説明

歩行型作業機

【課題】 ダッシング現象を防止する抵抗体を設けるにあたり、抵抗体のガタを防止すると共に、抵抗体に対する残稈、草、土などの堆積を抑制する。
【解決手段】 車輪2を支持するミッションケース3に、後下方に延出する延出部3aを形成すると共に、該延出部3aの先端部に、耕耘爪軸8を軸支した歩行型耕耘機1であって、ミッションケース3の延出部3aに、土中に進入して機体走行に抵抗を与える抵抗体12を設けるにあたり、該抵抗体12の基部(ブラケット16)は、延出部3aと、該延出部3aの左右両側に設けられるベアリングホルダ15とを挟む状態で、延出部3aの後部に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるダッシング現象を防止する抵抗体を備えた歩行型耕耘機、歩行型管理機などの歩行型作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
車輪を支持するミッションケースに、後下方に延出する延出部を形成し、該延出部の先端部に、耕耘爪軸を軸支した歩行型作業機が知られている。一般に、この種の歩行型作業機では、いわゆるダッシング現象を防止するために、土中に進入して機体走行に抵抗を与える抵抗体が設けられている(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平6−153602号公報
【特許文献2】特開平8−317705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の歩行型耕耘機では、抵抗体をロータリカバーの後部に設けているため、抵抗体が大型化するという問題がある。一方、特許文献2に記載の管理機では、抵抗体(ダッシュ防止部材)をミッションケースの延出部(ロータリケース)に設けているため、抵抗体の小型化が可能である。
【0004】
しかしながら、特許文献2に示される抵抗体は、延出部の前部に設けられているため、前方から外力Fを受けると、ガタが発生し易いという問題がある。つまり、図9に示すように、抵抗体100に前方から外力Fが作用すると、抵抗体100を支えるブラケット101の下側を支点とし、ブラケット101をA方向に回転させようとする力が働く。この力は、ブラケット101の上側を延出部102から引き離す方向に作用するため、ガタが発生し易いのである。
【0005】
また、抵抗体101を延出部102の前部又は下端部に設けると、図10に示す網掛けの領域に、残稈、草、土などが堆積し易くなり、安定した作業走行が阻害されるという問題もある。これは、耕深が深くなるほど顕著になり、実質的に耕深が制限される不都合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、車輪を支持するミッションケースに、後下方に延出する延出部を形成し、該延出部の先端部に、耕耘爪軸を軸支した歩行型作業機であって、前記延出部に、土中に進入して機体走行に抵抗を与える抵抗体を設けるにあたり、該抵抗体の基部は、前記延出部と、該延出部の左右両側に設けられるベアリングホルダとを挟む状態で、前記延出部の後部に固定されることを特徴とする。このように構成すれば、抵抗体の基部を強固に支持し、抵抗体のガタを防止できる。しかも、抵抗体は、延出部の後部から下方に延出するので、抵抗体に対する残稈、草、土などの堆積も抑制することができる。
また、前記抵抗体は、棒状部材で形成されると共に、耕耘爪との干渉を避けるための薄肉部を有することを特徴とする。このように構成すれば、抵抗体を棒状部材で構成し、コストダウンが図れるだけでなく、耕耘爪との干渉も回避することができる。
また、前記抵抗体は、最大耕深時に地面となす角がほぼ直角であることを特徴とする。このように構成すれば、深耕時であっても、抵抗体が土中に確実に進入し、機体走行に抵抗を与えることができるだけでなく、浅耕時には、抵抗体を逃げ方向に傾斜させ、残稈、草、土などの堆積を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図面において、1は歩行型耕耘機(歩行型作業機)であって、該歩行型耕耘機1は、左右一対の車輪2を軸支するミッションケース3と、該ミッションケース3の前側に設けられるエンジン4と、ミッションケース3の後側に設けられる耕耘部5と、ミッションケース3から後上方に延出するハンドル6とを備えて構成されている。
【0008】
ミッションケース3は、例えばアルミダイカスト製であり、後下方に延出する延出部3aを有し、全体として側面視「へ」の字形状に形成されている。ミッションケース3の延出部3aは、耕耘部5の支持フレーム及び伝動ケースを兼ねており、左右両側面は、金属板(プレス品)などからなるプロテクタ(保護カバー)7で覆われている。
【0009】
耕耘部5は、延出部3aの先端部から左右に延出する耕耘爪軸8と、該耕耘爪軸8に装着される複数の耕耘爪9と、耕耘爪9の上方を覆うロータリカバー10と、該ロータリカバー10の後端部に上下位置調整自在に設けられる尾輪11と、延出部3aの先端部に設けられる抵抗体12とを備えて構成されており、耕耘爪軸8の回転に応じて耕耘爪9が土壌の耕耘を行う。
【0010】
本実施形態の耕耘部5は、延出部3a下方の残耕を減らすために、いわゆるVセンタロータリを構成している。Vセンタロータリとは、延出部3aに隣接する耕耘爪13を第二の耕耘爪軸(筒軸)14で支持すると共に、第二の耕耘爪軸14を傾斜させることにより、耕耘爪13を正面視V字状に配置するものである。このような耕耘部5では、通常、第二の耕耘爪軸14を傾斜支持するために、延出部3aの先端部左右両側にベアリングホルダ15が設けられる。本実施形態では、ベアリングホルダ15を延出部3aに固定する際、プロテクタ7の下端部をベアリングホルダ15と延出部3aとの間の隙間に挟み込むことにより、プロテクタ7の固定強度を高めると共に、プロテクタ7と延出部3aとの隙間を小さくし、プロテクタ7の破損を防止している。
【0011】
抵抗体12は、いわゆるダッシング現象を防止するために設けられている。ダッシング現象とは、耕耘爪9、13が受ける耕耘反力によって機体が急発進する現象であり、抵抗体12が土中に進入して機体走行に抵抗を与えることにより、ダッシング現象が抑制される。以下、本発明が特徴とする抵抗体12の配置及び支持構造について詳細に説明する。
【0012】
本実施形態の抵抗体12は、棒状であり、ブラケット16を介して延出部3aに設けられる。ブラケット16は、断面コ字形状を有しており、延出部3aの後部に対して複数箇所がボルト固定される。このとき、ブラケット16は、延出部3a及びベアリングホルダ15の後端部を挟み込むと共に、ブラケット16、延出部3a及びベアリングホルダ15を貫通するボルト17で共締め状に固定される。
【0013】
このようにすると、抵抗体12は、延出部3aの後部で支持されるので、図7に示すように、前方から外力Fが作用したとき、抵抗体12を支えるブラケット16の下側を支点とし、ブラケット16をB方向に回転させようとする力が働く。この力は、ブラケット16の上側を延出部3a及びベアリングホルダ15の後部に押し付ける方向に作用するため、抵抗体12のガタを防止できるだけでなく、抵抗体12の支持強度を高めることができる。
【0014】
また、抵抗体12を延出部3aの後部に設けると、延出部3aの前部に設ける場合に比べ、抵抗体12に対する残稈、草、土などの堆積が抑制されるという利点がある。特に、図1に示すように、側面視において、車輪2と延出部3aの下部接線Cよりも下側で、かつ、延出部3aの前部接線Dよりも後側の領域に抵抗体12を配置すると、残稈、草、土などが堆積する領域を網掛け部分に限定し、安定した作業走行を行うことが可能になる。具体的には、残稈、草、土などの堆積による耕深制限や、ハンドル荷重の増大を回避できるだけでなく、馬力ロスやタイヤスリップも減らすことができる。
【0015】
また、抵抗体12は、図1に示すように、最大耕深時に地面(Cに相当)となす角がほぼ直角であることが好ましい。このようにすると、深耕時であっても、抵抗体12が土中に確実に進入し、機体走行に抵抗を与えることができるだけでなく、浅耕時には、抵抗体12を逃げ方向に傾斜させ、残稈、草、土などの堆積を抑制することができる。
【0016】
また、抵抗体12は、ロストワックスなどの鋳物素材で形成し、二次加工を省くことが好ましい。このようにすると、加工工数を減らし、安価な抵抗体12を提供することができる。また、本実施形態の抵抗体12は、先端側に薄肉部12aを有し、この薄肉部12aによって耕耘爪13との干渉を回避する。
【0017】
本実施形態では、機体走行に与える抵抗を、抵抗体12の上下位置変更に基づいて調整できるようにしてある。具体的には、ブラケット16に上下方向を向くボス16aを一体的に設けると共に、このボス16aに抵抗体12を上下摺動自在に挿通し、更に、ボス16aに螺入するボルト18で抵抗体12を任意の位置で固定し、ナット19で緩み止めをする。このような構成によれば、抵抗体12が延出部3aの後側で上下するので、抵抗体12の上下位置調整範囲を大きくすることができ、また、パイプ状のボス16aで抵抗体12を支持するので、ボス16aが土などで目詰まりしても、下側から抵抗対12を差し込むだけで、土などを除去することができる。
【0018】
また、抵抗体12にボルト18の先端と係合する複数の凹部12b(さらもみ部)を形成しておけば、抵抗体12の位置決め保持が確実になる。尚、図7において、最下位置の凹部12bは、抵抗体12を非作用位置に退避保持するためのものであり、この位置で抵抗体12を保持すると、抵抗体12に干渉することなく、培土器などのアタッチメントを装着することができる。これにより、抵抗体12の取り外しが不要になると共に、抵抗体12の紛失を防止できる。
【0019】
叙述の如く構成された歩行型耕耘機1は、車輪2を支持するミッションケース3に、後下方に延出する延出部3aを形成し、該延出部3aの先端部に、耕耘爪軸8を軸支したものであって、延出部3aに、土中に進入して機体走行に抵抗を与える抵抗体12を設けるにあたり、該抵抗体12の基部(ブラケット16)は、延出部3aと、該延出部3aの左右両側に設けられるベアリングホルダ15とを挟む状態で、延出部3aの後部に固定されるので、抵抗体12の基部を強固に支持し、抵抗体12のガタを防止できる。しかも、抵抗体12は、延出部3aの後部から下方に延出するので、抵抗体12に対する残稈、草、土などの堆積も抑制することができる。
【0020】
また、抵抗体12は、棒状部材で形成されると共に、耕耘爪13との干渉を避けるための薄肉部12aを有するので、抵抗体12のコストダウンが図れるだけでなく、耕耘爪13との干渉も回避することができる。
【0021】
また、抵抗体12は、最大耕深時に地面となす角がほぼ直角であるので、深耕時であっても、抵抗体12が土中に確実に進入し、機体走行に抵抗を与えることができるだけでなく、浅耕時には、抵抗体12を逃げ方向に傾斜させ、残稈、草、土などの堆積を抑制することができる。
【0022】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されないことは勿論であって、例えば、抵抗体12とブラケット16は一体的に構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】歩行型耕耘機の側面図である。
【図2】歩行型耕耘機の平面図である。
【図3】ミッションケースの側面図である。
【図4】耕耘部の背面図である。
【図5】耕耘部の側面図である。
【図6】耕耘部の断面図である。
【図7】抵抗体の支持構造を示す側面図である。
【図8】抵抗体の支持構造を示す背面図である。
【図9】従来例を示す抵抗体の側面図である。
【図10】従来例を示す歩行型耕耘機の側面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 歩行型耕耘機
2 車輪
3 ミッションケース
3a 延出部
5 耕耘部
7 プロテクタ
8 耕耘爪軸
10 ロータリカバー
12 抵抗体
12a 薄肉部
15 ベアリングホルダ
16 ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を支持するミッションケースに、後下方に延出する延出部を形成し、該延出部の先端部に、耕耘爪軸を軸支した歩行型作業機であって、
前記延出部に、土中に進入して機体走行に抵抗を与える抵抗体を設けるにあたり、該抵抗体の基部は、前記延出部と、該延出部の左右両側に設けられるベアリングホルダとを挟む状態で、前記延出部の後部に固定されることを特徴とする歩行型作業機。
【請求項2】
前記抵抗体は、棒状部材で形成されると共に、耕耘爪との干渉を避けるための薄肉部を有することを特徴とする請求項1記載の歩行型作業機。
【請求項3】
前記抵抗体は、最大耕深時に地面となす角がほぼ直角であることを特徴とする請求項1又は2記載の歩行型作業機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−129771(P2006−129771A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−322116(P2004−322116)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】