説明

歩行型作業機

【課題】クラッチ操作部材をクラッチ遮断位置からクラッチ係合位置へ操作した際に、該作業機が急発進することを有効に防止し得る歩行型作業機を提供する。
【解決手段】歩行型作業機1において、変速操作部材53が中立位置以外に位置されている状態でクラッチ操作部材52がクラッチ遮断位置からクラッチ係合位置へ人為操作されることで、該作業機1の走行駆動が開始される走行駆動開始条件においては、制御部200は、HST102の出力が変速操作部材53の操作位置に対応した目標出力まで漸増するように該HST102の出力調整部材108を位置調整するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行型除雪機等の歩行型作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動源の回転動力を人為操作可能な変速装置を介して走行部へ伝達するように構成された歩行型作業機において、前記駆動源から前記走行部へ至る走行系伝動経路に介挿されたメインクラッチと、前記メインクラッチを人為操作する為のデッドマンクラッチレバーの形態をなすクラッチ操作部材とを備え、前記クラッチ操作部材をクラッチ遮断位置に付勢しておき、作業者が前記クラッチ操作部材を解放すると前記クラッチ操作部材がクラッチ遮断位置へ自動的に移動し、これにより、前記メインクラッチが動力遮断状態へ移行するように構成された歩行型作業機は、従来から公知である(例えば、特許文献1参照)。
斯かる歩行型作業機は、作業者の意に反して該作業機が走行し続けることを防止できる点で有用である。
【0003】
しかしながら、従来の歩行型作業機においては、前記クラッチ操作部材をクラッチ遮断位置からクラッチ係合位置へ操作すると、作業機が急発進するという不都合があった。
即ち、前記作業機を駆動走行している状態で、前記クラッチ操作部材への操作を解放すると、前記変速装置はその時点での変速状態のままで、前記メインクラッチが動力遮断状態へ移行する。従って、この状態において、前記クラッチ操作部材をクラッチ係合位置に位置させると、前記変速装置が前記メインクラッチによる強制的な動力遮断前の変速状態のままで、該作業機の走行駆動が開始されることになり、該作業機が作業者の意に反して急発進するという不都合が生じ得る。
特に、前記作業機を高速で移動させている状態で前記クラッチ操作部材への操作を解放し、その後、前記クラッチ操作部材をクラッチ係合位置に位置させる際には、前記問題が顕著になる。
【0004】
【特許文献1】特開2000−170132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、駆動源から走行部へ至る走行系伝動経路に介挿されたメインクラッチ及び変速装置と、クラッチ遮断位置へ付勢された人為操作可能なクラッチ操作部材と、前記変速装置を変速させる為の人為操作可能な変速操作部材とを備え、前記クラッチ操作部材への操作を解放すると前記メインクラッチが動力遮断状態となるように構成された歩行型作業機において、前記クラッチ操作部材をクラッチ遮断位置からクラッチ係合位置へ操作した際に、該作業機が急発進することを有効に防止し得る歩行型作業機の提供を、一の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を達成する為に、次の第1から第4態様の歩行型作業機を提供する。
(1)第1態様の歩行型作業機
駆動源から走行部へ至る走行系伝動経路に介挿されたメインクラッチ及び変速装置と、クラッチ遮断位置へ付勢された人為操作可能なクラッチ操作部材と、前記変速装置を変速させる為の人為操作可能な変速操作部材と、制御部とを備えた歩行型作業機であって、前記変速装置としてHSTを用い、前記変速操作部材が中立位置以外に位置されている状態で前記クラッチ操作部材がクラッチ遮断位置からクラッチ係合位置へ人為操作されることで、該作業機の走行駆動が開始される走行駆動開始条件においては、前記制御部は、前記HSTの出力が前記変速操作部材の操作位置に対応した目標出力まで漸増するように該HSTの出力調整部材を位置調整するように構成されていることを特徴とする歩行型作業機。
【0007】
(2)第2態様の歩行型作業機
駆動源から走行部へ至る走行系伝動経路に介挿されたメインクラッチ及び変速装置と、クラッチ遮断位置へ付勢された人為操作可能なクラッチ操作部材と、前記変速装置を変速させる為の人為操作可能な変速操作部材と、制御部とを備えた歩行型作業機であって、前記変速装置としてHSTを用い、前記クラッチ操作部材がクラッチ係合位置からクラッチ遮断位置へ人為操作され、その後、前記変速操作部材が中立位置以外に位置されている状態で前記クラッチ操作部材がクラッチ遮断位置からクラッチ係合位置へ人為操作されることで、該作業機の走行駆動が開始される走行駆動開始条件で前記作業機の走行駆動が再始動される条件においては、前記制御部は、再始動前直近の前記クラッチ操作部材によるクラッチ遮断時点での前記変速操作部材の操作位置に対応した前回目標出力を予め記憶し、該走行駆動開始条件において、前記変速操作部材の操作位置に対応した目標出力と前記前回目標出力とを比較して該目標出力が該前回目標出力以上の場合に、前記HSTの出力が前記目標出力まで漸増するように該HSTの出力調整部材を位置調整するように構成されていることを特徴とする歩行型作業機。
【0008】
(3)第3態様の歩行型作業機
駆動源から走行部へ至る走行系伝動経路に介挿されたメインクラッチ及び変速装置と、クラッチ遮断位置へ付勢された人為操作可能なクラッチ操作部材と、前記変速装置を変速させる為の人為操作可能な変速操作部材と、制御部とを備えた歩行型作業機であって、前記変速装置としてHSTを用い、前記変速操作部材が中立位置以外に位置されている状態で前記クラッチ操作部材がクラッチ遮断位置からクラッチ係合位置へ人為操作されることで、該作業機の走行駆動が開始される走行駆動開始条件においては、前記制御部は、前記変速操作部材の操作位置に対応した目標出力に対応する前記作業機の目標速度が所定の速度以上の場合に、前記HSTの出力が前記目標出力まで漸増するように該HSTの出力調整部材を位置調整するように構成されていることを特徴とする歩行型作業機。
【0009】
(4)第4態様の歩行型作業機
駆動源から走行部へ至る走行系伝動経路に介挿されたメインクラッチ及び変速装置と、クラッチ遮断位置へ付勢された人為操作可能なクラッチ操作部材と、前記変速装置を変速させる為の人為操作可能な変速操作部材と、制御部とを備えた歩行型作業機であって、前記変速操作部材が中立位置以外に位置されている状態で前記クラッチ操作部材がクラッチ遮断位置からクラッチ係合位置へ人為操作された際には、前記制御部は、前記変速操作部材が中立位置に位置されない限り前記駆動源から前記走行部へ動力を伝達させないように構成されていることを特徴とする歩行型作業機。
本発明に係る第4態様の歩行型作業機において、前記変速装置としては、HSTを用いてもよい。
【0010】
前記HSTとは、静油圧式無断変速装置(Hydro Static Transmission)をいう。
前記HSTとしては、代表的には、前記駆動源に作動連結されたポンプ軸(入力軸)と、前記ポンプ軸に相対回転不能に支持されたポンプ本体と、一対の作動油ラインを介して前記ポンプ本体に流体的に接続されたモータ本体と、前記モータ本体によって軸線回りに回転されるモータ軸(出力軸)と、前記ポンプ本体又は前記モータ本体の少なくとも一方の給排油量を変更させる出力調整部材とを備えたものを例示できる。
前記HSTは、出力範囲の一方端を中立位置として出力軸が一方向にのみ回転するように構成されていてもよいし、出力範囲の一方端と他方端との間の任意の位置(例えば中間位置)を中立位置として出力軸が該中立位置を境に一方向又は他方向に回転するように構成されていてもよい。
【0011】
本発明に係る第1から第3態様の歩行型作業機において、前記HSTは、出力範囲の一方端を中立位置として出力軸が一方向にのみ回転するように構成されている場合には、前記走行駆動開始条件においては、前記制御部は、前記HSTの出力軸の一方向の回転において、該HSTの出力が目標出力まで漸増するように該HSTの出力調整部材を位置調整するように構成され得る。
又、前記HSTは、出力範囲の一方端と他方端との間の任意の位置を中立位置として出力軸が該中立位置を境に一方向又は他方向に回転するように構成されている場合には、前記走行駆動開始条件においては、前記制御部は、前記HSTの出力軸の一方向又は他方向の回転において、該HSTの出力が目標出力まで漸増するように該HSTの出力調整部材を位置調整するように構成され得る。
【0012】
本発明に係る第2及び第3態様の歩行型作業機において、前記制御部は、前記走行駆動開始条件において、前記変速操作部材の操作位置に対応した目標出力の大きさによって、前記出力調整部材を位置調整する制御を行うか否かを決定するように構成され得る。
前記第3態様の歩行型作業機では、例えば、前記作業機が、作業する為の走行速度範囲に設定された作業速度モードと、前記作業速度モードよりも速い移動速度モードであって、移動する為の走行速度範囲に設定された移動速度モードとが切替可能とされている場合において、前記所定の速度以上として、例えば、前記作業速度モードの走行速度範囲のうちの最高速度以上を挙げることができる。
【0013】
なお、本発明に係る第1から3態様の歩行型作業機において、前記HSTの出力が目標出力まで漸増する加速度は、例えば、図10に示すように、「目標出力に対応する作業機の目標速度v[m/s]」を「前記クラッチ操作部材のクラッチ遮断位置からクラッチ係合位置への人為操作後から目標速度vに到達する時間T[s]」で割り、さらに「重力加速度(≒9.81[m/s(G))]」で割った急加速度として表すことできる。
前記急加速度としては、それには限定されないが、0.02[m/s(G))]以下を例示できる。
又、前記クラッチ操作部材のクラッチ遮断位置からクラッチ係合位置への人為操作後、前記作業機が停止状態から目標速度の80%に到達するまでの加速応答時間T(図10参照)としては、それには限定されないが、3[秒(s)]以上を例示できる。
【0014】
又、本発明に係る第1から第3態様の歩行型作業機において、前記クラッチ操作部材がクラッチ係合位置に位置されている状態で前記変速操作部材が増速側に人為操作される条件においては、前記制御部は、該変速操作部材が人為操作された後の該変速操作部材の操作位置に対応した前記HSTの目標出力に対応する前記作業機の目標速度と、該変速操作部材が人為操作される時点での該変速操作部材の操作位置に対応した前記HSTの現在の出力に対応する前記作業機の現在の速度との偏差を算出し、該偏差が所定の値以上の場合に、前記HSTの前記現在の出力が前記目標出力まで漸増するように該HSTの出力調整部材を位置調整するように構成されていてもよい。
【0015】
又、本発明に係る第1から第3態様の歩行型作業機において、例えば、前記制御部は、前記走行駆動開始条件において、前記クラッチ操作部材がクラッチ遮断位置からクラッチ係合位置へ人為操作される時点での前記変速操作部材の操作位置に応じて、前記HSTの出力が前記目標出力まで漸増する増加の程度を変更するように構成されていてもよい。この場合、例えば、前記変速操作部材の操作位置が高速側に位置されているに従って、前記増加の程度を高めるようにすることができる。
【0016】
又、本発明に係る第1から第3態様の歩行型作業機において、例えば、前記制御部は、前記走行駆動開始条件において、前記出力調整部材の中立位置と前記変速操作部材の操作位置に対応した出力位置との間の任意の位置から該出力位置まで前記出力調整部材を位置調整するように構成されていてもよいが、前記制御部は、前記走行駆動開始条件において、前記出力調整部材を中立位置から前記変速操作部材の操作位置に対応した出力位置まで位置調整するように構成されていることが好ましい。
又、本発明に係る第1から第3態様の歩行型作業機において、前記変速操作部材が中立位置以外に位置されている状態で前記クラッチ操作部材がクラッチ係合位置からクラッチ遮断位置へ移動した際には、例えば、前記制御部は、前記変速操作部材の操作位置に拘わらず前記出力調整部材を中立位置へ戻すように構成されていてもよい。
【0017】
本発明に係る第4態様の歩行型作業機において、前記駆動源から前記走行部へ動力を伝達させない態様としては、前記メインクラッチを動力伝達状態へ移行させない態様を例示できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る第1態様の歩行型作業機によれば、前記変速操作部材が中立位置以外に位置されている状態で前記クラッチ操作部材がクラッチ遮断位置からクラッチ係合位置へ人為操作されることで、該作業機の走行駆動が開始される走行駆動開始条件においては、前記制御部は、前記HSTの出力が前記変速操作部材の操作位置に対応した目標出力まで漸増するように該HSTの出力調整部材を位置調整するように構成されているので、前記クラッチ操作部材をクラッチ遮断位置からクラッチ係合位置へ操作した際に、該作業機が急発進することを有効に防止することができる。
【0019】
本発明に係る第2及び第3態様の歩行型作業機によれば、前記制御部は、前記目標出力の大きさによって、前記出力調整部材を位置調整するように構成されているので、前記目標出力の大きさを条件として、前記出力調整部材を位置調整する制御を行うか否かを決定することが可能となる。
【0020】
又、本発明に係る第1から第3態様の歩行型作業機において、前記クラッチ操作部材がクラッチ係合位置に位置されている状態で前記変速操作部材が増速側に人為操作される条件においては、前記制御部は、前記作業機の目標速度と、前記作業機の現在の速度との偏差を算出し、該偏差が所定の値以上の場合に、前記HSTの前記現在の出力が前記目標出力まで漸増するように該HSTの出力調整部材を位置調整するように構成されている場合には、前記作業機が走行状態において前記変速操作部材が増速側に人為操作されたとしても、該作業機が急激に加速することを有効に防止することができる。
【0021】
又、本発明に係る第1から第3態様の歩行型作業機において、前記制御部は、前記走行駆動開始条件において、前記クラッチ操作部材がクラッチ遮断位置からクラッチ係合位置へ人為操作される時点での前記変速操作部材の操作位置に応じて、前記HSTの出力が前記目標出力まで漸増する増加の程度を変更するように構成されている場合には、例えば、前記変速操作部材の操作位置が高速側に位置されているに従って、前記増加の程度を高めるようにすることができ、これにより、前記変速操作部材の操作位置に拘わらず、所定の一定時間内に前記HSTの出力を前記目標出力まで漸増させることが可能となる。
【0022】
又、本発明に係る第1から第3態様の歩行型作業機において、前記制御部は、前記走行駆動開始条件において、前記出力調整部材を中立位置から前記変速操作部材の操作位置に対応した出力位置まで位置調整するように構成されている場合、及び、前記変速操作部材が中立位置以外に位置されている状態で前記クラッチ操作部材がクラッチ係合位置からクラッチ遮断位置へ移動した際には、前記制御部は、前記変速操作部材の操作位置に拘わらず前記出力調整部材を中立位置へ戻すように構成されている場合には、前記クラッチ操作部材をクラッチ遮断位置からクラッチ係合位置へ操作した際に、前記出力調整部材を中立位置から始動できるので、該作業機をスムーズに発進させることが可能となる。
【0023】
本発明に係る第4態様の歩行型作業機によれば、前記変速操作部材が中立位置以外に位置されている状態で前記クラッチ操作部材がクラッチ遮断位置からクラッチ係合位置へ人為操作された際には、前記制御部は、前記変速操作部材が中立位置に位置されない限り前記駆動源から前記走行部へ動力を伝達させないように構成されているので、前記変速操作部材が中立位置以外に位置されている状態で前記クラッチ操作部材がクラッチ遮断位置からクラッチ係合位置へ人為操作されても、前記変速操作部材が中立位置に位置されない限り前記駆動源から前記走行部へ動力が伝達しないようにすることができる。従って、前記クラッチ操作部材をクラッチ遮断位置からクラッチ係合位置へ操作した際に、該作業機が急発進することを有効に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明に係る歩行型作業機の一実施形態である歩行型除雪機1の概略側面図であり、図2は、図1に示す歩行型作業機1の概略平面図である。
【0025】
図1及び図2に示す歩行型作業機1は、機体フレーム10と、該作業機1の走行路上における雪を除去するように構成された除雪部20と、駆動源31(ここではエンジン)を含む駆動部30と、左右一対の走行部40L,40Rと、運転操作部50とを備えている。
【0026】
前記除雪部20は、前記機体フレーム10の機体前後方向(図1の矢印X参照)前方X1において該機体フレーム10に支持されており、雪の掻き込みを行う掻込オーガ21と、前記掻込オーガ21を覆うオーガハウジング22と、前記オーガハウジング22の機体前後方向X後方X2に配設されたブロアハウジング23と、前記ブロアハウジング23に内装されたブロア24と、前記ブロア24の上方に配設されたシュータ25とを備えている。
【0027】
前記掻込オーガ21は、前記作業機1の走行路上における雪を機体左右方向(図2の矢印Y参照)中央に向けて掻き集めると共に前記ブロアハウジング23内の前記ブロア24に向けて送るように構成されている。
前記掻込オーガ21は、ここでは、外周面に螺旋状の突起が設けられた略円柱形状の部材を備えており、軸心方向が機体左右方向Yに沿うように且つ地面に近接するように配設されている。
そして、前記掻込オーガ21は、両端部が前記オーガハウジング22に軸心回り回転可能に軸支されており、前記駆動源31からの駆動力により回転駆動されるようになっている。
【0028】
前記オーガハウジング22は、前記掻込オーガ21を軸支する構造体とされており、前記掻込オーガ21の筐体としての機能を兼ね備えたものとされている。
前記ブロアハウジング23は、前記ブロア24を内設する筐体とされており、前記オーガハウジング22を支持する構造体としての機構を兼ね備えたものされている。
【0029】
前記ブロア24は、前記駆動源31からの駆動力により回転駆動されることで、前記掻込オーガ21により前記ブロアハウジング23内に搬送されてきた雪を前記シュータ25に向けて跳ね飛ばすように構成されている。
前記シュータ25は、ここでは、筒状の部材とされており、前記ブロアハウジング23の水平面に対して上下方向に沿った旋回軸回り旋回可能とされていると共に、先端部が水平方向に沿った回動軸回り上下回動可能とされている。
【0030】
斯かる構成を備えることにより、前記除雪部20は、前記掻込オーガ21により前記ブロアハウジング23内に搬送され、前記ブロア24により跳ね飛ばされた雪を、前記シュータ25を通して前記作業機1の走行路外に除去するようになっていると共に、該シュータ25を通過して地面に落下する雪の落下位置を位置調整できるようになっている。
【0031】
前記駆動部30は、前記除雪部20の機体前後方向X後方X2に配設されており、前記駆動源31に加えて、トランスミッション100を備えている。
前記駆動源31は、前部から出力軸31aが突出しており、該出力軸31aが中途部で前記機体フレーム10に設けられたブラケット11に軸受け(図示省略)を介して支持されている。
前記トランスミッション100は、前記駆動源31からの駆動力を前記左右一対の走行部40L,40Rに伝達し、前記作業機1を前進又は後進させ得るように構成されている。
詳しくは、前記トランスミッション100は、ミッションケース101及び変速装置102を備えており、該ミッションケース101から入力軸104が前向きに突出されている。前記入力軸104は、前端部が前記ブラケット11に軸支されている。
なお、前記ミッションケース101は、ここでは、左ケースと右ケースとの二つの部材からなり、左右に分割可能な構成とされている。
【0032】
前記駆動部30は、前記駆動源31の前記出力軸31aから、プーリ及びベルト等のPTO駆動力伝達手段12を介して、前記除雪部20における前記掻込オーガ21及び前記ブロア24に駆動力を伝達し、且つ、プーリ及びベルト等の走行駆動力伝達手段13を介して、前記トランスミッション100における前記入力軸104に駆動力を伝達し得るように構成されている。
前記走行駆動力伝達手段13は、本実施の形態では、ベルトプーリ式のものであり、前記駆動源31の前記出力軸31aに後述するメインクラッチ132を介して設けられたプーリ131と、前記入力軸104に設けられたプーリ133と、前記プーリ131及び前記プーリ133に巻掛けられたベルト134とを備えている。
【0033】
前記駆動部30は、前記構成に加えて、ここでは、発電機(図示省略)、バッテリ32及び左右一対の旋回用の電動モータ33L,33Rを備えている。
前記駆動部30を構成する部材のうち、前記駆動源31、前記発電機及び前記バッテリ32は前記機体フレーム10に設けられる一方、前記左右一対の旋回用の電動モータ33L,33R及び前記トランスミッション100は前記機体フレーム10とは別体にて配置されている。
【0034】
又、前記駆動部30は、前記発電機を回転駆動して該発電機で電力を発生させ、該発電機で発生した電力が前記バッテリ32に充電されるようになっている。
そして、前記駆動部30は、充電されたバッテリ32(及び前記発電機)によって、前記左電動モータ33L及び前記右電動モータ33Rの駆動回路にそれぞれ電力を供給し、該駆動回路によって、該電動モータ33L,33Rの回転数を制御しつつ該電動モータ33L,33Rを駆動し得るように構成されている。
斯かる構成を備えることにより、前記作業機1は、右旋回又は左旋回し得るようになっている。
【0035】
図3は、図1及び図2に示す歩行型作業機1におけるスケルトン図である。
前記変速装置102は、HST(Hydro Static Transmission;静油圧式無断変速装置)とされており、該HST102は、ここでは、ポンプ軸(前記入力軸)104と、ポンプ本体105と、モータ本体106と、モータ軸(出力軸)107と、出力調整部材108とを備えている。
【0036】
前記ポンプ軸104は、前記駆動源31に作動連結されており、前記ポンプ本体105は、前記ポンプ軸104に相対回転不能に支持されている。
前記モータ本体106は、一対の作動油ライン109を介して前記ポンプ本体105に流体的に接続されており、前記モータ軸107は、前記モータ本体106によって軸線回りに回転されるように構成されている。
そして、前記出力調整部材108は、前記ポンプ本体105又は前記モータ本体106の少なくとも一方(ここでは、前記ポンプ本体105)の給排油量を変更させ得るように構成されている。
【0037】
本実施の形態においては、前記ポンプ本体105及び前記モータ本体106は、前記ミッションケース101の後端部に固設されている。
前記ポンプ本体105は、ここでは、容量可変型ピストンポンプとされており、前記出力調整部材108は、可動斜板とされている。
【0038】
前記HST102は、前記可動斜板108の板面を前記ポンプ軸104の軸線方向に対して垂直としたときは、前記ポンプ軸104が回転駆動されても前記モータ本体106に圧油を搬送することがない中立位置をとり、前記可動斜板108の板面を前記ポンプ軸104の軸線方向に対して傾倒させたときは、前記ポンプ軸104の回転駆動に連動して、前記モータ本体106に圧油を搬送することで、前記モータ軸107を回転させ得るように構成されている。
前記可動斜板108は、前記ポンプ軸104の軸線方向に対する傾倒角度が調節されることにより、前記ポンプ軸104が一回転する間に前記ポンプ本体105から前記一対の作動油ライン109を介して前記モータ本体106に搬送される圧油の量、即ち、前記モータ軸107の回転速度を調整できるようになっている。
【0039】
前記モータ本体106は、ここでは、定容量型モータとされている。但し、それに限定されるものではなく、前記ポンプ本体105及び前記モータ本体106の双方を容量可変型のものとしてもよいし、前記ポンプ本体105を定容量型のものとし且つ前記モータ本体106を容量可変型のものとしてもよい。
【0040】
又、前記ポンプ軸104には、前記プーリ133が外嵌固定されており、前記モータ軸107には、ベベルギヤ135が外嵌固定されている。
前記トランスミッション100は、さらに、第1及び第2伝動軸136,115並びに左右一対の差動機構103L,103Rを備えている。
前記第1伝動軸136には、ベベルギヤ137及びスプロケット139が外嵌固定されており、前記第2伝動軸115には、スプロケット140が外嵌固定されている。なお、前記駆動源31から走行部40L,40Rへ至る走行系伝動経路に制動機構が介挿されていてもよい。例えば、前記第1伝動軸136に、該第1伝動軸136の回転を制動し得るブレーキ138が設けられていてもよい。
【0041】
そして、前記第1伝動軸136における前記ベベルギヤ137と前記モータ軸107における前記ベベルギヤ135とが互いに噛合するようになっていると共に、前記第1伝動軸136における前記スプロケット139及び前記第2伝動軸115における前記スプロケット140にチェーン141が巻掛けられている。
斯かる構成を備えることにより、前記駆動部30は、前記HST102から前記ベベルギヤ135及び前記ベベルギヤ137を介して前記第1伝動軸136に伝達される駆動力を前記スプロケット139,前記チェーン141及び前記スプロケット140を介して前記第2伝動軸115に伝達し得るようになっている。
【0042】
前記差動機構103L,103Rは、左右略対称に構成されている。従って、左右の構成は、実質的に同じであることから、以下の説明では、左側の差動機構103Lを中心に説明し、右側の差動機構103Rについては括弧内に示す。
【0043】
前記差動機構103L(103R)における太陽歯車(以下サンギヤという)110L(110R)は、前記第2伝動軸115の左半部(右半部)に外嵌固定され、複数の遊星歯車(以下プラネタリギヤという)111L(111R)と互いに噛合している。キャリア112L(112R)は、走行駆動軸113L(113R)の一端部に外嵌固定され、該走行駆動軸113L(113R)と一体回転する略円盤状の部材とされている。
前記走行駆動軸113L(113R)の反対側に位置する前記キャリア112L(112R)の盤面には、複数の回転軸114L(114R)が突設され、該複数の回転軸114L(114R)にそれぞれ前記複数のプラネタリギヤ111L(111R)が回転可能に軸支されている。
【0044】
前記複数のプラネタリギヤ111L(111R)は、前記サンギヤ110L(110R)と互いに噛合するようになっている。なお、前記第2伝動軸115は、左端部(右端部)が軸受け(図示省略)を介して前記キャリア112L(112R)に軸支されている。
リングギア116L(116R)は、内周面と外周面に歯車部が形成され略リング状のギヤとされており、内周面側の歯車部と前記複数のプラネタリギヤ111L(111R)とが互いに噛合するようになっている。
【0045】
又、前記左右一対の電動モータ33L,33Rは、前記ミッションケース101の外面に固設されている。前記電動モータ33L,33Rの出力軸117L,117Rは、それぞれ、前記ミッションケース101内に挿入されている。
そして、前記左電動モータ33Lの前記出力軸117Lには、ウォームアップギヤ118Lが外嵌固定されており、該ウォームアップギヤ118Lと、前記左差動機構103Lの前記リングギア116Lの外周面側の歯車部とが互いに噛合している。
同様に、前記右電動モータ33Rの前記出力軸117Rには、ウォームアップギヤ118Rが外嵌固定されており、該ウォームアップギヤ118Rと、前記右差動機構103Rの前記リングギア116Rの外周面側の歯車部とが互いに噛合している。
【0046】
前記走行部40L,40Rは、それぞれ、前記左右一対の走行駆動軸113L,113Rを備えており、本実施の形態では、クローラ式のものとされている。なお、前記走行部40L,40Rは、ホイル式のものとされていてもよい。
前記走行部40L,40Rは、それぞれ、前記機体フレーム10の機体左右方向Y両側に配設され(図2参照)、且つ、左右略対称に構成されたものとされている。
【0047】
図1及び図2に示すように、前記左右一対の走行駆動軸113L,113Rは、それぞれ、前記トランスミッション100の機体左右方向Y外方に突出しており、ここでは、前記走行部40L,40Rにおけるトラックフレーム41L,41Rの後部寄り部位に軸受け(図示省略)を介して貫通されている。
そして、前記トラックフレーム41L,41Rの外側の前記走行駆動軸113L,113Rの外端部には、駆動スプロケット42L,42Rが固設されている。
【0048】
前記左右一対の走行駆動軸113L,113Rに略平行に配設された従動軸45は、両端部が前記トラックフレーム41L,41Rの前部寄り部位に軸受け(図示省略)を介して貫通されている。
そして、前記トラックフレーム41L,41Rの外側の前記従動軸45の両端部には、従動スプロケット43L,43Rが固設されており、前記駆動スプロケット42L,42R及び前記従動スプロケット43L,43Rには、それぞれ、クローラベルト44L,44Rが巻掛けられている。
【0049】
なお、ここでは、前記左右のトラックフレーム41L,41Rの前部寄りを繋ぐ軸と、前記機体フレーム10とが電動油圧シリンダ46を介して連結されており、前記機体フレーム10の後方において、左右一対のブラケット14L,14Rが、それぞれ、前記左右一対の走行駆動軸113L,113Rに対して軸受け(図示省略)を介して回動可能に支持されている。
【0050】
前記運転操作部50は、操向ハンドル51、クラッチ操作部材52及び変速操作部材53を備えている。
前記操向ハンドル51は、前記走行部40L,40Rの操向操作を行うものであり、該操向ハンドル51に、前記クラッチ操作部材52及び前記変速操作部材53が設けられている。
【0051】
前記クラッチ操作部材52は、前記メインクラッチ132のクラッチ遮断位置へ付勢された人為操作可能なものとされている。
斯かる構成を備えることにより、前記歩行型作業機1は、前記クラッチ操作部材52がクラッチ係合位置から解放されることで、クラッチ遮断位置へ自動的に移動し、これにより、前記メインクラッチ132が動力遮断状態へ移行するように構成されている。
前記クラッチ操作部材52は、ここでは、デッドマンクラッチレバーの形態をなすクラッチレバーとされている。
前記変速操作部材53は、前記変速装置102を変速操作する為の人為操作可能なものであり、ここでは、走行変速レバーとされている。
【0052】
さらに具体的には、前記操向ハンドル51は、平面視で実質上U字型に形成されており(図2参照)、両端部に一対の支持杆51a,51aが設けられている。前記一対の支持杆51a,51aは、それぞれ、前方下向きに延びており(図1参照)、前記左右一対のブラケット14L,14Rに連結されている。
【0053】
前記運転操作部50は、前記構成に加えて、左右一対の旋回レバー54、操作ボックス55及び作業部昇降レバー56を備えている。
前記左右一対の旋回レバー54、前記操作ボックス55及び前記作業部昇降レバー56は、前記操向ハンドル51に設けられている。なお、前記一対の支持杆51a,51aの間には、バッテリ台57が架設されている。
【0054】
本実施の形態に係る歩行型作業機1は、前記駆動源31から前記走行部40L,40Rへ至る走行系伝動経路に介挿された前記メインクラッチ132及び前記HST102と、クラッチ遮断位置へ付勢された人為操作可能な前記クラッチ操作部材52と、前記HST102を変速させる為の人為操作可能な前記変速操作部材53とを備えている。
【0055】
詳しくは、前記メインクラッチ132は、クラッチが係合されるクラッチ係合位置と、クラッチの係合が遮断されるクラッチ遮断位置とを切替可能とされている。
前記メインクラッチ132は、前記クラッチ係合位置と、前記クラッチ遮断位置とが切り替えられることにより、前記駆動源31から前記走行部40L,40Rへ動力が伝達される動力伝達状態(クラッチ係合状態)と、前記駆動源31から前記走行部40L,40Rへの動力が遮断される動力遮断状態(クラッチ遮断状態)とをとり得るように構成されている。
【0056】
本実施の形態では、前記メインクラッチ132は、前記駆動源31と前記変速装置102との間の前記走行系伝動経路に介挿されており、ここでは、前記駆動源31から前記トランスミッション100に駆動力を伝達する前記走行駆動力伝達手段13に配設されている。
さらに具体的には、前記駆動源31の前記出力軸31aに装着されたベルトプーリ式の前記走行駆動力伝達手段13における前記プーリ131に前記メインクラッチ132が設けられている。なお、前記メインクラッチ132は、前記走行駆動力伝達手段13における前記プーリ133に設けられてもよい。
又、前記メインクラッチ132は、前記変速装置102と前記走行部40L,40Rとの間の前記走行系伝動経路に介挿されていてもよい。
【0057】
前記メインクラッチ132は、前記クラッチ係合位置と、前記クラッチ遮断位置とを切り替えることにより、前記動力伝達状態(ここでは、前記プーリ131が前記出力軸31aに相対回転不能に支持された状態、即ち、前記駆動源31からの動力を伝達可能な状態)と、前記動力遮断状態(ここでは、前記プーリ131が前記出力軸31aに軸線回り相対回転自在に支持された状態、即ち、前記駆動源31からの動力を遮断した状態)とをとり得るように構成されている。
【0058】
以上説明した歩行型作業機1において、前記走行系伝動経路では、前記クラッチ操作部材52が人為操作されることで、前記メインクラッチ132が前記クラッチ係合位置に位置され、前記動力伝達状態にされると、前記駆動源31からの駆動力は、該駆動源31の前記出力軸31a、前記走行駆動力伝達手段13(前記プーリ131、前記ベルト134及び前記プーリ133)、前記ポンプ軸(入力軸)104を経て前記HST102に伝達される。
【0059】
前記HST102へ伝達された駆動力は、前記変速操作部材53の操作位置に応じて前記HST102にて変速された後、前記モータ軸(出力軸)107、前記ベベルギヤ135、前記ベベルギヤ137、前記伝動軸136、前記スプロケット139、前記チェーン141、前記スプロケット140及び前記伝動軸115を経て前記左右一対の差動機構103L,103Rの前記サンギヤ110L,110Rに伝達される。
【0060】
前記差動機構103Lに伝達された駆動力は、前記サンギヤ110L、前記プラネタリギヤ111L、前記回転軸114L、前記キャリア112L及び前記出力軸113Lを経て前記走行部40Lの前記駆動スプロケット42Lに伝達される。
一方、前記差動機構103Rに伝達された駆動力は、前記サンギヤ110R、前記プラネタリギヤ111R、前記回転軸114R、前記キャリア112R及び前記出力軸113Rを経て前記走行部40Rの前記駆動スプロケット42Rに伝達される。
このようにして、前記駆動源31からの駆動力は前記左右一対の走行部40L,40Rに伝達され、該走行部40L,40Rが回転駆動される。
【0061】
そして、前記作業機1を駆動走行している状態で、前記クラッチ操作部材52への操作が前記クラッチ遮断位置へ解放されると、前記変速装置53は中立位置以外に位置されている状態で、前記メインクラッチ132が動力遮断状態へ移行することになる。
【0062】
次に、本発明の実施に係る歩行型作業機1の第1実施形態の制御例について図4から図6を参照しながら説明する。
本発明の実施に係る歩行型作業機1は、前記メインクラッチ132、前記HST102、前記クラッチ操作部材52及び前記変速操作部材53に加えて、第1実施形態の制御例を実施する為の制御部200を備えている。
図4は、第1実施形態の制御例を実施する前記歩行型作業機1の制御系の概略構成を示すシステムブロック図である。
【0063】
詳しくは、前記制御部200は、制御装置210及び記憶部220を備えている。
具体的には、前記制御装置210は、中央処理装置(CPU)からなり、各種演算処理を実行する制御演算手段を含んでいる。
前記記憶部220には、第1実施形態に係る制御例を含む制御プログラムや必要な関数が記憶されており、例えば、ROM221及びRAM222を含んでいる。
【0064】
前記ROM221は、前記制御プログラムを格納したり、演算式又はルックアップテーブルに関する所定のデータを記憶するように構成されている。前記CPU210は、前記ROM221に格納された前記制御プログラムを必要に応じて前記RAM222にロードし、該制御プログラムを実行するように構成されている。又、前記RAM222は、前記CPU210による前記制御プログラムの実行の際に使用され、且つ、該実行の際に生成されるデータを一時的に保持するように構成されている。
【0065】
又、前記HST102における前記出力調整部材108は、電動駆動可能とされており、前記制御部200からの作動信号に基づき、前記ポンプ本体105又は前記モータ本体106の少なくとも一方(ここでは、前記ポンプ本体105)の給排油量を変更させ得るように構成されている。
この出力調整部材108は、前記板面の前記ポンプ軸104の軸線方向に対する角度を変更可能なHST変速モータ108aに接続されている。
前記HST変速モータ108aは、前記制御部200からの作動信号に基づき、前記出力調整部材108の前記板面の角度を変更し、これにより、前記ポンプ本体105又は前記モータ本体106の少なくとも一方(ここでは、前記ポンプ本体105)の給排油量を変更し得るように、該制御部200の出力系に、該HST変速モータ108aを駆動するHST変速モータ駆動部108bを介して電気的に接続されている。
【0066】
前記歩行型作業機1は、前記構成に加えて、クラッチ係合状態検出装置60と、変速操作位置検出装置70と、HST出力調整位置検出装置80と、HST出力検出装置90とを備えている。なお、前記クラッチ係合状態検出装置60、前記変速操作位置検出装置70、前記HST出力調整位置検出装置80及び前記HST出力検出装置90は、図4のブロック図にのみ示しており、図1から図3では図示を省略してある。
【0067】
前記クラッチ係合状態検出装置60は、前記メインクラッチ132が前記動力伝達状態(クラッチ係合状態)か又は前記動力遮断状態(クラッチ遮断状態)かを検出し得るように構成されている。
具体的には、前記クラッチ係合状態検出装置60は、ここでは、前記クラッチ係合位置のときにオンされ且つ前記クラッチ遮断位置のときにオフされるか又は前記クラッチ係合位置のときにオフされ且つ前記クラッチ遮断位置のときにオンされるように構成されたクラッチスイッチとされており、クラッチ係合状態又はクラッチ遮断状態に関する検出信号が前記制御部200に送信されるように、該制御部200の入力系に電気的に接続されている。
【0068】
前記変速操作位置検出装置70は、前記変速操作部材53の変速操作位置を検出し得るように構成されている。
具体的には、前記変速操作位置検出装置70は、ここでは、前記走行変速レバー53の角度を検出する変速レバー角度センサとされており、変速操作位置に関する検出信号が前記制御部200に送信されるように、該制御部200の入力系に電気的に接続されている。
【0069】
前記HST出力調整位置検出装置80は、前記HST102における前記ポンプ本体105又は前記モータ本体106の少なくとも一方(ここでは、前記ポンプ本体105)の給排油量を検出し得るように構成されている。
具体的には、前記HST出力調整位置検出装置80は、ここでは、前記HST102における前記可動斜板108の板面の前記角度を検出するHST変速角度センサとされており、前記ポンプ本体105又は前記モータ本体106の少なくとも一方(ここでは、前記ポンプ本体105)の給排油量に関する検出信号が前記制御部200に送信されるように、該制御部200の入力系に電気的に接続されている。
【0070】
前記HST出力検出装置90は、前記HST102の出力を検出し得るように構成されている。
具体的には、前記HST出力検出装置90は、前記HST102における前記モータ軸(出力軸)107の回転状態を検出するHST出力回転センサとされており、前記モータ軸107の回転速度を検出するHST回転速度センサ91と、前記モータ軸107の回転方向を検出するHST回転方向センサ92とを含んでいる。
前記HST回転速度センサ91は、前記モータ軸107の回転速度に関する検出信号が前記制御部200に送信されるように、又、前記HST回転方向センサ92は、前記モータ軸107の回転方向に関する検出信号が前記制御部200に送信されるように、それぞれ、該制御部200の入力系に電気的に接続されている。
【0071】
そして、前記制御部200は、前記変速操作部材53が中立位置以外に位置されている状態で前記クラッチ操作部材52が前記クラッチ遮断位置から前記クラッチ係合位置へ人為操作されることで、前記作業機1の走行駆動が開始される走行駆動開始条件においては、前記HST102の出力が前記変速操作部材53の操作位置に対応した目標出力まで漸増するように該HST102の出力調整部材108を位置調整する(漸増モードの位置調整を行う)ように構成されている。
図5は、第1実施形態の制御例を説明する為のグラフであって、前記HST102の出力の時間的変化を示すグラフである。
図5において、「α」は通常モードの歩行型作業機1による目標出力aでのHSTの出力の時間的変化を示している。「β」は本発明の実施に係る前記漸増モードの歩行型作業機1による目標出力bでの前記HST102の出力の時間的変化を示している。「γ」は前記漸増モードの歩行型作業機1による目標出力c(<前記目標出力b)での前記HST102の出力の時間的変化を示している。又、「τ」は本発明の実施に係る歩行型作業機1において前記HST102の出力を該作業機1の走行駆動の開始から前記目標出力b,cまで漸増させるまでの時間を示している。なお、「φ」は、前記駆動源31の出力の時間的変化を示している。
図5に示すように、前記歩行型作業機1では、前記走行駆動開始条件において、前記HST102の出力β,γが前記変速操作部材53の操作位置に対応した目標出力b,cまで漸増する。
【0072】
第1実施形態の制御例を実施する前記歩行型作業機1によれば、前記走行駆動開始条件においては、前記制御部200は、前記HST102の出力が前記変速操作部材53の操作位置に対応した目標出力まで漸増するように該HST102の出力調整部材108を位置調整するように構成されているので、前記クラッチ操作部材52を前記クラッチ遮断位置から前記クラッチ係合位置へ操作した際に、該作業機1が急発進することを有効に防止することができる。
【0073】
具体的には、前記制御部200は、前記変速操作位置検出装置70によって検出された前記変速操作部材53の操作位置が中立位置以外に位置されている状態で前記クラッチ係合状態検出装置60によって前記クラッチ操作部材52が前記クラッチ遮断位置から前記クラッチ係合位置へ人為操作されたことを検出することで、前記作業機1の走行駆動が開始される走行駆動開始条件において、前記HST出力検出装置90によって検出された前記HST102における前記モータ軸(出力軸)107の出力が、前記変速操作位置検出装置70によって検出された前記変速操作部材53の操作位置に対応した目標出力まで、例えば、前記HST102の出力開始から前記変速操作部材53の操作位置に対応した目標出力になるまでの該作業機1の急加速度が0.02[m/s(G)]以下で漸増するように該HST102における前記HST変速角度センサ80の検出値に基づき前記HST変速モータ108aによって前記可動斜板108の板面の前記ポンプ軸104の軸線方向に対する角度を調整するように構成されている。
【0074】
本実施の形態においては、前記制御部200は、前記構成に加えて、前記クラッチ操作部材52が前記クラッチ係合位置から前記クラッチ遮断位置へ人為操作され、その後、前記走行駆動開始条件で前記作業機1の走行駆動が再始動される条件においては、再始動前直近の前記クラッチ操作部材52によるクラッチ遮断時点での前記変速操作部材53の操作位置に対応した前回目標出力を予め記憶するように構成されている。
さらに、前記制御部200は、前記走行駆動開始条件において、前記変速操作部材53の操作位置に対応した目標出力と前記前回目標出力とを比較して該目標出力が該前回目標出力以上の場合に、前記HST102の出力が前記目標出力まで漸増するように該HST102の出力調整部材を位置調整するように構成されている。
このように前記制御部200は、前記走行駆動開始条件において、前記目標出力の大きさによって、前記出力調整部材108を位置調整するように構成されていると、前記目標出力の大きさを条件として、前記出力調整部材108を位置調整する制御を行うか否かを決定することが可能となる。
【0075】
具体的には、前記制御部200は、前記クラッチ係合状態検出装置60によって前記クラッチ操作部材52が前記クラッチ係合位置から前記クラッチ遮断位置へ人為操作されたことが検出され、その後、前記走行駆動開始条件で前記作業機1の走行駆動が再始動される条件において、再始動前直近の前記クラッチ操作部材52によるクラッチ遮断時点での前記変速操作位置検出装置70によって検出された前記変速操作部材53の操作位置に対応した前回目標出力を前記記憶部220に予め記憶するように構成されている。
さらに、前記制御部200は、前記走行駆動開始条件において、前記変速操作位置検出装置70によって検出された前記変速操作部材53の操作位置に対応した目標出力と前記前回目標出力とを比較して該目標出力が該前回目標出力以上の場合に、前記HST出力検出装置90によって検出された前記HST102における前記モータ軸(出力軸)107の出力が、前記変速操作位置検出装置70によって検出された前記変速操作部材53の操作位置に対応した目標出力まで漸増するように該HST102における前記HST変速角度センサ80の検出値に基づき前記HST変速モータ108aによって前記可動斜板108の板面の前記ポンプ軸104の軸線方向に対する角度を調整するように構成されている。
【0076】
なお、前記制御部200は、前記走行駆動開始条件において、前記目標出力に対応する前記作業機1の目標速度が所定の速度以上の場合に、前記HST102の出力が前記目標出力まで漸増するように該HST102の出力調整部材108を位置調整するように構成されていてもよい。
この場合、例えば、前記歩行型作業機1が、作業する為の走行速度範囲に設定された作業速度モードと、前記作業速度モードよりも速い移動速度モードであって、移動する為の走行速度範囲に設定された移動速度モードとが切替可能とされている場合において、前記所定の速度以上を、前記作業速度モードの走行速度範囲のうちの最高速度以上とすることができる。
【0077】
又、本実施の形態においては、前記制御部200は、前記構成に加えて、前記走行駆動開始条件において、前記クラッチ操作部材52が前記クラッチ遮断位置から前記クラッチ係合位置へ人為操作される時点での前記変速操作部材53の操作位置に応じて、前記HST102の出力が前記目標出力まで漸増する増加の程度を変更するように(ここでは、前記変速操作部材53の操作位置が高速側に位置されているに従って、前記増加の程度を高めるように)構成されている。
詳しくは、前記制御部200は、図5に示すように、前記HST102の出力βが前記目標出力bまで漸増する時間と、前記HST102の出力γが前記目標出力c(<前記目標出力b)まで漸増する時間とが略一定時間τとなるように構成されている。
斯かる構成を備えることにより、前記歩行型作業機1は、前記変速操作部材53の操作位置に拘わらず、所定の一定時間τ内に前記HST102の出力を前記目標出力まで漸増させることが可能となる(図5参照)。
【0078】
具体的には、前記制御部200は、前記走行駆動開始条件において、前記クラッチ操作部材52が前記クラッチ係合状態検出装置60によって前記クラッチ遮断位置から前記クラッチ係合位置へ人為操作されたことが検出された時点での前記変速操作位置検出装置70によって検出された前記変速操作部材53の操作位置に応じて、ここでは、前記変速操作部材53の操作位置が高速側に位置されているに従って、前記増加の程度を高めるように構成された制御フィルタを用いて、前記HST出力検出装置90によって検出された前記HST102における前記モータ軸(出力軸)107の出力が、前記変速操作位置検出装置70によって検出された前記変速操作部材53の操作位置に対応した目標出力まで漸増するように該HST102における前記HST変速角度センサ80の検出値に基づき前記HST変速モータ108aによって前記可動斜板108の板面の前記ポンプ軸104の軸線方向に対する角度を調整するように構成されている。
【0079】
又、本実施の形態においては、前記制御部200は、前記構成に加えて、前記走行駆動開始条件において、前記出力調整部材108を中立位置から前記変速操作部材53の操作位置に対応した出力位置に位置させるように構成されている。
さらに、前記制御部200は、前記出力調整部材108を中立位置まで位置調整するように構成されている。
斯かる構成を備えることにより、前記歩行型作業機1は、前記クラッチ操作部材52を前記クラッチ遮断位置から前記クラッチ係合位置へ操作した際に、前記出力調整部材108を中立位置から始動できるので、該作業機1をスムーズに発進させることが可能となる。
【0080】
具体的には、前記制御部200は、前記走行駆動開始条件において、前記HST102における前記HST変速角度センサ80の検出値に基づき前記HST変速モータ108aによって前記可動斜板108を中立位置に位置させるように構成されている。
さらに、前記制御部200は、前記可動斜板108を中立位置から、前記変速操作位置検出装置70によって検出された前記変速操作部材53の操作位置に対応した出力位置まで位置調整するように構成されている。
【0081】
なお、前記制御部は、前記変速操作部材が中立位置以外に位置されている状態で前記クラッチ操作部材が前記クラッチ係合位置から前記クラッチ遮断位置へ移動した際には、前記変速操作部材53の操作位置に拘わらず前記出力調整部材108を中立位置へ戻すように構成されていてもよい。
【0082】
さらに、前記制御部200は、前記HST102の出力が前記変速操作部材53の操作位置に対応した目標出力になるように該HST102の出力調整部材108を位置調整する(通常モードの位置調整を行う)ように構成されている。
【0083】
次に、図6のフローチャートを参照しながら第1実施形態の制御例を以下に詳述する。図6は、第1実施形態の制御例の流れを示すフローチャートである。
なお、図6に示す制御例に先立ち、後述するステップS5及びステップS13で使用する前回目標出力には初期値(例えばゼロ)が初期設定されている。
【0084】
この第1実施形態の制御例では、先ず、前記変速操作位置検出装置70によって前記変速操作部材53の操作位置を検出し(ステップS1)、該検出した操作位置が中立位置に位置しているか否かを判断する(ステップS2)。
前記ステップS2で前記変速操作部材53の操作位置が中立位置に位置されていると判断した場合には、ステップS3に移行し、中立位置以外に位置されていると判断した場合には、ステップS4に移行する。
【0085】
次いで、前記ステップS2で前記変速操作部材53の操作位置が中立位置以外に位置されていると判断した場合には、前記変速操作位置検出装置70によって検出された前記変速操作部材53の操作位置に対応した目標出力を求め(ステップS4)、ステップS5に移行する。
次に、前記変速操作部材53の操作位置に対応した目標出力と前記前回目標出力(初期値はゼロ)とを比較する(ステップS5)。
前記ステップS5で前記変速操作部材53の操作位置に対応した目標出力が前記前回目標出力以上であると判断した場合には、ステップS6に移行し、前記前回目標出力より小さいと判断した場合には、ステップS3に移行する。
【0086】
前記ステップS5で前記目標出力が前記前回目標出力以上であると判断した場合には、前記クラッチ係合状態検出装置60によって前記クラッチ操作部材52が前記クラッチ遮断位置から前記クラッチ係合位置へ人為操作されたか否かを検出する(ステップS6)。
前記ステップS6で前記クラッチ操作部材52が前記クラッチ遮断位置から前記クラッチ係合位置へ人為操作されたと判断した場合には、ステップS7に移行し、前記クラッチ操作部材52が前記クラッチ遮断位置から前記クラッチ係合位置への人為操作がなされていないと判断した場合には、前記ステップS1に移行する。
【0087】
前記ステップS6で前記クラッチ操作部材52が前記クラッチ遮断位置から前記クラッチ係合位置へ人為操作されたと判断した場合には、前記HST102における前記HST変速角度センサ80の検出値に基づき前記HST変速モータ108aによって前記可動斜板108を中立位置に位置させ(ステップS7)、ステップS8に移行する。
次に、前記HST出力検出装置90によって前記HST102における前記モータ軸(出力軸)107の出力を検出し(ステップS8)、該検出された前記モータ軸(出力軸)107の出力が、前記変速操作位置検出装置70によって検出された前記変速操作部材53の操作位置に対応した目標出力まで漸増するように該HST102における前記HST変速角度センサ80の検出値に基づき前記HST変速モータ108aによって前記可動斜板108の板面の前記ポンプ軸104の軸線方向に対する角度を調整し(漸増モードで位置調整を行い(図5の出力β,γ参照))(ステップS9)、ステップS11に移行する。
【0088】
一方、前記ステップS2で前記変速操作部材53の操作位置が中立位置に位置されていると判断した場合、又は、前記ステップS5で前記変速操作位置検出装置70によって検出された前記変速操作部材53の操作位置に対応した目標出力が前記前回目標出力より小さいと判断した場合には、前記クラッチ係合状態検出装置60によって前記クラッチ操作部材52が前記クラッチ遮断位置から前記クラッチ係合位置へ人為操作されたか否かを検出する(ステップS3)。
前記ステップS3で前記クラッチ操作部材52が前記クラッチ遮断位置から前記クラッチ係合位置へ人為操作されたと判断した場合には、ステップS10に移行し、前記クラッチ操作部材52が前記クラッチ遮断位置から前記クラッチ係合位置への人為操作がなされていないと判断した場合には、前記ステップS1に移行する。
前記ステップS3で前記クラッチ操作部材52が前記クラッチ遮断位置から前記クラッチ係合位置へ人為操作されたと判断した場合には、前記HST102の出力が前記変速操作部材53の操作位置に対応した目標出力になるように該HST102の可動斜板108を位置調整し(通常モードで位置調整を行い(図5の出力α参照))(ステップS10)、ステップS11に移行する。
【0089】
ステップS11では、前記クラッチ係合状態検出装置60によって前記クラッチ操作部材52が前記クラッチ係合位置から前記クラッチ遮断位置へ人為操作されたか否かを検出し、前記クラッチ操作部材52が前記クラッチ係合位置から前記クラッチ遮断位置へ人為操作されたと判断した場合には、ステップS12に移行する。即ち、前記クラッチ操作部材52への人為操作が解放されると、前記HST102はその時点での変速状態のままで、前記メインクラッチ132が前記動力遮断状態へ移行する。
一方、前記クラッチ操作部材52が前記クラッチ係合位置から前記クラッチ遮断位置への人為操作がなされていないと判断した場合には、前記ステップS10に移行する。
【0090】
前記ステップS11で前記クラッチ操作部材52が前記クラッチ係合位置から前記クラッチ遮断位置へ人為操作されたと判断した場合には、前記変速操作位置検出装置70によって前記クラッチ操作部材52によるクラッチ遮断時点での前記変速操作部材53の操作位置に対応した前回目標出力を検出し(ステップS12)、該検出された前記変速操作部材53の操作位置に対応した前回目標出力を前記記憶部220に予め記憶し(ステップS13)、ステップS14に移行する。
【0091】
ステップS14では、作業終了か否かを判断し、作業が終了していないと判断した場合には、前記ステップS1に移行し、前記ステップS1〜ステップS13の処理を繰り返す一方、作業が終了したと判断した場合には、処理を終了する。
【0092】
なお、図6のフローチャートにおける前記ステップS11〜ステップS14の間の何れかのステップにおいて、前記変速操作部材53の操作位置に拘わらず前記出力調整部材108を中立位置へ戻す処理を行うようにしてもよい。
【0093】
又、図6のフローチャートにおける前記ステップS10の処理に代えて、図9に示すように、ステップS101〜ステップS105の処理を設けてもよい。
図9に示す処理では、前記ステップS3で前記クラッチ操作部材52が前記クラッチ遮断位置から前記クラッチ係合位置へ人為操作されたと判断した場合、又は前記ステップS11で前記クラッチ操作部材52が前記クラッチ係合位置から前記クラッチ遮断位置への人為操作がなされていないと判断した場合には、ステップS101に移行する。
【0094】
前記ステップS101では、前記変速操作部材53が増速側に人為操作されているか否かを判断し、前記変速操作部材53が増速側に人為操作されていると判断した場合には、ステップS102に移行する一方、それ以外の人為操作であると判断した場合には、ステップS105に移行する。
前記ステップS102では、前記変速操作部材53が人為操作された後の該変速操作部材の操作位置に対応した前記HST102の目標出力に対応する前記作業機1の目標速度と、前記変速操作部材53が人為操作される時点での該変速操作部材53の操作位置に対応した前記HST102の現在の出力に対応する前記作業機1の現在の速度との偏差を算出し、ステップS103に移行する。
前記ステップS103では、前記偏差が所定の値以上か否かを判断し、前記偏差が前記所定の値以上であると判断した場合には、ステップS104に移行する一方、前記偏差が前記所定の値より小さいと判断した場合には、ステップS105に移行する。
前記ステップS104では、前記HST102の前記現在の出力が前記目標出力まで漸増するように該HST102の可動斜板108を位置調整し、ステップS11に移行する。
前記ステップS105では、前記HST102の出力が前記変速操作部材53の操作位置に対応した目標出力になるように該HST102の可動斜板108を位置調整し、ステップS11に移行する。
【0095】
このように、前記作業機1の目標速度と現在の速度との偏差を算出し、該偏差が所定の値以上の場合に、前記HST102の前記現在の出力が前記目標出力まで漸増するように該HSTの可動斜板108を位置調整するように構成されている場合には、前記作業機1が走行状態において前記変速操作部材53が増速側に人為操作されたとしても、該作業機1が急激に加速することを効果的に防止することができる。斯かる構成では、前記変速操作部材53が増速側に急激に人為操作された場合に特に有効である。
【0096】
次に、本発明の実施に係る歩行型作業機1の第2実施形態の制御例について図7及び図8を参照しながら説明する。
本発明の実施に係る歩行型作業機1は、前記メインクラッチ132、前記HST102、前記クラッチ操作部材52及び前記変速操作部材53に加えて、第2実施形態の制御例を実施する為の制御部200’を備えている。
図7は、第2実施形態の制御例を実施する前記歩行型作業機1の制御系の概略構成を示すシステムブロック図である。
なお、この第2実施形態において、前記第1実施形態における実質的に同じ構成には同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0097】
詳しくは、前記制御部200’は、制御装置210及び記憶部220’を備えている。
具体的には、前記記憶部220’には、第2実施形態に係る制御例を含む制御プログラムや必要な関数が記憶されており、例えば、ROM221’及びRAM222を含んでいる。
【0098】
又、前記メインクラッチ132は、ここでは、電動駆動可能とされており、前記制御部200’からの作動信号に基づき、前記動力伝達状態と前記動力遮断状態とをとり得るように構成されている。
具体的には、前記メインクラッチ132は、前記制御部200’からの作動信号に基づき、前記動力伝達状態(ここでは、前記プーリ131が前記出力軸31aに相対回転不能に支持された状態)と前記動力遮断状態(ここでは、前記プーリ131が前記出力軸31aに軸線回り相対回転自在に支持された状態)とをとり得るように、該制御部200’の出力系に電気的に接続されている。
【0099】
そして、前記制御部200’は、前記変速操作部材53が中立位置以外に位置されている状態で前記クラッチ操作部材52が前記クラッチ遮断位置から前記クラッチ係合位置へ人為操作された際には、前記変速操作部材53が中立位置に位置されない限り前記駆動源31から前記走行部40L,40Rへ動力を伝達させないに構成されている。
【0100】
第2実施形態の制御例を実施する前記歩行型作業機1では、前記変速操作部材53が中立位置以外に位置されている状態で前記クラッチ操作部材52が前記クラッチ遮断位置から前記クラッチ係合位置へ人為操作されても、前記駆動源31から前記走行部40L,40Rへ動力が伝達されないようになっている。その後、例えば、作業者によって、前記変速操作部材53が中立位置に一旦戻され、さらに該中立位置から中立位置以外に位置されると、前記駆動源31から前記走行部40L,40Rへ動力が伝達されるようになる。
従って、第2実施形態の制御例を実施する前記歩行型作業機1によれば、前記クラッチ操作部材52を前記クラッチ遮断位置から前記クラッチ係合位置へ操作した際に、該作業機1が急発進することを有効に防止することができる。
【0101】
本実施の形態においては、前記制御部200’は、前記変速操作部材53が中立位置以外に位置されている状態で前記クラッチ操作部材52が前記クラッチ遮断位置から前記クラッチ係合位置へ人為操作された際には、前記変速操作部材53が中立位置に位置されない限り前記メインクラッチ132を動力伝達状態(ここでは、前記プーリ131が前記出力軸31aに相対回転不能に支持された状態)へ移行させないように構成されている。
【0102】
具体的には、前記制御部200’は、前記変速操作位置検出装置70によって検出された前記変速操作部材53の操作位置が中立位置以外に位置されている状態で前記クラッチ係合状態検出装置60によって前記クラッチ操作部材52が前記クラッチ遮断位置から前記クラッチ係合位置へ人為操作されたことを検出した際には、前記変速操作位置検出装置70によって検出された前記変速操作部材53の操作位置が中立位置に位置されない限り前記メインクラッチ132を動力伝達状態(ここでは、前記プーリ131が前記出力軸31aに相対回転不能に支持された状態)へ移行させないように構成されている。
【0103】
次に、図8のフローチャートを参照しながら第2実施形態の制御例を以下に詳述する。図8は、第2実施形態の制御例の流れを示すフローチャートである。
なお、図8に示すフローチャートは、図6に示すフローチャートにおいて、前記ステップS4〜ステップS9に代えてステップS4’〜ステップS8’を設けると共に、前記ステップS12及び前記ステップS13を除去したものである。
従って、以下、図6に示すフローチャートと共通する箇所の説明は省略し、ステップS4’〜ステップS8’の処理を中心に詳述する。
【0104】
前記ステップS2で前記変速操作部材53の操作位置が中立位置以外に位置されていると判断した場合には、前記クラッチ係合状態検出装置60によって前記クラッチ操作部材52が前記クラッチ遮断位置から前記クラッチ係合位置へ人為操作されたか否かを検出する(ステップS4’)
前記ステップS4’で前記クラッチ操作部材52が前記クラッチ遮断位置から前記クラッチ係合位置へ人為操作されたと判断した場合には、ステップS5’に移行し、前記クラッチ操作部材52が前記クラッチ遮断位置から前記クラッチ係合位置への人為操作がなされていないと判断した場合には、前記ステップS1に移行する。
【0105】
前記ステップS4’で前記クラッチ操作部材52が前記クラッチ遮断位置から前記クラッチ係合位置へ人為操作されたと判断した場合には、前記変速操作位置検出装置70によって前記変速操作部材53の操作位置を検出し(ステップS5’)、該検出した操作位置が中立位置に位置しているか否かを判断する(ステップS6’)
前記ステップS6’で前記変速操作部材53の操作位置が中立位置に位置されていると判断した場合には、ステップS7’に移行し、中立位置以外に位置されていると判断した場合には、ステップS8’に移行する。
【0106】
前記ステップS6’で前記変速操作部材53の操作位置が中立位置に位置されていると判断した場合には、前記メインクラッチ132を前記プーリ131が前記出力軸31aに相対回転不能に支持された状態(前記動力伝達状態)へ移行させ(ステップS7’)、前記ステップS10に移行する。
一方、前記ステップS6’で前記変速操作部材53の操作位置が中立位置以外に位置されていると判断した場合には、前記メインクラッチ132を前記プーリ131が前記出力軸31aに軸線回り相対回転自在に支持された状態(前記動力遮断状態)のままに維持し(ステップS8’)、ステップS5’に移行する。
【0107】
なお、本第2実施形態の制御例では、前記メインクラッチ132によって前記駆動源31から前記走行部40L,40Rへ動力を伝達させないようにしたが、前記ブレーキ138によって前記駆動源31から前記走行部40L,40Rへ動力を伝達させないようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】図1は、本発明に係る歩行型作業機の一実施形態である歩行型除雪機の概略側面図である。
【図2】図2は、図1に示す歩行型作業機の概略平面図である。
【図3】図3は、図1及び図2に示す歩行型作業機におけるスケルトン図である。
【図4】図4は、第1実施形態の制御例を実施する歩行型作業機の制御系の概略構成を示すシステムブロック図である。
【図5】図5は、第1実施形態の制御例を説明する為のグラフであって、HSTの出力の時間的変化を示すグラフである。
【図6】図6は、第1実施形態の制御例の流れを示すフローチャートである。
【図7】図7は、第2実施形態の制御例を実施する歩行型作業機の制御系の概略構成を示すシステムブロック図である。
【図8】図8は、第2実施形態の制御例の流れを示すフローチャートである。
【図9】図9は、図6のフローチャートにおいてステップS10の処理に代えて設けられたステップS101〜ステップS105の処理を示すフローチャートである。
【図10】図10は、急加速度及び加速応答時間を説明するための図である。
【符号の説明】
【0109】
1…歩行型作業機 31…駆動源 40L,40R…走行部 52…クラッチ操作部材
53…変速操作部材 102…HST 108…出力調整部材
132…メインクラッチ 200,200’…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源から走行部へ至る走行系伝動経路に介挿されたメインクラッチ及び変速装置と、クラッチ遮断位置へ付勢された人為操作可能なクラッチ操作部材と、前記変速装置を変速させる為の人為操作可能な変速操作部材と、制御部とを備えた歩行型作業機であって、
前記変速装置としてHSTを用い、
前記変速操作部材が中立位置以外に位置されている状態で前記クラッチ操作部材がクラッチ遮断位置からクラッチ係合位置へ人為操作されることで、該作業機の走行駆動が開始される走行駆動開始条件においては、前記制御部は、前記HSTの出力が前記変速操作部材の操作位置に対応した目標出力まで漸増するように該HSTの出力調整部材を位置調整するように構成されていることを特徴とする歩行型作業機。
【請求項2】
駆動源から走行部へ至る走行系伝動経路に介挿されたメインクラッチ及び変速装置と、クラッチ遮断位置へ付勢された人為操作可能なクラッチ操作部材と、前記変速装置を変速させる為の人為操作可能な変速操作部材と、制御部とを備えた歩行型作業機であって、
前記変速装置としてHSTを用い、
前記クラッチ操作部材がクラッチ係合位置からクラッチ遮断位置へ人為操作され、その後、前記変速操作部材が中立位置以外に位置されている状態で前記クラッチ操作部材がクラッチ遮断位置からクラッチ係合位置へ人為操作されることで、該作業機の走行駆動が開始される走行駆動開始条件で前記作業機の走行駆動が再始動される条件においては、前記制御部は、再始動前直近の前記クラッチ操作部材によるクラッチ遮断時点での前記変速操作部材の操作位置に対応した前回目標出力を予め記憶し、該走行駆動開始条件において、前記変速操作部材の操作位置に対応した目標出力と前記前回目標出力とを比較して該目標出力が該前回目標出力以上の場合に、前記HSTの出力が前記目標出力まで漸増するように該HSTの出力調整部材を位置調整するように構成されていることを特徴とする歩行型作業機。
【請求項3】
駆動源から走行部へ至る走行系伝動経路に介挿されたメインクラッチ及び変速装置と、クラッチ遮断位置へ付勢された人為操作可能なクラッチ操作部材と、前記変速装置を変速させる為の人為操作可能な変速操作部材と、制御部とを備えた歩行型作業機であって、
前記変速装置としてHSTを用い、
前記変速操作部材が中立位置以外に位置されている状態で前記クラッチ操作部材がクラッチ遮断位置からクラッチ係合位置へ人為操作されることで、該作業機の走行駆動が開始される走行駆動開始条件においては、前記制御部は、前記変速操作部材の操作位置に対応した目標出力に対応する前記作業機の目標速度が所定の速度以上の場合に、前記HSTの出力が前記目標出力まで漸増するように該HSTの出力調整部材を位置調整するように構成されていることを特徴とする歩行型作業機。
【請求項4】
前記クラッチ操作部材がクラッチ係合位置に位置されている状態で前記変速操作部材が増速側に人為操作される条件においては、前記制御部は、該変速操作部材が人為操作された後の該変速操作部材の操作位置に対応した前記HSTの目標出力に対応する前記作業機の目標速度と、該変速操作部材が人為操作される時点での該変速操作部材の操作位置に対応した前記HSTの現在の出力に対応する前記作業機の現在の速度との偏差を算出し、該偏差が所定の値以上の場合に、前記HSTの前記現在の出力が前記目標出力まで漸増するように該HSTの出力調整部材を位置調整するように構成されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の歩行型作業機。
【請求項5】
前記制御部は、前記走行駆動開始条件において、前記クラッチ操作部材がクラッチ遮断位置からクラッチ係合位置へ人為操作される時点での前記変速操作部材の操作位置に応じて、前記HSTの出力が前記目標出力まで漸増する増加の程度を変更するように構成されていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の歩行型作業機。
【請求項6】
前記制御部は、前記走行駆動開始条件において、前記出力調整部材を中立位置から前記変速操作部材の操作位置に対応した出力位置まで位置調整するように構成されていることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の歩行型作業機。
【請求項7】
前記変速操作部材が中立位置以外に位置されている状態で前記クラッチ操作部材がクラッチ係合位置からクラッチ遮断位置へ移動した際には、前記制御部は、前記変速操作部材の操作位置に拘わらず前記出力調整部材を中立位置へ戻すように構成されていることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の歩行型作業機。
【請求項8】
駆動源から走行部へ至る走行系伝動経路に介挿されたメインクラッチ及び変速装置と、クラッチ遮断位置へ付勢された人為操作可能なクラッチ操作部材と、前記変速装置を変速させる為の人為操作可能な変速操作部材と、制御部とを備えた歩行型作業機であって、
前記変速操作部材が中立位置以外に位置されている状態で前記クラッチ操作部材がクラッチ遮断位置からクラッチ係合位置へ人為操作された際には、前記制御部は、前記変速操作部材が中立位置に位置されない限り前記駆動源から前記走行部へ動力を伝達させないように構成されていることを特徴とする歩行型作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−50806(P2008−50806A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−226730(P2006−226730)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】