説明

油中水型油脂組成物の凝集防止方法

【課題】粉末調味原料及び水系調味原料を含有する油中水型油脂組成物の調製時に生じる凝集を抑制する方法を提供する。
【解決手段】油脂(例えば、なたね油など)、粉末調味原料(例えば、上白糖、オニオンパウダーなど)、水系調味原料(例えば、ポークエキス、トマトペースト、チキンブイヨンなど)及び乳化剤を含有する油中水型油脂組成物の製造において、前記乳化剤としてショ糖脂肪酸エステル(例えば、三菱化学フーズ社製の「リョ−トーシュガーエステルS−570」など)およびポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(例えば、理研ビタミン社製の「ポエムPR−100」など)を添加することを特徴とする油中水型油脂組成物の凝集防止方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水型油脂組成物の凝集防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カレー、シチュー、ハヤシ、ホワイトソース等の加工食品にとろみ、コク味、香味を付与するためにルウが用いられている。ルウは、一般に小麦粉及び食用油脂を混合加熱した後、香辛料、調味料等を混合することで製造される。
【0003】
このようなルウの製造では、原料の混合を容易にするため、予め、香辛料や砂糖などの粉末調味原料とエキス類などの水系調味原料を含有する油中水型油脂組成物を調製することが行われている。しかしながら、油脂に各原料を加えて攪拌すると、油脂中で粉末調味原料と水系調味原料が複合体を形成して容易に目視可能な程度に成長する現象(即ち、凝集)が発生し易い。いったん凝集が発生すると、原料が均一に混合できず、また油脂組成物の流動性も失われるため問題となっている。
【0004】
他方、ルウの製造時の問題ではないが、同様の問題を解決する手段として、油脂、香辛料、調味料、エキス類、グリセリン有機酸脂肪酸エステルおよびHLB5〜16のショ糖脂肪酸エステルを含有することを特徴とするスープカレー用食品素材(特許文献1参照)が知られている。
【0005】
しかし、上記文献記載の方法をルウの製造に応用しても、必ずしも満足できる結果が得られないため、これに替わる方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−245589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、粉末調味原料及び水系調味原料を含有する油中水型油脂組成物の調製時に生じる凝集を抑制する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、特定の二種類の乳化剤を添加することが凝集の抑制に優れた効果を発揮することを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)油脂、粉末調味原料及び水系調味原料を含有する油中水型油脂組成物の製造において、ショ糖脂肪酸エステル及びポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを添加することを特徴とする油中水型油脂組成物の凝集防止方法、
(2)油中水型油脂組成物がルウの製造に用いられるものである前記(1)に記載の凝集防止方法、
からなっている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法により、粉末調味原料及び水系調味原料を含有する油中水型油脂組成物の調製時に生じる凝集が抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に用いられる油脂としては、食用可能な油脂であれば特に制限はなく、例えば大豆油、なたね油、綿実油、サフラワー油、ヒマワリ油、米糠油、コーン油、椰子油、パーム油、パーム核油、落花生油、オリーブ油、ハイオレイック菜種油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックコーン油またはハイオレイックヒマワリ油などの植物油脂、牛脂、ラード、魚油または乳脂などの動物油脂などが挙げられる。また、所望により、硬化油(例えば、硬化ベニバナ油、硬化大豆油、硬化ヒマワリ油、硬化コーン油、硬化菜種油、硬化綿実油、硬化パーム油、硬化パーム核油、硬化やし油、硬化牛脂、硬化ラード、硬化魚油など)を併用してもよい。
【0012】
本発明に用いられる粉末調味原料としては、食用可能な粉末であれば特に制限はなく、例えば、食塩、甘味料(砂糖、蜂蜜、果糖、麦芽糖、エリスリトール、トレハロース、マルチトース、甘草抽出物、ステビア、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース、キシリトール、ソルビトール等のうち粉末状のもの)、香辛料(例えば、カルダモン、ナツメグ、シナモン、グローブ、メース、クミン、コリアンダー、ディル、セロリシード、オールスパイス、ガーリック、フェンネル、ベイリーブス、タイム、キャラウェー、フェヌグリーク、ホワイトペッパー、ブラックペッパー、レッドペッパー、ジンジャー、マスタード、ターメリック、パブリカ、サフラン、ローズマリー、ワサビ等のうちのうち粉末状のもの)、旨み調味料(グルタミン酸ソーダ、L−トリコロミン酸、L−イポテン酸、5’−イノシン酸ナトリウム、5’−グアニル酸ナトリウム等のうち粉末状のもの)、五香粉、チリパウダー、オニオンパウダー、ガーリックパウダー、粉末状の蛋白質加水分解物、粉末状の発酵調味料、粉末状の酵母エキスなどが挙げられる。これら粉末調味原料は、一種類で用いてもよいし、また二種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0013】
本発明に用いられる水系調味原料としては、食用の水分含有物であって流動性のあるものであれば特に制限はなく、例えば、牛肉、牛骨、豚肉、豚骨、鶏肉、鶏ガラなどを原料とする畜肉エキス(例えば、ビーフエキス、ポークエキス、チキンエキスなど)、えび、かに、鯛、鱈、鰯、アサリ、ハマグリなどを原料とする魚介エキス(例えば、エビエキス、イカエキス、ホタテエキスなど)、じゃがいも、かぼちゃ、玉ねぎ、ニンジン、セロリーなどの野菜類を原料とする野菜エキス、かつお節、雑節、あご、干しいたけ、昆布などを煮出したいわゆる出し汁などが挙げられる。これら水系調味原料は、一種類で用いてもよいし、また二種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0014】
上記水系調味原料は、例えば前記原料を水と共に煮て、煮出した原料と煮汁を分離し、煮汁を必要ならろ過し、得られたろ液を濃縮することにより製造し得る。また、水系調味原料の水分含有量は、通常約30〜95質量%である。
【0015】
本発明に用いられるショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖と脂肪酸とのエステル化生成物であり、その構成脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はない。工業的には、ステアリン酸を約70質量%以上含有する脂肪酸を用いるのが一般的である。
【0016】
上記ショ糖脂肪酸エステルとしては、ショ糖脂肪酸エステル100質量%中、モノエステル体の含有量が約20〜60%であるショ糖脂肪酸エステルが好ましく、モノエステル体の含有量が約20〜40%であるショ糖脂肪酸エステルがより好ましく、モノエステル体の含有量が約25〜35%であるショ糖脂肪酸エステルがさらに好ましい。ショ糖脂肪酸エステル中のモノエステル体の含有量は、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる有機系GPC分析(ゲル浸透クロマトグラフ分析)を行い、順相系カラムクロマトグラフィーにより精製したショ糖脂肪酸エステルを標準試料として作成した検量線から、絶対検量線法により求めることができる。
【0017】
モノエステル体の含有量が約20〜60質量%であるショ糖ステアリン酸エステルとしては、例えば、リョートーシュガーエステルS−370(商品名;三菱化学フーズ社製)、リョートーシュガーエステルS−370F(商品名;三菱化学フーズ社製)、リョートーシュガーエステルS−570(商品名;三菱化学フーズ社製)、リョートーシュガーエステルS−770(商品名;三菱化学フーズ社製)、リョートーシュガーエステルS−970(商品名;三菱化学フーズ社製)、リョートーシュガーエステルS−1170(商品名;三菱化学フーズ社製)、リョートーシュガーエステルS−1170F(商品名;三菱化学フーズ社製)、DKエステルF−50(商品名;第一工業製薬社製)、DKエステルF−70(商品名;第一工業製薬社製)、DKエステルF−90(商品名;第一工業製薬社製)、DKエステルF−110(商品名;第一工業製薬社製)などが挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。
【0018】
本発明で用いられるポリグリセリン縮合リシノール酸エステルは、ポリグリセリンと縮合リシノール酸とのエステル化生成物であり、エステル化反応等自体公知の方法で製造される。
【0019】
ポリグリセリンは、通常グリセリンもしくはグリシドール或いはエピクロルヒドリン等を加熱し、重縮合反応させて得られる重合度の異なるポリグリセリンの混合物である。本発明で用いられるポリグリセリンとしては平均重合度が2〜15程度のものが挙げられ、具体的にはジグリセリン(平均重合度2)、トリグリセリン(平均重合度3)、テトラグリセリン(平均重合度4)、ヘキサグリセリン(平均重合度6)、オクタグリセリン(平均重合度8)、デカグリセリン(平均重合度10)等を例示できるが、好ましくは平均重合度が3〜10程度のものである。
【0020】
縮合リシノール酸はリシノール酸を加熱し、重縮合反応させて得られる混合物である。本発明で用いられる縮合リシノール酸としては平均重合度が2〜10程度のものが挙げられ、好ましくは平均重合度が3〜6程度のものである。
【0021】
ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルとしては、例えば、ポエムPR−100(製品名;理研ビタミン社製)、ポエムPR−300(製品名;理研ビタミン社製)、SYグリスターCR−310(製品名;阪本薬品工業社製)、SYグリスターCR−500(製品名;阪本薬品工業社製)、サンソフト818SK(製品名;太陽化学社製)等が商業的に製造・販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0022】
本発明に係る油中水型油脂組成物の製造において、ショ糖脂肪酸エステルおよびポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを添加する方法に特に制限はないが、例えば以下の工程(1)及び(2)を実施することができる。
工程(1):油脂を、必要なら加熱して約60〜90℃に保ち、その中にショ糖脂肪酸エステルおよびポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを添加して、例えばクレアミックス(型式:CLM−0.8S;エム・テクニック社製)を用いて、回転数約2000〜8000rpm、撹拌時間約2〜20分間攪拌・混合する。
工程(2):(1)で作製した混合物に粉末調味原料及び水系調味原料を加えて、例えばクレアミックス(型式:CLM−0.8S;エム・テクニック社製)を用いて、回転数約2000〜8000rpm、撹拌時間約2〜20分間で攪拌・混合する方法により油中水型の形態を有する油中水型油脂組成物が得られる。
【0023】
本発明に係る油中水型油脂組成物100質量%中、油脂の含有量が通常約20〜99質量%、好ましくは約50〜95質量%、粉末調味原料の含有量が通常約0.5〜50質量%、好ましくは約4.0〜30質量%、水系調味原料の含有量が通常約0.1〜20質量%、好ましくは約0.4〜10質量%、ショ糖脂肪酸エステルの含有量(添加量)が通常約0.05〜5質量%、好ましくは約0.1〜2質量%、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルの含有量(添加量)が通常約0.05〜5質量%、好ましくは約0.1〜2質量%とすることが好ましい。
【0024】
本発明に係る油中水型油脂組成物は、そのまま食品として利用することが可能であるが、例えば、カレー、シチュー、ハヤシ、ホワイトソース等の加工食品の製造に用いられるルウの原料としても好適に用いることができる。
【0025】
以下に本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0026】
[実施例1]
<上白糖及びポークエキスを含有する油中水型油脂組成物>
なたね油(商品名:なたね白絞油;ボーソー油脂社製)90gを200ml容ビーカーに入れ、これを70℃まで加熱し、ショ糖ステアリン酸エステル(商品名:リョ−トーシュガーエステルS−570;三菱化学フーズ社製)0.15g、およびポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(商品名:ポエムPR−100;理研ビタミン社製)0.15gを加え、クレアミックス(型式:CLM−0.8S;エム・テクニック社製)を用いて、回転数4000rpmで5分間攪拌・混合した。得られた混合物に上白糖(商品名:精製上白糖ST;大日本明治製糖社製)8.5g及びポークエキス(商品名:ポークエキスG;水分含有量44.0質量%;理研ビタミン社製)1.5gを加え、該クレアミックスを用いて、回転数4000rpmで5分間攪拌・混合し、油中水型油脂組成物(実施例品1)を得た。
【0027】
[比較例1]
実施例1に記載のショ糖ステアリン酸エステル0.15gおよびポリグリセリン縮合リシノール酸エステル0.15gに替えて、ショ糖ステアリン酸エステル(商品名:リョ−トーシュガーエステルS−570;三菱化学フーズ社製)0.30gを使用したこと以外は、実施例1と同様に実施し、油中水型油脂組成物(比較例品1)を得た。
【0028】
[比較例2]
実施例1に記載のショ糖ステアリン酸エステル0.15gおよびポリグリセリン縮合リシノール酸エステル0.15gに替えて、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(商品名:ポエムPR−100;理研ビタミン社製)0.30gを使用したこと以外は、実施例1と同様に実施し、油中水型油脂組成物(比較例品2)を得た。
【0029】
[対照例1]
実施例1に記載のショ糖ステアリン酸エステル0.15gおよびポリグリセリン縮合リシノール酸エステル0.15gを使用しなかったこと以外は、実施例1と同様に実施し、油中水型油脂組成物(対照例品1)を得た。
【0030】
<凝集の評価1>
上記実施例、比較例および対照例の実施中に、凝集の程度を目視により観察し評価した。結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
表1から明らかなように、本発明の方法(実施例1)によれば油中水型油脂組成物の製造時に凝集は生じなかった。これに対し、比較例1および2並びに対照例1の方法ではいずれも凝集が見られ、本発明の方法に比べて劣っていた。なお、油中水型油脂組成物(実施例品1)は、25℃に設定した恒温槽内で製造後約24時間保存した結果、保存中にも凝集は発生せず、安定性も良好であった。
【0033】
[実施例2]
<オニオンパウダー及びトマトペーストを含有する油中水型油脂組成物>
なたね油(商品名:なたね白絞油;ボーソー油脂社製)95gを200ml容ビーカーに入れ、これを70℃まで加熱し、ショ糖ステアリン酸エステル(商品名:リョ−トーシュガーエステルS−570;三菱化学フーズ社製)0.15gおよびポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(商品名:ポエムPR−100;理研ビタミン社製)0.15gを加え、クレアミックス(型式:CLM−0.8S;エム・テクニック社製)を用いて、回転数4000rpmで5分間攪拌・混合した。得られた混合物にオニオンパウダー(商品名:オニオンエキスパウダーGF;日研フード社製)4.5g及びトマトペースト(商品名:トマトペーストトルコ産CB;水分含有量70.0質量%;カゴメ社製)0.5gを加え、該クレアミックスを用いて、回転数4000rpmで5分間攪拌・混合し、油中水型油脂組成物(実施品2)を得た。
【0034】
[比較例3]
実施例2に記載のショ糖ステアリン酸エステル0.15gおよびポリグリセリン縮合リシノール酸エステル0.15gに替えて、ショ糖ステアリン酸エステル(商品名:リョ−トーシュガーエステルS−570;三菱化学フーズ社製)0.30gを使用したこと以外は、実施例2と同様に実施し、油中水型油脂組成物(比較例品3)を得た。
【0035】
[比較例4]
実施例2に記載のショ糖ステアリン酸エステル0.15gおよびポリグリセリン縮合リシノール酸エステル0.15gに替えて、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(商品名:ポエムPR−100;理研ビタミン社製)0.30gを使用したこと以外は、実施例2と同様に実施し、油中水型油脂組成物(比較例品4)を得た。
【0036】
[対照例2]
実施例1に記載のショ糖ステアリン酸エステル0.15gおよびポリグリセリン縮合リシノール酸エステル0.15gを使用しなかったこと以外は、実施例2と同様に実施し、油中水型油脂組成物(対照例品2)を得た。
【0037】
<凝集の評価2>
上記実施例、比較例および対照例の実施中に、凝集の程度を目視により観察し評価した。結果を表2に示す。
【0038】
【表2】

【0039】
表2から明らかなように、本発明の方法(実施例2)によれば油中水型油脂組成物の製造時に凝集は生じなかった。これに対し、比較例3および4並びに対照例2の方法ではいずれも凝集が見られ、本発明の方法に比べて劣っていた。なお、油中水型油脂組成物(実施例品2)は、25℃に設定した恒温槽内で製造後約24時間保存した結果、保存中にも凝集は発生せず、安定性も良好であった。
【0040】
[実施例3]
<オニオンパウダー及びチキンブイヨンを含有する油中水型油脂組成物>
なたね油(商品名:なたね白絞油;ボーソー油脂社製)95gを200ml容ビーカーに入れ、これを70℃まで加熱し、ショ糖ステアリン酸エステル(商品名:リョ−トーシュガーエステルS−570;三菱化学フーズ社製)0.15g、およびポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(商品名:ポエムPR−100;理研ビタミン社製)0.15gを加え、クレアミックス(型式:CLM−0.8S;エム・テクニック社製)を用いて、回転数4000rpmで5分間攪拌・混合した。得られた混合物にオニオンパウダー(商品名:オニオンエキスパウダーGF;日研フード社製)4.5g及びチキンブイヨン(商品名:チキンブイヨンRK16;水分含有量87.0質量%;日本ピュアフード社製)0.5gを加え、該クレアミックスを用いて、回転数4000rpmで5分間攪拌・混合し、油中水型油脂組成物(実施例品3)を得た。
【0041】
[比較例5]
実施例3に記載のショ糖ステアリン酸エステル0.15gおよびポリグリセリン縮合リシノール酸エステル0.15gに替えて、ショ糖ステアリン酸エステル(商品名:リョ−トーシュガーエステルS−570;三菱化学フーズ社製)0.30gを使用したこと以外は、実施例3と同様に実施し、油中水型油脂組成物(比較例品5)を得た。
【0042】
[比較例6]
実施例3に記載のショ糖ステアリン酸エステル0.15gおよびポリグリセリン縮合リシノール酸エステル0.15gに替えて、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(商品名:ポエムPR−100;理研ビタミン社製)0.30gを使用したこと以外は、実施例3と同様に実施し、油中水型油脂組成物(比較例品6)を得た。
【0043】
[対照例3]
実施例3に記載のショ糖ステアリン酸エステル0.15gおよびポリグリセリン縮合リシノール酸エステル0.15gを使用しなかったこと以外は、実施例2と同様に実施し、油中水型油脂組成物(対照例品3)を得た。
【0044】
<凝集の評価3>
上記実施例、比較例および対照例の実施中に、凝集の程度を目視により観察し評価した。結果を表3に示す。
【0045】
【表3】

【0046】
表3から明らかなように、本発明の方法(実施例3)によれば油中水型油脂組成物の製造時に凝集は生じなかった。これに対し、比較例5および6並びに対照例3の方法ではいずれも凝集が見られ、本発明の方法に比べて劣っていた。なお、油中水型油脂組成物(実施例品3)は、25℃に設定した恒温槽内で製造後約24時間保存した結果、保存中にも凝集は発生せず、安定性も良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂、粉末調味原料及び水系調味原料を含有する油中水型油脂組成物の製造において、ショ糖脂肪酸エステル及びポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを添加することを特徴とする油中水型油脂組成物の凝集防止方法。
【請求項2】
油中水型油脂組成物がルウの製造に用いられるものである請求項1に記載の凝集防止方法。

【公開番号】特開2012−39932(P2012−39932A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183674(P2010−183674)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(390010674)理研ビタミン株式会社 (236)
【Fターム(参考)】