殺菌装置
【課題】
消耗による電極の減りに関係なく、適切な量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させることによって便器内を好適に殺菌することができる殺菌装置を提供すること。
【解決手段】
給水路中途に設けられ、少なくとも一方が殺菌性金属である1対の電極を有する電解槽と、電極間に電流を流すことにより給水路に流れる洗浄水に対して殺菌性金属イオンを溶出すると共に、電極間に洗浄水の水質検出用の電流を流したときの電極間の電圧を検出することにより洗浄水の水質検出を行う制御部とを備えた殺菌装置において、制御部は、殺菌性金属イオンの溶出状況に応じた電極間の距離に対する補正値を用いて、水質検出を行い、水質検出結果に基づいて殺菌性金属イオンの溶出制御を行うこととした。
消耗による電極の減りに関係なく、適切な量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させることによって便器内を好適に殺菌することができる殺菌装置を提供すること。
【解決手段】
給水路中途に設けられ、少なくとも一方が殺菌性金属である1対の電極を有する電解槽と、電極間に電流を流すことにより給水路に流れる洗浄水に対して殺菌性金属イオンを溶出すると共に、電極間に洗浄水の水質検出用の電流を流したときの電極間の電圧を検出することにより洗浄水の水質検出を行う制御部とを備えた殺菌装置において、制御部は、殺菌性金属イオンの溶出状況に応じた電極間の距離に対する補正値を用いて、水質検出を行い、水質検出結果に基づいて殺菌性金属イオンの溶出制御を行うこととした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌装置に関するものであり、特に、便器の洗浄水に殺菌性金属イオンを溶出させて便器を殺菌する殺菌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、便器内を殺菌するために、金属イオンを洗浄水中に溶出させる殺菌装置が用いられるようになってきた。
【0003】
この殺菌装置は、図11に示すように、洗浄水供給流路100の中途部に、少なくとも一方を銀などの殺菌性を有する金属(以下、「殺菌性金属」という。)から構成した1対の電極101、102を有する電解槽103を有し、この電解槽103内の電極101、102間に電流を流すことにより、洗浄水中に殺菌性金属イオンを溶出させ、この殺菌性金属イオンによって便器内を殺菌するものである。
【0004】
電極101、102の極性(すなわち陽極と陰極)は、制御装置が定期的に反転させており、カソード側に炭酸カルシウム等のスケールが付着するのを防いでいる。
【0005】
また、金属イオンを溶出する度に電極101、102は消耗していくが、電極101、102が陽極である時間と陰極である時間とを均等にしておくことで、一対の電極101、102を均等に消耗させることができる。今回は簡易的に説明するため、電極101を陽極、電極102を陰極として説明する。
【0006】
このような殺菌装置では、洗浄水の中に溶出させる殺菌性金属イオンの溶出量が少なすぎる場合には十分な殺菌効果を奏することができず、溶出量が多すぎる場合にはこの殺菌性金属イオンが洗浄水中の塩素イオンなどと反応して便器の黒ずみの原因となるおそれがあった。
【0007】
そのため、通常は、上記電極101、102間に予め設定した一定の電流を流すことによって、最適な量の殺菌性イオンを洗浄水中に溶出させるようにしていた。
【0008】
しかし、便器内を洗浄する洗浄水は、上水や中水などからの給水を用いていることから、その地域、季節、時間、給水形態などにより水質が一定ではない。
【0009】
殺菌性金属イオンの溶出量は、水質(洗浄水中の塩素イオン濃度)によって異なるため、このように水質が一定でない場合には、最適な量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させることができない。
【0010】
そこで、本出願人は、殺菌用の1対の電極101、102を利用し、この電極101、102間に一定量の水質検査用電流を流したとき電極101、102間に生じる電圧を測定することなどによって、洗浄水の水質を測定すると共に、その測定結果に基づいて、殺菌性金属イオンを溶出するために電極101、102間に流す電流量を調整する殺菌装置を提案した(たとえば、特許文献1参照。)。
【0011】
すなわち、この殺菌装置では、固定値である電極101、102の面積S1と電極101、102間の距離L1と、電極101、102間に予め設定した一定量の電流を流したときに電極101、102間に生じる電圧とに基づいて、電極101、102間に存在する洗浄水の抵抗値を算出し、この抵抗値から洗浄水の水質を求め、その水質に応じて殺菌性金属イオンを溶出するために電極101、102間に流す電流量を調整するようにしていた。
【特許文献1】特開2000−204633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、上記従来の殺菌装置では、殺菌性金属イオン溶出用の電極101、102を水質測定用の電極101、102として用いていたため、殺菌性金属イオンを多数回溶出させるにつれて殺菌性金属で構成した陽極側の電極101が図12に示すように次第に減っていき、それに伴って電極間の距離がL1(図11参照。)からL1’になり次第に大きくなっていく。
【0013】
このように電極101が消耗して減ってしまった場合には、この殺菌装置により殺菌性金属イオンを溶出させるときの洗浄水の水質を判定する際に、電極101、102間の実際の距離はL1’であるにもかかわらず、電極101、102間の距離をL1として洗浄水の抵抗率を算出してしまい、その結果、洗浄水の抵抗率を実際の抵抗率よりも高いものとして水質を検出する場合があり、その検出結果に基づいて殺菌性金属イオンの溶出を行うと、適切な量よりも多い量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させるおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、請求項1に係る本発明では、給水路中途に設けられ、少なくとも一方が殺菌性金属である1対の電極を有する電解槽と、電極間に電流を流すことにより給水路に流れる洗浄水に対して殺菌性金属イオンを溶出すると共に、電極間に洗浄水の水質検出用の電流を流したときの電極間の電圧を検出することにより洗浄水の水質検出を行う制御部とを備えた殺菌装置において、制御部は、殺菌性金属イオンの溶出状況に応じた電極間の距離に対する補正値を用いて、水質検出を行い、水質検出結果に基づいて殺菌性金属イオンの溶出制御を行うこととした。
【0015】
また、請求項2に係る本発明では、請求項1に記載の殺菌装置において、補正値は、水質検出用の電流を流したときに検出する電極間の電圧に応じた補正値であることを特徴とする。
【0016】
また、請求項3に係る本発明では、請求項1に記載の殺菌装置において、補正値は、水質検出用の電流に対する補正値であることを特徴とする。
【0017】
また、請求項4に係る本発明では、請求項1〜3のいずれか1項に記載の殺菌装置において、殺菌性金属イオンの溶出状況に関する殺菌性金属イオン溶出情報を記憶する記憶手段を備え、制御部は、記憶手段に記憶した情報に基づいて、殺菌性金属イオンの溶出状況に応じた補正値を決定し、洗浄水の水質検出を行うことを特徴とする。
【0018】
また、請求項5に係る本発明では、請求項4に記載の殺菌装置において、殺菌性金属イオン溶出情報は、殺菌性金属イオンを溶出した回数を積算した情報であることを特徴とする。
【0019】
また、請求項6に係る本発明では、請求項4に記載の殺菌装置において、殺菌性金属イオン溶出情報は、殺菌性金属イオンを溶出した時間を積算した情報であることを特徴とする。
【0020】
また、請求項7に係る本発明では、請求項4に記載の殺菌装置において、殺菌性金属イオン溶出情報は、殺菌性金属イオンの積算溶出量の情報であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、以下に記載するような効果を奏する。
【0022】
請求項1に係る本発明では、給水路中途に設けられ、少なくとも一方が殺菌性金属である1対の電極を有する電解槽と、電極間に電流を流すことにより給水路に流れる洗浄水に対して殺菌性金属イオンを溶出すると共に、電極間に洗浄水の水質検出用の電流を流したときの電極間の電圧を検出することにより洗浄水の水質検出を行う制御部とを備えた殺菌装置において、制御部は、殺菌性金属イオンの溶出状況に応じた電極間の距離に対する補正値を用いて、水質検出を行い、水質検出結果に基づいて殺菌性金属イオンの溶出制御を行うこととしたため、電極が消耗した場合であっても、殺菌性金属イオンを溶出させるときの洗浄水の水質を正確に検出することができ、その検出結果を用いて適切な量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させることができる殺菌装置を提供することができる。
【0023】
また、請求項2に係る本発明では、請求項1に記載の殺菌装置において、補正値は、水質検出用の電流を流したときに検出する電極間の電圧に応じた補正値であることを特徴とするため、洗浄水の水質に応じて適切な量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させることができる。
【0024】
また、請求項3に係る本発明では、請求項1に記載の殺菌装置において、補正値は、水質検出用の電流に対する補正値であることを特徴とするため、電極間に水質検出用の電流を流したときに検出した電圧を補正することなく、洗浄水の水質に対して適切な量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させることができる。
【0025】
また、請求項4に係る本発明では、請求項1〜3のいずれか1項に記載の殺菌装置において、殺菌性金属イオンの溶出状況に関する殺菌性金属イオン溶出情報を記憶する記憶手段を備え、制御部は、記憶手段に記憶した情報に基づいて、殺菌性金属イオンの溶出状況に応じた補正値を決定し、洗浄水の水質検出を行うことを特徴とするため、消耗による電極の減りに関係無く適切な量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させることができる。
【0026】
また、請求項5に係る本発明では、請求項4に記載の殺菌装置において、殺菌性金属イオン溶出情報は、殺菌性金属イオンを溶出した回数を積算した情報であることを特徴とするため、殺菌性金属イオンを溶出した回数の増加に応じた補正値を決定することができるため、適切な量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させることができる。
【0027】
また、請求項6に係る本発明では、請求項4に記載の殺菌装置において、殺菌性金属イオン溶出情報は、殺菌性金属イオンを溶出した時間を積算した情報であることを特徴とするため、殺菌性金属イオンの一回の溶出時間が一定でない場合であっても、消耗による電極の減りに応じた適切な量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させることができる。
【0028】
また、請求項7に係る本発明では、請求項4に記載の殺菌装置において、殺菌性金属イオン溶出情報は、殺菌性金属イオンの積算溶出量の情報であることを特徴とするため、洗浄水の供給流量に応じた量の殺菌性金属イオンを溶出させる制御を行う場合であっても、電極の消耗による電極の減りに応じた適切な量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
[第1実施形態]
(殺菌装置の説明)
以下、本発明に係る殺菌装置の一実施形態について図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明では、男性用小便器に、本発明に係る殺菌装置を適用した場合を例に挙げて説明を行うが、本発明は、これに限定されるものではなく、各種便器、洗面台などに適用することができる。
【0030】
図1に示すように、殺菌装置1は、便器2に便器洗浄用の洗浄水を供給する給水路3の中途部に設けられ、少なくとも一方が殺菌性を有する金属により構成した一対の電極4、5を有する電解槽6と、この電解槽6よりも給水路3の上流側に設けられ、便器2への洗浄水の供給及び供給停止を行う電磁弁7と、電解槽6と電磁弁7の動作を制御する制御器8とを備えている。なお、電磁弁7は電解槽6よりも給水路3の下流側に設けてもよい。
【0031】
そして、この殺菌装置1は、制御器8の制御に従って電極4、5間に電流を流すことにより、電解槽6内の洗浄水に殺菌性を有する金属イオン(以下、「殺菌性金属イオン」という。)を溶出させると共に、電磁弁7を開放することによって殺菌性金属イオンを含んだ洗浄水を便器2に流下させて、便器2内を殺菌洗浄する装置である。
【0032】
また、殺菌装置1の制御器8は、電磁弁7を開放及び閉塞させる電磁弁駆動部9と、この電磁弁駆動部9を制御することにより洗浄水を供給及び供給停止する便器洗浄制御部10と、電極4、5に電流を供給すると共に電磁弁駆動部9を制御する制御部11と、電極4、5に供給する電流の電圧を測定する電圧測定部12とを備えており、電源17から供給される電力により動作するものである。
【0033】
特に、制御器8が備える制御部11は、電圧測定部12の測定結果に対応した量の電流を電極4、5に供給する電流供給手段13と、殺菌性金属イオンの溶出状況に関する殺菌性金属イオン溶出情報を記憶する記憶手段14と、電流供給手段13及び電磁弁駆動部9を制御すると共に記憶手段14に殺菌性金属イオン溶出情報を記憶させる電解洗浄制御手段15と、殺菌性金属イオン溶出情報に基づいて電圧測定部12により測定した電圧を補正する補正値を算出し、その補正値を用いて補正した補正電圧を電流供給手段13に入力する補正手段16とを備えている。
【0034】
(補正の原理)
ここで、本実施形態に係る殺菌装置1が電極4、5へ電流を供給する際に行う、供給電流量補正の原理について説明する。
【0035】
この殺菌装置1では、電解槽6内の洗浄水に電流を流したときの電極4、5間に存在する洗浄水の抵抗率の違いによって、洗浄水の水質の違いを検出するようにしている。
【0036】
この殺菌装置1の電解槽6は、図2に示すように、内部に一対の電極4、5を備えている。そして、これら一対の各電極4、5の面積をS(cm2)、電極4、5間の距離をL(cm)、水の抵抗率をρ(Ω・m)とすると、電極4、5間の水の抵抗値R(Ω)は、R=ρ×L/S(式1)で与えられる。
【0037】
また、抵抗率に着目すれば、ρ=R×S/L(式2)で表される。
【0038】
つまり、洗浄水の水質(抵抗率ρ)は、電極4、5間に電圧を印加することにより測定した電極4、5間に存在する洗浄水の抵抗値Rと、予め決定されている各電極4、5の面積をSと、同じく予め決定されている電極4、5間の距離Lとから算出することができる。
【0039】
しかし、殺菌性金属で構成された4、5間に電圧を印加させることにより、洗浄水中に殺菌性金属イオン溶出させる方式の場合、長期間の使用により電極4、5が消耗するにつれて陽極側の電極4(以下、「陽極電極4」という。)が減り、電極4、5間の距離は大きくなる。
【0040】
そのため、電流供給手段13により電極4、5間に水質検出用の一定の電流を流して、電極4、5間に存在している洗浄水の抵抗率ρを検出した場合、水質が一定(抵抗率ρが一定)でも、電極4、5間の距離は大きくなっているので、電極4、5間に存在している洗浄水の抵抗値Rは増大する。
【0041】
その結果、水質検出用の一定の電流を流して、水質(抵抗率ρ)を検出し、その検出結果に基づいて殺菌性金属イオンを溶出させる際に、(式2)を用いて水質(抵抗率ρ)を算出すると、実際の水質(抵抗率ρ)よりも高い抵抗率ρが算出されてしまう。
【0042】
具体的には、図3に示すように、同じ水質(抵抗率ρ)の洗浄水に対して、電流供給手段13により電極4、5間に複数回電流を流して殺菌性金属イオンを溶出させた場合、実際の洗浄水の抵抗値Rは、殺菌性金属イオンを溶出した回数Xとは無関係に一定の値をとる(図3中点線参照。)はずだが、電極4が消耗すると電極4、5間の間隔が広くなり、電極4、5間に存在する洗浄水の量が多くなるため、実測値としての抵抗値Rは、殺菌性金属イオンを溶出した回数Xが増加するにつれて次第に増大していく(図3中実線参照。)。
【0043】
そこで、本実施形態の殺菌装置1では、図4(a)に示すように、電極が消耗するにつれて高くなる電極4、5間の電圧を、図4(b)に示すように補正することによって、的確に洗浄水の水質を検出し、その水質及び殺菌性金属イオンの溶出回数に応じて最適な量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させるようにしている。
【0044】
つまり、洗浄水の抵抗率ρは距離に比例するので、電極間の水の抵抗値Rから距離を補正することにより正しい抵抗率ρを換算できる。実施例では、電極間の水の抵抗値Rを基準に算出し、その抵抗値Rに距離の比に関する後述する補正値αを乗ずることによって補正を行っている。
【0045】
ここで、図4(a)は、水質検出時における補正手段16に入力される電圧測定部12の測定結果(水質測定時の電極間電圧)と殺菌性金属イオンを溶出した回数との関係を示す説明図であり、図4(b)は、補正手段16により算出した補正電圧(水質測定時の電極間補正電圧)と殺菌性金属イオンを溶出した回数との関係を示す説明図である。
【0046】
なお、以下の説明では、洗浄水の水質を検出する際の便器2への洗浄水供給を電解前洗浄、実際に便器2を殺菌洗浄するために殺菌性金属イオンを溶出させる際の便器2への洗浄水供給を電解本洗浄、これら電解前洗浄と電解本洗浄の一連の流れを電解洗浄と呼ぶこととする。
【0047】
また、本実施形態の殺菌装置1では、水質検出の測定を、通常、1日に1回、電解洗浄時に行い、電解前洗浄時に水質検査し、その結果に基づいて補正を行い、その後の電解本洗浄に殺菌性金属イオンの溶出量を決定して電解本洗浄を行うようにしている。なお、1日に1回予め設定した時間に水質検査を行なって電解洗浄してもよいが、この電解洗浄を行なうタイミング、頻度は適宜、自由に決めてもよい。
【0048】
また、本実施形態の殺菌装置1は、通常の用便後に行う便器洗浄では殺菌性金属イオンの溶出を行なわないようにしている。
【0049】
また、この殺菌装置1では、洗浄水の抵抗値Rに対応した量の殺菌性金属イオンを溶出させることによって、一定の殺菌性金属イオン濃度の洗浄水を作り出すようにしているので、1回の電解(殺菌性金属イオンの溶出)による陽極電極4の溶出量は決まっている。
【0050】
そのため、1回の電解における陽極電極4の溶出量をa(g)、1回の電解における電極4、5間距離の増加幅をΔL(cm)、溶出する陽極電極4の単位体積あたりの質量をc(g/cm3)とすると、陽極電極4の溶出量aは、a=c×S×ΔLで与えられる。なお、Sは、各電極4、5の面積である。
【0051】
つまり、殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させる回数(以下、「電解回数」という。)が多くなるにつれて電極4、5間距離は大きくなるが、1回の電解による陽極電極4溶出量は、このように計算により求めることができる。
【0052】
そして、この殺菌装置1の補正手段16では、電圧測定部12が測定した電極4、5間の電圧に補正値αを乗算することにより補正電圧を求めるようにしており、電解回数X回目での補正値αは、電解回数をX、殺菌装置1製造時の電極4、5間の間隔をL0とすると、α=L0/(L0+ΔL×X)で与えられる。
【0053】
例えば、電解条件が、電極4、5の面積:12mm×10mm(厚さ0.8mm)、電極4、5の材質:銀(99.9%以上)、電極4、5間隔:3.0mm、銀濃度:4ppb、洗浄水流量:15L/nin、電解時間:16秒、比重10.49g/cm3である場合に、1回の電解による銀の溶出量a(g)は、
a=1000(g)×4/109=16×10-6(g)となる。
【0054】
この、a=16×10-6という値と各電解条件とを、上記した式a=c×S×ΔLに代入すると、16×10-6(g)=10.49(g/cm3)×1.2(cm2)×ΔLとなり、
1回の電解による電極4、5間の距離ΔLは、
ΔL=1.27×10-6(cm)となる。
【0055】
次に、このΔL=1.27×10-6という値を各電解条件とを、上記した式α=L0/(L0+ΔL×X)に代入すると、電解回数X回目での補正値αは、
α=0.3/(0.3+1.27×10-6×X)となる。
【0056】
なお、この計算では電解本洗浄による陽極電極4の溶出量のみを考慮して補正値を算出しているが、実際には電解前洗浄時にも水質検出用の通電を行っているため、若干の陽極電極4の溶出は起きていると考えられる。
【0057】
そこで、標準的な水質検出の通電パターンとして電解前洗浄時に1mAの通電を2秒、電解本洗浄時に5mAの通電を16秒行った場合を考えると、ファラデーの法則より、陽極電極4の溶出量は通電電流を通電時間で積分した値に比例するため、この場合における電解前洗浄時の陽極電極4の溶出量は、電解本洗浄時の溶出量を1とすると、(1×2)÷(5×16)=0.025となり、電解本洗浄時の溶出量の2.5%であることがわかる。
【0058】
このように電解前洗浄時の陽極電極4の溶出量は微量であるため、今回の補正値の計算では無視しているが、実使用においては前洗浄による陽極電極4の溶出量を考慮して補正を行っても良い。
【0059】
上記のように算出すると、電解回数X毎の補正値αは、図5に示すグラフのようになる。
【0060】
(制御部による制御の説明)
殺菌装置1による制御について図6〜図9を参照して説明する。図6は電解洗浄を行う際に制御部11が実行する制御を示すフローチャート、図7は電解前洗浄を行う際に制御部11が実行する制御を示すフローチャート、図8は補正手段16が行う電極間電圧補正を示すフローチャート、図9は電解洗浄を行う際の電磁弁7開放による洗浄水の供給及び電流供給手段13による水質検出用電流及び電解電流の供給をしめすタイミングチャートである。
【0061】
なお、本実施形態の殺菌装置1は、通常、電解洗浄を行なう前に、予備洗浄として電解しない洗浄水を十分便器に流して便器2をきれいにした後、電解洗浄を行うことによって電解洗浄の効果を高めるようにしているが、以下の説明では、予備洗浄が終了した後に、制御部11が実行する制御について説明する。
【0062】
図6及び図9に示すように、制御部11は、予備洗浄を行った後に、まず電解前洗浄を行い(ステップST1)、続いて電解本洗浄を行う(ステップST2)。
【0063】
そして、電解前洗浄を行う際に制御部11では、図7及び図8に示すように、電解洗浄制御手段15の制御に従って電流供給手段13が電極4、5に対し水質検出用の定電流(例えば、1mAの電流)を通電する(ステップST3)。
【0064】
このとき同時に電磁弁駆動部9は、電解洗浄制御手段15の制御に従って電磁弁7を開放し、電解槽6へ洗浄水を供給する。
【0065】
電極4、5に水質検出用の電流が通電されると、電圧測定部12が電極4、5間の電圧を測定し(ステップST4)、その測定結果を補正手段16へ入力する。
【0066】
このとき同時に、補正手段16には記憶手段14から殺菌性金属イオン溶出情報が入力される。
【0067】
ここで入力される殺菌性金属イオン溶出情報は、これまでに電極4、5に電流を通電した回数を積算した電解回数X’を示す情報である。
【0068】
その後、補正手段16は、電圧測定部12から入力される電圧値と、記憶手段14から入力される殺菌性金属イオン溶出情報とに基づいて、電極4、5間の電圧を補正した補正電圧を生成する電極間電圧補正を行い(ステップST5)、生成した補正電圧を電流供給手段13に入力する(ステップST5)。
【0069】
電極間電圧補正を行う際に補正手段16は、図8に示すように、先ず記憶手段14から入力される前回までの電解回数X’に、今回水質検出用の電流を通電した分の回数1を加算した電解回数Xを算出する(ステップST8)。
【0070】
次に補正手段16は、ステップST8で算出した電解回数Xを、前述の補正値αを求める式[α=L0/(L0+ΔL×X)]に代入することにより補正値αを計算する(ステップST9)。
【0071】
次に補正手段16は、電圧測定部12から入力される電極4、5間の電圧に、ステップST9で計算した補正値αを乗算することによって補正電圧を算出し(ステップST10)、算出した補正電圧を電流供給手段13に入力して処理をステップST6に戻す。
【0072】
この補正手段16が補正電圧を生成している間、図8に示すように、電流供給手段13は電極4、5へ電流を供給しないようにしている。
【0073】
電流供給手段13は、補正手段16から補正電圧が入力されると、電極4、5間の電圧が補正電圧の値であるときの洗浄水の電気伝導度を計算し(ステップST6)、算出した電気伝導度に基づいて電極4、5間に存在している洗浄水の抵抗値Rを求め、その抵抗値Rにおいて洗浄水中に適切な量の殺菌性金属イオンを溶出させるために電極4、5に通電する電解電流を計算する(ステップST7)。
【0074】
そして、電流供給手段13は、図8に示すように、ステップST7で計算した電解電流を電極4、5に供給する。
【0075】
このように、この殺菌装置1では、電解回数に応じた補正値αを用いて電圧測定部12が測定した電圧に基づいて決定した電解電流を、電極4、5に供給するようにしているため、電解回数が増加するにつれて広がる電極4、5間の間隔に左右されることなく、洗浄水の水質に応じた適切な量の殺菌性金属イオンを溶出させることができる。
【0076】
[第2実施形態]
上記第1実施形態に記載の殺菌装置1は、電極4、5に水質検出用の電流を流したときに検出する電極4、5間の電圧と補正値αとを用いて生成した補正電圧に応じて、電流供給手段13が供給する電解電流を調整するように構成したが、第2実施形態の殺菌装置1aは、殺菌性金属イオン溶出情報に基づいて決定した補正値αを用いて水質検出用の電流を調整し、この調整した水質検出用の電流を電極4、5に供給したときに電圧測定部12が検出した電圧に対応した電解電流を電極4、5に供給するようしており、図10に示すように構成している。なお、図10において、第1実施形態の殺菌装置1と同一の構成要件については、同一の符号を付することによりその説明を省略する。
【0077】
図10に示すように、第2実施形態に係る殺菌装置1aの基本的構造は、図1に示す第1実施形態に係る殺菌装置1と同様であるが、制御部11a内の構成と制御だけが異なる。
【0078】
具体的には、制御部11aにおいて、電流供給手段13aには電圧測定部12の測定結果が直接入力されるように構成しており、補正手段16aには記憶手段14からの殺菌性金属イオン溶出情報だけが入力されるように構成している。
【0079】
そして、この殺菌装置1aの制御部11aは、電解洗浄を行う際に、第1実施形態に記載の制御部11と同様に、予備洗浄を行った後、図6に示すフローチャートに従って電解前洗浄(ステップST1)と電解本洗浄(ステップST2)とを行う。
【0080】
ただし、この制御部11aの電流供給手段13aは、電解前洗浄を行う際に、補正手段16aが算出した補正値αに基づいて補正した水質検出用の電流を生成して電極4、5に通電するようにしている。
【0081】
すなわち、電解前洗浄を行う際に電流供給手段13aは、この殺菌装置1aが製造されたときに設定された一定の水質検査用の電流値に、補正手段16aから入力された補正値αを乗算することにより、電極4、5の消耗による電極4、5間の間隔を考慮した水質検査用の補正電流値を算出し、この補正電流値分の電流を水質検出用電流として電極4、5に通電する。
【0082】
そして、電圧測定部12は、このとき電極4、5間に発生した電圧を検出し、その検出結果を電流供給手段13aに入力する。
【0083】
その後、この電流供給手段13aは、電解電流を電極4、5に通電する際に、電圧測定部12から入力された電極4、5間の電圧に対応した量の電解電流を電極4、5に通電する。
【0084】
このように、第2実施形態の殺菌装置1aでは、記憶手段14に記憶させている殺菌性金属イオン溶出情報に基づいて補正手段16aが生成した補正値αを用いて、電流供給手段13aが電極4、5に供給する水質検出用の電流を補正するようにしたため、電圧測定部12が測定した電圧に補正行う制御を省くことができ、しかも、電解回数が増加するにつれて広がる電極4、5間の間隔に左右されることなく、洗浄水の水質に応じた適切な量の殺菌性金属イオンを溶出させることができる。
【0085】
また、上記第1及び第2実施形態に記載の殺菌装置1、1aにおいて、記憶手段14に記憶させると共に記憶手段14から補正手段16、16aに入力する殺菌性金属イオン溶出情報は、電極4、5に電流を通電した回数を積算した電解回数X’を示す情報としているが、本発明はこれに限定するものではなく、この殺菌装置が製造されてからの電極の消耗状況、すなわち、殺菌性金属イオンの溶出状況を示す情報であればよく、具体的には、殺菌性金属イオンを溶出した時間を積算した情報や、殺菌性金属イオンの積算溶出量の情報を用いることができる。
【0086】
殺菌性金属イオン溶出情報を、殺菌性金属イオンを溶出した時間を積算した情報とすることによって、1回の電解洗浄に要する時間が一定でない場合であっても、電解洗浄をする際に、洗浄水の水質と、電極の消耗とに応じた適切な量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させることができる。
【0087】
このような殺菌性金属イオン溶出情報を用いた際には、図3〜図5に示すグラフの横軸が殺菌性金属イオンを溶出した積算時間となる。
【0088】
これにより、例えば、1日数回、通常の電解洗浄よりも長い時間電解洗浄を行って、便器をより清潔に保つように殺菌装置を設定しても、電解洗浄を行うときに、洗浄水の水質と、電極の消耗とに応じた適切な量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させることができる。
【0089】
また、殺菌性金属イオン溶出情報を、殺菌性金属イオンの積算溶出量の情報とすることによって、便器へ供給する洗浄水の単位時間における流量が異なる場合であっても、洗浄水の水質と、電極の消耗とに応じた適切な量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させることができる。
【0090】
このような殺菌性金属イオン溶出情報を用いた際には、図3〜図5に示すグラフの横軸が溶出した殺菌性金属イオンの積算量となる。
【0091】
これにより、電磁弁の設定を自由に変更した場合、若しくは、地域や設置場所などにより供給水の水勢が異なる場合であっても、洗浄水の水質と、電極の消耗とに応じた適切な量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させることができる。
【0092】
このように、本発明に係る殺菌装置は、電解洗浄を行う際に、殺菌性金属イオンの溶出状況に応じた電極間の距離に対する補正値を用いて、洗浄水の水質検出を行い、この水質検出結果に基づいて殺菌性金属イオンの溶出制御を行うため、消耗による電極の減りに関係なく、また、時間的な洗浄水の水質変化に左右されることなく、適切な量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させることによって便器内を好適に殺菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】第1実施形態に係る殺菌装置を示す機能ブロック図である。
【図2】電解槽を示す説明図である。
【図3】水の抵抗値と殺菌性金属イオンを溶出した回数との関係を示す説明図である。
【図4】電極間の電圧と殺菌性金属イオンを溶出した回数との関係をしめす説明図である。
【図5】電解回数X毎の補正値αを示すグラフである。
【図6】電解洗浄を示すフローチャートである。
【図7】電解前洗浄を示すフローチャートである。
【図8】電極間電圧補正を示すフローチャートである。
【図9】給水と電流供給を示すタイミングチャートである。
【図10】第2実施形態に係る殺菌装置を示す機能ブロック図である。
【図11】従来の水質検出を示す説明図である。
【図12】従来の水質検出を示す説明図である。
【符号の説明】
【0094】
1 殺菌装置
2 便器
3 給水路
4、5 電極
6 電解槽
7 電磁弁
8 制御器
9 電磁弁駆動部
10 便器洗浄制御部
11 制御部
12 電圧測定部
13 電流供給手段
14 記憶手段
15 電解洗浄制御手段
16 補正手段
17 電源
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌装置に関するものであり、特に、便器の洗浄水に殺菌性金属イオンを溶出させて便器を殺菌する殺菌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、便器内を殺菌するために、金属イオンを洗浄水中に溶出させる殺菌装置が用いられるようになってきた。
【0003】
この殺菌装置は、図11に示すように、洗浄水供給流路100の中途部に、少なくとも一方を銀などの殺菌性を有する金属(以下、「殺菌性金属」という。)から構成した1対の電極101、102を有する電解槽103を有し、この電解槽103内の電極101、102間に電流を流すことにより、洗浄水中に殺菌性金属イオンを溶出させ、この殺菌性金属イオンによって便器内を殺菌するものである。
【0004】
電極101、102の極性(すなわち陽極と陰極)は、制御装置が定期的に反転させており、カソード側に炭酸カルシウム等のスケールが付着するのを防いでいる。
【0005】
また、金属イオンを溶出する度に電極101、102は消耗していくが、電極101、102が陽極である時間と陰極である時間とを均等にしておくことで、一対の電極101、102を均等に消耗させることができる。今回は簡易的に説明するため、電極101を陽極、電極102を陰極として説明する。
【0006】
このような殺菌装置では、洗浄水の中に溶出させる殺菌性金属イオンの溶出量が少なすぎる場合には十分な殺菌効果を奏することができず、溶出量が多すぎる場合にはこの殺菌性金属イオンが洗浄水中の塩素イオンなどと反応して便器の黒ずみの原因となるおそれがあった。
【0007】
そのため、通常は、上記電極101、102間に予め設定した一定の電流を流すことによって、最適な量の殺菌性イオンを洗浄水中に溶出させるようにしていた。
【0008】
しかし、便器内を洗浄する洗浄水は、上水や中水などからの給水を用いていることから、その地域、季節、時間、給水形態などにより水質が一定ではない。
【0009】
殺菌性金属イオンの溶出量は、水質(洗浄水中の塩素イオン濃度)によって異なるため、このように水質が一定でない場合には、最適な量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させることができない。
【0010】
そこで、本出願人は、殺菌用の1対の電極101、102を利用し、この電極101、102間に一定量の水質検査用電流を流したとき電極101、102間に生じる電圧を測定することなどによって、洗浄水の水質を測定すると共に、その測定結果に基づいて、殺菌性金属イオンを溶出するために電極101、102間に流す電流量を調整する殺菌装置を提案した(たとえば、特許文献1参照。)。
【0011】
すなわち、この殺菌装置では、固定値である電極101、102の面積S1と電極101、102間の距離L1と、電極101、102間に予め設定した一定量の電流を流したときに電極101、102間に生じる電圧とに基づいて、電極101、102間に存在する洗浄水の抵抗値を算出し、この抵抗値から洗浄水の水質を求め、その水質に応じて殺菌性金属イオンを溶出するために電極101、102間に流す電流量を調整するようにしていた。
【特許文献1】特開2000−204633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、上記従来の殺菌装置では、殺菌性金属イオン溶出用の電極101、102を水質測定用の電極101、102として用いていたため、殺菌性金属イオンを多数回溶出させるにつれて殺菌性金属で構成した陽極側の電極101が図12に示すように次第に減っていき、それに伴って電極間の距離がL1(図11参照。)からL1’になり次第に大きくなっていく。
【0013】
このように電極101が消耗して減ってしまった場合には、この殺菌装置により殺菌性金属イオンを溶出させるときの洗浄水の水質を判定する際に、電極101、102間の実際の距離はL1’であるにもかかわらず、電極101、102間の距離をL1として洗浄水の抵抗率を算出してしまい、その結果、洗浄水の抵抗率を実際の抵抗率よりも高いものとして水質を検出する場合があり、その検出結果に基づいて殺菌性金属イオンの溶出を行うと、適切な量よりも多い量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させるおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、請求項1に係る本発明では、給水路中途に設けられ、少なくとも一方が殺菌性金属である1対の電極を有する電解槽と、電極間に電流を流すことにより給水路に流れる洗浄水に対して殺菌性金属イオンを溶出すると共に、電極間に洗浄水の水質検出用の電流を流したときの電極間の電圧を検出することにより洗浄水の水質検出を行う制御部とを備えた殺菌装置において、制御部は、殺菌性金属イオンの溶出状況に応じた電極間の距離に対する補正値を用いて、水質検出を行い、水質検出結果に基づいて殺菌性金属イオンの溶出制御を行うこととした。
【0015】
また、請求項2に係る本発明では、請求項1に記載の殺菌装置において、補正値は、水質検出用の電流を流したときに検出する電極間の電圧に応じた補正値であることを特徴とする。
【0016】
また、請求項3に係る本発明では、請求項1に記載の殺菌装置において、補正値は、水質検出用の電流に対する補正値であることを特徴とする。
【0017】
また、請求項4に係る本発明では、請求項1〜3のいずれか1項に記載の殺菌装置において、殺菌性金属イオンの溶出状況に関する殺菌性金属イオン溶出情報を記憶する記憶手段を備え、制御部は、記憶手段に記憶した情報に基づいて、殺菌性金属イオンの溶出状況に応じた補正値を決定し、洗浄水の水質検出を行うことを特徴とする。
【0018】
また、請求項5に係る本発明では、請求項4に記載の殺菌装置において、殺菌性金属イオン溶出情報は、殺菌性金属イオンを溶出した回数を積算した情報であることを特徴とする。
【0019】
また、請求項6に係る本発明では、請求項4に記載の殺菌装置において、殺菌性金属イオン溶出情報は、殺菌性金属イオンを溶出した時間を積算した情報であることを特徴とする。
【0020】
また、請求項7に係る本発明では、請求項4に記載の殺菌装置において、殺菌性金属イオン溶出情報は、殺菌性金属イオンの積算溶出量の情報であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、以下に記載するような効果を奏する。
【0022】
請求項1に係る本発明では、給水路中途に設けられ、少なくとも一方が殺菌性金属である1対の電極を有する電解槽と、電極間に電流を流すことにより給水路に流れる洗浄水に対して殺菌性金属イオンを溶出すると共に、電極間に洗浄水の水質検出用の電流を流したときの電極間の電圧を検出することにより洗浄水の水質検出を行う制御部とを備えた殺菌装置において、制御部は、殺菌性金属イオンの溶出状況に応じた電極間の距離に対する補正値を用いて、水質検出を行い、水質検出結果に基づいて殺菌性金属イオンの溶出制御を行うこととしたため、電極が消耗した場合であっても、殺菌性金属イオンを溶出させるときの洗浄水の水質を正確に検出することができ、その検出結果を用いて適切な量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させることができる殺菌装置を提供することができる。
【0023】
また、請求項2に係る本発明では、請求項1に記載の殺菌装置において、補正値は、水質検出用の電流を流したときに検出する電極間の電圧に応じた補正値であることを特徴とするため、洗浄水の水質に応じて適切な量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させることができる。
【0024】
また、請求項3に係る本発明では、請求項1に記載の殺菌装置において、補正値は、水質検出用の電流に対する補正値であることを特徴とするため、電極間に水質検出用の電流を流したときに検出した電圧を補正することなく、洗浄水の水質に対して適切な量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させることができる。
【0025】
また、請求項4に係る本発明では、請求項1〜3のいずれか1項に記載の殺菌装置において、殺菌性金属イオンの溶出状況に関する殺菌性金属イオン溶出情報を記憶する記憶手段を備え、制御部は、記憶手段に記憶した情報に基づいて、殺菌性金属イオンの溶出状況に応じた補正値を決定し、洗浄水の水質検出を行うことを特徴とするため、消耗による電極の減りに関係無く適切な量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させることができる。
【0026】
また、請求項5に係る本発明では、請求項4に記載の殺菌装置において、殺菌性金属イオン溶出情報は、殺菌性金属イオンを溶出した回数を積算した情報であることを特徴とするため、殺菌性金属イオンを溶出した回数の増加に応じた補正値を決定することができるため、適切な量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させることができる。
【0027】
また、請求項6に係る本発明では、請求項4に記載の殺菌装置において、殺菌性金属イオン溶出情報は、殺菌性金属イオンを溶出した時間を積算した情報であることを特徴とするため、殺菌性金属イオンの一回の溶出時間が一定でない場合であっても、消耗による電極の減りに応じた適切な量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させることができる。
【0028】
また、請求項7に係る本発明では、請求項4に記載の殺菌装置において、殺菌性金属イオン溶出情報は、殺菌性金属イオンの積算溶出量の情報であることを特徴とするため、洗浄水の供給流量に応じた量の殺菌性金属イオンを溶出させる制御を行う場合であっても、電極の消耗による電極の減りに応じた適切な量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
[第1実施形態]
(殺菌装置の説明)
以下、本発明に係る殺菌装置の一実施形態について図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明では、男性用小便器に、本発明に係る殺菌装置を適用した場合を例に挙げて説明を行うが、本発明は、これに限定されるものではなく、各種便器、洗面台などに適用することができる。
【0030】
図1に示すように、殺菌装置1は、便器2に便器洗浄用の洗浄水を供給する給水路3の中途部に設けられ、少なくとも一方が殺菌性を有する金属により構成した一対の電極4、5を有する電解槽6と、この電解槽6よりも給水路3の上流側に設けられ、便器2への洗浄水の供給及び供給停止を行う電磁弁7と、電解槽6と電磁弁7の動作を制御する制御器8とを備えている。なお、電磁弁7は電解槽6よりも給水路3の下流側に設けてもよい。
【0031】
そして、この殺菌装置1は、制御器8の制御に従って電極4、5間に電流を流すことにより、電解槽6内の洗浄水に殺菌性を有する金属イオン(以下、「殺菌性金属イオン」という。)を溶出させると共に、電磁弁7を開放することによって殺菌性金属イオンを含んだ洗浄水を便器2に流下させて、便器2内を殺菌洗浄する装置である。
【0032】
また、殺菌装置1の制御器8は、電磁弁7を開放及び閉塞させる電磁弁駆動部9と、この電磁弁駆動部9を制御することにより洗浄水を供給及び供給停止する便器洗浄制御部10と、電極4、5に電流を供給すると共に電磁弁駆動部9を制御する制御部11と、電極4、5に供給する電流の電圧を測定する電圧測定部12とを備えており、電源17から供給される電力により動作するものである。
【0033】
特に、制御器8が備える制御部11は、電圧測定部12の測定結果に対応した量の電流を電極4、5に供給する電流供給手段13と、殺菌性金属イオンの溶出状況に関する殺菌性金属イオン溶出情報を記憶する記憶手段14と、電流供給手段13及び電磁弁駆動部9を制御すると共に記憶手段14に殺菌性金属イオン溶出情報を記憶させる電解洗浄制御手段15と、殺菌性金属イオン溶出情報に基づいて電圧測定部12により測定した電圧を補正する補正値を算出し、その補正値を用いて補正した補正電圧を電流供給手段13に入力する補正手段16とを備えている。
【0034】
(補正の原理)
ここで、本実施形態に係る殺菌装置1が電極4、5へ電流を供給する際に行う、供給電流量補正の原理について説明する。
【0035】
この殺菌装置1では、電解槽6内の洗浄水に電流を流したときの電極4、5間に存在する洗浄水の抵抗率の違いによって、洗浄水の水質の違いを検出するようにしている。
【0036】
この殺菌装置1の電解槽6は、図2に示すように、内部に一対の電極4、5を備えている。そして、これら一対の各電極4、5の面積をS(cm2)、電極4、5間の距離をL(cm)、水の抵抗率をρ(Ω・m)とすると、電極4、5間の水の抵抗値R(Ω)は、R=ρ×L/S(式1)で与えられる。
【0037】
また、抵抗率に着目すれば、ρ=R×S/L(式2)で表される。
【0038】
つまり、洗浄水の水質(抵抗率ρ)は、電極4、5間に電圧を印加することにより測定した電極4、5間に存在する洗浄水の抵抗値Rと、予め決定されている各電極4、5の面積をSと、同じく予め決定されている電極4、5間の距離Lとから算出することができる。
【0039】
しかし、殺菌性金属で構成された4、5間に電圧を印加させることにより、洗浄水中に殺菌性金属イオン溶出させる方式の場合、長期間の使用により電極4、5が消耗するにつれて陽極側の電極4(以下、「陽極電極4」という。)が減り、電極4、5間の距離は大きくなる。
【0040】
そのため、電流供給手段13により電極4、5間に水質検出用の一定の電流を流して、電極4、5間に存在している洗浄水の抵抗率ρを検出した場合、水質が一定(抵抗率ρが一定)でも、電極4、5間の距離は大きくなっているので、電極4、5間に存在している洗浄水の抵抗値Rは増大する。
【0041】
その結果、水質検出用の一定の電流を流して、水質(抵抗率ρ)を検出し、その検出結果に基づいて殺菌性金属イオンを溶出させる際に、(式2)を用いて水質(抵抗率ρ)を算出すると、実際の水質(抵抗率ρ)よりも高い抵抗率ρが算出されてしまう。
【0042】
具体的には、図3に示すように、同じ水質(抵抗率ρ)の洗浄水に対して、電流供給手段13により電極4、5間に複数回電流を流して殺菌性金属イオンを溶出させた場合、実際の洗浄水の抵抗値Rは、殺菌性金属イオンを溶出した回数Xとは無関係に一定の値をとる(図3中点線参照。)はずだが、電極4が消耗すると電極4、5間の間隔が広くなり、電極4、5間に存在する洗浄水の量が多くなるため、実測値としての抵抗値Rは、殺菌性金属イオンを溶出した回数Xが増加するにつれて次第に増大していく(図3中実線参照。)。
【0043】
そこで、本実施形態の殺菌装置1では、図4(a)に示すように、電極が消耗するにつれて高くなる電極4、5間の電圧を、図4(b)に示すように補正することによって、的確に洗浄水の水質を検出し、その水質及び殺菌性金属イオンの溶出回数に応じて最適な量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させるようにしている。
【0044】
つまり、洗浄水の抵抗率ρは距離に比例するので、電極間の水の抵抗値Rから距離を補正することにより正しい抵抗率ρを換算できる。実施例では、電極間の水の抵抗値Rを基準に算出し、その抵抗値Rに距離の比に関する後述する補正値αを乗ずることによって補正を行っている。
【0045】
ここで、図4(a)は、水質検出時における補正手段16に入力される電圧測定部12の測定結果(水質測定時の電極間電圧)と殺菌性金属イオンを溶出した回数との関係を示す説明図であり、図4(b)は、補正手段16により算出した補正電圧(水質測定時の電極間補正電圧)と殺菌性金属イオンを溶出した回数との関係を示す説明図である。
【0046】
なお、以下の説明では、洗浄水の水質を検出する際の便器2への洗浄水供給を電解前洗浄、実際に便器2を殺菌洗浄するために殺菌性金属イオンを溶出させる際の便器2への洗浄水供給を電解本洗浄、これら電解前洗浄と電解本洗浄の一連の流れを電解洗浄と呼ぶこととする。
【0047】
また、本実施形態の殺菌装置1では、水質検出の測定を、通常、1日に1回、電解洗浄時に行い、電解前洗浄時に水質検査し、その結果に基づいて補正を行い、その後の電解本洗浄に殺菌性金属イオンの溶出量を決定して電解本洗浄を行うようにしている。なお、1日に1回予め設定した時間に水質検査を行なって電解洗浄してもよいが、この電解洗浄を行なうタイミング、頻度は適宜、自由に決めてもよい。
【0048】
また、本実施形態の殺菌装置1は、通常の用便後に行う便器洗浄では殺菌性金属イオンの溶出を行なわないようにしている。
【0049】
また、この殺菌装置1では、洗浄水の抵抗値Rに対応した量の殺菌性金属イオンを溶出させることによって、一定の殺菌性金属イオン濃度の洗浄水を作り出すようにしているので、1回の電解(殺菌性金属イオンの溶出)による陽極電極4の溶出量は決まっている。
【0050】
そのため、1回の電解における陽極電極4の溶出量をa(g)、1回の電解における電極4、5間距離の増加幅をΔL(cm)、溶出する陽極電極4の単位体積あたりの質量をc(g/cm3)とすると、陽極電極4の溶出量aは、a=c×S×ΔLで与えられる。なお、Sは、各電極4、5の面積である。
【0051】
つまり、殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させる回数(以下、「電解回数」という。)が多くなるにつれて電極4、5間距離は大きくなるが、1回の電解による陽極電極4溶出量は、このように計算により求めることができる。
【0052】
そして、この殺菌装置1の補正手段16では、電圧測定部12が測定した電極4、5間の電圧に補正値αを乗算することにより補正電圧を求めるようにしており、電解回数X回目での補正値αは、電解回数をX、殺菌装置1製造時の電極4、5間の間隔をL0とすると、α=L0/(L0+ΔL×X)で与えられる。
【0053】
例えば、電解条件が、電極4、5の面積:12mm×10mm(厚さ0.8mm)、電極4、5の材質:銀(99.9%以上)、電極4、5間隔:3.0mm、銀濃度:4ppb、洗浄水流量:15L/nin、電解時間:16秒、比重10.49g/cm3である場合に、1回の電解による銀の溶出量a(g)は、
a=1000(g)×4/109=16×10-6(g)となる。
【0054】
この、a=16×10-6という値と各電解条件とを、上記した式a=c×S×ΔLに代入すると、16×10-6(g)=10.49(g/cm3)×1.2(cm2)×ΔLとなり、
1回の電解による電極4、5間の距離ΔLは、
ΔL=1.27×10-6(cm)となる。
【0055】
次に、このΔL=1.27×10-6という値を各電解条件とを、上記した式α=L0/(L0+ΔL×X)に代入すると、電解回数X回目での補正値αは、
α=0.3/(0.3+1.27×10-6×X)となる。
【0056】
なお、この計算では電解本洗浄による陽極電極4の溶出量のみを考慮して補正値を算出しているが、実際には電解前洗浄時にも水質検出用の通電を行っているため、若干の陽極電極4の溶出は起きていると考えられる。
【0057】
そこで、標準的な水質検出の通電パターンとして電解前洗浄時に1mAの通電を2秒、電解本洗浄時に5mAの通電を16秒行った場合を考えると、ファラデーの法則より、陽極電極4の溶出量は通電電流を通電時間で積分した値に比例するため、この場合における電解前洗浄時の陽極電極4の溶出量は、電解本洗浄時の溶出量を1とすると、(1×2)÷(5×16)=0.025となり、電解本洗浄時の溶出量の2.5%であることがわかる。
【0058】
このように電解前洗浄時の陽極電極4の溶出量は微量であるため、今回の補正値の計算では無視しているが、実使用においては前洗浄による陽極電極4の溶出量を考慮して補正を行っても良い。
【0059】
上記のように算出すると、電解回数X毎の補正値αは、図5に示すグラフのようになる。
【0060】
(制御部による制御の説明)
殺菌装置1による制御について図6〜図9を参照して説明する。図6は電解洗浄を行う際に制御部11が実行する制御を示すフローチャート、図7は電解前洗浄を行う際に制御部11が実行する制御を示すフローチャート、図8は補正手段16が行う電極間電圧補正を示すフローチャート、図9は電解洗浄を行う際の電磁弁7開放による洗浄水の供給及び電流供給手段13による水質検出用電流及び電解電流の供給をしめすタイミングチャートである。
【0061】
なお、本実施形態の殺菌装置1は、通常、電解洗浄を行なう前に、予備洗浄として電解しない洗浄水を十分便器に流して便器2をきれいにした後、電解洗浄を行うことによって電解洗浄の効果を高めるようにしているが、以下の説明では、予備洗浄が終了した後に、制御部11が実行する制御について説明する。
【0062】
図6及び図9に示すように、制御部11は、予備洗浄を行った後に、まず電解前洗浄を行い(ステップST1)、続いて電解本洗浄を行う(ステップST2)。
【0063】
そして、電解前洗浄を行う際に制御部11では、図7及び図8に示すように、電解洗浄制御手段15の制御に従って電流供給手段13が電極4、5に対し水質検出用の定電流(例えば、1mAの電流)を通電する(ステップST3)。
【0064】
このとき同時に電磁弁駆動部9は、電解洗浄制御手段15の制御に従って電磁弁7を開放し、電解槽6へ洗浄水を供給する。
【0065】
電極4、5に水質検出用の電流が通電されると、電圧測定部12が電極4、5間の電圧を測定し(ステップST4)、その測定結果を補正手段16へ入力する。
【0066】
このとき同時に、補正手段16には記憶手段14から殺菌性金属イオン溶出情報が入力される。
【0067】
ここで入力される殺菌性金属イオン溶出情報は、これまでに電極4、5に電流を通電した回数を積算した電解回数X’を示す情報である。
【0068】
その後、補正手段16は、電圧測定部12から入力される電圧値と、記憶手段14から入力される殺菌性金属イオン溶出情報とに基づいて、電極4、5間の電圧を補正した補正電圧を生成する電極間電圧補正を行い(ステップST5)、生成した補正電圧を電流供給手段13に入力する(ステップST5)。
【0069】
電極間電圧補正を行う際に補正手段16は、図8に示すように、先ず記憶手段14から入力される前回までの電解回数X’に、今回水質検出用の電流を通電した分の回数1を加算した電解回数Xを算出する(ステップST8)。
【0070】
次に補正手段16は、ステップST8で算出した電解回数Xを、前述の補正値αを求める式[α=L0/(L0+ΔL×X)]に代入することにより補正値αを計算する(ステップST9)。
【0071】
次に補正手段16は、電圧測定部12から入力される電極4、5間の電圧に、ステップST9で計算した補正値αを乗算することによって補正電圧を算出し(ステップST10)、算出した補正電圧を電流供給手段13に入力して処理をステップST6に戻す。
【0072】
この補正手段16が補正電圧を生成している間、図8に示すように、電流供給手段13は電極4、5へ電流を供給しないようにしている。
【0073】
電流供給手段13は、補正手段16から補正電圧が入力されると、電極4、5間の電圧が補正電圧の値であるときの洗浄水の電気伝導度を計算し(ステップST6)、算出した電気伝導度に基づいて電極4、5間に存在している洗浄水の抵抗値Rを求め、その抵抗値Rにおいて洗浄水中に適切な量の殺菌性金属イオンを溶出させるために電極4、5に通電する電解電流を計算する(ステップST7)。
【0074】
そして、電流供給手段13は、図8に示すように、ステップST7で計算した電解電流を電極4、5に供給する。
【0075】
このように、この殺菌装置1では、電解回数に応じた補正値αを用いて電圧測定部12が測定した電圧に基づいて決定した電解電流を、電極4、5に供給するようにしているため、電解回数が増加するにつれて広がる電極4、5間の間隔に左右されることなく、洗浄水の水質に応じた適切な量の殺菌性金属イオンを溶出させることができる。
【0076】
[第2実施形態]
上記第1実施形態に記載の殺菌装置1は、電極4、5に水質検出用の電流を流したときに検出する電極4、5間の電圧と補正値αとを用いて生成した補正電圧に応じて、電流供給手段13が供給する電解電流を調整するように構成したが、第2実施形態の殺菌装置1aは、殺菌性金属イオン溶出情報に基づいて決定した補正値αを用いて水質検出用の電流を調整し、この調整した水質検出用の電流を電極4、5に供給したときに電圧測定部12が検出した電圧に対応した電解電流を電極4、5に供給するようしており、図10に示すように構成している。なお、図10において、第1実施形態の殺菌装置1と同一の構成要件については、同一の符号を付することによりその説明を省略する。
【0077】
図10に示すように、第2実施形態に係る殺菌装置1aの基本的構造は、図1に示す第1実施形態に係る殺菌装置1と同様であるが、制御部11a内の構成と制御だけが異なる。
【0078】
具体的には、制御部11aにおいて、電流供給手段13aには電圧測定部12の測定結果が直接入力されるように構成しており、補正手段16aには記憶手段14からの殺菌性金属イオン溶出情報だけが入力されるように構成している。
【0079】
そして、この殺菌装置1aの制御部11aは、電解洗浄を行う際に、第1実施形態に記載の制御部11と同様に、予備洗浄を行った後、図6に示すフローチャートに従って電解前洗浄(ステップST1)と電解本洗浄(ステップST2)とを行う。
【0080】
ただし、この制御部11aの電流供給手段13aは、電解前洗浄を行う際に、補正手段16aが算出した補正値αに基づいて補正した水質検出用の電流を生成して電極4、5に通電するようにしている。
【0081】
すなわち、電解前洗浄を行う際に電流供給手段13aは、この殺菌装置1aが製造されたときに設定された一定の水質検査用の電流値に、補正手段16aから入力された補正値αを乗算することにより、電極4、5の消耗による電極4、5間の間隔を考慮した水質検査用の補正電流値を算出し、この補正電流値分の電流を水質検出用電流として電極4、5に通電する。
【0082】
そして、電圧測定部12は、このとき電極4、5間に発生した電圧を検出し、その検出結果を電流供給手段13aに入力する。
【0083】
その後、この電流供給手段13aは、電解電流を電極4、5に通電する際に、電圧測定部12から入力された電極4、5間の電圧に対応した量の電解電流を電極4、5に通電する。
【0084】
このように、第2実施形態の殺菌装置1aでは、記憶手段14に記憶させている殺菌性金属イオン溶出情報に基づいて補正手段16aが生成した補正値αを用いて、電流供給手段13aが電極4、5に供給する水質検出用の電流を補正するようにしたため、電圧測定部12が測定した電圧に補正行う制御を省くことができ、しかも、電解回数が増加するにつれて広がる電極4、5間の間隔に左右されることなく、洗浄水の水質に応じた適切な量の殺菌性金属イオンを溶出させることができる。
【0085】
また、上記第1及び第2実施形態に記載の殺菌装置1、1aにおいて、記憶手段14に記憶させると共に記憶手段14から補正手段16、16aに入力する殺菌性金属イオン溶出情報は、電極4、5に電流を通電した回数を積算した電解回数X’を示す情報としているが、本発明はこれに限定するものではなく、この殺菌装置が製造されてからの電極の消耗状況、すなわち、殺菌性金属イオンの溶出状況を示す情報であればよく、具体的には、殺菌性金属イオンを溶出した時間を積算した情報や、殺菌性金属イオンの積算溶出量の情報を用いることができる。
【0086】
殺菌性金属イオン溶出情報を、殺菌性金属イオンを溶出した時間を積算した情報とすることによって、1回の電解洗浄に要する時間が一定でない場合であっても、電解洗浄をする際に、洗浄水の水質と、電極の消耗とに応じた適切な量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させることができる。
【0087】
このような殺菌性金属イオン溶出情報を用いた際には、図3〜図5に示すグラフの横軸が殺菌性金属イオンを溶出した積算時間となる。
【0088】
これにより、例えば、1日数回、通常の電解洗浄よりも長い時間電解洗浄を行って、便器をより清潔に保つように殺菌装置を設定しても、電解洗浄を行うときに、洗浄水の水質と、電極の消耗とに応じた適切な量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させることができる。
【0089】
また、殺菌性金属イオン溶出情報を、殺菌性金属イオンの積算溶出量の情報とすることによって、便器へ供給する洗浄水の単位時間における流量が異なる場合であっても、洗浄水の水質と、電極の消耗とに応じた適切な量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させることができる。
【0090】
このような殺菌性金属イオン溶出情報を用いた際には、図3〜図5に示すグラフの横軸が溶出した殺菌性金属イオンの積算量となる。
【0091】
これにより、電磁弁の設定を自由に変更した場合、若しくは、地域や設置場所などにより供給水の水勢が異なる場合であっても、洗浄水の水質と、電極の消耗とに応じた適切な量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させることができる。
【0092】
このように、本発明に係る殺菌装置は、電解洗浄を行う際に、殺菌性金属イオンの溶出状況に応じた電極間の距離に対する補正値を用いて、洗浄水の水質検出を行い、この水質検出結果に基づいて殺菌性金属イオンの溶出制御を行うため、消耗による電極の減りに関係なく、また、時間的な洗浄水の水質変化に左右されることなく、適切な量の殺菌性金属イオンを洗浄水中に溶出させることによって便器内を好適に殺菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】第1実施形態に係る殺菌装置を示す機能ブロック図である。
【図2】電解槽を示す説明図である。
【図3】水の抵抗値と殺菌性金属イオンを溶出した回数との関係を示す説明図である。
【図4】電極間の電圧と殺菌性金属イオンを溶出した回数との関係をしめす説明図である。
【図5】電解回数X毎の補正値αを示すグラフである。
【図6】電解洗浄を示すフローチャートである。
【図7】電解前洗浄を示すフローチャートである。
【図8】電極間電圧補正を示すフローチャートである。
【図9】給水と電流供給を示すタイミングチャートである。
【図10】第2実施形態に係る殺菌装置を示す機能ブロック図である。
【図11】従来の水質検出を示す説明図である。
【図12】従来の水質検出を示す説明図である。
【符号の説明】
【0094】
1 殺菌装置
2 便器
3 給水路
4、5 電極
6 電解槽
7 電磁弁
8 制御器
9 電磁弁駆動部
10 便器洗浄制御部
11 制御部
12 電圧測定部
13 電流供給手段
14 記憶手段
15 電解洗浄制御手段
16 補正手段
17 電源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水路中途に設けられ、少なくとも一方が殺菌性金属である1対の電極を有する電解槽と、
前記電極間に電流を流すことにより前記給水路に流れる洗浄水に対して殺菌性金属イオンを溶出すると共に、前記電極間に前記洗浄水の水質検出用の電流を流したときの前記電極間の電圧を検出することにより前記洗浄水の水質検出を行う制御部とを備えた殺菌装置において、
前記制御部は、前記殺菌性金属イオンの溶出状況に応じた前記電極間の距離に対する補正値を用いて、前記水質検出を行い、前記水質検出結果に基づいて前記殺菌性金属イオンの溶出制御を行うことを特徴とする殺菌装置。
【請求項2】
前記補正値は、前記水質検出用の電流を流したときに検出する前記電極間の電圧に応じた補正値であることを特徴とする請求項1に記載の殺菌装置。
【請求項3】
前記補正値は、前記水質検出用の電流に対する補正値であることを特徴とする請求項1に記載の殺菌装置。
【請求項4】
前記殺菌性金属イオンの溶出状況に関する殺菌性金属イオン溶出情報を記憶する記憶手段を備え、
前記制御部は、前記記憶手段に記憶した情報に基づいて、前記殺菌性金属イオンの溶出状況に応じた補正値を決定し、前記洗浄水の水質検出を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の殺菌装置。
【請求項5】
前記殺菌性金属イオン溶出情報は、前記殺菌性金属イオンを溶出した回数を積算した情報であることを特徴とする請求項4に記載の殺菌装置。
【請求項6】
前記殺菌性金属イオン溶出情報は、前記殺菌性金属イオンを溶出した時間を積算した情報であることを特徴とする請求項4に記載の殺菌装置。
【請求項7】
前記殺菌性金属イオン溶出情報は、前記殺菌性金属イオンの積算溶出量の情報であることを特徴とする請求項4に記載の殺菌装置。
【請求項1】
給水路中途に設けられ、少なくとも一方が殺菌性金属である1対の電極を有する電解槽と、
前記電極間に電流を流すことにより前記給水路に流れる洗浄水に対して殺菌性金属イオンを溶出すると共に、前記電極間に前記洗浄水の水質検出用の電流を流したときの前記電極間の電圧を検出することにより前記洗浄水の水質検出を行う制御部とを備えた殺菌装置において、
前記制御部は、前記殺菌性金属イオンの溶出状況に応じた前記電極間の距離に対する補正値を用いて、前記水質検出を行い、前記水質検出結果に基づいて前記殺菌性金属イオンの溶出制御を行うことを特徴とする殺菌装置。
【請求項2】
前記補正値は、前記水質検出用の電流を流したときに検出する前記電極間の電圧に応じた補正値であることを特徴とする請求項1に記載の殺菌装置。
【請求項3】
前記補正値は、前記水質検出用の電流に対する補正値であることを特徴とする請求項1に記載の殺菌装置。
【請求項4】
前記殺菌性金属イオンの溶出状況に関する殺菌性金属イオン溶出情報を記憶する記憶手段を備え、
前記制御部は、前記記憶手段に記憶した情報に基づいて、前記殺菌性金属イオンの溶出状況に応じた補正値を決定し、前記洗浄水の水質検出を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の殺菌装置。
【請求項5】
前記殺菌性金属イオン溶出情報は、前記殺菌性金属イオンを溶出した回数を積算した情報であることを特徴とする請求項4に記載の殺菌装置。
【請求項6】
前記殺菌性金属イオン溶出情報は、前記殺菌性金属イオンを溶出した時間を積算した情報であることを特徴とする請求項4に記載の殺菌装置。
【請求項7】
前記殺菌性金属イオン溶出情報は、前記殺菌性金属イオンの積算溶出量の情報であることを特徴とする請求項4に記載の殺菌装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−14853(P2007−14853A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−197387(P2005−197387)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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