水性ゲル薬剤揮散体組成物
【課題】アルカリ剤および無機質高分子を配合することなくゲル化が可能で、多量の揮散性薬剤を含有させることができ、かつ薬剤の揮散安定性および持続性に優れた水性ゲル薬剤揮散体組成物を得ること。
【解決手段】本発明の水性ゲル薬剤揮散体組成物は、（Ａ）油性成分にアニオン性ポリマーが分散されたアニオン性油中分散型ポリマー組成物、（Ｂ）揮散性薬剤、（Ｃ）水、および、必要に応じ（Ｄ）溶剤類、色素類、防腐剤、塩類、紫外線吸収剤、界面活性剤類、無機質高分子、酸化防止剤、ゲル化剤、増粘剤、天然消臭剤、合成消臭剤、安定化剤などのその他の成分を含有することを特徴とする。成分（Ｂ）の揮散性薬剤としては、香料、消臭剤、防虫剤、殺虫剤、除菌剤、忌避剤などが挙げられる。
【解決手段】本発明の水性ゲル薬剤揮散体組成物は、（Ａ）油性成分にアニオン性ポリマーが分散されたアニオン性油中分散型ポリマー組成物、（Ｂ）揮散性薬剤、（Ｃ）水、および、必要に応じ（Ｄ）溶剤類、色素類、防腐剤、塩類、紫外線吸収剤、界面活性剤類、無機質高分子、酸化防止剤、ゲル化剤、増粘剤、天然消臭剤、合成消臭剤、安定化剤などのその他の成分を含有することを特徴とする。成分（Ｂ）の揮散性薬剤としては、香料、消臭剤、防虫剤、殺虫剤、除菌剤、忌避剤などが挙げられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、水性ゲル組成物、更に具体的には、香料、消臭剤、防虫剤、殺虫剤、除菌剤、忌避剤などの各種揮散性薬剤を大気中に徐々に揮散させることのできる水性ゲル薬剤揮散体組成物に関する。
【背景技術】
【０００２】
近年、生活環境を快適な状態とするため、生活空間に芳香剤や消臭剤を用いることが広く行われている。このような芳香、消臭剤には、大別するとエアゾールタイプ、リキッドタイプ、ソリッドタイプがあり、その中でもソリッドタイプは、室内や自動車の車内等に置くことにより長期間芳香、消臭を行うことが可能なことから、広く利用されている。ソリッドタイプの芳香消臭剤は固形タイプと水性ゲルタイプが知られているが、水性ゲルタイプの芳香消臭剤は、前記エアゾールタイプ、水性あるいは溶剤型のリキッドタイプや固形型のものに比べ一般に安価に製造でき、揮散性薬剤の揮散後の明確な収縮終点を持たせることが可能である。芳香、消臭剤以外にも、揮散性薬剤として防虫剤、殺虫剤、除菌剤、忌避剤などを用いる場合にも、芳香消臭剤と同様、安価で、長期にわたりその目的を達成することができ、揮散性薬剤の揮散後の明確な収縮終点を持たせることが可能である。
【０００３】
薬剤揮散水ゲルを作製する際のゲル化剤として、従来、カラギーナン、ジェランガム、ゼラチン、寒天（例えば、特許文献１〜７参照）や、アクリル系ポリマー（例えば、特許文献８参照）などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開昭５４−１３５２２９号公報
【特許文献２】特開昭６０−１３５０５８号公報
【特許文献３】特開昭６２−４１６６１号公報
【特許文献４】特開昭６４−４０５４２号公報
【特許文献５】特開昭６４−７４２３９号公報
【特許文献６】特開平２−１４４０６７号公報
【特許文献７】特開２０００−３００６５４号公報
【特許文献８】特開２００５−８７２８６号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかしながら、従来提案されているカラギーナン、ジェランガム、ゼラチン、寒天を使用した水性ゲル薬剤揮散体組成物は、ゲル化剤または香料などの成分を溶解させるため、製造工程中に加熱することが必須となっている。この加熱工程において、香料成分中の低沸点部の香料化合物が揮散することから、得られた水性ゲル組成物からは、元の香料成分とは異なった香料バランスで香料が揮散することとなり、香調に好ましくない違和感が生じるという問題点があった。
【０００６】
一方、アクリル系ポリマーを使用した水ゲル薬剤揮散体（例えば上記特許文献８）は、ゲル化のためにゼオライト、スクメタイト型粘土鉱物、タルク、カオリン、シリカゲルなどの無機質高分子を併用することが必要とされ、これを用いない場合にはゲル化が起こらないという問題がある。また、ゲル化を促進するためにトリエタノールアミンなどのアルカリ剤を用いることが必要とされ、製造工程中での異臭、安全性、ｐＨコントロールなどの作業性に問題があった。さらにアルカリ剤の配合により、香料成分が劣化するという問題もある。
【０００７】
従って、本発明の目的は、常温での加工処理に適し、製造工程上安全で、簡易に作業が行なえ、揮散性薬剤の含有量が大きく、薬剤揮散安定性および持続性に優れた水性ゲル薬剤揮散体組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
本発明者らは上記のごとき課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、今回、油性成分にアニオン性ポリマーが分散されたアニオン性油中分散型ポリマー組成物を使用することにより、香料などの薬剤を常温で分散加工処理することができ、アルカリ剤および無機質高分子を配合することなくゲル化が可能で、多量の揮散性薬剤を含有させることができ、かつ薬剤の揮散安定性および持続性に優れた水性ゲル薬剤揮散体組成物が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。
【０００９】
すなわち、本発明は、以下の（１）〜（５）の水性ゲル薬剤揮散体組成物に関する。
【００１０】
（１）（Ａ）油性成分にアニオン性ポリマーが分散されたアニオン性油中分散型ポリマー組成物、（Ｂ）揮散性薬剤および（Ｃ）水を含有することを特徴とする水性ゲル薬剤揮散体組成物。
【００１１】
（２）上記（１）記載の水性ゲル薬剤揮散体組成物において、組成物全量を基準として、アニオン性油中分散型ポリマー組成物（Ａ）を０．１〜２０．０重量％、揮散性薬剤（Ｂ）を０．１〜７０．０重量％、水（Ｃ）を０．１〜９８．０重量％の範囲で含有することを特徴とする水性ゲル薬剤揮散体組成物。
【００１２】
（３）上記（１）又は（２）に記載の水性ゲル薬剤揮散体組成物において、更に、溶剤類、色素類、防腐剤、塩類、紫外線吸収剤、界面活性剤類、無機質高分子、酸化防止剤、ゲル化剤、増粘剤、天然消臭剤、合成消臭剤、および安定化剤から選ばれる少なくとも１種以上の物質を含有することを特徴とする水性ゲル薬剤揮散体組成物。
【００１３】
（４）上記（１）〜（３）のいずれかに記載の水性ゲル薬剤揮散体組成物において、アニオン性油中分散型ポリマー組成物（Ａ）におけるポリマー成分がアクリレーツコポリマーナトリウムであり、油性成分が、パラフィン、流動パラフィン、イソパラフィン、水素化ポリデセンなどの炭化水素類から選ばれた少なくとも１種、および／または、エステル油類から選ばれた少なくとも１種からなることを特徴とする水性ゲル薬剤揮散体組成物。
【００１４】
（５）上記（１）〜（４）のいずれかに記載の水性ゲル薬剤揮散体組成物において、上記揮散性薬剤（Ｂ）が、香料、消臭剤、防虫剤、殺虫剤、除菌剤、および忌避剤から選ばれる少なくとも１種であることを特徴とする水性ゲル薬剤揮散体組成物。
【発明の効果】
【００１５】
本発明によれば、アニオン性油中分散型ポリマーを使用することにより、常温でかつアルカリ剤および無機質高分子を使用することなく、揮散性薬剤を含有する水性ゲル組成物（水性ゲル薬剤揮散体組成物）を製造することができる。このため、水性ゲル組成物を製造する際に加熱により揮散性薬剤中の低沸点物質が揮散することがないことから、得られた芳香水性ゲル組成物から揮散される香料は、原料として用いた香料の香料成分と同じであり、香料を加熱状態で分散させることにより得られた芳香水性ゲル組成物において感じられる香調の違和感の問題がない。さらに、ゲル化の際にアルカリ剤および無機質高分子を使用する必要がないため、安価に製造することが可能であるし、製造工程中での異臭、安全性、ｐＨコントロールなどの作業性の問題や、アルカリ剤の配合による香料成分の劣化の問題もない。
【００１６】
さらに、本発明の水性ゲル薬剤揮散体組成物は、薬剤揮散安定性および持続性に優れ、また揮散性薬剤の配合割合を従来の水性ゲル組成物に比べ大きくすることが可能であることから、従来のものに比べより長期間薬剤を揮散することが可能となり、これにより、より長期間の使用が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１７】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の水性ゲル薬剤揮散体組成物は、（Ａ）油性成分にアニオン性ポリマーが分散されたアニオン性油中分散型ポリマー組成物、（Ｂ）揮散性薬剤および（Ｃ）水、さらに必要に応じ（Ｄ）その他の成分からなる。
【００１８】
本発明で用いられる前記油中分散型のアニオン性ポリマーは、親水性アニオン性ポリマー、即ち水には溶けないが膨潤するポリマーであり、アニオン性モノマーである１つまたはそれ以上のモノエチレン不飽和モノマーと非イオン性モノマーから構成されるものである。
【００１９】
アニオン性モノマーとしては、例えば、アクリル酸及び／又はメタクリル酸およびそのアルカリ金属塩等が例示され、好ましくは、カルボン酸基は少なくとも５０％、さらに好ましくは少なくとも６５％がアルカリ金属塩となったものが好ましく、特にナトリウム塩であることがより好ましい。
【００２０】
アニオン性モノマーと共重合される非イオン性モノマーとしては、例えば、アクリル酸またはメタクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。アクリル酸あるいはメタクリル酸との共重合体である場合には、アクリル酸またはメタクリル酸アルキルエステルが好ましいものであり、より好ましくはアルキル基の炭素数が１〜４のアルキル基であるアクリル酸またはメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。また、メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジアクリレート（メタクリレート）、ジアクリルアミド（メタクリルアミド）、ビニルオキシエチレンアクリレートまたはメタクリレートなどの架橋性モノマーが少量用いられてもよい。
【００２１】
本発明で用いられるアニオン性ポリマーは、例えば、油中水滴型の重合経路を利用して重合するなど、従来公知の方法により製造することができる。また、水中油滴型の重合経路を経由した場合には、油中分散型ポリマーを形成するために、必要に応じ逆相エマルジョン手順により油中水滴型とすればよい。形成されたポリマー粒子は、一般的には微小な球形のマイクロ粒子であり、典型的には０．１〜２μｍの範囲の粒径を有し、０．５〜１．０μｍの平均粒径を有する。油中分散型ポリマーは、上記ポリマー粒子を、油性成分に分散させたものである。このような油性成分に分散されたポリマー粒子とするためには、合成の際に重合体組成物中に含まれる水を除去してやればよい。
【００２２】
本発明において用いられるアニオン性ポリマーとしては、アクリル酸アルキル（Ｃ１−Ｃ４）、メタクリル酸アルキル（Ｃ１−Ｃ４）、アクリル酸又はメタクリル酸のうち２種類以上のモノマーで構成される共重合体のナトリウム塩であるアクリレーツコポリマーナトリウムが好ましい。
【００２３】
油性成分は、シリコンポリマー、ミネラルオイル、パラフィン、流動パラフィン、イソパラフィン、水素化ポリデセン、イソヘキサデカンなどの炭化水素類、トリメチロイルプロパントリカプリレート／トリカプリレート、炭素原子数１２ないし１５のアルキルベンゾエート、エチルヘキシルステアレート、カプリルカプリントリグリセリド、スクアラン、エチルヘキシルココエート、デシルオレエート、デシルココエート、エチルオレエート、イソプロピルミリステート、エチルヘキシルパーラゴネート（ｅｔｈｙｌｈｅｘｙｌ ｐｅｒｌａｇｏｎａｔｅ）、ペンタエリトリチル、テトラカプリレート／テトラカプレート、ＰＰＧ−３ベンジルエーテルミリステート、プロピレングリコールジカプリレート／ジカプレート、エチルヘキシルイソステアレート、エチルヘキシルパルミテートのようなエステル、および大豆油、ヒマワリ油、ホホバ油、ベニバナ油、アカハナ油およびナタネ油のような天然油さらにはこれらの誘導体から適宜選択することができる。油性成分は、これらが単独で用いられてもよいし、２種以上の混合物として用いられてもよい。油性成分は、ミネラルオイル、パラフィン、流動パラフィン、イソパラフィン、および水素化ポリデセンなどの炭化水素類、および、天然油をも含むエステル油類から選ばれることが好ましい。
【００２４】
また、アニオン性油中分散型ポリマー組成物には、前記ポリマー粒子の製造の際に用いられる界面活性剤が含まれるが、その他に、ポリマー粒子を油性成分に分散させ、増粘したエマルジョンを形成するために用いられる界面活性剤も含まれる。増粘エマルジョン形成のために用いられる界面活性剤は、一般的には、前記アニオン性油中分散型ポリマーの１．０〜１０．０重量％の量で用いられ、好ましくは２．０〜８．０重量％で用いられる。この界面活性剤としては、通常、７を超えるＨＬＢを有する非イオン性の水中油型乳化剤が好ましいものであり、例えばエトキシ化アルコールが好ましいものとして挙げられ、ＰＰＧ１−トリデセス６が特に好ましい。また、水中油滴型重合組成物を逆相エマルジョン手順により油中水滴型にするために用いられる乳化剤、例えば、モノオレイン酸ソルビタンなどのソルビタンエステルおよびＩＣＩのＴｗｅｅｎ８１などのエトキシル化ソルビタンエステルなども含まれる場合がある。
【００２５】
アニオン性油中分散型ポリマー組成物は、一般的には、（ａ）３５〜６５重量％のポリマー、（ｂ）２０〜５０重量％の油性成分、（ｃ）５〜２５重量％の界面活性剤または界面活性剤混合物を含み、また、必要に応じて、水等の無機化合物、有機酸およびその塩等が含まれていてもよい。
【００２６】
本発明のアニオン性油中分散型ポリマー組成物は、ポリマー粒子、油性成分、界面活性剤等を上記範囲になるように適宜混合することで得られるが、市販品を用いることもできる。
【００２７】
市販のアニオン性油中分散型ポリマー組成物としては、チバスペシャリティケミカル社（Ｃｉｂａ Ｓｐｅｃｉａｌｔｙ Ｃｈｅｍｉｃａｌｓ）から入手可能な、サルケア（Ｓａｌｃｅｒｅ）およびチノビス（Ｔｉｎｏｖｉｓ）系列が挙げられる（ＳａｌｃｅｒｅおよびＴｉｎｏｖｉｓは登録商標）。
【００２８】
好ましい市販のアニオン性油中分散型ポリマー組成物としては、以下のものが挙げられる。
【００２９】
サルケア（Ｓａｌｃｅｒｅ）ＳＣ９１（商品名；チバスペシャリティケミカル社製）
・アクリレーツコポリマーＮａ（ＣＡＳＮｏ．９０３３−７９−８） ５０重量％
・流動パラフィン ２７重量％
・ＰＰＧ−１ トリデセス−６ ８重量％
・その他の成分 １５重量％
【００３０】
チノビス（ＴＩＮＯＶＩＳ）ＡＤＭ（商品名；チバスペシャリティケミカル社製）
・アクリレーツコポリマーＮａ（ＣＡＳＮｏ．９０３３−７９−８） ５４重量％
・ミネラルオイル ３４重量％
・ＰＰＧ−１ トリデセス−６ ６重量％
・トリオレイン酸ソルビタン ４重量％
・水 ２重量％
・ベンテト酸５Ｎａ ０．１％未満
【００３１】
チノビス（ＴＩＮＯＶＩＳ）ＡＤＥ（商品名；チバスペシャリティケミカル社製）
・アクリレーツコポリマーＮａ（ＣＡＳＮｏ．９０３３−７９−８） ５４重量％
・水添ポリデセン ３４重量％
・ＰＰＧ−１ トリデセス−６ ６重量％
・トリオレイン酸ソルビタン ４重量％
・水 ２重量％
・ベンテト酸５Ｎａ ０．１％未満
【００３２】
本発明の（Ａ）アニオン性油中分散型ポリマー組成物の使用量は、所望するゲルの状態、使用する揮散性薬剤の種類等により異なり一概には言えないが、通常、水性ゲル薬剤揮散体組成物の全量を基準として０．１〜２０．０重量％の範囲内である。
【００３３】
本発明の（Ｂ）成分である揮散性薬剤としては、水性ゲル薬剤揮散体組成物の用途に基づいて選択され、アニス油、ベルガモット油、シトロネラ油、レモン油、ユーカリ油、ゼラニウム油、ラベンダー油、バラ油、ジャスミン油、ライラック油、オレンジ油、ネロリ油、ローズマリー油などの天然香料、合成香料およびそれらの２種以上の調合香料のほか、揮散性を有する各種の消臭剤、防虫剤、殺虫剤、除菌剤、忌避剤などの１種または２種以上の添加成分を挙げることができる。その使用量は特に制限されるものではなく、使用する揮散性薬剤の種類により異なるが、通常、水性ゲル薬剤揮散体組成物の全量を基準として０．１重量％以上、好ましくは１．０重量％以上である。１．０重量％より少ない量では薬剤の効果が十分に発揮できない場合がある。
【００３４】
本発明の（Ｃ）成分である水としては、脱イオン水、蒸留水、イオン交換水等の精製水を用いるのが好ましい。水は基本的には残部であるが、水の使用量は、水性ゲル薬剤揮散体組成物の総量を基準として、通常、０．１〜９９．０重量％を例示することができる。
【００３５】
本発明の水性ゲル薬剤揮散体組成物には、上記した（Ａ）〜（Ｃ）成分のほかに、水ゲル薬剤揮散体に通常使用されている成分を配合することができる。そのような成分としては、例えば、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、ポリオール類、置換アルコール類、炭化水素類、エステル類、シリコン類などの溶剤類；水溶性染料、蛍光染料、天然色素、無機顔料などの色素類；メチルパラベン等のパラベン類、安息香酸塩類などの防腐剤；塩化カルシウム、乳酸カルシウム、塩化カリウムなどの塩類；紫外線吸収剤；ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤などの界面活性剤類；シリカ、珪酸カルシウム、ゼオライト、スクメタイト型粘度鉱物、タルク、カオリン、バーミキュライト等の無機質高分子；酸化防止剤；ポリアクリル系ポリマー等のゲル化剤、増粘剤；カラギーナン等の天然由来のゲル化剤、増粘剤；天然消臭剤；合成消臭剤；安定化剤など美観や安定性、機能性の向上を図る添加剤などを挙げることができる。
【００３６】
本発明の水性ゲル薬剤揮散体組成物は、例えば、次のような容易な操作によって製造することができる。即ち、常温で水（Ｃ）に揮散性薬剤（Ｂ）並びにその他の成分（Ｄ）を配合、分散し、その後アニオン性油中分散型ポリマー組成物（Ａ）を添加・分散することにより所望の水ゲル揮散体組成物が調製される。
【実施例】
【００３７】
以下に、本発明を実施例および比較例により具体例に説明する。しかし、本発明は下記実施例、比較例の例示により何等限定されるものではない。
【００３８】
［実施例１］
脱イオン水７７．５ｇに香料（高砂香料工業社製のピーチ系調合香料）２０．０ｇを配合し、攪拌しながら、さらにチノビス（ＴＩＮＯＶＩＳ）ＡＤＭ（チバ・スペシャリティー社製）２．５ｇを常温で配合し、均一に分散調整することで実施例１の水性ゲル薬剤揮散体組成物を得た。
【００３９】
［実施例２］
脱イオン水７７．５ｇに香料（高砂香料工業社製のピーチ調合香料）２０．０ｇを配合し、攪拌しながら、さらにチノビス（ＴＩＮＯＶＩＳ）ＡＤＥ（チバ・スペシャリティー社製）２．５ｇを常温で配合し、均一に分散調整することで実施例２の水性ゲル薬剤揮散体組成物を得た。
【００４０】
［比較例１］
脱イオン水７５．２ｇに香料（高砂香料工業社製のピーチ調合香料）２０．０ｇを配合し、攪拌しながらさらにサルケア（ＳＡＬＣＡＲＥ）ＳＣ−８０（メタクリル酸、アクリル酸エチルおよびポリエチレングリコール（１０ＥＯ）ステアリルアルコールエーテルの架橋ターポリマーの商品名：チバ・スペシャリティー社製）２．５ｇを常温で溶解し、均一な分散液を調整した。
【００４１】
［比較例２］
脱イオン水７５．２ｇに香料（高砂香料工業社製のピーチ調合香料）２０．０ｇを配合し、攪拌しながらさらにアキュソール（Ａｃｕｓｏｌ）８２０（メタクリル酸、アクリル酸エチルおよびポリエチレングリコール（１０ＥＯ）ステアリルメタクリレートの架橋ターポリマーの商品名；ローム・アンド・ハース社製）２．５ｇを常温で溶解し、均一な分散液を調整した。
【００４２】
［比較例３］
脱イオン水７５．２ｇに香料（高砂香料工業社製のピーチ系調合香料）２０．０ｇを配合、撹拌しながらサルケア（ＳＡＬＣＡＲＥ）ＳＣ−８０の２．５ｇを常温で溶解した。その後、トリエタノールアミン０．３ｇを配合し、分散液のｐＨ調整を行い、水性ゲル薬剤揮散体組成物を調整した。
【００４３】
［比較例４］
脱イオン水７５．２ｇに香料（高砂香料工業社製のピーチ系調合香料）２０．０ｇを配合、撹拌しながらアキュソール（Ａｃｕｓｏｌ）の２．５ｇを常温で溶解した。その後、トリエタノールアミン０．３ｇを配合し、分散液のｐＨ調整を行い、水性ゲル薬剤揮散体組成物を調整した。
【００４４】
下記表１に、実施例１、２および比較例１〜４の水性ゲル薬剤揮散体組成物の配合処方をまとめて示す（単位は重量％）。
【００４５】
【表１】
【００４６】
〔外観評価試験〕
実施例１、２、比較例１〜４で得られた組成物の外観を目視により観察した。結果を表２にしめす。
【００４７】
【表２】
【００４８】
試験による評価結果を示す記号は下記の基準に従った。
○：全体が均一で好ましいゲル状体を示す。
△：ゲルから若干の離液している状態を示す。
×：ゲルが液状もしくは激しい分離（離液）している状態を示す。
【００４９】
表２に示されるように、実施例１および２の水性ゲル薬剤揮散体組成物は良好なゲルを形成したのに対し、比較例１〜４の水性ゲル薬剤揮散体組成物は、ゲルを形成しないか、一部ゲルの形成は見られるものの離水などがみられ、薬剤揮散体ゲルとしての利用はできないものであった。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、水性ゲル組成物、更に具体的には、香料、消臭剤、防虫剤、殺虫剤、除菌剤、忌避剤などの各種揮散性薬剤を大気中に徐々に揮散させることのできる水性ゲル薬剤揮散体組成物に関する。
【背景技術】
【０００２】
近年、生活環境を快適な状態とするため、生活空間に芳香剤や消臭剤を用いることが広く行われている。このような芳香、消臭剤には、大別するとエアゾールタイプ、リキッドタイプ、ソリッドタイプがあり、その中でもソリッドタイプは、室内や自動車の車内等に置くことにより長期間芳香、消臭を行うことが可能なことから、広く利用されている。ソリッドタイプの芳香消臭剤は固形タイプと水性ゲルタイプが知られているが、水性ゲルタイプの芳香消臭剤は、前記エアゾールタイプ、水性あるいは溶剤型のリキッドタイプや固形型のものに比べ一般に安価に製造でき、揮散性薬剤の揮散後の明確な収縮終点を持たせることが可能である。芳香、消臭剤以外にも、揮散性薬剤として防虫剤、殺虫剤、除菌剤、忌避剤などを用いる場合にも、芳香消臭剤と同様、安価で、長期にわたりその目的を達成することができ、揮散性薬剤の揮散後の明確な収縮終点を持たせることが可能である。
【０００３】
薬剤揮散水ゲルを作製する際のゲル化剤として、従来、カラギーナン、ジェランガム、ゼラチン、寒天（例えば、特許文献１〜７参照）や、アクリル系ポリマー（例えば、特許文献８参照）などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開昭５４−１３５２２９号公報
【特許文献２】特開昭６０−１３５０５８号公報
【特許文献３】特開昭６２−４１６６１号公報
【特許文献４】特開昭６４−４０５４２号公報
【特許文献５】特開昭６４−７４２３９号公報
【特許文献６】特開平２−１４４０６７号公報
【特許文献７】特開２０００−３００６５４号公報
【特許文献８】特開２００５−８７２８６号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかしながら、従来提案されているカラギーナン、ジェランガム、ゼラチン、寒天を使用した水性ゲル薬剤揮散体組成物は、ゲル化剤または香料などの成分を溶解させるため、製造工程中に加熱することが必須となっている。この加熱工程において、香料成分中の低沸点部の香料化合物が揮散することから、得られた水性ゲル組成物からは、元の香料成分とは異なった香料バランスで香料が揮散することとなり、香調に好ましくない違和感が生じるという問題点があった。
【０００６】
一方、アクリル系ポリマーを使用した水ゲル薬剤揮散体（例えば上記特許文献８）は、ゲル化のためにゼオライト、スクメタイト型粘土鉱物、タルク、カオリン、シリカゲルなどの無機質高分子を併用することが必要とされ、これを用いない場合にはゲル化が起こらないという問題がある。また、ゲル化を促進するためにトリエタノールアミンなどのアルカリ剤を用いることが必要とされ、製造工程中での異臭、安全性、ｐＨコントロールなどの作業性に問題があった。さらにアルカリ剤の配合により、香料成分が劣化するという問題もある。
【０００７】
従って、本発明の目的は、常温での加工処理に適し、製造工程上安全で、簡易に作業が行なえ、揮散性薬剤の含有量が大きく、薬剤揮散安定性および持続性に優れた水性ゲル薬剤揮散体組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
本発明者らは上記のごとき課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、今回、油性成分にアニオン性ポリマーが分散されたアニオン性油中分散型ポリマー組成物を使用することにより、香料などの薬剤を常温で分散加工処理することができ、アルカリ剤および無機質高分子を配合することなくゲル化が可能で、多量の揮散性薬剤を含有させることができ、かつ薬剤の揮散安定性および持続性に優れた水性ゲル薬剤揮散体組成物が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。
【０００９】
すなわち、本発明は、以下の（１）〜（５）の水性ゲル薬剤揮散体組成物に関する。
【００１０】
（１）（Ａ）油性成分にアニオン性ポリマーが分散されたアニオン性油中分散型ポリマー組成物、（Ｂ）揮散性薬剤および（Ｃ）水を含有することを特徴とする水性ゲル薬剤揮散体組成物。
【００１１】
（２）上記（１）記載の水性ゲル薬剤揮散体組成物において、組成物全量を基準として、アニオン性油中分散型ポリマー組成物（Ａ）を０．１〜２０．０重量％、揮散性薬剤（Ｂ）を０．１〜７０．０重量％、水（Ｃ）を０．１〜９８．０重量％の範囲で含有することを特徴とする水性ゲル薬剤揮散体組成物。
【００１２】
（３）上記（１）又は（２）に記載の水性ゲル薬剤揮散体組成物において、更に、溶剤類、色素類、防腐剤、塩類、紫外線吸収剤、界面活性剤類、無機質高分子、酸化防止剤、ゲル化剤、増粘剤、天然消臭剤、合成消臭剤、および安定化剤から選ばれる少なくとも１種以上の物質を含有することを特徴とする水性ゲル薬剤揮散体組成物。
【００１３】
（４）上記（１）〜（３）のいずれかに記載の水性ゲル薬剤揮散体組成物において、アニオン性油中分散型ポリマー組成物（Ａ）におけるポリマー成分がアクリレーツコポリマーナトリウムであり、油性成分が、パラフィン、流動パラフィン、イソパラフィン、水素化ポリデセンなどの炭化水素類から選ばれた少なくとも１種、および／または、エステル油類から選ばれた少なくとも１種からなることを特徴とする水性ゲル薬剤揮散体組成物。
【００１４】
（５）上記（１）〜（４）のいずれかに記載の水性ゲル薬剤揮散体組成物において、上記揮散性薬剤（Ｂ）が、香料、消臭剤、防虫剤、殺虫剤、除菌剤、および忌避剤から選ばれる少なくとも１種であることを特徴とする水性ゲル薬剤揮散体組成物。
【発明の効果】
【００１５】
本発明によれば、アニオン性油中分散型ポリマーを使用することにより、常温でかつアルカリ剤および無機質高分子を使用することなく、揮散性薬剤を含有する水性ゲル組成物（水性ゲル薬剤揮散体組成物）を製造することができる。このため、水性ゲル組成物を製造する際に加熱により揮散性薬剤中の低沸点物質が揮散することがないことから、得られた芳香水性ゲル組成物から揮散される香料は、原料として用いた香料の香料成分と同じであり、香料を加熱状態で分散させることにより得られた芳香水性ゲル組成物において感じられる香調の違和感の問題がない。さらに、ゲル化の際にアルカリ剤および無機質高分子を使用する必要がないため、安価に製造することが可能であるし、製造工程中での異臭、安全性、ｐＨコントロールなどの作業性の問題や、アルカリ剤の配合による香料成分の劣化の問題もない。
【００１６】
さらに、本発明の水性ゲル薬剤揮散体組成物は、薬剤揮散安定性および持続性に優れ、また揮散性薬剤の配合割合を従来の水性ゲル組成物に比べ大きくすることが可能であることから、従来のものに比べより長期間薬剤を揮散することが可能となり、これにより、より長期間の使用が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１７】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の水性ゲル薬剤揮散体組成物は、（Ａ）油性成分にアニオン性ポリマーが分散されたアニオン性油中分散型ポリマー組成物、（Ｂ）揮散性薬剤および（Ｃ）水、さらに必要に応じ（Ｄ）その他の成分からなる。
【００１８】
本発明で用いられる前記油中分散型のアニオン性ポリマーは、親水性アニオン性ポリマー、即ち水には溶けないが膨潤するポリマーであり、アニオン性モノマーである１つまたはそれ以上のモノエチレン不飽和モノマーと非イオン性モノマーから構成されるものである。
【００１９】
アニオン性モノマーとしては、例えば、アクリル酸及び／又はメタクリル酸およびそのアルカリ金属塩等が例示され、好ましくは、カルボン酸基は少なくとも５０％、さらに好ましくは少なくとも６５％がアルカリ金属塩となったものが好ましく、特にナトリウム塩であることがより好ましい。
【００２０】
アニオン性モノマーと共重合される非イオン性モノマーとしては、例えば、アクリル酸またはメタクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。アクリル酸あるいはメタクリル酸との共重合体である場合には、アクリル酸またはメタクリル酸アルキルエステルが好ましいものであり、より好ましくはアルキル基の炭素数が１〜４のアルキル基であるアクリル酸またはメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。また、メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジアクリレート（メタクリレート）、ジアクリルアミド（メタクリルアミド）、ビニルオキシエチレンアクリレートまたはメタクリレートなどの架橋性モノマーが少量用いられてもよい。
【００２１】
本発明で用いられるアニオン性ポリマーは、例えば、油中水滴型の重合経路を利用して重合するなど、従来公知の方法により製造することができる。また、水中油滴型の重合経路を経由した場合には、油中分散型ポリマーを形成するために、必要に応じ逆相エマルジョン手順により油中水滴型とすればよい。形成されたポリマー粒子は、一般的には微小な球形のマイクロ粒子であり、典型的には０．１〜２μｍの範囲の粒径を有し、０．５〜１．０μｍの平均粒径を有する。油中分散型ポリマーは、上記ポリマー粒子を、油性成分に分散させたものである。このような油性成分に分散されたポリマー粒子とするためには、合成の際に重合体組成物中に含まれる水を除去してやればよい。
【００２２】
本発明において用いられるアニオン性ポリマーとしては、アクリル酸アルキル（Ｃ１−Ｃ４）、メタクリル酸アルキル（Ｃ１−Ｃ４）、アクリル酸又はメタクリル酸のうち２種類以上のモノマーで構成される共重合体のナトリウム塩であるアクリレーツコポリマーナトリウムが好ましい。
【００２３】
油性成分は、シリコンポリマー、ミネラルオイル、パラフィン、流動パラフィン、イソパラフィン、水素化ポリデセン、イソヘキサデカンなどの炭化水素類、トリメチロイルプロパントリカプリレート／トリカプリレート、炭素原子数１２ないし１５のアルキルベンゾエート、エチルヘキシルステアレート、カプリルカプリントリグリセリド、スクアラン、エチルヘキシルココエート、デシルオレエート、デシルココエート、エチルオレエート、イソプロピルミリステート、エチルヘキシルパーラゴネート（ｅｔｈｙｌｈｅｘｙｌ ｐｅｒｌａｇｏｎａｔｅ）、ペンタエリトリチル、テトラカプリレート／テトラカプレート、ＰＰＧ−３ベンジルエーテルミリステート、プロピレングリコールジカプリレート／ジカプレート、エチルヘキシルイソステアレート、エチルヘキシルパルミテートのようなエステル、および大豆油、ヒマワリ油、ホホバ油、ベニバナ油、アカハナ油およびナタネ油のような天然油さらにはこれらの誘導体から適宜選択することができる。油性成分は、これらが単独で用いられてもよいし、２種以上の混合物として用いられてもよい。油性成分は、ミネラルオイル、パラフィン、流動パラフィン、イソパラフィン、および水素化ポリデセンなどの炭化水素類、および、天然油をも含むエステル油類から選ばれることが好ましい。
【００２４】
また、アニオン性油中分散型ポリマー組成物には、前記ポリマー粒子の製造の際に用いられる界面活性剤が含まれるが、その他に、ポリマー粒子を油性成分に分散させ、増粘したエマルジョンを形成するために用いられる界面活性剤も含まれる。増粘エマルジョン形成のために用いられる界面活性剤は、一般的には、前記アニオン性油中分散型ポリマーの１．０〜１０．０重量％の量で用いられ、好ましくは２．０〜８．０重量％で用いられる。この界面活性剤としては、通常、７を超えるＨＬＢを有する非イオン性の水中油型乳化剤が好ましいものであり、例えばエトキシ化アルコールが好ましいものとして挙げられ、ＰＰＧ１−トリデセス６が特に好ましい。また、水中油滴型重合組成物を逆相エマルジョン手順により油中水滴型にするために用いられる乳化剤、例えば、モノオレイン酸ソルビタンなどのソルビタンエステルおよびＩＣＩのＴｗｅｅｎ８１などのエトキシル化ソルビタンエステルなども含まれる場合がある。
【００２５】
アニオン性油中分散型ポリマー組成物は、一般的には、（ａ）３５〜６５重量％のポリマー、（ｂ）２０〜５０重量％の油性成分、（ｃ）５〜２５重量％の界面活性剤または界面活性剤混合物を含み、また、必要に応じて、水等の無機化合物、有機酸およびその塩等が含まれていてもよい。
【００２６】
本発明のアニオン性油中分散型ポリマー組成物は、ポリマー粒子、油性成分、界面活性剤等を上記範囲になるように適宜混合することで得られるが、市販品を用いることもできる。
【００２７】
市販のアニオン性油中分散型ポリマー組成物としては、チバスペシャリティケミカル社（Ｃｉｂａ Ｓｐｅｃｉａｌｔｙ Ｃｈｅｍｉｃａｌｓ）から入手可能な、サルケア（Ｓａｌｃｅｒｅ）およびチノビス（Ｔｉｎｏｖｉｓ）系列が挙げられる（ＳａｌｃｅｒｅおよびＴｉｎｏｖｉｓは登録商標）。
【００２８】
好ましい市販のアニオン性油中分散型ポリマー組成物としては、以下のものが挙げられる。
【００２９】
サルケア（Ｓａｌｃｅｒｅ）ＳＣ９１（商品名；チバスペシャリティケミカル社製）
・アクリレーツコポリマーＮａ（ＣＡＳＮｏ．９０３３−７９−８） ５０重量％
・流動パラフィン ２７重量％
・ＰＰＧ−１ トリデセス−６ ８重量％
・その他の成分 １５重量％
【００３０】
チノビス（ＴＩＮＯＶＩＳ）ＡＤＭ（商品名；チバスペシャリティケミカル社製）
・アクリレーツコポリマーＮａ（ＣＡＳＮｏ．９０３３−７９−８） ５４重量％
・ミネラルオイル ３４重量％
・ＰＰＧ−１ トリデセス−６ ６重量％
・トリオレイン酸ソルビタン ４重量％
・水 ２重量％
・ベンテト酸５Ｎａ ０．１％未満
【００３１】
チノビス（ＴＩＮＯＶＩＳ）ＡＤＥ（商品名；チバスペシャリティケミカル社製）
・アクリレーツコポリマーＮａ（ＣＡＳＮｏ．９０３３−７９−８） ５４重量％
・水添ポリデセン ３４重量％
・ＰＰＧ−１ トリデセス−６ ６重量％
・トリオレイン酸ソルビタン ４重量％
・水 ２重量％
・ベンテト酸５Ｎａ ０．１％未満
【００３２】
本発明の（Ａ）アニオン性油中分散型ポリマー組成物の使用量は、所望するゲルの状態、使用する揮散性薬剤の種類等により異なり一概には言えないが、通常、水性ゲル薬剤揮散体組成物の全量を基準として０．１〜２０．０重量％の範囲内である。
【００３３】
本発明の（Ｂ）成分である揮散性薬剤としては、水性ゲル薬剤揮散体組成物の用途に基づいて選択され、アニス油、ベルガモット油、シトロネラ油、レモン油、ユーカリ油、ゼラニウム油、ラベンダー油、バラ油、ジャスミン油、ライラック油、オレンジ油、ネロリ油、ローズマリー油などの天然香料、合成香料およびそれらの２種以上の調合香料のほか、揮散性を有する各種の消臭剤、防虫剤、殺虫剤、除菌剤、忌避剤などの１種または２種以上の添加成分を挙げることができる。その使用量は特に制限されるものではなく、使用する揮散性薬剤の種類により異なるが、通常、水性ゲル薬剤揮散体組成物の全量を基準として０．１重量％以上、好ましくは１．０重量％以上である。１．０重量％より少ない量では薬剤の効果が十分に発揮できない場合がある。
【００３４】
本発明の（Ｃ）成分である水としては、脱イオン水、蒸留水、イオン交換水等の精製水を用いるのが好ましい。水は基本的には残部であるが、水の使用量は、水性ゲル薬剤揮散体組成物の総量を基準として、通常、０．１〜９９．０重量％を例示することができる。
【００３５】
本発明の水性ゲル薬剤揮散体組成物には、上記した（Ａ）〜（Ｃ）成分のほかに、水ゲル薬剤揮散体に通常使用されている成分を配合することができる。そのような成分としては、例えば、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、ポリオール類、置換アルコール類、炭化水素類、エステル類、シリコン類などの溶剤類；水溶性染料、蛍光染料、天然色素、無機顔料などの色素類；メチルパラベン等のパラベン類、安息香酸塩類などの防腐剤；塩化カルシウム、乳酸カルシウム、塩化カリウムなどの塩類；紫外線吸収剤；ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤などの界面活性剤類；シリカ、珪酸カルシウム、ゼオライト、スクメタイト型粘度鉱物、タルク、カオリン、バーミキュライト等の無機質高分子；酸化防止剤；ポリアクリル系ポリマー等のゲル化剤、増粘剤；カラギーナン等の天然由来のゲル化剤、増粘剤；天然消臭剤；合成消臭剤；安定化剤など美観や安定性、機能性の向上を図る添加剤などを挙げることができる。
【００３６】
本発明の水性ゲル薬剤揮散体組成物は、例えば、次のような容易な操作によって製造することができる。即ち、常温で水（Ｃ）に揮散性薬剤（Ｂ）並びにその他の成分（Ｄ）を配合、分散し、その後アニオン性油中分散型ポリマー組成物（Ａ）を添加・分散することにより所望の水ゲル揮散体組成物が調製される。
【実施例】
【００３７】
以下に、本発明を実施例および比較例により具体例に説明する。しかし、本発明は下記実施例、比較例の例示により何等限定されるものではない。
【００３８】
［実施例１］
脱イオン水７７．５ｇに香料（高砂香料工業社製のピーチ系調合香料）２０．０ｇを配合し、攪拌しながら、さらにチノビス（ＴＩＮＯＶＩＳ）ＡＤＭ（チバ・スペシャリティー社製）２．５ｇを常温で配合し、均一に分散調整することで実施例１の水性ゲル薬剤揮散体組成物を得た。
【００３９】
［実施例２］
脱イオン水７７．５ｇに香料（高砂香料工業社製のピーチ調合香料）２０．０ｇを配合し、攪拌しながら、さらにチノビス（ＴＩＮＯＶＩＳ）ＡＤＥ（チバ・スペシャリティー社製）２．５ｇを常温で配合し、均一に分散調整することで実施例２の水性ゲル薬剤揮散体組成物を得た。
【００４０】
［比較例１］
脱イオン水７５．２ｇに香料（高砂香料工業社製のピーチ調合香料）２０．０ｇを配合し、攪拌しながらさらにサルケア（ＳＡＬＣＡＲＥ）ＳＣ−８０（メタクリル酸、アクリル酸エチルおよびポリエチレングリコール（１０ＥＯ）ステアリルアルコールエーテルの架橋ターポリマーの商品名：チバ・スペシャリティー社製）２．５ｇを常温で溶解し、均一な分散液を調整した。
【００４１】
［比較例２］
脱イオン水７５．２ｇに香料（高砂香料工業社製のピーチ調合香料）２０．０ｇを配合し、攪拌しながらさらにアキュソール（Ａｃｕｓｏｌ）８２０（メタクリル酸、アクリル酸エチルおよびポリエチレングリコール（１０ＥＯ）ステアリルメタクリレートの架橋ターポリマーの商品名；ローム・アンド・ハース社製）２．５ｇを常温で溶解し、均一な分散液を調整した。
【００４２】
［比較例３］
脱イオン水７５．２ｇに香料（高砂香料工業社製のピーチ系調合香料）２０．０ｇを配合、撹拌しながらサルケア（ＳＡＬＣＡＲＥ）ＳＣ−８０の２．５ｇを常温で溶解した。その後、トリエタノールアミン０．３ｇを配合し、分散液のｐＨ調整を行い、水性ゲル薬剤揮散体組成物を調整した。
【００４３】
［比較例４］
脱イオン水７５．２ｇに香料（高砂香料工業社製のピーチ系調合香料）２０．０ｇを配合、撹拌しながらアキュソール（Ａｃｕｓｏｌ）の２．５ｇを常温で溶解した。その後、トリエタノールアミン０．３ｇを配合し、分散液のｐＨ調整を行い、水性ゲル薬剤揮散体組成物を調整した。
【００４４】
下記表１に、実施例１、２および比較例１〜４の水性ゲル薬剤揮散体組成物の配合処方をまとめて示す（単位は重量％）。
【００４５】
【表１】
【００４６】
〔外観評価試験〕
実施例１、２、比較例１〜４で得られた組成物の外観を目視により観察した。結果を表２にしめす。
【００４７】
【表２】
【００４８】
試験による評価結果を示す記号は下記の基準に従った。
○：全体が均一で好ましいゲル状体を示す。
△：ゲルから若干の離液している状態を示す。
×：ゲルが液状もしくは激しい分離（離液）している状態を示す。
【００４９】
表２に示されるように、実施例１および２の水性ゲル薬剤揮散体組成物は良好なゲルを形成したのに対し、比較例１〜４の水性ゲル薬剤揮散体組成物は、ゲルを形成しないか、一部ゲルの形成は見られるものの離水などがみられ、薬剤揮散体ゲルとしての利用はできないものであった。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
（Ａ）油性成分にアニオン性ポリマーが分散されたアニオン性油中分散型ポリマー組成物、（Ｂ）揮散性薬剤および（Ｃ）水を含有することを特徴とする水性ゲル薬剤揮散体組成物。
【請求項２】
請求項１記載の水性ゲル薬剤揮散体組成物において、組成物全量を基準として、アニオン性油中分散型ポリマー組成物（Ａ）を０．１〜２０．０重量％、揮散性薬剤（Ｂ）を０．１〜７０．０重量％、水（Ｃ）を０．１〜９８．０重量％の範囲で含有することを特徴とする水性ゲル薬剤揮散体組成物。
【請求項３】
請求項１または２に記載の水性ゲル薬剤揮散体組成物において、更に、溶剤類、色素類、防腐剤、塩類、紫外線吸収剤、界面活性剤類、無機質高分子、酸化防止剤、ゲル化剤、増粘剤、天然消臭剤、合成消臭剤、および安定化剤から選ばれる少なくとも１種以上の物質を含有することを特徴とする水性ゲル薬剤揮散体組成物。
【請求項４】
請求項１〜３のいずれか１項に記載の水性ゲル薬剤揮散体組成物において、アニオン性油中分散型ポリマー組成物（Ａ）におけるポリマー成分がアクリレーツコポリマーナトリウムであり、油性成分が、パラフィン、流動パラフィン、イソパラフィン、水素化ポリデセンなどの炭化水素類から選ばれた少なくとも１種、および／または、エステル油類から選ばれた少なくとも１種からなることを特徴とする水性ゲル薬剤揮散体組成物。
【請求項５】
請求項１〜４のいずれか１項に記載の水性ゲル薬剤揮散体組成物において、上記揮散性薬剤（Ｂ）が、香料、消臭剤、防虫剤、殺虫剤、除菌剤、および忌避剤から選ばれる少なくとも１種であることを特徴とする水性ゲル薬剤揮散体組成物。
【請求項１】
（Ａ）油性成分にアニオン性ポリマーが分散されたアニオン性油中分散型ポリマー組成物、（Ｂ）揮散性薬剤および（Ｃ）水を含有することを特徴とする水性ゲル薬剤揮散体組成物。
【請求項２】
請求項１記載の水性ゲル薬剤揮散体組成物において、組成物全量を基準として、アニオン性油中分散型ポリマー組成物（Ａ）を０．１〜２０．０重量％、揮散性薬剤（Ｂ）を０．１〜７０．０重量％、水（Ｃ）を０．１〜９８．０重量％の範囲で含有することを特徴とする水性ゲル薬剤揮散体組成物。
【請求項３】
請求項１または２に記載の水性ゲル薬剤揮散体組成物において、更に、溶剤類、色素類、防腐剤、塩類、紫外線吸収剤、界面活性剤類、無機質高分子、酸化防止剤、ゲル化剤、増粘剤、天然消臭剤、合成消臭剤、および安定化剤から選ばれる少なくとも１種以上の物質を含有することを特徴とする水性ゲル薬剤揮散体組成物。
【請求項４】
請求項１〜３のいずれか１項に記載の水性ゲル薬剤揮散体組成物において、アニオン性油中分散型ポリマー組成物（Ａ）におけるポリマー成分がアクリレーツコポリマーナトリウムであり、油性成分が、パラフィン、流動パラフィン、イソパラフィン、水素化ポリデセンなどの炭化水素類から選ばれた少なくとも１種、および／または、エステル油類から選ばれた少なくとも１種からなることを特徴とする水性ゲル薬剤揮散体組成物。
【請求項５】
請求項１〜４のいずれか１項に記載の水性ゲル薬剤揮散体組成物において、上記揮散性薬剤（Ｂ）が、香料、消臭剤、防虫剤、殺虫剤、除菌剤、および忌避剤から選ばれる少なくとも１種であることを特徴とする水性ゲル薬剤揮散体組成物。
【公開番号】特開２０１２−３４７７７（Ｐ２０１２−３４７７７Ａ）
【公開日】平成２４年２月２３日（２０１２．２．２３）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−１７６３８３（Ｐ２０１０−１７６３８３）
【出願日】平成２２年８月５日（２０１０．８．５）
【出願人】（０００１６９４６６）高砂香料工業株式会社 (194)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２４年２月２３日（２０１２．２．２３）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年８月５日（２０１０．８．５）
【出願人】（０００１６９４６６）高砂香料工業株式会社 (194)
【Ｆターム（参考）】
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