説明

橋梁床版切断方法

【課題】コンクリート床版の底面(ハンチ部)を水平切断する橋梁コンクリート床版切断技術を提供する。
【解決手段】橋梁コンクリート床版切断装置は第1変換プーリ24a、第3変換プーリ24b及び第4変換プーリ24cを備えている。そして、該第1変換プーリ24a、第3変換プーリ24b及び第4変換プーリ24cは水平棒24dに固定されている。コンクリート床版27は主桁フランジ28の上面に固定されている。該コンクリート床版27には該主桁フランジ28の上フランジ28aの左・右端からの左・右隣接位置に真円形でなる貫通孔29、29を垂直方向に穿孔している。この貫通孔29、29内に前記一方、他方の下端変換プーリ25、25を配置する。該一方、他方の下端変換プーリ25、25の配置方法としては前記駆動部材23の前記ガイド枠23Dの下端に固定した支持棒30、30で吊下げ固着した構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁床版の所定部位に下端変換プーリが配置される貫通孔を穿孔し、該コンクリート床版の切断溝内にワイヤーソーを係入しコンクリート床版の底面を水平切断すべくした橋梁床版切断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のコンクリート材等の被研削切断物の切断方法に於ける一つの例として図10に示す特開平7−276231号公開特許公報に開示された技術がある。
これについて説明すれば、1はダイヤモンドワイヤーを示し、このダイヤモンドワイヤー1は、小さなダイヤモンドの一部をのぞかせて固着して研削切断刃としたダイヤモンドチップをワイヤーに一定間隔で複数通し、これら複数のダイヤモンドチップの両側にプラスチック材あるいはゴム材で作ってある止め具を通し、ワイヤーに各ダイヤモンドチップを固定してなるものである。そして、このダイヤモンドワイヤー1は、プーリ2、3を介して図示しない緊張駆動装置(ワイヤーソー)により作動させて、コンクリート材や石材等の被研削切断物4を研削切断するものである。この際、ダイヤモンドワイヤー1及びその研削切断部分が摩擦熱にて高温となるため、図示しない冷却装置にて冷却する。この冷却装置は、水道管に接続したボールタップ弁にて水道水を常時一定量に保持して貯留するタンクを有し、このタンクに高圧ポンプを接続し、更にこの高圧ポンプのデリバリ側にパイプを接続し、このパイプに多数のノズルをそれぞれ高圧ホースにより取り付けてなる。そして、このノズルはその数量を必要に応じて増減できるようになっており、被研削切断物4の大きさにもよるが、0.2 m〜2mの範囲内で自由にノズル数を選択できるようになっている。更に、このノズルは、ダイヤモンドワイヤー1の走行方向に沿いかつ研削切断部分に対して2度〜45度の角度の範囲内で自由に設定できる構造をなしている。
【0003】
従来の技術に於ける他の例としては、図11に示す特開2005−329506号公開特許公報に開示されたワーヤーソー切断方法の技術がある。これについて説明すれば、切断装置は、ワイヤーソー5および駆動装置6と、そして冷却装置7とを主たる構成として備え、これらにさらに集塵装置8および研削液供給装置9と備えて概ね構成されている。このうちワイヤーソー5は、鋼線等の多数の金属線を撚った可撓性を有するワイヤーの外周に、ダイヤモンド砥粒等を含んだ砥粒層を外周に有する環状のビーズ10が、このワイヤーの長手方向に所定の間隔を空けて多数取り付けられたものであり、長手方向に隣接するビーズ10間のワイヤー外周にはゴム等の被覆膜11が被覆されている。また、駆動装置6は、横方向においてコンクリート壁12の側縁部13と孔14との間の上記壁面15にアンカー等によって固定される基台16に、水平かつ上記壁面15に対して垂直に正面側に延びるレール部材17と、水平かつ壁面15に近接して平行に延びる柱状の支持部材18とが取り付けられ、この支持部材18は平面視に長手方向略中央がレール部材17の基端と直交するようにされて、レール部材17には駆動プーリ19が、また支持部材18にはレール部材17を挟んだその両側に一対の従動プーリ20が、それぞれ取り付けられた構成とされている。これら駆動プーリ19と一対の従動プーリ20とは、いずれも上記孔14と等しい高さの面一の水平面内でこの水平面に直交する回転軸線回りに回転可能とされたものであり、このうち駆動プーリ19は、例えば図示されない作動油供給源に油圧ホース21を介して接続される油圧モーター22のような駆動手段に支持されてその上記回転軸線回りに図中に矢線で示す回転方向Tに回転駆動される一方、従動プーリ20は、支持部材18にその長手方向の位置を調節可能に取り付けられた軸受を介して従動的に回転自在に支持されている。また、駆動プーリ19を支持する油圧モーター22等の駆動手段は、上記レール部材17に沿って壁面15に垂直な方向に駆動プーリ19ごと進退可能とされている。
【特許文献1】特開平7−276231号公開特許公報
【特許文献2】特開2005−329506号公開特許公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術は、叙上した構成であるので次の課題が存在した。
上述した一つの例としての特開平7−276231号公開特許公報に開示した従来の技術に於ける構成によれば、ダイヤモンドワイヤ1はプーリ2、3により垂直方向に上昇させて被研削切断物4を切断する技術であって、該被研削切断物4を水平方向に切断することはできないという問題点があった。
また、上述した他の例としての特開2005−329506号公開特許公報に開示した従来の技術に於ける構成によれば、切断するコンクリート壁12の側縁部Bの周囲に孔14を周回するように穿孔し、この穿孔された孔14にワイヤーソー5を挿入する装置及び方法であり、前記特開平7−276231号と同様にコンクリート壁12を水平方向に切断することはできないという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る橋梁床版切断方法は上述した課題を解決すべく無端ダイヤモンドワイヤーソーでコンクリート床版のハンチ部を切断する場合に於いて、橋梁コンクリート床版切断駆動装置の一方、他方の下端変換プーリをコンクリート床版の垂直方向に穿孔した左・右貫通孔に配置し該一方、他方の変換プーリによりコンクリート床版に形成した切断溝に係入した前記無端ダイヤモンドワイヤーソーを該コンクリート床版のハンチ部の水平方向に牽引することにより小型の駆動装置であってかつ切断時に発生する音を極力抑えてコンクリート床版のハンチ部を切断する技術を提供することを目的としたものであって、次の構成、手段から成立する。
【0006】
すなわち、請求項1記載の発明によれば、駆動部材と、これに連係する変換部材と、主桁フランジの上面に鉄筋又はスタッドジベルで固設されたコンクリート床版の垂直方向に穿孔した該主桁を中心とした左・右貫通孔内に配置した前記変換部材に連係する一方、他方の下端変換プーリに懸架した無端ダイヤモンドワイヤーソーを備え、前記主桁フランジの上面のコンクリート床版に上フランジの略幅長の切断溝を形成して、該切断溝内に前記無端ダイヤモンドワイヤーソーを係入し、前記駆動部材の回転駆動源で該コンクリート床版のハンチ部を切断することを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明に於いて、駆動部材と、これに連係する変換部材と、主桁フランジの上面に鉄筋又はスタッドジベルで固設されたコンクリート床版の垂直方向に穿孔した該主桁を中心とした左・右貫通孔内に配置した前記変換部材に連係する一方、他方の下端変換プーリに懸架した無端ダイヤモンドワイヤーソーを備え、前記主桁フランジの上面のコンクリート床版に上フランジの略幅長の切断溝を形成すると共に、該切断溝内に前記無端ダイヤモンドワイヤーソーを係入し、前記駆動部材の回転駆動源で該コンクリート床版のハンチ部及び該コンクリート床版の全域を撤去することを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明に於いて、前記駆動部材は駆動プーリを含む駆動機械と、第2変換プーリと、該駆動機械及び第2変換プーリを固定した2個のアームでなる支持枠と、該支持枠をガイドして上昇・下降させるガイド枠と、該駆動機械及び第2変換プーリを該ガイド枠の下端部位から上端部位まで上昇・下降動作をさせるガイドレールとを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明に於いて、前記駆動部材は冷却気体源で流送管を経て冷却気体吹付け口を設置した駆動プーリを含む駆動機械と、第2変換プーリと、該駆動機械及び第2変換プーリを固定した2個のアームでなる支持枠と、該支持枠をガイドして上昇・下降させるガイド枠と、該駆動機械及び第2変換プーリを該ガイド枠の下端部位から上端部位まで圧縮空気によりエアシリンダを動作させて上昇・下降動作するガイドレールとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る橋梁床版切断方法は、叙上の構成を有するので次の効果がある。
すなわち、請求項1記載の発明によれば、駆動部材と、これに連係する変換部材と、主桁フランジの上面に鉄筋又はスタッドジベルで固設されたコンクリート床版の垂直方向に穿孔した該主桁を中心とした左・右貫通孔内に配置した前記変換部材に連係する一方、他方の下端変換プーリに懸架した無端ダイヤモンドワイヤーソーを備え、前記主桁フランジの上面のコンクリート床版に上フランジの略幅長の切断溝を形成して、該切断溝内に前記無端ダイヤモンドワイヤーソーを係入し、前記駆動部材の回転駆動源で該コンクリート床版のハンチ部を切断することを特徴とする橋梁床版切断方法を提供する。
このような構成としたので、無端ダイヤモンドワイヤーソーでコンクリート床版のハンチ部を切断する場合に於いて、橋梁コンクリート床版切断駆動装置の一方、他方の下端変換プーリをコンクリート床版の垂直方向に穿孔した左・右貫通孔に配置し該一方、他方の変換プーリによりコンクリート床版に形成した切断溝に係入した前記無端ダイヤモンドワイヤーソーを該コンクリート床版のハンチ部を水平方向に牽引することにより小型の駆動装置であってかつ切断時に発生する音を極力抑えコンクリート床版を切断することができるという効果がある。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、駆動部材と、これに連係する変換部材と、主桁フランジの上面に鉄筋又はスタッドジベルで固設されたコンクリート床版の垂直方向に穿孔した該主桁を中心とした左・右貫通孔内に配置した前記変換部材に連係する一方、他方の下端変換プーリに懸架した無端ダイヤモンドワイヤーソーを備え、前記主桁フランジの上面のコンクリート床版に上フランジの略幅長の切断溝を形成すると共に、該切断溝内に前記無端ダイヤモンドワイヤーソーを係入し、前記駆動部材の回転駆動源で該コンクリート床版のハンチ部及び該コンクリート床版の全域を撤去することを特徴とする橋梁コンクリート床版切断方法を提供する。
このような構成としたので、請求項1記載の発明の効果に加えて、無端ダイヤモンドワイヤーソーでコンクリート床版のハンチ部を切断する場合に於いて、橋梁コンクリート床版切断駆動装置の一方、他方の下端変換プーリをコンクリート床版の垂直方向に穿孔した左・右貫通孔に配置し該一方、他方の変換プーリによりコンクリート床版に形成した切断溝に係入した前記無端ダイヤモンドワイヤーソーを該コンクリート床版のハンチ部及びコンクリート床版全域を撤去することができ、小型の駆動装置であってかつ切断時に発生する音を極力抑えコンクリート床版を切断することができるという効果がある。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、前記駆動部材は駆動プーリを含む駆動機械と、第2変換プーリと、該駆動機械及び第2変換プーリを固定した2個のアームでなる支持枠と、該支持枠をガイドして上昇・下降させるガイド枠と、該駆動機械及び第2変換プーリを該ガイド枠の下端部位から上端部位まで上昇・下降動作をさせるガイドレールとを備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の橋梁床版切断方法を提供する。
このような構成としたので、請求項1又は2記載の発明の効果に加えて、コンクリート床版の切断に際し、駆動機構及び第2変換プーリのみを適正かつ合理的に上昇・下降させるので床版切断装置の小型化が図れるという効果がある。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、前記駆動部材は冷却気体源で流送管を経て冷却気体吹付け口を設置した駆動プーリを含む駆動機械と、第2変換プーリと、該駆動機械及び第2変換プーリを固定した2個のアームでなる支持枠と、該支持枠をガイドして上昇・下降させるガイド枠と、該駆動機械及び第2変換プーリを該ガイド枠の下端部位から上端部位まで圧縮空気によりエアシリンダを動作させて上昇・下降動作するガイドレールとを備えたことを特徴とする請求項1又は1記載の橋梁床版切断方法を提供する。
このような構成としたので、請求項1又は2記載の発明の効果に加えて、駆動機構を適宜冷却気体により冷却させることにより、水等の液体を使用することがないので、都市部でのコンクリート床版を撤去するときに漏水を考慮することなく、完全に無水での施工が可能となり、排水施設を設置することがないので費用を軽減できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る橋梁床版切断方法の実施の形態について添付図面に基づき詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る橋梁床版切断方法に使用するものであって、コンクリート床版上に取付けられた橋梁床版切断装置を示す正面図である。図2は、図1の矢視A−A線方向から見た側面図である。図3は、前記橋梁床版切断装置に備えた変換プーリの一例を示す図面であって、(a)は正面図、(b)は(a)の矢視B−B線方向から見た側面図である。
【0016】
先ず、本発明に係る橋梁床版切断装置について説明する。
Cは本発明に係る橋梁床版切断装置であって、駆動部材23と、変換部材24と、相対する一方、他方の下端変換プーリ25、25と、無端ダイヤモンドワイヤーソー26とで構成される。前記駆動部材23は駆動プーリ23aを含む駆動機械23Aと、第2変換プーリ23Bと、該駆動プーリ23aを含む駆動機械23A及び該第2変換プーリ23Bを固定しかつ2個のアームでなる支持枠23Cと、該支持枠23Cの上昇・下降動作をガイドする略矩形体でなるガイド枠23Dと、該ガイド枠23Dに固定され、かつ前記支持枠23Cに連結された駆動プーリ23aを含む駆動機械23A及び第2変換プーリ23Bを前記ガイド枠23Dの下端部位から上端部位まで上昇・下降動作をさせるガイドレール23Eとを備えている。
【0017】
前記駆動機械23Aは背部に図2に示すように油圧モータや電動機等でなる回転駆動源23bを有しており、この回転駆動源23bが回転動作することにより該駆動プーリ23aが回転し、後述する無端ダイヤモンドワイヤーソー26を牽引させながら所望のコンクリート床版27を切断する。また、23cはガイドレール23Eの背部に設けた圧縮空気取入部であり、この圧縮空気取入部23cから圧縮空気を流入させる。そして、該圧縮空気によりエアシリンダ23dを動作させて前記支持枠23Cを上昇・下降動作する。このとき、支持枠23Cはガイド枠23Dの内側に形成したスライド溝23eにガイドされ、該ガイド枠23Dの下端部位から上端部位まで移動する。
【0018】
これにより、前記駆動プーリ23a及び第1変換プーリ24aに無端ダイヤモンドワイヤーソー26に連係した第2変換プーリ23Bが該無端ダイヤモンドワイヤーソー26を牽引しながら一緒に上昇する。23fはガイドレール23Eの背部に位置する冷却気体源であり、流送管23gを経て冷却気体吹付け口23hから冷却気体を駆動プーリ23aに噴出し、該駆動プーリ23aを冷却する。そして駆動プーリ23aを含む駆動機械23Aが司るコンクリート床版27の切断機能が劣化することがないよう品質確保を行う。
【0019】
前記変換部材24は第1変換プーリ24a、第3変換プーリ24b及び第4変換プーリ24cを備えている。そして、該第1変換プーリ24a、第3変換プーリ24b及び第4変換プーリ24cは水平棒24dに固定されている。27はコンクリート床版であってI型鋼等でなる主桁フランジ28の上面に固定されている。そして、該コンクリート床版27には該主桁フランジ28の上フランジ28aの左・右端からの左・右隣接位置に所定直径Sの径が約300(mm)程度の例えば、真円形でなる貫通孔29、29を垂直方向に穿孔している。この貫通孔29、29内に前記一方、他方の下端変換プーリ25、25を配置する。該一方、他方の下端変換プーリ25、25の配置方法としては前記駆動部材23の前記ガイド枠23Dの下端に固定した支持棒30、30で吊下げ固着した構成である。
【0020】
そして、前記無端ダイヤモンドワイヤーソー26は、図1及び図5に示すように一方の下端変換プーリ25、駆動プーリ23a、第1変換プーリ24a、第2変換プーリ23B、第3変換プーリ24b、第4変換プーリ24c及び他方の下端変換プーリ25を図1及び図5に示すように懸架している。ここで、切断されるコンクリート床版27には図4で示すように主桁フランジ28の上フランジ28aの上面部位であって、該コンクリート床版27の底面部に前記無端ダイヤモンドワイヤーソー26を設定・配置する。ここで、上フランジ28aの幅長が約400(mm)程度であり、これを略同一幅長のコンクリート床版27のハンチ部27bを切断する。具体的には、図2及び図6(a)(b)に示すようにコンクリート床版27の幅員方向に貫通溝B1、B2・・・・を列設し、該コンクリート床版27の橋軸方向に所定間隔S1毎に例えば幅が約20(mm)程度の貫通溝A1、A2・・・・を前記貫通溝B1、B2・・・・に対して直交する方向に列設する。
【0021】
前記一方、他方の下端変換プーリ25、25はその一例として図3(a)、(b)に示す構成である。該一方又は他方の下端変換プーリ25は滑車25aと該滑車25aの厚さ方向の中間位置に刻設した周溝25gと、該滑車25aの中心を貫通して配備した所定長の軸25bを備え、この軸25bの左・右にブラケット25c、25cの一方端をボルト25eで固定し、また、該ブラケット25c、25cの他方端をスペーサ25dを介してボルト25f…で固定している。
【0022】
該スペーサ25dは回転自在の略円柱体でなる回転軸部25hを備え、この回転軸部25hは該無端ダイヤモンドワイヤーソー26でコンクリート床版27の底面部すなわちハンチ部27bを切断するに従い回転自在に一方及び他方の滑車25a、25aの向きを変える。この一方、他方の下端変換プーリ25、25の回転軸部25h、25hが前記支持棒30、30に連結されている。そして、当該一方、他方の下端変換プーリ25、25が前記貫通孔29、29内に配置される。そして、滑車25aの周溝25g内に無端ダイヤモンドワイヤーソー26を懸架する。ここで、この一方、他方の下端変換プーリ25、25の貫通孔29、29内に於ける配置位置は図1に示すように滑車25aの最下端位置が主桁フランジ28の上フランジ28aの上面位置と略同一線上に設定される。従って、コンクリート床版27の底面部を切断する際、該無端ダイヤモンドワイヤーソー26が該コンクリート床版27の橋軸方向で水平方向に牽引される。このように構成するので回転駆動源23bから最小限のエネルギー、つまり少ない切断力で切断予定するコンクリート床版27を適正に切断することが可能となる。
【0023】
次に、本発明に係る橋梁床版切断方法により当該コンクリート床版を切断する手順や該橋梁床版切断方法に使用する装置の動作等について図6(a)、(b)ないし図9等に基づき説明する。
【0024】
コンクリート床版27は概ね図6(a)に示す構成例であり、幅員方向に順次所定間隔毎に設置した主桁フランジ28…の上面に鉄筋又はスタッドジベル等で固設されている。そして、各主桁フランジ28間の略中央付近にコンクリート床版27の橋軸方向に幅が約20(mm)程度の貫通溝B1ないしB4が該コンクリート床版27の上面から下面まで貫通して切込んであり、そして、貫通溝B1ないしB4の相互間隔は各々のコンクリート床版27のスパンにより適宜に設定する。一方、前述したようにこの貫通溝B1ないしB4に直交するコンクリート床版27の幅員方向には例えば橋軸方向に約2000(mm)程度の所定間隔S1毎に貫通溝A1、A2・・・・を一連に列設形成している。
【0025】
次に、例えば図6(b)に示す貫通溝B2と貫通溝B3間及び橋軸方向の貫通溝A1と橋軸方向の貫通溝A2間に囲まれ画成されたコンクリート床版27の領域F1を切断しかつ撤去する場合について説明すれば、先ず貫通溝A1の前方に位置する切断溝27aの中に無端ダイヤモンドワイヤーソー26を係入する。図9に示すように該無端ダイヤモンドワイヤーソー26はコンクリート床版27の底面部に於ける幅長W1が約400(mm)程度であって、この切断溝27aから前記一方、他方の下端変換プーリ25、25が挿置された貫通孔29、29までの距離、すなわち約2000(mm)程度でなるコンクリート床版27の切断面Eを切断する。
【0026】
そして、このとき、切断溝27aから引出された無端ダイヤモンドワイヤーソー26の方位は一方、他方の下端変換プーリ25、25の水平ラインGに対して約90°に設定される。ここで、一方の下端変換プーリ25に懸架された無端ダイヤモンドワイヤーソー26は図7に示す模式図で分るように駆動プーリ23a、第1変換プーリ24a、第2変換プーリ23B、第3変換プーリ24b、第4変換プーリ24cを経て他方の下端変換プーリ25に懸架される。そして該コンクリート床版27の底面部を切断する過程に於いて、該駆動プーリ23aが駆動機械23Aにより回転動作をすると共に該駆動プーリ23a及び第2変換プーリ23Bが圧縮空気によりエアシリンダ23dの働きで支持枠23Cにより徐々に上昇する。すなわち、図8(b)から(a)に示すように該駆動プーリ23aが上昇する。
【0027】
そして、当該無端ダイヤモンドワイヤーソー26、26はコンクリート床版27の底面部すなわちハンチ部27bの切込みが進むに従い、切断溝27aに係入されかつ一方、他方の下端変換プーリ25、25に懸架された該無端ダイヤモンドワイヤーソー26、26の部分は図9に示すように駆動プーリ23aに引上げられる分だけ徐々に短くなりコンクリート床版の切断完了時点には水平状態から相対する滑車の相対角θ1が約40°〜45°程度になる。このとき一方、他方の下端変換プーリ25、25の略円柱体でなる回転軸部25hが回動して滑車25a、25aの方向が図9に示すように水平方向すなわち傾斜角θ2が0°から傾斜角θ2が約30°〜40°程度に傾斜する。相対する滑車25a、25aがコンクリート床版27の底面部を切断するに従い、自由自在にその傾斜面θ2を変化させながら巧みに該コンクリート床版27の底面部すなわちハンチ部27bの全域を切断可能にする。
【0028】
尚、コンクリート床版27を切断中に於いて、コンクリート床版27の切断に伴う粉塵を吸引すべく、該コンクリート床版27の底面部すなわち切断部位、ハンチ部27b又は貫通孔29、29内に集塵口31を配置する。この集塵口31はホース等で別置された集塵機に接続され粉塵を適切に処理する。
【0029】
かくして、図9の斜線で示すコンクリート床版27の切断面Eの切断が完了する。そこで切断されたコンクリート床版27の領域F1を引上機により撤去する。前述と同様な手順や動作をすることによりコンクリート床版27の底面部すなわちハンチ部27bを切断し次の領域F2を撤去し、この繰返しにより該コンクリート床版27の全領域を撤去する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る橋梁床版切断方法に使用するものであって、コンクリート床版上に取付けられた橋梁床版切断装置を示す正面図である。
【図2】図1の矢視A−A線方向から見た側面図である。
【図3】本発明に係る橋梁床版切断方法に於いて、橋梁床版切断装置に備えた変換プーリの一例を示す図面であって、(a)は正面図、(b)は(a)の矢視B−B線方向から見た側面図である。
【図4】本発明に係る橋梁床版切断方法に於いて、コンクリート床版の底面部すなわちハンチ部の切断部位を示す側面図である。
【図5】本発明に係る橋梁床版切断方法による実施の形態を示すコンクリート床版の斜視図である。
【図6】本発明に係る橋梁床版切断方法による実施の形態を示すものであって、(a)はコンクリート床版に貫通溝を設けた側面図、(b)は(a)の平面図であってコンクリート床版の切断または撤去領域を示すと共に幅員方向及び橋軸方向にそれぞれ貫通溝を設けてコンクリート床版を画成した状態を示す図である。
【図7】本発明に係る橋梁床版切断方法に使用する橋梁床版切断装置の模式図である。
【図8】本発明に係る橋梁床版切断方法を示す図であって、(a)は切断完了時点の駆動プーリ等の状態を示す模式側面図、(b)は切断開始時の駆動プーリ等の状態を示す模式側面図である。
【図9】本発明に係る橋梁床版切断方法に於いて、コンクリート床版の切断領域と相対する滑車の動きを示す平面図である。
【図10】従来の技術に於けるコンクリート等の切断方法の一つの例を示す斜視図である。
【図11】従来の技術に於けるワイヤーソー切断方法の他の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
C 本発明に係る橋梁床版切断装置
23 駆動部材
23A 駆動部材の駆動機械
23B 駆動部材の第2変換プーリ
23C 駆動部材の支持枠
23D 駆動部材のガイド枠
23E 駆動部材のガイドレール
23a 駆動部材の駆動プーリ
23b 駆動部材の回転駆動源
23c 駆動部材の圧縮空気取入部
23d 駆動部材のエアシリンダ
23e 駆動部材のスライド溝
23f 駆動部材の冷却気体源
23g 駆動部材の流送管
23h 駆動部材の冷却気体吹付け口
24 変換部材
24a 変換部材の第1変換プーリ
24b 変換部材の第3変換プーリ
24c 変換部材の第4変換プーリ
24d 変換部材の水平棒
25 一方、他方の下端変換プーリ
25a 一方、他方の下端変換プーリの滑車
25b 一方、他方の下端変換プーリの軸
25c 一方、他方の下端変換プーリのブラケット
25d 一方、他方の下端変換プーリのスペーサ
25e 一方、他方の下端変換プーリのボルト(一方端)
25f 一方、他方の下端変換プーリのボルト(他方端)
25g 滑車の周溝
25h 回転軸部
26 無端ダイヤモンドワイヤソー
27 コンクリート床版
27a コンクリート床版の切断溝
27b コンクリート床版のハンチ部
28 主桁フランジ
28a 主桁フランジの上フランジ
29 コンクリート床版の貫通孔
30 支持棒
31 集塵口
A1〜A5 コンクリート床版の貫通溝
B1〜B4 コンクリート床版の貫通溝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部材と、これに連係する変換部材と、主桁フランジの上面に鉄筋又はスタッドジベルで固設されたコンクリート床版の垂直方向に穿孔した該主桁を中心とした左・右貫通孔内に配置した前記変換部材に連係する一方、他方の下端変換プーリに懸架した無端ダイヤモンドワイヤーソーを備え、前記主桁フランジの上面のコンクリート床版に上フランジの略幅長の切断溝を形成して、該切断溝内に前記無端ダイヤモンドワイヤーソーを係入し、前記駆動部材の回転駆動源で該コンクリート床版のハンチ部を切断することを特徴とする橋梁床版切断方法。
【請求項2】
駆動部材と、これに連係する変換部材と、主桁フランジの上面に鉄筋又はスタッドジベルで固設されたコンクリート床版の垂直方向に穿孔した該主桁を中心とした左・右貫通孔内に配置した前記変換部材に連係する一方、他方の下端変換プーリに懸架した無端ダイヤモンドワイヤーソーを備え、前記主桁フランジの上面のコンクリート床版に上フランジの略幅長の切断溝を形成すると共に、該切断溝内に前記無端ダイヤモンドワイヤーソーを係入し、前記駆動部材の回転駆動源で該コンクリート床版のハンチ部及び該コンクリート床版の全域を撤去することを特徴とする橋梁床版切断方法。
【請求項3】
前記駆動部材は駆動プーリを含む駆動機械と、第2変換プーリと、該駆動機械及び第2変換プーリを固定した2個のアームでなる支持枠と、該支持枠をガイドして上昇・下降させるガイド枠と、該駆動機械及び第2変換プーリを該ガイド枠の下端部位から上端部位まで上昇・下降動作をさせるガイドレールとを備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の橋梁床版切断方法。
【請求項4】
前記駆動部材は冷却気体源で流送管を経て冷却気体吹付け口を設置した駆動プーリを含む駆動機械と、第2変換プーリと、該駆動機械及び第2変換プーリを固定した2個のアームでなる支持枠と、該支持枠をガイドして上昇・下降させるガイド枠と、該駆動機械及び第2変換プーリを該ガイド枠の下端部位から上端部位まで圧縮空気によりエアシリンダを動作させて上昇・下降動作するガイドレールとを備えたことを特徴とする請求項1又は1記載の橋梁床版切断方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−114688(P2009−114688A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287059(P2007−287059)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000107044)ショーボンド建設株式会社 (71)
【出願人】(391004768)日本ファステム株式会社 (9)
【Fターム(参考)】