説明

残留農薬非破壊判定装置

【課題】青果物の残留農薬検知可能な選果ライン装置において、該青果物の表面における農薬成分を、これに中赤外線を照射しその反射光のスペクトル分析にて検出する方法の場合、中赤外線を投光・受光する光分析装置と青果物の距離が個体ごとに変化するので、光の焦点調整に時間を要する。
【解決手段】青果物を載置する載置台6と、該載置台を移送する送り込み移送手段2と、該青果物の表面における農薬成分をこれに中赤外線を照射しその反射光のスペクトル分析にて検出する投光受光部3とを備えた選果ライン装置1において、前記載置台6の下部に孔部を設け、該孔部から投光受光し、該載置台に前記青果物を載置したまま農薬成分を検出可能とする。このことによって、投光受光部3から青果物表面への距離が一定であるため個体ごとの光の焦点調整をなくすことができ、残農薬判定に要する時間を著しく短縮できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青果物の残留農薬判定装置、詳しくは青果物を載置台に載置したまま光分析技術を用いて残留農薬を検出する装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、各農家において生産された果実又は野菜等の青果物を出荷するに際しては、これを選果ライン装置において移送しながらその大きさ及び重さ等を計測した後、各種大きさ又は重さ等ごとに選別するようにしている。
一方、各農家において生産された青果物には、これを栽培したときに使用した農薬が残っているので、この青果物における残留農薬の量を測定することが必要である。
【0003】
しかし、従来は、各農家単位で生産された青果物における残留農薬を、予め別の工程で測定し、残留農薬値が所定値よりも低い青果物のみを、選果ライン装置に供給するようにしていた。つまり、前記青果物における残留農薬値を測定することと、前記青果物を各種大きさ又は重さ等に選別することとを、各々別々に行うようにしていた。該手法では、非能率であるだけではなくコストが嵩むばかりか、青果物を損傷させる恐れが大きいという問題があった。
そこで、特許文献1では残留農薬の迅速な分析方法として、拡散反射赤外スペクトル方法を紹介している。ここでは、青果物が安全性を満足するものであるか否かの識別作業を、農作物の流通過程で可能であることを示している。
【0004】
また、同分野において、青果物の表面における農薬成分をこれに中赤外線を照射しその反射光のスペクトル分析にて検出する技術も提案されている。
ここでは、より具体的な選果ライン装置が紹介されている。即ち、農家ごとに生産された同一品種多数個の青果物を一単位として、この一単位における各青果物を送り込み移送手段にて列状に並べた状態で前記選果ライン装置に送り込み移送し、前記一単位における各青果物のうち移送方向の先頭における一部複数個をサンプル青果物として前述の残留農薬検知を実施する。
また、前記選果ライン装置では、残留農薬値の測定を前記選果ライン装置への送り込み移送の速度を減速した状態で行う方法や、前記選果ライン装置に並設した測定用移送手段にて残留農薬検知を実施する方法など、測定精度の向上や作業能率の向上が試みられている。
【特許文献1】特開2004−325135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前述のサンプルのみで同一品種多数個全体の残留農薬を判定することは、青果物の品質が絶対的に保証されているとは言い切れず、出荷する全ての青果物について残農薬判定することが望ましい。
ここで、出荷する全ての青果物について残農薬判定をするならば、残留農薬検知可能な選果ライン装置では、中赤外線を投光・受光する光分析装置と青果物の距離が個体ごとに変化するので、光の焦点調整に時間を要する問題点の解決が望まれる。
また、光分析装置と青果物の距離即ち焦点距離は、残留農薬値の基準を決定するスペクトル分析に影響を及ぼすので、常に一定でなくてはならない。
そこで、解決しようとする課題は、残留農薬検知可能な選果ライン装置において、光の焦点調整時間をなくし、焦点距離を常に一定として、残留農薬検知時間を短縮することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、青果物を載置する載置台と、該載置台を移送する手段と、該青果物の表面における農薬成分をこれに中赤外線を照射しその反射光のスペクトル分析にて検出する投光受光部とを備えた選果ライン装置において、前記載置台の下部に孔部を設け、該孔部から投光受光し、該載置台に前記青果物を載置したまま農薬成分を検出可能としたものである。
【0008】
請求項2においては、青果物を載置する載置台と、該載置台を移送する手段と、該青果物の表面における農薬成分をこれに中赤外線を照射しその反射光のスペクトル分析にて検出する投光受光部とを備えた選果ライン装置において、前記青果物表面と前記投光受光部との距離を一定に保つ載置台の位置規正手段を備え、該載置台に前記青果物を載置したまま農薬成分を検出可能としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、光分析装置から青果物表面への距離が一定であるため個体毎の光の焦点調整をなくすことができ、残農薬判定に要する時間を著しく短縮できる。また、焦点距離は常に一定なので、スペクトル分析は正確に残留農薬を判定できる。
そして、このことは残農薬判定装置において判定時間が要するため移送される同一品種多数個の青果物中一部の青果物のみをサンプルとして残農薬判定し、残りもサンプル同等であるとしてきた従来の判定方法に対し、全ての青果物を残農薬判定できることを示しており出荷する青果物の品質向上に繋がる。
【0011】
請求項2においては、既存の選果ライン装置において、簡易的な青果物表面と投光受光部との距離を一定に保つ機構を備えることのみで、請求項1と同様の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施例1に係る残留農薬非破壊判定装置の概略を示した側面図、図2(a)は本発明の実施形態に係る載置台の平面図、図2(b)は同じく側面図、図3は実施例2に係る残留農薬非破壊判定装置の概略を示した平面図である。
【実施例1】
【0013】
本発明の実施例1について、図1及び図2を用いて説明する。
ここで、選果ライン装置1は、例えば、野菜又は果実等の青果物の多数個を移送しながらその大きさ及びその重さ等を計測したのち、各種大きさ又は重さ等ごとに選別するようにしたものであって、図中はその一部分のみを示している。さらに、送り込み移送手段2は載置台5に載せられた青果物6の移送手段を担っており、図中では矢印アを進行方向とする。
【0014】
ここで、送り込み移送手段2にて、移送途中の前記青果物6に投光受光部3より中赤外線を照射(図中矢印A)し、その反射光(図中矢印B)を該投光受光部3にて吸収したのち、制御部4にてスペクトル分析することで残留農薬の種類及び量の検出を移送される全ての青果物に対して実施する。
ここで、前記スペクトル分析に際しては、その反射光のスペクトル分布を、農薬における種類ごとのピーク分布に比較することによって、農薬の種類を判別し、かつ、前記スペクトル分布における最大ピーク値によって残留農薬値を求めるようにする。
【0015】
また、特記すべきこととして、前述の投光受光部3による中赤外線を照射(図中矢印A)及び反射(図中矢印B)を該送り込み移送手段2の下方より行うため、上方より検出した場合に青果物の大きさや載置状態の向き等で測定距離にバラツキが生じて検出誤差が生じるが、本発明では青果物の最下部と投光受光部3との間の距離が常に一定となり、検出誤差も小さくなる。そして、この下方より青果物に中赤外線を当てるために該送り込み移送手段2には孔部が設けられている。
一方、載置皿5の様態を説明する。載置皿5は全体が樹脂など剛性の高い材質にて構成されている。前記青果物6を載置する皿表面12はシリコン又はゴムなど剛性の低い材質で構成されており、該皿表面12の下部にある底部13は吸収をやわらげるゲル剤などが注入されている。これらの構成により移送中の青果物6の損傷を防いでいる。
ここで、前記載置皿5の中央には上下方向に貫通する孔部11が設けられており、前述の投光受光部3による中赤外線の照射光(図中矢印A)及び反射光(図中矢印B)を通過させる。
【0016】
つまり、前述の投光受光部3による中赤外線の照射(図中矢印A)及び反射(図中矢印B)は、前記送り込み移送手段2の孔部と、前記載置皿5の中央には孔部11を通過して、残留農薬を検知する。
このことは、投光受光部3と残農薬検知される青果物6下面の距離を青果物毎に一定とし、光の焦点調整を不要としている。また、焦点距離は常に一定なので、スペクトル分析は正確に残留農薬を判定できる。
【実施例2】
【0017】
次に、本発明の実施例2について、図3を用いて説明する。
ここで、選果ライン装置1及びスペクトル分析に関しては、前述の実施例1同様なので、詳細な説明は省略する。また、図中では矢印アを進行方向としている。さらに、実施例2では投光受光部3による中赤外線の照射(図中矢印A)及び反射(図中矢印B)を、青果物6の側面より行うことにより、残留農薬を検知することとしており、これは既存の選果ライン装置1でも見られる構成である。
【0018】
ここでは、残留農薬を検知する即ち投光受光部3を通過する前に、青果物6を載せた載置皿5は位置規制手段21によって、横方向のズレを補正する。該位置規制手段21は仕切り板のような役割であって、移送される途上、横方向の目標位置に載置皿5を誘導できる簡易なもので構わない。
前記位置規制手段21によって、載置皿5の横方向位置が全て同じとなり、青果物6と投光受光部3の距離を一定にしている。但し、位置規制手段21で直接成果物の位置を補正する構成であってもよい。この場合位置規制手段21の当接側表面は青果物を傷つけない低摩擦で柔軟な材質で構成される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1に係る残留農薬非破壊判定装置の概略を示した側面図。
【図2】(a)は本発明の実施例1に係る載置台の平面図、(b)は同じく平面図。
【図3】実施例2に係る残留農薬非破壊判定装置の概略を示した平面図。
【符号の説明】
【0020】
1 選果ライン装置
2 送り込み移送手段
3 投光受光部
4 制御部
6 載置皿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
青果物を載置する載置台と、該載置台を移送する手段と、該青果物の表面における農薬成分をこれに中赤外線を照射しその反射光のスペクトル分析にて検出する投光受光部とを備えた選果ライン装置において、
前記載置台の下部に孔部を設け、前記投光受光部を上方へ照射可能に載置台下方に配置し、該孔部から投光受光し、該載置台に前記青果物を載置したまま農薬成分を検出可能としたことを特徴とする残留農薬非破壊判定装置。
【請求項2】
青果物を載置する載置台と、該載置台を移送する手段と、該青果物の表面における農薬成分をこれに中赤外線を照射しその反射光のスペクトル分析にて検出する投光受光部とを備えた選果ライン装置において、
前記青果物表面と前記投光受光部との距離を一定に保つ載置台の位置規正手段を備え、前記投光受光部を載置台へ照射可能に載置台近傍に配置し、該載置台に前記青果物を載置したまま農薬成分を検出可能としたことを特徴とする残留農薬非破壊判定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−337255(P2006−337255A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−164215(P2005−164215)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000006851)ヤンマー農機株式会社 (132)
【Fターム(参考)】