説明

水素ステーションの防災設備

【課題】水素ステーション周辺の火災に対し水素ステーション内の設備機器を火災熱から確実に防護して2次火災を未然に防止する。
【解決手段】液体水素又は圧縮水素を貯蔵して水素を供給する水素ステーション1の防災設備であり、水素ガスの漏洩を検知する水素検知装置25及び周辺の火災を検知する火災検知装置26と、水素ステーション1の設備機器およびその周辺に向けて設置され、噴射液槽9からポンプ11により噴射液配管14を介して加圧供給された噴射液を噴射する噴射ヘッド18と、水素検知信号又は火災検知信号が入力された際に、ポンプ11を作動制御して噴射ヘッド18から噴射液を放射して設備機器を火災熱から防護する制御装置19を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体水素や圧縮水素を貯蔵して燃料電池自動車などに水素を供給する水素ステーションの防災設備に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、燃料電池自動車などに燃料となる水素を供給する水素ステーションが試験的に作られている。
【0003】
このような水素ステーションの防災設備としては、設備機器や施設の防爆化に加え、火災検出器や水素ガスの漏洩を検知する水素センサーや感震器と連動して、水素関連設備の元弁を閉止する方法が考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−101316号公報
【特許文献2】特開2002−155386号公報
【特許文献3】特開2002−161998号公報
【特許文献4】特開2002−241772号公報
【特許文献5】特開2002−249032号公報
【特許文献6】特開2000−128502号公報
【特許文献7】特開2001−189161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の水素ステーションの防災設備にあっては、将来、ガソリンスタンドに併設されるなど、水素ステーションが至る所に多数設置された場合には、例えば、ガソリンスタンド側での火災、ステーション事務所での火災、近隣の家での火災、ステーション内での給ガス中の火災や自動車の火災などが発生したとき、その火災熱により水素ステーションの設備機器が引火燃焼するなどして大規模な火災へと至る事態も考えられる。
【0006】
即ち、水素ステーションには液体水素や圧縮水素を貯蔵する貯蔵タンク、液体水素をガス化する蒸発器、水素ガス充填装置やその附属装置が設置されており、これらの設備機器や停車中の燃料電池自動車が火災熱を受けて熱破損したり引火燃焼を起し、また、貯蔵タンクや燃料電池自動車のタンクについては受熱により安全弁が作動して水素が放出され、放出された水素の引火燃焼や爆発する事態が考えられ、この燃焼爆発によって設備の破壊が進み、大規模な爆発や燃焼という最悪の事態に至る可能性がある。更に、水素ステーション側の火災が隣接するガソリンスタンド側の給油装置等を破壊した場合には、更に大規模な火災へと至る事態も考えられる。
【0007】
本発明は、周辺及びステーション内の火災に対し設備機器を火災熱から確実に防護して2次火災を未然に防止する水素ステーションの防災設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するため本発明は次のように構成する。本発明は、液体水素及び又は圧縮水素を貯蔵して水素を供給する水素ステーションの防災設備に於いて、水素供給設備機器及びその周辺に向けて噴射液を噴射する防火噴射装置と、水素ガスの漏洩を検知して検知信号を出力する水素検知装置と、水素検知装置からの検知信号が入力された際に、防火噴射装置から噴射液を噴射させ、水素供給設備機器の火災発生を防止する制御装置と、水素ステーションに併設する設備に火災が発生した際に、火災を検知して火災検出信号を出力する火災検知装置、手動操作で火災検出信号を出力する押し釦、火災感知器及び/又は火災検知装置からの火災検出信号を受信して火災移報信号を出力する火災受信機のうち、少なくとも1つを設けた火災検知設備と、を備え、制御装置は、火災検知設備から火災検出信号又は火災移報信号が入力された際に、防火噴射装置から噴射液を噴射させ、水素供給設備機器を火災熱から防護することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、液体水素及び又は圧縮水素を貯蔵して水素を供給する水素ステーションの防災設備に於いて、水素供給設備機器及びその周辺に向けて噴射液を噴射する防火噴射装置と、地震発生を検知して検知信号を出力する感震装置を備え、感震装置からの検知信号が入力された際に、防火噴射装置から噴射液を噴射させ、水素供給設備機器の火災発生を防止する制御装置と、水素ステーションに併設する設備に火災が発生した際に、火災を検知して火災検出信号を出力する火災検知装置、手動操作で火災検出信号を出力する押し釦、火災感知器及び/又は火災検知装置からの火災検出信号を受信して火災移報信号を出力する火災受信機のうち、少なくとも1つを設けた火災検知設備と、を備え、制御装置は、火災検知設備から火災検出信号又は火災移報信号が入力された際に、防火噴射装置から噴射液を噴射させ、水素供給設備機器を火災熱から防護することを特徴とする。
【0010】
本発明の水素ステーションの防災設備は、更に、水素ステーションに併設する設備及びその周辺に向けて噴射液を噴射する消火噴射装置を備え、制御装置は、火災検知設備から火災検出信号又は火災移報信号が入力された際に、消火噴射装置から噴射液を噴射させて水素ステーションに併設する設備の火災を消火すると共に、防火噴射装置から噴射液を噴射させ、水素供給設備機器を火災熱から防護する。
【0011】
また、本発明は、ガソリンスタンドが併設された水素ステーションの防災設備に於いて、ガソリンスタンドの給油装置及びその周辺に向けて噴射液を噴射する消火噴射装置と、水素ステーションの水素供給設備機器及びその周辺に向けて噴射液を噴射する防火噴射装置と、ガソリンスタンドの火災を検知して火災検知信号を出力する火災検知装置、手動操作で火災検出信号を出力する押し釦、火災感知器及び/又は火災検知装置からの火災検出信号を受信して火災移報信号を出力する火災受信機のうち、少なくとも1つを設けた火災検知設備と、火災検知設備から火災検知信号が入力された際に、消火噴射装置から噴射液を噴射させてガソリンスタンドの火災を消火すると共に、防火噴射装置から噴射液を噴射させて水素供給設備機器を火災熱から防護する制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の水素ステーションの防災設備は、消火噴射装置及び防火噴射装置から噴射される噴射液を貯留する共用の噴射液槽、水素供給設備機器及びその周辺に向けて噴射液を噴射する放水銃装置を備える。
【0013】
ここで、噴射液は、水、発泡性水溶液又は水溶性高分子材料により粘度を高めた水、又は、不凍液により凍結防止性能を高めた水である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水素ステーションの周辺での火災、地震、ガス漏れ等の異常を検知したときには、水素ステーションの設備機器やその周辺、更にはガソリンスタンドに併設される場合にはその給油設備等に対して、噴射ヘッドから噴射液を放射して火災熱から防護し、連鎖的に発生する破壊や燃焼・爆発という水素ステーション設備機器の熱破壊及び過熱を確実に防止し、高い安全性と信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による水素ステーションの防災設備の実施形態を示した説明図
【図2】図1の制御装置による防災制御処理のフローチャート
【図3】水中ポンプを使用する本発明による簡易型の水素ステーションの防災設備を示した説明図
【図4】水道水を使用する本発明による簡易型の水素ステーションの防災設備を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明による水素ステーションの防災設備の実施形態を示した説明図である。
【0017】
図1において、この実施形態における水素ステーション1にあっては、隣接してガソリンスタンド2を設けており、更にスタンド事務所棟3が設けられている。水素ステーション1には、液体水素タンク4、蒸発器5、圧縮水素タンク6及び水素ガス充填装置7が設置されている。
【0018】
液体水素タンク4には外部から搬入された液体水素が貯蔵されており、この液体水素を蒸発器5で水素ガスに変換して圧縮水素タンク6に貯蔵し、圧縮水素タンク6の水素ガスを水素ガス充填装置7により燃料電池自動車などに供給するようにしている。なお、圧縮水素タンク6には液体水素を貯蔵し、燃料電池自動車に液体水素を充填する方式のものもある。一方、ガソリンスタンド2側には給油装置8が設置されている。
【0019】
このようにガソリンスタンド2と併設した水素ステーション1に対する防災設備としては噴射液を貯留した噴射液槽9が設けられ、噴射液槽9は例えば水源水槽が用いられる。噴射液槽9に対してはモータ10により駆動されるポンプ11の吸込管が立ち下げられている。
【0020】
モータ10はポンプ制御盤12により駆動される。ポンプ11の吐出側は噴射液配管14に接続され、噴射液配管14は水素ステーション1の設備機器及びガソリンスタンド2の設備機器に対し分岐配管をもって配管接続されている。
【0021】
この実施形態にあっては、水素ステーション1については水素ガス充填装置7側と他の設備機器との2系統に分けて噴射液配管14を分岐しており、更にガソリンスタンド2の給油装置8側についても独立に噴射液配管14を分岐している。なお、ポンプ11の吐出側には呼水槽13が設置されている。
【0022】
水素ステーション1に設置された噴射液配管14には噴射ヘッド18が設けられている。ここで液体水素タンク4、蒸発器5及び圧縮水素タンク6に対する噴射液配管14は、各設備機器を上方から見下ろす位置に立ち上げられた状態で配管されており、この高い位置に配置された配管に下向きに噴射ヘッド18を設備機器に向けて設置している。
【0023】
一方、水素ガス充填装置7に対しては設置面側に噴射液配管14が設けられており、この噴射液配管14からの立ち上がり管の先端に、水素ガス充填装置7側及び停車位置に向けて噴射ヘッド18を設置している。
【0024】
またガソリンスタンド2の給油装置8及び停車位置については、噴射液配管14を上方に立ち上げた後に下向きに噴射ヘッド18を設置している。
【0025】
水素ステーション1に対する2系統の噴射液配管14の分岐部分及びガソリンスタンド2に対する分岐部分のそれぞれには、制御弁15a,15b,15cが設けられている。制御弁15a〜15cの2次側は噴射ヘッド18側に分岐されると共に、反対側の排水管側に試験弁16a,16b,16cを介して分岐接続されている。
【0026】
制御弁15a〜15cは制御装置19からの信号線28に接続されている。制御装置19からの信号線28には水素ステーション1側に設置している水素検知装置25が接続され、更にガソリンスタンド2側に設置している火災検知装置26が接続される。更に信号線28には、水素ステーション1及びガソリンスタンド2側に設置している押し釦27a,27b,27c,27dが接続されている。
【0027】
ここで信号線28は、制御弁15a〜15cに対する制御用の信号線と、水素検知装置25、火災検知装置26及び押し釦27a〜27dに対する検知用の信号線とに分けて設けられている。
【0028】
更に、スタンド事務所棟3には火災受信機22が設置され、火災受信機22から引き出された感知器回線23に火災感知器24を接続している。火災受信機22は信号線21により制御装置19と接続され、火災感知器24による火災検出信号を受信した際に火災移報信号を制御装置19に送るようにしている。なお、水素検知装置25、火災検知装置26は火災受信機22に接続され、水素や火災の検出信号は火災受信機22を介して制御装置19に送られるようにしても良い。
【0029】
更に、この実施形態にあっては、ガソリンスタンド2側に設けた制御弁15cの1次側に原液タンク31と混合器32が設けられ、泡消火薬剤や合成界面活性剤を主体とした消火用原液を貯留し、これを噴射液槽9からポンプ11により送られてきた水に所定割合で混合して、噴射ヘッド18から泡消火剤を噴射できるようにしている。
【0030】
加圧供給装置としてのポンプ11と制御弁15a〜15cの間の噴射液配管14に対しては圧力タンク29が設けられ、加圧水を導入してタンク内の空気を圧縮し、圧力スイッチを用いた起動用圧力開閉装置30の接点を開いている。
【0031】
制御弁15a〜15cが開制御され、噴射ヘッド18からの噴射で噴射液配管14の加圧水の圧力が低下すると、起動用圧力開閉装置30の接点が閉じて起動信号をポンプ制御盤12に送り、ポンプ起動を行わせる。
【0032】
次に図1の実施形態における防災処理動作を説明する。例えばスタンド事務所棟3またはその近辺で火災が発生したとすると、火災発生場所の近傍の火災感知器24が発報し、火災感知器24からの火災信号を火災受信機22で受信して火災警報を行うと同時に、火災移報信号を制御装置19に送る。
【0033】
火災受信機22から火災移報信号を受けた制御装置19は、制御弁15a,15b,15cのそれぞれに対し制御信号を送って開制御を行わせる。ここで、通常の監視状態において制御弁15a,15b,15cは閉制御されており、その1次側の噴射液配管14には所定の加圧水が充填されている。
【0034】
このため、制御弁15a,15b,15cが開制御されると、ポンプ11から制御弁15a〜15cに至る噴射液配管14の内部圧力が低下し、圧力タンク29の内部圧力も同時に低下し、起動用圧力開閉装置30が圧力低下を受けて作動し、ポンプ制御盤12に対しポンプ起動信号を出力する。
【0035】
このためポンプ制御盤12はモータ10によりポンプ11を起動し、噴射液槽9からの水が水素ステーション1及びガソリンスタンド2に設置している噴射ヘッド18に加圧供給されることで噴出され、液体水素タンク4、蒸発器5、圧縮水素タンク6、水素ガス充填装置7、給油装置8及び停車位置に噴射水が噴射され、スタンド事務所棟3で発生した火災熱から水素ステーション1及びガソリンスタンド2側の設備機器を防護する。
【0036】
この場合の噴射ヘッド18による噴射水量は、防護対象装置において予め想定される受熱熱流量に対し、等価となる水の蒸発潜熱を有する水量以上の噴射水量になるように設定する。また噴射ヘッド18からの噴射水量の設定としては、防護対象装置に対する熱放射流に対し、これを遮る作用を実現するように水流量を設定してもよい。
【0037】
ここで、ガソリンスタンド2の系統に設けた制御弁15cの1次側には原液タンク31と混合器32が設けられており、このため原液タンク31の発泡性薬剤がポンプ11からの水に所定割合で混合器32によって混合され、これによって噴射液槽9からの水は発泡性水溶液となり、噴射ヘッド18から放出され、給油装置8で扱われているガソリンの防護に適した泡を含んだ噴射が行われる。
【0038】
給油装置8を別の場所の火災による熱から防護するためには、水の噴射だけでもよいが、給油装置そのものが火災発生源となった場合には水の噴射だけでは消火が困難であることから、この実施形態にあっては給油装置8に対しては発泡性水溶液を混合器32で作って噴射ヘッド18から噴射するようにしている。
【0039】
図2は図1の制御装置19による防災制御処理の処理動作を示したフローチャートである。制御装置19による防災制御処理にあっては、ステップS1で異常検知の有無を監視しており、火災受信機22からの火災移報信号、水素ステーション1に設置している水素検知装置25、ガソリンスタンド2に設置している火災検知装置26、あるいは押し釦27a〜27dのいずれかの検知信号を受けると、異常検知ありとしてステップS2の処理に進む。
【0040】
ステップS2の処理にあっては、異常検知区画に対応した制御弁を開制御することを基本とするが、図1の実施形態にあっては水素ステーション1及びガソリンスタンド2に設けている3系統の制御弁15a〜15cを一斉に開制御するようにしている。
【0041】
これにより自動的にポンプ11が作動制御されて噴射液槽9から噴射液が加圧供給され、噴射ヘッド18から防護対象装置に対し噴射され、噴射液の蒸発による防護対象機器の冷却、及び噴射液による熱放射流の遮断が行われることになる。このとき水素ガス充填装置7や給油装置8からの燃料の供給は停止する。
【0042】
そしてステップS3で火災復旧の確認信号が得られると、ステップS4に進み、制御弁を閉制御し且つ制御装置19を初期状態に戻す復旧処理を行って、一連の防災制御処理を終了する。
【0043】
制御装置19による防災制御処理としては、制御装置19に自動作動と手動作動の切替スイッチを設けておき、係員がいるときは手動とし、係員がいない夜間などについては自動に切り替えておく。
【0044】
制御装置19の切替スイッチを手動作動とした場合には、水素ステーション1、ガソリンスタンド2もしくはスタンド事務所棟3に設けている押し釦27a〜27dの手動操作で制御装置19の制御処理を起動して、噴射液の噴射ヘッド18からの放出を行うようになる。
【0045】
また噴射液槽9の噴射液としては、水にローカストビンガムやマンナン、または澱粉系やカルボキシメチルセルロースなどに代表される水溶性の高分子を予め混入させておき、噴射水の粘度を高くして噴射ヘッド18から防護対象物に噴射することで、防護対象物に噴射された噴射液の流下速度を遅くし、これによって熱防護の効率を上げることができる。
【0046】
このような噴射液の粘度を高める処理は、ガソリンスタンド2側に設けている原液タンク31と混合器32と同様に、水素ステーション1側の系統についても制御弁15a,15bの1次側に原液タンクと混合器を設置し、原液タンクに発泡性薬剤を貯蔵して混合器で混合することによって高粘性の原液を作り出し、水素ステーション1側の噴射ヘッド18から防護対象物に噴射させるようにしてもよい。
【0047】
更に、寒冷地に設置される水素ステーション1については、噴射液の凍結を防止するために、噴射液槽9や混合器に対して設けている原液タンクにエチレングリコールで代表される不凍液などを入れるようにしてもよい。
【0048】
更に、水素ステーション1側に設けた原液タンクから混合器で混合する発泡性原液としては、消火用のいわゆる機械泡で使用される泡消火薬剤や、合成界面活性剤を主体とした消火用原液を使用することもできる。
【0049】
更に図1の実施形態で使用している噴射ヘッド18としては、噴射パターンがフラットタイプ、フルコーンタイプ、ホロコーンタイプなどのいずれでもよく、またネットなどの発泡機構付きのヘッドであってもよく、更に設置位置も上方あるいは下方に限らず、有効な放射が得られる適宜の位置とすればよい。また火災感知器24、水素検知装置25、火災検知装置26などの異常検知部、制御装置19等の電気機器は防爆機能を備えた方が良い。
【0050】
図3は本発明による水素ステーションの防護設備の他の実施形態を示した説明図であり、単独で設置された水素ステーションを対象とし、且つ比較的簡易型の防災設備としたことを特徴とする。
【0051】
図3において、水素ステーション1には液体水素タンク4、蒸発器5、圧縮水素タンク6及び水素ガス充填装置7が設置され、噴射液槽9側からの噴射液配管14が設けられている。噴射液配管14は、水素ガス充填装置7及び停車位置側については下側に設置され、水素ガス充填装置7の部分で立ち上げられて、そこに噴射ヘッド18を設置している。
【0052】
これに対し液体水素タンク4、蒸発器5及び圧縮水素タンク6側については、放水銃装置34を設置し、放水銃装置34の放水銃34aからの噴射で防護対象装置の冷却と水放射による熱放射流の遮断を行うようにしている。
【0053】
また噴射液槽9には、加圧供給装置として水中ポンプ33を設置し、制御装置19により水中ポンプ33の運転制御を行うようにしている。制御装置19には感震装置20が設けられ、また制御装置19からの信号線21には水素ステーションに設置された水素検知装置25およびスタンド事務所棟3及び水素ステーション1側に設置された押し釦27が接続されている。
【0054】
この図3の実施形態にあっては、水素ステーション1の周辺例えばスタンド事務所棟3付近で火災が発生したような場合には、係員が押し釦27を押すことで制御装置19が異常の検知信号を入力し、これにより水中ポンプ33を作動し、噴射液槽9からの水を噴射液配管14を介して水素ステーション1側に加圧供給する。
【0055】
この加圧供給された噴射液は、水素ガス充填装置7側については噴射ヘッド18から放出され、一方、液体水素タンク4、蒸発器5及び圧縮水素タンク6側については放水銃装置34から放水され、火災による受熱熱流に対する噴射液の防火対象物への噴射による蒸発線熱による冷却と、噴射液による熱放射量の遮断をもって防護対象装置を火災から防護する。
【0056】
この場合にも、噴射液槽9の水に予め水溶性の高分子を混入させておき、噴射水の粘度を高くすることで、噴射した防護対象物に付着した噴射液の流下速度を遅くし、熱防護の効率を上げることが望ましい。
【0057】
また放水銃装置34は、放水銃を旋回及び上下に作動することができるため、係員が必要に応じて放水銃装置34による放水方向を調整し、そのときの火災の状況に対応した防護対象物に対する噴射液の放出を適切に行うことができる。
【0058】
また、この実施形態で加圧供給装置として使用している水中ポンプ33は、その吐出圧力が図1のポンプ11に比べるとそれほど高くはないが、水素ステーション1の噴射ヘッド18及び放水銃装置34は建物であれば1階に相当するレベルに設置されていることから、水中ポンプ33の吐出圧力であっても十分な噴射液の放出が可能である。
【0059】
なお図3の実施形態にあっても、制御装置19に感震装置20及び水素検知装置25が設けられているため、地震発生時については感震装置20からの検知信号で、水素ガスの漏洩については水素検知装置25からの検知信号で制御装置19が自動的に水中ポンプ33を作動制御して、噴射ヘッド18及び放水銃装置34からの放射液の噴射を行うことになる。
【0060】
図4は本発明による水素ステーションの防護設備の他の実施形態を示した説明図であり、図3の実施形態と同様、簡易型の防災設備を例に取っており、更に加圧供給装置及び噴射液槽の代わりに水道水を利用するようにしたことを特徴とする。
【0061】
図4において、水素ステーション1側の設備機器及び噴射ヘッド18、更には放水銃装置34は図3の実施形態と同じであるが、噴射液配管14に対する加圧供給装置は特に設けず、噴射液配管14を制御弁15及び死水防止継手36を介して水道管35に接続している。
【0062】
水道管35に対する噴射液配管14の接続部分に設けた制御弁15は、閉止時には2次側の水が排水される三方弁構造を有しており、水道側に滞留水が逆流しないように配慮されており、制御装置19により開閉制御される。制御装置19から引き出された信号線21には、水素ステーション1に設けた水素検知装置25が接続され、更に水素ステーション1及びスタンド事務所棟3に設けた押し釦27が接続されている。
【0063】
この実施形態にあっては、例えばスタンド事務所棟3などで火災が発生した場合には、係員が押し釦27を押すことで信号線21により異常検知信号が制御装置19に与えられ、制御装置19は制御弁15を開制御する。
【0064】
このため制御弁15を介して水道管35からの水道水が噴射液配管14を介して水素ステーション1側に送られ、噴射ヘッド18から水素ガス充填装置7に噴射され、同時に放水銃装置34から液体水素タンク4、蒸発器5及び圧縮水素タンク6側に放出される。
【0065】
もちろん、火災時の係員による押し釦27の操作以外に、水素ステーション1に設けている水素ガス充填装置7からの水素ガスの漏れ出しに対し水素検知器25が水素を検知して異常信号を出力した場合にも、同様にして制御装置19は制御弁15を開制御して水道管35からの水道水を供給し、水素ステーション1に対し水道水を噴射し、火災による受熱熱流による防護対象機器の冷却及び水道水の噴射による熱放射流の遮断を行うことになる。また復旧時は、制御弁15を閉止制御すると、噴射液配管14が排水管と接続され、水道管35側に逆流しないようになっている。
【0066】
なお本発明の防災設備が適用される水素ステーションとしては、液体水素を貯蔵して、液体水素や水素ガスに変換したものを燃料電池自動車などに供給する設備以外に、水の電気分解、都市ガスやガソリンなどから水素を生成する設備を含む場合もあり、適宜の設備構成の水素ステーションにつき、そのまま適用することができる。
【0067】
また本発明の防護設備は、噴射液を加圧供給して、これを水素ステーション1の防護対象機器に噴射できる構成であれば、適宜の構成をとることができる。
【符号の説明】
【0068】
1:水素ステーション
2:ガソリンスタンド
3:スタンド事務所棟
4:液体水素タンク
5:蒸発器
6:圧縮水素タンク
7:水素ガス充填装置
8:給油装置
9:噴射液槽
10:モータ
11:ポンプ
12:ポンプ制御盤
13:呼水槽
14:噴射液配管
15,15a〜15c:制御弁
16a〜16c:試験弁
18:噴射ヘッド
19:制御装置
20:感震装置
21,28:信号線
22:火災受信機
23:感知器回線
24:火災感知器
25:水素検知装置
26:火災検知装置
27,27a〜27d:押し釦
29:圧力タンク
30:起動用圧力開閉装置
31:原液タンク
32:混合器
33:水中ポンプ
34:放水銃装置
35:水道管
36:死水防止継手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体水素及び又は圧縮水素を貯蔵して水素を供給する水素ステーションの防災設備に於いて、
水素供給設備機器及びその周辺に向けて噴射液を噴射する防火噴射装置と、
水素ガスの漏洩を検知して検知信号を出力する水素検知装置と、
前記水素検知装置からの検知信号が入力された際に、前記防火噴射装置から前記噴射液を噴射させ、前記水素供給設備機器の火災発生を防止する制御装置と、
水素ステーションに併設する設備に火災が発生した際に、火災を検知して火災検出信号を出力する火災検知装置、手動操作で火災検出信号を出力する押し釦、火災感知器及び/又は前記火災検知装置からの火災検出信号を受信して火災移報信号を出力する火災受信機のうち、少なくとも1つを設けた火災検知設備と、
を備え、
前記制御装置は、前記火災検知設備から前記火災検出信号又は前記火災移報信号が入力された際に、前記防火噴射装置から前記噴射液を噴射させ、前記水素供給設備機器を火災熱から防護することを特徴とする水素ステーションの防災設備。
【請求項2】
液体水素及び又は圧縮水素を貯蔵して水素を供給する水素ステーションの防災設備に於いて、
水素供給設備機器及びその周辺に向けて噴射液を噴射する防火噴射装置と、
地震発生を検知して検知信号を出力する感震装置を備え、
前記感震装置からの検知信号が入力された際に、前記防火噴射装置から前記噴射液を噴射させ、前記水素供給設備機器の火災発生を防止する制御装置と、
水素ステーションに併設する設備に火災が発生した際に、火災を検知して火災検出信号を出力する火災検知装置、手動操作で火災検出信号を出力する押し釦、火災感知器及び/又は前記火災検知装置からの火災検出信号を受信して火災移報信号を出力する火災受信機のうち、少なくとも1つを設けた火災検知設備と、
を備え、
前記制御装置は、前記火災検知設備から前記火災検出信号又は前記火災移報信号が入力された際に、前記防火噴射装置から前記噴射液を噴射させ、前記水素供給設備機器を火災熱から防護することを特徴とする水素ステーションの防災設備。
【請求項3】
請求項1又は2記載の水素ステーションの防災設備に於いて、
更に、前記水素ステーションに併設する設備及びその周辺に向けて噴射液を噴射する消火噴射装置を備え、
前記制御装置は、前記火災検知設備から前記火災検出信号又は前記火災移報信号が入力された際に、前記消火噴射装置から前記噴射液を噴射させて前記水素ステーションに併設する設備の火災を消火すると共に、前記防火噴射装置から前記噴射液を噴射させ、前記水素供給設備機器を火災熱から防護することを特徴とする水素ステーションの防災設備。
【請求項4】
ガソリンスタンドが併設された水素ステーションの防災設備に於いて、
前記ガソリンスタンドの給油装置及びその周辺に向けて噴射液を噴射する消火噴射装置と、
前記水素ステーションの水素供給設備機器及びその周辺に向けて噴射液を噴射する防火噴射装置と、
前記ガソリンスタンドの火災を検知して火災検知信号を出力する火災検知装置、手動操作で火災検出信号を出力する押し釦、火災感知器及び/又は前記火災検知装置からの火災検出信号を受信して火災移報信号を出力する火災受信機のうち、少なくとも1つを設けた火災検知設備と、
前記火災検知設備から前記火災検知信号が入力された際に、前記消火噴射装置から前記噴射液を噴射させて前記ガソリンスタンドの火災を消火すると共に、前記防火噴射装置から前記噴射液を噴射させて前記水素供給設備機器を火災熱から防護する制御装置と、
を備えたことを特徴とする水素ステーションの防災設備。
【請求項5】
請求項3又は4記載の水素ステーションの防災設備に於いて、前記消火噴射装置及び防火噴射装置から噴射される噴射液を貯留する共用の噴射液槽を備えることを特徴とする水素ステーションの防災設備。
【請求項6】
前記1乃至5のいずれかに記載の水素ステーションの防災設備に於いて、前記噴射液は、水、発泡性水溶液又は水溶性高分子材料により粘度を高めた水であることを特徴とする水素ステーションの防災設備。
【請求項7】
前記1乃至5のいずれかに記載の水素ステーションの防災設備に於いて、前記噴射液は、不凍液により凍結防止性能を高めた水であることを特徴とする水素ステーションの防災設備。
【請求項8】
前記1乃至7のいずれかに記載の水素ステーションの防災設備に於いて、前記水素供給設備機器及びその周辺に向けて噴射液を噴射する放水銃装置を備えることを特徴とする水素ステーションの防災設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−80599(P2011−80599A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247168(P2010−247168)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【分割の表示】特願2003−397090(P2003−397090)の分割
【原出願日】平成15年11月27日(2003.11.27)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】