熱可塑性樹脂として、熱可塑性ポリエステル乃至共重合ポリエステル、そのブレンド物、或いはそれらの積層体を挙げることができる。中でもエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルが好適である。 原料ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートの使用が可能であるが、最高結晶化度を下げることがラミネートの耐衝撃性や加工性の点で望ましいことから、ポリエステル中にエチレンテレフタレート以外の共重合エステル単位を導入することも好ましい。
【0031】
エチレンテレフタレート単位を主体とし、他のエステル単位の少量を含む融点が210〜252℃の共重合ポリエステルを用いることが特に好ましい。尚、ホモポリエチレンテレフタレートの融点は一般に255〜265℃である。
【0032】
一般に、共重合ポリエステル中の二塩基酸成分の70モル%以上、特に75モル%以上がテレフタル酸成分から成り、ジオール成分の70モル%以上、特に75モル%以上がエチレングリコールから成り、二塩基酸成分及び/又はジオール成分の1〜30モル%、特に5〜25%がテレフタル酸以外の二塩基酸成分及び/又はエチレングリコール以外のジオール成分から成ることが好ましい。
【0033】
テレフタル酸以外の二塩基酸としては、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸:シクロへキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸:コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸:の1種又は2種以上の組合せが挙げられ、エチレングリコール以外のジオール成分としては、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6−へキシレングリコール、シクロへキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の1種又は2種以上が挙げられる。
これらのコモノマーの組合せは、共重合ポリエステルの融点を前記範囲とするものでなければならない。また、トリメリット酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール等の多官能性単量体を組み合わせで用いることもできる。
【0034】
用いるポリエステルは、フィルムを形成するに足る分子量を有するべきであり、このためには固有粘度(I.V.)が0.55〜1.9dl/g、特に0.65〜1.4dl/gの範囲にあるものが望ましい。
【0035】
上記熱可塑性樹脂の被覆層には、金属板を隠蔽し、また絞り−再絞り成形時等に金属板へのしわ押え力の伝達を助ける目的で無機フイラー(顔料)を含有させることができる。また、このフィルムにはそれ自体公知のフィルム用配合剤、例えば非晶質シリカ等のアンチブロッキング剤、各種帯電防止剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を公知の処方に従って配合することができる。
【0036】
無機フイラーとしては、ルチル型またはアナターゼ型の二酸化チタン、亜鉛華、グロスホワイト等の無機白色顔料;バライト、沈降性硫酸バライト、炭酸カルシウム、石膏、沈降性シリカ、エアロジル、タルク、焼成或は未焼成クレイ、炭酸バリウム、アルミナホワイト、合成乃至天然のマイカ、合成ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の白色体質顔料;カーボンブラック、マグネタイト等の黒色顔料;ベンガラ等の赤色顔料;シエナ等の黄色顔料;群青、コバルト青等の青色顔料を挙げることができる。これらの無機フイラーは、樹脂当り10〜500重量%、特に10〜300重量%の割合で配合させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上説明したように、本発明によれば、樹脂被膜の耳部のトリミングにおいて、トリミングが容易、確実、且つ円滑に行われる。 また、トリミング後の樹脂被膜のリサイクルを可能とし、更に、冷えると脆い樹脂系でも容易にトリミングでき、しかも、ラミネート板の両側の樹脂被膜部分を薄くして、上記ラミネート板の使用効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る樹脂被膜のトリミング方法の斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る樹脂被膜のトリミング方法の略式側面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る、中心線より右側の樹脂被膜のトリミング状態を示す概略断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る、中心線より右側の樹脂被膜の他のトリミング状態を示す概略断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る樹脂被膜のトリミングの側面概略図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る樹脂被膜のトリミングの他の側面概略図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る樹脂被膜のトリミングの側面概略図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る樹脂被膜のトリミングの他の側面概略図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る樹脂被膜のトリミングの側面概略図である。
【図10】本発明の第3及び第4の実施形態に係る、中心線より右側の樹脂被膜の他のトリミング状態を示す概略断面図である。
【図11】本発明の第3及び第4の実施形態に係る、中心線より右側の樹脂被膜の他のトリミング状態を示す概略断面図である。
【図12】本発明の第3及び第4の実施形態に係る、中心線より右側の樹脂被膜のトリミング状態を示す概略説明図である。
【図13】本発明の第5の実施形態に係る樹脂被膜のトリミングの概略側面図である。
【図14】本発明の第6の実施形態に係る樹脂被膜のトリミングの概略側面図である。
【図15】本発明の他の形態の変形例に係る樹脂被膜のトリミングの概略側面面である。
【符号の説明】
【0039】
10…金属板(基材)、
10A…ラミネート板、
11…コータロール、
12…ロール本体、
13…ベルト装着部、
14…弾性体、
15…Tダイ、
16…樹脂被膜、
17…耳部、
18…ベルト装着ロール、
19…ガイドベルト、
20…排出ベルト、
21…ブロア、
22…ガイドロール、
23…ガイドロール、
R…溶融樹脂、
θ…傾斜角度、
K…基材幅、
L…弾性体幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に樹脂をラミネートする際に発生する樹脂被膜の耳部のトリミング方法であって、基材の少なくとも片面に、基材幅よりも広幅のTダイから溶融樹脂を押し出して一対のコータロール間を通し、コータロールの表面には筒状の弾性体が装着され、上記弾性体を介して樹脂被覆基材を挟むとともに樹脂被膜の耳部に引き離し力を付与して、上記耳部が冷えない内にトリミングを行うことを特徴とする樹脂被膜のトリミング方法。
【請求項2】
上記コータロールの下流に一対のガイドベルトを配置し、基材の通板速度V1と該ガイドベルトの周速V2との関係を等速度としないで、上記耳部に引き離し力を付与することを特徴とする請求項1に記載の樹脂被膜のトリミング方法。
【請求項3】
上記ガイドベルトを、基材の通板方向に対して所定角度θ傾斜させて配置し、トリミングした樹脂被膜の耳部を挟み込んで外部へ排出するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の樹脂被膜のトリミング方法。
【請求項4】
コータロール及びベルト装着ロールとの間に装着された一対のガイドベルトの下流に、一対の排出ベルトを配置し、基材の通板速度V1と該排出ベルトの周速V3との関係をV1<V3として上記耳部に引き離し力を付与することを特徴とする請求項1に記載の樹脂被膜のトリミング方法。
【請求項5】
上記排出ベルトを、基材の通板方向に対して所定角度θ傾斜させて配置し、トリミングした樹脂被膜の耳部を挟み込んで外部へ排出するようにしたことを特徴とする請求項4に記載の樹脂被膜のトリミング方法。
【請求項6】
上記樹脂被膜の耳部を、コータロールの下流に配置したブロアにより吸引し、基材の通板方向に対して所定角度θ傾斜させ、基材の通板速度V1とトリミングされる樹脂被膜の耳部の速度V4との関係をV1<V4として、上記耳部に引き離し力を付与することを特徴とする請求項1に記載の樹脂被膜のトリミング方法。
【請求項7】
上記樹脂被膜の耳部を、コータロールの下流に配置したガイドロールで挟み込み、基材の通板方向に対して所定角度θ傾斜させ、基材の通板速度V1と該ガイドロールの周速V4との関係をV1<V4として、上記耳部に引き離し力を付与することを特徴とする請求項1に記載の樹脂被膜のトリミング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−231515(P2006−231515A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−109219(P2006−109219)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【分割の表示】特願2000−319698(P2000−319698)の分割
【原出願日】平成12年10月19日(2000.10.19)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【出願人】(390003193)東洋鋼鈑株式会社 (265)
【Fターム(参考)】