説明

水素貯蔵容器および水素貯蔵装置

【課題】 熱伝導性が高く、ガスの流通性が良く、構造が単純で軽量である水素貯蔵容器および水素貯蔵装置を提供する。
【解決手段】 連通孔を有する多孔質金属により構成されたハニカム構造体(2)と、ハニカム構造体(2)の空隙に充填される水素貯蔵体(3)と、ハニカム構造体(2)および水素貯蔵体(3)を収容する収容器(4)と、収容器(4)の外側から間接的に水素貯蔵体(3)を加熱し、またはハニカム構造体(2)を加熱することにより間接的に水素貯蔵体(3)を加熱する加熱部(9)と、を備える。
ハニカム構造体(2)が多孔質金属により構成されるため、高い熱伝導性を維持しつつ水素ガスの通気性を良くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素を吸蔵放出する水素貯蔵体を含む水素貯蔵容器および水素貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、容器に充填された水素吸蔵合金等の水素貯蔵体を容器の外から加熱して、水素の吸蔵および放出を行なう水素貯蔵容器が知られている。水素貯蔵体とは、一定の温度以上に加熱して活性化させると、水素を吸蔵または放出させることのできる粉体である。一方で、水素吸蔵体への熱の伝導性を向上させるため、熱媒管と熱媒管から延出するフィン部とを容器に嵌めこんだ水素貯蔵タンクが提案されている(たとえば、特許文献1)。このような貯蔵タンクでは、外筒部材、熱媒管、およびフィンにより画定される空間に水素吸蔵金属が収納され、熱媒が容器内部の熱媒管を流れ、熱媒管からフィンを介して水素吸蔵金属に熱が伝達される。
【特許文献1】特開平6−281097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、一般的な水素貯蔵体は粉体であり、容器の外から加熱しても熱伝導性が悪く、容器内の水素貯蔵体を均一に加熱することは困難である。特に、容器の容量が大きくなればなるほど、水素貯蔵体の均一な加熱が困難となる。
【0004】
一方、特許文献1に例示される容器のように、水素貯蔵容器の内部に熱媒管を配管し、熱媒管内に熱溶媒を流し、その熱媒管に連結して設けた熱伝導フィンにより熱を行き渡らせる方式があるが、この場合には容器内部の構造が複雑になる。配管を螺旋状、または複雑なU字管構造にする場合には、熱伝導性は向上するが、さらに容器内部は複雑になり、水素貯蔵体の粉体を効率よく充填できなくなる。また、熱媒管およびこれに連結される熱伝導フィンを設けると、そのために容器全体の重量が大きくなる。
【0005】
また、水素貯蔵容器では、水素貯蔵体へ水素を吸蔵させ、水素貯蔵体から水素を放出させるため、ガスの流通性を確保する必要があるが、上記のように熱媒管や熱伝導フィンが設けられると、ガスの流通性が阻害される。
【0006】
本発明は、熱伝導性が高く、ガスの流通性が良く、構造が単純で軽量である水素貯蔵容器および水素貯蔵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明に係る水素貯蔵容器は、連通孔を有する多孔質金属により構成されたハニカム構造体と、前記ハニカム構造体の空隙に充填される水素貯蔵体と、前記ハニカム構造体および前記水素貯蔵体を収容する収容器と、前記収容器の外側から間接的に前記水素貯蔵体を加熱し、または前記ハニカム構造体を加熱することにより間接的に前記水素貯蔵体を加熱する加熱部と、を備えることを特徴としている。
【0008】
このように、本発明の水素貯蔵体のハニカム構造体は、金属により構成される。これにより、ハニカム構造体の熱伝導性を向上させ、ハニカム構造のセルに充填される水素貯蔵体を均一に加熱することができる。また、水素貯蔵体は、ハニカム構造で小さく区画され仕切られるため、ハニカムのセルに充填された水素貯蔵体全体に効率よく熱が伝わりやすくすることができる。また、ハニカム構造体を構成する金属は連通孔を有する多孔質である。これにより、高い熱伝導性を維持しつつ水素ガスの通気性を良くすることができる。
【0009】
また、熱媒管を容器内部に通すような内部加熱の構成に比べ、簡易な構成とすることができる。また、加熱方法が、熱媒管等を用いる内部加熱ではないため、なんらかの衝撃を受けた場合には、媒体がもれる不都合が生じない。
【0010】
また、水素貯蔵容器は、さらに前記ハニカム構造体の表面に、前記ハニカム構造体の平均孔径より小径の連通孔を有する被覆部を備えることが好適である。これにより、ハニカム構造体の表面に水素貯蔵体の粉末粒子が入り、目詰まりが生じることを防止しつつ、ガスの流通性を向上することができる。
【0011】
また、水素貯蔵容器は、外形を概略多角柱に形成されていることが好適である。これにより、複数の水素貯蔵容器を並べて集合体にして用いることができ、必要な容量に応じて水素貯蔵装置を作製することができる。また、外形が多角柱であるため、密に充填することができる。また、ユニットとして量産することにより、製造コストを低くすることができる。
【0012】
また、本発明の水素貯蔵装置は、上記のいずれかに記載の水素貯蔵容器を複数備えた水素貯蔵装置であって、前記各水素貯蔵容器の加熱部の温度制御を統一的に行なう温度制御部と、前記各水素貯蔵容器のそれぞれに水素を流通させる流路を形成する流路形成部と、を備えることを特徴としている。これにより、複数の水素貯蔵容器をまとめて集合体にし、水素貯蔵装置として制御することができ、効率よく、大きい容量の水素を出し入れすることができる。また、大容量の水素貯蔵器を作製するのに比較して、低いコストで効率のよい水素貯蔵装置を製造することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る水素貯蔵容器によれば、ハニカム構造体が金属により構成されるため、ハニカム構造体の熱伝導性を向上させ、ハニカム構造のセルに充填される水素貯蔵体を均一に加熱することができる。また、水素貯蔵体は、ハニカム構造で小さく区画され仕切られるため、ハニカムのセルに充填された水素貯蔵体全体に効率よく熱が伝わりやすくすることができる。また、ハニカム構造体を構成する金属は連通孔を有する多孔質であるため、高い熱伝導性を維持しつつ水素ガスの通気性を良くすることができる。また、熱媒管を容器内部に通すような内部加熱の構成に比べ、簡易な構成とすることができる。また、加熱方法が、熱媒管等を用いる内部加熱ではないため、なんらかの衝撃を受けた場合には、媒体がもれる不都合が生じない。
【0014】
また、本発明に係る水素貯蔵容器によれば、ハニカム構造体の表面に水素貯蔵体の粉末粒子が入り、目詰まりが生じることを防止しつつ、ガスの流通性を向上することができる。また、本発明に係る水素貯蔵容器によれば、複数の水素貯蔵容器を並べて集合体にして用いることができ、必要な容量に応じて水素貯蔵装置を作製することができる。また、外形が多角柱であるため、密に充填することができる。また、ユニットとして量産することにより、製造コストを低くすることができる。
【0015】
また、本発明に係る水素貯蔵装置によれば、複数の水素貯蔵容器をまとめて集合体にし、水素貯蔵装置として制御することができ、効率よく、大きい容量の水素を出し入れすることができる。また、大容量の水素貯蔵器を作製するのに比較して、低いコストで効率のよい水素貯蔵装置を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。また、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を附し、重複する説明は省略する。
【0017】
[実施形態1]
図1は、水素貯蔵容器1の断面図である。図1に示すように、水素貯蔵容器1は、ハニカム構造体2、水素貯蔵体3、収容器4、ガス流通口6、バルブ7、ガス流通管8、ヒータ9および断熱材10により構成されている。水素貯蔵容器1には、内部の温度測定のために熱電対(図示せず)が挿入されている。熱電対にはCPUを用いた一般的な温度コントローラを接続して用いることができる。図2は、図1におけるA方向に垂直な面を断面とした水素貯蔵容器1の断面図である。
【0018】
ハニカム構造体2は、仕切り部2aおよび蓋部2bにより構成されている。図2に示すように、仕切り部2aは、図1のA方向に垂直な断面が一定の格子形状であり、収容器4に嵌めこまれている。ハニカムのセル、すなわち空隙の断面形状は、四角形の格子に限られず、三角形、五角形、六角形等の多角形であってもよい。仕切り部2aの寸法および形状は、必要な強度、熱伝導性および通気性等を考慮して定められる。壁の厚さは、通気性および軽量化の要請を考慮して、1mm〜10mmであることが好ましい。蓋部2bは、水素貯蔵体3を保持しつつ、ガス流通管8と水素貯蔵体3との間で水素を通すフィルタとして機能する。なお、図1には仕切り部2aの両側に蓋部2bが設けられているが、流路が一方のみであれば、流路側に1つ設ければ十分である。また、蓋部2bが無くても水素貯蔵体3を保持できる場合には設けない場合もある。
【0019】
ハニカム構造体2の蓋部2bは、板状に形成されており、A方向に伸びる仕切り部2aの両端部を封止している。ハニカム構造体2は、連通孔を有する多孔質金属により形成されている。金属により構成されるため、ハニカム構造体2の熱伝導性が向上し、ハニカム構造のセルに充填される水素貯蔵体を均一に加熱することができる。また、水素貯蔵体は、ハニカム構造で小さく区画され仕切られるため、ハニカムのセルに充填された水素貯蔵体3全体に効率よく熱が伝わりやすくすることができる。
【0020】
また、ハニカム構造体2を構成する金属は連通孔を有する多孔質であるため、高い熱伝導性を維持しつつ水素ガスの通気性を良くすることができる。連通孔の孔径は、約10μm以下が好ましく、さらに5μm以下であることが好ましい。孔径が10μm以上である場合には、水素貯蔵体3の粉粒子が連通孔に入り込んで目詰まりを起こし易くなり、水素ガスの円滑な流通を阻害する虞がある。また、十分な強度および通気性を確保するためには、気孔率は30%〜70%であることが好適である。
【0021】
ハニカム構造体2を構成する金属は、金属であれば限定されず、2種以上の合金であってもよい。具体的な材料を検討すると、銅の熱伝導率は403W/m・K、アルミニウムの熱伝導率は236W/m・Kであり、銅およびアルミニウムは、熱伝導率が高い。また、アルミニウムの密度は2.70×10−3kg/m、マグネシウムの密度は1.74×10−3kg/mで、アルミニウムおよびマグネシウムは密度が小さい。これらの優れた特性から、特に、銅、アルミニウム、またはマグネシウムを主成分とする金属であることが好ましい。さらには、銅の密度が8.96×10−3kg/mと高く、一方、マグネシウムの熱伝導率は157W/m・Kと低いことから、熱伝導性および密度のバランスを考慮すると、アルミニウムを主成分とする金属であることが特に好ましい。
【0022】
仕切り部2aの空隙には、水素貯蔵体3が充填されている。水素貯蔵体3の材料としては、La-Ni系、Ti-Cr-V系などの水素吸蔵合金、MgH2などの金属水素化物、NaAlHなどアラネート系材料、リチウム−窒素系あるいはリチウム−ボロン系材料や、カーボンナノチューブなどのカーボン系材料の粉体系水素貯蔵材料が使用される。
【0023】
収容器4は、ハニカム構造体2および水素貯蔵体3を収容し、気密な構造を有している。収容器4は、たとえば10MPaまでの圧力に耐えうる材料および形状が選ばれる。収容器4の材料および形状は、水素貯蔵体3に水素を吸蔵させる際の圧力に耐える材料および形状であれば、特に限定はされない。これにより、水素放出の際に急激な放出による圧力上昇を伴う場合であっても、容器の強度としては十分であり、安全を維持できる。また、収容器4は、ヒータにより加熱されることから、300℃程度の温度上昇、降下の繰返しにも、変形や変質の少ないものが使用される。図2には、収容器4の外形は角の丸い四角柱を示すが、たとえば、自動車に搭載する場合には、無駄なスペースを無くすためリアシートに合わせた形状としてもよい。
【0024】
さらに、収容器4には10MPa未満の一定圧力で開放するように設定された安全バルブ(図示せず)を設置してもよい。このような安全バルブは、必要により設けることがあるが、設けなくてもよい。なお、収容器4には水素貯蔵体3を出し入れすることのできる開閉可能な出入口等の出入機構を設けてもよい。その場合には、水素貯蔵体3をカートリッジ式で収容器4に出し入れすることができるような機構としてもよい。
【0025】
ガス流通口6は、バルブ7を有するガス流通管8を収容器4の内部に連通するように、固定している。加熱部として、収容器4の外部に電熱式のヒータ9が設けられている。これにより、熱媒管を水素貯蔵体に接触するように容器内を通す内部加熱の構成に比べ、簡易な構成とすることができる。また、加熱方法が、熱媒管等を用いる内部加熱ではないため、なんらかの衝撃を受けた場合には、媒体がもれる不都合が生じない。ヒータ9には電源(図示せず)が接続されている。加熱部には、このように収容器の外側から収容器4を介して間接的に水素貯蔵体3を加熱するものだけではなく、収容器4内にヒータ9に連結した熱伝導のための部材を設け、ハニカム構造体2を加熱することにより、間接的に水素貯蔵体3を加熱するものも含む。また、ヒータ9は、80℃以上の温度に加熱可能な機能を有しており、300℃まで加熱可能であることが好ましい。効率よく水素の吸蔵および放出を行なうために、使用される水素貯蔵材料の特性に応じて100℃〜300℃の温度に調整される。
【0026】
このようにヒータ9が設けられていることにより、ヒータ9で水素貯蔵体3が加熱された場合には、水素貯蔵体3の水素を吸蔵または放出する機能が活性化するため、速やかに水素の吸蔵・放出を行なうことができる。
【0027】
次に、水素貯蔵容器1の製造方法について説明する。ここでは、焼結金属を作製する方法を、例として説明する。まず、連通孔が約5μm以下になるように、適当な粒度の金属粉末を作製する。金属粉末の作製方法は特に限定されないが、たとえば機械粉砕、電解、還元、噴霧等により作製が可能である。特に、噴霧法は量産性、経済性に優れているだけではなく、粒子が球形になり、作製した多孔質金属の通気抵抗が低くなるため好適である。気孔の大きさは使用する粉末粒子の約15%であるため、約40μm以上の粒径の金属粒子をメッシュでろ過する。
【0028】
次に金属粉末およびバインダーを秤量し、混合する。バインダーには、押出成形に適する粘度のものを用いる。バインダーとしては、メチルセルロース等の有機物質が挙げられるが、適度の粘度が得られるものであれば特に限定されない。混合物をハニカム成形用のダイスを用いた押出成形機により押出して、ハニカム形状のグリーン成形体を得る。板形状についても、同様にして成形体を得る。
【0029】
グリーン成形体を乾燥し、脱脂した後、焼結しようとする金属の融点の80%〜95%の温度範囲で焼結を行なう。脱脂および焼結は、不活性ガス雰囲気下または還元性ガス雰囲気下で行なう。焼結した多孔質金属体を収容器4の形状に合わせて、整形、加工し、洗浄しておく。このようにして、多孔質金属の仕切り部2aおよび蓋部2bが得られる。
【0030】
得られた仕切り部2aを、収容器4に嵌め込み、仕切り部2aの一方の端部に同様にして得た多孔質金属の蓋部2bを固着させる。次に、仕切り部2aの空隙に、水素貯蔵体3を充填し、他方の端部にもう一方の蓋部2bを固着させる。なお、図1では省略しているが、収容部4は、ハニカム構造体2を挿入し、気密に閉じることができる開閉構造を有している。次に、ハニカム構造体2を挿入し、水素貯蔵体3を充填した収容部4の外部側面を覆ってヒータを設け、さらにその外側を断熱材10で覆う。
【0031】
なお、上記の製造方法では、焼結金属を作製する方法により、多孔質金属を作製しているが、発泡金属を作製する方法を用いてもよい。
【0032】
次に、水素貯蔵容器1の動作について説明する。水素ガスを水素貯蔵容器1に貯蔵する場合には、まずヒータ9により水素貯蔵体3を加熱し、十分に水素の吸蔵機能を発揮する温度に維持しておく。熱は、ハニカム構造体2により均一に水素貯蔵体3に伝えられる。ガス流通管8に連結されるコンプレッサ(図示せず)により、水素ガスを収容器4内部へ圧送し、ハニカム構造体2の連通孔を通して水素貯蔵体3に吸蔵させる。一方、水素ガスを水素貯蔵容器1から放出する場合には、まずヒータ9によりハニカム構造体2を介して水素貯蔵体3を加熱し、十分に水素の放出機能を発揮する温度に維持しておく。加熱により水素貯蔵体3から水素ガスが放出され、ハニカム構造体2を通ってガス流通管8へ水素ガスが送られる。
【0033】
なお、水素貯蔵容器1を燃料電池自動車などに搭載される水素供給装置、定置式燃料電池用のバッファータンクや水素ステーションの貯蔵容器システムにも利用することができ、今後期待される水素エネルギー社会における水素貯蔵装置全般に、応用することができる。
【0034】
特に、水素貯蔵容器を燃料電池自動車等の移動体に搭載した場合には、軽くて、燃料貯蔵の効率のよい燃料電池自動車を実現することができる。水素貯蔵容器を搭載する移動体は、燃料電池自動車に限られず水素エンジン自動車であってもよく、移動体には、自動車、バイク等の車両、船および飛行機も含まれる。以上の実施形態は例示であって、本発明がこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0035】
[実施形態2]
実施形態1のハニカム構造体2は、その平均孔径を約5μmとして水素貯蔵体3の粒子による目詰まりを防止しているが、図3に示すように、ハニカム構造体20の平均孔径は大きくしておいて、その表面に小径の連通孔を有する被覆部21を設けてもよい。これにより、ハニカム構造体の表面に水素貯蔵体3の粉末粒子が入り目詰まりが生じることを防止しつつ、ガスの流通性を向上することができる。
【0036】
このような複層構造を有するハニカム構造体2の製造は、実施形態1の製造方法に、ハニカム構造体の被覆部21を設ける工程を追加することにより行なう。たとえば、ハニカムのグリーン成形体の乾燥後に、成形体の表面にフェノール樹脂溶媒に塩化ビニルを添加した溶液を塗布等の手段によりコーティングして、脱脂し焼結する。このような工程を追加することにより、ハニカム構造体の表面に5μm以下の小さい孔を有する炭素の層を設けることができる。塩化ビニルの代わりに、発泡スチロール等の分解しやすい材料を添加してもよい。また、有機溶媒に焼結体への水素貯蔵体の目詰まりを防止する程度に細かい金属粉末を混合し、その混合液を成形体に塗布等の手段によりコーティングしてもよい。
【0037】
それ以外にも、焼結後のハニカム構造体20の表面に、金属またはセラミックスをコーティングして被覆部を設けてもよい。たとえば、コーティングはウオッシュコートにより行なう。すなわち、まず、アルミニウムまたは金属の融点より低く融着もしくは反応してハニカム体に付着可能な材料の金属粉粒体を用い、有機溶媒または水を用いてスラリーを作製し、ハニカム体を完全に浸す。その後エアークリーナーおよび圧縮エアーで余分なスラリーを除去し、乾燥した後、所定の温度で熱処理を行なう。このとき、ハニカム構造体20としての内部より小さな孔径の被覆部21としての層が作製されるように、適当な粒子径の金属粉粒体を使用する。
【0038】
また、金属アルミニウムを使用する場合に、最終的に脱脂、焼結をする際に、Ar等の不活性雰囲気でハニカム構造体20を形成した後、温度を制御しながら窒素を流して、ハニカム構造体20表面に意図的に窒化アルミニウムの結晶を析出させ、表面の孔径を小さく制御してもよい。
【0039】
[実施形態3]
実施形態1では、ヒータ9が収容器4の外側のみに設けられているが、さらにハニカム構造体2を直接ロッドヒータ25により加熱してもよい。図4に示すように、収容器内で直接ハニカム構造体2に接触させて、ロッドヒータ25を設ける。これにより、熱伝導性水のよいヒータが加わるため、水素貯蔵体3の加熱を効率よく行なうことができる。
【0040】
[実施形態4]
実施形態1では、水素貯蔵容器1を独立して用いる場合を説明したが、複数の水素貯蔵容器30を用いて、必要な容量に応じた水素貯蔵容器を集合させてもよい。図5に示すように、水素貯蔵容器30は、ハニカム構造体31、水素貯蔵体32、収容器33およびヒータ34により構成されている。また、水素貯蔵容器30には、内部の温度測定のために熱電対(図示せず)が挿入されている。熱電対にはCPUを用いた一般的な温度コントローラを接続して用いることができる。図6に示すように、この場合の水素貯蔵容器30は、概略四角柱、五角柱、六角柱等の多角柱または外形であることが好ましい。これにより、複数の水素貯蔵容器30を並べて集合体にして用いることができ、必要な容量に応じて水素貯蔵装置を作製することができる。また、ユニットとして量産することにより、製造コストを低くすることができる。特に、三角柱、四角柱および六角柱は、同一形状で空間を埋めることができるため、量産に適している。
【0041】
図5に示すように、複数の水素貯蔵容器30を用いる場合には、1つのユニットとしての水素貯蔵容器から断熱材を省いてもよい。これにより、水素貯蔵容器30を密着させて並べて用いれば、熱伝導の効率を上げることができる。水素貯蔵容器30の寸法は、たとえば30cm×30cm×150cmとし、これを複数個結合させて一体化した水素貯蔵容器とする。これにより、大型の移動体や工業用の水素貯蔵容器として、その必要な容量や制約される形状に合わせた設計が可能となり、効率の良い水素貯蔵の集合体を構成することができる。
【0042】
図7に示すように、複数の水素貯蔵容器30をまとめて水素貯蔵装置40として用いてもよい。水素貯蔵装置40は、集合した水素貯蔵容器30とその外側を覆う断熱材41を備え、各水素貯蔵容器30は、バルブ42およびガス流通管43を介して連結管44に接続している。ガス流通管43および連結管44は流路形成部として流路を形成する。また、水素貯蔵装置40には、各水素貯蔵容器の加熱部の温度制御を統一して行なう温度制御部(図示せず)が設けられている。図7では、水素貯蔵装置40温度制御部としては、CPUを用いた一般的な温度コントローラを用いることができる。貯蔵容器内部の温度測定は、内部に挿入された熱電対によって行われる。また、各水素貯蔵容器に水素を出し入れするために、一括した流路を確保する。流路を作るためには、たとえば各水素貯蔵容器30を単一の大きな容器に収容する。このようにして、複数の水素貯蔵容器をまとめた水素貯蔵装置を構成することができる。これにより、複数の水素貯蔵容器30をまとめて集合体にし、水素貯蔵装置として制御することができ、効率よく、大きい容量の水素を出し入れすることができる。また、大容量の水素貯蔵器を作製するのに比較して、低いコストで効率のよい水素貯蔵装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る水素貯蔵容器の第1の実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明に係る水素貯蔵容器の第1の実施形態を示す断面図である。
【図3】表面に被覆部を設けたハニカム構造体の断面図である。
【図4】本発明に係る水素貯蔵容器の第3の実施形態を示す断面図である。
【図5】複数まとめて用いる水素貯蔵容器の断面図である。
【図6】複数まとめて用いる水素貯蔵容器の概略斜視図である。
【図7】水素貯蔵装置の概略斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
1 水素貯蔵容器
2 ハニカム構造体
2a 仕切り部
2b 蓋部
3 水素貯蔵体
4 収容器
9 ヒータ(加熱部)
10 断熱材
20 ハニカム構造体
21 被覆部
30 水素貯蔵容器
31 ハニカム構造体
32 水素貯蔵体
33 収容器
34 ヒータ
40 水素貯蔵装置
41 断熱材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
連通孔を有する多孔質金属により構成されたハニカム構造体と、
前記ハニカム構造体の空隙に充填される水素貯蔵体と、
前記ハニカム構造体および前記水素貯蔵体を収容する収容器と、
前記収容器の外側から間接的に前記水素貯蔵体を加熱し、または前記ハニカム構造体を加熱することにより間接的に前記水素貯蔵体を加熱する加熱部と、を備えることを特徴とする水素貯蔵容器。
【請求項2】
さらに前記ハニカム構造体の表面に、前記ハニカム構造体の平均孔径より小径の連通孔を有する被覆部を備えることを特徴とする請求項1記載の水素貯蔵容器。
【請求項3】
外形を概略多角柱に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の水素貯蔵容器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の水素貯蔵容器を複数備えた水素貯蔵装置であって、
前記各水素貯蔵容器の加熱部の温度制御を統一的に行なう温度制御部と、
前記各水素貯蔵容器のそれぞれに水素を流通させる流路を形成する流路形成部と、を備えることを特徴とする水素貯蔵装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate