説明

汚泥掻寄機

【課題】プラスチック製の駆動軸を採用している汚泥掻寄機において、コストを増加させることなく駆動軸のたわみを抑制することができる汚泥掻寄機を提供すること。
【解決手段】その外周に取り付けられた一対の駆動用スプロケット61,61を介して一対のチェーン2,2を駆動するプラスチック製の駆動軸6Aに、チェーン2,2からの曲げ荷重T,Tに対向する浮力Fを発生させる密閉空間64を一対の駆動用スプロケット61,61同士の間に設け、曲げ荷重T,Tによる曲げを上述のような簡易な構成により発生する浮力Fによって軽減し、駆動軸6Aのたわみを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥掻寄機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、沈殿池等の槽の底に堆積した汚泥等の堆積物を掻き寄せる汚泥掻寄機として、槽の底面と水面との間に張設された一対のチェーンに板状のフライト(掻寄羽根)を複数取り付け、このフライトを槽の底面に沿うように周回軌道を周回させ、槽の底に堆積した堆積物を掻き寄せる、いわゆるチェーンフライト式の汚泥掻寄機が知られている。
【0003】
このようなチェーンフライト式の汚泥掻寄機では、チェーンを駆動させるための駆動軸が腐食することを防止するために、FRP(Fiber Reinforced Plastic)等のプラスチック製の駆動軸が採用されることがある。例えば、以下の特許文献1に記載の汚泥掻寄せ機では、中空角柱状に形成されたFRP製の駆動軸に、当該駆動軸の外形に沿った角穴が設けられている駆動スプロケットホイールが嵌着されている。そして、これにより、駆動軸に穴等の加工を施すことなく、駆動スプロケットホイールと駆動軸とを一体に回転することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−62206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、汚泥掻寄機では、フライトで汚泥を掻き寄せる際の負荷やチェーンの自重等による荷重が、チェーンと噛合するスプロケットホイールを介して駆動軸に負荷され、当該駆動軸にたわみを発生させる曲げ荷重として作用する。上述のようなプラスチック製の駆動軸を採用している汚泥掻寄機では、駆動軸の剛性が比較的低いために上記曲げ荷重により駆動軸にたわみが生じるおそれがあり、このたわみにより駆動軸に直角に取り付けられたスプロケットに傾きが生じる場合がある。このように、スプロケットに傾きが生じると、スプロケットの刃先の間隔が正規間隔からずれてスプロケットとチェーンとの噛み合わせが悪化し、歯飛びや脱輪が生じる可能性がある。そのため、プラスチック製の駆動軸を採用する例えば特許文献1等の汚泥掻寄機では、駆動軸に発生するたわみを抑制するために軸径を太くして駆動軸の剛性を確保する必要があり、駆動軸の製造コストが増加するという問題がある。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、プラスチック製の駆動軸を採用している汚泥掻寄機において、コストを増加させることなく駆動軸のたわみを抑制することができる汚泥掻寄機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る汚泥掻寄機は、槽内を周回し、その一部が槽の底に沿うように張設され、槽の底に堆積した堆積物を掻き寄せる掻寄羽根が周回方向に沿って複数取り付けられた一対の無端チェーンと、その外周に取り付けられた一対の駆動用スプロケットホイールを介して一対の無端チェーンを駆動するプラスチック製の駆動軸とを備え、駆動軸の内部には、一対の無端チェーンからの荷重に対向する浮力を発生させる密閉空間が、一対の駆動用スプロケットホイール同士の間に設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、その外周に取り付けられた一対の駆動用スプロケットホイールを介して一対の無端チェーンを駆動するプラスチック製の駆動軸に、無端チェーンからの荷重に対向する浮力を発生させる密閉空間が、一対の駆動用スプロケットホイール同士の間に設けられている。このため、無端チェーンから駆動用スプロケットホイールを介して駆動軸に負荷される曲げ荷重による曲げが、上述のような簡易な構成により発生する浮力によって軽減され、駆動軸のたわみが抑制される。従って、プラスチック製の駆動軸を採用している汚泥掻寄機において、コストを増加させることなく駆動軸のたわみを抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プラスチック製の駆動軸を採用している汚泥掻寄機において、コストを増加させることなく駆動軸のたわみを抑制することができる汚泥掻寄機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態に係る汚泥掻寄機を示す概略正面図である。
【図2】図1の汚泥掻寄機の駆動軸を示す拡大側面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る汚泥掻寄機の駆動軸を示す拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明の汚泥掻寄機の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明の第1実施形態に係る汚泥掻寄機を示す概略正面図、図2は図1の汚泥掻寄機の駆動軸を示す拡大側面図である。汚泥掻寄機100は、沈殿池等の槽の底に堆積した汚泥等の堆積物を掻き寄せるいわゆるチェーンフライト式の汚泥掻寄機であり、図1に示すように、槽1の内部に設けられている。
【0013】
汚泥掻寄機100は、槽1内を周回する一対のチェーン(無端チェーン)2,2を備えており、この一対のチェーン2,2は、槽1の幅方向(紙面垂直方向)に離間し対向して設けられている。チェーン2には、槽1の底に堆積した汚泥等の堆積物を掻き寄せるためのフライト(掻寄羽根)21が、周回方向に沿って複数取り付けられており、フライト21の端部がチェーン2,2にそれぞれ連結されている。槽1の下部一方側(紙面右側)には、その外周に幅方向に離間して取り付けられた一対の第一スプロケット31,31を有する第一従動軸3が設けられており、下部他方側には、その外周に幅方向に離間して取り付けられた一対の第二スプロケット41,41を有する第二従動軸4が設けられている。そして、チェーン2は、その一部が槽1の底に沿うように第一スプロケット31及び第二スプロケット41に掛け渡されて張設されている。
【0014】
槽1の上部略中央部には、その外周に幅方向に離間して取り付けられた一対の第三スプロケット51,51を有する第三従動軸5が設けられている。また、槽1の上部他方側、すなわち第二従動軸4の上方には、その外周に幅方向に離間して取り付けられた一対の駆動用スプロケット(駆動用スプロケットホイール)61,61を有する駆動軸6Aが設けられている。そして、第一スプロケット31及び第二スプロケット41に掛け渡されたチェーン2は、さらに第三スプロケット51及び駆動用スプロケット61に掛け渡され、第三スプロケット51と駆動用スプロケット61との間の部分は、槽1内に形成されている水面に沿うようにされている。
【0015】
駆動軸6Aは、一対の駆動用スプロケット61,61を介して一対のチェーン2,2を駆動するためのものである。この駆動軸6Aは、FRP等のプラスチックから形成されており、円筒状をなしている。図2に示すように、一対の駆動用スプロケット61,61の外側であって、幅方向一方側(図2において紙面左側)には、槽1の側壁に配置されたモータ7(図1参照)からの動力によって駆動軸6Aを回転させる軸回転用スプロケット62が設けられ、当該駆動軸6Aは、駆動用スプロケット61、軸回転用スプロケット62よりさらに外側に配置された軸受65,65に回転自在に支承されている。そして、軸回転用スプロケット62及びモータ7のモータ用スプロケット71には、駆動チェーン8が掛け渡されている。
【0016】
駆動軸6Aの軸線方向中央部であって、一対の駆動用スプロケット61,61同士の間には、一対の仕切り壁63,63によって形成された密閉空間64が設けられている。この密閉空間64は、対向する仕切り壁63,63により密閉状態とされて槽1に浸漬した際に原水が侵入しないようになっており、その内部には空気等の気体が充填されている。仕切り壁63,63は、駆動軸6Aと同様にFRPにより形成されている。
【0017】
なお、図1に示すように、駆動用スプロケット61と第三スプロケット51との間には、フライト21を介してチェーン2を下から支持し水平方向に案内する一対のリターンレール9,9が対向し延在している。また、第一スプロケット31と第二スプロケット41との間には、フライト21を介してチェーン2を下から支持し水平方向に案内する一対のガイドレール10,10が対向し延在している。
【0018】
このような汚泥掻寄機100では、モータ7により駆動チェーン8及び軸回転用スプロケット62を介して駆動軸6Aを回転させ、これにより、駆動軸6Aに取り付けられた駆動用スプロケット61,61を介して一対のチェーン2,2を駆動し周回させる。チェーン2の周回に伴い、フライト21を槽1の底及び水面に沿って移動させ、槽1の底に堆積した汚泥等の堆積物を掻き寄せて槽1の底に設けられた収集ピット1A(図1参照)に収集すると共に、水面に浮上したスカムを掻き寄せて第三スプロケット51近傍の収集樋(不図示)に収集する。
【0019】
このとき、フライト21で汚泥やスカムを掻き寄せる際の負荷やチェーン2の自重等による荷重が、チェーン2と噛合する駆動用スプロケット61を介して駆動軸6Aに下向きに負荷され、図2に示すように、駆動軸6Aにたわみを発生させる曲げ荷重Tとして作用する。一方、駆動軸6Aに設けられた密閉空間64では、浮力Fが上向きに発生する、すなわち、その外周に取り付けられた一対の駆動用スプロケット61,61を介して一対のチェーン2,2を駆動するプラスチック製の駆動軸6Aに、チェーン2,2からの荷重に対向する浮力Fを発生させる密閉空間64が、一対の駆動用スプロケット61,61の間に設けられているため、一対のチェーン2,2からの曲げ荷重T,Tによる曲げが、密閉空間64を設けるという簡易な構成により発生する浮力Fで軽減され、駆動軸6Aのたわみが抑制される。従って、プラスチック製の駆動軸6Aを採用している汚泥掻寄機100において、駆動軸6Aの軸径の増加を低減することが可能となり、コストを増加させることなく駆動軸6Aのたわみを抑制することができる。
【0020】
次に本発明の第2実施形態に係る汚泥掻寄機について説明する。
【0021】
図3は、本発明の第2実施形態に係る汚泥掻寄機の駆動軸を示す拡大側面図である。図3に示すように、本実施形態に係る汚泥掻寄機200の駆動軸6Bでは、円筒状をなすプラスチック製の駆動軸本体部66の両端の開口部を塞ぐように鍔部を有する円板状の蓋部67,67が設けられ、これにより密閉空間64が形成されている。
【0022】
蓋部67は、FRP等のプラスチックから形成されており、駆動軸本体部66を形成する際に同時に形成されている。蓋部67,67の軸線方向外側には、当該蓋部67,67を介して駆動軸本体部66を支持するための支持部68,68がボルト締結により固定されている。この支持部68は、ステンレス等の金属で形成されており、蓋部67と同様な直径及び厚さを有し蓋部67にボルト固定された円板部68aと、この円板部68aよりも小径をなして外方に突出する円柱部68bとを有している。この円柱部68bは、軸受65に回転自在に支承されている。円板部68aの軸線方向外側の側面には、蓋部67と支持部68とを締結しているボルトによって、併せて駆動用スプロケット61が共締めされている。このようにして、駆動軸6Bの内部に、一対のチェーン2,2からの曲げ荷重T,Tに対向する浮力Fを発生させる密閉空間64が、一対の駆動用スプロケットホイール61,61同士の間に設けられている。
【0023】
このような汚泥掻寄機200が、第1実施形態に係る汚泥掻寄機100と同様な効果を奏することは言うまでもない。
【0024】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、第1実施形態において、仕切り壁63,63は、FRPにより形成されているが、これに代えて、金属板等で形成してもよく、要は、密閉空間64の密閉性を確保できる材料で形成されていれば良い。
【0025】
また、第1実施形態において、仕切り壁63,63は駆動用スプロケット61,61の間に設けられているが、駆動用スプロケット61,61の外側に設けられていても良く、要は、密閉空間64が駆動用スプロケット61,61の間に形成されていれば良い。
【符号の説明】
【0026】
1…槽、2…チェーン(無端チェーン)、6A,6B…駆動軸、21…フライト(掻寄羽根)、61…駆動用スプロケット(駆動用スプロケットホイール)、64…密閉空間、100,200…汚泥掻寄機、F…浮力。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽内を周回し、その一部が前記槽の底に沿うように張設され、前記槽の底に堆積した堆積物を掻き寄せる掻寄羽根が周回方向に沿って複数取り付けられた一対の無端チェーンと、
その外周に取り付けられた一対の駆動用スプロケットホイールを介して前記一対の無端チェーンを駆動するプラスチック製の駆動軸とを備え、
前記駆動軸の内部には、前記一対の無端チェーンからの荷重に対向する浮力を発生させる密閉空間が、前記一対の駆動用スプロケットホイール同士の間に設けられていること、
を特徴とする汚泥掻寄機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−210591(P2012−210591A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77827(P2011−77827)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(507036050)住友重機械エンバイロメント株式会社 (88)