説明

注射器の廃棄容器

【課題】第三者への針刺し事故を防止しかつ二次感染を予防でき、安全に医療機関に持参でき、リウマチ患者であっても使用し易く、サイズがコンパクトである、自己注射で使用された注射器のための廃棄容器を提供する。
【解決手段】廃棄容器は、使用済みの注射器を内部に収容する収容体と、該収容体に対して開閉自在である蓋体とを備え、収容体が、上面に、注射器に取り付けられたつばもとを保持するつばもと保持部と、注射器の通過が可能な開口部と、該開口部の一部を覆うように付勢される可動フラップ部とを有し、蓋体が、突出部を有し、該突出部が、収容体に対して蓋体を閉じる動作に応じて、つばもと保持部につばもとが保持された注射器を押し下げて、つばもとと注射器とを分離させ、つばもとが分離された注射器により可動フラップ部を押し開けて、開口部を介して注射器を収容体内部へ移動させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みの注射器の廃棄容器に関し、特に、患者自らが自宅など病院以外の場所で自己注射した後の注射器を廃棄するための廃棄容器に関する。
【背景技術】
【0002】
注射は、一般的に医師や看護師などの医療従事者である専門家によって行われることが多いが、例えば糖尿病やリウマチなどの慢性患者の場合、患者自らが、自宅など病院以外の場所で治療薬を自己注射することもあった。例えば、進行したリウマチ患者の場合、痛みを和らげてリウマチの進行を抑えるために、自宅などで定期的に治療薬(アダリムマブまたはエタネルセプト)を自己注射する治療法が実施されている。
【0003】
使用される注射器は、外筒と、外筒内を軸方向に移動可能な内筒と、外筒の一端に接続される注射針とを備える。治療薬は、外筒と内筒との間に充填され、外筒に対して内筒を軸方向に押し込むことによって注射針から患者に注射される。注射器の外筒の他端には、つばもとが着脱可能に取り付けられる。つばもとは、患者が注射するときに、注射器の保持を容易にするものである。
【0004】
自宅など病院以外で行なった自己注射後の使用済み注射器は、最終的に医療機関から医療廃棄物として廃棄される必要がある。そのため、患者は、自宅で使用済み注射器を廃棄容器に保管して、その廃棄容器を医療機関に持参していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、医療機関は、医薬品メーカが提供している廃棄容器を、使用済み注射器の廃棄容器として患者に配布している。そのような廃棄容器は、特定の自己注射器専用に設計されたものではなく、既製品を用いていた。そのため、つまみが小さく蓋の開け閉めがしづらく、特に痛みや腫れにより手指に力が入らず、物を握る動作などが難しい進行したリウマチ患者には使用しづらいデザインであり、さらに持ち運ぶには大きいことなどの使用上の問題があった。そこで実際には、自宅にあるビン、カン、或いはタッパーウェア(登録商標)などが廃棄容器として代用されていた。このような容器は、蓋が確実に閉まらないことがあり、保管または医療機関への持参の際に、注射器が容器から飛び出る危険性があった。また、代用される容器の素材によっては、注射針が容器を貫通する危険性があった。したがって、患者以外の家族または医療従事者を含む第三者への針刺し事故および二次感染の危険性が存在した。
【0006】
また、従来の廃棄容器は再利用ができないため、医療機関は、廃棄容器ごと使用済みの注射器を廃棄する必要があった。従来の廃棄容器はサイズが大きく、医療機関が負担する医療廃棄物にかかるコストが高かった。そのため、医療機関も積極的にそのような廃棄容器の使用を推奨しない傾向があった。
【0007】
本発明は、第三者への針刺し事故を防止しかつ二次感染を予防でき、安全に医療機関に持参でき、手指に力が入らない進行したリウマチ患者であっても使用し易く、サイズがコンパクトであって医療機関で廃棄する医療廃棄物の量を少なくできる、自己注射で使用された注射器のための廃棄容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、患者自らが治療薬を注射する自己注射で使用された注射器の廃棄容器であって、前記注射器が、外筒と、該外筒内を軸方向に移動可能な内筒と、前記外筒の一端に接続される注射針とを備え、前記注射器の外筒の他端につばもとが着脱可能に取り付けられ、
前記廃棄容器が、使用済みの注射器を内部に収容する収容体と、該収容体に対して開閉自在である蓋体とを備え、
前記収容体が、蓋体が閉じられているときに蓋体に面する上面を有し、該上面に、注射器に取り付けられたつばもとを保持するつばもと保持部と、注射器の通過が可能な開口部と、該開口部の一部を覆うように付勢される可動フラップ部とを有し、
前記蓋体が、突出部を有し、該突出部が、収容体に対して蓋体を閉じる動作に応じて、つばもと保持部につばもとが保持された注射器を押し下げて、つばもとと注射器とを分離させ、つばもとが分離された注射器により可動フラップ部を押し開けて、開口部を介して注射器を収容体内部へ移動させることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、前記蓋体が、使用者によって操作可能である可動部を備え、前記収容体が、収容体に対して蓋体が閉じられると蓋体の可動部と係合する係合部を上面に備え、
前記蓋体がさらに、可動部を付勢するバネを備え、収容体に対して蓋体が閉じられると、蓋体の可動部が、バネによって収容体の係合部に向かって付勢されることを特徴とする。
【0010】
さらに本発明は、前記収容体が、可動な押上げ部を上面にさらに備え、該押上げ部が、収容体に対して蓋体が閉じられているときに蓋体を押し上げるように付勢され、
可動部が、使用者によってバネの付勢力に抗して係合部とは反対方向に移動されて係合部から分離されると、蓋体が、収容体に対して開かれることを特徴とする。
【0011】
加えて本発明は、収容体を構成する壁の一部が可動であり、該壁の一部を介して、収容体内部に収容された注射器を排出可能であることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、注射器に充填される治療薬が、リウマチの治療薬であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の廃棄容器によれば、例えば患者である使用者が、注射器のつばもとをつばもと保持部に配置することによって、使用済みの注射器を廃棄容器の収容体の上面に置いた後、収容体に対して蓋体を閉じると、つばもとと注射器とが分離されて、注射器だけが収容体内部へ移動する。したがって、廃棄が必要な注射器だけを廃棄容器内に保管でき、サイズがコンパクトな廃棄容器であっても、多数のつばもとの無い使用済み注射器を収容することができるという効果を有する。そのため、医療廃棄物である廃棄容器の体積が減少することによって、医療機関の廃棄コストを削減することができる。加えて、可動フラップが開口部の一部を覆うように付勢されているので、収容体内部の使用済み注射器が、開口部から外部へ出ることが防止され、第三者への針刺し事故を防止し、また二次感染を予防できる。さらに、廃棄容器の収容体を、注射針が貫通しない材料で構成することによって、廃棄容器に収容された注射器による針刺し事故を防止できる。つばもと保持部を、所定の治療薬が充填された注射器のつばもとに合わせて形成することで、廃棄容器を、所定の注射器、例えばリウマチ治療薬の注射器に専用の廃棄容器とすることができる。使用済みの注射器を収容体上面に置いて蓋体を閉じれば、注射器を廃棄容器内に廃棄できるので、廃棄のための操作は非常に簡単である。
【0014】
さらに、本発明の廃棄容器によれば、収容体に対して蓋体が閉じられると、蓋体の可動部が、バネによって収容体の係合部に向かって付勢されて、蓋体が収容体に対して閉じられた状態を維持する。そのため、蓋体が予期せずに収容体に対して開かれる危険性を減らし、第三者への針刺し事故および二次感染の可能性をさらに予防できるという効果を有する。
【0015】
また、本発明の廃棄容器によれば、使用者が、蓋体の可動部を係合部との係合方向とは反対方向に移動させて係合部と分離させると、蓋体が収容体の押上げ部によって押し上げられているため、使用者が蓋体の可動部から手を離しても、蓋体の可動部が収容体の係合部と再び係合して閉じられた状態に戻ることはない。そのため、蓋体を収容体に対して開く操作も簡単である。さらに、蓋体の可動部を大きくすることによって、つまみが小さい従来の既製品の廃棄容器と比べて、進行したリウマチ患者にもはるかに使い易い廃棄容器を提供することができる。
【0016】
加えて、本発明の廃棄容器によれば、収容器を構成する壁の一部が可動であり、この壁の一部を介して、収容体内部に収容された注射器を排出可能である。そのため、廃棄容器から使用済みの注射器を排出した後、その廃棄容器を洗浄して再利用することができるという効果を有する。
【0017】
また、本発明の廃棄容器によれば、注射器に充填される治療薬がリウマチの治療薬であり、リウマチ患者自身が、自己注射で使用した注射器を廃棄するのに適した廃棄容器を提供することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】つばもとが取り付けられた注射器の斜視図である。
【図2】つばもとが取り付けられた注射器の斜視図である。
【図3】注射する前の注射器の下面図である。
【図4】つばもとの下面図である。
【図5】本発明の廃棄容器を示す斜視図である。
【図6】蓋体を収容体に対して開いた状態で上方から見た廃棄容器の図である。
【図7】蓋体を収容体に対して閉じる動作によって、蓋体の突出部が注射器の外筒に接触している様子を示す図である。
【図8】蓋体を収容体に対して完全に閉じることによって、つばもとと注射器とが分離されて、注射器だけが収容体内部へ移動する様子を示す図である。
【図9】本発明の廃棄容器の使用方法を示す図である。
【図10】本発明の廃棄容器の使用方法を示す図である。
【図11】本発明の廃棄容器の使用方法を示す図である。
【図12】本発明の廃棄容器の使用方法を示す図である。
【図13】本発明の廃棄容器の使用方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施形態に基づいて図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1および図2は、つばもと340が取り付けられた注射器300の斜視図である。注射器300は、外筒310と、外筒310内を軸方向に移動可能な内筒320と、外筒310の一端に接続される注射針330とを備える。つばもと340は、注射器の外筒310の他端に着脱可能に取り付けられる。図1は、外筒310と内筒320との間に充填された治療薬を注射する前の注射器300の状態を示し、図2は、外筒310に対して内筒320を押し込んで治療薬を注射した後の注射器300の状態を示す。治療薬は、例えば、リウマチによる痛みを和らげてリウマチの進行を抑える、アダリムマブまたはエタネルセプトであり、リウマチ患者自らにより自宅など病院以外の場所で自己注射される。この注射器300の外形寸法の一例は、図1に示される状態で、全長は約12cmであり、図2に示される状態で、全長は約9cmである。外筒310の外径は、約0.8cmである。注射器300は、プラスチック材料またはガラス材料など適切な材料で形成される。
【0021】
図3に、図1に示される注射する前の注射器300の下面図を示し、図4に、つばもと340の下面図を示す。つばもと340の外形寸法の一例は、幅が約1.2cm、長さが約4.5cm、高さが約2.0cmである。このつばもと340は、注射器300の外筒310の保持を容易にする機能を果たす。治療薬が充填された注射器300は、つばもと340が外筒310の端部に取り付けられた状態で患者に提供される。つばもとは、所定の治療薬が充填された注射器に専用に設けられている。つばもと340は、医療廃棄物には該当しない。図4の下面図に示されるように、つばもと340には、くぼみ341および342が設けられる。つばもと340のくぼみ341に、注射器300の外筒310の端部が挿入される。つばもと340を固定して、注射器300の外筒310および内筒320に対して、図2の矢印Aで示す方向に力を加えると、注射器300をつばもと340から分離することができる。なお、患者に提供されるとき、注射針330を覆う図示しない注射針キャップが付けられ、注射を行なう前に注射針キャップは取り外される。
【0022】
図5に、本発明の廃棄容器1を斜視図で示す。廃棄容器1の外形寸法の一例は、幅が13.5cm、奥行きが8cm、高さが5cmであり、サイズがコンパクトである。廃棄容器1がコンパクトであるため、医療機関による医療廃棄物の廃棄コストを削減することができる。廃棄容器1は、例えば、収容した注射器300の注射針330が貫通しない適切なプラスチック材料で作られる。廃棄容器1は、使用済みの注射器300を収容する収容体100と、収容体100に対して開閉自在である蓋体200とを備える。図5は、収容体100に対して蓋体200が閉じられた状態の廃棄容器1を示す。図5には、蓋体200に設けられ、例えば患者である使用者によって操作可能である可動部220、および収容体100の内部に収容された注射器300を排出可能にする可動である、収容体100を構成する壁の一部160も示されている。
【0023】
図6に、蓋体200を収容体100に対して開いた状態で上方から見た廃棄容器1の図を示す。図6の右側には収容体100が示され、左側には蓋体200が示されている。
【0024】
収容体100は、内部に注射器300を数本、例えば5〜6本程度を収容できる容積を有する。収容体100の上面には、注射器に取り付けられたつばもと340を保持するつばもと保持部110と、注射器300の通過が可能である開口部120と、開口部120の一部を覆う図示しないバネなどの手段によって付勢される可動フラップ部130と、係合部140と、可動な押上げ部150とが設けられる。
【0025】
つばもと保持部110は、突起部111を有する。この突起部111が、図4に示されるつばもと340のくぼみ342に挿入され、つばもと340を保持する。つばもと340がつばもと保持部110に保持された状態で、図2に示されるように注射器300の外筒310および内筒320を下方に押し込むと、注射器300はつばもと340から分離される。可動フラップ部130は、収容体100に収容された注射器300が、開口部120を介して外部へ出ることを防止する。係合部140は、収容体100に対して蓋体200が閉じられると、蓋体200の可動部220と係合する。可動な押上げ部150は、収容体100に対して蓋体200が閉じられているときに、図示しないバネなどの手段によって蓋体200を押し上げるように付勢される。
【0026】
蓋体200は、突出部210および211と、使用者によって操作可能である可動部220と、可動部220を付勢するバネ230とを備える。突出部210は、収容体100に対して蓋体200を閉じる動作に応じて、つばもと保持部110につばもと340が保持された注射器300の外筒310を押し下げる。また突出部211は、収容体100に対して蓋体200を閉じる動作に応じて、注射器300の内筒320を押し下げる。突出部210および211による注射器300の押し下げの結果、つばもと340と注射器300とが分離され、つばもと340が分離された注射器300により可動フラップ部130が押し開けられて、開口部120を介して注射器300が収容体100内部へ移動される。可動部220は、図9に示されるように、例えば患者である使用者によって操作可能である。この可動部220は、そのサイズが大きく、進行したリウマチ患者であっても使い易いものである。また、収容体100に対して蓋体200が閉じられると、可動部220は、バネ230によって収容体100の係合部140に向かって付勢される。そのため、蓋体200が予期せずに収容体100に対して開かれる危険性を減らすことができる。
【0027】
図7は、蓋体200を収容体100に対して閉じる動作によって、蓋体200の突出部210が注射器300の外筒310に接触している様子を示す図である。また図8は、蓋体200を収容体100に対して完全に閉じることによって、つばもと340と注射器300とが分離されて、注射器300だけが収容体100内部へ移動する様子を示す図である。見易くするために、図7および図8には可動フラップ部130および押上げ部150は示されていない。
【0028】
図7に示されるように、収容体100のつばもと保持部110につばもと340が保持された状態で、注射器300は、収容体100の上面の開口部120上に配置される。図7は、蓋体200の突出部210が注射器300の外筒310と接触している状態を示す。蓋体200の突出部211は、注射器300の内筒320のすぐ上に位置する。図7に示される状態から、蓋体200を収容体100に対して完全に閉じると図8に示される状態になる。
【0029】
図8では、つばもと340が、収容体100の上面に設けられたつばもと保持部110に保持された状態で、蓋体200の突出部210および211によって注射器300が押し込まれることによって、つばもとが分離された注射器300だけが、開口部120を介して収容体100内部に移動している。蓋体200の可動部220は、収容体100の係合部140と係合し、バネ230が可動部220を係合部140の方向に付勢している。したがって、蓋体200が収容体100に対して閉じられた状態を維持して、蓋体200が予期せずに収容体100に対して開かれる危険性は低減される。
【0030】
図9から図13は、本発明の廃棄容器1の使用方法を示す図である。
【0031】
図9に示されるように、まず、使用者は、廃棄容器1の蓋体200の可動部220が収容体100の係合部140から分離されるように、バネ230の付勢力に抗して可動部220を係合部140とは反対方向に移動させて、蓋体200を収容体100に対して開く。蓋体200は、収容体100の押上げ部150によって押し上げられるため、この蓋体200を開く動作は容易である。
【0032】
次に、図10に示されるように、注射器300のつばもと340のくぼみ342に、収容体100上面のつばもと保持部110の突起部111が挿入されるように、使用済みの注射器300を収容体100上面に配置する。なお、図10に示される例では、収容体100の上面には、注射器300のつばもと340を配置する向きに関する注意事項を記載する領域101が設けられている。
【0033】
その後、図11に示されるように、蓋体200を収容体100に対して閉じる。図11に示される状態は、図7に対応し、蓋体200の突出部210が、注射器300の外筒310と接触している状態である。
【0034】
次に、図12に示されるように、蓋体200を収容体100に対して完全に閉じる。このとき、つばもと340が注射器300から分離され、注射器300だけが開口部120を介して収容体100内部へ移動する。図12に示される状態は、図8に対応する。
【0035】
その後、図13に示されるように、蓋体200を収容体100に対して再び開くと、つばもと340だけが、収容体100上面のつばもと保持部110に保持された状態で残っており、一方、注射器300は収容体100の内部に収容されている。使用者は、収容体100上面からつばもと340を取り出す。取り出したつばもと340は、医療廃棄物ではないので医療機関へ持参する必要はなく、廃棄容器1とは別に廃棄されることができる。
【0036】
廃棄容器1の収容体100は、数本、例えば5〜6本程度の注射器300を収容できる内容積を有する。患者は、使用済み注射器300を収容した廃棄容器1を医療機関へ持参する。本発明の廃棄容器1はサイズがコンパクトであり、医療機関への持参が容易であり、また医療機関での医療廃棄物の廃棄コストを低減できる。また、本発明の廃棄容器1は、収容した注射器300の注射針330が貫通しない材料で形成され、開口部120の一部を覆うように付勢される可動フラップ部130を有し、蓋体200の可動部220が収容体100の係合部140に向かって付勢されるので、廃棄容器1の保管および医療機関への持参の際に、第三者への針刺し事故および二次感染を予防できる。
【0037】
さらに、図5に示されるように、廃棄容器1は、収容体100の内部に収容された注射器300を排出可能にする可動な収容体100を構成する壁の一部160を有することができる。可動な壁の一部160は、例えばスライド移動または旋回移動により、収容体100の内部に収容された注射器300を排出可能にする。一例では、収容体100に対して蓋体200を開いた状態で、壁の一部160を上方へ移動させて、収容体100を開くことができる。なお、この可動な壁の一部160は、患者を含む医療従事者以外の者が、廃棄容器1から使用済みの注射器300を取り出すことが無いように、容易に操作することができないことが望ましい。
【0038】
注射器300に充填される好ましい治療薬の一例は、アダリムマブまたはエタネルセプトなどのリウマチの治療薬である。このような治療薬を自己注射するリウマチ患者は、痛みまたは腫れや変形のために手指に力が入らないことがあるが、本発明の廃棄容器1は、このようなリウマチ患者であっても、収容体100に対して蓋体200を開く動作または閉じる動作を容易に行なうことができ、使用済みの注射器300の廃棄を簡単に行なうことができる。
【0039】
なお、本発明の廃棄容器は、様々な変形および修正が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の廃棄容器は、自宅など病院以外の場所で行なわれる自己注射で使用された注射器の廃棄容器の技術の分野で好適に利用でき、特に、リウマチ患者が自己注射で使用した注射器の廃棄容器の技術の分野で好適に利用できる。
【符号の説明】
【0041】
1 廃棄容器
100 収容体
101 領域
110 つばもと保持部
111 突起部
120 開口部
130 可動フラップ部
140 係合部
150 押上げ部
160 可動な壁の一部
200 蓋体
210、211 突出部
220 可動部
230 バネ
300 注射器
310 外筒
320 内筒
330 注射針
340 つばもと
341、342 くぼみ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者自らが治療薬を注射する自己注射で使用された注射器の廃棄容器であって、前記注射器が、外筒と、該外筒内を軸方向に移動可能な内筒と、前記外筒の一端に接続される注射針とを備え、前記注射器の外筒の他端につばもとが着脱可能に取り付けられ、
前記廃棄容器が、使用済みの注射器を内部に収容する収容体と、該収容体に対して開閉自在である蓋体とを備え、
前記収容体が、蓋体が閉じられているときに蓋体に面する上面を有し、該上面に、注射器に取り付けられたつばもとを保持するつばもと保持部と、注射器の通過が可能な開口部と、該開口部の一部を覆うように付勢される可動フラップ部とを有し、
前記蓋体が、突出部を有し、該突出部が、収容体に対して蓋体を閉じる動作に応じて、つばもと保持部につばもとが保持された注射器を押し下げて、つばもとと注射器とを分離させ、つばもとが分離された注射器により可動フラップ部を押し開けて、開口部を介して注射器を収容体内部へ移動させることを特徴とする廃棄容器。
【請求項2】
前記蓋体が、使用者によって操作可能である可動部を備え、前記収容体が、収容体に対して蓋体が閉じられると蓋体の可動部と係合する係合部を上面に備え、
前記蓋体がさらに、可動部を付勢するバネを備え、収容体に対して蓋体が閉じられると、蓋体の可動部が、バネによって収容体の係合部に向かって付勢されることを特徴とする、請求項1に記載の廃棄容器。
【請求項3】
前記収容体が、可動な押上げ部を上面にさらに備え、該押上げ部が、収容体に対して蓋体が閉じられているときに蓋体を押し上げるように付勢され、
可動部が、使用者によってバネの付勢力に抗して係合部とは反対方向に移動されて係合部から分離されると、蓋体が、収容体に対して開かれることを特徴とする、請求項1または2に記載の廃棄容器。
【請求項4】
収容体を構成する壁の一部が可動であり、該壁の一部を介して、収容体内部に収容された注射器を排出可能であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の廃棄容器。
【請求項5】
注射器に充填される治療薬が、リウマチの治療薬であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の廃棄容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−212399(P2011−212399A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86110(P2010−86110)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000109015)アボットジャパン株式会社 (14)
【Fターム(参考)】