説明

洗い場床パン

【課題】熱可塑性樹脂により形成された発泡体を用いた場合でも熱膨張による反りを抑制し、排水勾配を維持することができる洗い場床パンを提供することを目的とする。
【解決手段】熱可塑性発泡プラスチックよりも高い強度を有する床基材と、排水口と、外周部に設けられ壁パネルが載置される壁パネル載置部と、を有し、前記床基材により下方から支えられ、熱可塑性発泡プラスチックにより形成されて前記排水口に向けて下方へ傾斜した排水勾配が表面に形成された床面材と、前記床面材に設けられ、前記床面材の熱膨張による変形を抑えて前記床面材が前記床基材から離れることを抑制する離間抑制部と、を備えたことを特徴とする洗い場床パンが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、浴室やシャワー室などに用いられる洗い場床パンに関する。
【背景技術】
【0002】
フレームに固定された部分とリブに固定された部分との間で屈曲されて緩衝帯が形成された衛生設備室の床構造がある(特許文献1)。特許文献1に記載された衛生設備室の床構造では、緩衝帯の開口は、床ベース部の熱膨張圧縮に追従して拡がりまたは狭まって、床ベース部の熱膨張圧縮がフレームに影響を及ぼさないようになっている。
【0003】
また、防水パンの外周部よりも内側に、温度変化を受けたときに伸縮しやすい部分(伸縮許容部)が設けられた防水機能を有する床がある(特許文献2)。特許文献2に記載された防水機能を有する床では、防水パンが温度変化環境下で膨張・収縮しようとしたときに、伸縮許容部が伸縮してくれることで、防水パンの外周部には、温度変化による変形の影響が及ばないようにされている。
【0004】
本発明者は、例えばリサイクル化を推進することで二酸化炭素の排出量を削減し環境への負荷を軽減したり、型費を削減することなどを目的として、熱可塑性樹脂により形成された発泡体を用いた洗い場床パンを検討中である。
【0005】
熱可塑性樹脂により形成された発泡体の線膨張係数は、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)の線膨張係数の例えば約5倍以上である。そのため、熱可塑性樹脂により形成された発泡体を洗い場床パンに用いると、その発泡体は、浴室やシャワー室などの内部の温度と外部の温度との温度差の影響を受け、FRPよりも大きく膨張する。
【0006】
この場合において、洗い場床パンの外周部には浴室等の壁パネルが載置されるため、洗い場床パンの外周部においては、熱膨張による「反り(ソリ)」などと呼ばれる変形は、洗い場床パンの中央部と比較すると生じにくい。一方で、洗い場床パンの中央部には浴室等の壁パネルなどは載置されないため、洗い場床パンの中央部においては、熱膨張による変形が生ずるおそれがある。例えば、洗い場床パンの中央部においては、上方への反りが生ずるおそれがある。
【0007】
一般的に、洗い場床パンの表面には、排水口に向けて傾斜させた排水勾配が設けられている。しかしながら、洗い場床パンの中央部において上方への反りが生ずると、洗い場床パンの表面の水(湯を含む)は、排水口に向かって流れにくくなるおそれがある。つまり、洗い場床パンの中央部において上方への反りが生ずると、排水性能が悪化するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−146429号公報
【特許文献2】特開2008−25123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、熱可塑性樹脂により形成された発泡体を用いた場合でも熱膨張による反りを抑制し、排水勾配を維持することができる洗い場床パンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、熱可塑性発泡プラスチックよりも高い強度を有する床基材と、排水口と、外周部に設けられ壁パネルが載置される壁パネル載置部と、を有し、前記床基材により下方から支えられ、熱可塑性発泡プラスチックにより形成されて前記排水口に向けて下方へ傾斜した排水勾配が表面に形成された床面材と、前記床面材に設けられ、前記床面材の熱膨張による変形を抑えて前記床面材が前記床基材から離れることを抑制する離間抑制部と、を備えたことを特徴とする洗い場床パンである。
【0011】
この洗い場床パンによれば、床面材に設けられた離間抑制部は、床面材が床基材から離れることを抑制する。そのため、浴室等の内部の温度と外部の温度との温度差が比較的大きい場合に、外周部に壁パネルが載置された床面材が熱膨張しても、床面材の中央部において上方への反りが生ずることを抑制できる。これにより、床面材の表面に形成された排水勾配を維持し、洗い場床パンの排水性能が損なわれることを抑制することができる。また、洗い場床パンが備える床面材に熱可塑性発泡プラスチックを用いることで、洗い場床パンのリサイクルを可能とし環境への負担を軽減したり、製造コストを低減することができる。
【0012】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記離間抑制部は、前記床基材と係合する係合部であることを特徴とする洗い場床パンである。
【0013】
この洗い場床パンによれば、床面材よりも高い強度を有する床基材に床面材に設けられた係合部を係合させている。これにより、床面材の熱膨張による上方への反りを抑えることができる。言い換えれば、床面材が床基材から浮くことをより確実に抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の態様によれば、熱可塑性樹脂により形成された発泡体を用いた場合でも熱膨張による反りを抑制し、排水勾配を維持することができる洗い場床パンが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態にかかる洗い場床パンを表す分解模式図である。
【図2】図1に表した切断面A−Aにおける断面模式図である。
【図3】図2に表した範囲A1を拡大した拡大模式図である。
【図4】図2に表した範囲A2を拡大した拡大模式図である。
【図5】本実施形態の床面材を斜め下方から眺めた斜視模式図である。
【図6】本実施形態の床面材を下方から眺めた平面模式図および本実施形態の床基材を上方から眺めた平面模式図である。
【図7】本実施形態の床面材の変形例を例示する平面模式図である。
【図8】本発明の他の実施の形態にかかる洗い場床パンを表す分解模式図である。
【図9】本実施形態の離間抑制部の一例を例示する断面模式図である。
【図10】本実施形態の離間抑制部の他の一例を例示する断面模式図である。
【図11】本実施形態の離間抑制部のさらに他の一例を例示する断面模式図である。
【図12】本実施形態の離間抑制部のさらに他の一例を説明するための斜視模式図である。
【図13】図12に表した切断面C−Cにおける断面模式図である。
【図14】本実施形態の離間抑制部のさらに他の一例を例示する断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる洗い場床パンを表す分解模式図である。
【0017】
図1に表した洗い場床パン100は、床基材110と、床面材130と、クッション材140と、表皮材150と、を備える。洗い場床パン100は、周縁部が上方へ折り曲げられた浅底の器状(パン状)に形成され、例えば浴室やシャワー室などの衛生設備室の外部に水を漏出させない防水性を有する。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加温されたお湯も含むものとする。
【0018】
床基材110は、支持脚111と、支持フレーム113と、受け板115と、を有する。支持フレーム113は、長手方向が第1の方向に配置された例えば4本の第1のフレーム113aと、長手方向が第1の方向と直交する第2の方向に配置された例えば4本の第2のフレーム113bと、を有する。支持脚111は、支持フレーム113の4隅に設けられている。支持脚111は、ボルト部を有し、そのボルト部の回転により高さ調整可能な構造を有する。
【0019】
床基材110は、浴室等の設置場所の限られた空間の中において、洗い場床パン100の上面にかかる荷重を受け、その位置を保持するものである。そのため、床基材110には、充分な強度が必要とされる。そこで、この充分な強度が得られる一例として、本実施形態では鋼材が床基材110に用いられる。
【0020】
床基材110は、浴室等の設置面(例えば、建物の床)の上に載置され、支持脚111のボルト部の回転により適宜高さ調整をされる。これにより、洗い場床パン100の水平面が確保される。そして、支持脚111および支持フレーム113は、受け板115を下方から支持している。言い換えれば、支持脚111および支持フレーム113の上には、受け板115が載置されている。受け板115は、例えばねじ等の締結部材により支持フレーム113に固定されている。
【0021】
受け板115の上面は、洗い場床パン100が備える各部材の垂直方向の基準位置すなわち水平基準面となる。また、受け板115は、床面材130を下方から支持し、受け板115の上に載置される部材から荷重を受ける。そのため、受け板115としては、比較的に高強度で剛性を有する平板状の素材が好適である。その一例として、例えばデッキプレートやサンドイッチパネルなどが挙げられる。床基材110の強度は、後述する熱可塑性発泡プラスチックにより形成された床面材130の強度よりも高い。
【0022】
図1に表したように、床基材110の略中央部には、作業口(開口部)117が設けられている。例えば、洗い場床パン100の施工作業を行う作業者は、作業口117から手を入れて床基材110の下方へ手を伸ばすことで、支持脚111の高さ調整を行ったり、床基材110の裏側において排水管の配設や接続を楽に行うことができる。なお、施工作業後には、作業口117は、床基材110の上に載置された床面材130により覆われる。そのため、浴室等あるいは洗い場床パン100の意匠性が損なわれることはない。
【0023】
床基材110の上には、床面材130が載置されている。床面材130は、熱可塑性発泡プラスチックにより形成されている。熱可塑性発泡プラスチックとしては、例えば発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリウレタンなどが挙げられる。本実施形態では、一例として発泡ポリプロピレンが用いられている。熱可塑性発泡プラスチックは、リサイクル可能なため、これを用いることで床面材130の製造・廃棄に伴うCO排出量を削減して環境に優しい製品を提供できることになる。
【0024】
図1に表したように、床面材130の例えば長辺側の外周部近傍には、図示しない排水管に連通する排水口131が形成されている。排水口131が設けられた部分は、凹部形状を有する。また、床面材130の表面には、排水口131に向けて下方に傾斜した排水勾配が形成されている。
【0025】
床面材130の上には、クッション材140を介して表皮材150が設けられている。クッション材140および表皮材150は、洗い場床パン100の床面の外観意匠や使用感などの官能的な性能向上や、防水性などの洗い場床パン100に必然的に求められる機能を向上させるために用いられている。
【0026】
すなわち、クッション材140は、使用者に与える床面の柔らかさを得るものである。クッション材140の材料としては、例えば発泡ポリウレタン等の軟質素材が用いられている。クッション材140の硬さ(柔らかさ)を変えることで、床面の硬さ(柔らかさ)の仕様を変更することができる。
【0027】
表皮材150は、洗い場床パン100の表面を形成するものである。表皮材150の材料としては、防水性を有する可撓性を有する軟質シート材が用いられている。表皮材150には、洗い場床パン100の表面の意匠性や水はけ性を向上させるために、凹凸加工や柄模様を施したりすることも可能である。
【0028】
なお、クッション材140および表皮材150は、洗い場床パン100を施工する前において、床面材130の表面に予め貼り付けられている。床面材130が軽量な熱可塑性発泡プラスチックにより形成されているため、クッション材140および表皮材150が床面材130の表面に予め貼り付けられていても、作業者は、十分な軽さを得たまま、施工作業を行うことができる。
【0029】
図2は、図1に表した切断面A−Aにおける断面模式図である。
また、図3は、図2に表した範囲A1を拡大した拡大模式図である。
また、図4は、図2に表した範囲A2を拡大した拡大模式図である。
また、図5は、本実施形態の床面材を斜め下方から眺めた斜視模式図である。
【0030】
図1に関して前述したように、本実施形態の床面材130は、熱可塑性発泡プラスチックにより形成されている。熱可塑性発泡プラスチックの線膨張係数は、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)の線膨張係数の例えば5倍以上である。そのため、床面材130は、浴室等の内部の温度と外部の温度との温度差の影響を受け、FRPよりも大きく膨張するおそれがある。
【0031】
ここで、図4に表したように、床面材130は、浴室等の壁パネル201が載置される壁パネル載置部139を外周部に有する。壁パネル載置部139は、床面材130の外周部の全周(四辺)にわたって設けられていなくともよい。例えば、四辺のうちの少なくとも一辺(例えば浴槽側の一辺)には、壁パネル載置部139は、設けられていない場合がある。壁パネル載置部139は、凹部形状を有し、壁パネル201を立設させることができる。そのため、壁パネル載置部139が設けられた部分、すなわち床面材130の外周部は、壁パネル201により上方から押さえられている。そのため、床面材130が熱膨張をしても、床面材130の外周部においては、熱膨張による「反り(ソリ)」などと呼ばれる変形は、床面材130の中央部と比較すると生じにくい。
【0032】
一方で、床面材130の中央部には壁パネル201などは載置されない。そのため、床面材130の中央部は、壁パネル201などにより上方から押さえられているわけではない。そのため、床面材130の中央部においては、熱膨張による変形が生ずるおそれがある。例えば、床面材130の中央部においては、上方への反りが生ずるおそれがある。
【0033】
これに対して、本実施形態の床面材130は、床面材130の熱膨張による変形を抑え床面材130が床基材110から離れることを抑制する離間抑制部を有する。具体的には、図3に表したように、床面材130は、下側(床基材110が設けられた側)において、床基材110の作業口117の縁部と係合する係合部(離間抑制部)135を有する。
【0034】
図5に表したように、床面材130は、下面において下方へ突出した凸部133を有する。図5に表した床面材130は、略中心からみて両側にそれぞれ1つずつの凸部133を有するが、これだけに限定されるわけではない。床面材130は、下面の略中央部に1つの凸部133を有していてもよい。そして、係合部135は、凸部133の周縁部に設けられている。ここにいう「周縁部」という範囲には、凸部133の下面および凸部133の側面が含まれるものとする。図5に表した床面材130では、係合部135は、凸部133の側面に設けられ外側へ突出している。
【0035】
作業口117は、壁パネル載置部139とは重ならない位置において床基材110を上下方向に貫通している。図2に表したように、床面材130の凸部133は、床基材110の作業口117に嵌め込まれている。この状態において、図3に表したように、係合部135は、床基材110に設けられた押さえ片(被係合部)118と係合している。押さえ片118は、床基材110の作業口117の内周面(側面)115aに設けられ、その内周面115aから作業口117の内側へ向かって突出している。押さえ片118は、例えば板ばねなどような弾性を有する。
【0036】
作業者などが床面材130の凸部133を床基材110の作業口117に嵌め込み床面材130を床基材110の上に載置する際には、係合部135は、押さえ片118を作業口117の外側へ向かって一時的に押し込む。そして、作業者などが床面材130をさらに下方へ押し込むと、係合部135が押さえ片118を押し込む力が解除され、押さえ片118は、作業口117の内側へ向かって変形する。これにより、係合部135が押さえ片118と係合する。
【0037】
浴室等の内部の温度と外部の温度との温度差により床面材130が熱膨張した際には、押さえ片118は、作業口117の内周面115aから作業口117の内側へ向かって突出した状態を維持し床面材130を拘束する。これにより、床面材130が床基材110から浮くことを抑えることができる。つまり、床面材130が熱膨張しても、床面材130の中央部において上方への反りが生ずることを抑制できる。これにより、床面材130の表面に形成された排水勾配を維持し、洗い場床パン100の排水性能が損なわれることを抑制することができる。
【0038】
なお、床面材130には、複数の係合部135が設けられていることがより好ましい。これによれば、応力が1つの係合部135に集中することを防止し、例えば係合部135が破損するなどの不具合を防止することができる。
【0039】
図6は、本実施形態の床面材を下方から眺めた平面模式図および本実施形態の床基材を上方から眺めた平面模式図である。
なお、図6(a)は、本実施形態の床面材130を下方から眺めた平面模式図である。図6(b)は、本実施形態の床基材110を上方から眺めた平面模式図である。
【0040】
図6(a)に表したように、床面材130を下方あるいは上方からみたときに、床面材130は、矩形状を呈し、矩形状の凸部133を下面に有する。図6(b)に表したように、床基材110を下方あるいは上方からみたときに、床基材110は、矩形状を呈し、矩形状の作業口117を有する。
【0041】
図2に関して前述したように、床面材130の凸部133は、床基材110の作業口117に嵌め込まれている。すなわち、図6(a)に表した床面材130の凸部133の第1の方向の長さD1は、図6(b)に表した作業口117の第1の方向の長さD3よりもやや短い。また、図6(a)に表した床面材130の凸部133の第2の方向の長さD2は、図6(b)に表した作業口117の第2の方向の長さD4よりもやや短い。そのため、図2に表したように、床面材130の凸部133が床基材110の作業口117に嵌め込まれた際には、凸部133は、作業口117の略全体を埋めている。そして、凸部133の周縁部に設けられた係合部135は、床基材110に設けられた押さえ片118と係合している。
【0042】
これによれば、作業口117の上方における床面材130の部分は、床基材110により下方から支持されるわけではない一方で、床面材130は、作業口117の略全体を埋める凸部133を下面に有する。そのため、使用者などが洗い場床パン100を踏みつけた際の床面材130の撓みをより小さく抑えることができる。これにより、洗い場床パン100の踏み心地が低下することを抑えることができる。また、床基材110により下方から支持されていない床面材130の部分が経年変化によって下方へ撓み変形することを抑えることができる。
【0043】
図7は、本実施形態の床面材の変形例を例示する平面模式図である。
なお、図7は、本変形例の床面材を下方から眺めた平面模式図である。
【0044】
本変形例の床面材130aは、床面材本体132aと、凸部133aと、を有する。凸部133aは、床面材本体132aと一体的に形成されているわけではない。つまり、凸部133aは、床面材本体132aとは別体として形成されている。そして、床面材本体132aおよび凸部133aがそれぞれ形成された後に、図7に表した矢印のように、凸部133aは、床面材本体132aの下面に固定される。なお、図7に表した左側の2つの凸部133aは、床面材本体132aと一体的に形成されたことを表しているわけではなく、床面材本体132aの下面に固定された後の状態を表している。
【0045】
凸部133aの周縁部には、係合部135が設けられている。図7の表した係合部135は、図5に関して前述したように、凸部133aの側面に設けられ外側へ突出している。これによれば、本具体例の床面材130aが床基材110の上に載置されると、係合部135は、床基材110に設けられた押さえ片118と係合する。そのため、床面材130aが熱膨張しても、床面材130aの中央部において上方への反りが生ずることを抑制できる。
【0046】
また、床面材本体132aが凸部133aとは別体として形成されているため、床面材本体132aの構造を簡略化することができる。そして、洗い場床パン100のリサイクルの効率化を図ったり、床面材本体132aの製造コストを低減することができる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態によれば、床面材130に設けられた離間抑制部は、床面材130が床基材110から離れることを抑制する。そのため、浴室等の内部の温度と外部の温度との温度差が比較的大きい場合に、外周部に壁パネル201が載置された床面材130が熱膨張しても、床面材130の中央部において上方への反りが生ずることを抑制できる。これにより、床面材130の表面に形成された排水勾配を維持し、洗い場床パン100の排水性能が損なわれることを抑制することができる。また、洗い場床パン100が備える床面材130に熱可塑性発泡プラスチックを用いることで、洗い場床パン100のリサイクルを可能とし環境への負担を軽減したり、製造コストを低減することができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、床面材130よりも高い強度を有する床基材110の作業口117の縁部に床面材130の係合部135を係合させている。これにより、床面材130の熱膨張による上方への反りを抑えることができる。言い換えれば、床面材130が床基材110から浮くことをより確実に抑えることができる。
【0049】
また、浴室等の内部の温度と外部の温度との温度差により床面材130が熱膨張した際には、押さえ片118が床面材130を拘束する。そのため、床面材130の係合部135が熱可塑性発泡プラスチックにより形成されていても、施工の際に係合部135が破壊するおそれはほとんどない。そのため、床面材130の中央部において上方への反りが生ずることをより確実に抑制することができる。
【0050】
次に、本発明の他の実施の形態について説明する。
図8は、本発明の他の実施の形態にかかる洗い場床パンを表す分解模式図である。
【0051】
図8に表した洗い場床パン100aは、床基材110aと、床面材130と、クッション材140と、表皮材150と、を備える。
床基材110aは、支持脚111と、支持フレーム113と、を有する。支持脚111は、ボルト部を有し、そのボルト部の回転により高さ調整可能な構造を有する。床基材110aに用いられる材料としては、例えば鋼材が挙げられる。床基材110aの強度は、熱可塑性発泡プラスチックにより形成された床面材130の強度よりも高い。
【0052】
本実施形態の床基材110aは、図1に関して前述した床基材110のようには、受け板115を有しているわけではない。そのため、本実施形態の床基材110aは、図1に関して前述した作業口117を有していない。例えば、洗い場床パン100aの施工作業を行う作業者は、複数の支持フレーム113の間から手を入れて支持フレーム113の下方へ手を伸ばすことで、支持脚111の高さ調整を行ったり、支持フレーム113の下側において排水管の配設や接続を楽に行うことができる。
【0053】
床基材110aの上には、床面材130が載置されている。図1および図8に表したように、本実施形態の床面材130の厚さすなわち上下方向の長さは、図1に関して前述した床面材130の厚さよりも厚く、例えば約15センチメートル(cm)〜20cmである。そのため、本実施形態の床面材130の上下方向の荷重に対する強度は、図1に関して前述した床面材130の上下方向の荷重に対する強度よりも高い。これにより、床基材110aが受け板115を有していなくとも、本実施形態の床面材130は、例えば使用者などが洗い場床パン100aを踏みつけた際に生ずる荷重などに対して充分な強度を有する。
【0054】
本実施形態の床面材130は、熱可塑性発泡プラスチックにより形成されている。また、床面材130の表面には、排水口131に向けて下方に傾斜した排水勾配が形成されている。さらに、床面材130は、図4に関して前述した壁パネル載置部139を外周部に有する。これらの床面材130の構造は、図1に関して前述した床面材130の構造と同様である。
クッション材140および表皮材150は、図1に関して前述した如くである。
【0055】
図9は、本実施形態の離間抑制部の一例を例示する断面模式図である。
なお、図8に表した切断面B−Bにおける断面模式図である。
【0056】
図2〜図5に関して前述したように、床面材130は、浴室等の内部の温度と外部の温度との温度差の影響を受け、FRPよりも大きく膨張するおそれがある。そのため、壁パネル載置部139が設けられていない床面材130の中央部においては、上方への反りが生ずるおそれがある。
【0057】
これに対して、図9に表した床面材130の下面には、補強板(離間抑制部)161が付設されている。補強板161の線膨張係数は、床面材130の線膨張係数よりも小さい。補強板161の材料としては、例えば鋼材などが挙げられる。そのため、補強板161は、床面材130の熱膨張による上方への反りを抑えることができる。これにより、床面材130の表面に形成された排水勾配を維持し、洗い場床パン100aの排水性能が損なわれることを抑制することができる。また、洗い場床パン100aが備える床面材130に熱可塑性発泡プラスチックを用いることで、洗い場床パン100aのリサイクルを可能とし環境への負担を軽減したり、製造コストを低減することができる。
【0058】
図10は、本実施形態の離間抑制部の他の一例を例示する断面模式図である。
なお、図10は、図8に表した切断面B−Bにおける断面模式図である。
【0059】
図10に表した床面材130は、下面から下方へ突出した係合部(離間抑制部)136を有する。一方、床基材110aの支持フレーム113の上面には、床面材130の係合部136と係合する係合口112が形成されている。そして、図10に表したように、床面材130が床基材110aの上に載置された状態では、床面材130の係合部136は、床基材110aの係合口112と係合している。
【0060】
これによれば、係合部136は、床面材130が床基材110aから浮くことを抑えることができる。そのため、係合部136は、床面材130の熱膨張による上方への反りを抑えることができる。これにより、図9に関して前述した効果と同様の効果が得られる。また、図10に表した床面材130では、図9に関して前述した補強板161などのような床面材130とは別の部材を設ける必要はない。そのため、部品点数の削減や、施工作業の効率化や、製造コストの削減などを図ることができる。
【0061】
図11は、本実施形態の離間抑制部のさらに他の一例を例示する断面模式図である。
なお、図11は、図8に表した切断面B−Bにおける断面模式図である。
【0062】
図11に表した床面材130は、床基材110aの支持フレーム113を挿入可能な凹部137aを有する。凹部137aの内面には、その内面から凹部137aの内側へ突出した係合部(離間抑制部)137が設けられている。一方、床基材110aの支持フレーム113の側面には、床面材130の係合部137と係合する係合口114が形成されている。そして、図11に表したように、床面材130が床基材110aの上に載置された状態では、床基材110aは、床面材130の凹部137aに挿入されている。また、床面材130の係合部137は、床基材110aの係合口114と係合している。
【0063】
これによれば、係合部137は、床面材130が床基材110aから浮くことを抑えることができる。そのため、係合部137は、床面材130の熱膨張による上方への反りを抑えることができる。これにより、図9に関して前述した効果と同様の効果が得られる。また、図11に表した床面材130では、床面材130が床基材110aから離れることを抑制する部材を床面材130と別に設ける必要はない。そのため、部品点数の削減や、施工作業の効率化や、製造コストの削減などを図ることができる。
【0064】
図12は、本実施形態の離間抑制部のさらに他の一例を説明するための斜視模式図である。
また、図13は、図12に表した切断面C−Cにおける断面模式図である。
なお、図12は、本実施形態にかかる洗い場床パンを下方から眺めた斜視模式図である。図13(a)は、圧入前の状態を表す断面模式図である。図13(b)は、圧入後の状態を表す断面模式図である。
【0065】
図13(a)に表したように、床面材130は、下面において凹部(離間抑制部)138を有する。図13(a)に表したように、凹部138の内幅D5は、床基材110aの支持フレーム113の外幅D6と略同等である。前述したように、床面材130は、熱可塑性発泡プラスチックにより形成されている。一方、床基材110aの強度は、床面材130の強度よりも高い。床基材110aは、例えば鋼材などにより形成されている。そのため、図13(a)に表した矢印のように、床面材130を床基材110aの方向へ移動させ、支持フレーム113を凹部138に圧入することができる。
【0066】
図12および図13(b)に表したように、支持フレーム113を凹部138に圧入すると、支持フレーム113は、凹部138に埋め込まれる。そのため、床面材130が床基材110aから浮くことを抑えることができる。これにより、図9に関して前述した効果と同様の効果が得られる。また、図12および図13に表した床面材130では、床面材130が床基材110aから離れることを抑制する部材を床面材130と別に設ける必要はない。そのため、部品点数の削減や、施工作業の効率化や、製造コストの削減などを図ることができる。
【0067】
図14は、本実施形態の離間抑制部のさらに他の一例を例示する断面模式図である。
なお、図14は、図8に表した切断面B−Bにおける断面模式図である。
【0068】
図14に表した床面材130の下面には、接合部材(離間抑制部)165が付設されている。そして、床面材130は、接合部材165を介して床基材110aの支持フレーム113の上面に載置されている。接合部材165としては、例えば接着剤や両面テープなどが挙げられる。そのため、床面材130は、接合部材165を介して床基材110aと接合している。
【0069】
これによれば、接合部材165は、床面材130が床基材110aから離れることを抑えることができる。そのため、係合部137は、床面材130の熱膨張による上方への反りを抑えることができる。これにより、図9に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
【0070】
以上説明したように、本実施形態によれば、床基材110aが作業口117を有していない場合において、床面材130は、図9〜図14に関して前述したような離間抑制部を有する。離間抑制部は、床面材130が床基材110aから離れたり浮いたりすることを抑えることができる。そのため、離間抑制部は、床面材130の熱膨張による上方への反りを抑えることができる。これにより、床面材130の表面に形成された排水勾配を維持し、洗い場床パン100aの排水性能が損なわれることを抑制することができる。また、洗い場床パン100aが備える床面材130に熱可塑性発泡プラスチックを用いることで、洗い場床パン100aのリサイクルを可能とし環境への負担を軽減したり、製造コストを低減することができる。
【0071】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、床基材110、110aや床面材130などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや係合部135、136、137や補強板161などの離間抑制部の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。さらに、作業口117に押さえ片(被係合部)を設けるのに代えて、床基材110の上面に設けた床面材130の係合専用の穴に押さえ片(被係合部)を設けてもよい。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0072】
100、100a 洗い場床パン、 110、110a 床基材、 111 支持脚、 112 係合口、 113 支持フレーム、 113a 第1のフレーム、 113b 第2のフレーム、 114 係合口、 115 受け板、 115a 内周面、 117 作業口、 118 押さえ片、 130、130a 床面材、 131 排水口、 132a 床面材本体、 133、133a 凸部、 135、136、137 係合部、 137a、138 凹部、 139 壁パネル載置部、 140 クッション材、 150 表皮材、 161 補強板、 165 接合部材、 201 壁パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性発泡プラスチックよりも高い強度を有する床基材と、
排水口と、外周部に設けられ壁パネルが載置される壁パネル載置部と、を有し、前記床基材により下方から支えられ、熱可塑性発泡プラスチックにより形成されて前記排水口に向けて下方へ傾斜した排水勾配が表面に形成された床面材と、
前記床面材に設けられ、前記床面材の熱膨張による変形を抑えて前記床面材が前記床基材から離れることを抑制する離間抑制部と、
を備えたことを特徴とする洗い場床パン。
【請求項2】
前記離間抑制部は、前記床基材と係合する係合部であることを特徴とする請求項1記載の洗い場床パン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−72233(P2013−72233A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212854(P2011−212854)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】