水中撮影可能なカメラ
【目的】空気中だけでなく水中においても正確にオートフォーカスを作動させ、容易に水中写真が撮影できる水中撮影可能なカメラを提供する。
【構成】被写体からの反射光束がAF部2により受光され、このAF部2の出力に基づいて被写体距離がCPU1により算出される。また、カメラが水中に置かれていることが水中検知部4により光学的に判定され、上記カメラが水中にあるとき、周囲の水の濁り具合が透明度検知部3により評価される。そして、上記水中検知部4により上記カメラが水中にあると判定されたとき、上記CPU1の出力と上記透明度検知部3の出力とに基づいて、上記カメラのピント合せ部7の撮影レンズのピント合せ位置が決定される。
【構成】被写体からの反射光束がAF部2により受光され、このAF部2の出力に基づいて被写体距離がCPU1により算出される。また、カメラが水中に置かれていることが水中検知部4により光学的に判定され、上記カメラが水中にあるとき、周囲の水の濁り具合が透明度検知部3により評価される。そして、上記水中検知部4により上記カメラが水中にあると判定されたとき、上記CPU1の出力と上記透明度検知部3の出力とに基づいて、上記カメラのピント合せ部7の撮影レンズのピント合せ位置が決定される。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、水中及び空気中においてオートフォーカスによる撮影が可能な水中撮影可能なカメラに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、アウトドアレジャーの普及により、潜水を趣味とする人口が増加し、水中の魚や珊瑚などを撮影して楽しむ人々が増えている。しかし、多くの通常のカメラは生活防水までの機能しか有しておらず、仮に、水中に持ちこめるものでも、水の透明度の関係などからオートフォーカス(自動焦点調節機能;以下AFと記す)は不可能なカメラが大部分であった。
【0003】例えば、特開昭61−295533号公報によれば、カメラの撮影光学系の第1面を凹面にし、測距のための2つの窓の法線を一致させず、かつ交わらないように構成することによって、空気中では通常のAFカメラと全く同様に働き、水中では、固定焦点にて撮影が行われるとする手法が提案されている。
【0004】また、特開昭59−53819号公報によれば、焦点調節制御部材が所望被写体に対して自動的に、および所定距離にそれぞれ撮影レンズを合焦させるためのレンズ位置制御用の第1信号および第2信号のうちいずれかの信号に基づいて焦点調節がなされるよう構成され、カメラが水中にあるか空気中にあるかを自動的に検知する検知部材からの検知信号により上記いずれの焦点調節が行われるかが制御されるようにして、水中撮影時には上記第2信号に基づいてまた空気中撮影時には上記第1信号に基づいて焦点調節がなされるようにした手法が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記特開昭61−295533号公報に記載の手法では、比較的距離の離れたダイバーなどの写真はピントが合った状態で撮影できても、近距離に存在し泳ぐ小さな魚などの写真はピントがぼけた状態で撮影されてしまう。
【0006】また、上記特開昭59−53819号公報に記載の手法では、カメラが水中で使用されていることが検知できても、水中の透明度までを考慮したものではなく、透明度の低い、すなわち濁った水中でも透明度の高い水中でもカメラは同様の動きをするため、失敗写真となる場合が多かった。例えば、同じ水中においても透明度が高い水中では、図4(a)に示すように空気中と変わらぬ写真の撮影が可能である。しかし、海底の土ぼこりが舞い上がっていたり、プランクトンの多い海中などでは、水中に浮遊する上記土ぼこり及びプランクトンなどの粒子にストロボ光が反射してしまう。このため、図4(b)に示すように画面全体が白っぽく濁ってしまい、失敗写真となる場合が多かった。
【0007】また、例えオートフォーカスを作動させたとしても、空気中と同じ考え方では正確に測距できず、主要被写体はピントがぼけた状態で撮影されてしまう。そこで本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、空気中だけでなく水中においても正確にオートフォーカスを作動させ、容易に水中写真が撮影できる水中撮影可能なカメラを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1に記載の水中撮影可能なカメラは、被写体からの反射光束を受ける受光手段と、上記受光手段の結像位置近傍に配された光電変換手段と、上記光電変換手段の出力に基づいて被写体距離を算出する演算手段と、カメラが水中に置かれていることを光学的に判定する水中判定手段と、上記カメラが水中にあるとき、周囲の水の濁り具合を評価する透明度評価手段とを具備し、上記水中判定手段が上記カメラが水中にあると判定したとき、上記演算手段の出力と上記透明度評価手段の出力とに基づいて、上記カメラの撮影レンズのピント合せ位置を決定することを特徴とする。
【0009】また、請求項2に記載の水中撮影可能なカメラは、撮影レンズを駆動して焦点調節を行う焦点調節手段と、ストロボ装置を光源とし、目標物に向けてその光束を投光する投光手段と、上記投光手段によって投光される上記光束の上記目標物からの反射光束を受光し、上記目標物までの距離情報を出力する受光手段と、周囲の媒質が水であることを光学的に検知する水検知手段と、上記水検知手段から媒質が水である旨の出力が発せられたとき、媒質の透明度を評価する透明度評価手段と、上記水検知手段から媒質が水である旨の出力が発せられたとき、上記受光手段の出力と上記透明度評価手段の出力とに基づいて、上記撮影レンズの焦点調節位置を設定し上記焦点調節手段を制御する制御手段とを具備したことを特徴とする。
【0010】またさらに、請求項3に記載の水中撮影可能なカメラは、上記透明度評価手段が、ローコントラストのときに投光する上記投光手段を作動させたときの上記射出開口近傍における光の散乱状況を検知することにより周囲の水の濁り具合を評価することを特徴とする。
【0011】
【作用】本発明の水中撮影可能なカメラにおいては、被写体からの反射光束が受光手段により受光され、上記受光手段の結像位置近傍には光電変換手段が配置される。さらに、上記光電変換手段の出力に基づいて被写体距離が演算手段により算出され、またカメラが水中に置かれていることが水中判定手段により光学的に判定され、上記カメラが水中にあるとき、周囲の水の濁り具合が透明度評価手段により評価される。
【0012】そして、上記水中判定手段により上記カメラが水中にあると判定されたとき、上記演算手段の出力と上記透明度評価手段の出力とに基づいて、上記カメラの撮影レンズのピント合せ位置が決定される。
【0013】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。図1は、本発明に係る各実施例の水中撮影可能なカメラの概略的な構成を示す図である。
【0014】同図において、演算制御部(以下CPUと記す)1、例えばワンチップマイクロコンピュータなどには、被写体までの距離を測定する測距部(AF部)2と、水中の透明度を検知する透明度検知部3と、本カメラの使用環境が水中であるか、空気中であるかを検知する水中検知部4と、被写体が暗いときに光を補うストロボ部5と、撮影者に警告を発する警告部6と、上記測距部2の出力に基づいて、ピント合せ用レンズを移動しその位置を制御するピント合せ部7とが接続される。
【0015】CPU1は、上記各部の動作シーケンスを制御し、透明度検知部3、水中検知部4、及び測距部2などからの出力信号を演算して、ストロボ部5によるストロボの発光光量やピント合せ部7によるピント合せ用レンズの位置を制御する。
【0016】次に、本発明に係る第1実施例の水中撮影可能なカメラについて説明する。図2は、第1実施例の図1に示した測距部2の構成を示す図である。ここでは、特に透明度の低い水中において、測距が困難な理由を説明する。CPU1は、投光源11を投光回路12を介して発光させる。上記投光源11に赤外発光ダイオード(IRED)などを用いると、水の光吸収の波長依存性から全く反射信号光が検出できない。そのため、ここでは、比較的、吸収の影響を受けない可視光を投光できるキセノン放電管(以下Xe管と記す)を用いる。
【0017】投光源11の前方には、小さな点のような隙間を持つマスク13と投光レンズ14を配置して、被写体15に対して、鋭い光を集光し投光する。水が透明な場合や空気中では、投光された測距用光16は被写体15によって反射され、反射信号光17として受光レンズ18を介して、半導体光位置検出素子(以下PSDと記す)19に入射する。このPSD19は、光起電力効果と表面の抵抗層によるキャリア分割効果により、i1 ,i2 という2つの電流信号を出力する。
【0018】この電流信号i1 ,i2 には、以下の関係が成立する。
i1 /(i1 +i2 )=(1/2)+(x/t) …(1)
上記(1)式中のtは、PSD19の検出方向の長さを表し、xはPSD上の反射信号光17の光入射位置を表す。
【0019】一方、この光入射位置x、投光レンズ14と受光レンズ18の主点間距離S、受光レンズ18の焦点距離fj、及び被写体距離Lの間には、以下の関係が成立する。
【0020】
x=(S・fj)/L …(2)
上記(1)式と(2)式より、 1/L=x/(S・fj)
=t/(S・fj)×{i1 /(i1 +i2 )−1/2}…(3)
上記(3)式により、t、S、fjは固定であるため、電流信号i1 ,i2 の比の計算を行えば、被写体距離Lの逆数1/Lが求められる。
【0021】一般に、カメラのピント合せのためのピント合せ用レンズ(撮影レンズ)の繰り出し量は、この1/Lに比例する。これより、上記(3)式を以下のように変形し、測距部2の電流信号を測距出力ADとすると、 AD=i1 /(i1 +i2 )=C・1/L+1/2 …(4)
なお、C=S・fj/tと表すことができる。ここで、電流信号i1 ,i2 をi1 /(i1 +i2 )の形でアナログ的に演算する回路が、図2に示すプリアンプ20,21以降の回路である。PSD19から出力される電流信号i1 ,i2 は、それぞれプリアンプ20,21にて増幅され、各々の圧縮ダイオード22,23に流しこまれる。各々の圧縮ダイオード22,23の出力電圧は、バッファ回路24,25を介して、定電流源26と差動形に構成された2つのNPNトランジスタ27,28のそれぞれのベースに入力される。
【0022】定電流源26の定電流値をIφとし、NPNトランジスタ27,28のそれぞれのコレクタに流れる電流をIA ,IB とすると、 IA + IB = Iφ …(5)
i1 /i2 = IA /IB …(6)
の関係が成立し、 IA = {i1 /(i1 +i2 )}・Iφ …(7)
となる。
【0023】そこで、投光源11であるXe管の発光前に、スイッチ29をオンさせて積分コンデンサ30の両端の電位差を0としておく。次に、スイッチ29をオフしたあと、Xe管の発光と同時に所定時間の間、定電流値Iφを流すと、積分コンデンサ30には、上記(7)式に比例した電圧が発生する。
【0024】したがって、CPU1が上記電圧をアナログ/デジタル変換器(A/D変換器)31を介して、受け取り演算すれば、上記(4)式で示したような測距出力を得ることができる。ただし、被写体が遠距離になると、反射信号光17が小さくなるため、電流信号i1 ,i2 が小さくなりS/Nが劣化する。そこで、圧縮ダイオード22,23には、微小電流源32,33を用いて微小な電流を流しておく。
【0025】このような工夫により、図3(a)に示すような測距出力ADと1/Lの関係を得ることができる。図3(a)における破線は、上記(4)式の関係を示しているが、実際には上述した微小電流源32,33の働きにより、遠距離では1/2の値に収束するようになっており、S/Nの関係上、理論線に対してばらつきを生じ、幅のある出力特性となる。
【0026】また、図3(a)に示す特性は空気中の測距特性であり、図3(b)に示す特性は水中の測距特性である。図3(b)に示す測距特性は、水の屈折率の影響により、図3(a)に示すものより理論線の傾きは急になる。また、実線Aは透明度が高いとき、一点鎖線Bは透明度が低いときの測距特性である。一点鎖線Bに示すように、測距出力AD=1/2となる1/Lに近い距離から曲がるのは、水が光を吸収して反射光量が低下することもあるが、より大きな原因は水中の浮遊物からの信号光の散乱が大きいからである。それは、例えば、図2に示す受光レンズ18の近傍34のように被写体の存在しない所からも、反射信号光17がPSD19に均一に入力するからである。このようにPSD19が一様に照らされると、電流信号i1 ,i2 はほぼ同じような値となり、i1 /(i1+i2 )=1/2に近づく。
【0027】一方、被写体15からの反射信号光17は水による光の吸収によって低下するため、その測距特性は図3(b)に示す一点鎖線Bのように近距離、すなわち1/Lの大きい所から理論線に対し劣化する。したがって、測距部2の測距出力ADがある所定の出力AD∞を取ったとしても、図3(b)に示す実線Aの場合と一点鎖線Bの場合では、距離が異なることとなる。
【0028】本第1実施例では、水中の透明度を検知する水中検知部4を設けたので、CPU1は実線Aの場合か、一点鎖線Bの場合かを判断することが可能となる。したがって、図3(b)に示す実線Aの場合では至近からL1 の距離まで、一点鎖線Bの場合では至近からL2 の距離までオートフォーカスが可能であり、それ以遠はパンフォーカスとする。
【0029】一点鎖線Bの場合で、L1 の距離が測定できないとしても、濁った水の中では撮影者の目にも被写体が見えないことを考えると、大きな問題とはならない。また、このような状態では、太陽光が減衰しオートストロボのカメラでは、ストロボ撮影となる。しかし、上述のように不透明な水中でストロボ撮影を行うと、図4(b)に示すような画面全体が白く濁った失敗写真となりやすいため、むしろ警告を行って、撮影者に注意をうながす。これにより、フィルムの無駄使いをなくすようにする。
【0030】次に、第1実施例における水中検知部4、透明度検知部3について説明する。図5は、第1実施例の図1に示した水中検知部4、透明度検知部3の構成を示す図である。
【0031】同図において、CPU1は投光回路40を介して、発光ダイオード(以下LEDと記す)41を発光させる。プリズム42は、空気中では臨界角の条件により、LED41が発光する光を反射し、センサ43に入射させる。しかし、このプリズム42の反射面に水が接すると、上記臨界角の反射のための条件は満たされなくなり、センサ43への光入射は減少する。
【0032】したがって、CPU1は投光回路40を制御してLED41を発光させ、そのときのセンサ43の出力を第1受光回路44を用いて読み取る。そして、上記出力の大小によって、本カメラの使用環境が水中であるか空気中であるかを検知する。
【0033】また、水中ではLED41が発光する光は、プリズム42をつきぬけてセンサ45に入射するようになっており、プリズム42とセンサ45の間には水が侵入するスペースLPが設けられる。ここに透明度の低い水が入ると、センサ45の出力は低下し、一方、透明度の高い水が入ると、センサ45の出力は上昇する。以上の原理によって、CPU1は第2受光回路46の出力から水の透明度を検知する。
【0034】CPU1は、このような測距部2、水中検知部4、透明度検知部3からの情報に基づいて、ピント合せ距離を決定し、ピント合せ部7を制御する。ピント合せ部7において、CPU1はモータドライバ(MD)50を制御して、モータ51を駆動し、ピント合せ用レンズ52を上記ピント合せ距離に応じた位置まで移動する。このとき、このピント合せ用レンズ52の位置はフォトインタラプタ(以下PIと記す)53などのエンコーダによって、CPU1にフィードバックされる。これより、CPU1はPI53の出力をモニタしつつ、モータドライバ50を制御する。
【0035】また、CPU1は測光部8からの情報に基づいて、ストロボ部5のストロボ光の光量制御や、また上述したように不透明な水中でストロボ撮影を行うような場面では、警告部6を制御しLED6aを用いて撮影者に警告を行う。
【0036】次に、第1実施例の水中撮影可能なカメラの動作について説明する。図6は、第1実施例の水中撮影可能なカメラの動作としてのCPU1の処理を示すフローチャートである。
【0037】撮影者が撮影に入ると、CPU1は測距部2を用いて測距出力ADを求める(ステップS1)。続いて、露出条件を決定するために、測光部8を用いて被写体の輝度情報BVを求める(ステップS2)。さらに、CPU1はLED41を投光させ、センサ43,45に入射した光量に比例した出力P1 ,P2 を受光回路44,46を介して検出する(ステップS3)。
【0038】次に、CPU1は水中検知用のセンサ43に入射した光量に比例した出力P1が所定の光量による出力P10より、小さいか否かを判断する(ステップS4)。この所定の光量による出力P10は、プリズム42が臨界角の条件を満たさなくなったときのセンサ43の出力値より少し高めに設定しておく。したがって、上記ステップS4にて、出力P1 が所定の光量による出力P10より小さいときは、水中であるとしてステップS5へ移行する。一方、出力P1 が所定の光量による出力P10より小さくないときは、空気中であるとしてステップS22へ移行する。このステップS22以降の処理は、空気中の測距動作を示すものとなる。
【0039】次に、ステップS5では、CPU1は測距部2の測距出力ADが所定の出力AD∞より、小さいか否かを判断する。ここで、測距出力ADが所定の出力AD∞より小さくないとき、すなわち、測距出力ADが図3(b)に示した所定の出力AD∞以上であれば、上記(4)式を変形した水中での式をもとにピント合せ距離Lを求め(ステップS19)、そのピント合せ距離Lにピント合せを行う。上記測距出力ADが所定の出力AD∞より少し大きいぐらいのレベルでは、理論線、すなわち、図3(b)のL算出(2)の関係で示す線より離れているが、これについては被写界深度でカバーする設計とする。
【0040】続いて、CPU1は輝度情報BVが所定の輝度BV0より小さいか否かを判断する(ステップS20)。これより、輝度情報BVからストロボ発光が必要か、不要かの判断をしている。ここで、輝度情報BVが所定の輝度BV0より小さくないときは、ステップS9へ分岐しピント合せ距離Lにピント合せをして、ステップS10にて露光を行う。
【0041】一方、上記ステップS20にて、輝度情報BVが所定の輝度BV0より小さいときは、すなわち、ストロボの発光が必要なときには、ステップS21へ分岐し透明度検知用のセンサ45に入射した光量に比例した出力P2 が所定の光量による出力P20より大きいか否かによって、水の透明度の状態を判断する。ここで、出力P2 が所定の光量による出力P20より大きくないときは、透明度が低いとしてステップS15へ移行し、ピント合せ距離Lに従ってストロボの光量GNo を計算する。続いて、上記ステップS15にて求めた光量GNo を2倍して撮影時のストロボの光量GNo を決定する(ステップS16)。これは、透明度が低い水中では、光が被写体に届きにくくなることの対策である。そして、ピント合せ距離Lにピントを合せ(ステップS17)、上記ステップS16にて求めたGNo の光量でストロボを発光させて露光を行う(ステップS18)。
【0042】上記ステップS21にて、出力P2 が所定の光量による出力P20より大きいときは、透明度が高いとしてステップS11へ分岐する。このステップS11では、ピント合せ距離Lに従ってストロボの光量GNo を計算し、ステップS17へ移行する。そして、ステップS17では、ピント合せ距離Lにピントを合せ、上記ステップS11にて求めたGNo の光量でストロボを発光させて露光を行う(ステップS18)。
【0043】次に、ステップS5にて、測距出力ADが所定の出力AD∞より小さく、ステップS6へ分岐した場合について説明する。このステップS6以降は、図3(b)に示した測距部2の測距出力ADが理論からはずれてしまった場合、すなわち、被写体が比較的距離の遠い領域に存在する場合の処理を示すものである。
【0044】上記ステップS21と同様に、CPU1は透明度検知用のセンサ45に入射した光量に比例した出力P2 が所定の光量による出力P20より大きいか否かを判断する(ステップS6)。ここで、出力P2 が所定の光量による出力P20より大きくないときは、透明度が低いとしてステップS12に分岐し、一方、大きいときは、透明度が高いとしてステップS7へ分岐する。
【0045】ここで、透明度が高いときで、かつ測距出力ADが所定の出力AD∞より小さいときのピント合せ距離は、距離L1 以遠である。また透明度が低いときで、かつ測距出力ADが所定の出力AD∞より小さいときのピント合せ距離は、距離L2 以遠である。このときは、図3(b)に示したようにあらかじめ測定によって求めたデータより、例えば、ステップS7ではピント合せ距離Lを距離L1 より遠い4mとし、ステップS12では距離L2 より遠い2mとして、次のステップへ移行する。
【0046】次に、ステップS7,S12から、それぞれ次のステップS8,S13へ移行し、CPU1は輝度情報BVが所定の輝度BVo より小さいか否かを判断する。上記ステップS13にて、輝度情報BVが所定の輝度BVo より小さく、ストロボ発光が必要と判断されたときは、CPU1は警告部6を介してLED6aを点灯させ(ステップS14)、ステップS15へ移行する。これにより、写真が浮遊物などによって真っ白になり、失敗するおそれがあることを撮影者に警告する。ステップS15以降の処理は、上述した通りである。
【0047】なお、フィルムの無駄使いを防止するためには、ステップS14にて警告を行った後、シャッタボタンの押し込みを二度行ったときのみ、撮影が行われるような処理動作としても良い。また、自動的にストロボをオフするようにしても良い。
【0048】一方、上記ステップS13にて、輝度情報BVが所定の輝度BVo より小さくなく、ストロボ発光が不要と判断されたときは、十分、被写体が明るいとして、ストロボを用いずに撮影を行うため、ステップS9へ分岐する。その後の処理は、上述した通りである。
【0049】また、透明度が高いときは上記ステップS8にて、輝度情報BVが所定の輝度BV0より小さいとき、すなわち、被写体が暗いときでも警告は行わない。何故なら、透明度が高いときは、浮遊物などが存在せず、ストロボ光の散乱により、写真が失敗になることはないからである。また、光の減衰も大きくないとして、ステップS16のように光量を増加させるようなステップも設けない。したがって、上記ステップS8にて、輝度情報BVが所定の輝度BV0より小さいときは、ステップS11へ移行する。その後の処理は、上述した通りである。
【0050】一方、上記ステップS8にて、輝度情報BVが所定の輝度BV0より小さくないとき、すなわち、被写体が十分明るいときは、ステップS9へ移行する。その後の処理は、上述した通りである。
【0051】次に、上記ステップS4からステップS22へ分岐したときの、空気中での撮影の処理について説明する。CPU1は、測距部2の測距出力ADが所定の出力AD∞より小さいか否かを判断する(ステップS22)。ここで、測距出力ADが所定の出力AD∞より小さくないときは、上記(4)式より、 1/L=1/C(AD−1/2) …(8)
として、ピント合せ距離Lを求める(ステップS26)。これは、図3(a)に示した理論線、すなわち、L算出(1)の関係で示すものである。
【0052】一方、上記ステップS22にて、測距出力ADが所定の出力AD∞より小さいときは、上記(8)式を用いてLを求めると誤測距となるため、所定の距離7mをピント合せ距離として被写界深度でピンボケを防止する(ステップS23)。
【0053】次に、CPU1は輝度情報BVが所定の輝度BV1より小さいか否かを判断する(ステップS24)。これより、輝度情報BVからストロボ発光が必要か、不要かの判断をしている。このときの判定レベルである所定の輝度BV1は、上記ステップS8,S13,S20の水中における判定レベルである所定の輝度BV0より低くても良い。何故なら空気中の方がカメラのホールディングが安定し、手ぶれを起こしにくいからである。
【0054】ここで、輝度情報BVが所定の輝度BV1より小さいとき、すなわち、ストロボ発光が必要なときは、求めたピント合せ距離Lから、 GNo = FNo × L …(9)
を計算してストロボの光量GNo を求め(ステップS25)、ステップS17へ移行する。なお、FNo は撮影レンズのFナンバーである。その後の処理は、上述した通りである。
【0055】一方、上記ステップS24にて、輝度情報BVが所定の輝度BV1 より小さくないとき、すなわち、ストロボ発光が不要なときは、ステップS9へ分岐する。その後の処理は、上述した通りである。
【0056】以上説明したように、本第1実施例によればカメラの使用環境が水中であるか、空気中(陸上)であるかを検知し、水中の場合、水中の透明度に影響されることなく、適切なピントで正しい露光の写真撮影が全自動で可能となる。したがって、初心者でも空気中(陸上)における撮影と同様に、水中における写真撮影が楽しめる。
【0057】また、ストロボの調光制御を水中の透明度を考慮して行うので、透明度の低い水中でも露出がアンダーになることを防止することができる。さらに、本第1実施例では、ピント合せ距離を求める際に、測距部2の測距出力ADと透明度検知部3を用いて水中の透明度を検知することにより、ピント合せの信頼性を高めることが可能である。また、本第1実施例では、透明度検知用のセンサ45の出力である光量P2 の判定を、所定の光量P20より大きいか、小さいかの二者択一として単純化しているが、もちろんこの判定を細かくすればする程、ピント合せの信頼性を高くすることができる。
【0058】また、ピント合せ距離が測距による所定の出力AD∞より遠い所のみで水の透明度を加味したが、測距出力ADの判定をもっと細かくして、透明度を用いた形でこれを補正するようにすれば、さらに効果が高くなることは言うまでもない。
【0059】さらに、図6にフローチャートにて示した動作は、シャッタの押しこみ時にカメラが自動で行うため、撮影者は従来の空気中で使用している空気中(陸上)用の全自動カメラと同様の手順で、失敗のない水中写真を撮影することができる。
【0060】次に、上記第1実施例の変形例の水中検知部4、透明度検知部3について説明する。図7は、第1実施例の変形例の水中検知部4、透明度検知部3の構成を示す図である。
【0061】本変形例では、図5に示したようなプリズム42を必要とせず、プリズム42とセンサ45の間に水を導き入れる必要もない。投光源11のXe管による投光、PSD19による反射信号光17の受光など、測距部2の構成及び動作については、すでに図2に示した上記第1実施例において説明したものと同一である。しかし、この場合の測距用光16、または反射信号光17を用いて、本変形例では水中検知部4、透明度検知部3を構成して、それぞれの検知を行っている。
【0062】すなわち、被写体15からの反射信号光17aを受光レンズ61及び可視光カットフィルタ62を介して、センサ63にて受光する。このセンサ63によって検出される光量による出力は、第1受光回路64を介して、CPU1に入力される。水中では、特に赤外光の吸収がはげしいので、空気中に比べてセンサ63の出力は小さくなる傾向にある。
【0063】PSD19には、可視光カットフィルタが入っていないため、上記センサ63によって検出される光量とPSD19によって検出される光量との比によって、水中であるか空気中であるかを判定する。以上のように、本変形例の水中検知部4は構成され、水中検知動作を行う。
【0064】また、図7に示す投光レンズ14の前方の近傍16aの光を受光レンズ65を介して、センサ66にて受光する。このセンサ66よって検出される光量による出力は、第2受光回路67を介して、CPU1に入力される。
【0065】仮に、水中の透明度が低いときには、測距用光16が浮遊する微粒子に衝突して、図7に示す投光レンズ14の前方の近傍16aにおいて、はげしく光を散乱させる。したがって、低い透明度の水中では、センサ66に測距用光16の散乱光が入射して、センサ66よって検出される光量は大きくなる。一方、粒子のない空気中や、水中の透明度が高いときには、上記投光レンズ14の前方の近傍16aにおいて、はげしい光の散乱はなく、センサ66には測距用光16は入射しない。以上のように、本変形例の透明度検知部3は構成され、透明度検知動作を行う。
【0066】図8は、第1実施例の変形例の水中撮影可能なカメラの動作としてのCPU1の処理を示すフローチャートである。測距用光16の投光源11としてのXe管の発光と、それに同期してのPSD19への入射光量による出力Po と、センサ63,66にそれぞれ入射した光量による出力P1 ,P2 を検出する(ステップS101)。なお、これらは定常的に各センサに入射される、いわゆる背景光による光量分を背景光除去回路35により除去して、投光された測距用光16による出力のみを検出した値である。したがって、図7に示した変形例においては、専用の第1,第2受光回路64,67を設けているが、AF回路60に入力させてその背景光除去機能を利用しても良い。
【0067】次に、CPU1はセンサ63に入射した光量に比例する出力P1 とPSD19に入射した光量に比例する出力Po との比が、所定の比率γより小さいか否かを判断する(ステップS102)。すなわち、“P1 /Po ”が所定の比率γより小さければ、赤外光が吸収されやすい水中であるとしてステップS103へ移行する。一方、“P1 /Po ”が所定の比率γより小さくなければ、赤外光が吸収されにくい空気中であるとしてステップS116へ分岐する。
【0068】次に、ステップS103では、センサ66に入射した光量に比例した出力P2が所定レベル出力P20より大きいか否かを判断する。上述した動作により、水中の透明度が低いときには、測距用光16は投光レンズ14の前方の近傍16aにおいて、水中の浮遊粒子によって散乱するので、上記近傍16aからの光が入射するように配置されたセンサ66には多くの散乱光が入射する。なお、近傍16aは、投光レンズ14にかなり近い所に設けられているため、被写体が存在することはない。
【0069】すなわち、ステップS103にて、出力P2 が所定レベル出力P20より大きいときは、光を散乱させる粒子の存在より、水中の透明度が低いとしてステップS104へ移行する。一方、出力P2 が所定レベル出力P20より大きくないときは、光を散乱させる粒子は存在せず、水中の透明度は高いとしてステップS111へ分岐する。
【0070】上記ステップS104以降の処理は上記第1実施例の図6に示したステップS12以降の処理と同一であり、上記ステップS111以降の処理は図6に示したステップS7以降の処理と同一であり、さらに、上記ステップS116以降の処理は図6に示したステップS22以降の処理と同一であるため、ここに編入するものとしその説明は省略する。
【0071】以上説明したように、第1実施例の本変形例によれば、カメラの使用環境が水中であるか、空気中(陸上)であるかを検知し、水中の場合、水中の透明度に影響されることなく、適切なピントで正しい露光の写真撮影が全自動で可能となる。したがって、初心者でも空気中(陸上)における撮影と同様に、水中における写真撮影が楽しめる。
【0072】また、水中及び空気中においても撮影ができ、特に水中では水中の透明度にかかわらず、簡単にピントの合った美しい写真撮影が可能なカメラが単純な構成で提供できる。
【0073】また、ストロボの調光制御を水中の透明度を考慮して行うので、透明度の低い水中でも露出がアンダーになることを防止することができる。さらに、本変形例では、ピント合せ距離を求める際に、測距部2の測距出力ADと透明度検知部3を用いて水中の透明度を検知することにより、ピント合せの信頼性を高めることが可能である。また、本変形例では、透明度検知用のセンサ66による出力P2 の判定を、所定の出力P20より大きいか、小さいかの二者択一として単純化しているが、もちろんこの判定を細かくすればする程、ピント合せの信頼性を高くすることができる。
【0074】また、図8にフローチャートにて示した動作は、シャッタの押しこみ時にカメラが自動で行うため、撮影者は従来の空気中で使用している空気中(陸上)用の全自動カメラと同様の手順で、失敗のない水中写真を撮影することができる。
【0075】なお、第1実施例の本変形例では、すでに述べたように、測距用光16を利用しているため、図5に示した上記第1実施例のように、専用のLED41やプリズム42は必要なく、カメラ内に水を侵入させる必要もない。
【0076】次に、本発明に係る第2実施例の水中撮影可能なカメラについて説明する。本発明は、被写体に光を投光して測距を行うアクティブタイプのAFだけでなく、被写体の輝度情報を用いて測距を行う、いわゆるパッシブタイプのAFにも応用可能である。
【0077】図9は、このパッシブタイプのAFの原理を説明するための図である。被写体からの光を受光する受光レンズ70,71は、センサアレイ72,73上に被写体15の像を結像する。このセンサアレイ72,73は、いずれも受光素子のアレイからなり、上記受光レンズ70,71を介して入射した光の像の明暗に依存した出力を、各受光素子から出力する。
【0078】例えば、ここで被写体15の髪と顔の境目あたりに受光レンズ70,71を向けると、センサアレイ72,73上には図9に示すような明暗のステップ状の輝度差74a,74bが生じる。このとき、上記輝度差74a,74bに従った電気信号が上記センサアレイ72,73によって出力され、この明暗のステップ部分の位置差Xにより被写体距離Lは、 L = S・f/x …(10)
にて求められる。
【0079】すなわち、上述したように投光型のアクティブタイプのAFは投光した光の位置を基準として三角測距を行うのに対し、第2実施例におけるパッシブタイプのAFは、一方の受光系の像の明暗を基準に、三角測距を行うものである。
【0080】図10は、本発明に係る第2実施例の上記パッシブタイプのAFを適用した水中撮影可能なカメラの構成を示す図である。この水中撮影可能なカメラは、CPU1と、図9に示したように構成された測距部2と、ピント合せ部7と、水中検知部4と、投光部75と、書き込み可能な不揮発性メモリであるEEPROM76とから成る。CPU1は、ドライバ回路77に指示し投光素子78から光を投光させる。この投光された光は、投光レンズ79を介して前方に出射する。
【0081】すでに、図7にて説明したように、水中の透明度が低いとき、すなわち、濁りのある水中では、上記投光レンズ79の前方で濁りの原因となる浮遊物がこの投光レンズ79から出射される光を反射し散乱させる。このため、この散乱光が受光レンズ70,71を通って、センサアレイ72,73上の投光系から遠い側の端部に図10に示すように入射する。
【0082】一方、浮遊物の存在が少ないときには、上記散乱光のセンサアレイ72,73上への入射光量は少なくなり、また、浮遊物が存在しないときには、上記散乱光はセンサアレイ72,73上に入射しない。そこで、第2実施例では、このセンサアレイ72,73上への入射光量の大きさにより、水の濁りの度合いを評価する。
【0083】上記センサアレイ72は、投光系からの距離が遠いため、上記センサアレイ73に比べて、多くの近距離の散乱光を受光することはできない。したがって、センサアレイ72,73上の光の分布による受光素子からの出力を図示すると、図10(b)に示すようになる。出力P1 として示したのが上記散乱光によるピークであり、出力P2 ,P3 は上記投光素子78によって被写体15に投光され、この被写体15から反射された反射光によるピークである。
【0084】また、濁りがないとき、上記センサアレイ72,73が受光する光による出力には、図10(c)に示すように、図10(b)に示した出力P1 のようなピークは存在せず、出力P2 ,P3 のピークのみが存在する。
【0085】したがって、この2つのアレイセンサ72,73から出力される出力のピークの位置差Xから、上記(10)式より被写体距離が求められる。このような場合には、水中においても正しい測距は可能であるが、図10(b)に示すような場合には、散乱光による出力P1 に正規の信号光による出力P2,P3 が埋もれてしまい、正確な測距ができなくなってしまう。
【0086】図11(a)は、被写体距離Lの逆数1/Lと、図10(c)に示したセンサアレイ72,73から出力される出力のピークの位置差Xの関係を示す図である。
【0087】ここで、濁りがないときにはリニアな関係となるが、濁りの度合いが大きくなると、図10(b)に出力P1 として示した散乱光の影響を受けて、リニアな関係から外れてくる。
【0088】このリニアな関係からのずれである誤差は、遠距離になって被写体がぼけるほど大きくなる。よって、濁りの量と距離により、誤差Δxは予測可能である。また、濁った水中では、撮影者が被写体を視覚にて確認可能な距離(見える距離)Lvも短くなり、さらに、上記散乱光による出力P1 と濁りの関係を含めてグラフにすると図11(b)に示すようになる。この図11(b)に示すグラフより、散乱光のピーク光量による出力P1 から、このときの水中において被写体を視覚にて確認可能な限界の距離Lvを求めることができる。上記関係を考慮し、距離Lv以遠のものを撮影することはないと考えると、水中での撮影時の動作は図12に示すようになる。
【0089】図12は、第2実施例の水中撮影可能なカメラの動作としてのCPU1の処理を示すフローチャートである。CPU1は、投光素子78を発光させ、センサアレイ72,73に入射した光量に比例した出力からスポット部分の位置差Xを求め、センサアレイ73上の端部の受光素子の出力P1 を検出する(ステップS130)。
【0090】こうして得られた、出力P1 、位置差Xより、図11(a)に示した誤差Δxを求める(ステップS131)。上述したように被写体距離と出力P1 によって誤差Δxは求められるので、位置差Xと出力P1 から誤差Δxを求めることは可能である。具体的には、CPU1内のメモリに位置差Xと出力P1 から誤差Δxを求めるためのテーブルを持たせておき、これを参照するようにすれば良い。
【0091】このテーブルは、実際に濁りのある水中で測距を行って、出力P1 、位置差Xから誤差Δxを算出し、書きこみ可能なメモリであるEEPROM76にこの算出結果を記憶させることによって作成する。
【0092】続いて、上記テーブルから得られた誤差Δxと上記(10)式を用いて、被写体距離Lを求める(ステップS132)。次に、図11(b)に示した関係を用いて、撮影可能な最も遠い距離Lvを求める(ステップS133)。
【0093】次に、CPU1は補正して算出した被写体距離Lが距離Lvより大きいか否かを判断する(ステップS134)。ここで、被写体距離Lが距離Lvより大きくないときは、ステップS135へ移行する。ステップS135では、上記ステップS132にて求めた被写体距離Lをピント合せ距離Lpとする。
【0094】このようにして得られたピント合せ距離Lpに対し、ピント合せを行い(ステップS136)、露光を行う(ステップS137)。一方、上記ステップS134にて、被写体距離Lが距離Lvより大きいときは、ステップS138へ移行する。このステップS138では、上記距離Lv以遠の被写体は、撮影者にも見えないため、ピント合せ距離Lpを距離Lvに固定し、ステップS136へ移行する。このステップS136以降の処理は、上述した通りである。以上にて、本フローチャートによる処理を終了する。
【0095】なお、図9に示した第2実施例における投光素子78としては、水中でも減衰の小さい青色の光を出力するLEDを用いるのが好ましい。上記LEDとしては、現在、サファイア基板上に、発光層の材料としてInGaNを形成した500nmの青緑色の高出力LEDが製品化されている。
【0096】以上説明したように、本第2実施例では、図9に示したような投光素子78を一個追加するだけで、空気中でも水中でも正確な測距ができる水中撮影可能なカメラの提供が可能となる。
【0097】また、本第2実施例で用いたような、いわゆる、パッシブタイプのAFでは、被写体に輝度差がないとき及び被写体自体の輝度が小さく、暗いとき、すなわち、ローコントラスト(以下ローコンと記す)ときには、測距ができないが、このような場面では補助光を投光することによって測距を可能とする技術が公知である。本第2実施例では、この補助光と、投光素子78の水中用光源を兼用することにより、コストアップをなくすことができる。
【0098】次に、上記第2実施例の変形例の水中撮影可能なカメラについて説明する。本変形例もパッシブタイプのAFを用いたものである。図13は、第2実施例の変形例の水中撮影可能なカメラの構成を示す図である。
【0099】本変形例は、図10に示したような補助光としての投光部75を用いず、ストロボ内臓カメラのストロボ部5を光源として代用する。ただし、透明度検知用のセンサを兼用する形で、水中検知部4としてのセンサを付加している。
【0100】CPU1は、投光回路80を介してストロボ81を発光させる。水中検知部4は、受光レンズ82にて受光された光から、赤外光を受光するセンサ83と、可視光を受光するセンサ84と、さらにそれぞれのアンプ85とアンプ86とから成る。
【0101】そして、上述したように、水は光を吸収する性質を持っており、その分光特性により、赤外光の吸収率は大きく、可視光の吸収率は小さい。そしてその差は2桁近く違うことがわかる。そこで、空気中では均一な可視光成分と赤外光成分が、水中では均一ではなくなる。
【0102】したがって、これらのセンサ83,84に入射する光量が、極端に、均一でなく赤外光が少ないとき、上記水中検知部4は水中にあると判定することができる。そこで、CPU1はアンプ85,86から出力されるアナログ値をその値に相当するデジタル値に変換(アナログ/デジタル変換)し、それぞれのデジタル値を比較することにより、水中にあるか否かの水中検知を行う。
【0103】また、上記水中検知部4内のセンサ84は、ストロボ81の前方近傍の散乱光をモニタできるように設けられており、ストロボ81の発光時の散乱光も検出できるようになっている。したがって、ストロボ発光時のセンサ84の出力を増幅入力した値をPとすると、この値PによってCPU1は、濁り検知を行う。
【0104】また、測距部2内のデフォルト判定部90は、測距不能の場合、デフォルト値をCPU1へ出力する回路である。図14は、第2実施例の変形例の水中撮影可能なカメラの動作としてのCPU1の処理を示すフローチャートである。
【0105】撮影者が撮影に入ると、CPU1は測距部2を用いて被写体の輝度分布から、結像ポイントの位置差X1 を検出する(図9参照)(ステップS150)。次に、CPU1はローコンか否かを判断する(ステップS151)。ここで、ローコンであるとき、すなわち、被写体に輝度差がなかったり、照明が暗かったり、または水中の浮遊物の影響でコントラストが低いときは、ステップS152へ移行し、ストロボ部5を発光させ、これを補助光として、ピークの位置差X2とセンサ84が受光する光量に基づく出力Pを検出する。なお、上記ローコンか否かの判定は、デフォルト判定部90により行う。
【0106】次に、CPU1は水中か否かを判断する(ステップS153)。ここで、水中であるときは、ステップS154へ移行し、出力Pが所定の光量による出力PO1より大きいか否かを判断する。ここで、出力Pが所定の光量による出力PO1より大きいときは、さらにステップS155へ移行し、出力Pが所定の光量による出力PO2より大きいか否かを判断する。なお、ステップS155での出力PO2には、出力PO1より大きな値が用いられる。以上のステップS154,S155により、濁り具合の検知を行う。
【0107】上記ステップS154にて、出力Pが所定の光量による出力PO1より大きいくないときは、濁りがないとして、ステップS165へ移行し、ローコンか否かを判断する。ここで、ローコンであるときは、ステップS161へ移行し、撮影不可能である旨の警告を行い、本フローチャートによる処理を終了する。一方、ローコンでないときには、ステップS166へ移行し、上記ステップS152にて求めたX2 をX1 として、このX1 に基づいてピント合せ距離Lpを算出する(ステップS163)。
【0108】続いて、上記ピント合せ距離Lpにピント合せを行い(ステップS157)、露光を行う(ステップS158)。そして、本フローチャートによる処理を終了する。
【0109】一方、上記ステップS154にて、出力Pが所定の光量による出力PO1より大きく、かつ、上記ステップS155にて、出力Pが所定の光量による出力PO2より大きくないときは、水は濁っているが、それほど濁りはひどくないと考えることができ、ステップS167へ移行し、ローコンか否かを判断する。ここで、ローコンでないときは、ステップS166へ移行する。このステップS166以降の処理は上述した通りである。
【0110】また、上記ステップS167にて、ローコンであるときは、撮影したい被写体が見えているのに、水の濁りに補助光が吸収されてピーク検出ができていないと考え、ステップS168へ移行し、所定の距離1.5mをピント合せ距離Lpとし、ステップS157へ移行する。これは、図11(b)に示した濁り量によって、水中において見える距離Lvが制限されることから決定された値である。よって、これ以上、遠距離にピントを合せても水の濁りによってきれいに写ることはない。なお、上記ステップS157以降の処理は上述した通りである。
【0111】また、上記ステップS154にて、出力Pが所定の光量による出力PO1より大きく、かつ、上記ステップS155にて、出力Pが所定の光量による出力PO2より大きいときは、かなり水の濁りがひどいと考えることができ、ステップS156へ移行する。このとき、たとえローコンと判断されなくても、図10(b)に示したような散乱光のピークによる出力P1 によって、誤測距していると考えることができる。
【0112】そこで、ステップS156では、ピント合せ距離Lpは上記ステップS168での距離1.5mよりさらに近い距離1mに固定し、ステップS157へ移行する。続いて、上記ピント合せ距離Lpにピント合せを行い(ステップS157)、露光を行う(ステップS158)。そして、本フローチャートによる処理を終了する。
【0113】また、上記ステップS153にて、水中でないと判断されたときは、ステップS159へ移行し、ローコンか否かの判断を行う。ここで、ローコンであるときは、ステップS161へ移行する。このステップS161以降の処理は上述した通りである。一方、ローコンでないときは、上記ステップS152にて求めたX2 をX1 として(ステップS160)、このX1 に基づいてピント合せ距離Lpを算出し(ステップS164)、ステップS157へ移行する。このステップS157以降の処理は上述した通りである。
【0114】また、上記ステップS151にて、ローコンでないときは、ステップS162へ移行し、水中か否かを判断する。続いて、水中か、または空気中かによってピント合せ距離が異なるため、上述した手法で水中か否かの判断を行った後、X1よりピント合せ距離Lpをそれぞれ算出し(ステップS163,S164)、ステップS157へ移行する。
【0115】続いて、上述したように上記ピント合せ距離Lpにピント合せを行い(ステップS157)、露光を行う(ステップS158)。そして、本フローチャートによる処理を終了する。
【0116】以上説明したように、第2実施例の本変形例においては、水中検知用のセンサを水の濁り検知用のセンサと共用し、カメラの内蔵ストロボを水の濁り検知用の投光源として兼用したため、空気中(陸上)にて使用するカメラに水中検知部4を付加するだけで、水中においてもピントの合った撮影ができる水中撮影可能なカメラを提供することが可能である。
【0117】さらに、このような考え方により、従来のAFでは空気中でも苦手とされていた霧の中や煙の中での測距も可能となる。なお、本発明の上記実施態様によれば、以下のごとき構成が得られる。
(1) 互いに空間的に異なる光路を介して測定すべき対象の映像が結像される一対の光センサアレイと、該光センサアレイの各光センサの受光強度分布の相対位置差に基づいて上記対象までの距離を求める測距装置を有するカメラにおいて、上記カメラが水中にあるか陸上にあるかを判定する水中判定手段と、上記カメラが水中にあるとき、その水の濁り具合を評価する濁り検出手段と、を具備し、上記水中判定手段は、上記測距手段に出力と上記濁り検出手段の出力とに基づいてピント合せ位置を決定することを特徴とする水中撮影可能なカメラ。
(2) 上記測距装置はデフォルト検出手段を有し、該デフォルト検出手段がデフォルト信号を出力するとき、上記濁り検出手段に応じて決められた距離にピント合せを行うピント合せ手段を具備したことを特徴とする上記(1)に記載の水中撮影可能なカメラ。
(3) 上記対象物を測距するときに投光する補助光源と、上記濁り検出手段として上記補助光源の投光部近傍をモニタする光センサ手段を有し、上記カメラが水中にあるとき、上記補助光源の投光時における上記光センサ手段の出力に応じて上記測距手段の出力に補正を行う補正手段を具備したことを特徴とする上記(1)に記載の水中撮影可能なカメラ。
(4) 被写体距離を測距する測距手段と、上記測距手段の出力に応じてピント合せ距離を決定するピント調整手段と、を含む水中カメラにおいて、水の濁り具合を検出する濁り検出手段と、該濁り検出手段の出力に基づいて上記ピント調整手段の最遠ポイントを規制する規制手段と、を具備したことを特徴とする水中撮影可能なカメラ。
(5) 撮影レンズを駆動して焦点調節を行う焦点調節手段と、ストロボ装置を光源とし、目標物に向けてその光束を投光する投光手段と、上記投光手段によって投光される上記光束の上記目標物からの反射光束を受光し、上記目標物までの距離情報を出力する受光手段と、周囲の媒質が水であることを光学的に検知する水検知手段と、上記水検知手段から媒質が水である旨の出力が発せられたとき、媒質の透明度を評価する透明度評価手段と、上記水検知手段から媒質が水である旨の出力が発せられたとき、上記受光手段の出力と上記透明度評価手段の出力とに基づいて、上記撮影レンズの焦点調節位置を設定し上記焦点調節手段を制御する制御手段と、を具備したことを特徴とする水中撮影可能なカメラ。
(6) 撮影レンズを駆動して焦点調節を行う焦点調節手段と、ストロボ装置を光源とし、目標物に向けてその光束を投光する投光手段と、上記投光手段によって投光される上記光束の上記目標物からの反射光束を受光し、上記目標物までの距離情報を出力する受光手段と、上記受光手段の近傍に配され、上記光束の上記目標物からの上記反射光束を可視光カットフィルタを通過したのち受光する第1の光電変換手段と、上記受光手段の出力と上記第1の光電変換手段の出力とを比較することにより使用環境の媒質が水であることを検知する水検知手段と、上記投光手段の射出部位近傍の散乱光を受光する第2の光電変換手段と、上記第2の光電変換手段の出力に応じて媒質の透明度を評価する透明度評価手段と、を具備し、上記水検知手段が使用環境の媒質が水であることを検知したとき、上記受光手段の出力と上記透明度評価手段の出力とに基づいて、上記焦点調節手段によって上記撮影レンズの焦点調節位置を設定することを特徴とする水中撮影可能なカメラ。
(7) 発光量が調節可能な露光用ストロボ装置を備え、上記カメラが水中で使用されるとき、上記受光手段の出力と上記透明度評価手段の出力とに基づいて、上記露光用ストロボ装置の発光量を設定することを特徴とする上記(5)または上記(6)に記載の水中撮影可能なカメラ。
(8) 対象物に対して測距用光を投光する投光手段と、上記測距用光による対象物からの反射光を受光して上記対象物までの距離情報を出力する受光手段と、上記投光手段および受光手段と上記対象物との間の媒質が水であることを検知する水中検知手段と、上記媒質である水の光に対する透過率を評価する透明度評価手段と、を具備し、上記水中検知手段が水中であることを検知したとき、上記受光手段の出力と上記透明度評価手段の出力とに基づいて、上記対象物までの距離を決定することを特徴とする測距装置。
(9) 上記受光手段からの距離情報が、所定距離よりも近距離であるとき、上記透明度評価手段の出力には依らず、上記対象物までの距離を決定することを特徴とする上記(8)に記載の測距装置。
(10) 水中に投光を行う投光手段と、上記投光手段の射出部近傍からの光束のみを受光する受光手段と、上記投光時における上記受光手段の出力が所定レベルよりも大きいとき、上記水中の透明度が低いと判定する判定手段と、を具備したことを特徴とする水中撮影可能なカメラ。
(11) ストロボ手段と、ストロボ使用警告手段と、水の透明度評価手段と、を具備し、上記透明度評価手段により水の透明度が低いと判定したとき、上記ストロボ使用警告手段を作動させ、撮影者に警告表示を行うことを特徴とする水中撮影可能なカメラ。
(12) 被写体距離を測距する測距手段と、上記測距手段の出力に応じてピント合せ距離を決定するピント調整手段と、を含むカメラにおいて、空気中の煙や霧などの浮遊物の具合を検出する浮遊物検出手段と、該浮遊物検出手段の出力に基づいて上記ピント調整手段の最遠ポイントを規制する規制手段と、を具備したことを特徴とする水中撮影可能なカメラ。
【0118】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、空気中だけでなく水中においても正確にオートフォーカスを作動させ、容易に水中写真が撮影できる水中撮影可能なカメラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】各実施例の水中撮影可能なカメラの概略的な構成を示す図である。
【図2】第1実施例の図1に示した測距部2の構成を示す図である。
【図3】空気中及び水中における測距特性を示す図である。
【図4】水中での撮影写真のようすを示す図である。
【図5】第1実施例の図1に示した水中検知部4、透明度検知部3の構成を示す図である。
【図6】第1実施例の水中撮影可能なカメラの動作としてのCPU1の処理を示すフローチャートである。
【図7】第1実施例の変形例の水中検知部4、透明度検知部3の構成を示す図である。
【図8】第1実施例の変形例の水中撮影可能なカメラの動作としてのCPU1の処理を示すフローチャートである。
【図9】パッシブタイプのAFの原理を説明するための図である。
【図10】(a)は第2実施例の上記パッシブタイプのAFを適用した水中撮影可能なカメラの構成を示す図であり、(b)は濁っているときのセンサアレイ72,73の出力を示す図であり、(c)は濁りがないときのセンサアレイ72,73の出力を示す図である。
【図11】(a)は被写体距離Lの逆数1/Lと、図10(c)に示したセンサアレイ72,73から出力される出力のピークの位置差Xの関係を示す図であり、(b)は濁った水中での撮影者が被写体を視覚にて確認可能な距離(見える距離)Lvと、散乱光による出力P1 と、濁りの関係を示す図である。
【図12】第2実施例の水中撮影可能なカメラの動作としてのCPU1の処理を示すフローチャートである。
【図13】第2実施例の変形例の水中撮影可能なカメラの構成を示す図である。
【図14】第2実施例の変形例の水中撮影可能なカメラの動作としてのCPU1の処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…演算制御部(CPU)、2…測距部(AF部)、3…透明度検知部、4…水中検知部、5…ストロボ部、6…警告部、6a…発光ダイオード(LED)、7…ピント合せ部、8…測光部、11…投光源、12…投光回路、13…マスク、14…投光レンズ、15…被写体、16…測距用光、17…反射信号光、18…受光レンズ、19…半導体光位置検出素子(PSD)、20,21…プリアンプ、22,23…圧縮ダイオード、24,25…バッファ回路、26…定電流源、27,28…NPNトランジスタ、29…スイッチ、30…積分コンデンサ、31…アナログ/デジタル変換器(A/D変換器)、32,33…微小電流源、34…受光レンズ18の近傍、35…背景光除去回路、40…投光回路、41…発光ダイオード(LED)、42…プリズム、43…センサ、44…第1受光回路、45…センサ、46…第2受光回路、50…モータドライバ、51…モータ、52…ピント合せ用レンズ、53…フォトインタラプタ(PI)。
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、水中及び空気中においてオートフォーカスによる撮影が可能な水中撮影可能なカメラに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、アウトドアレジャーの普及により、潜水を趣味とする人口が増加し、水中の魚や珊瑚などを撮影して楽しむ人々が増えている。しかし、多くの通常のカメラは生活防水までの機能しか有しておらず、仮に、水中に持ちこめるものでも、水の透明度の関係などからオートフォーカス(自動焦点調節機能;以下AFと記す)は不可能なカメラが大部分であった。
【0003】例えば、特開昭61−295533号公報によれば、カメラの撮影光学系の第1面を凹面にし、測距のための2つの窓の法線を一致させず、かつ交わらないように構成することによって、空気中では通常のAFカメラと全く同様に働き、水中では、固定焦点にて撮影が行われるとする手法が提案されている。
【0004】また、特開昭59−53819号公報によれば、焦点調節制御部材が所望被写体に対して自動的に、および所定距離にそれぞれ撮影レンズを合焦させるためのレンズ位置制御用の第1信号および第2信号のうちいずれかの信号に基づいて焦点調節がなされるよう構成され、カメラが水中にあるか空気中にあるかを自動的に検知する検知部材からの検知信号により上記いずれの焦点調節が行われるかが制御されるようにして、水中撮影時には上記第2信号に基づいてまた空気中撮影時には上記第1信号に基づいて焦点調節がなされるようにした手法が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記特開昭61−295533号公報に記載の手法では、比較的距離の離れたダイバーなどの写真はピントが合った状態で撮影できても、近距離に存在し泳ぐ小さな魚などの写真はピントがぼけた状態で撮影されてしまう。
【0006】また、上記特開昭59−53819号公報に記載の手法では、カメラが水中で使用されていることが検知できても、水中の透明度までを考慮したものではなく、透明度の低い、すなわち濁った水中でも透明度の高い水中でもカメラは同様の動きをするため、失敗写真となる場合が多かった。例えば、同じ水中においても透明度が高い水中では、図4(a)に示すように空気中と変わらぬ写真の撮影が可能である。しかし、海底の土ぼこりが舞い上がっていたり、プランクトンの多い海中などでは、水中に浮遊する上記土ぼこり及びプランクトンなどの粒子にストロボ光が反射してしまう。このため、図4(b)に示すように画面全体が白っぽく濁ってしまい、失敗写真となる場合が多かった。
【0007】また、例えオートフォーカスを作動させたとしても、空気中と同じ考え方では正確に測距できず、主要被写体はピントがぼけた状態で撮影されてしまう。そこで本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、空気中だけでなく水中においても正確にオートフォーカスを作動させ、容易に水中写真が撮影できる水中撮影可能なカメラを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1に記載の水中撮影可能なカメラは、被写体からの反射光束を受ける受光手段と、上記受光手段の結像位置近傍に配された光電変換手段と、上記光電変換手段の出力に基づいて被写体距離を算出する演算手段と、カメラが水中に置かれていることを光学的に判定する水中判定手段と、上記カメラが水中にあるとき、周囲の水の濁り具合を評価する透明度評価手段とを具備し、上記水中判定手段が上記カメラが水中にあると判定したとき、上記演算手段の出力と上記透明度評価手段の出力とに基づいて、上記カメラの撮影レンズのピント合せ位置を決定することを特徴とする。
【0009】また、請求項2に記載の水中撮影可能なカメラは、撮影レンズを駆動して焦点調節を行う焦点調節手段と、ストロボ装置を光源とし、目標物に向けてその光束を投光する投光手段と、上記投光手段によって投光される上記光束の上記目標物からの反射光束を受光し、上記目標物までの距離情報を出力する受光手段と、周囲の媒質が水であることを光学的に検知する水検知手段と、上記水検知手段から媒質が水である旨の出力が発せられたとき、媒質の透明度を評価する透明度評価手段と、上記水検知手段から媒質が水である旨の出力が発せられたとき、上記受光手段の出力と上記透明度評価手段の出力とに基づいて、上記撮影レンズの焦点調節位置を設定し上記焦点調節手段を制御する制御手段とを具備したことを特徴とする。
【0010】またさらに、請求項3に記載の水中撮影可能なカメラは、上記透明度評価手段が、ローコントラストのときに投光する上記投光手段を作動させたときの上記射出開口近傍における光の散乱状況を検知することにより周囲の水の濁り具合を評価することを特徴とする。
【0011】
【作用】本発明の水中撮影可能なカメラにおいては、被写体からの反射光束が受光手段により受光され、上記受光手段の結像位置近傍には光電変換手段が配置される。さらに、上記光電変換手段の出力に基づいて被写体距離が演算手段により算出され、またカメラが水中に置かれていることが水中判定手段により光学的に判定され、上記カメラが水中にあるとき、周囲の水の濁り具合が透明度評価手段により評価される。
【0012】そして、上記水中判定手段により上記カメラが水中にあると判定されたとき、上記演算手段の出力と上記透明度評価手段の出力とに基づいて、上記カメラの撮影レンズのピント合せ位置が決定される。
【0013】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。図1は、本発明に係る各実施例の水中撮影可能なカメラの概略的な構成を示す図である。
【0014】同図において、演算制御部(以下CPUと記す)1、例えばワンチップマイクロコンピュータなどには、被写体までの距離を測定する測距部(AF部)2と、水中の透明度を検知する透明度検知部3と、本カメラの使用環境が水中であるか、空気中であるかを検知する水中検知部4と、被写体が暗いときに光を補うストロボ部5と、撮影者に警告を発する警告部6と、上記測距部2の出力に基づいて、ピント合せ用レンズを移動しその位置を制御するピント合せ部7とが接続される。
【0015】CPU1は、上記各部の動作シーケンスを制御し、透明度検知部3、水中検知部4、及び測距部2などからの出力信号を演算して、ストロボ部5によるストロボの発光光量やピント合せ部7によるピント合せ用レンズの位置を制御する。
【0016】次に、本発明に係る第1実施例の水中撮影可能なカメラについて説明する。図2は、第1実施例の図1に示した測距部2の構成を示す図である。ここでは、特に透明度の低い水中において、測距が困難な理由を説明する。CPU1は、投光源11を投光回路12を介して発光させる。上記投光源11に赤外発光ダイオード(IRED)などを用いると、水の光吸収の波長依存性から全く反射信号光が検出できない。そのため、ここでは、比較的、吸収の影響を受けない可視光を投光できるキセノン放電管(以下Xe管と記す)を用いる。
【0017】投光源11の前方には、小さな点のような隙間を持つマスク13と投光レンズ14を配置して、被写体15に対して、鋭い光を集光し投光する。水が透明な場合や空気中では、投光された測距用光16は被写体15によって反射され、反射信号光17として受光レンズ18を介して、半導体光位置検出素子(以下PSDと記す)19に入射する。このPSD19は、光起電力効果と表面の抵抗層によるキャリア分割効果により、i1 ,i2 という2つの電流信号を出力する。
【0018】この電流信号i1 ,i2 には、以下の関係が成立する。
i1 /(i1 +i2 )=(1/2)+(x/t) …(1)
上記(1)式中のtは、PSD19の検出方向の長さを表し、xはPSD上の反射信号光17の光入射位置を表す。
【0019】一方、この光入射位置x、投光レンズ14と受光レンズ18の主点間距離S、受光レンズ18の焦点距離fj、及び被写体距離Lの間には、以下の関係が成立する。
【0020】
x=(S・fj)/L …(2)
上記(1)式と(2)式より、 1/L=x/(S・fj)
=t/(S・fj)×{i1 /(i1 +i2 )−1/2}…(3)
上記(3)式により、t、S、fjは固定であるため、電流信号i1 ,i2 の比の計算を行えば、被写体距離Lの逆数1/Lが求められる。
【0021】一般に、カメラのピント合せのためのピント合せ用レンズ(撮影レンズ)の繰り出し量は、この1/Lに比例する。これより、上記(3)式を以下のように変形し、測距部2の電流信号を測距出力ADとすると、 AD=i1 /(i1 +i2 )=C・1/L+1/2 …(4)
なお、C=S・fj/tと表すことができる。ここで、電流信号i1 ,i2 をi1 /(i1 +i2 )の形でアナログ的に演算する回路が、図2に示すプリアンプ20,21以降の回路である。PSD19から出力される電流信号i1 ,i2 は、それぞれプリアンプ20,21にて増幅され、各々の圧縮ダイオード22,23に流しこまれる。各々の圧縮ダイオード22,23の出力電圧は、バッファ回路24,25を介して、定電流源26と差動形に構成された2つのNPNトランジスタ27,28のそれぞれのベースに入力される。
【0022】定電流源26の定電流値をIφとし、NPNトランジスタ27,28のそれぞれのコレクタに流れる電流をIA ,IB とすると、 IA + IB = Iφ …(5)
i1 /i2 = IA /IB …(6)
の関係が成立し、 IA = {i1 /(i1 +i2 )}・Iφ …(7)
となる。
【0023】そこで、投光源11であるXe管の発光前に、スイッチ29をオンさせて積分コンデンサ30の両端の電位差を0としておく。次に、スイッチ29をオフしたあと、Xe管の発光と同時に所定時間の間、定電流値Iφを流すと、積分コンデンサ30には、上記(7)式に比例した電圧が発生する。
【0024】したがって、CPU1が上記電圧をアナログ/デジタル変換器(A/D変換器)31を介して、受け取り演算すれば、上記(4)式で示したような測距出力を得ることができる。ただし、被写体が遠距離になると、反射信号光17が小さくなるため、電流信号i1 ,i2 が小さくなりS/Nが劣化する。そこで、圧縮ダイオード22,23には、微小電流源32,33を用いて微小な電流を流しておく。
【0025】このような工夫により、図3(a)に示すような測距出力ADと1/Lの関係を得ることができる。図3(a)における破線は、上記(4)式の関係を示しているが、実際には上述した微小電流源32,33の働きにより、遠距離では1/2の値に収束するようになっており、S/Nの関係上、理論線に対してばらつきを生じ、幅のある出力特性となる。
【0026】また、図3(a)に示す特性は空気中の測距特性であり、図3(b)に示す特性は水中の測距特性である。図3(b)に示す測距特性は、水の屈折率の影響により、図3(a)に示すものより理論線の傾きは急になる。また、実線Aは透明度が高いとき、一点鎖線Bは透明度が低いときの測距特性である。一点鎖線Bに示すように、測距出力AD=1/2となる1/Lに近い距離から曲がるのは、水が光を吸収して反射光量が低下することもあるが、より大きな原因は水中の浮遊物からの信号光の散乱が大きいからである。それは、例えば、図2に示す受光レンズ18の近傍34のように被写体の存在しない所からも、反射信号光17がPSD19に均一に入力するからである。このようにPSD19が一様に照らされると、電流信号i1 ,i2 はほぼ同じような値となり、i1 /(i1+i2 )=1/2に近づく。
【0027】一方、被写体15からの反射信号光17は水による光の吸収によって低下するため、その測距特性は図3(b)に示す一点鎖線Bのように近距離、すなわち1/Lの大きい所から理論線に対し劣化する。したがって、測距部2の測距出力ADがある所定の出力AD∞を取ったとしても、図3(b)に示す実線Aの場合と一点鎖線Bの場合では、距離が異なることとなる。
【0028】本第1実施例では、水中の透明度を検知する水中検知部4を設けたので、CPU1は実線Aの場合か、一点鎖線Bの場合かを判断することが可能となる。したがって、図3(b)に示す実線Aの場合では至近からL1 の距離まで、一点鎖線Bの場合では至近からL2 の距離までオートフォーカスが可能であり、それ以遠はパンフォーカスとする。
【0029】一点鎖線Bの場合で、L1 の距離が測定できないとしても、濁った水の中では撮影者の目にも被写体が見えないことを考えると、大きな問題とはならない。また、このような状態では、太陽光が減衰しオートストロボのカメラでは、ストロボ撮影となる。しかし、上述のように不透明な水中でストロボ撮影を行うと、図4(b)に示すような画面全体が白く濁った失敗写真となりやすいため、むしろ警告を行って、撮影者に注意をうながす。これにより、フィルムの無駄使いをなくすようにする。
【0030】次に、第1実施例における水中検知部4、透明度検知部3について説明する。図5は、第1実施例の図1に示した水中検知部4、透明度検知部3の構成を示す図である。
【0031】同図において、CPU1は投光回路40を介して、発光ダイオード(以下LEDと記す)41を発光させる。プリズム42は、空気中では臨界角の条件により、LED41が発光する光を反射し、センサ43に入射させる。しかし、このプリズム42の反射面に水が接すると、上記臨界角の反射のための条件は満たされなくなり、センサ43への光入射は減少する。
【0032】したがって、CPU1は投光回路40を制御してLED41を発光させ、そのときのセンサ43の出力を第1受光回路44を用いて読み取る。そして、上記出力の大小によって、本カメラの使用環境が水中であるか空気中であるかを検知する。
【0033】また、水中ではLED41が発光する光は、プリズム42をつきぬけてセンサ45に入射するようになっており、プリズム42とセンサ45の間には水が侵入するスペースLPが設けられる。ここに透明度の低い水が入ると、センサ45の出力は低下し、一方、透明度の高い水が入ると、センサ45の出力は上昇する。以上の原理によって、CPU1は第2受光回路46の出力から水の透明度を検知する。
【0034】CPU1は、このような測距部2、水中検知部4、透明度検知部3からの情報に基づいて、ピント合せ距離を決定し、ピント合せ部7を制御する。ピント合せ部7において、CPU1はモータドライバ(MD)50を制御して、モータ51を駆動し、ピント合せ用レンズ52を上記ピント合せ距離に応じた位置まで移動する。このとき、このピント合せ用レンズ52の位置はフォトインタラプタ(以下PIと記す)53などのエンコーダによって、CPU1にフィードバックされる。これより、CPU1はPI53の出力をモニタしつつ、モータドライバ50を制御する。
【0035】また、CPU1は測光部8からの情報に基づいて、ストロボ部5のストロボ光の光量制御や、また上述したように不透明な水中でストロボ撮影を行うような場面では、警告部6を制御しLED6aを用いて撮影者に警告を行う。
【0036】次に、第1実施例の水中撮影可能なカメラの動作について説明する。図6は、第1実施例の水中撮影可能なカメラの動作としてのCPU1の処理を示すフローチャートである。
【0037】撮影者が撮影に入ると、CPU1は測距部2を用いて測距出力ADを求める(ステップS1)。続いて、露出条件を決定するために、測光部8を用いて被写体の輝度情報BVを求める(ステップS2)。さらに、CPU1はLED41を投光させ、センサ43,45に入射した光量に比例した出力P1 ,P2 を受光回路44,46を介して検出する(ステップS3)。
【0038】次に、CPU1は水中検知用のセンサ43に入射した光量に比例した出力P1が所定の光量による出力P10より、小さいか否かを判断する(ステップS4)。この所定の光量による出力P10は、プリズム42が臨界角の条件を満たさなくなったときのセンサ43の出力値より少し高めに設定しておく。したがって、上記ステップS4にて、出力P1 が所定の光量による出力P10より小さいときは、水中であるとしてステップS5へ移行する。一方、出力P1 が所定の光量による出力P10より小さくないときは、空気中であるとしてステップS22へ移行する。このステップS22以降の処理は、空気中の測距動作を示すものとなる。
【0039】次に、ステップS5では、CPU1は測距部2の測距出力ADが所定の出力AD∞より、小さいか否かを判断する。ここで、測距出力ADが所定の出力AD∞より小さくないとき、すなわち、測距出力ADが図3(b)に示した所定の出力AD∞以上であれば、上記(4)式を変形した水中での式をもとにピント合せ距離Lを求め(ステップS19)、そのピント合せ距離Lにピント合せを行う。上記測距出力ADが所定の出力AD∞より少し大きいぐらいのレベルでは、理論線、すなわち、図3(b)のL算出(2)の関係で示す線より離れているが、これについては被写界深度でカバーする設計とする。
【0040】続いて、CPU1は輝度情報BVが所定の輝度BV0より小さいか否かを判断する(ステップS20)。これより、輝度情報BVからストロボ発光が必要か、不要かの判断をしている。ここで、輝度情報BVが所定の輝度BV0より小さくないときは、ステップS9へ分岐しピント合せ距離Lにピント合せをして、ステップS10にて露光を行う。
【0041】一方、上記ステップS20にて、輝度情報BVが所定の輝度BV0より小さいときは、すなわち、ストロボの発光が必要なときには、ステップS21へ分岐し透明度検知用のセンサ45に入射した光量に比例した出力P2 が所定の光量による出力P20より大きいか否かによって、水の透明度の状態を判断する。ここで、出力P2 が所定の光量による出力P20より大きくないときは、透明度が低いとしてステップS15へ移行し、ピント合せ距離Lに従ってストロボの光量GNo を計算する。続いて、上記ステップS15にて求めた光量GNo を2倍して撮影時のストロボの光量GNo を決定する(ステップS16)。これは、透明度が低い水中では、光が被写体に届きにくくなることの対策である。そして、ピント合せ距離Lにピントを合せ(ステップS17)、上記ステップS16にて求めたGNo の光量でストロボを発光させて露光を行う(ステップS18)。
【0042】上記ステップS21にて、出力P2 が所定の光量による出力P20より大きいときは、透明度が高いとしてステップS11へ分岐する。このステップS11では、ピント合せ距離Lに従ってストロボの光量GNo を計算し、ステップS17へ移行する。そして、ステップS17では、ピント合せ距離Lにピントを合せ、上記ステップS11にて求めたGNo の光量でストロボを発光させて露光を行う(ステップS18)。
【0043】次に、ステップS5にて、測距出力ADが所定の出力AD∞より小さく、ステップS6へ分岐した場合について説明する。このステップS6以降は、図3(b)に示した測距部2の測距出力ADが理論からはずれてしまった場合、すなわち、被写体が比較的距離の遠い領域に存在する場合の処理を示すものである。
【0044】上記ステップS21と同様に、CPU1は透明度検知用のセンサ45に入射した光量に比例した出力P2 が所定の光量による出力P20より大きいか否かを判断する(ステップS6)。ここで、出力P2 が所定の光量による出力P20より大きくないときは、透明度が低いとしてステップS12に分岐し、一方、大きいときは、透明度が高いとしてステップS7へ分岐する。
【0045】ここで、透明度が高いときで、かつ測距出力ADが所定の出力AD∞より小さいときのピント合せ距離は、距離L1 以遠である。また透明度が低いときで、かつ測距出力ADが所定の出力AD∞より小さいときのピント合せ距離は、距離L2 以遠である。このときは、図3(b)に示したようにあらかじめ測定によって求めたデータより、例えば、ステップS7ではピント合せ距離Lを距離L1 より遠い4mとし、ステップS12では距離L2 より遠い2mとして、次のステップへ移行する。
【0046】次に、ステップS7,S12から、それぞれ次のステップS8,S13へ移行し、CPU1は輝度情報BVが所定の輝度BVo より小さいか否かを判断する。上記ステップS13にて、輝度情報BVが所定の輝度BVo より小さく、ストロボ発光が必要と判断されたときは、CPU1は警告部6を介してLED6aを点灯させ(ステップS14)、ステップS15へ移行する。これにより、写真が浮遊物などによって真っ白になり、失敗するおそれがあることを撮影者に警告する。ステップS15以降の処理は、上述した通りである。
【0047】なお、フィルムの無駄使いを防止するためには、ステップS14にて警告を行った後、シャッタボタンの押し込みを二度行ったときのみ、撮影が行われるような処理動作としても良い。また、自動的にストロボをオフするようにしても良い。
【0048】一方、上記ステップS13にて、輝度情報BVが所定の輝度BVo より小さくなく、ストロボ発光が不要と判断されたときは、十分、被写体が明るいとして、ストロボを用いずに撮影を行うため、ステップS9へ分岐する。その後の処理は、上述した通りである。
【0049】また、透明度が高いときは上記ステップS8にて、輝度情報BVが所定の輝度BV0より小さいとき、すなわち、被写体が暗いときでも警告は行わない。何故なら、透明度が高いときは、浮遊物などが存在せず、ストロボ光の散乱により、写真が失敗になることはないからである。また、光の減衰も大きくないとして、ステップS16のように光量を増加させるようなステップも設けない。したがって、上記ステップS8にて、輝度情報BVが所定の輝度BV0より小さいときは、ステップS11へ移行する。その後の処理は、上述した通りである。
【0050】一方、上記ステップS8にて、輝度情報BVが所定の輝度BV0より小さくないとき、すなわち、被写体が十分明るいときは、ステップS9へ移行する。その後の処理は、上述した通りである。
【0051】次に、上記ステップS4からステップS22へ分岐したときの、空気中での撮影の処理について説明する。CPU1は、測距部2の測距出力ADが所定の出力AD∞より小さいか否かを判断する(ステップS22)。ここで、測距出力ADが所定の出力AD∞より小さくないときは、上記(4)式より、 1/L=1/C(AD−1/2) …(8)
として、ピント合せ距離Lを求める(ステップS26)。これは、図3(a)に示した理論線、すなわち、L算出(1)の関係で示すものである。
【0052】一方、上記ステップS22にて、測距出力ADが所定の出力AD∞より小さいときは、上記(8)式を用いてLを求めると誤測距となるため、所定の距離7mをピント合せ距離として被写界深度でピンボケを防止する(ステップS23)。
【0053】次に、CPU1は輝度情報BVが所定の輝度BV1より小さいか否かを判断する(ステップS24)。これより、輝度情報BVからストロボ発光が必要か、不要かの判断をしている。このときの判定レベルである所定の輝度BV1は、上記ステップS8,S13,S20の水中における判定レベルである所定の輝度BV0より低くても良い。何故なら空気中の方がカメラのホールディングが安定し、手ぶれを起こしにくいからである。
【0054】ここで、輝度情報BVが所定の輝度BV1より小さいとき、すなわち、ストロボ発光が必要なときは、求めたピント合せ距離Lから、 GNo = FNo × L …(9)
を計算してストロボの光量GNo を求め(ステップS25)、ステップS17へ移行する。なお、FNo は撮影レンズのFナンバーである。その後の処理は、上述した通りである。
【0055】一方、上記ステップS24にて、輝度情報BVが所定の輝度BV1 より小さくないとき、すなわち、ストロボ発光が不要なときは、ステップS9へ分岐する。その後の処理は、上述した通りである。
【0056】以上説明したように、本第1実施例によればカメラの使用環境が水中であるか、空気中(陸上)であるかを検知し、水中の場合、水中の透明度に影響されることなく、適切なピントで正しい露光の写真撮影が全自動で可能となる。したがって、初心者でも空気中(陸上)における撮影と同様に、水中における写真撮影が楽しめる。
【0057】また、ストロボの調光制御を水中の透明度を考慮して行うので、透明度の低い水中でも露出がアンダーになることを防止することができる。さらに、本第1実施例では、ピント合せ距離を求める際に、測距部2の測距出力ADと透明度検知部3を用いて水中の透明度を検知することにより、ピント合せの信頼性を高めることが可能である。また、本第1実施例では、透明度検知用のセンサ45の出力である光量P2 の判定を、所定の光量P20より大きいか、小さいかの二者択一として単純化しているが、もちろんこの判定を細かくすればする程、ピント合せの信頼性を高くすることができる。
【0058】また、ピント合せ距離が測距による所定の出力AD∞より遠い所のみで水の透明度を加味したが、測距出力ADの判定をもっと細かくして、透明度を用いた形でこれを補正するようにすれば、さらに効果が高くなることは言うまでもない。
【0059】さらに、図6にフローチャートにて示した動作は、シャッタの押しこみ時にカメラが自動で行うため、撮影者は従来の空気中で使用している空気中(陸上)用の全自動カメラと同様の手順で、失敗のない水中写真を撮影することができる。
【0060】次に、上記第1実施例の変形例の水中検知部4、透明度検知部3について説明する。図7は、第1実施例の変形例の水中検知部4、透明度検知部3の構成を示す図である。
【0061】本変形例では、図5に示したようなプリズム42を必要とせず、プリズム42とセンサ45の間に水を導き入れる必要もない。投光源11のXe管による投光、PSD19による反射信号光17の受光など、測距部2の構成及び動作については、すでに図2に示した上記第1実施例において説明したものと同一である。しかし、この場合の測距用光16、または反射信号光17を用いて、本変形例では水中検知部4、透明度検知部3を構成して、それぞれの検知を行っている。
【0062】すなわち、被写体15からの反射信号光17aを受光レンズ61及び可視光カットフィルタ62を介して、センサ63にて受光する。このセンサ63によって検出される光量による出力は、第1受光回路64を介して、CPU1に入力される。水中では、特に赤外光の吸収がはげしいので、空気中に比べてセンサ63の出力は小さくなる傾向にある。
【0063】PSD19には、可視光カットフィルタが入っていないため、上記センサ63によって検出される光量とPSD19によって検出される光量との比によって、水中であるか空気中であるかを判定する。以上のように、本変形例の水中検知部4は構成され、水中検知動作を行う。
【0064】また、図7に示す投光レンズ14の前方の近傍16aの光を受光レンズ65を介して、センサ66にて受光する。このセンサ66よって検出される光量による出力は、第2受光回路67を介して、CPU1に入力される。
【0065】仮に、水中の透明度が低いときには、測距用光16が浮遊する微粒子に衝突して、図7に示す投光レンズ14の前方の近傍16aにおいて、はげしく光を散乱させる。したがって、低い透明度の水中では、センサ66に測距用光16の散乱光が入射して、センサ66よって検出される光量は大きくなる。一方、粒子のない空気中や、水中の透明度が高いときには、上記投光レンズ14の前方の近傍16aにおいて、はげしい光の散乱はなく、センサ66には測距用光16は入射しない。以上のように、本変形例の透明度検知部3は構成され、透明度検知動作を行う。
【0066】図8は、第1実施例の変形例の水中撮影可能なカメラの動作としてのCPU1の処理を示すフローチャートである。測距用光16の投光源11としてのXe管の発光と、それに同期してのPSD19への入射光量による出力Po と、センサ63,66にそれぞれ入射した光量による出力P1 ,P2 を検出する(ステップS101)。なお、これらは定常的に各センサに入射される、いわゆる背景光による光量分を背景光除去回路35により除去して、投光された測距用光16による出力のみを検出した値である。したがって、図7に示した変形例においては、専用の第1,第2受光回路64,67を設けているが、AF回路60に入力させてその背景光除去機能を利用しても良い。
【0067】次に、CPU1はセンサ63に入射した光量に比例する出力P1 とPSD19に入射した光量に比例する出力Po との比が、所定の比率γより小さいか否かを判断する(ステップS102)。すなわち、“P1 /Po ”が所定の比率γより小さければ、赤外光が吸収されやすい水中であるとしてステップS103へ移行する。一方、“P1 /Po ”が所定の比率γより小さくなければ、赤外光が吸収されにくい空気中であるとしてステップS116へ分岐する。
【0068】次に、ステップS103では、センサ66に入射した光量に比例した出力P2が所定レベル出力P20より大きいか否かを判断する。上述した動作により、水中の透明度が低いときには、測距用光16は投光レンズ14の前方の近傍16aにおいて、水中の浮遊粒子によって散乱するので、上記近傍16aからの光が入射するように配置されたセンサ66には多くの散乱光が入射する。なお、近傍16aは、投光レンズ14にかなり近い所に設けられているため、被写体が存在することはない。
【0069】すなわち、ステップS103にて、出力P2 が所定レベル出力P20より大きいときは、光を散乱させる粒子の存在より、水中の透明度が低いとしてステップS104へ移行する。一方、出力P2 が所定レベル出力P20より大きくないときは、光を散乱させる粒子は存在せず、水中の透明度は高いとしてステップS111へ分岐する。
【0070】上記ステップS104以降の処理は上記第1実施例の図6に示したステップS12以降の処理と同一であり、上記ステップS111以降の処理は図6に示したステップS7以降の処理と同一であり、さらに、上記ステップS116以降の処理は図6に示したステップS22以降の処理と同一であるため、ここに編入するものとしその説明は省略する。
【0071】以上説明したように、第1実施例の本変形例によれば、カメラの使用環境が水中であるか、空気中(陸上)であるかを検知し、水中の場合、水中の透明度に影響されることなく、適切なピントで正しい露光の写真撮影が全自動で可能となる。したがって、初心者でも空気中(陸上)における撮影と同様に、水中における写真撮影が楽しめる。
【0072】また、水中及び空気中においても撮影ができ、特に水中では水中の透明度にかかわらず、簡単にピントの合った美しい写真撮影が可能なカメラが単純な構成で提供できる。
【0073】また、ストロボの調光制御を水中の透明度を考慮して行うので、透明度の低い水中でも露出がアンダーになることを防止することができる。さらに、本変形例では、ピント合せ距離を求める際に、測距部2の測距出力ADと透明度検知部3を用いて水中の透明度を検知することにより、ピント合せの信頼性を高めることが可能である。また、本変形例では、透明度検知用のセンサ66による出力P2 の判定を、所定の出力P20より大きいか、小さいかの二者択一として単純化しているが、もちろんこの判定を細かくすればする程、ピント合せの信頼性を高くすることができる。
【0074】また、図8にフローチャートにて示した動作は、シャッタの押しこみ時にカメラが自動で行うため、撮影者は従来の空気中で使用している空気中(陸上)用の全自動カメラと同様の手順で、失敗のない水中写真を撮影することができる。
【0075】なお、第1実施例の本変形例では、すでに述べたように、測距用光16を利用しているため、図5に示した上記第1実施例のように、専用のLED41やプリズム42は必要なく、カメラ内に水を侵入させる必要もない。
【0076】次に、本発明に係る第2実施例の水中撮影可能なカメラについて説明する。本発明は、被写体に光を投光して測距を行うアクティブタイプのAFだけでなく、被写体の輝度情報を用いて測距を行う、いわゆるパッシブタイプのAFにも応用可能である。
【0077】図9は、このパッシブタイプのAFの原理を説明するための図である。被写体からの光を受光する受光レンズ70,71は、センサアレイ72,73上に被写体15の像を結像する。このセンサアレイ72,73は、いずれも受光素子のアレイからなり、上記受光レンズ70,71を介して入射した光の像の明暗に依存した出力を、各受光素子から出力する。
【0078】例えば、ここで被写体15の髪と顔の境目あたりに受光レンズ70,71を向けると、センサアレイ72,73上には図9に示すような明暗のステップ状の輝度差74a,74bが生じる。このとき、上記輝度差74a,74bに従った電気信号が上記センサアレイ72,73によって出力され、この明暗のステップ部分の位置差Xにより被写体距離Lは、 L = S・f/x …(10)
にて求められる。
【0079】すなわち、上述したように投光型のアクティブタイプのAFは投光した光の位置を基準として三角測距を行うのに対し、第2実施例におけるパッシブタイプのAFは、一方の受光系の像の明暗を基準に、三角測距を行うものである。
【0080】図10は、本発明に係る第2実施例の上記パッシブタイプのAFを適用した水中撮影可能なカメラの構成を示す図である。この水中撮影可能なカメラは、CPU1と、図9に示したように構成された測距部2と、ピント合せ部7と、水中検知部4と、投光部75と、書き込み可能な不揮発性メモリであるEEPROM76とから成る。CPU1は、ドライバ回路77に指示し投光素子78から光を投光させる。この投光された光は、投光レンズ79を介して前方に出射する。
【0081】すでに、図7にて説明したように、水中の透明度が低いとき、すなわち、濁りのある水中では、上記投光レンズ79の前方で濁りの原因となる浮遊物がこの投光レンズ79から出射される光を反射し散乱させる。このため、この散乱光が受光レンズ70,71を通って、センサアレイ72,73上の投光系から遠い側の端部に図10に示すように入射する。
【0082】一方、浮遊物の存在が少ないときには、上記散乱光のセンサアレイ72,73上への入射光量は少なくなり、また、浮遊物が存在しないときには、上記散乱光はセンサアレイ72,73上に入射しない。そこで、第2実施例では、このセンサアレイ72,73上への入射光量の大きさにより、水の濁りの度合いを評価する。
【0083】上記センサアレイ72は、投光系からの距離が遠いため、上記センサアレイ73に比べて、多くの近距離の散乱光を受光することはできない。したがって、センサアレイ72,73上の光の分布による受光素子からの出力を図示すると、図10(b)に示すようになる。出力P1 として示したのが上記散乱光によるピークであり、出力P2 ,P3 は上記投光素子78によって被写体15に投光され、この被写体15から反射された反射光によるピークである。
【0084】また、濁りがないとき、上記センサアレイ72,73が受光する光による出力には、図10(c)に示すように、図10(b)に示した出力P1 のようなピークは存在せず、出力P2 ,P3 のピークのみが存在する。
【0085】したがって、この2つのアレイセンサ72,73から出力される出力のピークの位置差Xから、上記(10)式より被写体距離が求められる。このような場合には、水中においても正しい測距は可能であるが、図10(b)に示すような場合には、散乱光による出力P1 に正規の信号光による出力P2,P3 が埋もれてしまい、正確な測距ができなくなってしまう。
【0086】図11(a)は、被写体距離Lの逆数1/Lと、図10(c)に示したセンサアレイ72,73から出力される出力のピークの位置差Xの関係を示す図である。
【0087】ここで、濁りがないときにはリニアな関係となるが、濁りの度合いが大きくなると、図10(b)に出力P1 として示した散乱光の影響を受けて、リニアな関係から外れてくる。
【0088】このリニアな関係からのずれである誤差は、遠距離になって被写体がぼけるほど大きくなる。よって、濁りの量と距離により、誤差Δxは予測可能である。また、濁った水中では、撮影者が被写体を視覚にて確認可能な距離(見える距離)Lvも短くなり、さらに、上記散乱光による出力P1 と濁りの関係を含めてグラフにすると図11(b)に示すようになる。この図11(b)に示すグラフより、散乱光のピーク光量による出力P1 から、このときの水中において被写体を視覚にて確認可能な限界の距離Lvを求めることができる。上記関係を考慮し、距離Lv以遠のものを撮影することはないと考えると、水中での撮影時の動作は図12に示すようになる。
【0089】図12は、第2実施例の水中撮影可能なカメラの動作としてのCPU1の処理を示すフローチャートである。CPU1は、投光素子78を発光させ、センサアレイ72,73に入射した光量に比例した出力からスポット部分の位置差Xを求め、センサアレイ73上の端部の受光素子の出力P1 を検出する(ステップS130)。
【0090】こうして得られた、出力P1 、位置差Xより、図11(a)に示した誤差Δxを求める(ステップS131)。上述したように被写体距離と出力P1 によって誤差Δxは求められるので、位置差Xと出力P1 から誤差Δxを求めることは可能である。具体的には、CPU1内のメモリに位置差Xと出力P1 から誤差Δxを求めるためのテーブルを持たせておき、これを参照するようにすれば良い。
【0091】このテーブルは、実際に濁りのある水中で測距を行って、出力P1 、位置差Xから誤差Δxを算出し、書きこみ可能なメモリであるEEPROM76にこの算出結果を記憶させることによって作成する。
【0092】続いて、上記テーブルから得られた誤差Δxと上記(10)式を用いて、被写体距離Lを求める(ステップS132)。次に、図11(b)に示した関係を用いて、撮影可能な最も遠い距離Lvを求める(ステップS133)。
【0093】次に、CPU1は補正して算出した被写体距離Lが距離Lvより大きいか否かを判断する(ステップS134)。ここで、被写体距離Lが距離Lvより大きくないときは、ステップS135へ移行する。ステップS135では、上記ステップS132にて求めた被写体距離Lをピント合せ距離Lpとする。
【0094】このようにして得られたピント合せ距離Lpに対し、ピント合せを行い(ステップS136)、露光を行う(ステップS137)。一方、上記ステップS134にて、被写体距離Lが距離Lvより大きいときは、ステップS138へ移行する。このステップS138では、上記距離Lv以遠の被写体は、撮影者にも見えないため、ピント合せ距離Lpを距離Lvに固定し、ステップS136へ移行する。このステップS136以降の処理は、上述した通りである。以上にて、本フローチャートによる処理を終了する。
【0095】なお、図9に示した第2実施例における投光素子78としては、水中でも減衰の小さい青色の光を出力するLEDを用いるのが好ましい。上記LEDとしては、現在、サファイア基板上に、発光層の材料としてInGaNを形成した500nmの青緑色の高出力LEDが製品化されている。
【0096】以上説明したように、本第2実施例では、図9に示したような投光素子78を一個追加するだけで、空気中でも水中でも正確な測距ができる水中撮影可能なカメラの提供が可能となる。
【0097】また、本第2実施例で用いたような、いわゆる、パッシブタイプのAFでは、被写体に輝度差がないとき及び被写体自体の輝度が小さく、暗いとき、すなわち、ローコントラスト(以下ローコンと記す)ときには、測距ができないが、このような場面では補助光を投光することによって測距を可能とする技術が公知である。本第2実施例では、この補助光と、投光素子78の水中用光源を兼用することにより、コストアップをなくすことができる。
【0098】次に、上記第2実施例の変形例の水中撮影可能なカメラについて説明する。本変形例もパッシブタイプのAFを用いたものである。図13は、第2実施例の変形例の水中撮影可能なカメラの構成を示す図である。
【0099】本変形例は、図10に示したような補助光としての投光部75を用いず、ストロボ内臓カメラのストロボ部5を光源として代用する。ただし、透明度検知用のセンサを兼用する形で、水中検知部4としてのセンサを付加している。
【0100】CPU1は、投光回路80を介してストロボ81を発光させる。水中検知部4は、受光レンズ82にて受光された光から、赤外光を受光するセンサ83と、可視光を受光するセンサ84と、さらにそれぞれのアンプ85とアンプ86とから成る。
【0101】そして、上述したように、水は光を吸収する性質を持っており、その分光特性により、赤外光の吸収率は大きく、可視光の吸収率は小さい。そしてその差は2桁近く違うことがわかる。そこで、空気中では均一な可視光成分と赤外光成分が、水中では均一ではなくなる。
【0102】したがって、これらのセンサ83,84に入射する光量が、極端に、均一でなく赤外光が少ないとき、上記水中検知部4は水中にあると判定することができる。そこで、CPU1はアンプ85,86から出力されるアナログ値をその値に相当するデジタル値に変換(アナログ/デジタル変換)し、それぞれのデジタル値を比較することにより、水中にあるか否かの水中検知を行う。
【0103】また、上記水中検知部4内のセンサ84は、ストロボ81の前方近傍の散乱光をモニタできるように設けられており、ストロボ81の発光時の散乱光も検出できるようになっている。したがって、ストロボ発光時のセンサ84の出力を増幅入力した値をPとすると、この値PによってCPU1は、濁り検知を行う。
【0104】また、測距部2内のデフォルト判定部90は、測距不能の場合、デフォルト値をCPU1へ出力する回路である。図14は、第2実施例の変形例の水中撮影可能なカメラの動作としてのCPU1の処理を示すフローチャートである。
【0105】撮影者が撮影に入ると、CPU1は測距部2を用いて被写体の輝度分布から、結像ポイントの位置差X1 を検出する(図9参照)(ステップS150)。次に、CPU1はローコンか否かを判断する(ステップS151)。ここで、ローコンであるとき、すなわち、被写体に輝度差がなかったり、照明が暗かったり、または水中の浮遊物の影響でコントラストが低いときは、ステップS152へ移行し、ストロボ部5を発光させ、これを補助光として、ピークの位置差X2とセンサ84が受光する光量に基づく出力Pを検出する。なお、上記ローコンか否かの判定は、デフォルト判定部90により行う。
【0106】次に、CPU1は水中か否かを判断する(ステップS153)。ここで、水中であるときは、ステップS154へ移行し、出力Pが所定の光量による出力PO1より大きいか否かを判断する。ここで、出力Pが所定の光量による出力PO1より大きいときは、さらにステップS155へ移行し、出力Pが所定の光量による出力PO2より大きいか否かを判断する。なお、ステップS155での出力PO2には、出力PO1より大きな値が用いられる。以上のステップS154,S155により、濁り具合の検知を行う。
【0107】上記ステップS154にて、出力Pが所定の光量による出力PO1より大きいくないときは、濁りがないとして、ステップS165へ移行し、ローコンか否かを判断する。ここで、ローコンであるときは、ステップS161へ移行し、撮影不可能である旨の警告を行い、本フローチャートによる処理を終了する。一方、ローコンでないときには、ステップS166へ移行し、上記ステップS152にて求めたX2 をX1 として、このX1 に基づいてピント合せ距離Lpを算出する(ステップS163)。
【0108】続いて、上記ピント合せ距離Lpにピント合せを行い(ステップS157)、露光を行う(ステップS158)。そして、本フローチャートによる処理を終了する。
【0109】一方、上記ステップS154にて、出力Pが所定の光量による出力PO1より大きく、かつ、上記ステップS155にて、出力Pが所定の光量による出力PO2より大きくないときは、水は濁っているが、それほど濁りはひどくないと考えることができ、ステップS167へ移行し、ローコンか否かを判断する。ここで、ローコンでないときは、ステップS166へ移行する。このステップS166以降の処理は上述した通りである。
【0110】また、上記ステップS167にて、ローコンであるときは、撮影したい被写体が見えているのに、水の濁りに補助光が吸収されてピーク検出ができていないと考え、ステップS168へ移行し、所定の距離1.5mをピント合せ距離Lpとし、ステップS157へ移行する。これは、図11(b)に示した濁り量によって、水中において見える距離Lvが制限されることから決定された値である。よって、これ以上、遠距離にピントを合せても水の濁りによってきれいに写ることはない。なお、上記ステップS157以降の処理は上述した通りである。
【0111】また、上記ステップS154にて、出力Pが所定の光量による出力PO1より大きく、かつ、上記ステップS155にて、出力Pが所定の光量による出力PO2より大きいときは、かなり水の濁りがひどいと考えることができ、ステップS156へ移行する。このとき、たとえローコンと判断されなくても、図10(b)に示したような散乱光のピークによる出力P1 によって、誤測距していると考えることができる。
【0112】そこで、ステップS156では、ピント合せ距離Lpは上記ステップS168での距離1.5mよりさらに近い距離1mに固定し、ステップS157へ移行する。続いて、上記ピント合せ距離Lpにピント合せを行い(ステップS157)、露光を行う(ステップS158)。そして、本フローチャートによる処理を終了する。
【0113】また、上記ステップS153にて、水中でないと判断されたときは、ステップS159へ移行し、ローコンか否かの判断を行う。ここで、ローコンであるときは、ステップS161へ移行する。このステップS161以降の処理は上述した通りである。一方、ローコンでないときは、上記ステップS152にて求めたX2 をX1 として(ステップS160)、このX1 に基づいてピント合せ距離Lpを算出し(ステップS164)、ステップS157へ移行する。このステップS157以降の処理は上述した通りである。
【0114】また、上記ステップS151にて、ローコンでないときは、ステップS162へ移行し、水中か否かを判断する。続いて、水中か、または空気中かによってピント合せ距離が異なるため、上述した手法で水中か否かの判断を行った後、X1よりピント合せ距離Lpをそれぞれ算出し(ステップS163,S164)、ステップS157へ移行する。
【0115】続いて、上述したように上記ピント合せ距離Lpにピント合せを行い(ステップS157)、露光を行う(ステップS158)。そして、本フローチャートによる処理を終了する。
【0116】以上説明したように、第2実施例の本変形例においては、水中検知用のセンサを水の濁り検知用のセンサと共用し、カメラの内蔵ストロボを水の濁り検知用の投光源として兼用したため、空気中(陸上)にて使用するカメラに水中検知部4を付加するだけで、水中においてもピントの合った撮影ができる水中撮影可能なカメラを提供することが可能である。
【0117】さらに、このような考え方により、従来のAFでは空気中でも苦手とされていた霧の中や煙の中での測距も可能となる。なお、本発明の上記実施態様によれば、以下のごとき構成が得られる。
(1) 互いに空間的に異なる光路を介して測定すべき対象の映像が結像される一対の光センサアレイと、該光センサアレイの各光センサの受光強度分布の相対位置差に基づいて上記対象までの距離を求める測距装置を有するカメラにおいて、上記カメラが水中にあるか陸上にあるかを判定する水中判定手段と、上記カメラが水中にあるとき、その水の濁り具合を評価する濁り検出手段と、を具備し、上記水中判定手段は、上記測距手段に出力と上記濁り検出手段の出力とに基づいてピント合せ位置を決定することを特徴とする水中撮影可能なカメラ。
(2) 上記測距装置はデフォルト検出手段を有し、該デフォルト検出手段がデフォルト信号を出力するとき、上記濁り検出手段に応じて決められた距離にピント合せを行うピント合せ手段を具備したことを特徴とする上記(1)に記載の水中撮影可能なカメラ。
(3) 上記対象物を測距するときに投光する補助光源と、上記濁り検出手段として上記補助光源の投光部近傍をモニタする光センサ手段を有し、上記カメラが水中にあるとき、上記補助光源の投光時における上記光センサ手段の出力に応じて上記測距手段の出力に補正を行う補正手段を具備したことを特徴とする上記(1)に記載の水中撮影可能なカメラ。
(4) 被写体距離を測距する測距手段と、上記測距手段の出力に応じてピント合せ距離を決定するピント調整手段と、を含む水中カメラにおいて、水の濁り具合を検出する濁り検出手段と、該濁り検出手段の出力に基づいて上記ピント調整手段の最遠ポイントを規制する規制手段と、を具備したことを特徴とする水中撮影可能なカメラ。
(5) 撮影レンズを駆動して焦点調節を行う焦点調節手段と、ストロボ装置を光源とし、目標物に向けてその光束を投光する投光手段と、上記投光手段によって投光される上記光束の上記目標物からの反射光束を受光し、上記目標物までの距離情報を出力する受光手段と、周囲の媒質が水であることを光学的に検知する水検知手段と、上記水検知手段から媒質が水である旨の出力が発せられたとき、媒質の透明度を評価する透明度評価手段と、上記水検知手段から媒質が水である旨の出力が発せられたとき、上記受光手段の出力と上記透明度評価手段の出力とに基づいて、上記撮影レンズの焦点調節位置を設定し上記焦点調節手段を制御する制御手段と、を具備したことを特徴とする水中撮影可能なカメラ。
(6) 撮影レンズを駆動して焦点調節を行う焦点調節手段と、ストロボ装置を光源とし、目標物に向けてその光束を投光する投光手段と、上記投光手段によって投光される上記光束の上記目標物からの反射光束を受光し、上記目標物までの距離情報を出力する受光手段と、上記受光手段の近傍に配され、上記光束の上記目標物からの上記反射光束を可視光カットフィルタを通過したのち受光する第1の光電変換手段と、上記受光手段の出力と上記第1の光電変換手段の出力とを比較することにより使用環境の媒質が水であることを検知する水検知手段と、上記投光手段の射出部位近傍の散乱光を受光する第2の光電変換手段と、上記第2の光電変換手段の出力に応じて媒質の透明度を評価する透明度評価手段と、を具備し、上記水検知手段が使用環境の媒質が水であることを検知したとき、上記受光手段の出力と上記透明度評価手段の出力とに基づいて、上記焦点調節手段によって上記撮影レンズの焦点調節位置を設定することを特徴とする水中撮影可能なカメラ。
(7) 発光量が調節可能な露光用ストロボ装置を備え、上記カメラが水中で使用されるとき、上記受光手段の出力と上記透明度評価手段の出力とに基づいて、上記露光用ストロボ装置の発光量を設定することを特徴とする上記(5)または上記(6)に記載の水中撮影可能なカメラ。
(8) 対象物に対して測距用光を投光する投光手段と、上記測距用光による対象物からの反射光を受光して上記対象物までの距離情報を出力する受光手段と、上記投光手段および受光手段と上記対象物との間の媒質が水であることを検知する水中検知手段と、上記媒質である水の光に対する透過率を評価する透明度評価手段と、を具備し、上記水中検知手段が水中であることを検知したとき、上記受光手段の出力と上記透明度評価手段の出力とに基づいて、上記対象物までの距離を決定することを特徴とする測距装置。
(9) 上記受光手段からの距離情報が、所定距離よりも近距離であるとき、上記透明度評価手段の出力には依らず、上記対象物までの距離を決定することを特徴とする上記(8)に記載の測距装置。
(10) 水中に投光を行う投光手段と、上記投光手段の射出部近傍からの光束のみを受光する受光手段と、上記投光時における上記受光手段の出力が所定レベルよりも大きいとき、上記水中の透明度が低いと判定する判定手段と、を具備したことを特徴とする水中撮影可能なカメラ。
(11) ストロボ手段と、ストロボ使用警告手段と、水の透明度評価手段と、を具備し、上記透明度評価手段により水の透明度が低いと判定したとき、上記ストロボ使用警告手段を作動させ、撮影者に警告表示を行うことを特徴とする水中撮影可能なカメラ。
(12) 被写体距離を測距する測距手段と、上記測距手段の出力に応じてピント合せ距離を決定するピント調整手段と、を含むカメラにおいて、空気中の煙や霧などの浮遊物の具合を検出する浮遊物検出手段と、該浮遊物検出手段の出力に基づいて上記ピント調整手段の最遠ポイントを規制する規制手段と、を具備したことを特徴とする水中撮影可能なカメラ。
【0118】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、空気中だけでなく水中においても正確にオートフォーカスを作動させ、容易に水中写真が撮影できる水中撮影可能なカメラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】各実施例の水中撮影可能なカメラの概略的な構成を示す図である。
【図2】第1実施例の図1に示した測距部2の構成を示す図である。
【図3】空気中及び水中における測距特性を示す図である。
【図4】水中での撮影写真のようすを示す図である。
【図5】第1実施例の図1に示した水中検知部4、透明度検知部3の構成を示す図である。
【図6】第1実施例の水中撮影可能なカメラの動作としてのCPU1の処理を示すフローチャートである。
【図7】第1実施例の変形例の水中検知部4、透明度検知部3の構成を示す図である。
【図8】第1実施例の変形例の水中撮影可能なカメラの動作としてのCPU1の処理を示すフローチャートである。
【図9】パッシブタイプのAFの原理を説明するための図である。
【図10】(a)は第2実施例の上記パッシブタイプのAFを適用した水中撮影可能なカメラの構成を示す図であり、(b)は濁っているときのセンサアレイ72,73の出力を示す図であり、(c)は濁りがないときのセンサアレイ72,73の出力を示す図である。
【図11】(a)は被写体距離Lの逆数1/Lと、図10(c)に示したセンサアレイ72,73から出力される出力のピークの位置差Xの関係を示す図であり、(b)は濁った水中での撮影者が被写体を視覚にて確認可能な距離(見える距離)Lvと、散乱光による出力P1 と、濁りの関係を示す図である。
【図12】第2実施例の水中撮影可能なカメラの動作としてのCPU1の処理を示すフローチャートである。
【図13】第2実施例の変形例の水中撮影可能なカメラの構成を示す図である。
【図14】第2実施例の変形例の水中撮影可能なカメラの動作としてのCPU1の処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…演算制御部(CPU)、2…測距部(AF部)、3…透明度検知部、4…水中検知部、5…ストロボ部、6…警告部、6a…発光ダイオード(LED)、7…ピント合せ部、8…測光部、11…投光源、12…投光回路、13…マスク、14…投光レンズ、15…被写体、16…測距用光、17…反射信号光、18…受光レンズ、19…半導体光位置検出素子(PSD)、20,21…プリアンプ、22,23…圧縮ダイオード、24,25…バッファ回路、26…定電流源、27,28…NPNトランジスタ、29…スイッチ、30…積分コンデンサ、31…アナログ/デジタル変換器(A/D変換器)、32,33…微小電流源、34…受光レンズ18の近傍、35…背景光除去回路、40…投光回路、41…発光ダイオード(LED)、42…プリズム、43…センサ、44…第1受光回路、45…センサ、46…第2受光回路、50…モータドライバ、51…モータ、52…ピント合せ用レンズ、53…フォトインタラプタ(PI)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 被写体からの反射光束を受ける受光手段と、上記受光手段の結像位置近傍に配された光電変換手段と、上記光電変換手段の出力に基づいて被写体距離を算出する演算手段と、カメラが水中に置かれていることを光学的に判定する水中判定手段と、上記カメラが水中にあるとき、周囲の水の濁り具合を評価する透明度評価手段と、を具備し、上記水中判定手段が上記カメラが水中にあると判定したとき、上記演算手段の出力と上記透明度評価手段の出力とに基づいて、上記カメラの撮影レンズのピント合せ位置を決定することを特徴とする水中撮影可能なカメラ。
【請求項2】 撮影レンズを駆動して焦点調節を行う焦点調節手段と、ストロボ装置を光源とし、目標物に向けてその光束を投光する投光手段と、上記投光手段によって投光される上記光束の上記目標物からの反射光束を受光し、上記目標物までの距離情報を出力する受光手段と、周囲の媒質が水であることを光学的に検知する水検知手段と、上記水検知手段から媒質が水である旨の出力が発せられたとき、媒質の透明度を評価する透明度評価手段と、上記水検知手段から媒質が水である旨の出力が発せられたとき、上記受光手段の出力と上記透明度評価手段の出力とに基づいて、上記撮影レンズの焦点調節位置を設定し上記焦点調節手段を制御する制御手段と、を具備したことを特徴とする水中撮影可能なカメラ。
【請求項3】 上記透明度評価手段は、ローコントラストのときに投光する上記投光手段を作動させたときの上記射出開口近傍における光の散乱状況を検知することにより周囲の水の濁り具合を評価することを特徴とする請求項1に記載の水中撮影可能なカメラ。
【請求項1】 被写体からの反射光束を受ける受光手段と、上記受光手段の結像位置近傍に配された光電変換手段と、上記光電変換手段の出力に基づいて被写体距離を算出する演算手段と、カメラが水中に置かれていることを光学的に判定する水中判定手段と、上記カメラが水中にあるとき、周囲の水の濁り具合を評価する透明度評価手段と、を具備し、上記水中判定手段が上記カメラが水中にあると判定したとき、上記演算手段の出力と上記透明度評価手段の出力とに基づいて、上記カメラの撮影レンズのピント合せ位置を決定することを特徴とする水中撮影可能なカメラ。
【請求項2】 撮影レンズを駆動して焦点調節を行う焦点調節手段と、ストロボ装置を光源とし、目標物に向けてその光束を投光する投光手段と、上記投光手段によって投光される上記光束の上記目標物からの反射光束を受光し、上記目標物までの距離情報を出力する受光手段と、周囲の媒質が水であることを光学的に検知する水検知手段と、上記水検知手段から媒質が水である旨の出力が発せられたとき、媒質の透明度を評価する透明度評価手段と、上記水検知手段から媒質が水である旨の出力が発せられたとき、上記受光手段の出力と上記透明度評価手段の出力とに基づいて、上記撮影レンズの焦点調節位置を設定し上記焦点調節手段を制御する制御手段と、を具備したことを特徴とする水中撮影可能なカメラ。
【請求項3】 上記透明度評価手段は、ローコントラストのときに投光する上記投光手段を作動させたときの上記射出開口近傍における光の散乱状況を検知することにより周囲の水の濁り具合を評価することを特徴とする請求項1に記載の水中撮影可能なカメラ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図9】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図9】
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【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開平8−194151
【公開日】平成8年(1996)7月30日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−3473
【出願日】平成7年(1995)1月12日
【出願人】(000000376)オリンパス光学工業株式会社 (11,466)
【公開日】平成8年(1996)7月30日
【国際特許分類】
【出願日】平成7年(1995)1月12日
【出願人】(000000376)オリンパス光学工業株式会社 (11,466)
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