説明

洗浄水吐出装置

【課題】循環経路を流れる薬剤が薬剤タンクから逆流するのを、薬剤タンクを低く設置することによる水頭圧によらずに防止し、薬剤タンクの設置位置に制約を受けない洗浄水吐出装置を提供する。
【解決手段】洗浄水流路1を流れる洗浄水中に液体薬剤を混合した薬剤混合洗浄水を吐出口2から吐出させる洗浄水吐出装置Aである。液体薬剤を溜める薬剤タンク3と、両端4a,4bが薬剤タンク3に接続された循環経路4と、循環経路4内の液体薬剤を循環経路4内に循環させる循環ポンプ5と、上記循環経路4から分岐して洗浄水流路1内に連通する分岐経路6とを備える。上記循環経路4内を循環する液体薬剤を分岐経路6を経て洗浄水流路1内に供給するための薬剤供給手段を設け、循環経路4の分岐経路6と分岐する部分の下流側に逆流防止手段7を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄水中に液体薬剤を混合した薬剤混合洗浄水を吐出口から吐出させる洗浄水吐出装置に関し、詳しくは、液体薬剤を溜める薬剤タンクの設置場所の制約をなくしながら薬剤混合洗浄水の安定した供給を可能にしようとするための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、薬剤を混入した洗浄水を吐出する洗浄水吐出装置が知られている。これは、便器本体の後部に、リム給水の洗浄水流路に連通してリム給水と共に薬剤を吐出する薬剤タンクを設置し、洗浄水流路をリム給水開閉弁にて開閉すると共に薬剤タンクから洗浄水流路に至る経路を薬剤吐出弁にて開閉することで、リム給水によるボウル部の前洗浄、ジェット給水による汚水排出、及びリム給水によるボウル部の封水などの各洗浄行程を行なうものである。上記洗浄水吐出装置は、洗浄水に混入する薬剤が微量の場合は量の調節が難しいため、本出願人は、本発明に先立って循環経路を有する図5に示す洗浄水吐出装置を開発した(特許文献1参照)。
【0003】
この洗浄水吐出装置Aは便器に設けられるもので、液体薬剤を溜める薬剤タンク3と、両端が薬剤タンク3に接続された循環経路4と、循環経路4内に液体薬剤を循環させる循環ポンプ5と、循環経路4から分岐して洗浄水流路1内に連通する分岐経路6とを備えている。そして、洗浄水流路1に水を流す際に循環ポンプ5を駆動して、薬剤タンク3に溜まっている薬剤を循環経路4に流して循環させると、洗浄水流路1を水が流れる時に発生する負圧により、微量の薬剤が分岐経路6を介して洗浄水流路1に吸引され、微量の薬剤が混入された洗浄水を生成することができるものである。
【0004】
しかしながらこの場合、薬剤タンク3の配置によっては、洗浄水流路1を水が流れる時の負圧により、薬剤タンク3から薬剤が循環経路4を逆流して洗浄水流路1に吸引されてしまう惧れがあった。すなわち、薬剤タンク3が洗浄水流路1の薬剤混入部よりも充分に低い位置にあれば、薬剤タンク3の薬剤にかかる水頭圧Hが負圧による吸引力を上回って逆流することはないが、薬剤タンク3が洗浄水流路1の薬剤混入部よりもあまり低くない場合には負圧による吸引力が水頭圧Hを上回って逆流したり、あるいは薬剤タンク3が洗浄水流路1の薬剤混入部よりも高い位置にある場合には吸引力に加えて水頭圧が逆流させる力となって、薬剤が逆流してしまうものであった。この結果、薬剤タンク3の設置位置に制約を受けてしまうものであった。
【特許文献1】国際公開第08/44791号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、循環経路を流れる薬剤が薬剤タンクから逆流するのを、薬剤タンクを低く設置することによる水頭圧によらずに防止し、薬剤タンクの設置位置に制約を受けない洗浄水吐出装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明に係る洗浄水吐出装置Aは、洗浄水流路1を流れる洗浄水中に液体薬剤を混合した薬剤混合洗浄水を吐出口2から吐出させる洗浄水吐出装置Aであって、液体薬剤を溜める薬剤タンク3と、両端4a,4bが薬剤タンク3に接続された循環経路4と、循環経路4内の液体薬剤を循環経路4内に循環させる循環ポンプ5と、上記循環経路4から分岐して洗浄水流路1内に連通する分岐経路6とを備え、上記循環経路4内を循環する液体薬剤を分岐経路6を経て洗浄水流路1内に供給するための薬剤供給手段を設け、循環経路4の分岐経路6と分岐する部分の下流側に逆流防止手段7を設けたことを特徴としている。
【0007】
このような構成とすることで、逆流防止手段7により、循環経路4を流れる薬剤が薬剤タンク3から逆流するのを、薬剤タンク3を低く設置することによる水頭圧Hによらずに防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、逆流防止手段により薬剤の逆流を防止するため薬剤タンクを低く設置する必要がなくなって、薬剤タンクの設置位置に制約を受けない自由度の高いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0010】
図1は本発明の洗浄水吐出装置Aを備えた水洗便器の一例であり、合成樹脂製の便器本体8で主体を構成してある。まず便器について概略説明する。
【0011】
便器本体8のボウル部81の下部には、後方に向けて排水筒部82を突設してあり、該排水筒部82からトラップを介してボウル部81内の溜水を排水できるようになっている。本例のトラップはターントラップ方式のもので、排水筒部82に接続したフレキシブルなトラップ筒83により構成してあり、ターントラップ用モータ(図示せず)によりアーム部材84を回動させて、図1に示すようにトラップ筒83を上向きU字状となるトラップ構造の状態と、図示しないが下向き逆L字状となってトラップ構造が解除される状態とを選択できるようになっており、通常はトラップ筒83が上向きU字状となったトラップ構造となっていてボウル部81内の下部、排水筒部82、トラップ筒83内に水が溜まった状態となっていて、この状態で大便や小便を行い、大便や小便が終わると、後述のように洗浄水吐出装置Aの吐出口2から気泡混合洗浄水を流すと共に、トラップ筒83を回動してトラップ構造を解除して、汚物と共に汚水を排水するようになっている。
【0012】
図2に洗浄水吐出装置Aの断面図を示す。洗浄水吐出装置Aは、図1に示すように、便器本体8の後部に設けた機器収納部85に内装されており、洗浄水流路1内に洗浄水を供給する洗浄水供給手段と、洗浄水中に空気を吸引混入させる空気混入手段と、洗浄水に液体薬剤を供給する薬剤供給手段と、気泡混合洗浄水又は薬剤混合洗浄水のいずれかを吐出する吐出口2とを備えている。吐出口2から洗浄水に気泡を混入した気泡混合洗浄水、又は、気泡混合洗浄水に液体薬剤を混入して得た薬剤混合洗浄水のいずれか一方を選択的にボウル部81内面に吐出し、これによりボウル部81内面を洗浄するものである。
【0013】
洗浄水供給手段は、図1に示すように、例えば水道管に直結される洗浄水流路1の上流に設けた電磁弁からなる給水制御弁11で構成され、この給水制御弁11はボウル部81への洗浄水の吐水動作時に開くように制御される。洗浄水流路1に洗浄水を供給する手段としては水道圧を利用する。洗浄水流路1の下流側端にはボウル部81の上端部後方に配設されてボウル部81内に臨む吐出口2を設けてある。
【0014】
ここで、洗浄水流路1の下流側は、図2に示すように、先端にいくほど流路断面積を徐々に小さくする先細形状に形成されたノズル管21と、ノズル管21の先端部が挿入される横管状のエジェクタ管22と、吐出口2とで構成されている。エジェクタ管22は、上流(図2の左側)で流路断面積が大きく、下流(図2の右側)にいくほど流路断面積を徐々に小さくする上流大径部23と、経路径を絞った小径部24と、小径部24の下流(図2の右側)にいくほど流路断面積を徐々に大きくする下流大径部25とが、上流から下流に向かってこの順に形成されており、上流大径部23の流路部分が空気混入部23aとなっており、小径部24の流路部分が薬剤混入部24aとなっており、小径部24から下流大径部25に至る流路部分が気泡発生部25aとなっている。この気泡発生部25aは、上流から流れてきた気泡混合洗浄水を加圧・減圧して圧力を変化させることで、洗浄水に含まれる気泡を剪断して微小化する。なおエジェクタ管22の下流側には、洗浄水を気泡を更に細分化する気泡細分化手段として気泡をせん断するメッシュで構成した整流板26を設けてある。
【0015】
空気混入手段は、洗浄水流路1の空気混入部23a(エジェクタ管22の上流大径部23)に外部から空気を供給するためのものであり、図1に示すように、一端が外気に開放され、他端が空気混入部23a内に開放された空気供給路12の途中に吸気弁13が設けられて構成されており、ノズル管21の先端からエジェクタ管22内に流れ込む洗浄水によって空気混入部23a内に負圧が発生し、このエジェクタ効果によって吸気弁13が開弁して外部からの空気が空気供給路12を介して洗浄水中に吸引混入され、洗浄水に空気が混入した気泡混合洗浄水が生成される。図1に示す実施形態では、空気混入部23aはノズル管21の先端部よりも大径に形成してあり、これにより空気混入部23aは、ノズル管21の先端部近傍において洗浄水の流れにより大きな負圧発生部となっている。
【0016】
上記洗浄水吐出装置Aは、液体薬剤を溜める薬剤タンク3と、両端4a,4bが薬剤タンク3に接続された循環経路4と、循環経路4内に液体薬剤を循環させる循環ポンプ5と、循環経路4から分岐して洗浄水流路1内に連通する分岐経路6とを備えている。
【0017】
薬剤タンク3は、図1に示すように、機器収納部85の仕切り部86よりも下方の下部空間85bに収納されており、洗浄水吐出装置Aの他の構成部品(循環ポンプ5、分岐経路6、給水制御弁11、洗浄水流路1等)は上方の上部空間85aに収納されている。
【0018】
上部空間85aから下部空間85bにまたがって循環経路4が配置されている。循環経路4の両端4a,4bはそれぞれ下部空間85bに延びていて、その両端4a,4bにそれぞれ接続された2本のタンク挿入管41a,41bが薬剤タンク3内に挿入されていて、各タンク挿入管41a,41bの下端がタンク底壁近くに達している。図1に示す実施形態では、薬剤タンク3の上端面の接続口に嵌め込まれる接続部材31を介して2本のタンク挿入管41a,41bと循環経路4の両端4a,4bとが各々取り外し可能に接続されており、薬剤タンク3内に液体薬剤を補給する際は例えば循環経路4の両端4a,4bを接続部材31から取り外すことで、薬剤タンク3を循環経路4の両端4a,4bから取り外し可能となり、便器本体8の外面部分に設けたカバー(図示せず)を取り外すことで、便器本体8外部に薬剤タンク3を取り出すことができ、キャップ付き薬剤投入口32から液体薬剤を投入可能となっている。なお液体薬剤として、例えば、界面活性剤を含む洗剤、或いは芳香剤などの水溶液が挙げられる。
【0019】
上記循環経路4の上部空間85aに配置される部分の途中には、図1に示すように、循環ポンプ5が介在されている。循環ポンプ5は、薬剤タンク3内の液体薬剤をタンク挿入管41a,41bの一方から循環経路4内に吸い出して、他方から薬剤タンク3内に戻すことにより、液体薬剤を循環経路4内に循環させる働きをする。
【0020】
さらに上記循環ポンプ5の吐出側には、循環経路4の途中から分岐した分岐経路6の一端が分岐している。分岐経路6の一端は小径の孔部で構成してあり、分岐経路6の他端は洗浄水流路1の薬剤混入部24a(エジェクタ管22の小径部24)に臨ませて配置されている。循環ポンプ5により循環経路4を循環する液体薬剤の少量が分岐経路6を経て洗浄水流路1に供給される。
【0021】
上述した循環経路4には、分岐経路6の下流側に逆流防止手段7を設けるものである。逆流防止手段7としては、循環経路4の途中に設ける逆止弁が挙げられる。図1に示す実施形態では、薬剤タンク3に戻る側の循環経路4の薬剤タンク3中に位置する部分に逆流防止手段7を設けてあり、図3に示す実施形態では、循環経路4の分岐経路6と分岐する部分のすぐ下流側に逆流防止手段7を設けてある。
【0022】
上記構成によれば、逆流防止手段7を設けたことで、循環経路4を流れる薬剤が薬剤タンク3から逆流するのを防止することができ、薬剤タンク3を低く設置することによる水頭圧Hによらずに防止することが可能となる。これにより、逆流防止手段7により薬剤の逆流を防止するため薬剤タンク3を低く設置する必要がなくなって、薬剤タンク3の設置位置に制約を受けない自由度の高いものとなる。なお、図1及び図3に示す実施形態では、薬剤タンク3が洗浄水流路1の薬剤混入部24aよりも充分に低い位置にあるため、より一層薬剤の逆流を防止することができる。
【0023】
また、図4に示す実施形態では、薬剤タンク3を洗浄水流路1の薬剤混入部24aよりも高い位置に設置してある。この場合、水が洗浄水流路1を流れる時の負圧による吸引力に加えて水頭圧H’が逆流させる力となってしまうが、逆流防止手段7を設けてあるため薬剤が薬剤タンク3から逆流するのを防止することができ、薬剤タンク3を薬剤混入部24aよりも上側に設置できて制約がないものである。
【0024】
なお本発明に係る洗浄水吐出装置Aは、ターントラップ式水洗便器に限らず、サイフォンジェット式水洗便器、洗い落とし式水洗便器などにも同様に適用できる。さらに、水洗便器以外にも、泡洗浄を行なう食器洗浄器などにも広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態の洗浄水吐出装置を備えた水洗便器の断面図である。
【図2】同上の洗浄水流路を説明する正面断面図である。
【図3】他の実施形態の洗浄水吐出装置を備えた水洗便器の断面図である。
【図4】更に他の実施形態の洗浄水吐出装置を備えた水洗便器の断面図である。
【図5】従来の洗浄水吐出装置を備えた水洗便器の断面図である。
【符号の説明】
【0026】
A 洗浄水吐出装置
1 洗浄水流路
11 給水制御弁
12 空気供給路
13 吸気弁
2 吐出口
3 薬剤タンク
31 接続部材
32 薬剤投入口
4 循環経路
41a タンク挿入管
41b タンク挿入管
5 循環ポンプ
6 分岐経路
7 逆流防止手段
8 便器本体
H 水頭圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水流路を流れる洗浄水中に液体薬剤を混合した薬剤混合洗浄水を吐出口から吐出させる洗浄水吐出装置であって、液体薬剤を溜める薬剤タンクと、両端が薬剤タンクに接続された循環経路と、循環経路内の液体薬剤を循環経路内に循環させる循環ポンプと、上記循環経路から分岐して洗浄水流路内に連通する分岐経路とを備え、上記循環経路内を循環する液体薬剤を分岐経路を経て洗浄水流路内に供給するための薬剤供給手段を設け、循環経路の分岐経路と分岐する部分の下流側に逆流防止手段を設けたことを特徴とする洗浄水吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−7318(P2010−7318A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166277(P2008−166277)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】