説明

波形編集装置及びプログラム

【課題】 波形ファイルを正しく読み出すためのファイル形式を、ユーザが簡単且つ素早く特定できるようにする。
【解決手段】 波形ファイルの選択に応じて、前記選択された波形ファイルのデータを編集波形表示部に波形として表示する際において、提示された多様なファイル形式の中から1つのファイル形式が選択されると、該選択されたファイル形式に従って前記選択された波形ファイルのデータを仮波形表示部に仮波形として表示する。この仮波形表示部に仮表示される波形についてはファイル形式が選択される度に切り替えられる一方で、編集波形表示部に表示される波形についてはファイル形式が選択される度に切り替えられることがない。これにより、ユーザは面倒な作業を行わなくても、ファイル形式が不明である波形ファイルから正しく波形ファイルを読み込むファイル形式を、簡単且つ素早く特定することができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所定の画面内に表示された波形の操作に応じて、対応する波形ファイルのデータ編集を行う波形編集装置及びプログラムに関する。特に、記憶手段から波形ファイルを正しく読み込むファイル形式を、ユーザが簡単且つ素早く特定することができるようにした波形編集装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、楽音等の波形データからなる波形ファイルを編集することができる波形編集装置又は波形編集プログラムが知られている。特に最近では、波形編集装置においてもGUI(グラフィカル・ユーザ・インタフェース)が広く採用されており、ユーザはディスプレイ上に表示された所定の画面内の波形に対してカット、コピー、ペースト、インサートなどの簡単な操作を行うだけで、前記波形に対応した波形ファイルを任意にデータ編集することができるようになっている。こうした技術に関連するものとしては、例えば下記に示す特許文献1に記載されている発明がその一例である。従来の波形編集装置は複数のファイルフォーマット(ファイル形式又はデータ形式とも呼ぶ:以下、単にフォーマットと記載する)の波形ファイルを利用することができるようになっており、一般的には波形ファイルに付された拡張子(例えばWAV,RAW等)や、ヘッダ部内に規定されたフォーマット情報などから、当該波形ファイルのフォーマットを自動的に認識して、該認識したフォーマットに応じた適切なプログラムを起動するあるいはパラメータに適切な値を設定するなどして、記憶手段から波形ファイルを正しく読み込み、ディスプレイ上に新たに開いた(新規に表示した)画面内に、前記正しく読み込まれた波形ファイルに基づくGUI編集用の波形を表示するようになっている。
【特許文献1】特開平8-76747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、波形ファイルの中には拡張子やフォーマット情報等が付されていないものや、自動的には認識できない種類の拡張子やフォーマット情報等が付されているものがある。そうした波形ファイルの場合には、拡張子やフォーマット情報等から正確なフォーマットを自動的に認識することができないことから、ユーザが任意のフォーマットを指定して、これに従ってフォーマットの正誤に関わらずに記憶手段から波形ファイルを一度読み込みさせて、ディスプレイ上に新たに開かれる画面内にGUI編集用の波形を表示させるようにしている。具体的には、ユーザが複数あるフォーマットから1つを順番あるいは任意に指定し、該指定の度に指定したフォーマットに従って読み込まれた波形ファイルに基づき画面内に表示される波形を見て、波形ファイルが正しく読み込まれているか否か(言い換えると、ユーザが指定したフォーマットが波形ファイルのフォーマットと一致するか否か)を判断することができる。すなわち、指定したフォーマットが波形ファイルのフォーマットと一致する場合には、波形ファイルが正しく読み込まれて正常な波形が新たに開かれる画面内に表示されるが、指定したフォーマットが波形ファイルのフォーマットと一致しない場合には、波形ファイルを読み込んだとしても正しく読み込まれずに、異常であることが明白な波形が新たに開かれる画面内に表示される。この画面内に表示された波形を参照して、ユーザは指定したフォーマットが記憶手段から波形ファイルを正しく読み込むフォーマットでないと判断した場合には、ディスプレイ上に表示中の画面を閉じてから再度別のフォーマットを指定して新たに画面を開き、この新たに開かれた画面内の波形を参照して波形ファイルが正しく読み込まれているか否かを判断するといった作業を行うことが必要となる。つまり、フォーマット指定に応じてその都度ディスプレイ上に新規に画面が表示されるので、ユーザが何回もフォーマットを指定すると多数の画面が表示されることになり画面が見づらくなる。そこで、ユーザは必要とする画面のみを見やすくするために、異常な波形を表示した画面については予め閉じておくのがよい。
【0004】
しかし、波形編集装置で扱うことが可能な波形ファイルのフォーマットは多数あることから、フォーマットが不明である記憶手段から波形ファイルを正しく読み込むまで、ユーザはフォーマットを指定してその都度開かれる画面内に表示された波形を確認する作業及び別のフォーマットを指定する前に異常な波形が表示された画面を閉じる作業を繰り返し何度も行わなければならず、そうした作業は面倒であって、波形ファイルを正しく読み込んで波形を表示することができるフォーマットを特定するまでに非常に手間がかかり効率が悪い、という問題点があった。
【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、フォーマットが不明である波形ファイルから正しく波形ファイルを読み込んで波形を表示することができるフォーマットを、ユーザが簡単且つ素早く特定することができるようにした波形編集装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る波形編集装置は、編集波形表示部に表示された波形を操作することに応じて、記憶手段に記憶された前記波形に対応する波形ファイルのデータ編集を行う波形編集装置であって、波形ファイルを選択する波形ファイル選択手段と、前記選択された波形ファイルのデータを、前記編集波形表示部に波形として表示する第1の波形表示手段と、多様なファイル形式を提示する提示手段と、前記提示された多様なファイル形式から1つのファイル形式を選択するファイル形式選択手段と、前記選択されたファイル形式に従って、前記選択された波形ファイルのデータを仮波形表示部に仮波形として表示する第2の波形表示手段と、前記ファイル形式が選択される度に、前記編集波形表示部における波形の表示を切り替えることなく、前記仮波形表示部における波形の仮表示のみを適宜に切り替えるよう制御する制御手段とを具える。
【0007】
本発明によると、波形ファイルの選択に応じて、前記選択された波形ファイルのデータを編集波形表示部に波形として表示する際において、提示された多様なファイル形式の中から1つのファイル形式が選択されると、該選択されたファイル形式に従って前記選択された波形ファイルのデータを仮波形表示部に仮波形として表示する。この仮波形表示部に仮表示される波形は、ファイル形式が選択される度に切り替えられる。他方、ファイル形式が選択されても、編集波形表示部に表示される波形は切り替えられない。すなわち、ファイル形式が選択される度に、前記編集波形表示部における波形の表示を切り替えることなく、前記仮波形表示部における波形の仮表示のみを適宜に切り替えるよう制御する。これにより、ユーザは誤ったファイル形式で読み込まれた波形ファイルに基づく波形が表示された画面をいちいち閉じるといった面倒な作業を行わなくてもよく、ファイル形式が不明である波形ファイルから正しく波形ファイルを読み込んで、正しい波形を表示することができるファイル形式を、簡単且つ素早く特定することができるようになる。
【0008】
本発明は、装置の発明として構成し、実施することができるのみならず、方法の発明として構成し実施することができる。また、本発明は、コンピュータまたはDSP等のプロセッサのプログラムの形態で実施することができるし、そのようなプログラムを記憶した記憶媒体の形態で実施することもできる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、ファイル形式の選択に応じて新規に画面を開くことなく、仮波形表示部における波形の仮表示のみを切り替えるようにしたことから、ユーザは面倒な操作を行う必要が全くなく、ファイル形式が不明である波形ファイルを記憶手段から正しく読み込むファイル形式を、簡単且つ素早く特定することができるようになる、という優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に従って詳細に説明する。
【0011】
図1は、この発明に係る波形編集装置の全体構成を示したハード構成ブロック図である。ここに示された波形編集装置のハードウェア構成例はコンピュータを用いて構成されており、そこにおいて記憶装置から正しく読み込まれた波形ファイルに基づくGUI編集用の波形を含む図示しない「波形編集画面」をディスプレイ上に表示し、前記GUI編集用の波形に対してユーザが編集操作を行うことに応じて元となる波形ファイルのデータ編集を行う公知の波形編集処理(図示せず)や、前記「波形編集画面」にGUI編集用の波形を表示するための前処理であって、波形ファイルのフォーマットを特定して記憶手段から正しく波形ファイルを読み込む波形読み込み処理(後述する図3参照)などは、コンピュータが所定の制御プログラムを実行することにより実施される。勿論、これらの処理はコンピュータソフトウエアの形態に限らず、DSP(ディジタル・シグナル・プロセッサ)によって処理されるマイクロプログラムの形態でも実施可能であり、また、この種のプログラムの形態に限らず、ディスクリート回路又は集積回路若しくは大規模集積回路等を含んで構成された専用ハードウェア装置の形態で実施してもよい。
【0012】
本実施例に示す波形編集装置は、マイクロプロセッサユニット(CPU)1、リードオンリメモリ(ROM)2、ランダムアクセスメモリ(RAM)3からなるマイクロコンピュータによって制御される。CPU1は、この波形編集装置全体の動作を制御するものである。このCPU1に対して、データ及びアドレスバス1Dを介してROM2、RAM3、検出回路4、表示回路5、音源回路6、通信インタフェース(I/F)7がそれぞれ接続されている。ROM2は、CPU1により実行される各種プログラムや、オーディオ波形データ等からなる波形ファイルなどの各種データを格納するものである。RAM3は、CPU1が所定のプログラムを実行する際に発生する各種データを一時的に記憶するワーキングメモリとして、あるいは現在実行中のプログラムやそれに関連するデータを記憶するメモリ等として使用される。RAM3の所定のアドレス領域がそれぞれの機能に割り当てられ、レジスタやフラグ、テーブル、メモリなどとして利用される。
【0013】
操作子4Aは、表示部5A上に波形編集を行うための「波形編集画面」(図示せず)を表示する編集開始スイッチなどのスイッチ類の他、前記「波形編集画面」において編集対象の波形ファイルを選択したり、GUI編集用の波形を編集操作したり、波形編集用のパラメータ等を直接入力したりする各種操作/設定用の操作子などである。例えば、数値データ入力用のテンキーや文字データ入力用のキーボード、表示部5A上に表示されるポインタやカーソルなどを操作するマウス等のポインティングデバイスなどである。検出回路4は、上記操作子4Aの操作状態を検出し、その操作状態に応じたスイッチ情報をデータ及びアドレスバス1Dを介してCPU1に出力する。
【0014】
表示回路5は例えば液晶表示パネル(LCD)やCRT等から構成される表示部5A(所謂ディスプレイ)に、例えば本波形編集装置が記憶している波形ファイルをユーザに対して提示するための「波形一覧画面」や上記した波形編集のための「波形編集画面」などの公知の画面(図示を省略)の他に、フォーマットが不明であり自動認識(確定)できない波形ファイルのフォーマットをユーザが指定するための「フォーマット指定画面」(後述する図2参照)、あるいはCPU1の制御状態などを表示する制御を行う。ユーザは該表示部5Aに表示されるこれらの各種画面を参照することで、例えばフォーマットが不明である波形ファイルのフォーマットの特定や波形ファイルの編集操作などを容易に行うことができるようになっている。
【0015】
音源回路6は複数のチャンネルで楽音信号の同時発生が可能であり、データ及びアドレスバス1Dを経由して与えられた演奏情報を入力し、該演奏情報に基づいて楽音信号を発生する。音源回路6から発生された楽音信号は、アンプやスピーカなどを含むサウンドシステム6Aから発音される。この音源回路6とサウンドシステム6Aの構成には、従来のいかなる構成を用いてもよい。例えば、音源回路6はFM、PCM、物理モデル、フォルマント合成等の各種楽音合成方式のいずれを採用してもよく、CPU1によるソフトウェア処理で構成してもよいし、また専用のハードウェアで構成してもよい。楽音信号に効果を付与する効果回路を含んでいてもよい。
【0016】
通信インタフェース(I/F)7は、外部機器7Aから各種制御プログラムや各種データ等を波形編集装置側に取り込むために、本波形編集装置と外部機器7Aとをデータ送受信可能な状態に接続するインタフェースである。例えば、波形ファイルに付与されうるフォーマットに対応して起動される制御プログラムや、ユーザ所望の波形ファイルなどの各種データがROM2に記憶されていない場合、ユーザは外部機器7Aからユーザ所望の制御プログラムやデータ等を通信インタフェース(I/F)7を介してダウンロードすることができる。なお、通信インタフェース(I/F)7は、例えばLANやインターネット、電話回線等の有線あるいは無線の通信ネットワーク(図示せず)を介してサーバコンピュータ(外部機器)に接続し、該接続したサーバコンピュータから各種制御プログラムや各種データをダウンロードすることができるネットワークインタフェースであってよい。
【0017】
なお、上述した波形編集装置は操作子4Aや表示部5Aあるいは音源回路6などを1つの装置本体に内蔵したものに限らず、それぞれが別々に構成され、各種インタフェースや各種ネットワーク等の通信手段を用いて各装置を接続するように構成されたものであってもよいことは言うまでもない。さらに、本発明に係る波形編集装置は上記したようなコンピュータに限らず、電子楽器やカラオケ装置やゲーム装置、携帯電話等の携帯型通信端末、自動演奏ピアノなど、波形編集機能を有するものであればどのような形態の装置・機器に適用してもよい。携帯型通信端末に適用した場合、端末のみで所定の機能が完結している場合に限らず、機能の一部をサーバコンピュータ側に持たせ、端末とサーバコンピュータとからなるシステム全体として波形編集機能を実現するようにしてもよい。
【0018】
波形ファイルのフォーマットをユーザが指定するための「フォーマット指定画面」について、図2を用いて説明する。図2は、「フォーマット指定画面」の一実施例を示した概念図である。この図2に示す「フォーマット指定画面」FGは、「波形編集画面」EGにおいて編集対象の波形ファイルとして、フォーマットが不明でありフォーマットを自動認識(確定)することができない波形ファイルをユーザが選択した場合に、既に表示中である「波形編集画面」EGとは別画面(例えばポップアップ画面など)として表示部5Aに新規に表示される画面である。
【0019】
図2から理解できるように、ここに示す「フォーマット指定画面」FGは、フォーマット指定選択部(TS,AS)と、仮波形表示部WDと、「確定」ボタンKBとからなる。画面左側のフォーマット指定選択部(TS,AS)は、ユーザが任意のフォーマットを選択するための領域であって、大きくはフォーマットタイプ(例えば拡張子など)を選択するフォーマットタイプ入力部TSと、フォーマット情報(例えば、波形データ変換方式や量子化ビット、サンプリング周波数、音響方式など)を選択するフォーマット情報入力部ASに分けられる。これらのフォーマットタイプ入力部TS及び/又はフォーマット情報入力部ASは、予め決められた多数あるフォーマットタイプ又はフォーマット情報を候補としてリスト表示することができるようになっている。ユーザは候補としてリスト表示される多数のフォーマットタイプ又はフォーマット情報の中から、適宜に1つのフォーマットタイプ及びフォーマット情報を、ポインタP(あるいはカーソル)等を操作して任意に選択することができる。この実施例では、フォーマットタイプとして「Raw」形式が選択されていると同時に、フォーマット情報として「PCM signed 16bit,big endian,mono」(16ビットPCMモノラル)が選択されている状態を示している。
【0020】
上記したフォーマットタイプ入力部TSやフォーマット情報入力部ASに候補としてそれぞれ表示されるフォーマット(フォーマットタイプ又はフォーマット情報)は、一般的には、対応する制御プログラムが本波形編集装置に記憶されており、波形編集装置が制御することが可能なフォーマットのみを候補として表示する。勿論、これに限らず、通信インタフェース7を介して外部機器7Aに記憶されている制御プログラムを利用できる場合には、波形編集装置に対応する制御プログラムが記憶されていないフォーマットであっても、候補として表示してもよい。
【0021】
画面右側の仮波形表示部WDは、フォーマット指定選択部(TS,AS)において選択されたフォーマットを反映して波形ファイルを記憶手段から読み込んだ場合における、波形ファイルに基づく波形を一時表示する領域である。この仮波形表示部WDに表示する波形は、選択されている波形ファイルの一部データに相当する波形であり、ユーザによって新たなフォーマットが選択されるたびに新たに選択されたフォーマットに従った表示形式で表示しなおす。例えば、フォーマット情報入力部ASにおいて「PCM signed 16bit,big endian,mono」が選択されている場合には、選択した「PCM signed 16bit,big endian,mono」から特定される各種パラメータ(ここでは波形データ変換方式がPCM、量子化ビットが16ビット、音響方式がモノラルなど)が設定され、該設定されたパラメータに従って記憶手段から波形ファイルを読み出した場合の一部波形を表示する。さらに、一部波形を表示した状態のままで、ユーザがポインタPを操作してフォーマット情報入力部ASにおいて別のフォーマット「PCM signed 32bit,big endian,stereo」を選択した場合には、該選択された「PCM signed 32bit,big endian,stereo」から特定される各種パラメータ(ここでは波形データ変換方式がPCM、量子化ビットが32ビット、音響方式がステレオなど)が設定され、該設定されたパラメータに従って記憶手段から波形ファイルを読み出した場合の一部波形に表示を切り替える。すなわち、ユーザはポインタP等を候補として表示されているフォーマットの上に位置させるだけで、該フォーマットを適用した場合における一部波形を表示させることができる。
【0022】
図示を省略しているが、「波形編集画面」EG内には編集対象の波形を表示する(つまり、読み出された波形ファイルのデータを波形として表示する)ための編集波形表示部があるが、該「波形編集画面」EGにおける編集波形表示部とは別に前記「フォーマット指定画面」FGの仮波形表示部WDを個別に表示する。勿論、前記編集波形表示部と前記仮波形表示部WDの表示態様はこれに限らず、少なくとも前記編集波形表示部と前記仮波形表示部WDとが、独立した別々の表示領域として画面上に表示されるようになっていればよい。
【0023】
「確定」ボタンKBは、フォーマットを特定し、かつ、当該画面を終了するためのボタンである。すなわち、この「確定」ボタンKBが操作されることにより、記憶手段から波形ファイルを読み込む際に適用するフォーマットとして、フォーマット指定選択部(TS,AS)で選択されているフォーマットが特定され、該特定されたフォーマットに従ってROM2等の記憶装置から波形ファイルの全てが読み込まれて、「波形編集画面」EGに編集対象に指定された波形ファイルを編集するためのGUI編集用の波形が表示される。なお、指定したフォーマットを確定することなく、フォーマット指定画面FGを閉じて波形編集画面EGのみを表示した状態に戻すには、フォーマット指定画面の「×」(閉じる)ボタンCBをクリック操作等すればよい。この場合、波形編集画面EGにはGUI編集用の波形は表示されない(勿論、フォーマットが不明である場合のみ)。なお、ユーザが表示中の「波形編集画面」EGを閉じた場合(これに伴い、図示しない波形編集処理プログラムも終了される)には、フォーマット指定画面の「×」(閉じる)ボタンCBをクリック操作等しなくても、表示されている「フォーマット指定画面」FGも自動的に閉じられる(これに伴い、後述する図3に示す波形読み込み処理プログラムも強制終了される)ことは言うまでもない。
【0024】
なお、上述した実施例においては、波形ファイルを記憶手段から読み込む際に選択されたフォーマットを適用するものを例に説明したがこれに限らない。例えば、波形を表示する際に選択されたフォーマットを適用するようにしてあってもよい。少なくともフォーマットの種類によって、表示される波形の表示形式やデータ編集時のデータの取り扱い方が変わるのであれば、フォーマットを適用するタイミングはいつであってもよい。
【0025】
次に、上記「フォーマット指定画面」を制御する具体的な処理であって、波形ファイルのフォーマットの特定に応じて記憶手段から正しく波形ファイルを読み込む「波形読み込み処理」について、図3を用いて説明する。図3は、「波形読み込み処理」の一実施例を示したフローチャートである。
【0026】
該「波形読み込み処理」は、「波形編集画面」を表示して波形ファイルの編集を行うメインプログラムである「波形編集処理」(第1の波形表示手段)とは別に起動されるサブプログラムである。すなわち、図1に示す波形編集装置においては、「波形編集画面」に表示されたGUI編集用の波形を操作して対応する波形ファイルを編集することをメインプログラムである「波形編集処理」を実行することにより実施しており、「波形編集画面」で波形編集対象の波形ファイルが選択されることに応じて「波形編集処理」から「波形読み込み処理」へと処理が受け渡される。波形ファイルが選択された際には、波形編集画面内の編集波形表示部の波形を切り替えることなく(つまり新たに選択された波形ファイルの波形を表示することなく)、直ちに「波形読み込み処理」を起動する。「波形読み込み処理」において適用すべきフォーマットが特定されて波形ファイルの全部が読み込まれると、「波形読み込み処理」から「波形編集処理」へと処理が戻される。この「波形読み込み処理」の終了後には、波形編集画面内の編集波形表示部の波形が選択された波形に切り替えられて表示される。つまり、「波形読み込み処理」から「波形編集処理」へと処理が戻されたときに、「波形編集処理」において直ちに確定されたフォーマットで読み込んだ波形ファイルを編集波形表示部に表示する。
【0027】
以下、図3に示したフローチャートに従って、「波形読み込み処理」の処理動作について説明する。ステップS1は、波形編集対象として選択指示された波形ファイルについて、そのフォーマットを波形ファイルに付された拡張子あるいは波形ファイルのヘッダ部に記録されたフォーマット情報などに従い判定する。ここで「波形編集画面」における波形編集対象の波形ファイルの選択指示は、例えば「波形編集画面」上に表示される各波形ファイルに対応したアイコンの中から所望の波形ファイルのアイコンをダブルクリックすること、所定のファイルを開く画面にファイル名などで羅列表示される波形ファイルから所望の波形ファイルを選択するなどの、既存の周知技術により行うものであってよい。ステップS2は、波形編集対象として選択指示された波形ファイルのフォーマットが自動的に判定できないか否かを判断する。選択指示された波形ファイルのフォーマットが判定できた場合、つまり波形ファイルに付されていた拡張子あるいは波形ファイルのヘッダ部に記録されたフォーマット情報などが波形編集装置に予め記憶済みの制御プログラム等に対応するものであり、自動的にフォーマットを判定できる場合には(ステップS2のNO)、判定したフォーマットを適用して記憶手段から波形ファイルの全部を読み込む(ステップS5)。
【0028】
一方、選択指示された波形ファイルのフォーマットが自動的に判定できない場合、つまり波形ファイルに付されていた拡張子あるいは波形ファイルのヘッダ部に記録されたフォーマット情報などが波形編集装置に予め記憶済みの制御プログラム等に対応していない、あるいは波形ファイルにそもそも拡張子やフォーマット情報などが付されていないといった場合には(ステップS2のYES)、「フォーマット指定画面」(図2参照)を表示部5Aに表示する(ステップS3)。この「フォーマット指定画面」を表示する際には、既に表示中の「波形編集画面」とは別のポップアップ画面などとして表示部5Aに表示する。ステップS4は、表示した「フォーマット指定画面」においてユーザ操作に応じてフォーマットの候補を提示する。具体的には、図2に示した「フォーマット指定画面」のフォーマットタイプ入力部TSのリストボックスや、フォーマット情報入力部ASのリストボックスに、予め決められた多数あるフォーマットタイプ又はフォーマット情報を候補としてリスト表示する。この際には、ユーザによるポインタP(あるいはカーソル)等の操作に応じて、フォーマットタイプ入力部TSやフォーマット情報入力部ASのリストボックス内に表示する多数のフォーマットタイプ又はフォーマット情報を変えることができることは言うまでもない。
【0029】
ステップS6は、提示されたフォーマットの候補の中からいずれかの候補が選択されたか否かを判定する。ユーザは、「フォーマット指定画面」のフォーマットタイプ入力部TSやフォーマット情報入力部ASのリストボックス内において、マウス等のポインティングデバイスを操作して表示部5A上のポインタP(あるいはカーソル)を移動させる。このポインタPあるいはカーソルの移動にあわせて、フォーマットが新たに選ばれたときに(ポインタPあるいはカーソルに重ねられて位置(指示)するフォーマットタイプもしくはフォーマット情報のいずれか一方が変更されたときに)、フォーマットタイプ入力部TSやフォーマット情報入力部ASのリストボックスに提示(リスト表示)されたフォーマットの候補の中から新たな候補が選択されたと認識する。
【0030】
提示されたフォーマットの候補の中からいずれかの候補が選択されたと判定した場合には(ステップS6のYES)、波形編集対象の波形ファイルの先頭から一部のデータを、波形ファイルが記憶されている記憶手段からRAM3に設けられたバッファに読み込む(ステップS7)。ステップS8は、前記バッファに書き込んだ波形ファイルの先頭からの一部を、選択されたフォーマットに従い読み出して、これに基づき波形を「フォーマット指定画面」内の仮波形表示部WD(図2参照)に表示する。すなわち、フォーマットが選択される度に、「波形編集画面」EGの編集波形表示部における波形の表示を切り替えることなく、前記「フォーマット指定画面」内の仮波形表示部WDにおける波形の仮表示のみを適宜に切り替えるよう制御する。ここで、前記波形ファイルの読み込みは、波形ファイルのデータ全部を読み込むことなく、波形ファイルの先頭から一部のデータのみを読み込むだけでよい。そのため、波形ファイル全体を記憶するのに必要な記憶容量と比べると非常に少量の記憶容量しか有していないバッファをRAM3に用意しておき、該バッファに対して波形ファイルを先頭から順に書き込み、バッファ内に波形ファイルの先頭から一部範囲のデータしか記憶できないようにしている。したがって、該バッファに記憶された波形ファイルに基づき表示される波形は波形全体ではなく、波形ファイルの先頭から一部範囲までに対応する一部波形のみとなる。勿論、上記した一部波形の表示方法としては上記バッファによるものに限らず、他の方法であってもよい。例えば、波形ファイルのヘッダ部に当該波形ファイルに係る一部波形表示を画像データ形式でフォーマット毎に記憶しておき、指定されたフォーマットにあわせて対応する画像データをヘッダ部から取り出して、これに基づきサムネイル形式などの形態で仮波形表示部WDに一部波形を表示するようにしてもよい。
【0031】
編集波形表示部に波形を表示する場合には、表示された波形に対して編集が実行できるように設定しておく必要があり、表示を切り替える処理を実行すると共に、表示された波形ファイルを編集できる状態へと設定する処理も実行される。それに対して、仮波形表示部に波形を表示する場合には、表示された波形に対して編集が行われないこと、表示のみを行えばよいことから、表示のみを切り替える処理だけを実行すればよい。これらの違いから、仮波形表示部の表示を切り替えるための処理を実行することが、編集波形表示部の表示(従来の波形表示)を切り替えるための処理を実行するよりも、CPU1等にかかる処理の負担がかるくてすむ。これにより、編集波形表示部の波形表示を更新することに比べると、仮波形表示部の波形表示を更新することの方が処理をはやくすることができる。
【0032】
提示されたフォーマットの候補の中からいずれかの候補が選択されていないと判定した場合には(ステップS6のNO)、波形ファイルの読み込みが確定されたか否かを判定する(ステップS9)。すなわち、「フォーマット指定画面」における確定ボタンKB(図2参照)が操作されたか否かを判定する。確定ボタンが操作されて波形ファイルの読み込みが確定されたと判定した場合には(ステップS9のYES)、選択中のフォーマットで記憶手段から波形ファイル全体を読み込む(ステップS10)。前記ステップS5及びステップS10における波形ファイル全体の読み込みに従って、ディスプレイ上において表示中の「フォーマット指定画面」が閉じられると共に、「波形編集画面」の所定の表示領域に前記読み込んだ波形ファイルに基づくGUI編集用の波形を表示する。すなわち、該「波形読み込み処理」を終了して「波形編集処理」へ処理を戻し、直ちに「波形編集画面」内の編集波形表示部の表示を、確定されたフォーマットで読み込んだ波形ファイルの全データに基づく波形に切り替える。
【0033】
以上のように、フォーマットが不明である波形ファイルが選択された場合には、記憶手段から正しく波形ファイルを読み込むフォーマットを、ユーザが予め決められた多数あるフォーマットの中から誤りなく特定できるようにするために、表示部5A上にフォーマット指定用の補助画面として「フォーマット指定画面」FGを「波形編集画面」EGとは別画面として表示する。この「フォーマット指定画面」FGにおいては、指定されたフォーマットに基づき読み込まれた波形ファイルの一部についての波形を仮波形表示部WDに表示するようになっており、該仮波形表示部WDの波形表示はフォーマット選択に応じて適宜に切り替えられる。すなわち、従来のようにフォーマット指定に応じて複数の画面を表示部5A上に表示することなく、フォーマット指定に応じて1つの画面(同一画面)である「フォーマット指定画面」FG内の仮波形表示部WDの波形のみを切り替えて表示する。これにより、ユーザは従来のように、フォーマットが不明である記憶手段から波形ファイルを正しく読み込むまで、フォーマットを指定してその都度開かれる専用画面内に表示された波形を確認する作業及び別のフォーマットを指定する前に異常な波形が表示された専用画面を閉じる作業といった面倒な作業を行わなくても、フォーマット指定に応じて切り替わる1つの「フォーマット設定画面」FG内における波形表示を見て、指定したフォーマットの正誤を確認することができることから、フォーマットが不明である波形ファイルから正しく波形ファイルを読み込むフォーマットを簡単且つ素早く特定することができるようになる。
【0034】
また、同一の画面内に波形ファイルの一部波形のみを切り替え表示するようにしたことから、表示切り替えに係る処理時間が画面全体を切り替えるよりもかからず、また波形表示のための処理時間を短縮することができ、これによりフォーマット選択に応じた波形表示の切り替えを速くすることができる。したがって、ユーザは多数のフォーマット候補の中から適宜にフォーマットを選択して表示を確認することが素早くできるようになる、という利点もある。
【0035】
なお、波形ファイルがMIDIデータ等の楽音制御情報である場合、フォーマット指定画面FGに表示する波形ファイルに基づく波形は、該楽音制御情報に従って参照される波形ROMなどに記憶された波形データに基づく波形であることは言うまでもない。
なお、図2に示した「フォーマット指定画面」(特に、フォーマット指定選択部と仮波形表示部と確定ボタン)はポップアップ画面ではなく常時表示であってもよく、波形編集画面も一部にフォーマット指定選択部と仮波形表示部と確定ボタンを常設する方法などがある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明に係る波形編集装置の全体構成を示したハード構成ブロック図である。
【図2】フォーマット指定画面の一実施例を示した概念図である。
【図3】波形読み込み処理の一実施例を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0037】
1…CPU、2…ROM、3・・・RAM、4・・・検出回路、4A…操作子、5・・・表示回路、5A…表示部、6…音源回路、6A…サウンドシステム、7…通信インタフェース、7A…外部機器、1D…通信バス、EG・・・波形編集画面、FG・・・フォーマット指定画面、TS・・・フォーマットタイプ入力部、AS・・・フォーマット情報入力部、WD・・・仮波形表示部、KB・・・確定ボタン、P・・・ポインタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
編集波形表示部に表示された波形を操作することに応じて、記憶手段に記憶された前記波形に対応する波形ファイルのデータ編集を行う波形編集装置であって、
波形ファイルを選択する波形ファイル選択手段と、
前記選択された波形ファイルのデータを、前記編集波形表示部に波形として表示する第1の波形表示手段と、
多様なファイル形式を提示する提示手段と、
前記提示された多様なファイル形式から1つのファイル形式を選択するファイル形式選択手段と、
前記選択されたファイル形式に従って、前記選択された波形ファイルのデータを仮波形表示部に仮波形として表示する第2の波形表示手段と、
前記ファイル形式が選択される度に、前記編集波形表示部における波形の表示を切り替えることなく、前記仮波形表示部における波形の仮表示のみを適宜に切り替えるよう制御する制御手段と
を具える波形編集装置。
【請求項2】
前記第2の波形表示手段は、前記選択されたファイル形式に従って前記記憶手段から前記選択された波形ファイルのデータの一部を読み込み、該読み込んだ波形ファイルのデータの一部に基づく一部波形を仮波形表示部に仮波形として表示することを特徴とする請求項1に記載の波形編集装置。
【請求項3】
ファイル形式を確定する確定手段をさらに具えてなり、
前記第1の波形表示手段は、前記確定したファイル形式に従って前記記憶手段から前記選択された波形ファイルのデータを読み込み、該読み込んだ波形ファイルのデータに基づく全波形を前記編集波形表示部に表示することを特徴とする請求項1又は2に記載の波形編集装置。
【請求項4】
コンピュータに、
波形ファイルを選択する手順と、
前記選択された波形ファイルのデータを、表示された波形を操作することに応じて、記憶手段に記憶された前記波形に対応する波形ファイルのデータ編集を行う編集波形表示部に、波形として表示する手順と、
多様なファイル形式を提示する手順と、
前記提示された多様なファイル形式から1つのファイル形式を選択する手順と、
前記選択されたファイル形式に従って、前記選択された波形ファイルのデータを仮波形表示部に仮波形として表示する手順と
前記ファイル形式が選択される度に、前記編集波形表示部における波形の表示を切り替えることなく、前記仮波形表示部における波形の仮表示のみを適宜に切り替えるよう制御する手順と
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−242621(P2008−242621A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−79563(P2007−79563)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】