説明

樹芯鉢

【課題】木材素材を花器として使用する際、水が溜まることにより発生する木質変化と樹皮剥離をなくし、自然木の美しさを維持させる。また水を溜めることにより発生する水垢の除去を簡単にさせ、水質悪化をなくすようにする。
【解決手段】未乾燥の樹皮付き自然木を素材にして木塊をつくり、周囲を樹脂加工し、水分が外部へ蒸散しないよう密封する、かかる木塊の芯材部をくりぬき、くりぬき部に水を溜めても辺材部に達しないようにする。さらにかかるくりぬき部の心材部面を樹脂化工し、除去し易くさせる。さらに、くりぬき部に溜められる水のなかに水コケをいれることにより水質悪化をなくす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹皮付き自然木を花器に利用し、植物鑑賞をする木製花器に関する技術分野である。
【背景技術】
【0002】
従来の植物鑑賞をする植木鉢には、自然木を素材にして中をくりぬき、そこへ栽培用土を充填し、植物を生育させているものがある。
【特許文献1】特開H11―103688 また本出願人が本出願に先立ち出願している先行技術もある。
【特許文献2】特開2004−187659またすでに本出願人が植木鉢として特許取得した周囲を樹脂加工して、自然木を素材にして中をくりぬき、そこへ栽培用土を充填し、木材の水分のみで植物を生育させているものがある。
【特許文献3】特許第3624208号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許第3624208号による植木鉢は、水を給水することなく植物を栽培可能とするものの、栽培できる植物種類が限定されている。そこで木製花器として、さまざまな植物を楽しみたいものである。しかしながら、水を溜め花器として木材素材を使用することは大変困難なことである。というのは、くりぬき部が直接水に接すると木材自体に変化が生じることになる。すなわち木質の変化と樹皮の剥離である。
本発明は水を溜めても、木質の変化と樹皮の剥離がしないという課題を解決しようとするものである。
【0004】
木製花器で水を溜めておくと水垢が発生することがあるが、木材に水垢が付着すると取り除くのが容易でない。
本発明は木材に付着する水垢を簡単に取り除くという課題を解決しようとするものである。
【0005】
木製花器で長期間水を溜めておくと水質悪化が生じることがある。
本発明は長期間水を溜めおいても水質悪化を生じさせないという課題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、樹皮付き未乾燥材を材料として木塊をつくり、この木塊の芯材部のみをくりぬき、飽水状態の水分を外気に蒸散させないように外側全体を樹脂加工して密封し、このくりぬき部に溜められた水が辺材部に接触しないようにさせる。
【0007】
本発明は、花器のくりぬき部を樹脂加工し、木材の持つ多孔質性をなくし、滑らかな表面にする。
【0008】
本発明は、かかる花器のくりぬき部に植物を栽培する水の中に水コケを充填する。
【発明の効果】
【0009】
木材木口断面の構造組織を説明すると、樹皮部,辺材部、芯材部とがある。自然状態における樹皮は、内部の木材を守るため木材に活着しているが、木材が乾燥あるいは吸水すると、木質変化を起こしたり、樹皮剥離することが多い。辺材部は成長している組織であり、水分の移動が可能となっているが、木質としては不安定であり、環境により木質変化する。芯材部は、木材として完成されており、環境変化にも安定しており、水分移動は極めて少ない。
【0010】
本発明の花器は、樹皮付き未乾燥自然木を使用し、周囲が樹脂化工されているため、自然木としての水分飽水状態が維持されていて、くりぬき部が芯材部のみで作成されているため、かかるくりぬき部からの水分移動は出来ない。そのため、くりぬき部に水を溜めても、水分が辺材部、樹皮部にまで侵入ができないため自然木としての水分飽和状態維持が可能となり、木質の変化、樹皮の剥離を防ぐことが可能となる。
【0011】
くりぬき部を樹脂加工することにより、木材の多孔質性から、なめらかな面となり水垢の除去が簡単になるとともに更にくりぬき部から木質への水分移動が遮断されて自然木としての維持が可能となる。
【0012】
本発明は、水コケをくりぬき部にいれておくことにより、長期間水を鉢内に溜めておいても発生する水質悪化がなくなり、澄んで綺麗な水質を保つことが出来るようになる。しかしその原因は解明していない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
添付図面は、本発明の樹芯鉢について図示するものである。図面に基づき本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0014】
本発明の素材の選定については、切り出して間もない未乾燥の樹皮付き自然木を利用し、樹皮をそのままつけておく。切り出して間もない生木材は、水分を多く含み、ヒビ割れが全くない。樹皮をつけておくことで水分を含む木材加工品でもカビの発生を防止することが出来るうえ、外側における密封効果を高めることが出来、さらに美術的にも効果がある。
【0015】
本発明は、この木塊の周囲を樹脂加工する、とくに木口面に置ける樹脂加工は何回か繰り返し行い、樹皮3と木口面が一体化なるようにする。使用する樹脂はウレタン系樹脂が望ましく、市販のものでよい。
【0016】
本発明は、かかる素材の木塊にくりぬき部2を作成する。このくりぬき部は、芯材部5のみでくりぬかれていて、底部において鉢が充分な強度を保てるまで至っている。
この樹芯鉢1についてのヒビ割れについては、長期間にわたり何も栽培せず、直射日光にさらした状態ではヒビ割れを生じる可能性は否定できないが、栽培に用いている限り直射日光にさらしても、ヒビ割れを生じることはない。
【0017】
このくりぬき部2のくりぬき面6を樹脂加工する
【0018】
本発明は、かかる樹芯鉢1のくりぬき部2に水を入れて、そのなかに水コケをいれる。この水コケは市販のものでも山から採取したものでもよい。
【実施例】
【0019】
本発明は、辺材部4から樹脂加工していないくりぬき部を作成したものと、芯材部5のみで樹脂加工していないくりぬき部を作成したものとの比較実験をおこなった。くりぬき部に水を長期間入れた状態では、芯材部5のみで作成したものは、木材変色、樹皮剥離がみられないものの、辺材部4から作成したものは、木材変色、樹皮剥離があったがすべてではない。
【0020】
本発明は、辺材部4から樹脂加工したくりぬき部を作成したものと、芯材部5のみで樹脂加工したくりぬき部を作成したものとの比較実験もおこなった。まだ充分でないもののくりぬき部に水を長期間入れた状態では、芯材部5のみで作成したものは、木材変色、樹皮剥離がみられないものの、辺材部4から作成したものは、木材変色、樹皮剥離があった
【0021】
素材の調達時期については、木質変化、樹脂剥離に関して重要な要素をもっている。場所により異なるが木材休眠時期といわれる凡そ10月から3月初旬ごろまでに調達された木材に関しては、くりぬき部に水を入れた状態で、辺材部、芯材部から作成された両物の比較は木材変色、表皮剥離ともに大きく変わりないようであるが、成長時期の3月下旬から9月にかけて調達された木材に関しては、芯材部のみから作成されたほうが木材変色、表皮剥離において自然木として維持されることが分かった。
【0022】
木塊の形状については図1における縦型が多いがその他にも、根の複雑な形状を利用したもの、切り口を斜めに切ったもの、枝を利用したもの、自然木を使用するため、1個1個異なる形状が考えられる。
【0023】
コケ類の種類については多くあるが、実験したコケの種類は、限られている。一般の市販品の水コケ以外には、天然の水コケ、天然のコケであるが、水質悪化を防ぐ効果はそれそれあるが、形状、使いやすさ、において、水コケが最適である。また水コケは、活花を固定させることも出来て最適である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、日本の木材資源を園芸部門における室内鑑賞用花器としての需要をはかるものである。現在花器の素材として、プラスティック,陶器等が主流を占めるなか、自然木を素材とした花器を植物愛好家に認めてもらい、家庭に木材の良さを知ってもらうというものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明にかかる植木鉢の概観図である。
【図2】本発明にかかる植木鉢に水コケを充填した概観図である。
【符号の説明】
【0026】
1 樹芯鉢
2 くりぬき部
3 樹皮
4 辺材部
5 芯材部
6 くりぬき面
7 水コケ
































【特許請求の範囲】
【請求項1】
未乾燥の樹皮付き生木を素材とした木塊における芯材部のみをくりぬき、かかる木塊の周囲を樹脂加工して自然木の水分飽和状態を維持させ、くりぬき部に水を溜めても、水分が辺材部に移行することなく、樹皮付き自然木として維持させ、木質変化と樹皮剥離を解消することが出来るという特徴をもった木製鑑賞用花器。
【請求項2】
請求項1記載の鉢におけるくりぬき部を樹脂加工して、水栽培時に付着する水垢が取り除かれることが出来るという特徴をもった木製鑑賞用花器。
【請求項3】
請求項1記載の鉢におけるくりぬき部に水コケをいれて栽培時における水の水性変化を防ぐことが出来るという特徴をもった木製鑑賞用花器。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−228822(P2007−228822A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−51548(P2006−51548)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(395018402)
【Fターム(参考)】