説明

水平多関節ロボット

【課題】アームの振動がより効果的に抑制できる水平多関節ロボットを提供する。
【解決手段】水平多関節ロボットは、基台に連結される第1アームと、第1アームを介して基台に連結される第2アームと、基台に内蔵されて第1アームを水平方向に回動する第1駆動源と、第2アームに内蔵されて第2アームを水平方向に回動する第2駆動源と、第2アームに設置された角速度センサーとを備え、第2アームが第2駆動源によって回動する回動軸心Aから第2アーム先端までの長さをL1とし、回動軸心Aから角速度センサーの設置位置Bまでの距離をL2とし、第2アームの重心Jから角速度センサーの設置位置Bまでの距離をL3としたときに、設置位置Bは、L2>0.5L1かつL3<0.2L1を満たし、角速度センサーより得られた角速度に基づいて第1駆動源および/または第2駆動源を駆動し、第2アームを制振する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平多関節ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に記載されているように、角速度センサーによりアームの角速度を検出することで、アームに生じた振動を抑える水平多関節ロボットが知られている。この水平多関節ロボットは、基台に対して回動可能な第1アームが、第1駆動源の駆動力を受けて回動する際、第1アームに搭載される角速度センサーによって第1アームの角速度が検出される。この検出した角速度に基づいて、第1アームに生じた振動が抑えられるように、第1駆動源の駆動量が制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−242794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の水平多関節ロボットでは、アームに対して角速度センサーを取り付ける位置や方法について何ら具体化されていないため、益々高速化、高精度化に対するニーズが高まる水平多関節ロボットにおいて、充分なアームの振動が抑制できないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の適用例または形態として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる水平多関節ロボットは、基台に連結される第1アームと、少なくとも第1アームを介して基台に連結される第2アームと、基台に内蔵されて第1アームを水平方向に回動する第1駆動源と、第2アームに内蔵されて第2アームを水平方向に回動する第2駆動源と、第2アームに設置された角速度センサーと、を備え、第2アームが第2駆動源によって回動する回動軸心Aから第2アーム先端までの長さをL1とし、回動軸心Aから角速度センサーの設置位置Bまでの距離をL2とし、第2アームの重心Jから設置位置Bまでの距離をL3としたときに、設置位置Bは、L2>0.5L1かつL3<0.2L1を満たし、角速度センサーより得られた角速度に基づいて第1駆動源および/または第2駆動源を駆動し、第2アームを制振することを特徴とする。
【0007】
本適用例によれば、第2アームに取り付ける角速度センサーの設置位置BをL2>0.5L1とすることにより、より感度良く第2アームの水平方向の振動を検知することが可能となる。また、第2アームに取り付ける角速度センサーの設置位置Bを、コントロールすべき重心位置により近いL3<0.2L1とすることにより、より正確に第2アームの水平方向の振動を検知し制振することが可能となる。
従って、より感度が高く、より正確に検出された角速度に基づいて第1駆動源および/または第2駆動源を駆動し、第2アームを制振することにより、益々高速化、高精度化に対するニーズが高まる水平多関節ロボットにおいて、より有効にアームの振動が抑制された水平多関節ロボットを提供することができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる水平多関節ロボットにおいて、角速度センサーは、第2アームを構成する底部基材の第2駆動源が取り付けられた面とは反対側の面に設置されることを特徴とする。
【0009】
本適用例によれば、角速度センサーは、第2アームを構成する底部基材の第2駆動源が取り付けられた面とは反対側の面に設置されるため、角速度センサーが第2駆動源から受ける塵埃の影響をより少なくすることができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる水平多関節ロボットにおいて、角速度センサーは、第2アームを構成する底部基材に形成された凹部に設置されることを特徴とする。
【0011】
本適用例によれば、角速度センサーは、第2アームを構成する底部基材に形成された凹部に設置されるため、角速度センサーは、第2アームを構成する底部基材から突出することなく設置することができる。その結果、第2アームの旋回をよりスムーズに行なうことが可能となる。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかる水平多関節ロボットにおいて、角速度センサーは、第2アームを構成する底部基材に形成された貫通孔の内部に設置されることを特徴とする。
【0013】
本適用例によれば、角速度センサーは、第2アームを構成する底部基材に形成された貫通孔の内部に設置されるため、角速度センサーは、第2アームを構成する底部基材から突出することなく設置することができる。その結果、第2アームの旋回をよりスムーズに行なうことが可能となる。また、貫通孔を通して角速度センサーへの配線を敷設することができるため、より簡便に第2アームを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係る水平多関節ロボットの例を示す斜視図。
【図2】(a)第2アームの側面図、(b)角速度センサー設置位置の第2アームの延在方向に直交する方向の断面図。
【図3】(a),(b),(c)角速度センサー設置位置を示す第2アーム側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明を具体化した実施形態について、図面を参照して説明する。以下は、本発明の一実施形態であって、本発明を限定するものではない。なお、以下の各図においては、説明を分かりやすくするため、実際とは異なる尺度で記載している場合がある。
【0016】
(実施形態)
まず、実施形態に係る水平多関節ロボットについて説明する。
図1は、実施形態に係る水平多関節ロボット100の例を示す斜視図である。
水平多関節ロボット100は、基台1、第1アーム10、第1モーターユニット11、第2アーム20、第2モーターユニット21、エンドエフェクター30、エンドエフェクター駆動ユニット31、ジャイロセンサーモジュール50、コントローラー60、電気配線61などから構成される。
【0017】
基台1は、第1アーム10を回動させる第1駆動源としての第1モーターユニット11などを内蔵し、床などに水平に設置される。なお、水平とは、通常の生活環境における床などの面と同等の水平度を言う。
第1アーム10は、一方の端部が基台1の上端部において第1モーターユニット11の駆動軸によって連結され、鉛直方向に沿う軸心を中心にして水平方向に回動する。
【0018】
第2アーム20は、第2駆動源としての第2モーターユニット21やエンドエフェクター駆動ユニット31などを内蔵している。また、第2アーム20の一方の端部は、第1アーム10の他方の端部と第2モーターユニット21の駆動軸21jによって連結され、鉛直方向に沿う軸心を中心にして水平方向に回動する。
【0019】
第1モーターユニット11および第2モーターユニット21は、それぞれ回転角度の情報を検出するロータリーエンコーダーを備えている。
第1アーム10および第2アーム20は、鋳鉄などの金属材料で形成されており、その長さ方向及び旋回方向などに高い剛性を有している。
なお、本実施形態では、第2アーム20は第1アーム10に直接連結されているが、これに限定するものではなく、第2アーム20を、第1アーム10との間に複数のアームを介して連結する形態であっても良い。
【0020】
エンドエフェクター30は、エンドエフェクター駆動ユニット31によってベルト(図示省略)を介し鉛直方向に沿って上下するスライド軸32、その下端に備えるツール(図示省略)などから構成され、第2アーム20の他方の端部に設置される。
第2アーム20は、その一方の端部から他方の端部にかけて、第2モーターユニット21、エンドエフェクター駆動ユニット31などを含めてそれらの上部を覆うアームカバー22を有している。アームカバー22は、例えば樹脂材料で形成され、第2アーム20内部を保護する一方、内部のベルトなどから発生する塵埃が周辺に飛散することを抑制する。
【0021】
ジャイロセンサーモジュール50は、角速度センサー51、ADC(Analog to Digital Converter)回路などから構成され、第2アーム20の内部に設置される。
角速度センサー51には、好適例として水晶型振動子を用いた振動型のジャイロスコープを用いている。
ジャイロセンサーモジュール50は、角速度センサー51が第2アーム20の回動方向と同じ方向の動きにおける角速度が検出できるように取り付けられている。検出された角速度の情報は、電気配線61を介してコントローラー60に伝達される。
【0022】
コントローラー60は、所定のプログラムに従い、水平多関節ロボット100全体を制御する。また、コントローラー60は、ジャイロセンサーモジュール50から入力される信号に基づいて、第2アーム20の駆動による水平方向の振動が抑制されるように第1モーターユニット11および/または第2モーターユニット21の駆動を制御する。具体的には、コントローラー60は、第1モーターユニット11の回転角度および第2モーターユニット21の回転角度をそれぞれのロータリーエンコーダーから取得する。また、ジャイロセンサーモジュール50から第2アーム20の角速度情報を取得する。コントローラー60は、これらの情報に基づいて第1アーム10の角速度を推定し、第2アーム20の振動が抑制されるように第1モーターユニット11および/または第2モーターユニット21の駆動を制御する。
【0023】
電気配線61は、ジャイロセンサーモジュール50からコントローラー60に接続される信号線や第2モーターユニット21およびエンドエフェクター駆動ユニット31を駆動する電力線などをまとめた配管部材などから成り、第2アーム20と基台1とを繋いでいる。
【0024】
次に、角速度センサー51(ジャイロセンサーモジュール50)を取り付ける位置について説明する。
角速度センサー51が検出する角速度に基づいて、第2アーム20の振動をより効果的に抑制するためには、角速度センサー51が第2アーム20の振動を感度良く、また正確に検出する必要がある。また、検出する振動は、制振すべき目的位置の振動であることが望ましい。一般的に、物体の挙動は、重心位置の質点の挙動として扱うことができる。従って、重心位置により近い部位の振動を検出することで、より有効な制振パラメーターが導出できる。
【0025】
図2(a)は、第2アーム20の側面図、図2(b)は、角速度センサー設置位置の第2アーム20の延在方向に直交する方向の断面図である。
第2アーム20は、底部基材20a、側部基材20bなどで構成され、その長さ方向および旋回方向などに高い剛性を有している。
図2(a),(b)において、Jは、第2アーム20の重心の位置(以下重心J)を示している。また、図2(a),(b)において、第2モーターユニット21の駆動軸21jの回動軸心Aから第2アーム20先端までの長さをL1とし、回動軸心Aから角速度センサー51の設置位置Bまでの距離をL2とし、第2アーム20の重心Jから角速度センサー51の設置位置Bまでの距離をL3とする。
【0026】
この場合において、水平多関節ロボット100に搭載する角速度センサー51の設置位置Bは、L2>0.5L1かつL3<0.2L1を満たす位置としている。
具体的には、角速度センサー51を搭載するジャイロセンサーモジュール50の設置位置を上記の関係が満たされる位置となるようにし、ジャイロセンサーモジュール50を堅固に底部基材20aなどに固定している。
【0027】
以上述べたように、本実施形態による水平多関節ロボット100によれば、以下の効果を得ることができる。
第2アーム20に取り付ける角速度センサー51の設置位置BをL2>0.5L1とすることにより、角速度センサー51の設置位置が回動軸心Aからより離れる位置となるため、より感度良く第2アーム20の水平方向の振動を検知することが可能となる。また、第2アーム20に取り付ける角速度センサー51の設置位置Bを、コントロールすべき重心Jの位置により近いL3<0.2L1とすることにより、より正確に第2アーム20の水平方向の振動を検知し制振することが可能となる。
従って、より感度が高く、より正確に検出された角速度に基づいて第1モーターユニット11および/または第2モーターユニット21を駆動し、第2アーム20を制振することにより、益々高速化、高精度化に対するニーズが高まる水平多関節ロボットにおいて、より有効にアームの振動が抑制された水平多関節ロボットを提供することができる。
【0028】
なお、ジャイロセンサーモジュール50の固定は、図2(b)に示すように、スペーサー53などを介して底部基材20aなどに固定しても良いが、以下の実施例に示すように固定することが好ましい。
【0029】
図3(a),(b),(c)は、角速度センサー51を搭載するジャイロセンサーモジュール50の設置位置の例を示す第2アーム側断面図である。図3(a),(b),(c)では、内蔵する部材の多くを省略して示している。
(実施例1)
実施例1を図3(a)に示す。
本実施例では、上述した位置関係を満たす範囲で、ジャイロセンサーモジュール50を直接底部基材20aの裏面(下面)に固定している。この実施例では、ジャイロセンサーモジュール50が、底部基材20aから下方向に突出して第2アーム20の回動を妨げることが無いように、底部基材20aに凹部20dを形成してジャイロセンサーモジュール50を埋め込むように設置している。なお、ジャイロセンサーモジュール50への信号線などの電気配線や、底部基材20aとの電気的絶縁については、適宜考慮する必要がある。
【0030】
本実施例によれば、角速度センサー51を搭載するジャイロセンサーモジュール50は、第2アーム20を構成する底部基材20a裏面に設置されるため、角速度センサー51が第2アーム20に内蔵される第2モーターユニット21やエンドエフェクター駆動ユニット31、ベルトなどから受ける塵埃の影響をより少なくすることができる。
【0031】
また、ジャイロセンサーモジュール50は、第2アーム20を構成する底部基材20aに形成された凹部20dに設置されるため、ジャイロセンサーモジュール50は、第2アーム20を構成する底部基材20aから突出することなく設置することができる。その結果、第2アーム20の旋回をよりスムーズに行なうことが可能となる。
【0032】
(実施例2)
実施例2を図3(b)に示す。
本実施例では、上述した位置関係を満たす範囲で、ジャイロセンサーモジュール50を直接底部基材20aに形成した貫通孔20hの内部に設置している。この実施例では、ジャイロセンサーモジュール50を貫通孔20hの内部に固定されるように、フレーム24を介して底部基材20aに固定している。
【0033】
本実施例によれば、ジャイロセンサーモジュール50は、第2アーム20を構成する底部基材20aに形成された貫通孔20hの内部に設置されるため、ジャイロセンサーモジュール50は、第2アーム20を構成する底部基材20aから突出することなく設置することができる。その結果、第2アーム20の旋回をよりスムーズに行なうことが可能となる。また、貫通孔20hを通してジャイロセンサーモジュール50への配線を敷設することができるため、より簡便に第2アーム20を構成することができる。
【0034】
(実施例3)
実施例3を図3(c)に示す。
本実施例では、上述した位置関係を満たす範囲で、ジャイロセンサーモジュール50を直接底部基材20aの表面(上面)に固定している。この実施例では、ジャイロセンサーモジュール50が、底部基材20aから下方向に突出して第2アーム20の回動を妨げることが無い。また、角速度センサー51への配線をより簡便に敷設することができる。
【符号の説明】
【0035】
1…基台、10…第1アーム、11…第1モーターユニット、20…第2アーム、20a…底部基材、20b…側部基材、20d…凹部、20h…貫通孔、21…第2モーターユニット、21j…駆動軸、22…アームカバー、24…フレーム、30…エンドエフェクター、31…エンドエフェクター駆動ユニット、32…スライド軸、50…ジャイロセンサーモジュール、51…角速度センサー、53…スペーサー、60…コントローラー、61…電気配線、100…水平多関節ロボット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台に連結される第1アームと、
少なくとも前記第1アームを介して前記基台に連結される第2アームと、
前記基台に内蔵されて前記第1アームを水平方向に回動する第1駆動源と、
前記第2アームに内蔵されて前記第2アームを水平方向に回動する第2駆動源と、
前記第2アームに設置された角速度センサーと、を備え、
前記第2アームが前記第2駆動源によって回動する回動軸心Aから前記第2アーム先端までの長さをL1とし、前記回動軸心Aから前記角速度センサーの設置位置Bまでの距離をL2とし、前記第2アームの重心Jから前記設置位置Bまでの距離をL3としたときに、
前記設置位置Bは、L2>0.5L1かつL3<0.2L1を満たし、
前記角速度センサーより得られた角速度に基づいて前記第1駆動源および/または前記第2駆動源を駆動し、前記第2アームを制振することを特徴とする水平多関節ロボット。
【請求項2】
前記角速度センサーは、前記第2アームを構成する底部基材の前記第2駆動源が取り付けられた面とは反対側の面に設置されることを特徴とする請求項1に記載の水平多関節ロボット。
【請求項3】
前記角速度センサーは、前記第2アームを構成する底部基材に形成された凹部に設置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水平多関節ロボット。
【請求項4】
前記角速度センサーは、前記第2アームを構成する底部基材に形成された貫通孔の内部に設置されることを特徴とする請求項1に記載の水平多関節ロボット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−111665(P2013−111665A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257164(P2011−257164)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】