説明

歩行補助装置

【課題】左右の足に装着したそれぞれの装具の支持板同士が両膝関節の内側であたってしまうことの無い歩行補助装置を提供すること。
【解決手段】大腿骨内側上顆102の上方に配置した内側支持板1bと、大腿骨外側上顆101の上方に配置した外側支持板1aと、内側支持板1bと外側支持板1aとを後膝部側で連結する連結部材30と、内側支持板1bの上端側に回動自在に設けた第1の内側アーム10bと、下端側に回動自在に設けた第2の内側アーム20bと、外側支持板1aの上端側に回動自在に設けた第1の外側アーム10aと、下端側に回動自在に設けた第2の外側アーム20aと、第1の内側アーム10bの端部及び第1の外側アーム10aの端部に取り付けて大腿部109に巻き付ける第1のバンド41と、第2の内側アーム20bの端部及び第2の外側アーム20aの端部に取り付けて下腿部110に巻き付ける第2のバンド42とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膝関節に装着して使用する歩行補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、装着しやすく、装着したままでも正座することができる関節支持装具について既に提案している。
特許文献1では、膝の内側及び外側の両サイド部に、下肢に沿って各々膝関節支持部材を設け、この膝関節支持部材を膝の上部の大腿部前面と、膝関節の後方部と、膝の下部の下腿部前面との3箇所で下肢に支持固定される装着手段が設けられている関節支持装具において、各膝関節支持部材は、大腿部側に伸びる上部アームと、下腿部側に伸びる下部アームとから構成され、これらの上部及び下部アームは膝関節の位置で支軸によって回転自在に連結され、かつ、膝の伸展状態で止まり、反対側に屈曲しないように、ストッパーが設けられ、一方の上部および下部アームの支持板と、他方の上部および下部アームの支持板とを膝関節部分を囲むように連結支持する連結部材を設けたことを特徴とする関節支持装具を提案している。
また、特許文献1で提案した支持板について、伸展状態でのストップ機能を向上させる構成を特許文献2及び特許文献3で提案している。
また、特許文献1で提案した支持板について、上部アームと下部アームとを連動させることでスムーズな動きを実現する構成を特許文献4として提案している。
また、膝装着具のフィット感を高め、装着ずれを起こさないためのバンドの取付の構成を特許文献5として提案している。
また、本発明者が既に発明している関節支持装具の参考例を図9から図12に示す。
図9は本参考例による関節支持装具の一方から見た斜視図、図10は同関節支持装具の他方から見た斜視図、図11は同関節支持装具の伸展させた状態を示す側面図、図12は同関節支持装具を屈曲させた状態を示す側面図である。
本参考例による関節支持装具は、膝関節の両側にそれぞれ配置される支持板1a、1bと、これらの支持板1a、1bの一端側に回動自在に設けられるそれぞれの第1のアーム10a、10bと、これらの支持板1a、1bの他端側に回動自在に設けられるそれぞれの第2のアーム20a、20bと、一対の支持板1a、1bを連結する連結部材30を備えている。
ここで、支持板1aは膝関節の外側に配置され、支持板1bは膝関節の内側に配置される。そして、第1のアーム10aは支持板1aの一端側に、第2のアーム20aは支持板1aの他端側に、第1のアーム10bは支持板1bの一端側に、第2のアーム20bは支持板1bの他端側にそれぞれ配置される。
第1のアーム10a、10bは、一端側に回動支点11a、11bを有し、他端側に第1のバンド41を取り付けるピン12a、12bを有している。また、第2のアーム20a、20bは、一端側に回動支点21a、21bを有し、他端側に第2のバンド42を取り付けるピン22a、22bを有している。第1のアーム10a、10bの回動支点11a、11bは支持板1a、1bの一端側に、第2のアーム20a、20bの回動支点21a、21bは支持板1a、1bの他端側にそれぞれ設けられている。第1のバンド41は、関節よりも上方の大腿部において巻き付ける。また、第2のバンド42は、関節よりも下方の下腿部において巻き付ける。
第3のバンド43は、第1のバンド41と膝関節との間に巻き付けられるように配置される。第3のバンド43は、膝関節の内側に配置される内側パット50bを保持している。そして、この内側パット50bには弾性接続部60bが設けられている。弾性接続部60bは、一端がピン12bによって第1のアーム10bに接続され、他端が内側パット50bに接続されている。弾性接続部60bは、板ばねなどのばね材で構成され、第1のアーム10bと身体との間で弾性変形を行うように設けられている。
また、第3のバンド43は、膝関節の外側の位置で接続部60aを介して第1のバンド41に接続されている。支持板1aの内側には外側パット50aが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2903509号公報
【特許文献2】特開2000−312694号公報
【特許文献3】特開2002−11028号公報
【特許文献4】特開2007−117645号公報
【特許文献5】特開2007−117644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本参考例による関節支持装具を含め、従来の装具では、膝関節と装具関節(支持板1a、1b)との位置を一致させることがスムーズな動きを実現する上で必要と考えていたため、支持板1a、1bを膝関節の両側に配置して使用している。
従って、特にX脚の傾向のある使用者が装具を装着すると、左右の足に装着したそれぞれの装具の支持板1b同士が両膝関節の内側であたってしまうという問題があった。
また、両膝関節からの突出を少なくするために、支持板1a、1bを小型化するあまり、外部負荷に対する強度が弱くなって変形してしまうという問題があった。
一方、図12に示すように、装具を屈曲させた状態では、第1のアーム10aと連結部材30との隙間、及び第2のアーム20aと連結部材30との隙間が狭くなり、この隙間に指を挟んでしまうという問題も想定される。
【0005】
そこで、本発明は、左右の足に装着したそれぞれの装具の支持板同士が両膝関節の内側であたってしまうことの無い歩行補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の歩行補助装置は、大腿骨内側上顆の上方に配置される内側支持板と、大腿骨外側上顆の上方に配置される外側支持板と、前記内側支持板と前記外側支持板とを後膝部側で連結する連結部材と、前記内側支持板の上端側に回動自在に設けられる第1の内側アームと、前記内側支持板の下端側に回動自在に設けられる第2の内側アームと、前記外側支持板の上端側に回動自在に設けられる第1の外側アームと、前記外側支持板の下端側に回動自在に設けられる第2の外側アームと、前記第1の内側アームの端部及び前記第1の外側アームの端部に取り付けられて大腿部に巻き付ける第1のバンドと、前記第2の内側アームの端部及び前記第2の外側アームの端部に取り付けられて下腿部に巻き付ける第2のバンドとを備えたことを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の歩行補助装置において、前記第2の内側アームの端部及び前記第2の外側アームの端部を前記第2のバンドに対して所定角度回動自在に取り付けたことを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項2に記載の歩行補助装置において、前記第2の内側アームの端部及び前記第2の外側アームの端部に、前記第2の内側アームの一部及び前記第2の外側アームの一部を覆う被覆部材を設け、前記被覆部材と前記第2のバンドとを開口部を除いて縫合し、前記開口部によって前記第2の内側アーム及び前記第2の外側アームの回動範囲を規制したことを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の歩行補助装置において、前記第1の内側アームよりも前記第2の内側アームが長く、前記第1の外側アームよりも前記第2の外側アームが長いことを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の歩行補助装置において、前記第2のバンドが腓腹筋の上部に配置されることを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の歩行補助装置において、前記第1の内側アームと前記連結部材との最大屈曲時における最小隙間、及び前記第2の内側アームと前記連結部材との最大屈曲時における最小隙間を10mm以上とし、前記第1の内側アームと前記連結部材との最大屈曲時における最小角度、及び前記第2の内側アームと前記連結部材との最大屈曲時における最小角度を0度以上としたことを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の歩行補助装置において、前記第1の内側アームと前記内側支持板との回動支点が、前記回動支点から前記第1の内側アームの後膝部側端部までの寸法をR1、前記回動支点から前記第1の内側アームの前膝部側端部までの寸法をR2、前記回動支点から前記第1の内側アームの最大伸展時の作用部までの寸法をR3としたときに、R2はR1よりも大きく、R3はR2よりも大きくなる位置に設けられ、前記第1の内側アームにおける前記前膝部側端部から前記作用部までの縁部をR2からR3の寸法になるように順次寸法が大きくなる円弧形状で構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の歩行補助装置によれば、特にX脚の傾向のある使用者が装着しても、左右の足に装着したそれぞれの内側支持板同士が両膝関節の内側であたることがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施例による歩行補助装置の一方から見た斜視図
【図2】同装置の他方から見た斜視図
【図3】同装置の伸展させた状態を示す側面図
【図4】同装置を屈曲させた状態を示す側面図
【図5】同装置を装着した状態を示す側面図
【図6】同装置を装着した状態を示す正面図
【図7】同装置を装着して膝を屈曲させた状態と伸展した状態を示す説明図
【図8】同装置に用いる外側支持板、第1の外側アーム、及び第2の外側アームを示す平面図
【図9】参考例による関節支持装具の一方から見た斜視図
【図10】同関節支持装具の他方から見た斜視図
【図11】同関節支持装具の伸展させた状態を示す側面図
【図12】同関節支持装具を屈曲させた状態を示す側面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による歩行補助装置は、大腿骨内側上顆の上方に配置される内側支持板と、大腿骨外側上顆の上方に配置される外側支持板と、内側支持板と外側支持板とを後膝部側で連結する連結部材と、内側支持板の上端側に回動自在に設けられる第1の内側アームと、内側支持板の下端側に回動自在に設けられる第2の内側アームと、外側支持板の上端側に回動自在に設けられる第1の外側アームと、外側支持板の下端側に回動自在に設けられる第2の外側アームと、第1の内側アームの端部及び第1の外側アームの端部に取り付けられて大腿部に巻き付ける第1のバンドと、第2の内側アームの端部及び第2の外側アームの端部に取り付けられて下腿部に巻き付ける第2のバンドとを備えたものである。本実施の形態によれば、内側支持板が半腱様筋に対応する位置に、外側支持板が大腿二頭筋に対応する位置に配置されることになり、内側支持板が膝関節より上方の位置となるため、特にX脚の傾向のある使用者が装着しても、左右の足に装着したそれぞれの内側支持板同士が両膝関節の内側であたることがない。
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による歩行補助装置において、第2の内側アームの端部及び第2の外側アームの端部を第2のバンドに対して所定角度回動自在に取り付けたものである。本実施の形態によれば、屈曲状態と伸展状態との間で生じる膝関節とのずれを緩和することができる。
本発明の第3の実施の形態は、第2の実施の形態による歩行補助装置において、第2の内側アームの端部及び第2の外側アームの端部に、第2の内側アームの一部及び第2の外側アームの一部を覆う被覆部材を設け、被覆部材と第2のバンドとを開口部を除いて縫合し、開口部によって第2の内側アーム及び第2の外側アームの回動範囲を規制したものである。本実施の形態によれば、被覆部材の開口部によって回動範囲を規制できるため、特に外方への突出を少なくしてスムーズな動きを実現できる。
本発明の第4の実施の形態は、第1から第3の実施の形態による歩行補助装置において、第1の内側アームよりも第2の内側アームが長く、第1の外側アームよりも第2の外側アームが長いものである。本実施の形態によれば、内側支持板及び外側支持板を適切な位置に配置することができる。
本発明の第5の実施の形態は、第1から第4の実施の形態による歩行補助装置において、第2のバンドが腓腹筋の上部に配置されるものである。本実施の形態によれば、第2のバンドの下方へのずれを無くすことができるため、屈曲状態で装着した場合には伸展状態において第1のバンドを上方に押し上げる力が加わることになり、第1のバンドを押し上げる力によって第1のバンドの下方へのずれ落ちを防止できるとともに膝関節への荷重負荷を少なくすることができる。
本発明の第6の実施の形態は、第1から第5の実施の形態による歩行補助装置において、第1の内側アームと連結部材との最大屈曲時における最小隙間、及び第2の内側アームと連結部材との最大屈曲時における最小隙間を10mm以上とし、第1の内側アームと連結部材との最大屈曲時における最小角度、及び第2の内側アームと連結部材との最大屈曲時における最小角度を0度以上としたものである。本実施の形態によれば、第1の内側アームと連結部材との隙間、及び第2の内側アームと連結部材との隙間に指を挟むことを防止でき安全性を高めることができる。
本発明の第7の実施の形態は、第1から第6の実施の形態による歩行補助装置において、第1の内側アームと内側支持板との回動支点が、回動支点から第1の内側アームの後膝部側端部までの寸法をR1、回動支点から第1の内側アームの前膝部側端部までの寸法をR2、回動支点から第1の内側アームの最大伸展時の作用部までの寸法をR3としたときに、R2はR1よりも大きく、R3はR2よりも大きくなる位置に設けられ、第1の内側アームにおける前膝部側端部から作用部までの縁部をR2からR3の寸法になるように順次寸法が大きくなる円弧形状で構成したものである。本実施の形態によれば、第1の内側アームに作用する伸展時の力に対して十分な強度を保つことができる。
【実施例1】
【0010】
以下、本発明の一実施例による歩行補助装置について図面を用いて説明する。
図1は本実施例による歩行補助装置の一方から見た斜視図、図2は同装置の他方から見た斜視図、図3は同装置の伸展させた状態を示す側面図、図4は同装置を屈曲させた状態を示す側面図である。
本実施例による歩行補助装置は、大腿骨外側上顆の上方に配置される外側支持板1aと、大腿骨内側上顆の上方に配置される内側支持板1bと、外側支持板1aと内側支持板1bとを後膝部側で連結する連結部材30とを備えている。
外側支持板1aには上端側回動支点11aと下端側回動支点21aが設けられ、上端側回動支点11aには第1の外側アーム10aの一端が回動自在に設けられ、下端側回動支点21aには第2の外側アーム20aの一端が回動自在に設けられている。
また、内側支持板1bには上端側回動支点11bと下端側回動支点21bが設けられ、上端側回動支点11bには第1の内側アーム10bの一端が回動自在に設けられ、下端側回動支点21bには第2の内側アーム20bの一端が回動自在に設けられている。
【0011】
第2の外側アーム20aは第1の外側アーム10aよりも長く、第2の内側アーム20bは第1の内側アーム10bよりも長く構成している。
装着者の体型や脚部の長さによって若干異なるが、例えば第1の外側アーム10aの上端側回動支点11aからピン12aまでの寸法を83mmとしたときに第2の外側アーム20aの下端側回動支点21aからピン22aまでの寸法を140mmとし、第1の内側アーム10bの上端側回動支点11bからピン12bまでの寸法を83mmとしたときに第2の内側アーム20bの下端側回動支点11bからピン22bまでの寸法を155mmとした場合に良好な効果を得られている。実験の結果によれば、第1の外側アーム10aの上端側回動支点11aからピン12aまでの寸法は、第1の内側アーム10bの上端側回動支点11bからピン12bまでの寸法の1.05倍から0.95倍までの範囲の長さとし、第2の外側アーム20aの下端側回動支点21aからピン22aまでの寸法は、第2の内側アーム20bの下端側回動支点11bからピン22bまでの寸法の1.05倍から0.85倍までの範囲の長さとし、第2の外側アーム20aの下端側回動支点21aからピン22aまでの寸法は、第1の外側アーム10aの上端側回動支点11aからピン12aまでの寸法の1.5倍から2倍の長さ、第2の内側アーム20bの下端側回動支点11bからピン22bまでの寸法は、第1の内側アーム10bの上端側回動支点11bからピン12bまでの寸法の1.5倍から2倍の長さとすることが好ましい。
【0012】
大腿部に巻き付ける第1のバンド41は、第1の内側アーム10bの端部及び第1の外側アーム10aの端部に取り付けられている。また、下腿部に巻き付ける第2のバンド42は、第2の内側アーム20bの端部及び第2の外側アーム20aの端部に取り付けられている。特に、第2のバンド42は腓腹筋の上部に配置されるように第1の外側アーム10aと第2の外側アーム20a、第1の内側アーム10bと第2の内側アーム20bとの長さが設定されていることが好ましい。
第1の外側アーム10aは、他端側に第1のバンド41を取り付けるピン12aを有し、第1の内側アーム10bは、他端側に第1のバンド41を取り付けるピン12bを有している。また、第2の外側アーム20aは、他端側に第2のバンド42を取り付けるピン22aを有し、第2の内側アーム20bは、他端側に第2のバンド42を取り付けるピン22bを有している。
第2の外側アーム20aの端部はピン22aによって回動可能に設けられ、第2の内側アーム20bの端部はピン22bによって回動可能に設けられている。
また、第2の外側アーム20aの端部には、第2の外側アーム20aの他端側の一部を覆う被覆部材70aを、第2の内側アーム20bの端部には、第2の内側アーム20bの他端側の一部を覆う被覆部材70bを設けている。被覆部材70a、70bと第2のバンド42とは開口部71a、71bを除いて縫合され、開口部71a、71bによって第2の外側アーム20a及び第2の内側アーム20bの回動範囲を規制している。従って、外側アーム20a及び第2の内側アーム20bは、開口部71a、71bによって所定角度回動自在に動作することができる。
【0013】
第3のバンド43は、第1のバンド41と膝関節との間に巻き付けられるように配置される。第3のバンド43は、膝関節の内側に配置される内側パット50bを保持している。そして、この内側パット50bには弾性接続部60bが設けられている。弾性接続部60bは、一端がピン12bによって第1の内側アーム10bに接続され、他端が内側パット50bに接続されている。弾性接続部60bは、板ばねなどのばね材で構成され、第1のアーム10bと身体との間で弾性変形を行うように設けられている。
また、第3のバンド43は、膝関節の外側の位置で接続部60aを介して第1の外側アーム10aに接続されている。外側支持板1aの内側には外側パット50aが設けられている。
【0014】
図4では、本実施例による歩行補助装置の最大屈曲時の状態を示している。
図示のように、最大屈曲時において、第1の外側アーム10aと連結部材30との最小隙間w1、第2の外側アーム20aと連結部材30との最小隙間w2は、いずれも10mm以上とする。また、第1の外側アーム10aと連結部材30との最小角度α1、及び第2の外側アーム20aと連結部材30との最小角度α2は0度以上とする。図では第1の外側アーム10aと第2の外側アーム20aとを示しているが、第1の内側アーム10bと第2の内側アーム20bについても同様である。実験の結果によれば、最小隙間w1及び最小隙間w2は、いずれも13mmとし、最小角度α1及び最小角度α2はいずれも10度とすることがより好ましい結果を得た。
【0015】
次に図5及び図6を用いて本実施例による歩行補助装置の装着位置について説明する。
図5は本実施例による歩行補助装置を装着した状態を示す側面図、図6は同装置を装着した状態を示す正面図である。
外側支持板1aは大腿骨外側上顆101の上方に配置され、内側支持板1bは大腿骨内側上顆102の上方に配置される。従って、外側パット50aは大腿二頭筋103の下部に位置し、内側パット50bは半腱様筋104の下部に位置する。内側パット50bは弾性接続部60bによって第1の内側アーム10bに懸架されており、第3のバンド43は接続部60aによって第1の外側アーム10aに接続されているため、第3のバンド43による締め付けによって内側パット50bは半腱様筋104に密着する。また第3のバンド43による締め付けによって第1の外側アーム10aには大腿骨105の方向に力が加わるため、外側支持板1aにも大腿骨105の方向に力が加わり、外側パット50aは大腿二頭筋103に密着する。このように内側パット50bは半腱様筋104の位置に、外側パット50aは大腿二頭筋103の位置に配置されるために押圧による密着性が高く、内側パット50bは大腿骨内側上顆102によってずれ落ちを防止でき、外側パット50aは大腿骨外側上顆101によってずれ落ちを防止できる。
【0016】
また、第2のバンド42は腓腹筋106の上部、すなわち腓骨筋106の最も大きな位置よりも上方に配置することで、第2のバンド42のずれ落ちも防止できる。
下肢の姿位によって異なるが、極度な内反膝の場合を除き、内側支持板1bの位置に対して、第2の内側アーム20bのピン22bは頸骨107の方向に寸法w3だけ近くなる。このとき、第2の内側アーム20bは、内側支持板1bに対して回動するとともにピン22bに対しても所定範囲で回動しなければならないため、第2の内側アーム20bの中間部で傾斜面20xを構成する必要があるが、この傾斜面20xを大腿骨内側顆108から頸骨107上部に沿わせることで、特に内側支持板1b及び第2の内側アーム20bを、大腿部109から下腿部110に沿った状態に配置することができる。
従って、膝蓋骨111の両側部には、第2の外側アーム20aと第2の内側アーム20bが位置することになる。
【0017】
次に図7を用いて本実施例による歩行補助装置の動作時の作用について説明する。
図7は本実施例による歩行補助装置を装着して膝を屈曲させた状態と伸展した状態を示す説明図である。
図において、ポイント112は膝関節の回転軸を表している。実際には膝関節の動きは回転中心を持たないがここでは便宜上ポイント112を中心として回動するものとして説明する。
第2の外側アーム20aのピン22aが下方へずれることが無いとした場合には、屈曲時における第1の外側アーム10aのピン11aは、ポイント112から第1の距離r1の位置となり、伸展時における第1の外側アーム10aのピン11aは、ポイント112から第2の距離r2の位置となる。
従って、屈曲させた状態で本実施例による歩行補助装置を装着した場合には、伸展状態では第2の距離r2と第1の距離r1との差だけ、ピン11aには上方に押し上げられる力が働くことになる。従って、ピン11aの押し上げ力によって大腿部109を上方に押し上げるため、膝関節への荷重負荷を少なくすることができる。また、第1のバンド41の下方へのずれ落ちを防止できる。
【0018】
次に図8を用いて本実施例による第1のアームと第2のアームについて説明する。なお、図8では、第1の外側アームと第2の外側アームについて説明するが、第1の内側アームと第2の内側アームについても同様である。
図8は本実施例による歩行補助装置に用いる外側支持板、第1の外側アーム、及び第2の外側アームを示す平面図である。
外側支持板1aは、同一形状に成型された2枚の支持板片1ax、1ayと、この2枚の支持板片1ax、1ayの間に設けられる連結片1azとから構成され、連結片1azによって第1の外側アーム10aと第2の外側アーム20aとの動作範囲が規制されている。
第1の外側アーム10aは、上端側回動支点11aで最大幅、ピン12aで最小幅となる板で構成され、第2の外側アーム20aは、下端側回動支点21aで最大幅、ピン22aで最小幅となる板で構成されている。
ここで、第1の外側アーム10aは、上端側回動支点11aから第1の外側アーム10aの後膝部側端部x1までの寸法をR1、上端側回動支点11aから第1の外側アーム10aの前膝部側端部y1までの寸法をR2、上端側回動支点11aから第1の外側アーム10aの最大伸展時の作用部z1までの寸法をR3としたときに、上端側回動支点11aが、R2はR1よりも大きく、R3はR2よりも大きくなる位置に設けられ、前膝部側端部y1から作用部z1までの縁部m1をR2からR3の寸法になるように順次寸法が大きくなる円弧形状で構成している。
また、第2の外側アーム20aについても、下端側回動支点21aから第2の外側アーム20aの後膝部側端部x2までの寸法をR1、下端側回動支点21aから第1の外側アーム20aの前膝部側端部y2までの寸法をR2、下端側回動支点21aから第1の外側アーム20aの最大伸展時の作用部z2までの寸法をR3としたときに、下端側回動支点21aが、R2はR1よりも大きく、R3はR2よりも大きくなる位置に設けられ、前膝部側端部y2から作用部z2までの縁部m2をR2からR3の寸法になるように順次寸法が大きくなる円弧形状で構成している。
【0019】
このように、前膝部側端部y1、y2までの寸法R2を、後膝部側端部x1、x2までの寸法R1よりも大きくし、また作用部z1、z2までの寸法R3を、前膝部側端部y1、y2までの寸法R2よりも大きくし、更に、前膝部側端部y1、y2から作用部z1、z2までの縁部m1、m2をR2からR3の寸法になるように順次寸法が大きくなる円弧形状で構成することで、第1の外側アーム10a及び第2の外側アーム20aは伸展時の力(矢印の方向)に対して十分な強度を保つことができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の歩行補助装置は、半身麻痺のリハビリやポリオなどの反張膝用、O脚、X脚や関節リュウマチなどの変形性関節用、靱帯損傷や半月板損傷などのスポーツ用としてだけでなく膝に負担のかかる作業者にも広く用いることができる。
【符号の説明】
【0021】
外側支持板 1a
内側支持板 1b
第1の外側アーム 10a
第1の内側アーム 10b
上端側回動支点11a、11b
ピン 12a、12b
第2の外側アーム 20a
第2の内側アーム 20b
下端側回動支点21a、21b
ピン 22a、22b
連結部材 30
第1のバンド 41
第2のバンド 42
第3のバンド 43
外側パット 50a
内側パット 50b
接続部 60a
弾性接続部 60b
被覆部材 70a、70b

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大腿骨内側上顆の上方に配置される内側支持板と、大腿骨外側上顆の上方に配置される外側支持板と、前記内側支持板と前記外側支持板とを後膝部側で連結する連結部材と、前記内側支持板の上端側に回動自在に設けられる第1の内側アームと、前記内側支持板の下端側に回動自在に設けられる第2の内側アームと、前記外側支持板の上端側に回動自在に設けられる第1の外側アームと、前記外側支持板の下端側に回動自在に設けられる第2の外側アームと、前記第1の内側アームの端部及び前記第1の外側アームの端部に取り付けられて大腿部に巻き付ける第1のバンドと、前記第2の内側アームの端部及び前記第2の外側アームの端部に取り付けられて下腿部に巻き付ける第2のバンドとを備えたことを特徴とする歩行補助装置。
【請求項2】
前記第2の内側アームの端部及び前記第2の外側アームの端部を前記第2のバンドに対して所定角度回動自在に取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の歩行補助装置。
【請求項3】
前記第2の内側アームの端部及び前記第2の外側アームの端部に、前記第2の内側アームの一部及び前記第2の外側アームの一部を覆う被覆部材を設け、前記被覆部材と前記第2のバンドとを開口部を除いて縫合し、前記開口部によって前記第2の内側アーム及び前記第2の外側アームの回動範囲を規制したことを特徴とする請求項2に記載の歩行補助装置。
【請求項4】
前記第1の内側アームよりも前記第2の内側アームが長く、前記第1の外側アームよりも前記第2の外側アームが長いことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の歩行補助装置。
【請求項5】
前記第2のバンドが腓腹筋の上部に配置されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の歩行補助装置。
【請求項6】
前記第1の内側アームと前記連結部材との最大屈曲時における最小隙間、及び前記第2の内側アームと前記連結部材との最大屈曲時における最小隙間を10mm以上とし、前記第1の内側アームと前記連結部材との最大屈曲時における最小角度、及び前記第2の内側アームと前記連結部材との最大屈曲時における最小角度を0度以上としたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の歩行補助装置。
【請求項7】
前記第1の内側アームと前記内側支持板との回動支点が、前記回動支点から前記第1の内側アームの後膝部側端部までの寸法をR1、前記回動支点から前記第1の内側アームの前膝部側端部までの寸法をR2、前記回動支点から前記第1の内側アームの最大伸展時の作用部までの寸法をR3としたときに、R2はR1よりも大きく、R3はR2よりも大きくなる位置に設けられ、前記第1の内側アームにおける前記前膝部側端部から前記作用部までの縁部をR2からR3の寸法になるように順次寸法が大きくなる円弧形状で構成したことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の歩行補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−167369(P2011−167369A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34408(P2010−34408)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(598081676)
【Fターム(参考)】