説明

樹脂被覆パイプ

【課題】合成樹脂製の被覆層を容易に切り裂くことができ、パイプ材から被覆層を剥がす作業が容易となる被覆樹脂パイプを提供する。
【解決手段】適宜長さのパイプ材1の少なくとも一端に、パイプ材1の外形と略等しい栓体2が嵌挿され、パイプ材1の外周側面から栓体2の外周側面にかけて合成樹脂の被覆層3が形成され、さらにパイプ材1の外周側面と被覆層3との間に線状体4が設けられると共に、線状体4の端部は栓体2の外周側面と被覆層3との間に位置している様に樹脂被覆パイプPを構成すれば、栓体2の箇所をパイプ材1から抜き出し、栓体2の箇所を持って、線状体4を折り返すように引っ張ると、線状体4によって被覆層3が切り裂かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業資材や園芸資材として用いられる支柱等、合成樹脂で被覆された樹脂被覆パイプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、パイプの外周側面に合成樹脂を被覆してなる樹脂被覆パイプは、農業資材、園芸資材として用いられる支柱等として、広く用いられている。
【0003】
このような樹脂被覆パイプは、使用時に被覆樹脂が容易には剥がれないように施されているため、使用後は、パイプ材から被覆樹脂を剥がすことは容易ではなかった。そのため使用後は、そのまま産業廃棄物として廃棄されるか、或いは、分離機・粉砕機等の大型設備を用いて、パイプ材から被覆樹脂を剥がし、それぞれ分別廃棄、あるいはリサイクル材料として用いる等の処理がなされていた。この後者の処理方法では、樹脂被覆パイプを回収する必要があり、回収に手間がかかり、又、曲げ加工された樹脂被覆パイプは処理しにくい点に問題があった。
【0004】
そこで、パイプ材から被覆樹脂を分離しやすくするために、被覆樹脂部の長手方向に線状体を内包させた樹脂被覆パイプが提案されている。これにより、この線状体の端部を折り返すようにして引っ張ると、線状体によって被覆樹脂が切り裂かれるので、分離機・粉砕機等の大型設備がなくても、パイプ材から被覆樹脂を剥がすことができるものである。(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−79968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記の樹脂被覆パイプには次のような問題点があった。すなわち、線状体を引っ張るために線状体の端部を引き出す際、その付近にカッター等の刃物で切れ目を入れ、その箇所を摘み上げる必要があるため、作業が煩雑であり、又、摘みにくく、線状体を摘んでも強く引っ張りにくいという問題点があった。特に、樹脂被覆パイプの数量が多い場合には、この作業は非常に手間のかかるもであった。
【0007】
本発明は、前記の如き問題点を解消し、被覆樹脂を容易に切り裂くことができ、パイプ材から被覆樹脂を剥がす作業が容易となる被覆樹脂パイプを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわちこの発明に係る被覆樹脂パイプは、適宜長さのパイプ材の少なくとも一端に、パイプ材の外形と略等しい鍔部の一端にパイプ材の内形より小形の嵌挿部が形成されてなる合成樹脂製栓体の嵌挿部が嵌挿され、パイプ材の外周側面から鍔部の外周側面にかけて合成樹脂の被覆層が形成され、さらに前記パイプ材の外周側面と被覆層との間に線状体が設けられると共に、線状体の端部は鍔部の外周側面と被覆層との間に位置していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、パイプ材の外周側面と被覆層との間に線状体が設けられているので、線状体の端部を持って引っ張れば、被覆層を引き裂くことができるので、剥がす作業が容易であり、そしてパイプ材と被覆層とを分別することができる。
【0010】
又、パイプ材から栓体を外した際、パイプ材と栓体とは線状体を介して接続されているので、線状体の端部付近に切れ目を入れ、その端部を引き上げるような煩わしい作業をしなくても、この栓体を持って線状体を折り返すように引っ張れば、線状体により被覆層が切り裂かれるので、被覆層をパイプ材から剥がす作業が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照し、具体的に説明する。
【0012】
すなわち、図1は本発明に係る被覆樹脂パイプの実施の一形態を示す斜視図である。被覆樹脂パイプPは、パイプ材1と、パイプ材1の端部に取付けられる栓体2と、パイプ材1及び栓体2を被覆する被覆層3と、パイプ材1及び栓体2と、被覆層3との間に設けられた線状体4とから主に構成されている。
【0013】
パイプ材1としては、一般的には、強度が高く安価な鋼管が好適に用いられるが、アルミニウム合金やステンレス鋼等の他の金属、あるいは、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ABS、AAS、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、FRP等の合成樹脂からなる管状体を用いてもよい。更に、パイプ材1の断面形状は、円形、楕円形、多角形等特に限定されるものではないが、断面が真円形状のものが好適に使用される。
【0014】
栓体2は、合成樹脂から形成されたものであり、図2に示すように、鍔部21と嵌挿部22とからなり、鍔部21はパイプ材1の断面外形と略等しい形状となされ、嵌挿部22は鍔部21の一端面より長手方向に突設されている。本形態では、この嵌挿部22は、パイプ材1の内形とほぼ同じ外形となされ、先端に向かい縮径され小形となされている。これにより、嵌挿部22をパイプ材1に挿入する際に、円滑に嵌挿することができ、又、パイプ材1の端部が栓体2より密栓化されるので好ましい。
【0015】
栓体2は、嵌挿部22がパイプ材1の内部に嵌挿されて、パイプ材1に取付けられている。尚、栓体2はパイプ材1の少なくとも一端に取付けられていればよいが、パイプ材1の両端に取付けられれば、パイプ材1の両端からの水分の浸入が防止され、この水分による発錆が防止されるので好適である。
【0016】
栓体2を形成する合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のα−オレフィンの重合体で用いてもよく、エチレンにα−オレフィンを共重合させたものなどを用いてもよく、エチレンに、酢酸ビニル、メタクリル酸又はそのエステル、アクリル酸又はそのエステル等と共重合させたものでもよく、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ABS樹脂、AAS樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂等の合成樹脂をでもよく、これらの樹脂を適宜組合せて用いてもよい。
【0017】
被覆層3は、パイプ材1の外周側面から栓体2の鍔部21の外周側面23にかけて形成されたものである。本形態は、長手方向に、断続的に突条が形成されたものであり、本形態に係る被覆樹脂パイプPを農業資材や園芸資材として用いられる支柱として使用する際に、植物等が巻き付きやすくなり好ましいが、突条がない形態でもよい。
【0018】
被覆層3の合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のα−オレフィンの重合体で用いてもよく、エチレンにα−オレフィンを共重合させたものなどを用いてもよく、エチレンに、酢酸ビニル、メタクリル酸又はそのエステル、アクリル酸又はそのエステル等と共重合させたものでもよく、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ABS樹脂、AAS樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂等の合成樹脂をでもよく、これらの樹脂を適宜組合せて用いてもよいが、栓体2と相溶性のある樹脂を使用すれば、合成樹脂押出機により栓体2の鍔部21の外周側面23に該合成樹脂が被覆されると、被覆層3と栓体2の鍔部21とが溶着一体化されるので好ましく、又、栓体2を形成する合成樹脂と同一であれば、栓体2の鍔部21と溶着一体化しやすくなるので更に好ましい。
【0019】
図3において、(a)は、本形態に係る線状体4の配置の状態を示す図1のA−A断面図であり、(b)は、(a)の部分拡大図である。線状体4は、パイプ材1の外周側面と被覆層3との間に設けられる。
【0020】
図4において、(a)は、本形態に係る線状体4の配置の状態を示す図1のB−B断面図であり、(b)は、(a)の部分拡大図である。線状体4は、線状体4の端部は、栓体2の鍔部21の外周側面23と被覆層3との間に位置している。
【0021】
線状体4を前記の図3のように設ける方法としては、線状体4をパイプ材1の上に配置して、合成樹脂押出機により被覆層3を形成させれば、線状体4は、パイプ材1と被覆層3との間に容易に設けられるので好ましい。又、この時、線状体4の端部を栓体2の鍔部21の外周側面23に配置しておけば、線状体4は、図4に示すように、この外周側面23と被覆層3と間に容易に位置させることができるため更に好ましい。
【0022】
次に、本形態に係る樹脂被覆パイプPにおいて、被覆層3を切り裂き、被覆層3をパイプ材1から剥がす方法を説明する。
【0023】
図5は、パイプ材1から被覆層3を剥がす方法の一形態を示す説明図である。
【0024】
まず、(a)に示すように、樹脂被覆パイプPの端部の栓体12の箇所に、筒状体5を嵌め込む。この際、線状体4が樹脂被覆パイプPの上方に位置するように配置しておく。次に、線状体4が位置する栓体2の嵌挿部22の基端部付近を支点として、筒状体5を上方に向かって折り曲げるように回動させる。栓体2の嵌挿部22の外形は、前記の回動時の支点となる嵌挿部22の端部を中心とした縦断面円弧状となるように、先端に向かってなされていれば、前記の回動作業により、栓体2はパイプ材1から抜け出しやすくなる。
【0025】
又、被覆層3として、ポリエチレン等のα−オレフィンを主成分とする比較的軟質の合成樹脂を用いれば、前記の回動作業の際、被覆層3は、パイプ材1と栓体2との間で破断しやすくなり、栓体2がパイプ材1から抜け出しやすくなるのでより好ましい。
【0026】
更に、筒状体5を上方に向かって回動させると、栓体2の嵌挿部22が、パイプ材1から完全に抜け出してパイプ材1から外れ、かつ、線状体4は、栓体2の箇所と、パイプ材1の箇所とが、線状体4を介して繋がった状態となる。尚、筒状体5の代わりに、ペンチ等の工具で栓体2の箇所を挟んでも同様な作業をすることができる。
【0027】
続いて、(b)に示すように、栓体2の箇所を持って、本形態に係る樹脂被覆パイプPの長手方向に、線状体4を折り返すように引っ張ると、線状体4により被覆層3が切り裂かれる。これにより、被覆層3をパイプ材1から容易に剥がすことができる。
【0028】
線状体4は、被覆層3に切れ目を入れることができる硬度と、引っ張っても容易に破断しない引張強度があればよく、断面形状は、一般的な円形でもよく、楕円形、多角形、平板状等の他の形状でもよいが、折り返すように引っ張っても破断しない強度と可撓性を有する鉄線が好適に用いられる。尚、線状体4の材質は、鉄に限定されるものではなく、ステンレス鋼やアルミニウム合金等の他の金属、あるいは、ナイロン繊維、アラミド繊維等の被覆層3と熱溶着しにくい樹脂等からなるもので、必要な硬度と引張強度を有するものであればよく、被覆層3の引き裂き強度と厚さに対応して適宜選択することができる。
【0029】
線状体4の構成は、前記の材質のものをそのまま使用してもよいが、線状体4を被覆層3と相溶性の高い樹脂で被覆しておけば、被覆層3を合成樹脂押出機により被覆層3を形成させることによって、被覆層3と線状体4の被覆樹脂41が溶着しやすくなるので、作業者が栓体2を引っ張っても、線状体4は栓体2から抜けにくくなり、被覆層3の切り裂く作業がしやすくなるので好ましい。尚、前記の溶着とは、線状体4が栓体2から容易に抜け出さなければよく、必ずしも線状体4の被覆樹脂41と被覆層3とが一体化するほど強固に溶着した状態でなくてもよい。
【0030】
更に、線状体4の被覆樹脂41は、被覆樹脂3と同じ種類のものを用いれば、この被覆樹脂41と被覆層3とが溶着しやすくなるので、線状体4によって被覆層3を切り裂く際、線状体4は、被覆層3と、被覆樹脂41とを切り裂くことになり、被覆樹脂41から分離しやすくなるので、線状体4と被覆樹脂41との分離作業の手間が軽減され好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、被覆樹脂パイプにおいて、これらを廃棄する際に、パイプ材から被覆樹脂を容易に剥がすことができ、分別廃棄、あるいはそれぞれの材料をリサイクル材料として再利用できるため、農業資材、園芸資材として用いられる支柱ばかりではなく、物干し竿、モップ等の柄として用いられるパイプ部材で端部に栓体が取付けられたものに好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る樹脂被覆パイプの実施の一形態を示す斜視図である。
【図2】図1の栓体の斜視図である。
【図3】図1の主要部のA−A断面図である。
【図4】図1の主要部のB−B断面図である。
【図5】本発明に係る樹脂被覆パイプの使用状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 パイプ材
2 栓体
3 被覆層
4 線状体
5 筒状体
21 鍔部
22 嵌挿部
23 外周側面
41 被覆樹脂
P 樹脂被覆パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
適宜長さのパイプ材の少なくとも一端に、パイプ材の外形と略等しい鍔部の一端にパイプ材の内形より小形の嵌挿部が形成されてなる合成樹脂製栓体の嵌挿部が嵌挿され、パイプ材の外周側面から鍔部の外周側面にかけて合成樹脂の被覆層が形成され、さらに前記パイプ材の外周側面と被覆層との間に線状体が設けられると共に、線状体の端部は鍔部の外周側面と被覆層との間に位置していることを特徴とする樹脂被覆パイプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate