説明

水量測定器

【課題】球面状に形成された導体を利用した水量測定器を提供する。
【解決手段】水量測定器10は、複数の金属(導体)12を備えている。各金属12は、全体的に球面状に形成される。複数の金属12は、互いに半径が異なり、小さな半径の金属12を大きな半径の金属12で包み込むように、互いに中心位置を同じ位置にして配置される。各金属12の表面には絶縁膜が設けられ、複数の金属12のうちの隣接する金属12同士が正極と負極の対になってコンデンサとして機能する。つまり、正極である金属12aと金属12cが互いに電気的に接続され、負極である金属12bと金属12dが互いに電気的に接続され、正極の端子T+と負極の端子T-との間において静電容量Cが計測される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水量測定器に関し、特に導体間の静電容量から水の量を測定する水量測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
2枚の電極間に存在する物質に応じて静電容量の値が変化する現象を利用して、電極間の静電容量から水などの量(水位)を測定する技術が知られている。一方、車両内などにおいて水などの量を測定する場合には、車両などが様々な方向に頻繁に傾くため、傾いた場合においても正確に水などの量を測定できることが望ましい。
【0003】
このような背景から、例えば、特許文献1には、直方体状の容器内に対向する2枚の電極を2組設けて静電容量を検出し、容器の傾斜時の水位の検出精度を向上させる旨の技術が記載されている。ちなみに、特許文献2には、円筒状の複数の電極間の静電容量から水位を測定する旨の技術が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−205811号公報
【特許文献2】特開平11−211537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、導体間(電極間)の静電容量を利用した水の量の測定に関する様々な技術が提案されているなかで、本願発明者は、傾いた場合においても正確に水などの量を測定するための改良技術について研究開発を重ねてきた。特に、導体間の静電容量から水の量を測定する水量測定器における導体の形状に注目した。
【0006】
本発明は、その研究開発の過程において成されたものであり、その目的は、球面状に形成された導体を利用した水量測定器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の好適な態様である水量測定器は、各々が全体として球面状に形成された複数の導体を有し、前記複数の導体は、互いに半径が異なり、小さな半径の導体を大きな半径の導体で包み込むように、互いに中心を同じ位置に揃えて配置され、前記複数の導体のうちの隣接する導体同士が絶縁されてコンデンサとして機能し、前記コンデンサとして機能する導体同士の間に測定対象となる水が溜め込まれ、コンデンサから得られる静電容量に基づいて溜め込まれた水の量を測定することを特徴とする。
【0008】
上記態様において、導体は例えば金属であるが、金属以外の材料が利用されてもよい。また、導体は全体的に球面状であればよく、導体の一部において球面と異なる部分が存在してもよい。なお、球面状は、数学的な定義による真の球面形状を含むが、本発明の本質を逸脱しない範囲において真の球面形状を若干だけ歪めたものであってもよい。さらに、複数の導体は、互いに中心位置を同じ位置とすることが望ましいものの、本発明の本質を逸脱しない範囲において互いに中心位置を少しだけずらすような設計も許容される。なお、隣接する導体同士からなる導体対を1つだけ形成してコンデンサとして機能させてもよいし、導体対を2つまたはそれ以上形成して、複数の導体対によりコンデンサが形成されてもよい。
【0009】
上記態様により、球面状に形成された導体を利用した水量測定器が提供される。また、上記態様によれば、例えば、全体として球面状に形成された導体と水との接触面の面積が傾きによって大きく変化しないことなどから、導体が他の形状である場合に比べて、傾いた場合においても正確に水の量を測定することが可能になる。
【0010】
望ましい態様において、前記隣接する導体同士からなる導体対が2つ形成され、小さな半径の導体対を大きな半径の導体対で包み込み、2つの導体対の正極側の導体同士が電気的に接続されて2つの導体対の負極側の導体同士が電気的に接続され、2つの導体対によって前記コンデンサが形成されることを特徴とする。
【0011】
望ましい態様において、前記コンデンサとして機能する導体同士の間に溜め込まれた水の排出を制御するバルブを有し、溜め込まれた水の量を測定した後にバルブを制御して水を排出することにより、次々に溜め込まれる水の量を継続的に測定することを特徴とする。
【0012】
望ましい態様において、前記複数の導体のうちの最も内側に配置される導体の内側に水が到達したことを検知するセンサを有することを特徴とする。
【0013】
望ましい態様において、前記コンデンサとして機能する導体同士の間に溜め込まれた水の温度を検知する温度センサを有し、温度センサによって検知された水の温度に応じて水の誘電率の温度変動を補正し、コンデンサから得られる静電容量に基づいて溜め込まれた水の量を測定することを特徴とする。
【0014】
望ましい態様において、前記複数の導体のうちのいくつかの導体に対して各導体ごとに複数の孔が設けられ、複数の孔を介して水を行き来させることを特徴とする。望ましい態様において、前記複数の導体を冷却する冷却機能を有することを特徴とする。望ましい態様において、前記コンデンサとして機能する導体同士の間に溜め込まれた水を温めるヒータを有し、溜め込まれた水を水蒸気にして排出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、球面状に形成された導体を利用した水量測定器が提供される。例えば、本発明の好適な態様によれば、全体として球面状に形成された導体と水との接触面の面積が傾きによって大きく変化しないことなどから、導体が他の形状である場合に比べて、傾いた場合においても正確に水の量を測定することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1には、本発明に係る水量測定器の好適な実施形態が示されており、図1はその断面図である。図1に示す水量測定器10は、複数の金属12(12a〜12d)を備えている。各金属12は、全体的に球面状(球体状)に形成される。複数の金属12は、互いに半径が異なり、小さな半径の金属12を大きな半径の金属12で包み込むように、互いに中心位置を同じ位置にして配置される。
【0018】
図1には、球面状に形成された複数の金属12(12a〜12d)の中心位置を通る平面による水量測定器10の断面が示されている。図1において、複数の球面状の金属12は、外側から金属12a、金属12b、金属12c、金属12dの順に配置されている。
【0019】
各金属12の表面には図示しない絶縁膜が設けられ、複数の金属12のうちの隣接する金属12同士が正極と負極の対になってコンデンサとして機能する。図1においては、隣接する金属12同士からなる金属対が2つ形成されている。つまり、金属12aと金属12bによる金属対、金属12cと金属12dによる金属対が形成されている。そして、正極である金属12aと金属12cが互いに電気的に接続され、負極である金属12bと金属12dが互いに電気的に接続される。こうして、複数の金属12が交差指状に接続されて2つの金属対によってコンデンサが形成され、正極の端子T+と負極の端子T-との間において静電容量Cが計測される。
【0020】
隣接する金属12同士の間には測定対象となる水が溜め込まれる。例えば、燃料電池の排出口から水量測定器10のガス入口22に水を含んだ排出ガスが供給され、排出ガスに含まれる水あるいは排出ガスと共に燃料電池から排出される水が測定対象となる。
【0021】
複数の金属12のうちのいくつかの金属12には複数の孔が設けられる。例えば、金属12bと金属12cと金属12dの各々の表面の全域に複数の小さな孔が設けられる。そして、設けられた複数の孔を介して水を行き来させる。なお、金属12dには孔を設けず、金属12dの内側に水が入り込まないようにしてもよい。また、金属12aは容器として機能させるため、孔を設けないことが望ましい。もちろん、金属12aにも孔を設けて、金属12aを覆うように容器が設けられてもよい。
【0022】
コンデンサとして機能する金属12と金属12との間に水が溜まると、空気と水とでは互いに誘電率が2桁程度(80倍程度)異なるため、水の量に応じてコンデンサの静電容量が変化する。例えば、球体状の金属12の表面に接触する水の接触面積に比例して静電容量が増加する。図1の水量測定器10は、端子T+と端子T-との間の静電容量Cが計測され、静電容量Cの値から、水量測定器10内に溜め込まれた水の量を測定する。例えば、静電容量Cから水の量が計算によって導き出される。もちろん、静電容量Cの値と水の量との間の対応関係を予め得ておき、その対応関係から、計測された静電容量Cの値に対応する水の量を得るようにしてもよい。そして、例えば燃料電池から排出される水の量を計測することにより、その計測結果から燃料電池の含水量などが推定される。
【0023】
上述したように、例えば、球体状の金属12の表面に接触する水の接触面積に比例して静電容量が増加する。図1の水量測定器10では、金属12が球面状に形成されているため、水量測定器10内に溜め込まれた水の量が同じであれば、金属12と水との接触面積が水量測定器10の傾きによって殆ど変化しない。そのため、水量測定器10が傾いた場合においても、例えば燃料電池から排出される水の量を正確に測定することが可能になる。なお、ガス出口24からガスと共に排出される水蒸気の量を湿度センサなどによって計測することにより、燃料電池から排出される水の量をより正確に測定することができる。
【0024】
さらに、傾き(揺れ)に伴う測定誤差を小さくするためには、水と金属12との接触面積に対して、金属12に接触しない水面の面積が小さくなればよい。そのため、本実施形態においては、例えば、隣接する2つの金属12の間の距離を小さくし、球面状の金属12の半径を大きくすることが望ましい。また、金属対の数を増やすことにより、測定誤差を小さくしつつ測定できる水の量を増やすようにしてもよい。
【0025】
水量測定器10には、水の排出口26にバルブ14が設けられている。バルブ14は、金属12同士の間に溜め込まれた水の排出を制御する。つまり、例えば測定限界量まで溜め込まれた水の量を測定した後にバルブ14を制御して水を排出口26から排出し、排出後にさらに溜め込まれる水の量を測定する。こうして、例えば、次々に溜め込まれる水の量の測定と排出を繰り返すことにより、継続的に、必要に応じて半永久的に、水の量を測定することが可能になる。また、次々に溜め込まれる水の量の測定結果を積算することにより、例えば燃料電池から排出される水の総量などを測定することもできる。
【0026】
また、水量測定器10には、最も内側に配置される金属12dの内側に水が到達したことを検知するセンサ16が設けられている。金属12dの内側に溜まった水は、静電容量の変化に適切に反映されない。そこで、センサ16によって水の到達が検知された場合には、例えば、所定量の水を排出口26から排出してから水の量を測定する。なお、金属12dの内側に水が入り込まない構造としてもよい。また、金属12dの内側に水が入り込む場合において、金属12dの内側に溜まった水の量を水位センサなどによって測定してもよい。
【0027】
また、複数の金属12を冷却する冷却機能を設けてもよい。例えば、空冷や水冷機能によって金属12aの外側から水量測定器10を冷却する。燃料電池に利用される冷却循環水を利用して水量測定器10を冷却してもよい。例えば、ガス出口24からガスと共に排出される水蒸気の量を湿度センサなどによって計測するよりも、水を液体の状態で測定したい場合に、複数の金属12を冷却して水を冷やすことにより、水蒸気を水(液体)にして液体の状態で水の量を測定することが可能になる。
【0028】
また、溜め込まれた水を温めるリボンヒータ18が設けられてもよい。リボンヒータ18により、金属12同士の間に溜め込まれた水を温め、水を水蒸気にしてガス出口24から排出してもよい。これによりバルブ14の利用頻度を減らすことが可能になる。なお、ガス出口24から排出される水蒸気の量は、湿度センサなどによって計測される。
【0029】
また、水量測定器10には、水量測定器10に溜め込まれた水の温度を検知する温度センサ17が水底に設けられる。水の誘電率は温度によって変動する。そのため、水温に応じて温度補正をすることが望ましい。
【0030】
図2および図3は、水温と静電容量との対応関係を説明するための図である。図2には、図1に示す複数の金属12の部分拡大図が示されている。図2には、隣接する金属間の距離(電極間の距離)Dと、最も外側の金属の半径(装置の半径)Rと、各金属の厚さ(電極の厚さ)Tが示されている。
【0031】
そして、電極間の距離Dを2mm、装置の半径Rを50mm、電極の厚さTを0.5mm、電極である金属の総数を16枚(正極8枚と負極8枚)とし、最も内側の金属の内側に水が入らないことを条件として、各温度ごとの水の誘電率を用いて、静電容量を計算すると図3の結果が得られる。
【0032】
図3は、横軸を水の量(水量)として縦軸に静電容量を示したグラフである。図3には、10℃〜60℃までの各水温ごとに、水量と静電容量との対応関係が示されている。図3のグラフから分かるように、水温に応じて水の誘電率が変化することにより、静電容量も変化する。全体的な傾向として、水温が低い場合に静電容量が大きくなっている。
【0033】
図1の水量測定器10は、温度センサ17によって検知された水の温度に応じて水の誘電率の温度変動を補正する。例えば、端子T+と端子T-との間の静電容量Cの値と、温度センサ17によって検知された水の温度と、に基づいて、図3のグラフから水量を特定することにより、温度の変化が反映された、つまり温度補正された水量の測定結果を得ることが可能になる。
【0034】
なお、図3のグラフは、電極である金属の総数を16枚とするなどの条件から得られているが、実際の水量測定器10の構成に対応した条件で、図3と同様なグラフを作成しておくことが望ましい。そして、水量測定器10の構成に対応したグラフを利用することで、より正確に温度補正を行うことが可能になる。
【0035】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る水量測定器の断面図である。
【図2】複数の金属の部分拡大図である。
【図3】横軸を水量として縦軸に静電容量を示したグラフである。
【符号の説明】
【0037】
10 水量測定器、12 金属、14 バルブ、16 センサ、17 温度センサ、18 リボンヒータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が全体として球面状に形成された複数の導体を有し、
前記複数の導体は、互いに半径が異なり、小さな半径の導体を大きな半径の導体で包み込むように、互いに中心を同じ位置に揃えて配置され、
前記複数の導体のうちの隣接する導体同士が絶縁されてコンデンサとして機能し、
前記コンデンサとして機能する導体同士の間に測定対象となる水が溜め込まれ、コンデンサから得られる静電容量に基づいて溜め込まれた水の量を測定する、
ことを特徴とする水量測定器。
【請求項2】
請求項1に記載の水量測定器であって、
前記隣接する導体同士からなる導体対が2つ形成され、
小さな半径の導体対を大きな半径の導体対で包み込み、
2つの導体対の正極側の導体同士が電気的に接続されて2つの導体対の負極側の導体同士が電気的に接続され、
2つの導体対によって前記コンデンサが形成される、
ことを特徴とする水量測定器。
【請求項3】
請求項2に記載の水量測定器であって、
前記コンデンサとして機能する導体同士の間に溜め込まれた水の排出を制御するバルブを有し、
溜め込まれた水の量を測定した後にバルブを制御して水を排出することにより、次々に溜め込まれる水の量を継続的に測定する、
ことを特徴とする水量測定器。
【請求項4】
請求項3に記載の水量測定器であって、
前記複数の導体のうちの最も内側に配置される導体の内側に水が到達したことを検知するセンサを有する、
ことを特徴とする水量測定器。
【請求項5】
請求項4に記載の水量測定器であって、
前記コンデンサとして機能する導体同士の間に溜め込まれた水の温度を検知する温度センサを有し、
温度センサによって検知された水の温度に応じて水の誘電率の温度変動を補正し、コンデンサから得られる静電容量に基づいて溜め込まれた水の量を測定する、
ことを特徴とする水量測定器。
【請求項6】
請求項5に記載の水量測定器であって、
前記複数の導体のうちのいくつかの導体に対して各導体ごとに複数の孔が設けられ、複数の孔を介して水を行き来させる、
ことを特徴とする水量測定器。
【請求項7】
請求項6に記載の水量測定器であって、
前記複数の導体を冷却する冷却機能を有する、
ことを特徴とする水量測定器。
【請求項8】
請求項6に記載の水量測定器であって、
前記コンデンサとして機能する導体同士の間に溜め込まれた水を温めるヒータを有し、
溜め込まれた水を水蒸気にして排出する、
ことを特徴とする水量測定器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−115749(P2009−115749A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292053(P2007−292053)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】