説明

歯車付き調整装置を備えた頸部カラー

【課題】ラックピニオン式調整機構を備え、左側および右側が単一の動きで調整され得る調整可能な頸部カラーを提供する。
【解決手段】第1のラック130および第2のラック140は、第2の顎支持部材135および第2の顎支持部材145を移動させ、この顎支持部材は顎片150を上昇させ下降させる。さらに、顎支持体がカラー本体110とは無関係に角形成し得る機構であって、角形成はラックに、あるいは左顎支持片および右顎支持片に顎片を枢支することによって実現され、カラーはカラー本体に対する顎支持片用の枢軸、および顎支持片に対する顎片用の他の枢軸を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、頸部カラーである。
【背景技術】
【0002】
頸部カラーは、一般に、脊椎を中立の配列に維持するのに使用される。中立の配列を維持するために、ユーザの顎は特定の位置に支持されなければならない。中立の配列に対するこの要求のために、およびカラーのユーザが別の仕方で適合させられるために、カラーは様々なサイズに作られる。しかし、様々なサイズのカラーを作る場合の問題の1つは、開業医が多数のサイズを蓄えて把握しなければならないことであり、これはかなり煩わしくなる場合がある。
【0003】
様々なサイズを蓄える必要によって生じる負担に対処するために、調整可能なカラーが現れた。1つのより最近の特許(Calabreseの米国特許第6663581号明細書)は、下顎を所定の位置に手で摺動し次いでクリップを挿入してそれをロックすることによって調整され得るカラーを教示している。Calabreseのカラーは調整可能性の問題に取り組むことができて少し成功したが、調整が行われる方法について依然として問題がある。1つの問題は、以前に知られている調整可能なカラーでは左側および右側を独立して調整したことであり、それにより非対称な調整を許容している。他の問題は、左側の調整および右側の調整を行うと1つの調整装置ではなく2つの調整装置を必要とすることである。さらに第3の問題は、所定の位置に保持するように単一の側に対して調整できないことが頭部に重大なトルクを与えることになる場合があり、頸椎の重大な調整不良を招き得ることである。
【0004】
先行技術の頸椎装具に関する別組の問題は、顎支持片がカラー本体に一体に連結されて異なった形のカラーを十分には許容していないことである。この結果は、装着者が顎の局所的な部位において過度の圧迫を経験する場合があることである。このことは非常用カラーについてはそれほど大きな問題ではないが、長期間の装着が意図されるカラーについては非常に重大な問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6663581号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、左側および右側が単一の動きで調整され得る調整可能なカラーの必要があり、このことはカラー本体とは無関係に角形成し得る顎支持体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、左側および右側が単一の動きで調整され得る方法および機構を提供する。左側および右側の調整は、歯車機構、特にラックピニオン機構を用いて実現され得ることが有利である。ピニオンが回転されるとラックの移動の結果として顎支持部材が上昇され下降される。
【0008】
他と無関係に本発明は、顎支持体がカラー本体とは無関係に角形成し得る方法および機構を提供する。この種の角形成はラックに、あるいは左顎支持片および右顎支持片に顎片を枢支することによって実現されることが好ましい。したがって好ましい部類の実施形態では、カラーはカラー本体に対する顎支持片用の枢軸、および顎支持片に対する顎片用の他の枢軸を有する。
【0009】
本発明の様々な目的、特徴、態様、および利点は、同じ符号が同じ部品を示す添付の図面に加えて、本発明の好ましい実施形態についての次に述べる詳細な説明からより明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】頸部カラーの前面の透視図である。
【図2】カバーを取り除いた場合の、図1の頸部カラーの正面図である。
【図3】図1の頸部カラーの分解された透視図である。
【図4】単一のラックを利用する他の頸部カラーの透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1から図4を参照すると、頸部カラー100は主カラー本体110、機構包囲部111、ノブ120、第1のラック130、第2のラック140、第1の顎支持部材135、第2の顎支持部材145、および顎片150を備える。
【0012】
第1のラック130、第2のラック140、およびピニオンギヤ310は、第1の顎支持部材135および第2の顎支持部材145の高さを、およびそれによって顎片150の高さを調整するように協働する。これらの部品は、単一の(または比較的少数のカラー)の使用を可能にして頭部および首部を中立の配列に維持するように構成され、支持は個々の装着者の重要寸法と合致しなければならない。本明細書において使用されるように、用語「重要寸法(key dimension)」とは、カラー本体が僧帽筋に載る肩の頂部において引かれた水平線に対する、顎片が顎を支持する顎の下面の高さを意味する。
【0013】
図1で最もよく分かるように、ラック130およびラック140は主カラー本体110と機構保持部370との間でピニオンギヤ310の方へ案内される。ピン132およびピン142が顎支持部材135および顎支持部材145に各ラックを連結し、これによりラックの上方への移動は連動する顎支持部材をやはり上方に移動させる。同様に、ラックの下方への移動は連動する顎支持部材を下方に移動させる。ラック130およびラック140はカラー本体110に対して(およびもちろん、また装着者の胸骨および肩に対しても)上方に顎支持部材135および顎支持部材145を押すように使用されるので、それらは十分に剛性のある材料で作られることが好ましい。熟考された材料には硬質熱可塑性物質、金属、等が含まれる。
【0014】
ピニオンギヤ310は比較的硬質のプラスチック、またはラック歯との接触による比較的少ない摩耗を時間の経過と共に示す、他の適切な材料(例えばアセタール樹脂など)で構成されることが好ましい。もちろんピニオンギヤの歯はラックの歯と噛み合わなければならない。
【0015】
図1から図4の実施形態では、高さ調整はノブ120を回転することによって実現され、それによりピニオンギヤ(図3の310を参照されたい)を回転させ、横方へおよび垂直にラック130およびラック140を移動させ、それにより第1の顎支持部材135および第2の顎支持部材145を上下に移動させる。ノブ120の、したがってギヤ310の回転は双方向性であることが好ましく、一方の方向(例えば時計周りの方向)はラック130およびラック140を上方に移動させ、他方の方向(例えば反時計周りの方向)は各ラックを下方に移動させる。
【0016】
ピニオンギヤ310は両方のラック130およびラック140に同時に作動するので、各顎支持部材135および顎支持部材145は同時に、同じ速度で、および同じ距離の間、上方または下方に移動する。好ましい実施形態では、ラック130およびラック140、ならびに支持部材135および支持部材145の移動範囲を制限する何らかの機構を含む。これはいくつかの方法で実現され得る。例えば、ラック130およびラック140の移動範囲は、止め具を使用することによりピニオンギヤ310の回転を制限することによって、ラック130およびラック140のうちの1つまたは両方の歯の数を制限することによって、かつ/または長穴内にピンを使用することによるなどで顎支持部材135および顎支持部材145の上昇を制限することによって容易に制限され得る。図1および図2は、この目的のために長穴160および長孔170と協働するピン132およびピン142の使用を示す。長穴160および長孔170は、ピン132およびピン142がそれらの最も高い位置にある完全に伸長した配置からそれらの最も低い位置にある完全に圧縮した配置まで、支持部材135および支持部材145を移動させることができる。この完全に伸長した配置は大きな重要寸法(高い首部)を有する人に適合させるように意図され、一方、この完全に圧縮した配置は特に小さな重要寸法(短い首部)を有する人に適合させるように意図される。
【0017】
また、顎片150が枢動する範囲は装着者の顎が顎片から滑り落ちることになり得る過度の角形成を阻止するように何らかの方法でおそらく制限されるべきであることも理解されたい。この種の制限は、顎片150ならびに側片135および側片145の並置する表面の形状によって提供され得る。
【0018】
カラー100の好ましい実施形態は、重要寸法に対応するキャリブレーションマーク190を含むことによって装着者に対して容易に寸法取りされ得る。例えば、「短い」カラー用のキャリブレーションマークは0.75の重要寸法に対応するかもしれない。キャリブレーションはミリメートルなどの比較的小さな測定単位であり得るが、センチメートル、インチ、または何らかの他の標示である可能性がより高い。キャリブレーションマーク190の配置は、サイズをセットする人(通常、ユーザ自身ではない)にはっきり見えるべきである。例えば図1では、キャリブレーションマーク190はカラー本体の側面に示される。他の実施形態では、キャリブレーションはノブの上または周りに、あるいはいずれかのラックの径路に沿った他の何らかの位置にあることができる。
【0019】
ノブ120は回転するばかりではなく、内向きにおよび外向きにも移動する。完全に内向きの配置ではノブは回転からロックされ、外向きの配置ではノブ120は回転可能である(ロック解除される)。示された特定の実施形態では、ピニオンギヤ310は直接にノブ120に連結され、ノブ120はロックされた(内向き)位置に偏倚される。
【0020】
安全装置180(ロック182およびばね184を含む)がラックの移動を阻止する二次的な手段として随意に提供され得る。安全装置180は任意の適切な方式で作動し得るが、この特定の実施形態では、安全装置180はノブ120が外向きの(回転可能な)位置まで移動することを阻止する。これは、安全装置との接触によって停止され得るピニオンギヤに垂れ(tab)を設けることによって行われ得る。
【0021】
顎支持部材135および顎支持部材145は、位置112および位置114において主カラー本体110に枢支される。そのうえ、顎片150は枢軸137および枢軸147において顎支持部材135および顎支持部材145に枢支される。本明細書において使用されるように、ここでの用語の枢軸は、たとえ枢動運動が生じる実際のアクスルまたはラインが存在しなくても枢動運動を可能にする機構を含む。したがって顎片150は、これらの部品が枢動タイプの運動を効果的に可能にするように十分な「遊び(play)」を与える方法で一緒に成形される状況でさえも、枢軸137および枢軸147において顎支持部材135および顎支持部材145に枢支されると言われることができる。
【0022】
頸部カラー400の他の実施形態が図4に示される。カラー400は単一の中央ラック405、および主カラー本体415に取り付けられたピニオンギヤ410を有する。ピニオンギヤ410を回転するとラック405が上方に移動し、したがってそれにより顎片450を上昇させる。図1から図3の実施形態の場合のように、顎片450の高さはノブ420を回転することによって調整されることができ、このノブ420はピニオンギヤ410を回転させる。この実施形態ではノブを引き出す必要は全くない。
【0023】
また、用語「ラック」および「ピニオン」は本明細書において通常の用い方よりも広い意味で使用され、任意のサイズの歯を有するまたは実に全く歯を有さない実施形態を含むことも理解されたい。後者の場合では例えば、ラックおよびピニオンは、このラックおよびピニオンの相対的な運動を連結するように十分な摩擦を共に与えるゴム状の表面をそれぞれ有することができる。そのうえ通常の用い方では、人はラックおよびピニオンのうちのラック部分を平坦であると呼ぶことが多い。本出願で使用されるようにラックは、平坦である必要はなく、実際に多くの場合湾曲されるであろう。本明細書において使用されるようにラックおよびピニオンの唯一の主要な特徴は、ピニオンが回転するとラックが空間内で平行移動するということである。議論が歯付きのラックおよびピニオンに制限される場合には、歯がはっきりと述べられるかまたは、ピニオンがピニオンギヤと呼ばれるかである。
【0024】
このようにして、歯車付き調整装置を備える頸部カラーについての特定の実施形態および出願が開示された。しかし、すでに説明したものに加えてより多くの改変が、本明細書における発明の概念から逸脱することなく可能であることが当業者には明らかであろう。したがって、発明の要旨は添付の特許請求の範囲の精神内であること以外は限定されるべきではない。そのうえ、明細書および特許請求の範囲の双方を解釈する際に、すべての用語はその内容と矛盾しない最も広い可能な仕方で解釈されるべきである。特に、用語「備える(comprises)」および「備えている(comprising)」は、非排他的な仕方で要素、構成部分、またはステップを参照するものとして解釈され、ならびに参照された要素、構成部分、またはステップは公開されまたは利用され得ること、あるいは明白には参照されない他の要素、構成部分、またはステップと組み合され得ることを示すものとして解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピニオンと協働する第1のラックを備える顎の高さ調整機構を有する、頸部カラー。
【請求項2】
ピニオンと協働する第2のラックをさらに備える、請求項1に記載の頸部カラー。
【請求項3】
ラックおよびピニオンのうちの少なくとも1つが歯を有する、請求項2に記載の頸部カラー。
【請求項4】
ラックが側方の顎支持部材に連結される、請求項1に記載の頸部カラー。
【請求項5】
ピニオンの回転運動が双方向性であり、ある方向が顎支持部材を上昇させ、別の方向が顎支持部材を下降させる、請求項4に記載の頸部カラー。
【請求項6】
顎支持部材が顎片に連結される、請求項4に記載の頸部カラー。
【請求項7】
ラックの移動の結果として上昇し下降する顎片をさらに備える、請求項1に記載の頸部カラー。
【請求項8】
顎片、顎支持片、および頸部カラー本体をさらに備え、顎片が顎支持片に対して回転し、顎支持片が頸部カラー本体に対して回転する、請求項1に記載の頸部カラー。
【請求項9】
顎片、および上下に動く顎支持片をさらに備え、顎片が顎支持片に対して回転する、請求項1に記載の頸部カラー。
【請求項10】
ピニオンの回転がロックされる内向き配置とピニオンの回転がロック解除される外向き配置との間に配置可能であるノブをさらに備える、請求項1に記載の頸部カラー。
【請求項11】
ピニオンの回転を実質的に阻止する安全装置をさらに備える、請求項1に記載の頸部カラー。
【請求項12】
ラックおよびピニオンが、互いに協働してラックを移動させる交互に入れ替わる峰部および谷部を有する、請求項1に記載の頸部カラー。
【請求項13】
顎片の高さを表すキャリブレーションをさらに備える、請求項1に記載の頸部カラー。
【請求項14】
ピニオンを回転するステップを含む、頸部カラーのための顎片の高さを調整する方法。
【請求項15】
ピニオンを回転するステップが、顎片に連結された少なくとも1つのラックを同時に移動させるステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−86026(P2012−86026A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−247488(P2011−247488)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【分割の表示】特願2008−523967(P2008−523967)の分割
【原出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(509178286)カーサー・エル・エル・シー (1)
【Fターム(参考)】