説明

水質判定装置及び方法

【課題】イオン化して溶存している塩類やアンモニア、並びに、油分や微生物などの有機物等に関する水質を簡便に判定可能な水質判定装置を提供する。
【解決手段】水の水質を判定する水質判定装置10が、水の電気伝導度が測定可能であり、電気伝導度の測定に用いる電極12の少なくとも表面が活性炭を用いて構成されている電気伝導度計11を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の電気伝導度が計測可能な電気伝導度計を備える水質判定装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な装置で水を使用する場合、水処理装置を用いてその水に含まれる不純物を予め取り除くことが広く行われている。水に含まれる不純物としては、イオン化して溶存している塩類やアンモニアなどのイオン性物質、並びに、無極性又は極性有機分子、微生物や微生物の有機性分泌物、シロキサンや油分などの有機物がある。このうち、イオン化して溶存している塩類やアンモニアなどのイオン性物質は、例えばイオン交換樹脂を備える水処理装置を用いて除去できる。また、有機物は活性炭などの吸着材を備える水処理装置を用いて吸着して除去できる。但し、イオン交換樹脂や吸着材などの水処理装置の性能が低下すると、水処理装置で処理した後の水には、上述したような不純物の残留量が増えるという問題がある。
【0003】
そのため、水処理装置の性能を確認するために、水質を判定することも行われている。例えば、イオン交換樹脂を用いて水の導電性を低下させるような水処理を行う場合、そのイオン交換樹脂(水処理装置)の下流側に電気伝導度計を設置することで、水処理装置によって水処理した後の水の水質を判定することができる。
また、吸着材を用いて水に含まれる有機物などの被吸着物を除去するような水処理を行う場合、その吸着材(水処理装置)の下流側を流れる水を人間が一部抜き出して、その抜き出した水を別の分析装置にかけて有機物の含有量を調べることができる。但し、人間が水を抜き出して検査するという方法は非常に手間がかかるため好ましくない。尚、水中に含まれる有機物などの被吸着物の濃度が常時一定であれば、吸着材が吸着性能を発揮できる期間もほぼ一様に決まる。そのため、定期的に吸着材を交換していれば、水を抜き出して検査するなどの手間をかけなくても、被吸着物の濃度などに関して、水質が良好である状態を担保できる。
【0004】
特許文献1には、イオン交換樹脂(61A、61B)を用いて水を浄化する水処理システム(60)が記載されている。また、イオン交換樹脂(61A、61B)の下流側に電気伝導度計(66)を設置し、浄化した後の水の電気伝導度を測定することで、イオン交換樹脂の性能が維持されているか否かを判定すること、即ち、水質を判定することも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−317392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したイオン性物質並びに有機物の両方を効果的に取り除くためには、上述した吸着材とイオン交換樹脂装置とを例えば水流に対して直列に併設した水処理装置を構築することが有効である。但し、有機物などがほとんど問題にならないと思われるシステムでは、吸着材を設けないことも水処理装置の小型化を達成する上で有効な対策である。
【0007】
しかし、有機物を除去するための吸着材を設けない場合であっても、水処理装置によって処理された後の水を利用する機器が、有機物などによって悪影響を受けないことを担保しておく必要がある。
また、吸着材とイオン交換樹脂とを併設した水処理装置を構築した場合であっても、例えば、運転環境よって有機物などが配管などの材料から水中に溶出したり、外部から混入した場合などにより、吸着材の吸着性能が予想以上に早く低下してしまった場合には、有機物などの被吸着物が吸着材をすり抜けて下流側に至り、その水を利用する機器に悪影響を与える可能性もあるため、そのような問題の発生を回避できるようにしておく必要がある。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、イオン性物質並びに有機物等に関する水質を簡便に判定可能な水質判定装置及び方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る水質判定装置の特徴構成は、水質を判定する水質判定装置であって、
水の電気伝導度が測定可能であり、電気伝導度の測定に用いる電極の少なくとも表面が活性炭を用いて構成されている電気伝導度計を備える点にある。
【0010】
上記特徴構成によれば、測定対象とする水の電気伝導度を電気伝導度計によって測定できる。つまり、測定対象とする水中のイオン濃度を示す電気伝導度を判定することができる。
更に、電極の表面の活性炭は、水中に含まれる被吸着物を吸着できる。電極の表面の活性炭が被吸着物を吸着することで電極の表面積(即ち、活性炭の表面積)が減少するので、電気伝導度計で測定される水の見かけの電気伝導度が相対的に減少する。つまり、電気伝導度計の電極表面に活性炭を用いることで、水中における有機物等の被吸着物の含有程度を判定することができる。
従って、イオン化して溶存している塩類やアンモニアなどのイオン性物質、並びに、無極性又は極性有機分子、微生物や微生物の有機性分泌物、シロキサンや油分などの有機物等に関する水質を簡便に判定可能な水質判定装置を提供することができる。
【0011】
本発明に係る水質判定装置の別の特徴構成は、吸着材を収容した容器を備え、
前記電気伝導度計は、前記容器の内部を通過した後の水の電気伝導度を測定する点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、有機物などの被吸着物を吸着できる活性炭などの吸着材を収容する容器を電気伝導度計の上流側に設けておくことで、電気伝導度計の上流側で容器によって被吸着物を吸着することができる。その結果、電気伝導度計で測定される電気伝導度の値に対する被吸着物の影響を排除することができる。つまり、電気伝導度計から出力される電気伝導度の値が、水に含まれるイオン性物質の濃度の高低を主要な要因として変化し、水に含まれる有機物などの被吸着物の濃度を要因として変化しないようにすることで、吸着材を収容する容器を用いて水中の被吸着物質を除去しつつその水の電気伝導度を正確に測定することができる。
【0013】
更に、水中に有機物などの被吸着物が含まれ続けると、活性炭などの吸着材を収容した容器を破過した被吸着物が電気伝導度計まで到達する。その場合、電極の表面の活性炭が被吸着物を吸着することで電極の表面積(即ち、活性炭の表面積)が減少するので、電気伝導度計で測定される水の見かけの電気伝導度が相対的に減少する。つまり、電気伝導度計の電極表面に活性炭を用いることで、水中における有機物等の被吸着物の含有程度を判定することもできる。
【0014】
本発明に係る水質判定装置の更に別の特徴構成は、前記電気伝導度計が測定した電気伝導度が上昇傾向にあればイオン性物質が水中で増加傾向にあると判定し、前記電気伝導度計が測定した電気伝導度が低下傾向にあれば、前記電極の表面を汚染して電気伝導性を有する電極表面積を減少させ得る物質が水中に含まれ続けていると判定する判定手段を備える点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、判定手段によって、電気伝導度計が測定した電気伝導度に基づいて、イオン性物質と電極表面を汚染する物質との両方について、測定対象とする水中での含有程度を、ほぼリアルタイムに判定することができる。
【0016】
本発明に係る水質判定装置の更に別の特徴構成は、水質を判定する水質判定装置であって、
吸着材を収容した容器と、
前記容器の内部に流入する前の水の電気伝導度が測定可能であり、電気伝導度の測定に用いる電極の少なくとも表面が活性炭を用いて構成されている第1の電気伝導度計と、
前記容器の内部を通過した後の水の電気伝導度が測定可能であり、電気伝導度の測定に用いる電極の少なくとも表面が活性炭を用いて構成されている第2の電気伝導度計とを備える点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、測定対象とする水中に被吸着物が存在していなければ、容器の上流側と下流側とに設けられる第1の電気伝導度計の電極と第2の電気伝導度計の電極とは何れも被吸着物を吸着していないため、それぞれで測定される電気伝導度の値は互いに同じであり且つ水の電気伝導度の正確な値であるはずである。つまり、本特徴構成のように、第1の電気伝導度計と第2の電気伝導度計とを設けることで、それぞれで測定される電気伝導度の値が互いに同じであれば、その電気伝導度の値が正確な値であることを確実視できる。
【0018】
加えて、測定対象とする水中に被吸着物が存在すると、第1の電気伝導度計の電極はその被吸着物を容易に吸着する。但し、第2の電気伝導度計の上流側に活性炭などの吸着材を収容した容器が設けられているため、水中の被吸着物濃度が上昇しても、第2の電気伝導度計の電極に被吸着物が到達するためには、容器に収納した吸着材を破過する必要があり、時間がかかる。その結果、測定対象とする水中に被吸着物が含有された場合に、第1の電気伝導度計で測定される電気伝導度の値と第2の電気伝導度計で測定される電気伝導度の値との間に差異を発生させることができる。つまり、第1の電気伝導度計で測定される電気伝導度の値と第2の電気伝導度計で測定される電気伝導度の値との間に差異を発生させるという形態で、測定対象とする水中における被吸着物の含有の継続、あるいは含有程度を判定することができる。
更に、測定対象とする水中に被吸着物が存在するとしても、吸着材を収容した容器でその被吸着物を除去できるため、第2の電気伝導度計で測定される電気伝導度の値に対する被吸着物の影響を排除することができる。つまり、第2の電気伝導度計から出力される電気伝導度の値が、水に含まれるイオン性物質の濃度の高低を主要な要因として変化し、水に含まれる有機物などの被吸着物の濃度を要因として変化しないようにすることで、水の電気伝導度を正確に測定することができる。
【0019】
本発明に係る水質判定装置の更に別の特徴構成は、前記第1の電気伝導度計が測定した水の第1の電気伝導度の低下開始タイミングから前記第2の電気伝導度計が測定した水の第2の電気伝導度の低下開始タイミングまでの期間に前記容器の内部を通過した水量と、前記容器に収容されている吸着材による被吸着物の吸着可能量とに基づいて、前記第1の電気伝導度計及び前記第2の電気伝導度計のそれぞれの前記電極の表面を汚染して電気伝導性を有する電極表面積を減少させ得る物質の水中での含有濃度を判定する判定手段を備える点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、第1の電気伝導度計が測定した水の第1の電気伝導度の低下開始タイミングは、被吸着物が第1の電気伝導度計の下流側に設けられる容器に流入し始めたタイミングであると見なすことができ、第2の電気伝導度計が測定した水の第2の電気伝導度の低下開始タイミングは、被吸着物が第2の電気伝導度計の上流側に設けられる容器を破過したタイミングであると見なすことができる。つまり、第1の電気伝導度計が測定した水の第1の電気伝導度の低下開始タイミングから第2の電気伝導度計が測定した水の第2の電気伝導度の低下開始タイミングまでの期間に容器の内部を通過した水量は、容器に収容されている吸着材が吸着処理することができた水量であると見なすことができる。従って、判定手段は、その水量と容器に収容されている吸着材による被吸着物の吸着可能量とに基づいて、水中での被吸着物の含有濃度を判定できる。
以上のように、本特徴構成の判定手段によって、第1の電気伝導度計が測定した電気伝導度と、第2の電気伝導度計が測定した電気伝導度に基づいて、イオン性物質と電極表面を汚染する物質との両方について、測定対象とする水中での含有程度をほぼリアルタイムに判定することができる。
【0021】
上記目的を達成するための本発明に係る水質判定方法の特徴構成は、
電気伝導度の測定に用いる電極の少なくとも表面が活性炭を用いて構成されている電気伝導度計を用いて、水の電気伝導度を測定する測定工程と、
前記測定工程において測定された電気伝導度が上昇傾向にあればイオン性物質が前記水中で増加傾向にあると判定し、前記測定工程において測定された電気伝導度が低下傾向にあれば前記電極の表面を汚染して電気伝導性を有する電極表面積を減少させ得る物質が水中に含まれ続けていると判定する判定工程とを含む点にある。
【0022】
上記特徴構成によれば、判定工程において、電気伝導度計が測定した電気伝導度に基づいて、イオン性物質と、有機物など電極表面を汚染する物質との両方について、測定対象とする水中での含有程度をリアルタイムに判定することができる。
【0023】
本発明に係る水質判定方法の別の特徴構成は、
吸着材を収容した容器の内部に流入する前の水の電気伝導度を、電気伝導度の測定に用いる電極の少なくとも表面が活性炭を用いて構成されている第1の電気伝導度計を用いて測定し、及び、前記容器の内部を通過した後の水の電気伝導度を、電気伝導度の測定に用いる電極の少なくとも表面が活性炭を用いて構成されている第2の電気伝導度計を用いて測定する測定工程と、
前記第1の電気伝導度計が測定した水の第1の電気伝導度の低下開始タイミングから前記第2の電気伝導度計が測定した水の第2の電気伝導度の低下開始タイミングまでの期間に前記容器の内部を通過した水量と、前記容器に収容されている吸着材による被吸着物の吸着可能量とに基づいて、前記第1の電気伝導度計及び前記第2の電気伝導度計のそれぞれの前記電極の表面を汚染して電気伝導性を有する電極表面積を減少させ得る物質の水中での含有濃度を判定する判定工程とを含む点にある。
【0024】
上記特徴構成によれば、第1の電気伝導度計が測定した水の第1の電気伝導度の低下開始タイミングは、被吸着物が第1の電気伝導度計の下流側に設けられる容器に流入し始めたタイミングであると見なすことができ、第2の電気伝導度計が測定した水の第2の電気伝導度の低下開始タイミングは、被吸着物が第2の電気伝導度計の上流側に設けられる容器を破過したタイミングであると見なすことができる。つまり、第1の電気伝導度計が測定した水の第1の電気伝導度の低下開始タイミングから第2の電気伝導度計が測定した水の第2の電気伝導度の低下開始タイミングまでの期間に容器の内部を通過した水量は、容器に収容されている吸着材が吸着処理することができた水量であると見なすことができる。従って、判定工程において、その水量と容器に収容されている吸着材による被吸着物の吸着可能量とに基づいて、水中での被吸着物の含有濃度を判定できる。
以上のように、本特徴構成の判定工程によって、第1の電気伝導度計が測定した電気伝導度と、第2の電気伝導度計が測定した電気伝導度に基づいて、イオン性物質と電極表面を汚染する物質との両方について、測定対象とする水中での含有程度をほぼリアルタイムに判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態の水質判定装置が設けられる燃料電池システムの構成を説明する図である。
【図2】水質判定装置が備える電気伝導度計の出力例を示すグラフである。
【図3】第2実施形態の水質判定装置の構成を説明する図である。
【図4】第3実施形態の水質判定装置の構成を説明する図である。
【図5】水質判定装置が備える電気伝導度計の出力例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1実施形態>
以下に図面を参照して第1実施形態の水質判定装置10A(10)について説明する。
図1は、水質判定装置10Aを備える燃料電池システムSの構成を説明する図である。
燃料電池システムSは、燃料電池FCを備える。燃料電池FCは、水素などの燃料ガスが供給されるアノード3と、酸素(空気)が供給されるカソード4とを備える。また、燃料電池FCは、発電時に発生する熱を回収することで燃料電池FCを冷却する冷却部5を備える。本実施形態では冷却部5は水冷式を採用している。具体的には、この冷却部5には後述する回収水循環路17を循環する水(以下、「回収水」と表記します)が供給されて、燃料電池FCの冷却が行われる。冷却部5を通過することで温度が上昇した回収水は、回収水循環路17の途中に設けられた熱交換器8に流入する。この熱交換器8において、回収水は、熱媒循環路18を流れる熱媒と熱交換して燃料電池FCから回収した排熱をその熱媒に渡す。熱媒は、熱回収タンク7に貯えられ、そこで蓄熱が行われる。
【0027】
改質器1には、炭化水素を含む原燃料(例えば、メタンを含む都市ガスなど)が供給され、及び、回収水循環路17から分岐した水供給路20を介して水が供給される。改質器1は、併設される燃焼器2から与えられる燃焼熱を利用して、原燃料の水蒸気改質を行う。改質器1での水蒸気改質により得られた燃料ガスは、燃料ガス路14を介してアノード3に供給される。
【0028】
アノード3では、供給された全ての燃料ガスが発電反応で消費される訳ではない。そのため、アノード3から排出されるアノード排ガスの中には水素等の燃料ガスの成分が残存している。そこで、燃焼器2での燃焼用ガスとして、アノード排ガスを利用している。具体的には、アノード3から燃焼器2へ、アノード排ガス排ガス路を介してアノード排ガスを供給する。燃焼器2で燃焼された後の燃焼排ガスは、外部に排出される。
【0029】
アノード排ガス及び燃焼排ガスには水分が含まれている。そのため、その水分を回収する目的で、アノード排ガス路15及び燃焼排ガス路16の途中に水回収器21,22を設けている。水回収器21,22は、例えば、凝縮器とドレントラップとを組み合わせて構成される。つまり、アノード排ガス及び燃焼排ガスに含まれる水分が凝縮器によって凝縮され、その凝縮水がドレントラップによって取り出される。ドレントラップによって取り出された水は水回収タンク6へと回収され、回収水循環路17を循環する水として再利用される。
【0030】
このように、回収水循環路17を流れる回収水は、アノード排ガス中に含まれていた水分や、燃焼排ガス中に含まれていた水分が混入しているため、電解質や水に溶解しない不純物などを含んでいることが想定される。そのため、回収水循環路17を流れる回収水が、回収水循環路17の途中に設けられるイオン交換樹脂装置9によって処理されるように構成してある。
【0031】
イオン交換樹脂装置9は、回収水に含まれる電解質のイオン(例えば、イオン化して溶存している塩類やアンモニアなど)を例えばH+、OH-と交換することで、回収水に含まれる電解質の濃度を相対的に低くさせる(即ち、電気伝導度を低くさせる)機能を果たす。つまり、イオン交換樹脂装置9の性能が充分に発揮されていれば、イオン交換樹脂装置9よりも下流側の回収水循環路17を流れる回収水の電気伝導度は所定値以下である。但し、イオン交換樹脂装置9は、自身が元来有していた置換基を溶液中のイオンと交換するという性質から、その元来有していた置換基の数が減少すると、イオン交換性能が低下して回収水の水質が変化する。そのため、イオン交換樹脂装置9の性能変化を検知する目的、即ち、回収水循環路17を流れる回収水の水質を判定する目的で、イオン交換樹脂装置9よりも下流側の回収水循環路17に、本願に係る水質判定装置10Aを設けている。
【0032】
本実施形態において、水質判定装置10Aは、水の電気伝導度が測定可能である電気伝導度計11を備える。この電気伝導度計11は、対を成す電極12(12a,12b)の間に電圧を印加し、その間の抵抗を測定することで、水の電気伝導度を導出する装置である。電気伝導度計11の測定結果は、水質判定装置10Aが備える制御部13に伝達される。制御部13は、電気伝導度計11の測定結果を例えばその制御部13の内部メモリなどの記憶装置(図示せず)に記憶できる。そして、制御部13は、電気伝導度計11で検出された回収水の電気伝導度を所定の基準値と比較して、その測定した電気伝導度が所定の基準値を上回っている場合にはイオン交換樹脂装置9の性能が低下したと判定することができる。
【0033】
更に、本発明の水質判定装置10Aにおいて、電気伝導度計11は、その電気伝導度の測定の用いる電極12a,12bの少なくとも表面が活性炭を用いて構成されている。このとき、電気伝導度計11が備える複数の電極12a,12bのうちの少なくとも一つがその表面に活性炭を用いて構成されていればよい。つまり、例えば、電気伝導度計11が備える複数の電極12a,12bの全てがその表面に活性炭を用いて構成されている場合や、或いは、電気伝導度計11が備える複数の電極12a,12bのうちの一部がその表面に活性炭を用いて構成されている場合などがある。
電極12の少なくとも表面が活性炭を用いて構成されているとは、電極12自体が活性炭を用いて構成されることで、その表面にも活性炭が露出している場合、電極12が金属などの導電性材料で形成された上で、その表面のみに活性炭層が形成されている場合など、様々な形態が考えられる。
【0034】
電極12の表面に露出している活性炭は、電気伝導度を測定するための機能を有するだけでなく、回収水に含まれる有機物(例えば、シロキサン、無極性又は極性有機分子、微生物や微生物の分泌物、油分等)などの被吸着物を吸着するという機能も併せ持っている。そして、活性炭が有機物などを吸着すると、その活性炭の表面積(回収水に対して露出している面積)が減少する。つまり、電極12の表面の活性炭の表面積の減少は、その電極12を用いて測定される電気伝導度の低下として現れる。
尚、電極12の表面の活性炭部分は、被吸着物によって汚染されたとしても、界面活性剤、有機系の溶媒洗浄や、超音波洗浄、高温分解処理などによって浄化することにより、繰り返し使用できる。
【0035】
本実施形態において、電気伝導度計11は、電極12の投影面積(即ち、電極12の表面が平坦であると見なした場合の見かけの電極面積)を1cm2とし、電極12a,12dの間の距離を1cmとした場合、測定対象とする水の電気伝導度を1×10-9S〜1×10-3S(即ち、電気抵抗値を1×109Ω〜1×103Ω)の範囲内で計測できる性能を有していることが好ましい。更に好ましくは、電気伝導度計11は、測定対象とする水の電気伝導度を1×10-7S〜1×10-5S(即ち、電気抵抗値を1×107Ω〜1×105Ω)の範囲内で計測できる性能を有していることが好ましい。
【0036】
図2は、電気伝導度計11の出力例を示すグラフである。具体的には、図2(a)は、回収水に含まれるイオン濃度(即ち、イオン性物質の濃度)と回収水の電気伝導度との関係例を示すグラフであり、図2(b)は、回収水に含まれる有機物などの被吸着物濃度と回収水の電気伝導度との関係例を示すグラフである。
【0037】
図2(a)に示すように、回収水に含まれるイオン濃度が高くなるにつれて、回収水の電気伝導度は高くなる。また、図2(b)に示すように、回収水に含まれる被吸着物濃度が高くなるにつれて、回収水の電気伝導度は低くなる。この図2(b)のような特性を示すのは、回収水に含まれる被吸着物濃度が高くなるほど、電気伝導度計11の電極12の表面の活性炭表面が被吸着物で覆われて表面積が減少することで、回収水の電気伝導度が見かけ上低下するからである。このように、電気伝導度計11の電極12の表面を活性炭によって構成することで、測定された電気伝導度の値には、回収水に含まれるイオン濃度と被吸着物濃度との両方が反映されることとなる。加えて、回収水と活性炭とを接触させることで、配管などに用いられているステンレスなどに有害(例えば、応力腐食割れ等)な溶存塩素などを活性炭にて分解することができるため、機器の信頼性も副次的に高まる効果もある。
【0038】
以上のように、本発明に係る水質判定装置10Aは、電気伝導度の測定に用いる電極12の少なくとも表面が活性炭を用いて構成されている電気伝導度計11を備えることで、測定対象とする回収水中に含まれるイオン濃度と被吸着物濃度の両面からその水質が反映された電気伝導度の値を出力することができる。例えば、その電気伝導度の出力値を見た者は、その電気伝導度の出力値の変化から水質をイオン濃度の変化と被吸着物の含有の両面から水質を知ることができる。
このように、測定対象とする回収水の水質をイオン濃度と被吸着物含有との両面から判定する水質判定方法として、電気伝導度の測定に用いる電極12の少なくとも表面が活性炭を用いて構成されている電気伝導度計11を用いて、回収水の電気伝導度を測定する測定工程と、その測定工程において測定された電気伝導度が上昇傾向にあればイオン性物質が回収水中で増加傾向にあると判定し、その測定工程において測定された電気伝導度が低下傾向にあれば電気伝導度計11の電極12の表面を吸着汚染して電気伝導性を有する電極表面積を減少させ得る物質が回収水中に含まれ続けていると判定する判定工程とを行うことができる。
【0039】
更に、上記水質判定方法を水質判定装置10Aが実施する場合、制御部13が、電気伝導度計11が測定した電気伝導度が上昇傾向にあればイオン性物質が回収水中で増加傾向にあると判定し、電気伝導度計11が測定した電気伝導度が低下傾向にあれば電極12表面を汚染して電気伝導性を有する表面積を減少させ得る物質(被吸着物)が回収水中に含有し続けていると判定する判定手段として機能させることもできる。この場合、上記判定手段として機能する制御部13が、例えばその制御部13の内部メモリなどの記憶装置(図示せず)に記憶されている過去の電気伝導度の値を読み出して、電気伝導度が上昇傾向にあるのか、又は、低下傾向にあるのか、又は、ほぼ一定値を保っているのかの判断を下し、その判断結果に基づいて、測定対象とする回収水中におけるイオン性物質及び被吸着物の含有状態を判定する。このように、電気伝導度計11が測定した電気伝導度に基づいて、イオン性物質と電極表面を汚染する物質との両方について、測定対象とする回収水中での含有程度を、ほぼリアルタイムに判定することができる。尚、回収水中におけるイオン性物質の増加は、電気伝導度計11が測定する電気伝導度の上昇を示し、回収水中における被吸着物の増加は、電気伝導度計11が測定する電気伝導度の低下を示すが、両者が同時に且つ同程度の電気伝導度の上昇及び低下を発生させる状態で進行することは無いと考えられるため、本実施形態の水質判定装置10Aは有効に働く。
【0040】
<第2実施形態>
図3は、第2実施形態の水質判定装置10B(10)の構成を説明する図である。
第2実施形態の水質判定装置10Bは、吸着材を収容した容器(以下、本実施形態では、吸着材としての活性炭を収容した活性炭収容容器19を例示する)と、水の電気伝導度を測定可能である電気伝導度計11とを備える。電気伝導度計11の構成は第1実施形態で説明した電気伝導度計11と同様であるため、その説明は省略する。そして、本実施形態において、電気伝導度計11は、活性炭収容容器19の内部を通過した後の回収水の電気伝導度を測定する位置に設けられている。
【0041】
本実施形態のように、有機物などの被吸着物を吸着できる活性炭を収容する活性炭収容容器19を電気伝導度計11の上流側に設けておくことで、電気伝導度計11の上流側で被吸着物を活性炭収容容器19によって吸着することができる。その結果、電気伝導度計11で測定される電気伝導度の値に対する被吸着物の影響を排除することができる。つまり、電気伝導度計11から出力される電気伝導度の値が、回収水中に含まれるイオン濃度(即ち、イオン性物質の濃度)の高低を主要な要因として変化し、回収水中に含まれる有機物などの被吸着物の濃度を要因として変化しない。
但し、回収水中に有機物などの被吸着物が混入したり、含有され続けると、いずれ活性炭収容容器19を破過した被吸着物が電気伝導度計11まで到達する。その場合、第1実施形態で説明したのと同様に、電気伝導度計11の電極12の表面の活性炭が被吸着物を吸着することで電極12の表面積(即ち、活性炭の表面積)が減少するので、電気伝導度計11で測定される回収水の見かけの電気伝導度が相対的に減少する。つまり、電気伝導度計11の電極12の表面に活性炭を用いることで、回収水中における有機物等の被吸着物の含有程度を判定することもできる。
従って、測定対象とする回収水に含まれるイオン濃度と被吸着物の含有状態の両面からその水質を反映した電気伝導度の値を出力することができる。
【0042】
具体例を挙げると、有機物などの被吸着物の濃度が極めて低い間は(即ち、例えば、被吸着物が水質に及ぼす影響が低い間は)、その被吸着物濃度を測定する必要性は低いとも言える。これに対して、有機物などの被吸着物の濃度が高くなると(即ち、例えば、被吸着物が水質に及ぼす影響が高くなると)、その被吸着物濃度を測定する必要性は高くなるとも言える。
第2実施形態の水質判定装置10Bは、上記問題点に対して適切な装置構成となっている。例えば、水質判定装置10Bにおいて、有機物などの被吸着物の濃度が極めて低い間は活性炭収容容器19の有無に関わらず、被吸着物濃度を測定することはできないし、行う必要も無いといえる。これに対して、回収水中における有機物などの被吸着物の濃度が高くなる、あるいは一定濃度以上において含有し続けると、被吸着物が活性炭収容容器19を破過し、電気伝導度計11にまで被吸着物が到達するようになり、電気伝導度計11から出力される電気伝導度の値に被吸着物濃度が反映されるようになる。このように、第2実施形態の水質判定装置10Bは、測定対象とする回収水に含まれる被吸着物の濃度、もしくは一定濃度以上の含有の継続あるいは断続に応じて、電気伝導度計11から出力される電気伝導度の値に対するイオン濃度と被吸着物濃度との反映度合いが変化することで、それぞれの影響度を知ることができる利点がある。
【0043】
<第3実施形態>
図4は、第3実施形態の水質判定装置10C(10)の構成を説明する図である。
第3実施形態の水質判定装置10Cは、吸着材を収容した容器(以下、本実施形態では、吸着材としての活性炭を収容した活性炭収容容器19を例示する)と、その活性炭収容容器19の内部に流入する前の回収水の電気伝導度が測定可能であり、電気伝導度の測定に用いる電極12の少なくとも表面が活性炭を用いて構成されている第1の電気伝導度計23と、その活性炭収容容器19の内部を通過した後の回収水の電気伝導度が測定可能であり、電気伝導度の測定に用いる電極12の少なくとも表面が活性炭を用いて構成されている第2の電気伝導度計24とを備える。このうち、第1の電気伝導度計23と第2の電気伝導度計24の構成は、第1実施形態で説明した電気伝導度計11と同様であるため、その説明は省略する。
【0044】
図5は、水質判定装置10Cが備える電気伝導度計の出力例を示すグラフである。具体的には、回収水循環路17を流れる回収水中の被吸着物濃度が上昇した後に第1の電気伝導度計23及び第2の電気伝導度計24で測定される電気伝導度の値の時間的な変化例を示すグラフである。図5に示すように、回収水循環路17を流れる回収水中の被吸着物濃度が上昇すると、その被吸着物に対して直接曝される第1の電気伝導度計23の電極12の活性炭に先ず被吸着物が吸着されて電気伝導度が低下する。その時点では、活性炭収容容器19の内部で被吸着物が吸着されているため第2の電気伝導度計24の電極12には未だ被吸着物は到達していない。そのため、第2の電気伝導度計24で測定される電気伝導度の値には変化はない。つまり、第1の電気伝導度計23が測定した電気伝導度と、第2の電気伝導度計24が測定した電気伝導度に基づいて、測定対象とする回収水中における被吸着物の含有程度の高低を判定することができる。更に時間が経過すると、活性炭収容容器19を破過して、活性炭収容容器19の下流側に被吸着物が抜け出すことで、第2の電気伝導度計24の電極12にも被吸着物が到達することとなる。その結果、第2の電気伝導度計24で測定される電気伝導度の値も低下し始める。
【0045】
本実施形態の水質判定装置10Cでは、回収水中に被吸着物が存在していなければ、図4に示すように、活性炭収容容器19の上流側と下流側とに設けられる第1の電気伝導度計23の電極と第2の電気伝導度計24の電極とは何れも被吸着物を吸着していないため、それぞれで測定される電気伝導度の値は互いに同じであり且つ回収水の電気伝導度の正確な値であるはずである。つまり、第1の電気伝導度計23と第2の電気伝導度計24とを設けることで、それぞれで測定される回収水の電気伝導度の値が互いに同じであれば、その電気伝導度の値が正確な値であることを確実視できる。
【0046】
これに対して、回収水循環路17を流れる回収水中に被吸着物が存在する或いは回収水中の被吸着物濃度が上昇すると、第1の電気伝導度計23の電極12はその被吸着物を容易に吸着する。第2の電気伝導度計24の上流側に活性炭収容容器19が設けられているため、回収水循環路17を流れる回収水中の被吸着物濃度が上昇しても、活性炭収容容器19中の活性炭が被吸着物を吸着除去するため、第2電気伝導度計の電極12に被吸着物が到達するには、活性炭収容容器19に収納した吸着材を破過する必要があり、時間がかかる。つまり、第1の電気伝導度計23で測定される電気伝導度の値と第2の電気伝導度計24で測定される電気伝導度の値との間に差異を発生させるという形態で、測定対象とする回収水中における被吸着物の含有の継続、あるいは含有程度を判定することができる。
【0047】
加えて、回収水中に被吸着物が存在するとしても、活性炭収容容器19でその被吸着物を除去して第2の電気伝導度計24にまで到達する被吸着物の濃度を大幅に低下させることで、第2の電気伝導度計24で測定される電気伝導度の値に対する被吸着物の影響を排除することができる。つまり、第2の電気伝導度計24から出力される電気伝導度の値が、回収水に含まれるイオン性物質の濃度の高低を主要な要因として変化し、回収水に含まれる有機物などの被吸着物の濃度を要因として変化しないようにすることで、回収水の電気伝導度を正確に測定することができる。
【0048】
更に、水質判定装置10Cが、活性炭収容容器19の内部に流入する前の回収水の電気伝導度を第1の電気伝導度計23を用いて測定し、及び、活性炭収容容器19の内部を通過した後の回収水の電気伝導度を第2の電気伝導度計24を用いて測定する測定工程と、第1の電気伝導度計23が測定した回収水の第1の電気伝導度の低下開始タイミングから第2の電気伝導度計24が測定した回収水の第2の電気伝導度の低下開始タイミングまでの期間に活性炭収容容器19の内部を通過した回収水量と、活性炭収容容器19に収容されている吸着材としての活性炭による被吸着物の吸着可能量とに基づいて、第1の電気伝導度計23及び第2の電気伝導度計24のそれぞれの電極の表面を汚染して電気伝導性を有する電極表面積を減少させ得る物質の回収水中での含有濃度を判定する判定工程とを含む水質判定方法を実施できる。
【0049】
具体的には、制御部13が、第1の電気伝導度計23が測定した回収水の第1の電気伝導度の低下開始タイミングから第2の電気伝導度計24が測定した回収水の第2の電気伝導度の低下開始タイミングまでの期間に活性炭収容容器19の内部を通過した回収水量と、活性炭収容容器19に収容されている吸着材としての活性炭による被吸着物の吸着可能量とに基づいて、第1の電気伝導度計23及び第2の電気伝導度計24のそれぞれの電極の表面を汚染して電気伝導性を有する電極表面積を減少させ得る物質の回収水中での含有濃度を判定する判定手段として機能させることができる。
【0050】
ここで、上記判定手段として機能する制御部13は、回収水循環路17を循環する回収水の単位時間当たりの流量を、例えば流量計(図示せず)の計測値から知ることができる。或いは、回収水循環路17に回収水を一定流速で循環させている場合には、制御部13は、その既定の流速値(即ち、単位時間当たりの流量)を内部メモリなどに記憶していればよい。更に、活性炭収容容器19に収容されている吸着材としての活性炭による被吸着物の吸着可能量は、この水質判定装置10Cの製造時に定められた値であるので、制御部13は、その吸着可能量についても内部メモリなどに記憶していればよい。
その結果、制御部13は、第1の電気伝導度計23が測定した回収水の第1の電気伝導度の低下開始タイミングから第2の電気伝導度計24が測定した回収水の第2の電気伝導度の低下開始タイミングまでの期間と、回収水循環路17を循環する回収水の単位時間当たりの流量とに基づいて、その期間に活性炭収容容器19の内部を通過した回収水量を導出できる。更に、その回収水量中に含まれる被吸着物の累計が、活性炭収容容器19に収容されている活性炭の吸着可能量を超過したということであるので、制御部13は、回収水中での被吸着物の含有濃度を導出できる。
【0051】
補足すると、第1の電気伝導度計23が測定した回収水の第1の電気伝導度の低下開始タイミングは、被吸着物が第1の電気伝導度計23の下流側に設けられる活性炭収容容器19に流入し始めたタイミングであると見なすことができ、第2の電気伝導度計24が測定した回収水の第2の電気伝導度の低下開始タイミングは、被吸着物が第2の電気伝導度計24の上流側に設けられる活性炭収容容器19を破過したタイミング(即ち、活性炭収容容器19で処理された回収水量中に含まれる被吸着物の累計が、活性炭収容容器19に収容されている活性炭の吸着可能量を超過したタイミング)であると見なすことができる。つまり、第1の電気伝導度計23が測定した回収水の第1の電気伝導度の低下開始タイミングから第2の電気伝導度計24が測定した回収水の第2の電気伝導度の低下開始タイミングまでの期間に活性炭収容容器19の内部を通過した回収水量は、活性炭収容容器19に収容されている活性炭が吸着処理することができた回収水量であると見なすことができる。従って、判定手段としての制御部13は、その回収水量と活性炭収容容器19に収容されている活性炭による吸着可能量とに基づいて、回収水中での被吸着物の含有濃度を判定できる。
【0052】
以上のように、第3実施形態の水質判定装置10Cを用いることで、第1の電気伝導度計23が測定した電気伝導度と、第2の電気伝導度計24が測定した電気伝導度に基づいて、イオン性物質と電極12表面を汚染する物質との両方について、測定対象とする回収水中での含有程度をリアルタイムに判定することができる。加えて、第1の電気伝導度の低下とともにメンテナンスを行うといった運用を行う場合には、イオン交換樹脂装置9などを備えた水処理装置の安定運転ひいてはシステム全体の安定運転を実現できる。
【0053】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態では、燃料電池システムSにおいて水質判定装置10を用いる例を説明したが、他の用途に水質判定装置10を用いてもよい。例えば、水質判定装置10を、貫流ボイラーに供給される水の水質を判定するために用いてもよい。貫流ボイラーに供給される水に含まれる有機物量が増加すると、その有機物が伝熱管内に付着、堆積することによってボイラーの性能が低下したり閉塞して噴破破損する可能性がある。ところが、水質判定装置10を用いて、貫流ボイラーに供給される水の水質を判定することで、そのような問題を回避できる。
【0054】
<2>
上記実施形態では、水質判定装置10が、回収水循環路17を構成する配管の途中に設けられている例を説明したが、水質判定装置10を他の部位に設けてもよい。例えば、水質判定装置10を、イオン交換樹脂装置9の内部に併設してもよい。
【0055】
<3>
上記実施形態では、水質判定装置10が、イオン交換樹脂装置9によって処理された後の水の水質を判定する例を説明したが、他の装置によって処理された後の水の水質を判定することもできる。例えば、水質判定装置10よりも上流側に設けられた凝縮器、限外濾過膜、逆浸透膜及びイオン交換膜などの浄水製造装置によって処理された後の水の水質を判定することもできる。
【0056】
<4>
上記実施形態では、吸着材を収容した容器の例として、吸着材としての活性炭を収容した活性炭収容容器19を挙げたが、活性炭とは別の他の吸着材を収容した容器を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の水質判定装置は、イオン化して溶存している塩類やアンモニア、並びに、油分や微生物などの有機物等に関する水質を簡便に判定するために利用できる。
【符号の説明】
【0058】
10 水質判定装置
11 電気伝導度計
12 電極
12a 電極
12b 電極
19 活性炭収容容器(容器)
23 第1の電気伝導度計
24 第2の電気伝導度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水質を判定する水質判定装置であって、
水の電気伝導度が測定可能であり、電気伝導度の測定に用いる電極の少なくとも表面が活性炭を用いて構成されている電気伝導度計を備える水質判定装置。
【請求項2】
吸着材を収容した容器を備え、
前記電気伝導度計は、前記容器の内部を通過した後の水の電気伝導度を測定する請求項1に記載の水質判定装置。
【請求項3】
前記電気伝導度計が測定した電気伝導度が上昇傾向にあればイオン性物質が水中で増加傾向にあると判定し、前記電気伝導度計が測定した電気伝導度が低下傾向にあれば、前記電極の表面を汚染して電気伝導性を有する電極表面積を減少させ得る物質が水中に含まれ続けていると判定する判定手段を備える請求項1又は2に記載の水質判定装置。
【請求項4】
水質を判定する水質判定装置であって、
吸着材を収容した容器と、
前記容器の内部に流入する前の水の電気伝導度が測定可能であり、電気伝導度の測定に用いる電極の少なくとも表面が活性炭を用いて構成されている第1の電気伝導度計と、
前記容器の内部を通過した後の水の電気伝導度が測定可能であり、電気伝導度の測定に用いる電極の少なくとも表面が活性炭を用いて構成されている第2の電気伝導度計とを備える水質判定装置。
【請求項5】
前記第1の電気伝導度計が測定した水の第1の電気伝導度の低下開始タイミングから前記第2の電気伝導度計が測定した水の第2の電気伝導度の低下開始タイミングまでの期間に前記容器の内部を通過した水量と、前記容器に収容されている吸着材による被吸着物の吸着可能量とに基づいて、前記第1の電気伝導度計及び前記第2の電気伝導度計のそれぞれの前記電極の表面を汚染して電気伝導性を有する電極表面積を減少させ得る物質の水中での含有濃度を判定する判定手段を備える請求項4に記載の水質判定装置。
【請求項6】
電気伝導度の測定に用いる電極の少なくとも表面が活性炭を用いて構成されている電気伝導度計を用いて、水の電気伝導度を測定する測定工程と、
前記測定工程において測定された電気伝導度が上昇傾向にあればイオン性物質が前記水中で増加傾向にあると判定し、前記測定工程において測定された電気伝導度が低下傾向にあれば前記電極の表面を汚染して電気伝導性を有する電極表面積を減少させ得る物質が水中に含まれ続けていると判定する判定工程とを含む水質判定方法。
【請求項7】
吸着材を収容した容器の内部に流入する前の水の電気伝導度を、電気伝導度の測定に用いる電極の少なくとも表面が活性炭を用いて構成されている第1の電気伝導度計を用いて測定し、及び、前記容器の内部を通過した後の水の電気伝導度を、電気伝導度の測定に用いる電極の少なくとも表面が活性炭を用いて構成されている第2の電気伝導度計を用いて測定する測定工程と、
前記第1の電気伝導度計が測定した水の第1の電気伝導度の低下開始タイミングから前記第2の電気伝導度計が測定した水の第2の電気伝導度の低下開始タイミングまでの期間に前記容器の内部を通過した水量と、前記容器に収容されている吸着材による被吸着物の吸着可能量とに基づいて、前記第1の電気伝導度計及び前記第2の電気伝導度計のそれぞれの前記電極の表面を汚染して電気伝導性を有する電極表面積を減少させ得る物質の水中での含有濃度を判定する判定工程とを含む水質判定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−50414(P2013−50414A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189369(P2011−189369)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】