説明

歯車減速機

【課題】 あらかじめバックラッシ音除去に必要なギヤ軸負荷量を確認し、歯車軸に軽微な摩擦負荷を加えるための部材をギヤケース内部に装着することにより、無負荷、軽負荷時に発生するバックラッシ音を除去できる歯車減速機を提供することを目的とする。
【解決手段】 ギヤケース1の内部に、軸方向に互いに対向する一対の側板2,3を設け、これら側板2,3はスペーサを介して一定の間隔で対向状態を保つように支持され、かつ前記側板2,3には、軸受けハウジング12,13を取り付ける取付穴2b,3bを設け、該取付穴2b,3bに嵌入して前記軸受けハウジング12,13を取り付け、電動機の回転軸6と噛み合う第一歯車7もしくは次段の第二歯車17のいずれかの歯車軸9,16を支持する軸受け10,11,18,19と前記軸受けハウジング12,13,20,21との間に、上記歯車軸に一定の摩擦による軽負荷を加えるための部材としてOリング14またはオイルシール36を設けたことにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ等に用いられる歯車減速機に関し、特に、歯車のバックラッシ音や共振音などの騒音を低減した歯車減速機に関する。
【背景技術】
【0002】
歯車減速機においては、従来から、歯車のバックラッシに起因する諸問題をいかに解決するかの工夫が成されてきた。バックラッシとは、歯車同士が噛み合う際のあそびのことである。歯車減速機において歯車同士のあそびは必要不可欠なものである。あそびがあるために円滑な回転が得られるのである。しかしながら、この、あそびのためにバックラッシが発生し、次のような問題が発生していた。すなわち、モータの振動によって、伝達方向と逆側の歯面に相手側歯車が接触し、騒音を発生する。そして、この騒音は、歯車減速機の出力軸に加わる実負荷が軽微か、または、無負荷の時に顕著に現れていた。
【0003】
従来、このようなバックラッシによる不具合を解消するため、歯車を二重に重ねてバックラッシ分だけ位相をずらせ、二歯面をバックラッシ0の状態に噛合させるようにした機械等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−262042号公報
【特許文献2】実願平5−052931号公報(実開平7−018058号公報のCD−ROM)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この方法は、製造的に極めて高い精度が要求されるためコスト高になり、安価な歯車減速機には用いることができない。また、この方法によってもなお、バックラッシをもたせた歯車減速機と同等に円滑な運転を望むことはできない。
【0006】
本発明はこのような従来の課題に着目してなされたもので、あらかじめバックラッシ音除去に必要なギヤ軸負荷量を確認し、歯車軸に軽微な摩擦負荷を加えるための部材をギヤケース内部に装着することにより、無負荷、軽負荷時に発生するバックラッシ音を除去できる歯車減速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、ギヤケースと、このギヤケースに収容されるとともに、電動機の回転軸を入力軸とし、前記回転軸に設けた歯車からの回転力を出力軸に伝達するための所定数の減速歯車と、前記減速歯車に嵌入された歯車軸と、前記歯車軸を支持する軸受けと、前記軸受けを収納するとともに、上記ギヤケース内に配設された軸受けハウジングとを備えた歯車減速機において、前記ギヤケースの内部に、軸方向に互いに対向する一対の側板を設け、これら側板はスペーサを介して一定の間隔で対向状態を保つように支持され、かつ前記側板には、前記軸受けハウジングを取り付ける取付穴を設け、該取付穴に嵌入して前記軸受けハウジングを取り付け、前記電動機の回転軸と噛み合う第一歯車もしくは次段の第二歯車のいずれかの歯車軸を支持する軸受けと前記軸受けハウジングとの間に、上記歯車軸に一定の摩擦による軽負荷を加えるための部材としてOリングまたはオイルシールを設けたことにある。
【発明の効果】
【0008】
請求項1によれば、歯車のバックラッシ音や共振音などの騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による歯車減速機の第1の実施の形態を示す断面図である。
【図2】図1の部分拡大断面図である。
【図3】本発明による歯車減速機の第2の実施の形態を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明による歯車減速機の第1の実施の形態を示したもので、図2は図1の一部を拡大して示したものである。
【0011】
図1及び図2において、1はギヤケースで、一方を閉塞した筒状のケースである。このギヤケース1の内部には、軸方向に互いに対向する一対の側板2,3がギヤケース1の内壁面1aに外周面を当接させて配設されている。上記側板2,3相互は、複数のスペーサ4を介して一定の間隔で対向状態を保つように支持されている。ギヤケースの蓋部1b側に配置される側板3は、ネジ5を介してギヤケース1の蓋部1bに固定されている。
【0012】
ギヤケース1の開口部1c側の側板2には、ギヤケース1を組み付けるモータの出力軸6が挿入される穴2aが形成されている。モータの出力軸6は、ギヤケース1の側板2の穴2aから、ギヤケース1内に導入されており、ギヤケース1内に設けられたギヤ側大歯車7に回転を伝達している。モータの出力軸6には、ギヤが形成されて、モータ側小歯車8を構成しており、このモータ側小歯車8からギヤ側大歯車7に回転が伝達される。
【0013】
ギヤ側大歯車7は、入力軸となる小歯車付き初段軸9に支持されており、この小歯車付き初段軸9は、側板2,3に装着された軸受け10,11に支持されている。これら軸受け10,11は、それぞれ軸受けハウジング12,13に収納されており、これら軸受けハウジング12,13を側板2,3に形成された取付穴2b、3bに嵌入して取り付けられている。軸受け11を収納した軸受けハウジング13には、小歯車付き初段軸9に摺接するOリング14が内蔵されている。このOリング14は初段軸9に対して一定の摩擦による負荷を与えるもので、バックラッシ音あるいは共振音を低減させるものである。
【0014】
小歯車付き初段軸9の小歯車15は、次の第2段の歯車軸16に支持された減速大歯車17に噛合している。歯車軸16は、側板2,3に装着された軸受け18,19に支持されている。これら軸受け18,19は、それぞれ軸受けハウジング20,21に収納されており、これら軸受けハウジング20,21を側板2,3に形成された取付穴2c、3cに嵌入して取り付けられている。
【0015】
歯車軸16には、減速大歯車17とともに、減速小歯車22が支持されており、この減速小歯車22は、第3段の歯車軸23に支持された減速大歯車24に噛合している。第3段の歯車軸23も側板2,3に装着された軸受け25,26に支持されている。これら軸受け25,26は、それぞれ軸受けハウジング27,28に収納されており、これら軸受けハウジング27,28を側板2,3に形成された取付穴2d、3dに嵌入して取り付けられている。
【0016】
第3段の歯車軸23には、減速大歯車24とともに、減速小歯車29が支持されており、この減速小歯車29は、出力軸30に支持された減速大歯車31に噛合している。出力軸30は、軸受け32,33を介して支持されている。軸受け32は、軸受けハウジング34を介して側板2の取付穴2eに支持され、軸受け33は、側板3の取付穴3eと、ギヤケース1の蓋部1bに形成された軸受けハウジング部35に支持されている。出力軸30は、先端部がギヤケース1の蓋部1bの外側に導出されて回転が取り出される。
【0017】
次に、上記構成による実施の形態の作用を説明する。モータの出力軸6の回転は、モータ側小歯車8からギヤ側大歯車7に伝達される。バックラッシ音は、主にモータ側小歯車8とギヤ側大歯車7の間において無負荷および軽負荷時に発生する。これは、モータ振動により無負荷および軽負荷時は伝達方向の歯とは逆側の歯面に相手側歯車が接触するためである。その為、あらかじめギヤ側大歯車7と同軸にある初段軸9に回転中の歯車遊びを発生させない軽負荷を加えることにより、バックラッシ音を抑える。ギヤ側大歯車7の回転とともに、小歯車付き初段軸9が回転する。小歯車付き初段軸9には、軸受け11を収納した軸受けハウジング13に内蔵されたOリング14が、摺接する。こうして、Oリング14によって、一定の摩擦による軽負荷を初段軸9に加えるため、バックラッシ音あるいは共振音を低減させることができる。その際の負荷力の設定は、モータ振動を発生させず、極力モータ出力を損失させない軽負荷を設定する必要がある。
【0018】
こうして、バックラッシ音を低減された回転が小歯車付き初段軸9の小歯車15は、次の第2段の歯車軸16に支持された減速大歯車17に回転を伝達する。減速大歯車17の歯数は、小歯車15より多いので、初段軸9の回転は減速されて第2段の歯車軸16に伝達される。こうして、小歯車15の回転は、減速されて減速大歯車17に伝わり、歯車軸16の減速小歯車22から第3段の歯車軸23に支持された減速大歯車24に伝わる。減速大歯車24の回転は、第3段の歯車軸23に支持された減速小歯車29から、出力軸30に支持された減速大歯車31に伝達される。減速大歯車31の回転は、出力軸30を通して外部に伝達される。こうして、モータの出力軸6の回転は、歯車減速機によって、歯数比によって所定速度に減速された回転として出力軸30から取り出される。
【0019】
次に図3は、図2と同一部分は同符号を付して同一部分の説明は省略して示す本発明の第2の実施の形態を示したものである。この場合、一定の摩擦による軽負荷を初段軸9に加えるため、Oリング14に代えてオイルシール36を用いたものである。オイルシール36は、軸受け11を収納した軸受けハウジング37に内蔵されている。この軸受けハウジング37は、初段軸9の外周面に配置されたオイルシール36を内蔵するため、軸受け11を収納するハウジング部37aよりも内径の大きいハウジング部37bを初段軸9の周囲に延長して形成したものである。
【0020】
この場合も、オイルシール36は、初段軸9に対して軽負荷を与え、バックラッシ音を低減する。また、上記実施の形態では、初段軸9の軸受け11を収納した軸受けハウジング13または37に、軽負荷を与える部材としてOリング、またはオイルシール36を適用したが、初段軸9の軸受け10の軸受けハウジング12に適用してもよく、あるいは、2段軸16の軸受けハウジング20,21に適用してもよい。これらの、軽負荷を与える部材は、複数の軸受けハウジングに適用することも可能であり、かつ異なる種類の部材を組み合わせて使用することも可能である。また、上記実施の形態では、軸受けハウジングと軸との間に、軽負荷を与える部材を配設して、直接、軸に軽微な負荷を与えたが、軸受けと、軸受けハウジングとの間に、軽負荷を与える部材を配置して、間接的に、軸に軽微な負荷を与えることもできる。その他、本発明の要旨を変更しない範囲内で適宜変更して実施し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0021】
1 ギヤケース
2,3 側板
6 モータの出力軸
7 ギヤ側大歯車
8 モータ側小歯車
9 小歯車付き初段軸
10,11,18,19,25,26 軸受け
12,13,20,21,27,28,37 軸受けハウジング
14 Oリング
15 小歯車
16 第2段の歯車軸
17,24 減速大歯車
22,29 減速小歯車
23 第3段の歯車軸
30 出力軸
36 オイルシール






【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギヤケースと、このギヤケースに収容されるとともに、電動機の回転軸を入力軸とし、前記回転軸に設けた歯車からの回転力を出力軸に伝達するための所定数の減速歯車と、前記減速歯車に嵌入された歯車軸と、前記歯車軸を支持する軸受けと、前記軸受けを収納するとともに、上記ギヤケース内に配設された軸受けハウジングとを備えた歯車減速機において、
前記ギヤケースの内部に、軸方向に互いに対向する一対の側板を設け、これら側板はスペーサを介して一定の間隔で対向状態を保つように支持され、かつ前記側板には、前記軸受けハウジングを取り付ける取付穴を設け、該取付穴に嵌入して前記軸受けハウジングを取り付け、前記電動機の回転軸と噛み合う第一歯車もしくは次段の第二歯車のいずれかの歯車軸を支持する軸受けと前記軸受けハウジングとの間に、上記歯車軸に一定の摩擦による軽負荷を加えるための部材としてOリングまたはオイルシールを設けたことを特徴とする歯車減速機。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−60142(P2010−60142A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283998(P2009−283998)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【分割の表示】特願2000−306918(P2000−306918)の分割
【原出願日】平成12年10月6日(2000.10.6)
【出願人】(000103792)オリエンタルモーター株式会社 (150)
【Fターム(参考)】